説明

X線で動作する医療機器並びに当該医療機器の作動方法

本発明は、X線で作動する医療機器に関する。この医療機器は、中心放射線に沿って最大強度を有しているX線コーンビームを放射するX線源と、当該X線放射源をアイソセンターを中心として回転させる回転装置とを有している。前記X線コーンビームの中心軸はアイソセンターに対して離心して配向されており、殊にアイソセンターを中心とした回転時には、種々の空間方向から送出された中心放射線が、アイソセンターを中心とした仮想円に対して正接する。本発明はさらに、医療機器を作動させる方法に関する。この方法は、中心放射線に沿って最大強度を有しているX線コーンビームを送出するX線源を準備するステップと、当該X線源をアイソセンターを中心として回転させるステップとを有しており、前記X線コーンビームの中心軸はアイソセンターに対して離心して配向されており、殊にアイソセンターを中心とした回転時には、種々の空間方向から送出された中心放射線が、アイソセンターを中心とした仮想円に対して正接する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線で動作する医療機器、殊に放射線治療機器、並びに当該医療機器の作動方法に関する。
【0002】
種々の空間方向からX線を最終的な目標体に照射するのには通常、目標体全体をできるだけ均一に照射することが必要となる。X線の照射は例えば、診断時には画像出力の目的で、または治療時には線量合成の目的で行われる。
【0003】
通常使用されるX線源は優先的な放射方向を有しており、この優先放射方向に沿って線量が最大になり、かつこの放射方向は通常は目標体の中心に向かって配向されているので、目標体の縁部領域の照射は通常、目標体の中心と比べて低減されている。
【0004】
これまで放射線治療機器および画像出力機器におけるこの問題は、減衰器(英語でbeam flattening filter:線束平坦用フィルター)によって解決されてきた。
【0005】
本発明の課題は、目標体を迅速かつ効果的に照射することができる、X線で動作する医療機器を提供することである。さらに、本発明の課題は、目標体を迅速かつ効果的に照射することを可能にする方法を提供することである。
【0006】
本発明の課題は、独立請求項の特徴部分に記載された構成によって解決される。本発明の有利な発展形態は、従属請求項の特徴部分に記載されている。
【0007】
本発明の、X線で動作する医療機器は
・中心放射線に沿って最大線量を有するX線を送出するX線源と、
・当該X線源をアイソセンターを中心として回転させる回転装置とを有しており、
前記X線の中心軸はアイソセンターに対して離心して配向されており、殊にアイソセンターを中心とした回転時には、種々の空間方向から送出された中心放射線が、アイソセンターを中心とした仮想円に対して正接する。
【0008】
本発明は、X線源のビームローブ、すなわちX線源から送出されたX線コーンビームは通常、中心放射線に沿って最大になるという、知識に基づいている。X線源の放射ローブは中心よりも、むしろ縁部領域に向けられている。すなわち、照射は種々の空間方向から近軸ないしは正接して行われる。
【0009】
ビームローブ自体が不均一な線量プロファイルを示している場合でも、目標体を中心としてX線源を回転させることによって、全体として、目標体全体の照射が格段に均一になる。当該より均一な照射は、最高線量を中心にして中心放射線に沿って減衰するビームローブの不均一な線量プロファイルと、ビームローブの離心した配向と、ビームローブの回転との組み合わせによって実現される。
【0010】
すなわち照射の均一化に、X線源の幾何学形状的な配置および配向が、X線源の回転ととともに寄与する。
【0011】
均一化が実質的に吸収部によって行われてきたこれまでの解決方法と比べて、X線源の格段に良好な効率が得られる。
【0012】
すなわち吸収部は、ビーム出力の吸収がより少なくなるように構成される。なぜならもはや吸収部だけが、線量プロファイルの均一化を担わなければいけないのではないからである。むしろ吸収部を完全に省くことができる。従って、X線源の全線量出力が目標体に入射する。後者の場合には、X線ビーム路内には、均一化のための平坦化フィルターは設けられていない。従って全体的に、損失を伴う、ビームを破滅させる吸収部を省くことができる。
【0013】
これによって、目標体に照射される線量率は高くなる。放射持続時間は、腫瘍体にわたって形成される分数、(所望の線量)/(局部的な線量率)に依存する。最小線量率が生じる照射されるべき場所、すなわち、最も弱く照射される領域が、照射持続時間を定める。従って、本発明の医療機器によって、時間を短くすることができる。
