説明

Wnt信号伝達に関係した分泌タンパク質

【課題】爪、ひずめ、または鉤爪の異常を処置する方法の提供。
【解決手段】R−スポンジン、あるいはそれの変異体、誘導体、フラグメント、相同体、パラログ、擬態物またはペプチド擬態物を含む組成物。R−スポンジンが、R−スポンジン1、R−スポンジン2、R−スポンジン3、R−スポンジン4より構成される群から選択される。Wnt信号伝達経路は、動物発生における膨大な過程で重要な役割を果たし、そしてそのため、Wnt経路に関係したタンパク質の新規R−スポンジン系の構成要素が、爪発生に必須である。爪等の異常が、先天的無爪症、先天的爪床炎、コック症候群、爪膝蓋症候群、外胚葉性形成異常、および表皮水疱症より構成される群から選択される遺伝性の異常、細菌、真菌、酵母、カビおよびウイルスより構成される群から選択される感染により引起される異常、弱体化、成長または修復が遅いかまたは不在であることによる異常である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
Wnt信号伝達に関係した分泌タンパク質であるR−スポンジン4(RSPO4)は、遺伝性無爪症で突然変異される
ダイアナ・シー.ブライドン1*、ヨシユキ・イシイ2*、エーデル・エイ.オトール1、ハリエット・シー.ウンスワース1、ミュイ−テック・テ1、フランツ・ルシェンドルフ3、クライアー・シンクレア1、バイハ・ケイ.ホプス−ハブ4、ニコラス・ティッドマン5、セリア・モス6、ロセマリー・ワトソン7、デイビッド・デ・バーカー8、ムハンマド・ワジド2、アンジェラ・エム.クリスチアノ2、デイビッド・ピー.ケルゼル1
【0002】
1 英国E1 4AT、ロンドン、ホワイト・チャペルのロンドン大学、クイーン・マリー、クイーン・マリー医科歯科専門課程、細胞および分子科学研究所、皮膚研究センター;2 米国ニューヨーク、VC1526 ウエスト168番ストリート 630のコロンビア大学内科および外科専門課程、皮膚科学および遺伝学および発生学科;3 ドイツ国ベルリンD−13092、ロバート−ロッスル−ストラッセ、分子医学のマックス−デルブルック・センター、機能性遺伝学およびゲノム学科;4 フィンランド国52ツルク 20520、ユニバーシティー・セントラル・ホスピタル、皮膚科;5 英国WC2A 3PXロンドン、リンカーンズ・イン・フィールズ 44、英国癌研究所;6 英国B4 6NHバーミンガム、スチールハウス・レーン、バーミンガム小児科病院;7 アイルランド、ダブリン、クルムリン、アワ・レディース・チルドレンズ病院、小児皮膚科;8 英国ブリストル、ブリストル・ロイヤル診療所、ブリストル皮膚センター
*共同第一著者と見なされるべき
通信:デイビッド・ピー・ケルゼル博士に(Eメール:d.p.keisell@qmul.ac.uk)宛
【背景技術】
【0003】
先天性無爪症/爪床炎(OMIM206800)は、唯一現れる表現型が、全ての指の爪および足の爪の欠如または重度形成不全である希な常染色体劣性症状である。ゲノム全体のマッピング用アフィメトリックス10K SNPアレイは、1家族のパキスタン人、1家族のフィンランド人および1家族のアイルランド人で、>4.0の最大LODスコアで、染色体20p13上に連鎖の領域を示した。関連のないパキスタン人家族での別の組換えマッピングは、その疾患遺伝子の潜む最小領域を、わずか4つの遺伝子を含む小型の〜300kb領域に減少させた。同型または化合物異型の突然変異は、wnt信号伝達に関連した新規分泌タンパク質であるRSPO4をコードする遺伝子における8つの無爪症系統で一致した。RSPO4発現は、特に、発生中のe14.5マウスの爪間葉に局在化され、そして爪形態形成に重要な役割を示唆した。
【0004】
先天性無爪症/爪床炎(OMIM206800)は、希で、通常には常染色体劣性の症状である。無爪症のほとんどの場合は、特に例えばコック症候群(OMIM106995)のような末節骨の形成異常または欠損に関連して、症候群の一部として起こる。隔てられた(非症候群性)無爪症では、まったく爪領域のない個体から、爪原基なしかまたは小さな爪原基を伴うサイズの減少した爪領域までの範囲にあるさまざまな爪表現型の発現がある。爪板(爪の可視部分)は、爪母基(甘皮の底部に配置される発生上皮)の成熟化およびケラチン化により継続的に成長するケラチン化構造である。爪板は、爪床(爪板の底部の皮膚)に密接に付着しており、そして爪床の真皮は、指の末節骨に付着している。したがって、爪の形成不全が、下にある骨の変形と合わせて頻繁に見られる。爪板は、爪の底部(爪の下)の組織と、その周り(爪の周辺)とを隔て、それにより、爪領域の寸法を維持する。爪板が、無爪症でのように、欠損しているか、または形成不全である場合、爪領域は、サイズがそれに続いて減少される。
