説明

VOC処理装置用熱利用装置

【課題】VOC処理装置から発生する冷熱と温熱と、を併用して廃熱を有効に活用できる、VOC処理装置用熱利用装置を提供することを目的とする。
【解決手段】少なくとも1つ以上の、吸熱側の熱交換基板と放熱側の熱交換基板と起電力の取出し端子とを有する熱電変換モジュールが、配設されてなる熱電変換モジュールパネルを有する熱電変換器ユニットと、VOCの燃焼に伴う温熱を温熱媒体に蓄熱させ、廃ガス処理装置から前記熱電変換モジュールの吸熱側の熱交換基板へ向けて、前記温熱媒体が流れる温熱媒体流路と、VOCの気化に伴う冷熱を冷熱媒体に蓄熱させ、溶剤廃液処理装置から前記熱電変換モジュールパネルの放熱側の熱交換基板へ向けて、前記冷熱媒体が流れる冷熱媒体流路と、を備えることを特徴とするVOC処理装置用熱利用装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、VOC処理装置用熱利用装置に関する。より詳細には、VOC処理装置に配設された溶剤廃液処理装置において、溶剤廃液からVOCガスを気化蒸発させる際に、溶剤廃液から蒸発潜熱が奪われることに伴い発生する冷熱と、VOC処理装置に配設された廃ガス処理装置において、VOCガスの燃焼に伴い発生する温熱と、を併用して廃熱を有効に活用できる、VOC処理装置用熱利用装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機溶剤は、種々の用途、例えば、接着剤、粘着剤、塗料等を製造するための原材料として幅広く用いられている。これらの用途において、有機溶剤を使用する設備から、揮発性有機化合物(以下、VOC、またはVOCガスと称する)を含有する廃ガスと、VOC成分を含有する溶剤廃液が発生する。そのため、これらの有機溶剤を使用するVOC発生設備からの、VOCを含有する廃ガス、及び溶剤廃液から気化させたVOCガスを処理する、VOC処理装置が開発されている。例えば、特許文献1には、VOCを含有する廃ガスと、溶剤廃液を気化させて発生するVOCガスとを合わせて燃焼させることにより、VOCを含有する廃ガスと溶剤廃液を効率的に処理する、VOC処理装置が開示されている。
【0003】
また、各種廃熱を、電気エネルギーに変換して有効利用を図る技術として、例えば、ガスコンロの温熱と水道水の冷熱とを利用し、熱電素子による発電を行うことが開示されている(特許文献2を参照)。また、特許文献3には、配管部材に供給された水を加熱手段からの燃焼ガスによって加熱することで水蒸気を発生させ、水蒸気の発生と同時に発電を行うことが可能なコジェネレーションシステムが開示されている。燃焼ガスと、配管部材を通過する水との温度差を利用し、発電モジュールにより発電するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−302030号公報
【特許文献2】特許第4247460号公報
【特許文献3】特開2007−150112号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に開示されているVOC処理装置は、該VOC処理装置に備わる溶剤廃液処理装置において、溶剤廃液を溜めた容器を加熱し、溶剤廃液からVOCガスを気化蒸発させることにより、溶剤廃液からVOCガス成分を分離し、VOC処理装置に導入して燃焼処理している。このような、VOC処理装置は、溶剤廃液からVOCガスを気化蒸発させる際に、気化するVOCガス成分が気化熱として溶剤廃液の熱を奪うため、溶剤廃液の温度が低下し、冷熱が発生している。しかし、VOCガス成分の抽出のために、溶剤廃液を溜めた容器を加熱するため、温度が低下した溶剤廃液が有する冷熱を、有効に活用しないで無駄にしているという問題があった。また、VOC処理装置に配設された廃ガス処理装置において、VOCガスの燃焼に伴い発生する温熱エネルギーを、有効に活用しないで無駄にしているという問題があった。
【0006】
また、特許文献2に開示されている廃熱の熱電変換方法は、ガスコンロの廃熱を回収することができるが、冷熱の発生源として使用している水道水を垂れ流すという損失を伴っており、経済的な優位性が低いことから、広く工業的な利用に結びつけることができない
という問題があった。
【0007】
また、特許文献3に開示されているコジェネレーションシステムは、水蒸気の発生と同時に発電を行うことができるという点では優れているが、起電力を外部に取り出す電気配線が、直接に高温の燃焼火炎にさらされるため、簡便な方法にて電気絶縁性を持たせるのが困難であるという問題があった。
【0008】
上記した問題に鑑み、本発明では、VOC処理装置に配設された溶剤廃液処理装置において、溶剤廃液からVOCガスを気化蒸発させる際に、溶剤廃液から蒸発潜熱が奪われることに伴い発生する冷熱と、VOC処理装置に配設された廃ガス処理装置において、VOCガスの燃焼に伴い発生する温熱と、を併用して廃熱を有効に活用できる、VOC処理装置用熱利用装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するために、本発明は、VOC処理装置から発生する冷熱と温熱とを、それぞれ、液体からなる冷熱媒体と温熱媒体とに蓄熱させて回収し、熱電変換モジュールが組み込まれた熱電変換モジュールパネルを有する熱電変換器ユニットの、放熱側の熱交換基板と吸熱側の熱交換基板とに、各々、該冷熱媒体と温熱媒体とを同時に接触させて熱電変換により、廃熱を電気エネルギーに変換して回収することを技術思想としている。
