説明

VOCフリー水還元性被覆基剤

【課題】耐磨耗性、耐水性、振動耐性を有する揮発性有機化合物(「VOC」)フリーの被覆剤、インク、塗料の調製に有用な新規の水性被覆基剤を提供すること。
【解決手段】水性被覆基剤を、ヒドロキシルを有するジ/オリゴアミンと、カルボン酸基を有するビニル、スチレン及び/又は(メチル)アクリル酸の単量体の(共)重合化で得られるカルボン酸含有樹脂と、の組合せ反応によって生成された水還元性樹脂とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な水性被覆基剤、この製造方法及び使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高分子ビニル、スチレン、(メチル)アクリル酸樹脂、共重合体、をベースとする従来の水還元性被覆剤は、現在、溶解補助剤として揮発性アンモニア又は低分子量アミン類を有する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
これらの溶解補助剤は、その使用中、著しい割合の揮発性有機化合物(VOCs:揮発性有機化合物)を、環境汚染物質として発生させる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
驚くべきことに、上述のVOCを、ヒドロキシル基を有するジ/オリゴアミン(化学式I参照)又はこれらの組み合わせに置換する(例えば、揮発性アンモニア/アミン類の置換)ことにより、種々の適用例において、VOCをほとんど除去できることに加え、既知の代替物に比べて性能を向上できるということが、見出された。
【0005】
これらの利点の中でも予想外であったのは、ラテックス系被覆剤における従来の合体剤の、非VOC生成代替物として有用であったことである。
【0006】
ヒドロキシル基を有するジ/オリゴアミン(化学式I参照)と、カルボン酸を有する樹脂と、の組合せ反応を介して製造される水還元性樹脂が、エポキシ樹脂用の効果的な周囲温度硬化剤として、及び/又は種々のラテックス樹脂用の合体補助剤として、機能できるということが、更に確認された。これに対し、通常使用される揮発性アミン類(化学式II参照)を含みカルボン酸基を有する樹脂との反応によって調製された、従来の水還元性樹脂では、同様の性能利点が得られない。
【0007】
このような能力によって、開発者は、これら多用途の物質を使用することによる汚染を最小化する手段を得ることができる。このような利点には、例えば、有害性の少ない物質を使用できること、及び/又は、揮発性の有毒物質にさらされる労働者に対する有害な又は許容できない状態を緩和できること、が含まれる。更に、本明細書で示されるように、これらの使用によって、開発者は、即乾性のインクや塗料、耐磨耗性及び耐腐食性が向上され、製造コストが低減され且つより容易に製造できる被覆剤、のような製品性能が向上された化合物を得ることができる。
【0008】
【化1】

【化2】

ここで、R、R、R、R及びRの各々は、独立して、結合手、二価ヒドロカルビル配位子、又はオキサヒドロカルビル配位子であり、これら配位子の各々は1以上約6以下の炭素原子を有し、[―OCH又は―OC]等のエーテル置換基を含んでもよい。Rの各々は、独立して、水素、1以上6以下の飽和炭素を有する一価ヒドロカルビル配位子又はオキサヒドロカルビル配位子、又は、2以上6以下の不飽和炭素を有するヒドロカルビル配位子又はオキサヒドロカルビル配位子である。Rの各々は、1以上4以下の炭素を有する三機能配位子から独立して選択され、(x)及び(y)の各々は、独立して、0以上6以下の整数であり、x+yの合計が2以上の場合を除き、(z)は1、2又は3の整数である。化学式IIにおいて、A、B、Cの各々は、独立して、水素、1以上約3以下の炭素を有する一価ヒドロカルビル配位子又は一価のヒドロカルビル配位子である。本発明の好ましい実施形態において、末端のRは結合手であり、最も好ましい実施形態において、末端のRは結合手であり、Rの各々は水素である。
【0009】
本明細書において、用語「ヒドロカルビル」は水素及び炭素のみを含む基を意味し、用語「オキサヒドロカルビル」は、エーテル基(即ち、酸素−O−)、炭素、水素のみを含む基を意味する。用語「不飽和」は「C=C結合」又は「炭素−炭素二重結合」が配位子内に存在することを意味する。用語「三機能配位子」は3つの結合部位[例えば、CH(−)CH−、1、3、5−C、−OCHC(−)=CH(−)]を有する配位子を意味する。用語「多機能」は、多機能基を有する(例えば、同じ配位子内にアミノ基及びヒドロキシル基を有する)配位子を意味する。用語「実質的に不揮発性」は、問題の物質が極めて低い揮発性を有する、又は、代わりに以下の揮発性基準:1)米国環境保護局(EPA)法第24条;2)アメリカ材料試験協会(ASTM)法D3960;3)使用温度において水蒸気圧が0.1mm Hg未満であること、の1以上の項目を実質的に満たす又は上回るという特性を意味する。用語「有機カルボン酸基機能等価物」は、機能上、カルボン酸基として作用する化学基を意味する。例えば、カルボン酸エステル又は酸無水物、その他このようなカルボン酸誘導体は、本明細書に記載された組成物における使用に適する。特に適するのは、ある特定の水性条件下で、対応する遊離カルボン酸官能基が生じるように加水分解しやすい組成物における使用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
一態様として、化学式Aに示される組成物は、高分子有機カルボン酸基を有する1又は複数の樹脂と、多機能ヒドロキシル基を有する1又は複数のジ/オリゴアミンと、を含む(実質的に、これらからなる)。
【0011】
【化3】