【0005】
爪の発生に関与した分子信号については、ほとんど知られていない。ヒトの一組の爪の形成は、懐胎の9週目に始まり、20週までに完了し、そして足の爪の発生は、指の爪からおよそ4週遅れる。この過程に関与した遺伝子について知られていることの多くは、爪形成異常が表現型の一部を形成するヒト遺伝的障害並びに、マウスのモデルの研究から推測された。
【0006】
下にある骨並びに皮膚内両方の適切な上皮−間葉相互作用は、Wnt7Aのような信号伝達分子およびソニックヘッジホグと同様に、爪発生および骨形態形成タンパク質−4および繊維芽細胞成長因子−4のような成長因子にとって重要であるように見え、そして全てが、重要な役割を果たす1。LMX1BおよびMSX1のような転写因子の発現も、それらが、それぞれ、爪膝蓋症候群(NPS、OMIM256020)およびウィットコップ症候群(OMIM189500)で突然変異を発生するときに見られるとおり必須である2-4。エングレイルド(Engrailed)のようなマウスモデルでの転写因子の除去または転位発現も、爪発生に対して深い理解を供した5
【0007】
我々は、隔てられた無爪症/爪床炎の組合せの劣性遺伝を示す多数の家族について研究した。パキスタン人起源(P1)の血縁家族によって、2名の罹患した兄弟姉妹と、罹患した第一のいとこが現れた。先に報告6された血縁のフィンランド人家族(F)は、10名中罹患した4名の兄弟姉妹を有した。3名の罹患した兄弟姉妹を伴うアイルランド人家系の別の家族は、血縁の証拠を示さなかった。全ての患者が、爪板の完全な欠損を示し、そして爪床のみがあり、そして膨張した爪母基が存在する(図1AおよびB)。
【0008】
400マイクロサテライトのマーカーを用いて行われた、パキスタン人(P1)、フィンランド人およびアイルランド人家族出身の罹患した個人のみの初期ゲノム全体連鎖解析は、いずれの連鎖領域も示さなかった。したがって、アフィメトリックス・ヒューマン・マッピング10Kv2 SNPアレイを使用した全ゲノムサンプル採取解析(WGSA)7アプローチで、高解像度のマッピングを、同じ罹患した個人に、並びに2名の罹患していない人に使用した。データ管理および浄化は、ALOHOMORAパッケージ8、GRR9およびペッドチェック10で行った。パラメトリック多点連鎖解析を、劣性モデルおよび完全浸透度を用いたアレグロ11で行った。無爪症家族の3つの解析は、染色体20p13上で4のLODスコアを示す単独領域を示した(図1C)。血縁のパキスタン人およびフィンランド人家族で、SNPデータを、初期マイクロサテライト・データと合わせることによって、ホモ接合性の最小領域が、1292Kbpの領域である染色体20p13上の161,423bp(SNPrs1342841)および1,453,576bp(D20S906)の間にマッピングされた(図1D)。それぞれ、28、7および6名の罹患した個人を含む非症候群性爪床炎を有する3つの別の血縁のパキスタン人家族(P2−P4)は、染色体20p13上の同じ領域に対してマッピングするのがみられた。P2ファミリーでの組換えは、マイクロサテライトマーカーD20S117とD20S906の間の850Kpbに、その領域を減らした。その領域における別のマイクロサテライトマーカー(プライマー配列についての補足表1)は、ファミリーP2で遺伝子型が形成され、そして別の有益な組換え事象が、その疾患遺伝子の宿る最小領域を、染色体20p13上の796,140pbと1,111,898bpとの間のおよそ300Kpbの小さな領域に狭めた(図2AおよびB、および補足図1)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
最小領域は、3つの遺伝子;ANGPT4、RSPO4、PSMF1、および開放読取枠、C20orf46(図2B)を含んだ。興味深いことに、RSPO4は、新規分類のフリズルド・リガンドとして作用し、そしてWnt/ベータカテニン経路を活性化するように見える分泌タンパク質のR−スポンジン・ファミリーの構成要素であるR−スポンジン4をコードし、そしてTCF依存性標的遺伝子転写促進を導いた12-14。したがって、有望な発生の信号伝達分子として、RSPO4は、爪発生での役割を果たす最高の候補であり、そして最初に解析された。5つのエキソン全てを、PCRにより増幅させ、そして配列決定した(プライマー配列については補足表1)。ホモ接合突然変異は、4つ全てのパキスタン人家族、並びにフィンランド人家族におけるRSPO4で一致した一方で、化合物異種接合突然変異は、英国出身の3つの家族で一致した(表1)。