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明に係るVOC処理装置用熱利用装置は、有機溶剤を含有する溶剤廃液に含まれるVOCを燃焼処理する廃ガス処理装置と、前記溶剤廃液からVOCを気化させて燃料として前記廃ガス処理装置へ供給する溶剤廃液処理装置とを有するVOC処理装置から排出される温熱と、冷熱とを利用するVOC処理装置用熱利用装置であって、少なくとも1つ以上の、吸熱側の熱交換基板と放熱側の熱交換基板と起電力の取出し端子とを有する熱電変換モジュールが、配設されてなる熱電変換モジュールパネルを有する熱電変換器ユニットと、前記VOCの燃焼に伴う温熱を温熱媒体に蓄熱させ、前記廃ガス処理装置から前記熱電変換モジュールの吸熱側の熱交換基板へ向けて、前記温熱媒体が流れる温熱媒体流路と、前記VOCの気化に伴う冷熱を冷熱媒体に蓄熱させ、前記溶剤廃液処理装置から前記熱電変換モジュールパネルの放熱側の熱交換基板へ向けて、前記冷熱媒体が流れる冷熱媒体流路と、を備える。
【0011】
本発明では、VOC処理装置において溶剤廃液からVOCガスを気化蒸発させる際に発生する冷熱が回収され、回収された冷熱が、熱電変換器ユニットの熱電変換モジュールパネルに配設された、熱電変換モジュールの放熱側の熱交換基板へ供給される。また、VOC処理装置におけるVOCガスの燃焼処理によって発生する温熱が回収され、回収された温熱が、熱電変換器ユニットの熱電変換モジュールパネルに配設された、熱電変換モジュールの吸熱側の熱交換基板へ供給される。これにより、熱電変換モジュールでは発電が行われる。そのため、従来は利用されていなかった、VOC処理装置に配設された溶剤廃液処理装置において、溶剤廃液からVOCガスを気化蒸発させる際に、溶剤廃液から蒸発潜熱が奪われることに伴い発生する冷熱と、VOC処理装置に配設された廃ガス処理装置において、VOCガスの燃焼に伴い発生する温熱と、を併用して廃熱を電気エネルギーに変換して有効に活用することができる。
【0012】
また、前記熱電変換器ユニットは、少なくとも1つ以上の前記熱電変換モジュールパネルを有し、1つの熱電変換モジュールパネルの両面に、隔壁板または他の熱電変換モジュールパネルが、一定の間隔を保持して配設され、前記温熱媒体が、前記吸熱側の熱交換基板と接触するように前記温熱媒体流路が形成され、前記冷熱媒体が、前記放熱側の熱交換基板と接触するように前記冷熱媒体流路が形成されてなることが好ましい。
【0013】
なお、前記熱電変換器ユニットは、少なくとも1つ以上の前記熱電変換モジュールパネルを有し、前記温熱媒体流路の一部を内部に形成する中空の温熱交換器が前記吸熱側の熱交換基板に当接し、前記冷熱媒体流路の一部を内部に形成する中空の冷熱交換器が前記放熱側の熱交換基板に当接するようにしてもよい。上記VOC処理装置用熱利用装置が、温熱媒体流路が吸熱側の熱交換基板に当接し、冷熱媒体流路が放熱側の熱交換基板に当接するように構成されていれば、VOC処理装置で発生した温熱や冷熱が効率的に熱電変換モジュールへ伝達される。
【0014】
また、前記熱電変換器ユニットは、少なくとも2つ以上の前記熱電変換モジュールパネルを有し、該熱電変換モジュールパネルが、吸熱側の熱交換基板または放熱側の熱交換基板が対向するようにして一定の隙間を保持して積層されてなり、前記温熱媒体が、前記吸熱側の熱交換基板に接触するように前記温熱媒体流路が形成され、前記冷熱媒体が、前記放熱側の熱交換基板に接触するように前記冷熱媒体流路が形成されてなることが好ましい。上記VOC処理装置用熱利用装置がこのように構成されていれば、熱電変換モジュールの配置効率を高めて、熱電変換器ユニットを小型化することができる。
【0015】
また、前記熱電変換モジュールは、前記吸熱側の熱交換基板が前記温熱媒体と接触する状態で、且つ、前記放熱側の熱交換基板が前記冷熱媒体と接触する状態で配置されていてもよい。上記VOC処理装置用熱利用装置が、このように構成されていれば、熱電変換モジュールの両面の熱交換基板に、温熱媒体と冷熱媒体とがそれぞれに直接に接するため、優れた熱伝達効率を得ることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、VOC処理装置に配設された溶剤廃液処理装置において、溶剤廃液からVOCガスを気化蒸発させる際に、溶剤廃液から蒸発潜熱が奪われることに伴い発生する冷熱と、VOC処理装置に配設された廃ガス処理装置において、VOCガスの燃焼に伴い発生する温熱と、を併せて電気エネルギーに変換することにより有効に活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明のVOC処理装置用熱利用装置の、概略構成図である。
【図2】熱電変換モジュールの一例を示した、概略構成図である。
【図3】本発明に係わる熱電交換モジュールパネルにおける、熱電変換モジュールの配置例を示した、平面図である。
【図4】図3における、A−A矢視断面図である。
【図5】図4における、B部の拡大断面図である。
【図6】本発明に係わる熱電交換器ユニットの1例を示した、概略斜視図である。
【図7】(a)本発明に係わる熱電交換器ユニットの別の例を示した、概念的な断面図である。(b)図7(a)における、C−C矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<実施形態>
次に、本発明のVOC処理装置用熱利用装置について、図面に基づいて説明する。図1は、VOC処理装置1及びVOC処理装置用熱利用装置101を含む、熱回収利用システム200を示している。尚、以下で説明する実施形態は例示であり、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0019】
図1に示した、実施形態に係るVOC処理装置用熱利用装置101は、有機溶剤を使用するVOC発生設備10から排出されるVOCを含有する廃ガス、および溶剤廃液から気
化させたVOCガス、を燃焼処理するVOC処理装置1が発生する温熱、及びVOC処理装置1に付帯する溶剤廃液処理装置3が発生する冷熱を、それぞれ回収し利用する装置である。先ず、VOC処理装置1について説明する。
