説明

WiMAX通信システム

【課題】トラフィック量に基づいて、基地局の負荷を分散することが可能なWiMAX通信システムを提供する。
【解決手段】端末12a〜14nと無線接続する基地局16a〜16cと、基地局16a〜16cの運用管理を行うEMS24とを備え、EMS24は、端末12a〜14nと基地局16a〜16cとのトラフィック量を取得し、取得した前記トラフィック量に基づいて、基地局16a〜16cのセル半径を調整し、基地局16a〜16cで端末12a〜14nをハンドオーバさせて、前記トラフィック量を平滑化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の端末と無線接続する複数の基地局と、前記各基地局の運用管理を行うEMSとを備えるWiMAX通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
次世代の高速移動体通信方式としてWiMAX(Worldwide Interoperability for Microwave Access)が国際的に注目を集め、このシステムの導入が開始されている。
【0003】
このWiMAX通信システムでは、複数の基地局に対して、複数台の端末が無線接続をして通信を行っている。WiMAX通信システムの全体の効率を考慮すると、各基地局の負荷が分散されることが望ましい。
【0004】
基地局の負荷を分散化する方法として、特許文献1に示すように基地局に接続する端末の数を制御する方法が知られている。この特許文献1では、基地局毎に接続する端末数を設定値として設け、この設定値との関係で端末をハンドオーバさせることにより、負荷の分散を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−278741号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に示す基地局の負荷の分散方法では、基地局と通信する端末の通信トラフィック量を考慮していないために、基地局に接続する端末数が少ない場合であっても、例えば、VOD(Video On Demand)による動画の配信サービスのようなトラフィック量が多い通信を行っている端末がある場合には、その端末が接続している基地局の負荷は大きくなり、結果として、負荷の分散が図れないこととなる。
【0007】
本発明は、上記の課題を考慮してなされたものであって、トラフィック量に基づいて、基地局の負荷を分散することが可能なWiMAX通信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るWiMAX通信システムは、複数の端末と無線接続する複数の基地局と、前記各基地局の運用管理を行うEMSとを備え、前記EMSは、前記各端末と前記各基地局との間のトラフィック量を取得し、取得した前記トラフィック量に基づいて、前記各基地局のセル半径を調整し、前記各基地局間で前記端末をハンドオーバさせて、前記トラフィック量を平滑化することを特徴とする。
【0009】
前記WiMAX通信システムにおいて、前記EMSは、前記各基地局と前記各端末との通信信号の電界強度と、前記各基地局から取得した前記トラフィック量とに基づいて、前記トラフィック量を平滑化することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明のWiMAX通信システムによれば、基地局のトラフィック量に基づいて、セル半径を調整して端末をハンドオーバさせて、端末と基地局間のトラフィック量を平滑化することにより、適切な負荷の分散を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態に係るWiMAX通信システムの説明図である。
【図2】EMSの構成の説明図である。
【図3】トラフィック量の平滑化の手順を説明したフローチャートである。
【図4】基地局のセル半径を変更して、端末をハンドオーバさせることについての説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明の実施形態に係るWiMAX通信システムの説明図であり、図2は、EMS24の構成の説明図である。
【0013】
WiMAX通信システム10は、ASN(Access Service Network)20と、CSN(Connectivity Service Network)22と、EMS(Element Management System)24とを備える。
【0014】
ASN20は、通信機能を有するコンピュータや携帯電話等である端末(MS)12a〜12nと無線接続する基地局16aと、端末13a〜13nと無線接続する基地局16bと、端末14a〜14nと無線接続する基地局16cと、QoSの管理等を行うASNGW18とを備える。
【0015】
CSN22は、PF(Policy Function)サーバ、AAA(Authentication Authorization Accounting)サーバ、DHCP(Dynamic Host
Configuration Protocol)サーバを備えるネットワークである。
【0016】
EMS24は、端末情報取得部26と、トラフィック量判定部28と、端末位置特定部30と、セル半径制御部32とを備え、基地局16a〜16cの制御管理を行う装置である。
【0017】
端末情報取得部26は、基地局16a〜16cから無線接続している端末12a〜12n、13a〜13n、14a〜14n毎のトラフィック量と、前記端末毎の無線通信の際の電界情報とを端末情報として取得する。
【0018】
トラフィック量判定部28は、端末情報取得部26で取得した端末毎のトラフィック量に基づいて、基地局16a〜16c毎のトラフィック量を集計し、各基地局相互間のトラフィック量の差分を算出する。
【0019】
端末位置特定部30は、端末情報取得部26で取得した端末毎の電界情報に基づいて端末毎の位置情報を算出する。
【0020】
セル半径制御部32は、端末情報取得部26で取得した端末毎のトラフィック量と、トラフィック量判定部28で集計した基地局毎のトラフィック量と、端末位置特定部30で算出した端末毎の位置情報とに基づいて、トラフィック量判定部28で算出した各基地局相互間のトラフィック量の差分が最も小さくなるように、基地局16a〜16c毎の適切なセル半径を判断し、基地局16a〜16cへ指示を行う。
