説明

W/O/W型ピッケリングエマルション

【課題】界面活性剤を使用するまでもなく、1段階の乳化工程のみでも調製することができ、しかも生成率が高く、同時に長期間の安定性にも優れたW/O/W型ピッケリングエマルションを提供する。
【解決手段】内部に水相の粒子を閉じ込めた油相の粒子が水相中に分散した状態のW/O/W型ピッケリングエマルションにおいて、油相とその両側の水相との界面に特定の中空半球状有機シリコーン微粒子を含有する有機シリコーン微粒子を局在させ、且つ水相を40〜80質量%、油相を10〜50質量%及び有機シリコーン微粒子を10〜20質量%(合計100質量%)の割合で含有して成るものとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はW/O/W型(水中油中水型)ピッケリングエマルションに関する。エマルションとして、O/W型(水中油型)エマルションやW/O型(油中水型)エマルションの他に、W/O/W型エマルションが知られている。W/O/W型エマルションは、O/W型エマルションやW/O型エマルションと比較して、保存安定性のよい薬剤や使用感の良好な化粧料等が得られることから、これらの分野へのその利用が注目されている。本発明はかかるW/O/W型エマルションに関し、なかでも有機シリコーン微粒子を含有するW/O/W型ピッケリングエマルションに関する。
【背景技術】
【0002】
W/O/W型エマルションは、一般に2段階乳化法により調製されている。この2段階乳化法は、水相、界面活性剤(乳化剤)及び油相を激しく撹拌してW/O型エマルションを調製する1次乳化工程と、更に該W/O型エマルションを別種の界面活性剤を溶解した水相中に撹拌しながら加える2次乳化工程とからなる複合方法である。かかる2段階乳化法では、界面活性剤の配合、油相の特性、機械的剪断力、相の体積率、水溶性添加剤の導入等を考慮する必要があり、なかでも界面活性剤の種類や量が、得られるW/O/W型エマルションの品質や安定性に大きく影響する。通常、W/O/W型エマルションを形成するためには、2種又はそれ以上の界面活性剤を使用していて、1次乳化工程のW/O型エマルションを調製するために第1の界面活性剤を使用し、また第1の界面活性剤とは異なる第2の界面活性剤を2次乳化工程のW/O/W型エマルションの調製に使用している。
【0003】
従来から、W/O/W型エマルションを安定化させるために、多量の界面活性剤や安定剤を使用したり、また内油相量を増加する方法が検討されてきた。しかし、このような方法で安定化を図った場合、得られるW/O/W型エマルションが使用感の重いべた付いたものになり、また皮膚への刺激を増すことが危惧されるため、皮膚外用薬剤や化粧料等、最終製品の用途との関係で好ましくない。更に2次乳化工程で、W/O型エマルションの油相の一部が外水相中の親水性界面活性剤によって可溶化されるため、W/O型エマルションが破壊されやすく、結果として安定性に優れたW/O/W型複合エマルションを高い生成率で得ることが困難である。
【0004】
従来、使用感を改善し、また安定性を改善したW/O/W型エマルションとしては、ゲル状ポリマーを用いたもの(例えば特許文献1参照)、特定の界面活性剤を用いたもの(例えば特許文献2〜4参照)、外水相に増粘剤として水溶性多糖類を用いたもの(例えば特許文献5参照)、外水相に高級アルコールを用いてゲルのネットワーク構造を与えたもの(例えば特許文献6参照)等が知られている。
【0005】
しかし、前記のような従来のW/O/W型エマルションには、概してその生成率が低く、使用感や安定性に劣るという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−33391号公報
【特許文献2】特開昭60−183031号公報
【特許文献3】特開昭60−199833号公報
【特許文献4】特開2001−25360号公報
【特許文献5】特開昭58−183611号公報
【特許文献6】特開昭64−1173号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、界面活性剤を使用するまでもなく、1段階の乳化工程のみでも調製することができるW/O/W型ピッケリングエマルションであって、生成率が高く、同時に長期間の安定性に優れたW/O/W型ピッケリングエマルションを提供する処にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記の課題を解決すべく研究した結果、W/O/W型ピッケリングエマルションとしては、特定の形状を有する有機シリコーン微粒子と、水相と、油相とが所定割合から成るものが正しく好適であることを見出した。
【0009】
すなわち本発明は、内部に水相の粒子を閉じ込めた油相の粒子が水相中に分散した状態のW/O/W型ピッケリングエマルションにおいて、油相とその両側の水相との界面に下記の中空半球状有機シリコーン微粒子を含有する有機シリコーン微粒子が局在しており、且つ水相を40〜80質量%、油相を10〜50質量%及び有機シリコーン微粒子を10〜20質量%(合計100質量%)の割合で含有して成ることを特徴とするW/O/W型ピッケリングエマルションに係る。
【0010】