【0020】
<VOC処理装置の構成>
VOC処理装置1は、有機溶剤を使用するVOC発生設備10から排出される、VOCを含有する廃ガス50を燃焼処理する廃ガス処理装置2と、少なくともVOC発生設備10及び他の有機溶剤を使用する設備より排出される溶剤廃液52から気化させたVOCガスを、燃料として廃ガス処理装置2に供給する溶剤廃液処理装置3とを備える。VOC処理装置1で処理されるVOCの種類は、可燃性の有機溶剤であればよく、特に限定されない。
【0021】
可燃性の有機溶剤の具体的な例としては、トルエン、キシレン、ノルマルヘキサンなどの炭化水素系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸メトキシブチルなどのエステル系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶剤、メタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコール系溶剤、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、エチレングリコールジメチルエーテルなどのアルコールエーテル系溶剤、などの各種有機溶剤の蒸気が挙げられる。
【0022】
上記の廃ガス処理装置2には、マイクロガスタービンVOC処理装置、ボイラー、ガスタービン、蓄熱式脱臭装置(RTO)、レシプロエンジンなどが例示される。これらの廃ガス処理装置は、VOCガスの供給を受けて当該ガス中のVOCを燃焼処理することができる。例えば、廃ガス処理装置2が、ボイラーの場合には、VOCを含有する廃ガスを燃料として燃焼処理し、その熱エネルギーによって容器116内を循環する温熱媒体を加熱し、高温の温熱媒体を得る。廃ガス処理装置2が、VOCを含有する廃ガスを燃焼させることによって、VOCが水や二酸化炭素に分解され、大気放出が許容される形態にまで処理することが可能である。また、VOC発生設備10と廃ガス処理装置2との間には、VOCを含有する廃ガス50を、VOC発生設備10から該廃ガス処理装置2へ移送する廃ガス移送流路21が設けられている。更に、後述するように、廃ガス処理装置2には、溶剤廃液52から気化させたVOCガスが燃料として、溶剤廃液処理装置3から供給される。このため、廃ガス処理装置2は、VOCを含有する廃ガス50だけではなく、溶剤廃液処理装置3から気化させて供給されるVOCガスをも燃焼処理することが可能である。このVOCガスを燃焼する際に発生する熱は、後述する、実施形態に係るVOC処理装置用熱利用装置101の、温熱回収部105によって温熱として回収される。
【0023】
溶剤廃液処理装置3は、溶剤廃液容器31と、溶剤気化槽32と、排気ガス供給流路34と、VOCガス送出流路35とを有する。溶剤廃液容器31は、溶剤廃液52が貯留される。溶剤廃液52は、VOC発生設備10から排出される溶剤廃液に限定されず、他の有機溶剤を使用する設備から排出される溶剤廃液を含んでもよい。尚、溶剤廃液52には、1種類または複数種の有機溶剤が混合されていてもよい。溶剤廃液容器31と溶剤気化槽32は溶剤廃液移送流路36によって接続されており、該溶剤廃液移送流路36に設置されたポンプ39が動作することによって、溶剤廃液容器31から溶剤気化槽32へ溶剤廃液52が供給される。
【0024】
溶剤気化槽32の材質は、耐久性の観点からステンレスなどの耐食性を有する金属が好適である。また、溶剤気化槽32は、該溶剤気化槽32の内部の、溶剤廃液52の液面53の高さを検出するレベル計38を有する。制御部5は、レベル計38の検出結果に基づいて、ポンプ39の動作を制御する。尚、制御部5は、CPU、メモリ等を含むコンピュータと、コンピュータ上で実行されるプログラムによって実現することができる。制御部5は、レベル計38の検出結果がレベルY以下になった場合、ポンプ39を動作させ、溶
剤廃液容器31から溶剤気化槽32へ溶剤廃液52を供給する。そして、制御部5は、レベル計38の検出結果がレベルXからレベルYの間に達した場合、ポンプ39を停止させ、溶剤廃液容器31から溶剤気化槽32への溶剤廃液52の供給を停止する。
【0025】
排気ガス供給流路34は、廃ガス処理装置2から燃焼処理によって生じる排気ガス54を、溶剤気化槽32への吹き込み用の気体として供給する。また、溶剤気化槽32には、排気ガス供給流路34を介して供給される排気ガス54を溶剤廃液52中に吹き込む、排気ガス供給管40が取り付けられている。排気ガス供給管40の吹き出し口は、レベル計38のレベルYよりも低い位置に設けられ、溶剤廃液処理装置3の運転中は、常時、溶剤廃液52の液面53よりも下に位置している。排気ガス供給管40は、廃ガス処理装置2で生じる排気ガス54を溶剤気化槽32内の溶剤廃液52中に吹き込む。排気ガス54は、廃ガス処理装置2において燃焼処理されているため、VOCを含まず、かつ高温となっている。その結果、排気ガス54のVOCの分圧(VOCを含まないので実質的に0である。)と、排気ガス54の温度におけるVOCの飽和蒸気圧との差により、溶剤廃液52中のVOCが排気ガス54の泡中に気化する。この気化は、極めて短い時間で排気ガス54の温度におけるVOCの飽和蒸気圧に到達する。従って、排気ガス54の温度が高いほど、VOCの飽和蒸気圧が高くなるので、効率よく気化させることが可能である。尚、沸点が高い液体のVOCを蒸発させるわけではないので、排気ガス54の温度は、著しく高温とする必要はなく、溶剤廃液52中の有機溶剤の沸点以下でも十分である。また、溶剤廃液処理装置3は、溶剤廃液52からVOCを気化させる際に、精密な蒸留精製の操作と異なり、簡単な有機溶剤の蒸発操作であることから、溶剤廃液52中に、複数種の有機溶剤が混合されていても、一括、且つ連続的に有機溶剤を気化させることが可能である。