突然変異のいくつかの配列跡の例は、図2Cで示される。家族P1は、枠移動および下流の早期終止コドンを引起すことが予想されるエキソン2内に16bp欠失を示す。家族P2は、ホモ接合性26pb欠失を示し、そしてそれは、エキソン1にメチオニン開始コドンを含み、そして最初の16アミノ酸残基を欠くタンパク質の発現に至ることが予想される。家族P3は、エキソン3中でチロシンへのシステインのホモ接合性ミスセンス突然変異を示す(C118Y)。家族P4は、ホモ接合5’供与スプライス部位突然変異を示し、そしてフィンランド人家族は、エキソン2中にアルギニン残基へのグルタミンのミスセンス突然変異を示す(Q65R)。さらに、非血縁のアイルランド人家族および英国出身の別の2家族からの罹患した個人は、エキソン3でのシステイン残基に関与するスプライス部位突然変異とミスセンス突然変異の組合せについて化合物異種接合であることがわかった。8家族の群で一致した突然変異のいくつは、再発性である。
【0010】
ヒトとマウスのゲノムの両方で4つの構成要素があるR−スポンジン系のタンパク質は、共通のゲノムおよびタンパク質ドメイン組織を共有し、そして脊椎動物進化を通して保存される。各々は、N末端信号ペプチド(エキソン1)をコードし、続いて、2つのフリン型システイン富化ドメイン(エキソン2および3)、トロンボスポンジン型ドメイン(エキソン4)をコードし、そして推定核局在化信号(エキソン5)として高いスコアをつけるC末端塩基領域で終止すると推定される5つのコーディングエキソンより構成される(図2D)。エキソン2および3によりコードされるフリン様反復は、ベータカテニンの活性化および安定化のために必要とされると思われる15。したがって、そのフリン様ドメインを中断する突然変異は、ベータ−カテニンを通して信号伝達に影響を及ぼしうる。この点で、3つ全てのシステイン突然変異が、エキソン3での残基を識別したことは注目すべきである。ここで同定されたミスセンス突然変異の各々で影響を受けた残基は、4つ全てのヒトR−スポンジンパラログに渡って、並びに、4つ全てのマウスR−スポンジンパラログで、そして無脊椎動物ウニのムラサキウニ(S.purpuratus)13,14から得た推定タンパク質で非常に保存される。残基95、107、118で突然変異されたシステイン(C95F、C107RおよびC118Y)の保存は、図2Eで示される。
【0011】
ここで識別されたスプライス部位突然変異は、全て、それぞれ、イントロンの5’および3’末端に見られる非常に保存されたGTまたはAG共通配列を改変し、したがって、成熟mRNA転写物における不適切なエキソン・スキッピングまたはイントロン封入に至ることが予測されるであろう。家族P2で識別された26bp欠失は、第一のATGコドンを包含するが、しかし、タンパク質翻訳が、第二のATGコドンから開始し、そして推定信号ペプチドをコードする最初の16残基を欠くタンパク質を生じることが予測される。最終的に、家族P1での16bp欠失は、枠移動および下流の早期終止コドンを生じる。合成された場合、切断タンパク質は、残基32の後のミスセンスコーディングから生じ、そしてR−スポンジンタンパク質のいずれの特徴も欠く推定220−残基切断タンパク質を生じることが予測される。
【0012】
初期爪発生でのRSPO4の発現を可視化するために、598bp cDNAネズミRSPO4プローブを使用して、ホールマウント原位置ハイブリッド形式を行った。公表されている詳細なプロトコル16によるとおり、e15.5胚で原位置ハイブリッド形式を行った。RSPO4の発現パターンは、非常に特異的で、そして爪が誘導される間葉でのみ検出可能であり、そしてウィスカーパッドでいくぶん発現した(図2F).さらに、RSPO4発現が、胚発生14.5日目にマウス組織中にはなく、そして15.5日目に、最初に、前足で、そして後に後ろ足で初めて現れたことも注目された。この発現データは、さらに、爪発生におけるRSPO4についての非常に特異的で、そして不可欠な役割を支持する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
Wnt信号伝達経路は、動物発生における膨大な過程で重要な役割を果たし、そしてそのため、Wnt経路に関係したタンパク質の新規R−スポンジン系の構成要素が、爪発生に必須であることは驚くべきことでない。R−スポンジン系の他の構成要素は、最近、脊椎動物の発生に関係づけられてきた12、13、15が、これは、ヒトの疾患におけるR−スポンジンについての第一の証拠である。罹患した個人が、末節骨に内在する骨変形をもたない上に、爪床、並びに爪床の先端の輪郭を描く爪郭は、全て十分に形成されているように見えるので、R−スポンジン4は、胚性爪発生の後期相および/または成人期中の維持にほぼ明らかに関与しているといえる。