中空半球状有機シリコーン微粒子:ポリシロキサン架橋構造体から成る有機シリコーン微粒子であって、縦断面で見て内側小劣弧(11)とこれを覆う外側大劣弧(21)と双方の端部間に渡る稜線(31)とで形成された、全体としては中空半球状体様を呈し、内側小劣弧(11)の端部間の幅(W)の平均値が0.01〜9.5μm、外側大劣弧(21)の端部間の幅(W)の平均値が0.05〜10μm、且つ外側大劣弧(21)の高さ(H)の平均値が0.015〜9μmの範囲内にある有機シリコーン微粒子。
【0011】
本発明に係るW/O/W型ピッケリングエマルション(以下、本発明のエマルションという)は、有機シリコーン微粒子、油相及び水相から成り、内部に水相の粒子を閉じ込めた油相の粒子が水相中に分散した状態のW/O/W型ピッケリングエマルションにおいて、油相とその両側の水相との界面に前記したような特定の形状の有機シリコーン微粒子を含有する有機シリコーン微粒子が局在し、且つ水相と油相と有機シリコーン微粒子とが前記した所定割合から成るものである。
【0012】
本発明のエマルションに供する有機シリコーン微粒子は、前記したような中空半球状有機シリコーン微粒子を含有するものであるが、なかでも該中空半球状有機シリコーン微粒子を20質量%以上含有するものが好ましく、50質量%以上含有するものより好ましい。中空半球状有機シリコーン微粒子以外の他の有機シリコーン微粒子としては、球状有機シリコーン微粒子の他に、いずれもそれ自体は公知の、ゴルフボール状のもの(特開2000−191788号公報)、断面馬蹄形のもの(特開2000−191789号公報)、ラグビーボール形のもの(特開2003−171465号公報)、円形リング形のもの(特開2006−117867号公報)等、各種の異形有機シリコーン微粒子が挙げられる。
【0013】
本発明のエマルションに供する中空半球状有機シリコーン微粒子は、ポリシロキサン架橋構造体からなるもので、それ自体は既に知られているものである(特開2009−114330号公報)。このポリシロキサン架橋構造体は、シロキサン単位が3次元の網目構造を形成した構造体である。ポリシロキサン架橋構造体を構成するシロキサン単位は特に制限されないが、かかるシロキサン単位としては、下記の化1で示されるシロキサン単位と化2で示されるシロキサン単位が好ましい。
【0014】
【化1】

【0015】
【化2】

【0016】
化2において、
:ケイ素原子に直結した炭素数1〜4の有機基又はフェニル基
【0017】
化2で示されるシロキサン単位において、化2中のRは、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等いずれもケイ素原子に直結した炭素数1〜4の有機基又はフェニル基であるが、なかでもメチル基が好ましい。したがって、化2で示されるシロキサン単位としては、メチルシロキサン単位、エチルシロキサン単位、プロピルシロキサン単位、ブチルシロキサン単位、フェニルシロキサン単位等が挙げられるが、なかでもメチルシロキサン単位が好ましい。
【0018】
ポリシロキサン架橋構造体を前記したようなシロキサン単位で構成する場合、化1で示されるシロキサン単位/化2で示されるシロキサン単位=30/70〜70/30(モル比)の割合で有するものが好ましい。
【0019】
本発明のエマルションに供する中空半球状有機シリコーン微粒子は、下記の化3で示されるシラノール基形成性ケイ素化合物と下記の化4で示されるシラノール基形成性ケイ素化合物とを、化3で示されるシラノール基形成性ケイ素化合物/化4で示されるシラノール基形成性ケイ素化合物=30/70〜70/30(モル比)の割合で用い、これらを触媒存在下で水と接触させて加水分解することによりシラノール化合物を生成させ、引き続き生成させたシラノール化合物を縮合反応させることにより得ることができる。
【0020】
【化3】

【0021】
【化4】

【0022】
化3,化4において、
:ケイ素原子に直結した炭素数1〜4の有機基又はフェニル基
X,Y:炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数1〜4のアルコキシ基を有するアルコキシエトキシ基、炭素数2〜4のアシロキシ基、炭素数1〜4のアルキル基を有するN,N−ジアルキルアミノ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子又は水素原子
【0023】
化3で示されるシラノール基形成性ケイ素化合物は、結果として化1で示されるシロキサン単位を形成することとなる化合物である。また化4で示されるシラノール基形成性ケイ素化合物は、結果として化2で示されるシロキサン単位を形成することとなる化合物である。化3中のX及び化4中のYは、1)メトキシ基やエトキシ基等の、炭素数1〜4のアルコキシ基、2)メトキシエトキシ基やブトキシエトキシ基等の、炭素数1〜4のアルコキシ基を有するアルコキシエトキシ基、3)アセトキシ基やプロピオキシ基等の、炭素数2〜4のアシロキシ基、4)ジメチルアミノ基やジエチルアミノ基等の、炭素数1〜4のアルキル基を有するN,N−ジアルキルアミノ基、5)ヒドロキシル基、6)塩素原子や臭素原子等のハロゲン原子、又は7)水素原子である。
【0024】
化4中のRは、ケイ素原子に直結した炭素数1〜4の有機基又はフェニル基であり、化2のRについて前記したことと同様である。
【0025】