【0026】
更に、排気ガス54を、排気ガス供給管40から溶剤廃液52中に吹き込み、溶剤廃液52中のVOCが排気ガス54の泡中に気化することにより気化熱が、溶剤廃液52から奪われるため、溶剤廃液52の温度が低下し、冷熱が発生する。後述する、実施形態に係るVOC処理装置用熱利用装置101における冷熱回収部102によって、VOCが気化することにより溶剤廃液の温度を低下させて発生した冷熱が回収される。
【0027】
VOCガス送出流路35は、気化したVOCが滞留している溶剤気化槽32の上部空間と、廃ガス移送流路21の下流側とを接続する。気化したVOCが、VOC発生設備10から廃ガス処理装置2へ移送される廃ガス50と合流する。その結果、気化したVOCを、廃ガス処理装置2の燃料として利用することが可能となる。VOCガス送出流路35にはファン41が設けられている。ファン41が動作することによって、気化したVOCを溶剤気化槽32から引き出す吸引力を得ることが可能である。尚、排気ガス供給管40に供給されるガスは、排気ガス54が100%である必要はなく、供給される排気ガス54の温度を下げるために他の気体が混入されてもよい。混入される気体は、任意に選定できるが、通常は空気で十分である。そして、空気などの他の気体は、排気ガス供給流路34に図示しない分岐管を設けて混入させることができる。本明細書では、溶剤気化槽32の溶剤廃液52中のVOCを気化する際に用いる排気ガス54を気化用空気55と記載することがある。
【0028】
VOCガス送出流路35が、廃ガス移送流路21と接続される部分より下流(廃ガス処理装置2に近い側)には、廃ガス移送流路21を流れる廃ガス50中のVOC濃度を測定するガス濃度計42が設けられる。ガス濃度計42は、廃ガス50中のVOCと溶剤廃液52から気化したVOCとが混合した濃度を測定する位置に設置され、廃ガス処理装置2に供給されるVOCの総量をモニタリングすることが可能である。
【0029】
排気ガス供給流路34には、気化用空気55を廃ガス処理装置2から溶剤気化槽32に向けて送出するファン43が設けられている。制御部5は、ガス濃度計42の検出値に基
づき、排気ガス供給流路34に設けられたファン43の動作を制御する。制御部5は、ガス濃度計42の検出結果が設定されたVOC濃度より低下した場合、ファン43を動作させ、気化用空気55を溶剤気化槽32に供給して溶剤廃液52中でバブリングさせてVOCを気化させ、あるいは気化用空気55の供給量を増加させてVOCの気化量を増加させる。また、制御部5は、ガス濃度計42の検出結果が設定されたVOC濃度より上昇した場合、ファン43の動作を停止させ、気化用空気55の供給を停止してVOCの気化を停止させ、あるいはファン43の動作を弱めることにより、気化用空気55の供給量を減少させてVOCの気化量を減少させるようになっている。
【0030】
<VOC処理装置の使用方法>
次に、VOC処理装置1の、使用方法について説明する。有機溶剤は、種々の用途、例えば、接着剤、粘着剤、塗料等を製造するための原材料として幅広く用いられている。これらの用途において、有機溶剤を使用するVOC発生設備10としては、例えば、溶剤型塗料の塗工機、乾燥炉などが挙げられる。溶剤型塗料の塗工機、乾燥炉などから排出されるVOCは、塗膜の乾燥や硬化のために吹付けられる加熱された空気と混合した廃ガスとして、有機溶剤を使用するVOC発生設備10から排出される。排出されるVOCガスは、廃ガス移送流路21を介して廃ガス処理装置2に供給され、燃焼処理される。また、有機溶剤を使用するVOC発生設備10からは、塗工に使用した粘着剤組成物、樹脂等の固形分などの不純物が有機溶剤に混入した、溶剤廃液52が排出される。
【0031】
VOC処理装置1を運転する際に、先ず、制御部5によって、排気ガス供給流路34のファン43およびVOCガス送出流路35のファン41の運転が開始される。その結果、溶剤気化槽32に、排気ガス54の流れが形成される。制御部5は、レベル計38が検出する溶剤気化槽32内の溶剤廃液52の液面53がレベルY以下であると判断した場合、ポンプ39の運転を開始する。液面53が、レベルXからレベルYの間に到達するまで、溶剤廃液容器31に貯留された溶剤廃液52が、溶剤気化槽32に移送される。
【0032】
そして、廃ガス処理装置2が、VOCを含有する廃ガス中のVOCを燃焼処理し、レベル計38がレベルYの液面53の高さまで検出し、排気ガス供給流路34のファン43の運転により、溶剤廃液52に気化用空気55が吹き込まれる。気化用空気55の吹き込みにより、溶剤気化槽32内の溶剤廃液52中のVOCが、気化用空気55の泡中に気化する。そして、溶剤廃液52中のVOCが気化する際に気化熱が溶剤廃液52から奪われることにより、溶剤廃液52の温度が低下し、冷熱が発生する。また、排気ガス供給流路34のファン43およびVOCガス送出流路35のファン41の運転によって、既に、廃ガス50および排気ガス54の流れが形成されている。気化した溶剤廃液52中のVOCが、燃料送出流路35を介して廃ガス処理装置2に供給され、溶剤廃液52の燃焼処理が開始される。溶剤廃液52の燃焼処理が開始されたら、ガス濃度計42が、廃ガス処理装置2に送出されるガス中の、VOC濃度を監視する。
【0033】
廃ガス処理装置2および溶剤廃液処理装置3によって、溶剤廃液52の燃焼処理が進行すれば、液面53が低下する。そこで、制御部5は、レベル計38が検出する液面53の高さに基づき、ポンプ39を運転又は停止させ、溶剤気化槽32内の溶剤廃液52の液面53がレベルXとレベルYとの間に維持するように制御する。例えば、液面53の高さがレベルYまで低下した場合に、溶剤廃液容器31から溶剤気化槽32に、溶剤廃液52を補充する。
【0034】