謝辞
本研究に参加してくれたことについてその家族の人達に感謝し、そしてコロンビア大学、遺伝学および発生学部からのキャサリン・ファンタウゾおよびヒシャム・バジの支援に謝辞を送りたい。本研究は、AICR(DPK)、国立ゲノム研究ネットワーク(FR)を通してドイツ連邦科学教育省、日本国文部科学省(YI)、および国立公衆衛生研究所NIH/USPHS認可R01R44924(AMC)によって部分的に支援された。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1
AおよびB。無爪症患者の臨床表現型。爪領域は、サイズの上で減少し、爪板は存在せず、爪母基は膨張しており(パネルA、矢印を参照)、そして爪床は保護的角質増殖症を示しうる(AおよびB両方に見られる)。C.3つの無爪症家族(P1、FおよびI)についてのアレグロを用いたゲノム全体SNP遺伝子型のパラメータ性LODスコア解析。D.20p13に対するマイクロサテライト/SNPマッピングの遺伝子型を有する2つの家系(P1およびF)。
【0015】
図2
AおよびB。家族P2のハプロタイプ、および組換えマッピングに基づいた無爪症遺伝子を宿す最小領域を示す略図。RSPO4は、この間隔内の4つの遺伝子マッピングの内の1つである。C。無爪症家族で検出される突然変異の内の2つの例。D。検出された突然変異全ての位置を示すRSPO4遺伝子のゲノム構造の略図。E。R−スポンジンパラログの間のミスセンス突然変異の保存を示すアミノ酸配列。F。爪発生の部位での特異的発現を示すマウスの胚形成(e15.5)におけるRSPO4のホールマウント原位置。RSPO4プローブは、標識AS(アンチセンス)であり、そして負の対照は、標識S(センス)である。区分は、発現が爪中胚葉に限定されることを示す。
【0016】
補足データ
補足図1 遺伝子型データを示す家系P2
補足表1
微細マッピングのために使用される新規マイクロサテライト・プライマー、および突然変異解析のために使用されるプライマーの配列を示す。
【0017】
資料
1.チャング,シー.エム.、ワイデリッツ・アール.ビー.、チン−ベレス、エス.およびジャン,ティー.エックス.、鳥類皮膚外肢再生の間の初期事象:表皮−間葉相互作用における依存性および分子再現の順序。J.Invest Dermatol 107巻、639−46頁(1996年)。
2.ドレイヤー,エス.ディー.ら、LMXIBにおける突然変異は、爪膝蓋症候群における異常な骨格パターン化および腎臓形成異常を引起す。Nat Genet 19巻、47−50頁(1998年)。
3.チェン,エイチら、Lmx1b突然変異体マウスでの肢および腎臓欠損は、ヒトの爪膝蓋症候群におけるLMX1Bの関与を示唆する。Nat Genet 19巻、51−5頁(1998年)。
4.ジャンロングラス,ディー.ら、MSX1におけるナンセンス突然変異は、ウィトコップ症候群を引起す。Am J Hum Genet 69巻、67−74頁(2001年)。
5.ルーミス,シー.エイ.ら、マウスのエングレイルド−1遺伝子および下面肢パターン化。Nature 382巻、360−3頁(1996年)。
6.ホプス−ハブ,ブイ.ケイ.およびジャンセン,シー.ティー.、先天性無爪症。Arch Dermatol 107巻、752−3頁(1973年)。
7.ケネディー,ジー.シー.ら、複合DNAの大規模遺伝子型化。Nat Biotechnol 21巻、1233−7頁(2003年)。
8.ルッシェンドルフ,エフ.およびナンバーグ,ピー.ALOHOMORA:10K SNPアレイ・データを使用した連鎖解析のための道具。Bioinformatics 21巻、2123−5頁(2005年)。
9.アベカシス,ジー.アール.、チャーニー,エス.エス.、クックソン,ダブリュ.オー.およびカードン,エル.アール.、GRR:関係誤差のグラフ表現。Bioinformatics 17巻、742−3頁(2001年)。
10.オコーネル,ジェイ.アール.およびウィークス,ディー.イー.、ペドチェック:連鎖解析における遺伝子型不適合性の同定のためのプログラム。Am J Hum Genet 63巻、259−66頁(1998年)。
11.ガッドブジャルトソン,ディー.エフ.、ジョナソン,ケイ.、フリッジ,エム.エル.およびコング,エイ.、アレグロ.多点連鎖解析のための新規コンピュータプログラム。Nat Genet 25巻、12−3頁(2000年)。
12.カマタ,ティー.ら、R−スポンジン、1型トロンボスポンジンドメインを有する新規遺伝子は、遠位神経管で発現され、そしてWnt突然変異体で影響される。Biochim Biophys Acta 1676巻、51−62頁(2004年)。