化4で示されるシラノール基形成性ケイ素化合物としては、メチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリブトシキシラン、ブチルトリブトキシシラン、フェニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、メチルトリス(2−ブトキシエトキシ)シラン、メチルトリアセトキシシラン、メチルトリプロピオキシシラン、メチルシラントリオール、メチルクロルジシラノール、メチルトリクロルシラン、メチルトリハイドロジェンシラン等、化2中のRについて前記したように、結果としてメチルシロキサン単位、エチルシロキサン単位、プロピルシロキサン単位、ブチルシロキサン単位又はフェニルシロキサン単位を形成することとなるシラノール基形成性ケイ素化合物が挙げられるが、なかでもメチルシロキサン単位を形成することとなるシラノール基形成性ケイ素化合物が好ましい。
【0026】
本発明のエマルションに供する中空半球状有機シリコーン微粒子の製造では、以上説明した化3で示されるシラノール基形成性ケイ素化合物と化4で示されるシラノール基形成性化合物とを、化3で示されるシラノール基形成性ケイ素化合物/化4で示されるシラノール基形成性化合物=30/70〜70/30(モル比)の割合で用い、双方を触媒存在下で、水と接触させて加水分解し、シラノール化合物を生成させるが、ここで加水分解するための触媒は従来公知のものを用いることができる。これには例えば、塩基性触媒として、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、アンモニア等の無機塩基類や、トリメチルアミン、トリエチルアミン、テトラエチルアンモニウムハイドロオキサイド、ドデシルジメチルヒドロキシエチルアンモニウムハイドロオキサイド、ナトリウムメトキシド等の有機塩基類が挙げられる。また酸性触媒としては、塩酸、硫酸、リン酸等の無機酸類や、酢酸、クエン酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ドデシルスルホン酸等の有機酸類が挙げられる。
【0027】
化3で示されるシラノール基形成性ケイ素化合物と化4で示されるシラノール基形成性化合物とを、触媒存在下で、水と接触させて加水分解する場合、通常、水にシラノール基形成性ケイ素化合物と触媒とを加えて攪拌し、水に不溶のシラノール基形成性化合物が反応系から消失して均一な液層が形成された時点を加水分解の終点とする。シラノール基形成性ケイ素化合物の種類により、本来的な加水分解反応性の他に、水に対する分散性の差に基づく加水分解反応性が異なるため、反応系に加える触媒の種類、その使用量及び反応温度等を適宜選択するが、シラノール基形成性ケイ素化合物と水との接触反応を容易にするため、反応系に界面活性剤を加えることもできる。
【0028】
触媒と共に反応系に加える界面活性剤としては、いずれも公知のノニオン性界面活性剤及び/又はアニオン性界面活性剤が使用できる。ノニオン性界面活性剤としては、オキシアルキレン基としてオキシエチレン基及び/又はオキシプロピレン基を有するα−アルキル−ω−ヒドロキシ(ポリオキシアルキレン)、α−(p−アルキルフェニル)−ω−ヒドロキシ(ポリオキシアルキレン)、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンヒマシ油等の、ポリオキシアルキレン基を有するノニオン性界面活性剤が挙げられる。なかでもα−アルキル−ω−ヒドロキシ(ポリオキシアルキレン)が好ましく、α−ドデシル−ω−ヒドロキシポリ(オキシエチレン)(オキシエチレン単位の数が6〜16)がより好ましい。
【0029】
またアニオン性界面活性剤としては、オクチル硫酸塩、セチル硫酸塩、ラウリル硫酸塩等の炭素数8〜18の有機硫酸塩、オクチルスルホン酸塩、セチルスルホン酸塩、ラウリルスルホン酸塩、ステアリルスルホン酸塩、オレイルスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、オレイルベンゼンスルホン酸塩、ナフチルスルホン酸塩、ジイソプロピルナフチルスルホン酸塩等の炭素数8〜30の有機スルホン酸塩等が挙げられる。なかでも炭素数8〜30の有機スルホン酸塩が好ましく、ドデシルベンゼンスルホン酸塩がより好ましい。
【0030】
反応系に界面活性剤を存在させる場合、以上説明したようなノニオン性界面活性剤やアニオン性界面活性剤は、それぞれを単独で用いることもできるし、双方を共存させて用いることもできる。その際、それぞれの界面活性剤の濃度範囲としては、単独、双方の共存にかかわらず、ノニオン性界面活性剤については0.001〜0.05質量%となるようにするのが好ましく、アニオン性活性剤については0.005〜0.55質量%となるようにするのが好ましい。
【0031】
水/シラノール基形成性ケイ素化合物全量の仕込み割合は、通常、10/90〜70/30(質量比)とする。触媒の使用量は、その種類及びシラノール基形成性ケイ素化合物の種類によっても異なるが、通常、シラノール基形成性ケイ素化合物の全量に対して1質量%以下とするのが好ましい。また反応温度は、通常0〜40℃とするが、加水分解反応によって生成させたシラノール化合物の即製的な縮合反応を避けるために30℃以下とするのが好ましい。
【0032】
化3で示されるシラノール基形成性ケイ素化合物と化4で示されるシラノール基形成性化合物とは、例えば水中へ一度にこれらのシラノール基形成性ケイ素化合物を投入してから加水分解しても良いし、又は逐次投入しつつ加水分解しても良い。用いるシラノール基形成性ケイ素化合物の間で加水分解速度が著しく異なるような場合には、予め加水分解速度の遅いシラノール基形成性ケイ素化合物の加水分解を行い、次いで加水分解速度の速いシラノール基形成性ケイ素化合物を投入して引き続き加水分解を行うのが好ましい。