ここで、R、R、R、R及びRの各々は、独立して、結合手、二価ヒドロカルビル配位子、又はオキサヒドロカルビル配位子であり、これら配位子の各々は1以上約6以下の炭素原子を有し、[―OCH又は―OC]等のエーテル置換基を含んでもよい。Rの各々は、独立して、水素、1以上6以下の飽和炭素を有する一価ヒドロカルビル配位子又はオキサヒドロカルビル配位子、又は、2以上6以下の不飽和炭素を有するヒドロカルビル配位子又はオキサヒドロカルビル配位子である。Rの各々は、1以上4以下の炭素を有する三機能配位子から独立して選択され、(x)及び(y)の各々は、独立して、0以上6以下の整数であり、x+yの合計が2以上の場合を除き、(z)は1、2又は3の整数である。
【0012】
一実施形態において、本発明は、高分子有機カルボン酸基を有する1又は複数の樹脂と、多機能ヒドロキシル基を有する1又は複数のジ/オリゴアミンと、を含む(実質的に、これらからなる)組成物である。
【0013】
他の実施形態において、組成物は、多機能ヒドロキシル基を有するジ/オリゴアミンが実質的に不揮発性の本明細書で記述される任意のもの、あるいは、多機能ヒドロキシル基を有するジ/オリゴアミンが少なくとも1つの一次アミノ配位子、又は少なくとも2つ又は3つのアミノ配位子を含む本明細書で記述される任意のものである。他の実施形態において、組成物は、多機能ヒドロキシル基を有するジ/オリゴアミンが、少なくとも1つの一次アミノ配位子(例えばNH)、又は少なくとも2つ又は3つの二次アミノ配位子(例えばNHR、NHR、これらR又はRは本明細書で定義される)と、少なくとも1つのヒドロキシル基とを含む、本明細書で記述される任意のものである。
【0014】
他の実施形態において、組成物は、高分子有機カルボン酸基を有する樹脂が非カルボン酸系の単量体を更に含む、本明細書で記述される任意のものである。他の実施形態において、組成物は、高分子有機カルボン酸基を有する樹脂が、少なくとも1つ又は2つの遊離カルボン酸基を含む本明細書で記述される任意のものである。
【0015】
他の実施形態において、組成物は、1又は複数の有機カルボン酸基が、1又は複数の高分子有機カルボン酸基の機能等価物、例えば酸ハロゲン化物及び/又は酸無水物、で置換された本明細書で記述される任意のものである。
【0016】
他の実施形態において、組成物は、高分子有機カルボン酸基を有する1又は複数の樹脂が、非カルボン酸系の単量体を更に含む、本明細書で記述される任意のものである。このような単量体の代表例としては、特に限定されないが、例えば、メチル基アクリル酸エステル類、スチレン、塩化ビニル、ビニルエーテル類、ビニルエステル類が挙げられる。
【0017】
他の実施形態において、組成物は、高分子有機カルボン酸基を有する樹脂と、本明細書で記述される多機能ヒドロキシル基を有するジ/オリゴアミンと、の任意の組合せを含む、本明細書で記述される任意のものである。
【0018】
他の実施形態において、組成物は、高分子有機カルボン酸基の機能等価物と、本明細書で記述される多機能ヒドロキシルを有するジ/オリゴアミンと、の任意の組合せを含む、本明細書で記述される任意のものである。
【0019】
他の実施形態において、組成物は、高分子有機カルボン酸基の機能等価物を有する樹脂と、本明細書で記述される多機能ヒドロキシル基を有するジ/オリゴアミンと、の組合せ及び配合を含む、本明細書で記述される任意のものである。
【0020】
他の実施形態において、組成物は、追加溶剤を更に含む、本明細書で記述される任意のものである。ここで、追加溶剤は水又は有機溶剤(例えば、有機エーテル、エステル、ケトン、アルコール)である。このような追加溶剤は、使用に適する任意の時点で導入してよい。例えば、溶剤は、組成物の最終包装の前に導入してもよく、組成物の使用の直前に導入してもよい。
【0021】