13.ナム,ジェイ.エス.、ツルコット,ティー.ジェイ.、スミス,ピー.エフ.、チョイ,エス.およびユン,ジェイ.ケイ.マウスのクリスチン/R−スポンジン系タンパク質は、フリズルド(Frizzled)8およびLRP6受容体についての新規リガンドであり、そしてベータカテニン依存性遺伝子発現を活性化させる。J Biol Chem 281巻、13247−57頁(2006年)。
14.キム,ケイ.エイ.ら、R−スポンジンタンパク質:ベータカテニン活性化に対する新規リンク。Cell Cycle 5巻、23−6頁(2006年)。
15.カザンスカヤ,オー.ら、R−スポンジン2は、Wnt/ベータカテニン信号伝達の分泌アクチベーターであり、そしてキセノプス(Xenopus)筋形成のために要求される。Dev Cell 7巻、525−34頁(2004年)。
16.ウィルキンソン,ディー.ジー.原位置ハイブリッド化:実施アプローチ。オックスフォード・ユニバーシティー・プレス(1992年)。
表1 解析された全無爪症家族で検出された突然変異の要約
【0018】
【表1】

第一ATGコドンから出発するヌクレオチド番号付けを示すNM_001029871によるRSPO4 mRNAおよびタンパク質配列。アミノ酸置換は、タンパク質配列NP_001025042に関連して括弧で示される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1A】無爪症患者の臨床表現型である。
【図1B】無爪症患者の臨床表現型である。
【図1C】3つの無爪症家族についてのアレグロを用いたゲノム全体SNP遺伝子型のパラメータ性LODスコア解析である。
【図1D】20p13に対するマイクロサテライト/SNPマッピングの遺伝子型を有する2つの家系(P1およびF)である。
【図2A】家族P2のハプロタイプである。
【図2B】組換えマッピングに基づいた無爪症遺伝子を宿す最小領域を示す略図である。
【図2C】無爪症家族で検出される突然変異の内の2つの例である。
【図2D】検出された突然変異全ての位置を示すRSPO4遺伝子のゲノム構造の略図である。
【図2E】R−スポンジンパラログの間のミスセンス突然変異の保存を示すアミノ酸配列である。
【図2F】爪発生の部位での特異的発現を示すマウスの胚形成(e15.5)におけるRSPO4のホールマウント原位置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象に、R−スポンジン、あるいはそれの変異体、誘導体、フラグメント、相同体、パラログ、擬態物またはペプチド擬態物を含む組成物を投与することを含む、対象における爪、ひずめ、または鉤爪の異常を処置する方法。
【請求項2】
異常が、遺伝性の異常である請求項1記載の方法。
【請求項3】
遺伝性の異常が、先天的無爪症、先天的爪床炎、コック症候群、爪膝蓋症候群、外胚葉性形成異常、および表皮水疱症より構成される群から選択される請求項2記載の方法。
【請求項4】
異常が、爪、ひずめ、または鉤爪の感染により引起される請求項1記載の方法。
【請求項5】
感染が、細菌、真菌、酵母、カビおよびウイルスより構成される群から選択される因子により引起される請求項4記載の方法。
【請求項6】
異常が、爪、ひずめ、または鉤爪の弱体化により特徴付けられる請求項1記載の方法。
【請求項7】
異常が、爪、ひずめ、または鉤爪の成長または修復が遅いかまたは不在であることにより特徴付けられる請求項1記載の方法。
【請求項8】
R−スポンジンが、R−スポンジン1、R−スポンジン2、R−スポンジン3、およびR−スポンジン4より構成される群から選択される請求項1記載の方法。
【請求項9】
組成物が、R−スポンジン遺伝子のエキソン3によりコードされるペプチド、あるいは、それの変異体、誘導体、フラグメント、相同体、パラログ、擬態物またはペプチド擬態物を含む請求項1記載の方法。
【請求項10】
組成物が、R−スポンジン遺伝子のエキソン5によりコードされるペプチド、あるいは、それの変異体、誘導体、フラグメント、相同体、パラログ、擬態物またはペプチド擬態物を含む請求項1記載の方法。
【請求項11】
R−スポンジンが、哺乳類R−スポンジンである請求項1記載の方法。
【請求項12】
R−スポンジンが、鳥類R−スポンジンである請求項1記載の方法。
【請求項13】
R−スポンジンが、ウニのR−スポンジンである請求項1記載の方法。
【請求項14】
対象が、哺乳類である請求項1記載の方法。
【請求項15】
対象が、ヒトである請求項1記載の方法。
【請求項16】
対象が、家庭用愛玩動物である請求項1記載の方法。