【0033】
以上で生成させたシラノール化合物を含有する反応液を引き続き縮合反応に供し、中空半球状体様を呈した有機シリコーン微粒子を生成させる。本発明において、縮合反応の触媒としては加水分解における前記したような触媒を使用できるので、加水分解させて生成したシラノール化合物を含有する反応液をそのまま或は更に触媒を加え、反応を続けることにより縮合反応させて有機シリコーン微粒子をその水性懸濁液として得る。かくしてシラノール化合物を縮合反応させた後、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリを加えることにより水性懸濁液のpHを8〜10の範囲に調整することが好ましい。またシラノール化合物を縮合反応させた後の水性懸濁液の固形分濃度(有機シリコーン微粒子の濃度)は水の量を調整することにより2〜12質量%の範囲となるようにするのが好ましく、5〜9質量%の範囲となるようにするのがより好ましい。
【0034】
本発明のエマルションに供する中空半球状有機シリコーン微粒子は、前記の水性懸濁液から分離し、例えば金網を通して抜き取り、遠心分離法又は加圧濾過法等により固形分を30〜70質量%に調整した含水物として用いることができる。またかかる含水物を更に100〜250℃で加熱乾燥し、必要に応じて解砕した乾燥物として用いることもできる。
【0035】
かくして得られる中空半球状有機シリコーン微粒子は、縦断面で見て内側小劣弧(11)とこれを覆う外側大劣弧(21)と双方の端部間に渡る稜線(31)とで形成された、全体として中空半球状体様を呈し、内側小劣弧(11)の端部間の幅(W)の平均値が0.01〜9.5μm、外側大劣弧(21)の端部間の幅(W)の平均値が0.05〜10μm、且つ外側大劣弧(21)の高さ(H)の平均値が0.015〜9μmの範囲内にあるものである。
【0036】
図1は本発明のエマルションに供する中空半球状有機シリコーン微粒子を略示する拡大縦断面図である。図示した中空半球状有機シリコーン微粒子は、前記したようなポリシロキサン架橋構造体から成るものであって、縦断面で見て内側小劣弧(11)とこれを覆う外側大劣弧(21)と双方の端部間に渡る稜線(31)とで形成された、全体として中空半球状体様を呈するものである。言い替えれば、中空球状体を2分割したときの一方の分割部側の形状を呈するものであり、例えば中空球状体を不均等に2分割したときの小分割部側の形状を呈するものである。そして内側小劣弧(11)の端部間の幅(W)の平均値が0.01〜9.5μm、外側大劣弧(21)の端部間の幅(W)の平均値が0.05〜10μm、且つ外側大劣弧(21)の高さ(H)の平均値が0.015〜9μmの範囲内にあるものであるが、内側小劣弧(11)の端部間の幅(W)の平均値が0.02〜6μm、外側大劣弧(21)の端部間の幅(W)の平均値が0.06〜8μm、且つ外側大劣弧(21)の高さ(H)の平均値が0.03〜6μmの範囲内にあるものが好ましい。かかる中空半球状有機シリコーン微粒子において、内側小劣弧(11)の端部間の幅(W)の平均値、外側大劣弧(21)の端部間の幅(W)の平均値、及び外側大劣弧(21)の高さ(H)の平均値はいずれも、中空半球状有機シリコーン微粒子の走査電子顕微鏡像から抽出した任意の100個についてそれぞれを測定し、その平均を求めた値である。
【0037】
本発明のエマルションに供する水相の成分としては、イオン交換水の他に、フローラルウオーター等、使用目的に応じた任意の水ベースの物質が適用できる。
【0038】
本発明のエマルションに供する油相の成分としては、皮膚外用薬剤や化粧料等、使用目的に応じた実質的に水に不溶の任意の油が適用できる。油相成分は様々な機能を発揮し得るので、特定のものの選択はそれが意図される目的によって決定される。油は揮発性であっても不揮発性であっても、それらの混合であってもよい。油脂、液体油、固体脂のいずれでもよく、固体脂の場合は溶解、溶融させて液状として用いられる。油相成分の具体例としては、例えば植物油、動物油、天然製油、ロウ、炭化水素油、エステル油、エーテル油、高級アルコール、高級脂肪酸、シリコーン油、フッ素系油剤、機能性油性物質等が挙げられる。
【0039】
植物油としては、ユーカリ油、ハッカ油、ツバキ油、椰子油、ココナッツ油、ホホバ油、コーン油、ヒマワリ油、パーム油、ダイズ油、ヒマシ油、オリーブ油、アボガド油、カカオ油、カルナウバワックス、マカデミアナッツ油、トウモロコシ油、ナタネ油、ゴマ油、サフラワー油、綿実油、硬化ヤシ油、硬化ヒマシ油等が挙げられる。動物油としては、ラノリン、液状ラノリン、還元ラノリン、牛脂、豚脂、馬油、獣脂、卵黄油、ミンク油、コレステロール等が挙げられる。天然精油としては、ローズマリー、ルイボス、ローヤルゼリー、ハマメリス、ツボクサ、スフィンゴシン、フィトステロール、フィトステロール配糖体、ヒオウギイソフラボン、ダイズイソフラボン等が挙げられる。ロウとしては、木ロウ、ラノリンロウ、モンタンロウ、ミツロウ、カルナウバロウ、イボタロウ、キャンデリラロウ、ホホバロウ等が挙げられる。炭化水素油としては、炭素原子を有する直鎖状又は分鎖状炭化水素であるデカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、ヘキサデカン、炭素数8〜20のイソパラフィン、ペトロラタム、流動パラフィン、固形パラフィン、プリスタン、オゾケライト、セレシン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス、スクワラン、スクワレン等が挙げられる。