他の実施形態において、本明細書で記述される任意の組成物の、エポキシ硬化剤、被覆剤用基剤、塗料用基剤、印刷用インクとしての使用が、想定される。これらの使用には、本明細書で記述される組成物を基板に塗布することが含まれる。基板は、(例えば、塗装、印刷、被覆、接着といった)塗布に適する任意の固体物質である。基板としては、例えば、紙、厚紙、生地、クロス、プラスチック、ガラス繊維、ラミネート、木、金属類(例えば、アルミニウム、鋼、黄銅、鉄、銅、チタン)、石、セメント、大理石、セラミック、ビニール、ガラス、高分子、及びこれらに類するものが、適している。本明細書の組成物の塗布は、適切な任意の方法、例えば、手作業で、又は、インクジェット、フレキソ印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷、石版印刷等の自動化機器を使用して、ブラシ、バフ、噴霧器によって、行うことができる。
【0022】
他の実施形態には、エポキシ硬化剤、被覆剤、塗料、印刷インクの製造方法であって、本明細書で記述される任意の組成物の成分の混合を含む製造方法;本明細書で記述される[ヒドロキシル基を有するジ(オリゴ)アミンと、カルボキシル基を有する樹脂との反応で得られる]組成物の成分と、1又は複数の追加エポキシ硬化剤添加剤と、の混合を含むエポキシ硬化剤の製造方法;本明細書で記述される成分と、1又は複数の追加被覆用添加剤と、の混合を含む被覆剤の製造方法;本明細書で記述される成分と、1又は複数の追加塗料添加剤と、の混合を含む塗料の製造方法;本明細書で記述される成分と、1又は複数の追加塗料添加剤と、の混合を含む印刷インクの製造方法、が含まれる。
【0023】
エポキシ硬化剤組成物用の添加剤は、当業者に公知である。これら添加剤には、例えば、界面活性剤、触媒、凝結遅緩剤、溶剤、及びこれらに類するものが含まれる。被覆剤、塗料、印刷インク組成物用の添加剤は、当業者には公知である。これら添加剤には、例えば、流動抑制剤、消泡剤、静生物剤、及びこれらに類するものが含まれる。
【0024】
他の実施形態には、高分子有機カルボン酸基を有する1又は複数の樹脂と、多機能ヒドロキシル基を有する1又は複数のジ/オリゴアミンと、の混合を含む本明細書で記述される組成物の作製方法;本明細書で記述される高分子有機カルボン酸基を有する1又は複数の樹脂と、本明細書で記述される1又は複数の多機能ヒドロキシルを有するジ/オリゴアミンと、の混合を含む本明細書で記述される組成物の作製方法、が含まれる。
【0025】
他の実施形態には、本明細書で記述される任意の方法の手順によって作製された生成物を含む。
【0026】
他の実施形態には、本明細書で記述され又は本明細書で記述される方法によって調整された生成物又は組成物の、基板への塗布を含む基板上への印刷方法;本明細書で記述され又は本明細書で記述される方法により調製された生成物の、基板への塗布を含む基板の塗装方法;本明細書で記述され又は本明細書で記述される方法により調製された生成物の、基板への塗布を含む基板の被覆方法;本明細書で記述され又は本明細書で記述される方法により調製された生成物の、基板への塗布を含む基板上でのエポキシ硬化方法;本明細書で記述され又は本明細書で記述される方法により調製された生成物の、第1基板への塗布と、この第1基板の第2基板への接触と、を含む第1基板の第2基板への接着方法、この方法は、本明細書で記述され又は本明細書で記述される方法により調製された生成物の第2基板への塗布を更に含んでもよい;本明細書で記述され又は本明細書で記述される方法により調製された生成物の基板表面への塗布を含む基板の保護方法、が含まれる。
【0027】
他の実施形態において、組成物は、本明細書で記述される任意の組成物を有する揮発性有機化合物(「VOC」)フリーの水性基剤を含む。他の実施形態において、組成物は、実質的に、揮発性有機化合物(「VOC」)フリーである。用語「VOCフリー」は、当業者に公知であるように、揮発性有機成分と考えられる化学成分から実質的に作製されていない物質、又は、これら化学成分を含まない物質を意味する。
【0028】
本発明の実施に有用であることが分かっている種々のヒドロキシル基を有するジ/オリゴアミンは、多数存在する。テーブルAには数例が示され、好ましい実施形態の好ましい例は、印を付して示されている。これらの例は単に例示的なものであり、本発明の範囲を網羅するものでも限定するものでもない。
【0029】
【表1】