【請求項17】
対象が、農業用途のために飼育された哺乳類である請求項1記載の方法。
【請求項18】
対象が、ネコである請求項1記載の方法。
【請求項19】
対象が、イヌである請求項1記載の方法。
【請求項20】
対象が、ウマである請求項1記載の方法。
【請求項21】
対象が、ウシである請求項1記載の方法。
【請求項22】
対象が、ヒツジである請求項1記載の方法。
【請求項23】
対象が、ブタである請求項1記載の方法。
【請求項24】
対象が、鳥類である請求項1記載の方法。
【請求項25】
対象が、ニワトリである請求項1記載の方法。
【請求項26】
多くの爪、ひずめまたは鉤爪の内の1つに、または周辺に、組成物を投与する請求項1記載の方法。
【請求項27】
組成物を、局所的に投与する請求項1記載の方法。
【請求項28】
組成物を、クリームまたはローションとして処方する請求項1記載の方法。
【請求項29】
組成物を、油状物として処方する請求項1記載の方法。
【請求項30】
組成物を、塗料またはラッカーとして処方する請求項1記載の方法。
【請求項31】
組成物が、1つまたは複数の担体、賦形剤、溶媒または基剤を含む請求項1記載の方法。
【請求項32】
組成物が、治療上または化粧品上有効な量のR−スポンジンを含む請求項1記載の方法。
【請求項33】
投与が、爪、ひずめまたは鉤爪の成長における増大を生じる請求項1記載の方法。
【請求項34】
投与が、爪、ひずめまたは鉤爪の強度における増大を生じる請求項1記載の方法。
【請求項35】
投与が、爪、ひずめまたは鉤爪の修復を生じる請求項1記載の方法。
【請求項36】
対象に、R−スポンジン、あるいはそれの変異体、誘導体、フラグメント、相同体、パラログ、擬態物またはペプチド擬態物を含む組成物を投与することを含む、対象における爪、ひずめまたは鉤爪の成長を強化、修復または刺激する方法。
【請求項37】
R−スポンジンが、R−スポンジン1、R−スポンジン2、R−スポンジン3、およびR−スポンジン4より構成される群から選択される請求項36記載の方法。
【請求項38】
組成物が、R−スポンジン遺伝子のエキソン3によりコードされるペプチド、あるいは、それの変異体、誘導体、フラグメント、相同体、パラログまたは擬態物を含む請求項36記載の方法。
【請求項39】
組成物が、R−スポンジン遺伝子のエキソン5によりコードされるペプチド、あるいは、それの変異体、誘導体、フラグメント、相同体、パラログまたは擬態物を含む請求項36記載の方法。
【請求項40】
R−スポンジンが、哺乳類R−スポンジンである請求項36記載の方法。
【請求項41】
R−スポンジンが、鳥類R−スポンジンである請求項36記載の方法。
【請求項42】
R−スポンジンが、ウニのR−スポンジンである請求項36記載の方法。
【請求項43】
対象が、哺乳類である請求項36記載の方法。
【請求項44】
対象が、ヒトである請求項36記載の方法。
【請求項45】
対象が、家庭用愛玩動物である請求項36記載の方法。
【請求項46】
対象が、農業用途のために飼育された哺乳類である請求項36記載の方法。
【請求項47】
対象が、ネコである請求項36記載の方法。
【請求項48】
対象が、イヌである請求項36記載の方法。
【請求項49】
対象が、ウマである請求項36記載の方法。
【請求項50】
対象が、ウシである請求項36記載の方法。
【請求項51】
対象が、ヒツジである請求項36記載の方法。
【請求項52】
対象が、ブタである請求項36記載の方法。
【請求項53】
対象が、鳥類である請求項36記載の方法。
【請求項54】
対象が、ニワトリである請求項36記載の方法。
【請求項55】
組成物を、多くの爪、ひずめまたは鉤爪の内の1つに、または周辺に投与する請求項36記載の方法。
【請求項56】
組成物を、局所的に投与する請求項36記載の方法。
【請求項57】
組成物を、クリームまたはローションとして処方する請求項36記載の方法。
【請求項58】
組成物を、油状物として処方する請求項36記載の方法。
【請求項59】
組成物を、塗料またはラッカーとして処方する請求項36記載の方法。
【請求項60】
組成物が、1つまたは複数の担体、賦形剤、溶媒または基剤を含む請求項36記載の方法。
【請求項61】
組成物が、治療上または化粧品上有効な量のR−スポンジンを含む請求項36記載の方法。
【請求項62】
投与が、爪、ひずめまたは鉤爪の成長における増大を生じる請求項36記載の方法。
【請求項63】
投与が、爪、ひずめまたは鉤爪の強度における増大を生じる請求項36記載の方法。
【請求項64】
投与が、爪、ひずめまたは鉤爪の修復を生じる請求項36記載の方法。
【請求項65】