エステル油としては、ネオペンタン酸イソステアリル、オクタン酸セチル、イソオクタン酸セチル、リシノール酸セチル、パルミチン酸オクチル、リンゴ酸ジオクチル、イソステアリン酸デシル、イソステアリン酸ヘキシルデシル、ミリスチン酸ミリスチル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ミリスチン酸イソプロピル、ラノリン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ラノリン酸ヘキシル、オレイン酸オレイル、オレイン酸オクチルドデシル、セバチン酸ジイソプロピル、セバチン酸ジ−2−エチルヘキシル、乳酸セチル、リンゴ酸ジイソステアリル、アジピン酸ジイソプロピル、モノステアリン酸グリセリル、ジオレイン酸グリセリル、ジステアリン酸グリセリル、リノール酸グリセリル、ミリスチン酸グリセリル、ジ−2−エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジ−2−ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ−2−エチルヘキサン酸グリセリン、乳酸ミリスチル、アジピン酸ジイソプロピル、ミリスチン酸セチル、乳酸セチル、1−イソステアロイル−3−ミリストイルグリセロール、2−エチルヘキサン酸セチル、パルミチン酸2−エチルヘキシル、ミリスチン酸2−オクチルドデシル、ジ2−エチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール、オレイン酸2−オクチルドデシル、トリイソステアリン酸グリセロール、ジパラメトキシ桂皮酸モノ2−エチルヘキサン酸グリセリル、トリ−2−エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ−2−エチルヘキサン酸ペンタンエリトリット等が挙げられる。エーテル油としては、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、モノステアリン酸ポリオキエチレンソルビタン、ポリオキシエチレンソルビットモノラウレート、ポリオキシエチレングリセリンモノイソステアレート、ポリエチレングリコールモノオレート、ポリオキシエチレンジステアレート、ポリオキシエチレンオクチルドデシルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンデシルテトラデシルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等が挙げられる。高級アルコールとしては、セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、オクチルドデカノール、ベヘニルアルコール、オクチルドデカノール、ミリスチルアルコール、セトステアリルアルコール等が挙げられる。高級脂肪酸としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、ベヘニン酸、ラノリン酸、リチノレイン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ベヘン酸、ウンデシレン酸等が挙げられる。シリコーン油としては、メチコン、ジメチコン、ジメチコノール、ジメチコンコポリオール、フェニルトリメチコン、ジフェニルポリシロキサン、ジメチルシクロポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサンシロキサン、デカメチルペンタシロキサン、アミノ変性ポリシロキサン、アミノ酸変性シリコーン、ポリエーテル変性ポリシロキサン、アルキル変性ポリシロキサン、アルキルグリセリルエーテル変性シリコーン、フッ素変性ポリシロキサン、高重合メチルポリシロキサン等が挙げられる。フッ素系油剤としては、常温で液体のパーフルオロ有機化合物であるパーフルオロポリエーテルが挙げられ、例えばパーフルオロデカリン、パーフルオロアダマンタン、パーフルオロブチルテトラハイドロフラン、パーフルオロオクタン、パーフルオロノナン、パーフルオロペンタン、パーフルオロデカン、パーフルオロドデカン、パーフルオロポリエーテル等が挙げられる。機能性油性物質としては、リグナン、ビタミンE、油溶性ビタミンC、ビタミンA誘導体、セラミド類、セラミド類似構造物質、油溶性紫外線吸収剤、香料等が挙げられる。これらの油相成分は2種以上を併用することもできる。
【0040】
本発明のエマルションは、以上説明したような水相の成分と、油相の成分と、中空半球状有機シリコーン微粒子を含有する有機シリコーン微粒子とを用いて調製されるもので、水相を40〜80質量%、油相を10〜50質量%及び有機シリコーン微粒子を10〜20質量%(合計100質量%)の割合で含有して成るものである。
【0041】