廃ガス処理装置2に供給されるガスは、溶剤気化槽32から気化して送出されたVOCガスと、有機溶剤を使用するVOC発生設備10から排出される廃ガス50が混合されたものである。有機溶剤を使用するVOC発生設備10の稼働状況などにより、廃ガス50の排出量や含まれるVOCの濃度が変動する。従って、制御部5は、ガス濃度計42によ
って測定されたVOC濃度に基づき、溶剤気化槽32でのVOCの気化量をファン43により調節することによって、廃ガス処理装置2に供給される廃ガス50の排出量や廃ガス中のVOC濃度を、爆発防止等の安全性の観点から設定される範囲内に制御する。また、廃ガス処理装置2に好適なVOCの濃度や量となるように、制御することが可能である。
【0035】
VOC処理装置1の運転を停止する際、先ず、溶剤廃液処理装置3は、制御部5によって、排気ガス供給流路34のファン43を停止し、所定時間経過後に燃料送出流路35のファン41を停止する。溶剤廃液処理装置3の運転を停止した場合でも、廃ガス移送流路21は通じたままであるため、廃ガス処理装置2による廃ガス50の燃焼処理は、常時行うことが可能である。
【0036】
<VOC処理装置用熱利用装置の構成>
実施形態に係るVOC処理装置用熱利用装置101は、図1に示すように、冷熱回収部102と、冷熱媒体貯蔵タンク103(冷熱蓄熱部)と、温熱回収部105と、温熱媒体貯蔵タンク106(温熱蓄熱部)と、図2に示した熱電変換モジュール110が複数配設された熱電変換モジュールパネル140とが組み込まれてなる、熱電変換器ユニット109とを主な構成とする。
【0037】
また、熱電変換モジュール110は、図2に示すように、半導体材料で形成したP型の熱電変換材料とN型の熱電変換材料とからなる熱電変換素子130を、平面状に2次元的配列で複数枚並べて、起電力の取出し端子131を配設し、2枚の平板状の熱交換基板である吸熱側の熱交換基板132と、放熱側の熱交換基板133とで挟み、封止材134にて密封したものである。平板状に形成された熱電変換モジュール110の、一方の吸熱側の熱交換基板132を加熱し、同時に、他方の放熱側の熱交換基板133を冷却すると、ゼーベック効果により起電力が発生し、起電力の取出し端子131から外部に起電力を取り出すことが可能である。
【0038】
また、図3に、熱電変換モジュールパネル140における、熱電変換モジュール110の配置例を、平面図で示した。熱電変換モジュールパネル140は、熱電変換モジュールパネルの外枠141の中に、熱電変換モジュール110が、2次元的に配列されて構成されている。熱電変換モジュール110の配置間隔には、特に制限はなく、熱電変換モジュールの起電力取り出し端子から、電気配線を引き回すのに必要なスペースを確保できるように、任意の配置間隔とすることができる。
【0039】
図3における、A−A矢視断面を、図4の断面図に示した。さらに、図4の断面図における、B部の拡大断面図を図5に示した。図4及び図5の断面図において、それぞれの熱電変換モジュール110は、熱電変換モジュールパネルの外枠141に、一定の間隔を開けるように配設されて嵌め込まれ、接着剤142にて封止されている。熱電変換モジュール110の両表面である、吸熱側の熱交換基板と放熱側の熱交換基板は、露出面となっていて、それぞれ、温熱媒体と冷熱媒体に接触するようになっている。各熱電変換モジュール110で発電された起電力は、起電力の取り出し端子131から引き出した配線により、熱電変換モジュールパネルの外部に取り出すことができる。
【0040】
また、このような熱電変換モジュールパネル140が、1つ以上組み込まれた熱電交換器ユニットの例を、図6の概略斜視図、及び図7(a),(b)の概念的な断面図に示し
た。
【0041】
図6に示した熱電変換器ユニット109では、複数の熱電変換モジュール110が、平面状に2次元配列で複数枚並べて配設してなる、熱電変換モジュールパネル140が、1つ組み込まれている。熱電変換モジュールパネル140に配設された、熱電変換モジュー
ル110の両表面は、吸熱側の熱交換基板(図5では上面)と放熱側の熱交換基板(図5では下面)とになっている。吸熱側の熱交換基板と放熱側の熱交換基板は、それぞれ、温熱側ジャケットと冷熱側ジャケットを通して導入される温熱媒体と冷熱媒体とに直接に接触して、加熱及び冷却の作用を受ける。
【0042】
図7(a)、(b)には、熱電変換モジュールパネル140が、4つ組み込まれている熱電変換器ユニット109の例を、概念的な断面図を用いて、温熱媒体及び冷熱媒体の各流路が分かるように示した。本発明においては、熱電変換器ユニット109に組み込まれる、熱電変換モジュールパネル140の数量には、特に制限がない。また、1つの熱電変換モジュールパネル140に配設される、熱電変換モジュール110の数量にも、特に制限はない。必要とされる、熱電変換器ユニット109の熱電変換容量に応じて、適宜、熱電変換モジュールパネル140及び熱電変換モジュール110の数量を決定することができる。
【0043】
また、図7(a)は、本発明に係わる熱電変換器ユニット109の例を、1つの方向から見た概念的な断面図である。図7(b)は、図7(a)における、C−C矢視断面図である。図7(a)、(b)において、熱電変換モジュールパネルが、吸熱側の熱交換基板または放熱側の熱交換基板が対向するようにして一定の隙間を保持して積層されてなり、前記温熱媒体が、前記吸熱側の熱交換基板132に接触するように前記温熱媒体流路が形成され、前記冷熱媒体が、前記放熱側の熱交換基板133に接触するように前記冷熱媒体流路が形成されているのが分かる。
【0044】
また、熱電変換器ユニット109の内容積に比べて、循環している温熱媒体、及び冷熱媒体の流量が少ないと、熱媒体の流れが偏流を起こして温度分布ができるため、熱電変換効率が低下する。熱媒体及び冷熱媒体の偏流を防ぐには、必要に応じて、熱電変換器ユニット109の内部に、多孔板などの整流手段を配設するのが好ましい。