【0030】
本発明の実施に有用であることが分かっているカルボン酸基を有する種々の高分子及び種々のラテックス樹脂類は、多数存在する。テーブルB及びテーブルBには数例が示されている。これらの例は単に例示的なものであり、本発明の範囲を網羅するものでも限定するものでもない。
【0031】
【表2】

【0032】
【表3】

【0033】
水還元性カルボン酸を有する樹脂を溶解させるために従来広く使用されている揮発性アミンの例をテーブルCに、本発明の実施に適しない不揮発性アミンの例をテーブルDに、各々示す。
【0034】
【表4】

【0035】
【表5】

【実施例】
【0036】
本発明の新規な水性基剤の調製、使用に適した方法は、多数存在し、当業者により確立されている。これらの基剤の適用には、優れた印刷インク、塗料、被覆剤調合物が含まれ、これらは実施例1及び2から8に例示される。このような実施例は、単に例示的なものであり、本発明の範囲を網羅するものでも限定するものでもない。
【0037】
<実施例1>
本発明のVOCフリー樹脂基剤は、適当なカルボン酸含有高分子と、当量(酸性基あたりの塩基性窒素)の約40から200%の適切な対イオン形成アミンとを、水又は水性樹脂系の中で、高度にせん断混合することにより、概ね容易に調製できた。樹脂を分散させるために、温度を60℃から80℃の範囲とした。このようにして調製された基剤は、10から約65重量パーセントの範囲の固形分濃度を有していた。開放状態及び/又は窒素流ブランケット反応器(対照区)で調整する類似の従来型の系で製造した結果に反し、樹脂の溶解分散中における、塩基の損失、結果として生じる悪臭の発生は、工程温度が98℃と高い場合でさえ、最小であった。本発明の種々のVOCフリー樹脂基剤の組成、安定性、乾燥薄膜の耐水性に関する詳細、及び、従来の類似技術である比較例を、テーブル#1に示す。示したアミド化触媒0.2重量%の添加が選択調合物の性能に及ぼした効果を、テーブル#1に示す。
【0038】
【表6】