本発明のエマルションは、その調製方法を特に制限されず、通常の手段により、乳化機を用いて攪拌し、混合して製造される。例えば、それぞれ所定量の有機シリコーン微粒子と油相の成分と水相の成分とを同時に攪拌層に投入し、撹拌して混合する方法や、先に所定量の有機シリコーン微粒子と油相の成分とを攪拌し、混合して均一分散状態とした後、所定量の水相の成分を滴下しながら、更に撹拌し、混合する方法等が挙げられる。攪拌及び混合手段の例としては、振とう法、プロペラ攪拌機やタービン型攪拌機等のミキサーによる高速攪拌法、コロイドミル法、ホモジナイザー法、超音波照射法、膜乳化法等が挙げられる。強力な剪断力をかけられる攪拌混合機としては、ボルテックスミキサー、ホモキミサー、ナノマイザー、マントンゴウリン、フレンチプレス、コロイドミル、ホモジナイザー、マイクロフルイダイザー、超音波乳化機、高圧乳化機等の乳化機が挙げられる。本発明のエマルションを調製する際には、必要に応じて加熱することもできる。
【0042】
本発明のエマルションは、使用目的に応じて、有機シリコーン微粒子、油相の成分、水相の成分以外に、その適用対象に通常用いられる、例えば通常皮膚外用薬剤や化粧料等で使用される増粘剤、ゲル化剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、色剤、防腐剤、粉体、分散剤、湿潤剤、消泡剤、pH調整剤等の任意成分を、本発明の効果を損なわない範囲に於いて併用することができる。これらの好ましい含有量は、0.1〜1重量%である。また有機シリコーン微粒子に対して分散性向上のための前処理を施すこともできる。
【発明の効果】
【0043】
以上説明した本発明のエマルションには、界面活性剤を使用するまでもなく、1段階の乳化工程のみでも調製することができ、しかも生成率が高く、同時に長期間の安定性に優れるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明のエマルションに供する中空半球状有機シリコーン微粒子を略示する拡大縦断面図。
【図2】本発明のエマルションの100倍光学顕微鏡写真。
【実施例】
【0045】
以下、本発明の構成及び効果をより具体的にするため、実施例等を挙げるが、本発明がこれらの実施例に限定されるというものではない。尚、以下の実施例及び比較例において部は質量部を、%は質量%を意味する。
【0046】
試験区分1(有機シリコーン微粒子の合成)
・合成例1{有機シリコーン微粒子(T−1)の合成}
反応容器にイオン交換水700gを仕込み、48%水酸化ナトリウム水溶液0.3gを添加して水溶液とした。この水溶液にメチルトリメトキシシラン81.7g(0.6モル)及びテトラエトキシシラン83.2g(0.4モル)を添加し、温度が30℃を超えないように1時間加水分解反応を行ない、更に界面活性剤として10%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液3gを添加し、同温度で3時間加水分解反応を行った。次いで得られた反応物を10時間縮合反応して、有機シリコーン微粒子を含有する水性懸濁液を得た。この水性懸濁液を遠心分離に供し、白色微粒子を分離して有機シリコーン微粒子(T−1)の含水物(固形分約40%)を得た。この有機シリコーン微粒子(T−1)の含水物を150℃で5時間、熱風乾燥したところ60.1gであった。この熱風乾燥物について、走査型電子顕微鏡による観察、元素分析、ICP発光分光分析、FT−IRスペクトル分析を行ったところ、この有機シリコーン微粒子(T−1)は、縦断面で見て内側小劣弧(11)とこれを覆う外側大劣弧(21)と双方の端部間に渡る稜線(31)とで形成された、全体として中空半球状体様を呈し、内側小劣弧(11)の端部間の幅(W)の平均値が2.64μm、外側大劣弧(21)の端部間の幅(W)の平均値が3.02μm、且つ外側大劣弧(21)の高さ(H)の平均値が1.53μmの有機シリコーン微粒子であって、化1のシロキサン単位/化2のシロキサン単位=40/60(モル比)の割合で有するポリシロキサン架橋構造体から成るものであった。
【0047】
尚、有機シリコーン微粒子(T−1)の形状、内側小劣弧(11)の端部間の幅(W)の平均値、外側大劣弧(21)の端部間の幅(W)の平均値及び外側大劣弧(21)の高さ(H)の平均値は、走査型電子顕微鏡を用い、5000〜10000倍で任意の100個の有機シリコーン微粒子(T−1)を観察し、各部位を測定して、その平均を求めた値である。また結合有機基の分析は次のように行った。有機シリコーン微粒子(T−1)5gを精秤し、0.05Nの水酸化ナトリウム水溶液250mlに加え、有機シリコーン微粒子中の加水分解性基を全て水溶液に抽出処理した。抽出処理液から超遠心分離により有機シリコーン微粒子を分離し、分離した有機シリコーン微粒子を水洗した後、200℃で5時間乾燥したものを、元素分析、ICP発光分光分析、FT−IRスペクトル分析に供して、全炭素含有量及びケイ素含有量を測定すると共に、ケイ素−炭素結合、ケイ素−酸素−ケイ素結合を確認した。これらの分析値と、原料に用いた化4で示されるシラノール基形成性ケイ素化合物のRの炭素数より、化1で示されるシロキサン単位/化2で示されるシロキサン単位の割合を算出した。
【0048】
・合成例2及び3{有機シリコーン微粒子(T−2)及び(T−3)の合成}
有機シリコーン微粒子(T−1)と同様に、有機シリコーン微粒子(T−2)及び(T−3)を合成し、測定及び分析等を行った。
【0049】
・合成例4{有機シリコーン微粒子(U−1)の合成}