【0045】
また、図6の概略斜視図、及び図7(a),(b)の概念的な断面図には、温熱媒体が吸熱側の熱交換基板に接触し、また、冷熱媒体が放熱側の熱交換基板に接触している、本発明に係わる熱電変換器ユニットの例を示した。
【0046】
また、少なくとも1つ以上の前記熱電変換モジュールパネルを有し、前記温熱媒体流路の一部を内部に形成する中空の温熱交換器が前記吸熱側の熱交換基板に当接し、前記冷熱媒体流路の一部を内部に形成する中空の冷熱交換器が前記放熱側の熱交換基板に当接している熱電変換器ユニットを用いてもよい。
【0047】
また、熱電変換モジュールは、一般に市販されている製品を使用することができる。具体的には、(株)KELKより販売されているコマツ製のBiTe系の熱電変換モジュー
ル、Hi−Z Technology,Inc.(米国)製のBiTe系の熱電変換モジュ
ール、(株)フェローテックより販売されているNORD社(ロシア)製のBiTe系の
発電サーモモジュールなどを用いることができる。
【0048】
冷熱回収部102は、溶剤気化槽32内の溶剤廃液からVOCを気化させる際に、気化熱が奪われることによって、溶剤廃液の温度が低下することで発生する冷熱を、冷熱媒体に蓄熱して回収する。実施形態1の冷熱回収部102は、少なくとも溶剤廃液52の液面53が到達する部分の溶剤気化槽32の外面を囲い、その内部に冷熱媒体が流れる冷熱媒体用流路が形成された冷熱回収ジャケットからなる。また、冷熱回収部102は、溶剤気化槽32の内部に配設した、冷熱媒体が内部を通る蛇管でもよく、さらには、冷熱回収ジャケットと蛇管との併用でもよい。冷熱回収部102は、溶剤気化槽32の内部の溶剤廃液と、冷熱媒体との熱交換を行なう。冷熱回収部102において冷却された冷熱媒体は、
後述する冷熱媒体貯蔵タンク103および冷熱側ジャケット114へ供給される。尚、冷熱媒体は、経済性や安全性の点から水が好適に使用できるが、水に限定されず、溶剤廃液処理装置3からの冷熱を伝えることが可能なものであればよく、特に限定されない。
【0049】
冷熱媒体の温度が、氷点下よりも低下する可能性があることを想定すると、冷熱媒体の凝固点温度が0℃よりも低いことが好ましい。普通の水道水に、エチレングリコール、プロピレングリコールなどの氷結防止剤、腐食防止剤などを添加し、凝固点温度を0℃〜−30℃となるように調整すると共に金属配管の腐食を防止できるようにした、一般に市販されている冷媒(ブラインとも呼ばれる)を使用してもよい。
【0050】
また、冷熱回収部102は、気化熱により温度が低下した溶剤気化槽32内の溶剤廃液52が有する冷熱を冷熱媒体に蓄積して回収することができればよく、上記形態に限定されない。例えば、冷熱回収部102は、冷熱媒体が溶剤気化槽32内の溶剤廃液52と混合しないように、冷熱媒体用流路が溶剤気化槽32の中に設けられる構成でもよい。
【0051】
冷熱媒体貯蔵タンク103は、冷熱媒体貯蔵流路111によって冷熱回収部102と接続されており、冷熱回収部102において冷却された冷熱媒体を貯蔵する。冷熱媒体貯蔵タンク103は、断熱性能を有しており、冷熱媒体貯蔵タンク103内の熱媒体を保冷しておくことができる。また、冷熱媒体貯蔵タンク103は、還り冷熱媒体流路115によって、後述する冷熱側ジャケット114と接続されており、冷熱側ジャケット114において熱交換が終わった還り冷熱媒体を貯蔵する。また、冷熱媒体貯蔵タンク103には、冷熱回収部102へ繋がる冷熱媒体供給流路112が接続されている。冷熱媒体貯蔵タンク103には、冷熱回収部102において冷却された冷熱媒体111と、冷熱側ジャケット114において熱交換が終わった還り冷熱媒体流路115とが混合した冷熱媒体が流れる。すなわち、混合した冷熱媒体は、冷熱媒体供給流路112によって冷熱媒体貯蔵タンク103から冷熱回収部102へ戻すことができる。尚、実施形態に係るVOC処理装置用熱利用装置101は、冷熱媒体貯蔵タンク103に貯蔵されている冷熱媒体を冷熱側ジャケット114へ直接供給する構成(図示を省略)としてもよいし、冷熱回収部102と冷熱側ジャケット114とを直接循環する構成(図示を省略)としても良い。
【0052】
冷熱側ジャケット114に導入された冷熱媒体は、熱電変換モジュールパネル140に配設された熱電変換モジュール110の放熱側の熱交換基板との間で熱交換を行う。これにより、熱電変換モジュール110の放熱側の熱交換基板が冷却される。冷熱側ジャケット114には、冷熱回収部102において冷却された冷熱媒体が流れる冷熱媒体供給流路113が接続されている。なお、冷熱媒体供給流路113には、平均で5℃から7℃程度の冷熱媒体が流れるのが、熱電変換モジュールの熱電変換効率を高める上で好ましい。冷熱回収部102の近傍の冷熱媒体供給流路113を流れる冷熱媒体の温度は、1℃から2℃になることもある。これら冷熱媒体の温度は例示であり、冷熱側ジャケット114において熱交換の終わった還り冷熱媒体は、還り冷熱媒体流路115を流れて冷熱媒体貯蔵タンク103へ移送される。
【0053】
<冷却系循環路における冷熱媒体の流れ>
以上により、実施形態に係るVOC処理装置用熱利用装置101では、冷熱回収部102において冷却された冷熱媒体が、冷熱媒体供給流路113を通って冷熱側ジャケット114へ供給される。冷熱側ジャケット114において熱交換が終わった還り冷熱媒体は、還り冷熱媒体流路115を通って冷熱媒体貯蔵タンク103へ移送される。冷熱媒体貯蔵タンク103で貯蔵された冷熱媒体は、冷熱媒体供給流路112を通って冷熱回収部102へ戻され、再び循環させることが可能である。本明細書では、この冷熱媒体の循環路を、熱電変換モジュール110の放熱側の熱交換基板を冷やすことが可能な冷却系循環路と称する。また、実施形態に係るVOC処理装置用熱利用装置101では、冷熱回収部10