対象に、R−スポンジンの活性を阻害する因子を含む組成物を投与することを含む、対象における爪、ひずめまたは鉤爪の成長を阻害するか、または弱体化する方法。
【請求項66】
R−スポンジンが、R−スポンジン1、R−スポンジン2、R−スポンジン3、およびR−スポンジン4より構成される群から選択される請求項65記載の方法。
【請求項67】
対象が、哺乳類である請求項65記載の方法。
【請求項68】
対象が、ヒトである請求項65記載の方法。
【請求項69】
対象が、家庭用愛玩動物である請求項65記載の方法。
【請求項70】
対象が、農業用途のために飼育された哺乳類である請求項65記載の方法。
【請求項71】
対象が、ネコである請求項65記載の方法。
【請求項72】
対象が、イヌである請求項65記載の方法。
【請求項73】
対象が、ウマである請求項65記載の方法。
【請求項74】
対象が、ウシである請求項65記載の方法。
【請求項75】
対象が、ヒツジである請求項65記載の方法。
【請求項76】
対象が、ブタである請求項65記載の方法。
【請求項77】
対象が、鳥類である請求項65記載の方法。
【請求項78】
対象が、ニワトリである請求項65記載の方法。
【請求項79】
組成物を、多くの爪、ひずめまたは鉤爪の内の1つに、または周辺に投与する請求項65記載の方法。
【請求項80】
組成物を、局所的に投与する請求項65記載の方法。
【請求項81】
組成物を、クリームまたはローションとして処方する請求項65記載の方法。
【請求項82】
組成物を、油状物として処方する請求項65記載の方法。
【請求項83】
組成物を、塗料またはラッカーとして処方する請求項65記載の方法。
【請求項84】
組成物が、1つまたは複数の担体、賦形剤、溶媒または基剤を含む請求項65記載の方法。
【請求項85】
組成物が、治療上または化粧品上有効な量のR−スポンジンを含む請求項65記載の方法。
【請求項86】
投与が、爪、ひずめまたは鉤爪の成長が減少される結果になる請求項65記載の方法。
【請求項87】
投与が、爪、ひずめまたは鉤爪の強度が減少される結果になる請求項65記載の方法。
【請求項88】
対象に、R−スポンジンの発現を阻害する因子を含む組成物を投与することを含む、対象における爪、ひずめまたは鉤爪の成長を阻害するか、または弱体化する方法。
【請求項89】
因子が、RNA干渉を介してR−スポンジンの発現を阻害する請求項88記載の方法。
【請求項90】
因子が、低分子干渉RNA(siRNA)である請求項88記載の方法。
【請求項91】
因子が、アンチセンスオリゴヌクレオチドである請求項88記載の方法。
【請求項92】
R−スポンジンが、R−スポンジン1、R−スポンジン2、R−スポンジン3、およびR−スポンジン4より構成される群から選択される請求項88記載の方法。
【請求項93】
対象が、哺乳類である請求項88記載の方法。
【請求項94】
対象が、ヒトである請求項88記載の方法。
【請求項95】
対象が、家庭用愛玩動物である請求項88記載の方法。
【請求項96】
対象が、農業用途のために飼育された哺乳類である請求項88記載の方法。
【請求項97】
対象が、ネコである請求項88記載の方法。
【請求項98】
対象が、イヌである請求項88記載の方法。
【請求項99】
対象が、ウマである請求項88記載の方法。
【請求項100】
対象が、ウシである請求項88記載の方法。
【請求項101】
対象が、ヒツジである請求項88記載の方法。
【請求項102】
対象が、ブタである請求項88記載の方法。
【請求項103】
対象が、鳥類である請求項88記載の方法。
【請求項104】
対象が、ニワトリである請求項88記載の方法。
【請求項105】
組成物を、多くの爪、ひずめまたは鉤爪の内の1つに、または周辺に投与する請求項88記載の方法。
【請求項106】
組成物を、局所的に投与する請求項88記載の方法。
【請求項107】
組成物を、クリームまたはローションとして処方する請求項88記載の方法。
【請求項108】
組成物を、油状物として処方する請求項88記載の方法。
【請求項109】
組成物を、塗料またはラッカーとして処方する請求項88記載の方法。
【請求項110】
組成物が、1つまたは複数の担体、賦形剤、溶媒または基剤を含む請求項88記載の方法。
【請求項111】
組成物が、治療上または化粧品上有効な量のR−スポンジンを含む請求項88記載の方法。
【請求項112】
投与が、爪、ひずめまたは鉤爪の成長が減少される結果になる請求項88記載の方法。
【請求項113】
投与が、爪、ひずめまたは鉤爪の強度が減少される結果になる請求項88記載の方法。
【請求項114】