反応容器にイオン交換水3950g及び28%アンモニア水50gを仕込み、室温下で10分間撹拌して均一なアンモニア水溶液とした。このアンモニア水溶液に、メチルトリメトキシシラン600g(4.41モル)をアンモニア水溶液中に混ざらないように加え、上層にメチルトリメトキシシラン層、下層にアンモニア水溶液層の2層状態となるようにした。次いで2層状態を保ちながらゆっくり撹拌し、メチルトリメトキシシランとアンモニア水溶液との界面において加水分解及び縮合反応を進行させた。反応の進行に伴い、反応物が徐々に沈降して下層は白濁し、上層のメチルトリメトキシシラン層は徐々に層が薄くなり、約3時間で消失した。更に温度を50〜60℃に保ち、同条件で3時間撹拌を行なった後、25℃に冷却し、懸濁物を濾別して白色微粒子の含水物(t−1)を得た。この含水物を水洗し、150℃で3時間、熱風乾燥を行なって得た乾燥物について実施例1と同様に測定及び分析を行ったところ、平均粒子径が3.0μm球状の有機シリコーン微粒子であった。以上で合成した各例の有機シリコーン微粒子の内容を表1及び表2にまとめて示した。
【0050】
【表1】

【0051】
表1において、
A/B:化1で示されるシロキサン単位/化2で示されるシロキサン単位(モル比)
S−1:無水ケイ酸単位
S−2:メチルシロキサン単位
S−3:フェニルシロキサン単位
*1:S−2/S−3=55/5(モル比)
C/D:化3で示されるシラノール基形成性化合物/化4で示されるシラノール基形成性化合物(モル比)
SM−1:テトラエトキシシラン
SM−2:メチルトリメトキシシラン
SM−3:フェニルトリメトキシシラン
*2:SM−2/SM−3=55/5(モル比)
A−1:ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム
A−2:ラウリルスルホン酸ナトリウム
N−1:α−ドデシル−ω−ヒドロキシポリ(オキシエチレン)(オキシエチレン単位の数が12)
濃度:加水分解反応系における界面活性剤の濃度(%)
【0052】
【表2】

【0053】
表2において、
範囲:最大値−最小値
形状:A;粒子全体が中空半球状、B;粒子全体が球状
【0054】
試験区分2(W/O/W型ピッケリングエマルション等の調製)
次の各例のW/O/W型ピッケリングエマルション等を調製し、エマルションの状態及びその安定性を評価した。結果をまとめて表3に示した。
【0055】
・実施例1
有機シリコーン微粒子(T−1)15.0%、n−ドテカン15.0%及び水70.0%となる割合で用いて次のようにW/O/W型ピッケリングエマルションを調製した。先ず、有機シリコーン微粒子(T−1)100gと、n−ドデカン100gを混合し、ホモジナイザーを用いて暫く攪拌し、油層Aとした。試験管に油層Aを0.3g入れ、続いて水0.7gを加えて、試験管の開口部をゴム栓で塞いだ後、ボルテックスミキサーで暫く攪拌し、W/O/W型ピッケリングエマルションを得た。図2は、かかる実施例1のW/O/W型ピッケリングエマルションを示す100倍光学顕微鏡写真である。
【0056】
・実施例2
有機シリコーン微粒子(T−1)15.0%、n−ドテカン25.0%及び水60.0%となる割合で用いて次のようにW/O/W型ピッケリングエマルションを調製した。すなわち、有機シリコーン微粒子(T−1)150gと、n−ドデカン250gと、水600gを混合し、ホモミキサーで暫く攪拌して、W/O/W型ピッケリングエマルションを調製した。
【0057】
・実施例3〜11及び比較例1〜8
実施例1と同様にして、W/O/W型ピッケリングエマルション等を調製し、結果をまとめて表3に示した。
【0058】
試験区分3(W/O/W型ピッケリングエマルション等の評価)
試験区分2で調製した各例のW/O/W型ピッケリングエマルション等に水性染料を0.1%添加し、水相を着色した後、これらを100倍光学顕微鏡写真及び目視で観察し、下記の方法によりエマルションの状態及びその安定性を評価した。結果を表3にまとめて示した。
【0059】
・エマルションの状態の評価:
前記のように100倍光学顕微鏡写真及び目視で観察し、下記の基準で評価した。
4点:完全なW/O/Wの三相構造が確認された。
3点:W/O/Wの三相構造は確認されるが、最内相が若干分離状態になっている。
2点:実質的にO/Wの2相状態になっている。
1点:全く相分離状態になっている。
【0060】
・エマルションの安定性の評価:
前記のエマルションの状態の評価において、W/O/Wの三相構造が確認できたものを5℃、25℃、40℃で3か月間保管した後、再びエマルションの状態を100倍光学顕微鏡写真及び目視で観察して、下記の基準で評価した。
4点:最内相のエマルション粒子に変化が無く、相分離が認められない。
3点:最内相のエマルション粒子に若干の減少が見られるが、相分離は認められない。
2点:実質的にO/Wの2相状態になっている。
1点:全く相分離状態になっている。




















【0061】
【表3】

【0062】
表3において、
U−2:球状シリカ微粒子(平均粒子径1μm、扶桑化学工業社製の商品名クォートロンSP−1B)
U−3:金平糖状有機シリコーン微粒子(平均粒子径5μm、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製の商品名トスパール150KA)
U−4:お椀状ポリメタクリル酸メチル微粒子(粒子径約10μm、松本油脂製薬社製の商品名マツモトマイクロスフェアーM−310)
U−5:球状ポリメタクリル酸メチル微粒子(粒子径4μm、積水化成品工業社製の商品名MB−4C)
U−6:微粉タルク(平均粒子径2.5μm、日本タルク社製の商品名ミクロエースSG−95)
【0063】