【0039】
【表7】


注:1)全固形分は、アメリカ材料試験協会(ASTM)法D-3960に相当する、米国環境保護局(「EPA」)連邦法第24条第51号による。
2)試験被覆剤をドクターブレードによりポリエチレンテレフタレート膜に乾燥膜被覆厚(測定値)2.5mmの厚さで塗布し、25℃の温度で1時間空気乾燥させた。次いで、ASTM法4213の基材(のみ)改良版によって評価した。
3)チタンビスアセチルアセトネート
4)チタンビス(ビスオクチル)ビスリン酸
【0040】
<実施例2>
本実施例は、水性フレキソ印刷インク基剤成分としてのVOCフリー基剤の優れた効用を示す例である。
【0041】
高速分散器を用いて、適量のスチレンアクリル共重合体(B5)と、155当量の酸とを、特定割合当量の示したアミンと共に混合することで、30重量パーセント固形物を含有する均一な水性分散液を調整した。白インクを生成するために3.0から3.1Kcpsの間のインク粘度を得るのに必要なことから、25重量パーセントの二酸化ルチルチタン粉末、最大23+/―2%の水、各々適切な割合又は約0.1%から約1%の消泡剤、静生物剤、ポリウレタンチキソトロープ剤を有する基剤成分(50重量パーセント)としての有用性を、生じた物質の各々について評価した。
【0042】
得られたインクを、60ショアーDジュロメーター、従来の水性フレキソ印刷技術を用いて、60%カバレージの商用印刷機(65℃乾燥)で幅1m、厚さ2.5mmのビニルウェブ、上に印刷した。アミン/等価物、最大持続可能印刷率、ブロッキング、種々の腐蝕性に対する印刷耐性を、テーブル#2にまとめる。これらのデータによって、VOC発生の最小化、持続可能な印刷速度、耐腐食性に関して、当業界に存在する物質に対する本発明の優位性が示される。
【0043】
【表8】


注:1)EPA法24条による1時間毎の圧痕
2)50psigで24時間観察
3)特定の腐蝕物の中に24時間浸水し、この後、各試料を、試験物質で湿潤させたセルローススポンジにより15psigで10回拭いた後に、試験を行った。元の色濃度保持率(10試験片の平均値)に基づいて性能を評価した。:E、≧90%;G、=75−89%;F、=50−69%;P、≦50%
4)印刷率はプレスであり、生成物性能に限られない。
【0044】
<実施例3>
本実施例は、本発明のVOCフリー基剤の、水性エポキシ木材被膜剤用の基剤成分としての優れた効用を示すものである。
【0045】
0.40ミリ当量のA7製品と100ミリ当量のB5樹脂とを水中で反応させることで調整した31重量パーセントの水性樹脂溶液内に、各々10重量パーセントの二酸化チタン及びマスコバイトマイカを、順次分散することで、二成分水性VOCフリーアクリルエポキシ被覆剤を調製した。示されるような種々の割合のビスフェノールAジエポキシド、エポキシ当量(EEW)190、を上述した樹脂の100gアリコートに加えた。これにより得られた物質を完全に混合し、滑らかで、清潔で、無傷の0.30m(12インチ)×0.30m(12インチ)×0.025m(1インチ)のスプルースパネルに塗布し、25+/―2℃の温度で乾燥させた。得られた被覆剤を、24時間の乾燥後と、95時間の乾燥後とにおいて評価した。この結果をテーブル3に示す。多数の類似(30%樹脂固形物)エポキシ被覆剤についても同様に調製し、塗布し、硬化し、評価を行なった。調合物、乾燥条件、試験結果の一覧をテーブル3に示す。
【0046】
【表9】

注:1)ASTMD1640
2)ASTMD4213
3)ASTMD1308
【0047】
<実施例4>
本実施例は、本発明のVOCフリー基剤の接着剤としての優れた効用を示すものである。
【0048】
ドクターブレードで10×200×3mm(厚み)の滑らかで平らな一定の基板試料上に塗布し、一定の分子混合比率の成分の分散液20重量パーセントをドクターブレードで塗布することにより、各生成物の湿潤フィルム層4mmを調製した。得られた湿潤フィルムの各々を、周囲条件(22−30℃、相対湿度70−80%)で10分間乾燥させ、次いで、特定の基板の第2試料でカバレージを順次行い、100℃(5%以下の相対湿度)で3時間オーブン乾燥させ、周囲温度で48時間冷却し、積層剥離強さ(ジュール/直線1cm)をASTMD4541に従って測定した。これらの試験の結果をテーブル4にまとめる。
【0049】
【表10】