2において冷却された冷熱媒体が冷熱媒体貯蔵流路111を通って冷熱媒体貯蔵タンク103へ移送される。冷熱媒体貯蔵タンク103で貯蔵された冷熱媒体は、冷熱媒体供給流路112を通って冷熱回収部102へ戻され、冷却系循環路とは別の循環路で循環させることが可能である。本明細書では、この冷熱媒体の循環路を、冷熱を蓄えることが可能な冷熱蓄熱系循環路と称する。
【0054】
次に、温熱回収部105について説明する。温熱回収部105は、廃ガス処理装置2から発生する温熱を温熱媒体に蓄積して回収する。実施形態に係る温熱回収部105は、廃ガス処理装置2内において温熱媒体を保有する容器116に相当する。廃ガス処理装置2は、上述したように、廃ガス50を燃料として、例えば、数百度の温度(500〜800℃程度)で燃焼させ、その熱エネルギーによって容器116内の温熱媒体を加熱する。温熱回収部105は、温熱媒体が流れる温熱媒体貯蔵流路117により、温熱媒体貯蔵タンク106に接続されている。温熱媒体は水(温水)に限定されず、冷熱回収部102と同様に、廃ガス処理装置2からの温熱を蓄熱して移送することが可能なものであればよく、特に限定されない。
【0055】
温熱媒体の使用温度が、50℃〜100℃程度までならば、安全性や管理のし易さの点から温水を使用するのが好ましい。また、温熱媒体の使用温度が、100℃〜300℃程度ならば、一般に市販されている炭化水素系の温熱媒体油を使用することもできる。
【0056】
また、温熱回収部105は、廃ガス処理装置2からの温熱を温熱媒体に蓄積させて回収することができればよく、上記形態に限定されない。
【0057】
温熱媒体貯蔵タンク106は、温熱媒体貯蔵流路117によって温熱回収部105と接続されており、温熱回収部105において加熱された温熱媒体を貯蔵する。温熱媒体貯蔵タンク106は、断熱性能を有しており、温熱媒体貯蔵タンク106内の温熱媒体を保温できる。また、温熱媒体貯蔵タンク106は、還り温熱媒体流路121によって、後述する温熱側ジャケット120と接続されており、温熱側ジャケット120において熱交換が終わった還り温熱媒体を貯蔵する。また、温熱媒体貯蔵タンク106には、温熱回収部105へ繋がる温熱媒体供給流路118が接続されている。温熱媒体貯蔵タンク106には、温熱回収部105において加熱された温熱媒体と、温熱側ジャケット120において熱交換が終わった還り温熱媒体とが混合した温熱媒体が流れる。すなわち、混合した温熱媒体は、温熱媒体供給流路118によって温熱媒体貯蔵タンク106から温熱回収部105へ戻すことができる。尚、実施形態に係るVOC処理装置用熱利用装置101は、温熱媒体貯蔵タンク106に貯蔵されている温熱媒体を温熱側ジャケット120へ直接供給する構成(図示を省略)としてもよいし、温熱回収部105と温熱側ジャケット120とを直接循環する構成(図示を省略)としても良い。
【0058】
温熱側ジャケット120に導入された温熱媒体は、熱電変換モジュールパネル140に配設された熱電変換モジュール110の吸熱側の熱交換基板との間で熱交換を行う。これにより、熱電変換モジュール110の吸熱側の熱交換基板が暖められる。温熱側ジャケット120は、温熱回収部105において加熱された温熱媒体が温熱媒体供給流路119を通って供給される。なお、温熱媒体供給流路119には、約80℃から90℃の温熱媒体が流れるのが熱電変換モジュールの熱電変換効率を高める上で好ましい。温熱側ジャケット120において熱交換の終わった還り温熱媒体は、還り温熱媒体流路121を流れて温熱媒体貯蔵タンク106へ移送される。
【0059】
<加熱系循環路における温熱媒体の流れ>
以上により、実施形態に係るVOC処理装置用熱利用装置101では、温熱回収部105において温度の上昇した温熱媒体が、温熱媒体供給流路119を通って温熱側ジャケッ
ト120へ供給される。温熱側ジャケット120において熱交換が終わった還り温熱媒体は、還り温熱媒体流路121を通って温熱媒体貯蔵タンク106へ移送される。温熱媒体貯蔵タンク106で貯蔵された温熱媒体は、温熱媒体供給流路118を通って温熱回収部105へ戻され、再び循環させることが可能である。本明細書では、この温熱媒体の循環路を、熱電変換モジュール110の吸熱側の熱交換基板を暖めることが可能な加熱系循環路と称する。また、実施形態に係るVOC処理装置用熱利用装置101では、温熱回収部105において温度の上昇した温熱媒体が温熱媒体貯蔵流路117を通って温熱媒体貯蔵タンク106へ移送される。温熱媒体貯蔵タンク106で貯蔵された温熱媒体は、温熱媒体供給流路118を通って温熱回収部105へ戻され、加熱系循環路とは別の循環路で温熱媒体を循環させることが可能である。本明細書では、この温熱媒体の循環路を、温熱を蓄えることが可能な温熱蓄熱系循環路と称する。
【0060】
冷熱媒体が流れる冷熱側ジャケット114と温熱媒体が流れる温熱側ジャケット120とによって挟まれる熱電変換モジュールパネル140では、熱電変換モジュールの放熱側の熱交換基板が、冷熱側ジャケット114に導入された冷熱媒体によって冷却され、同時に、吸熱側の熱交換基板が温熱側ジャケット120に導入された温熱媒体によって加熱されることにより、熱電変換により発電が行われる。熱電変換モジュール110で発電された電力を、起電力の取り出し端子から取り出し、各種の電気機器に用いることにより、VOC処理装置1から排出される温熱と冷熱の有効利用が図られる。
【0061】
本発明に係わる熱電変換器ユニット109の構成の1例を図6に示す。熱電変換器ユニット109は、図6に示すように、温熱媒体が導入される温熱側ジャケット120、および、冷熱媒体が導入される冷熱側ジャケット114により、熱電変換モジュールパネル140を挟むように構成されている。冷熱側ジャケット114内に形成されている流路を流れる冷熱媒体の冷熱が、熱電変換モジュール110の放熱側の熱交換基板を冷却し、温熱側ジャケット120内に形成されている流路を流れる温熱媒体の温熱が、熱電変換モジュール110の吸熱側の熱交換基板を加熱する。これにより、熱電変換モジュール110で発電が行われる。