表3の結果からも明らかなように、本発明のエマルションは、界面活性剤を使用するまでもなく、1段階の乳化工程のみでも調製することができるW/O/W型ピッケリングエマルションであって、生成率が高く、同時に長期間の安定性にも優れている。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明のエマルションは、長期間の安定性に優れたW/O/W型ピッケリングエマルションであるため、最内水相における薬剤の保存安定性向上、化粧料における使用感の向上、機能を有する最内水相が使用時に初めて該機能を発現するような作用が期待でき、皮膚外用薬剤や化粧料等、広い分野での利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0065】
11 内側小劣弧
21 外側大劣弧
31 稜線
内側小劣弧の端部間の幅
外側大劣弧の端部間の幅
H 外側大劣弧の高さ
W 水相部分
O 油相部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に水相の粒子を閉じ込めた油相の粒子が水相中に分散した状態のW/O/W型ピッケリングエマルションにおいて、油相とその両側の水相との界面に下記の中空半球状有機シリコーン微粒子を含有する有機シリコーン微粒子が局在しており、且つ水相を40〜80質量%、油相を10〜50質量%及び有機シリコーン微粒子を10〜20質量%(合計100質量%)の割合で含有して成ることを特徴とするW/O/W型ピッケリングエマルション。
中空半球状有機シリコーン微粒子:ポリシロキサン架橋構造体から成る有機シリコーン微粒子であって、縦断面で見て内側小劣弧(11)とこれを覆う外側大劣弧(21)と双方の端部間に渡る稜線(31)とで形成された、全体としては中空半球状体様を呈し、内側小劣弧(11)の端部間の幅(W)の平均値が0.01〜9.5μm、外側大劣弧(21)の端部間の幅(W)の平均値が0.05〜10μm、且つ外側大劣弧(21)の高さ(H)の平均値が0.015〜9μmの範囲内にある有機シリコーン微粒子。
【請求項2】
有機シリコーン微粒子が、中空半球状有機シリコーン微粒子を20質量%以上含有するものである請求項1記載のW/O/W型ピッケリングエマルション。
【請求項3】
有機シリコーン微粒子が、中空半球状有機シリコーン微粒子を50質量%以上含有するものである請求項1記載のW/O/W型ピッケリングエマルション。
【請求項4】
中空半球状有機シリコーン微粒子が、下記の化1で示されるシロキサン単位/下記の化2で示されるシロキサン単位=30/70〜70/30(モル比)の割合で有するものである請求項1〜3のいずれか一つの項記載のW/O/W型ピッケリングエマルション。
【化1】

【化2】

(化2において、
:ケイ素原子に直結した炭素数1〜4の有機基又はフェニル基)
【請求項5】
中空半球状有機シリコーン微粒子が、下記の化3で示されるシラノール基形成性ケイ素化合物と下記の化4で示されるシラノール基形成性ケイ素化合物とを、化3で示されるシラノール基形成性ケイ素化合物/化4で示されるシラノール基形成性ケイ素化合物=30/70〜70/30(モル比)の割合で用い、これらを触媒存在下で水と接触させて加水分解することによりシラノール化合物を生成させ、引き続き生成させたシラノール化合物を縮合反応させることによって製造されるものである請求項1〜4のいずれか一つの項記載のW/O/W型ピッケリングエマルション。
【化3】

【化4】

(化3,化4において、
:ケイ素原子に直結した炭素数1〜4の有機基又はフェニル基
X,Y:炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数1〜4のアルコキシ基を有するアルコキシエトキシ基、炭素数2〜4のアシロキシ基、炭素数1〜4のアルキル基を有するN,N−ジアルキルアミノ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子又は水素原子)
【請求項6】
中空半球状有機シリコーン微粒子が、化3で示されるシラノール基形成性ケイ素化合物と化4で示されるシラノール基形成性ケイ素化合物とを、触媒の他に、更にノニオン性界面活性剤及び/又はアニオン性界面活性剤を存在させた条件下で水と接触させて製造されるものである請求項5記載のW/O/W型ピッケリングエマルション。
【請求項7】
ノニオン性界面活性剤及び/又はアニオン性界面活性剤が、オキシアルキレン基としてオキシエチレン基及び/又はオキシプロピレン基を有するα−アルキル−ω−ヒドロキシ(ポリオキシアルキレン)及び炭素数8〜30の有機スルホン酸塩から選ばれる一つ又は二つ以上である請求項6記載のW/O/W型ピッケリングエマルション。
【請求項8】
中空半球状有機シリコーン微粒子が、シラノール化合物を縮合反応させた後、pHを8〜10の範囲に調整した水性懸濁液から得られるものである請求項5〜7のいずれか一つの項記載のW/O/W型ピッケリングエマルション。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−178972(P2011−178972A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−47418(P2010−47418)
【出願日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【出願人】(000210654)竹本油脂株式会社 (138)
【Fターム(参考)】