注:1)ASTM5179
2)ヘンケル社
【0050】
<実施例5>
本実施例は、本発明のVOCフリー基剤の水性グラビア印刷インク基剤としての優れた効用を示すものである。試験結果に明示されるように、本発明の物質によれば、生産性及び収量が向上され、従来の類似品に比べて(ドットの減少によって)より鮮明な画が得られる。
【0051】
固形分40%含有基剤が製造されるようなモル比で所定の成分を混合することによって、水性グラビア印刷インクを調製した。これらを、(50%固形分)ラテックス樹脂類で8:1に希釈し、次いで、パールミルを用いて、15重量パーセントのフタロシアニン青色顔料(15:0)を上記混合物に分散させた。全ての調合物を、追加基剤を適当な比率で添加することにより、一定の色強度(可視分光光度計)にまで減少させ、次いで、塗布用の粘度にまで水で希釈した。得られたインクを、各試料に対して(80℃の乾燥温度で)商用(最大持続可能(限界乾燥率)ライン速度(m/分)で、3メートルウェブ)の種々のカバレージ(10から80%)試験パターンシリンダを用いて、60ポンドのコート紙原料上に印刷した。生産性(最大圧痕/時)、収量(ページ/g顔料)、及び、美観(ドットゲイン)を、各試料に関して、評価した。この結果をテーブル5に示す。
【0052】
【表11】

【0053】
<実施例6>
本実施例は、本発明のVOCフリー基剤の、ラテックスアクリル樹脂及びポリビニルアセテートラテックス樹脂建築塗料用のVOCフリー合体剤としての効用を示すものである。
【0054】
ヘグマン粉砕値7+にまで粉砕した粉砕基剤300g中に二酸化チタン200gを高速で混合分散させ、次いで、ラテックス樹脂400g及び水100gで沈降させることで、白色ラテックス建築用塗料を調整した。Polyphobe 102(ユニオンカーバイド社製)で、粘度を80+/―Krebsユニット値に調節し、得られた塗料を、ドクターブレードによって、標準ドローダウンカード(Lenneta 9A)に湿潤厚み3ミル塗布し、周囲温度で4時間乾燥させた。乳白度及び光沢度を、各々、ASTM法D2805及びD523により測定した。結果のデータをテーブル6に示す。各工程で用いた粉砕基剤は、Polyphobe 102を3(重量部)と、カリウムジリン酸を2(重量部)と、消泡剤(Defo X123―UltraAdditives)を2(重量部)と、殺生物剤(Nuosept95―Crenova)を2(重量部)と、示すような添加剤と、水平衡と、を有していた。
【0055】
【表12】

注:1)重量部
2)Flexbond 381(Air Products社)
3)不完全合体不均一フィルム
4)SG-10M(Rohm and Haas社)
【0056】
<実施例7>
本実施例は、本発明のVOCフリー基剤の、耐金属腐蝕性被覆剤へのVOCフリー合体剤としての効用を示すものである。
【0057】
ヘグマン粉砕値7+にまで粉砕した粉砕基剤300g中に二酸化チタン200gを高速で混合分散させ、次いで、SC Johnson 538アクリル樹脂300g、メルアミン樹脂(Cyme l303-Cytec)50g、水100gで沈降させることで、白色ラテックス金属保護水性焼付けエナメルを調整した。Polyphobe 117(ユニオンカーバイド社製)で、粘度を80+/―5Krebsユニット値に調節し、得られた塗料を、ドクターブレードによって、標準炭素鋼板試験パネル(QUV)に湿潤厚み3ミル塗布し、160℃のオーブンで20分間焼付けし、周囲温度で48時間冷却させた。乳白度、塩水噴霧抵抗及び光沢度を、各々、ASTM法D2805-88、B117、D523により測定した。結果のデータをテーブル7に示す。各工程で用いた粉砕基剤は、アクリルラテックス(#540 SC Johnson)-200 Polyphobe 117を3(重量部)と、カリウムジリン酸を2(重量部)と、消泡剤(Defo X123―UltraAdditives)を2(重量部)と、殺生物剤(Nuosept95―Crenova)を2(重量部)と、示すような添加剤と、水平衡と、を有していた。
【0058】
【表13】