R−スポンジン、あるいは、それの変異体、誘導体、フラグメント、相同体、パラログ、擬態物またはペプチド擬態物を含む組成物を、対象に投与することを含む、対象におけるwnt信号伝達経路を活性化させる方法。
【請求項115】
R−スポンジンが、R−スポンジン1、R−スポンジン2、R−スポンジン3、およびR−スポンジン4より構成される群から選択される請求項114記載の方法。
【請求項116】
組成物が、R−スポンジン遺伝子のエキソン3によりコードされるペプチド、あるいは、それの変異体、誘導体、フラグメント、相同体、パラログ、擬態物またはペプチド擬態物を含む請求項114記載の方法。
【請求項117】
組成物が、R−スポンジン遺伝子のエキソン5によりコードされるペプチド、あるいは、それの変異体、誘導体、フラグメント、相同体、パラログ、擬態物またはペプチド擬態物を含む請求項114記載の方法。
【請求項118】
組成物が、R−スポンジン、あるいは、それの変異体、誘導体、フラグメント、相同体、パラログ、擬態物またはペプチド擬態物を含む医薬用、獣医学用、または化粧品用組成物。
【請求項119】
R−スポンジンが、R−スポンジン1、R−スポンジン2、R−スポンジン3、およびR−スポンジン4より構成される群から選択される請求項118記載の組成物。
【請求項120】
組成物が、R−スポンジン遺伝子のエキソン3によりコードされるペプチド、あるいは、それの変異体、誘導体、フラグメント、相同体、パラログ、擬態物またはペプチド擬態物を含む請求項118記載の組成物。
【請求項121】
組成物が、R−スポンジン遺伝子のエキソン5によりコードされるペプチド、あるいは、それの変異体、誘導体、フラグメント、相同体、パラログ、擬態物またはペプチド擬態物を含む請求項118記載の組成物。
【請求項122】
組成物が、多くの爪、ひずめまたは鉤爪の内の1つに、または周辺に投与するために処方される請求項118記載の組成物。
【請求項123】
組成物を、局所的に投与するために処方する請求項118記載の組成物。
【請求項124】
組成物を、クリームまたはローションとして処方する請求項118記載の組成物。
【請求項125】
組成物を、油状物として処方する請求項118記載の組成物。
【請求項126】
組成物を、塗料またはラッカーとして処方する請求項118記載の組成物。
【請求項127】
さらに、1つまたは複数の担体、賦形剤、溶媒または基剤を含む請求項118記載の組成物。
【請求項128】
R−スポンジンが治療上または化粧品上有効な量で存在する請求項118記載の組成物。
【請求項129】
R−スポンジン遺伝子中の突然変異について対象を試験することを含む、対象である先天性無爪症を診断する方法。
【請求項130】
対象がヒトである請求項129記載の方法。
【請求項131】
突然変異が、R−スポンジン4遺伝子における突然変異である請求項129記載の方法。
【請求項132】
突然変異が、R−スポンジン4タンパク質の弱化機能、または切断R−スポンジンタンパク質の産生を生じる請求項129記載の方法。
【請求項133】
突然変異が、(a)エクソン2中の16塩基対欠失、(b)26bp欠失エキソン1、(c)エキソン3中の残基65でのシステインのチロシンへのミスセンス突然変異、または(d)付随の明細書および図面で記述および例示される何らかの突然変異より構成される群から選択される請求項129記載の方法。
【請求項134】
請求項118−133のいずれか1項で説明されるとおりの突然変異を検出するためのプライマーおよび/またはプローブ。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図2E】
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【図2F】
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【公開番号】特開2008−44926(P2008−44926A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−7227(P2007−7227)
【出願日】平成19年1月16日(2007.1.16)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2006年7月17日 The Journal of Investigative Dermatology発行の「Journal of Investigative Dermatology 2006年8月号 126巻 付録3」に発表
【出願人】(507016797)ザ トラスティース オブ コロンビア ユニバーシティ インザ シティ オブ ニューヨーク (1)
【Fターム(参考)】