【0021】
次に、図3、図4に基づいて、トラフィック量の平滑化について説明する。ここで、図3は、トラフィック量の平滑化の手順を説明したフローチャートであり、図4は、基地局のセル半径を変更して、端末をハンドオーバさせることについての説明図である。
【0022】
WiMAX通信システム10では、まず、EMS24の端末情報取得部26が基地局16a〜16cに対して端末情報を要求し、基地局16a〜16cは端末毎のトラフィック量及び電界情報をEMS24に送信する(ステップS1)。
【0023】
端末情報取得部26は、受信した端末情報をトラフィック量判定部28と、端末位置特定部30とに提供する(ステップS2)。
【0024】
トラフィック量判定部28は、受信した端末情報である端末毎のトラフィック量から基地局16a〜16c毎にトラフィック量を集計し、基地局16a〜16cの相互間のトラフィック量の差分を算出するとともに、前記差分が所定値以下であるか否かを判定する(ステップS3)。
【0025】
前記差分が所定値以下である場合には、基地局16a〜16cのトラフィック量は分散され、平滑化されていると判断される。従って、かかる場合には、定期的な基地局16a〜16cのトラフィック量の差分の監視を継続することになる(ステップS3 Yes)。
【0026】
前記差分が所定値以上である場合(ステップS3 NO)には、トラフィック量判定部28は、トラフィック量の差分の情報をセル半径制御部32に提供し、端末位置特定部30は、受信した端末情報の端末毎の電界情報から基地局16a〜16c毎に、端末の位置を特定し、セル半径制御部32に提供する(ステップS4)。
【0027】
セル半径制御部32は、基地局16a〜16cの相互間のトラフィック量の差分が最小になるように、基地局16a〜16cに接続している端末の中から、ハンドオーバすべき対象の端末を特定する(ステップS5)。基地局間のトラフィック量の差分を最小にするようなハンドオーバすべき端末の特定は、種々の公知の手段で実現することができる。例えば、前記トラフィック量に所定値以上の差分がある基地局間で、トラフィック量が大きい方の基地局に無線接続し、かつ、トラフィック量が小さい方の基地局に最も近い端末を特定する。そして、この特定した端末を前記トラフィック量が小さい基地局にハンドオーバしたとして、全体の基地局間のトラフィック量の差分を算出して、所定値と比較する。差分が、所定値以上だった場合には、差分が所定値以下になるまで、トラフィック量が小さい方の基地局に近い端末を順番に特定し、上述と同様に、差分算出し、所定値と比較する作業を繰り返す。
【0028】
セル半径制御部32は、特定した端末をハンドオーバさせるためにセル半径を調整し、調整したセル半径を実現するための基地局16a〜16cの送信出力の設定データを、ASNGW18を介して、基地局16a〜16cに送信する(ステップS6)。
【0029】
基地局16a〜16cは、受信した送信出力の設定データに基づいて送信出力を変更する。送信出力を変更することにより、基地局16a〜16cのセル半径が変更され、ステップS5において特定した端末がハンドオーバすることとなる(ステップS7)。
【0030】
差分が、所定値以下になった以降は、EMS24は定期的に図3に示すフローチャートの手順を繰り返すこととなる。
【0031】
図4では、基地局16aのセルをCaとして実線で示し、同様に、基地局16bではセルCb、基地局16cではセルCcとしている。
【0032】
例えば、セル半径制御部32が、ステップS5において、端末12−1及び端末13−1を基地局16cへハンドオーバすべき端末として特定したとする。かかる場合には、セルCa、Cbのセル半径をそれぞれ、セルCa’、Cb’(破線)と縮小し、セルCcのセル半径をセルCc’(破線)と拡大することにより、端末12−1及び端末13−1が基地局16cにハンドオーバすることとなる。
【0033】
なお、かかる場合において、端末12−1と端末12−2のトラフィック量が同一であった場合には、端末12−2をハンドオーバの対象とすることもできる。しかしながら、ステップS4において、各端末の位置情報を検出し、端末12−1と端末12−2の位置を比較すると、基地局16cのセルCcに近いのは端末12−1であるので、端末12−1がハンドオーバの対象となる。
【0034】
WiMAX通信システム10では、基地局16a〜16cのトラフィック量に基づいて、セル半径を調整して端末をハンドオーバさせて、端末12a〜12n、13a〜13n、14a〜14nと基地局16a〜16c間におけるトラフィック量を平滑化することにより、適切な負荷の分散を図ることができる。
【0035】
なお、本発明は、上述の実施形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【符号の説明】
【0036】
10…WiMAX通信システム
12、13、14…端末
16…基地局
18…ASNGW
20…ASN
22…CSN
24…EMS
26…端末情報取得部
28…トラフィック量判定部
30…端末位置特定部
32…セル半径制御部
セル…Ca、Ca’、Cb、Cb’、Cc、Cc’

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の端末と無線接続する複数の基地局と、
前記各基地局の運用管理を行うEMSとを備え、
前記EMSは、
前記各端末と前記各基地局との間のトラフィック量を取得し、
取得した前記トラフィック量に基づいて、前記各基地局のセル半径を調整し、前記各基地局間で前記端末をハンドオーバさせて、前記トラフィック量を平滑化する
ことを特徴とするWiMAX通信システム。
【請求項2】
請求項1記載のWiMAX通信システムにおいて、
前記EMSは、前記各基地局と前記各端末との通信信号の電界強度と、前記各基地局から取得した前記トラフィック量とに基づいて、前記トラフィック量を平滑化することを特徴とするWiMAX通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−223523(P2011−223523A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−93398(P2010−93398)
【出願日】平成22年4月14日(2010.4.14)
【出願人】(000004330)日本無線株式会社 (1,186)
【Fターム(参考)】