注:1)重量部
2)フィルム合体不完全
【0059】
<実施例8>
本実施例は、本発明のVOCフリー基剤の、VOCフリーのアルキド類の性能改善剤としての効用を示すものである。
【0060】
真空中で蒸留させることにより、Setal-41-1390樹脂から溶剤(名目値30%w/wの29.7%)を除去し、bp>160℃の粘性の生成物を製造した。この実質的に基剤フリーの生成物を、以後の全評価に用いた。等モル比の示されるアミンを含有する水性混合物中に樹脂を溶解することにより、固形分40重量%の濃縮Setal 41-1390水性水溶液/分散液の1000グラム部を調製した。消泡剤(Defo 3020-UltraAdditives)5グラムを各々に加え、次いで、カーボンブラック顔料(R400R―Cabot)50gと、12%コバルト及びマンガンナフテン酸各々1.5gと、を導入し、充分に分散させた。得られた物質の各々を、独立して、ドクターブレードでアルミニウム試験パネル(QUV)に被覆させた。被覆されたパネルを、周囲温度で7日間空気乾燥させた後、ASTMD-4521に従って粘着性を、ASTMD-4060に従って耐すりへり性を、それぞれ評価した。その結果をテーブル8にまとめる。
【0061】
【表14】

【0062】
<実施例9>
本実施例は、本発明のVOCフリー基剤の、ラテックスアクリル、塩化ゴム、ポリビニルアセテートラテックス樹脂、系の床面被覆剤用のVOCフリー合体剤としての効用を示すものである。
【0063】
一定のモル比で適切な試薬と、各々0.25重量パーセントの界面活性剤混合物及び消泡剤と、をテーブル9に示すラテックス樹脂に添加することにより、アミン−カルボキシル樹脂付加生成物を2重量パーセント含有する床面ワックス濃縮液を調製した。得られた濃縮物の各々を水で希釈して、固形分20%まで減少させた。次いで、モップで4層塗布して、清掃直後の半固定化ビニール床面タイルを中速で空気乾燥させた。得られた被覆剤を、美観及び(往来による)耐久性について評価し、市販のVOC含有床面ワックスから製造された類似被覆剤と比較した。結果をテーブル9に示す。
【0064】
【表15】