【0062】
<作用効果>
以上説明した、実施形態1に係るVOC処理装置1、及びVOC処理装置用熱利用装置101を含む熱回収利用システム200によれば、VOC処理装置1で発生する溶剤廃液から、VOCガスを気化蒸発させる際に発生する冷熱が、冷熱媒体に蓄積して回収される。回収された冷熱が、冷熱媒体によって、熱電変換モジュール110の放熱側の熱交換基板を冷却するために、熱電交換器ユニット109へ供給される。また、VOC処理装置におけるVOCガスの燃焼処理によって発生する温熱が、温熱媒体に蓄積して回収され、回収された温熱が、温熱媒体によって、熱電変換モジュール110の吸熱側の熱交換基板を加熱するための温熱側ジャケット120へ供給される。これにより、熱電変換モジュール110で発電が行われるため、従来利用されていなかったVOC処理装置1からの温熱と冷熱とを利用して、電気エネルギーとして回収でき、有効活用を図ることができる。熱電変換モジュール110で発電した電力は、種々の用途に用いることができる。例えば、水の電気分解に利用し、水の電気分解によって生成される水素ガスを貯蔵しておけば、貯蔵した水素ガスから電力を得たい場合に燃料電池を使って電力を得ることができる。また、冷熱媒体貯蔵タンク103や温熱媒体貯蔵タンク106を備えることで、例えば発電要求が無い場合には、回収した冷熱や温熱を一時的に蓄えることが可能となる。
【符号の説明】
【0063】
1・・・VOC処理装置
2・・・廃ガス処理装置
21・・・廃ガス移送流路
3・・・溶剤廃液処理装置
31・・・溶剤廃液容器
32・・・溶剤気化槽
34・・・排気ガス供給流路
35・・・VOCガス送出流路
36・・・溶剤廃液移送流路
40・・・排気ガス供給管
10・・・VOC発生設備
101・・・VOC処理装置用熱利用装置
102・・・冷熱回収部
103・・・冷熱媒体貯蔵タンク
105・・・温熱回収部
106・・・温熱媒体貯蔵タンク
109・・・熱電変換器ユニット
110・・・熱電変換モジュール
111・・・冷熱媒体貯蔵流路
112,113・・・冷熱媒体供給流路
114・・・冷熱側ジャケット
115・・・還り冷熱媒体流路
116・・・容器
117・・・温熱媒体貯蔵流路
118,119・・・温熱媒体供給流路
120・・・温熱側ジャケット
121・・・還り温熱媒体流路
130・・・熱電変換素子
131・・・起電力の取出し端子
132・・・吸熱側の熱交換基板
133・・・放熱側の熱交換基板
134・・・封止材
140・・・熱電変換モジュールパネル
141・・・熱電変換モジュールパネルの外枠
142・・・接着剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機溶剤を含有する溶剤廃液に含まれるVOCを燃焼処理する廃ガス処理装置と、前記溶剤廃液からVOCを気化させて燃料として前記廃ガス処理装置へ供給する溶剤廃液処理装置とを有するVOC処理装置から排出される温熱と、冷熱とを利用するVOC処理装置用熱利用装置であって、
少なくとも1つ以上の、吸熱側の熱交換基板と放熱側の熱交換基板と起電力の取出し端子とを有する熱電変換モジュールが、配設されてなる熱電変換モジュールパネルを有する熱電変換器ユニットと、前記VOCの燃焼に伴う温熱を温熱媒体に蓄熱させ、前記廃ガス処理装置から前記熱電変換モジュールの吸熱側の熱交換基板へ向けて、前記温熱媒体が流れる温熱媒体流路と、前記VOCの気化に伴う冷熱を冷熱媒体に蓄熱させ、前記溶剤廃液処理装置から前記熱電変換モジュールパネルの放熱側の熱交換基板へ向けて、前記冷熱媒体が流れる冷熱媒体流路と、を備えることを特徴とするVOC処理装置用熱利用装置。
【請求項2】
前記熱電変換器ユニットは、少なくとも1つ以上の前記熱電変換モジュールパネルを有し、1つの熱電変換モジュールパネルの両面に、隔壁板または他の熱電変換モジュールパネルが、一定の間隔を保持して配設され、前記温熱媒体が、前記吸熱側の熱交換基板と接触するように前記温熱媒体流路が形成され、前記冷熱媒体が、前記放熱側の熱交換基板と接触するように前記冷熱媒体流路が形成されてなることを特徴とする、請求項1に記載のVOC処理装置用熱利用装置。
【請求項3】
前記熱電変換器ユニットは、少なくとも1つ以上の前記熱電変換モジュールパネルを有し、前記温熱媒体流路の一部を内部に形成する中空の温熱交換器が前記吸熱側の熱交換基板に当接し、前記冷熱媒体流路の一部を内部に形成する中空の冷熱交換器が前記放熱側の熱交換基板に当接していることを特徴とする、請求項1に記載のVOC処理装置用熱利用装置。
【請求項4】
前記熱電変換器ユニットは、少なくとも2つ以上の前記熱電変換モジュールパネルを有し、該熱電変換モジュールパネルが、吸熱側の熱交換基板または放熱側の熱交換基板が対向するようにして一定の隙間を保持して積層されてなり、前記温熱媒体が、前記吸熱側の熱交換基板に接触するように前記温熱媒体流路が形成され、前記冷熱媒体が、前記放熱側の熱交換基板に接触するように前記冷熱媒体流路が形成されてなることを特徴とする、請求項1に記載のVOC処理装置用熱利用装置。
【請求項5】
前記熱電変換モジュールは、前記吸熱側の熱交換基板が前記温熱媒体と接触する状態で、且つ、前記放熱側の熱交換基板が前記冷熱媒体と接触する状態で配置されていることを特徴とする、請求項1に記載のVOC処理装置用熱利用装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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