注:1)塗布中
2)UCAR379G(ユニオンカーバイド社製)
3)UCAR626(ユニオンカーバイド社製)
【0065】
印刷物、電子、コンピュータ読取可能記憶媒体、その他の形態のいずれであっても、本明細書で記載された総ての参考文献は、その全体を参照として取り込まれている。これらには、特に限定されないが、抄録、記事、雑誌、刊行物、文書、学術論文、インターネットウェブサイト、データベース、標準、及び標準の方式/手順及び/又は規制機関、特許、特許公報が含まれる。
【0066】
本発明の数々の実施形態を説明してきたが、本発明の生成物及び手順を利用する他の実施形態を提供するために、基本的実施例を改変してもよいことは明らかである。従って、本発明の範囲は、実施例を用いて説明された特定の実施形態よりもむしろ、請求項によって定義されるべきであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子有機カルボン酸基を有する1又は複数の樹脂と、多機能ヒドロキシル基を有する1又は複数のジ/オリゴアミンと、を含む組成物。
【請求項2】
揮発性有機化合物(「VOC」)フリーの水性基剤を含む組成物であって、
前記水性基剤は、高分子有機カルボン酸基を有する1又は複数の樹脂と、多機能ヒドロキシル基を有する1又は複数のジ/オリゴアミンと、を含む組成物。
【請求項3】
前記多機能ヒドロキシル基を有する1又は複数のジ/オリゴアミンは、実質的に不揮発性である請求項1又は2記載の組成物。
【請求項4】
前記多機能ヒドロキシル基を有する1又は複数のジ/オリゴアミンは、少なくとも1つの一次アミノ配位子を有する請求項1又は2記載の組成物。
【請求項5】
前記多機能ヒドロキシル基を有する1又は複数のジ/オリゴアミンは、少なくとも1つの一次アミノ配位子と、少なくとも1つのヒドロキシル基と、を有する請求項1又は2記載の組成物。
【請求項6】
前記高分子有機カルボン酸基を有する1又は複数の樹脂は、非カルボン酸系の単量体を更に有する請求項1又は2記載の組成物。
【請求項7】
前記高分子有機カルボン酸基を有する1又は複数の樹脂は、少なくとも1つの遊離カルボン酸基を有する請求項1又は2記載の組成物。
【請求項8】
高分子有機カルボン酸基の1又は複数の機能等価物を含む請求項1又は2記載の組成物。
【請求項9】
揮発性有機化合物(「VOC」)フリーの水性基剤を含む組成物であって、
高分子有機カルボン酸基を有する1又は複数の樹脂を含み、
前記高分子は、非カルボン酸系の単量体と、実質的に不揮発性の多機能ヒドロキシル基を有するジ/オリゴアミンと、を更に含んでもよい組成物。
【請求項10】
追加溶剤を更に含む請求項1又は2記載の組成物。
【請求項11】
追加溶剤として水を含む請求項10記載の組成物。
【請求項12】
追加溶剤として有機溶剤を含む請求項10記載の組成物。
【請求項13】
請求項1又は2記載の組成物のエポキシ硬化剤としての使用方法。
【請求項14】
請求項1又は2記載の組成物の被覆剤用基剤としての使用方法。
【請求項15】
請求項1又は2記載の組成物の塗料用基剤としての使用方法。
【請求項16】
請求項1又は2記載の組成物の印刷インク用基剤としての使用方法。
【請求項17】
エポキシ硬化剤、被覆剤、塗料、印刷インクの製造方法であって、
請求項1記載の組成物の成分の混合を含む製造方法。
【請求項18】
請求項1記載の組成物の成分と、1又は複数の追加エポキシ硬化剤添加剤と、の混合を含むエポキシ硬化剤の製造方法。
【請求項19】
請求項1記載の組成物の成分と、1又は複数の追加被覆用添加剤と、の混合を含む被覆剤の製造方法。
【請求項20】
請求項1記載の組成物の成分と、1又は複数の追加塗料添加剤と、の混合を含む塗料の製造方法。
【請求項21】
請求項1記載の組成物の成分と、1又は複数の追加塗料添加剤と、の混合を含む印刷インクの製造方法。
【請求項22】
高分子有機カルボン酸基を有する1又は複数の樹脂と、多機能ヒドロキシル基を有する1又は複数のジ/オリゴアミンと、の混合を含む請求項1又は2記載の組成物の作製方法。
【請求項23】
請求項17から22いずれか記載の手順によって作製された生成物。
【請求項24】
請求項21又は22記載の方法によって調製された生成物の基板への塗布を含む基板上への印刷方法。
【請求項25】
請求項20又は22記載の方法によって調製された生成物の基板への塗布を含む基板の塗装方法。
【請求項26】
請求項19又は22記載の方法によって調製された生成物の基板への塗布を含む基板の被覆方法。
【請求項27】
請求項18又は22記載の方法によって調製された生成物の基板への塗布を含む基板上のエポキシの硬化方法。
【請求項28】
請求項17又は22記載の方法によって調製された生成物の第1基板への塗布と、この第1基板の第2基板への接触と、を含む第1基板の第2基板への接着方法。
【請求項29】
請求項17又は22記載の方法によって調製された生成物の前記第2基板への塗布を更に含む請求項28記載の方法。
【請求項30】
請求項17又は22の方法によって調製された生成物の基板表面への塗布を含む基板の保護方法。
【請求項31】
高分子有機カルボン酸基を有する1又は複数の樹脂と、多機能ヒドロキシル基を有する1又は複数のジ/オリゴアミンと、を含む組成物であって、
化学式Aで示される組成物。
【化1】

ここで、R、R、R、R及びRの各々は、独立して、結合手、二価ヒドロカルビル配位子、又はオキサヒドロカルビル配位子であり、これら配位子の各々は1以上約6以下の炭素原子を有し、[―OCH又は―OC]等のエーテル置換基を含んでもよい。Rの各々は、独立して、水素、1以上6以下の飽和炭素を有する一価ヒドロカルビル配位子又はオキサヒドロカルビル配位子、又は、2以上6以下の不飽和炭素を有するヒドロカルビル配位子又はオキサヒドロカルビル配位子である。Rの各々は、1以上4以下の炭素を有する三機能配位子から独立して選択され、(x)及び(y)の各々は、独立して、0以上6以下の整数であり、x+yの合計が2以上の場合を除き、(z)は1、2又は3の整数である。

【公表番号】特表2007−507581(P2007−507581A)
【公表日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−533286(P2006−533286)
【出願日】平成16年5月21日(2004.5.21)
【国際出願番号】PCT/US2004/015995
【国際公開番号】WO2004/105963
【国際公開日】平成16年12月9日(2004.12.9)
【出願人】(505434319)ボクフリー インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】