【0014】
不均一な線量分布の場合にはさらに、高い線量率で同時に照射される複数の場所が、場合によっては、照射持続時間の一部の間、放射から保護されることが有効である。なぜなら、そうでない場合には、これらの場所に過度に高い線量が加えられてしまうからである。均一な線量分布は、この問題も解決する。過度に高い線量率を有する箇所が、短時間後例えばコリメータによってマスクされる必要はない。他の場所に、低い線量率で、所望の線量を加えることができるからである。
【0015】
殊にこの機器は、放射線治療機器として形成される。これは例えば、アイソセンターを中心に回転する治療用のX線源を備える。
【0016】
コリメータはX線のビーム路内に設けられる。これによって、X線のビームプロファイルが側方で制限されて、例えば、照射されるべき目標体に合わせられる。従って、照射されるべき対象物において特定の部分のみに照射することができる。
【0017】
医療用機器を作動させる本発明の方法は、以下のステップを有している:
X線を送出するX線源を準備する。このX線は中心放射線に沿って最大強度を有している。アイソセンターを中心にしてX線源を回転させる。この回転の間、X線の中心軸はアイソセンターに対して離心して配向されている。従って殊にアイソセンターを中心とした回転時には、種々の空間方向から送出された中心放射線が、アイソセンターを中心とした仮想の円に対して正接する。
【0018】
有利には、X線のビーム路内には、減衰フィルターは配置されていない。X線のビーム路は、側方プロファイルを形成するためにコリメートされる。
【0019】
本発明では、中心放射線において最大強度を有しており、X線で作動する医療用機器の場合には、X線源からアイソセンターを中心として種々の空間方向から送出されるX線は、アイソセンターを中心とした領域における線量均一化のために使用される。これは、X線の中心放射線が各空間方向において、側方でアイソセンターを通過するように配向されることによって行われる。
【0020】
幾つかの特徴、その利点およびその作用の上述した説明および後続の説明は、詳細に個々の場合において明確に言及されることなく、装置カテゴリーにも、方法カテゴリーにも関係する;本願で開示されている個々の特徴は、示された組み合わせとは異なった組み合わせにおいても、本発明の本質を成す。
【0021】
従属請求項の特徴による発展形態を有する本発明の実施形態を、以下の図面に基づいてより詳細に説明する。しかし、本発明はこれに制限されない。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】従来技術に従った放射線治療機器での線量形成の原理図
【図2】本発明による放射線治療機器の実施形態での線量形成の原理図
【実施例】
【0023】
図1に基づいて、従来技術の、放射線治療機器でのアイソセンターを中心とした線量形成の原理を説明する。
【0024】
放射線治療機器11は、回転可能なガントリー13を含んでいる。このガントリーによって放射線源15は、照射されるべき対象物の周りを回転する。放射線源から、円錐状のX線がアイソセンター19に向けられる。このX線は、コリメータ17によって側方で制限される。照射は、通常、異なる方向から、アイソセンター19を中心にX線源15を回転させて行われる。これは、ガントリーの、破線によって示された位置によって示されている。
【0025】
円錐状のX線の中心放射線21はここでアイソセンター19に入射する。X線は、ここでガウス曲線によって示されている線量分布23を有している。これは中心放射線21に沿って、縁部に向かって低減する最大線量を有している。従って目標体に粒子線が照射されると、アイソセンター19における線量率は最大になり、縁部に向かって低減する。
【0026】
この原理は加えられた、反対に示されている2つの放射方向によって形成される線量によって明らかである。最大線量は目標体を同じポイントで照射する。従って、2つの放射方向によって目標体内に加えられる線量は、X線における不均一な線量分布23と同じ、不均一の分布を有している。
【0027】
従って通常、放射線治療機器11では、従来技術に従って、平坦用フィルター(ここでは図示されていない)が使用される。この平坦用フィルターはX線のビーム路内に配置されており、不均一な線量プロファイルを均一にする。しかしこれは、平坦用フィルター内で破壊される放射線線量を犠牲にして行われる。
【0028】
図2は、本発明による放射線治療機器11での線量形成の原理を示している。
【0029】
X線源15の中心放射線21は、ここではアイソセンター19に向けて配向されておらず、所期のように近軸でアイソセンターを通過する。これによって、アイソセンター19を中心としたX線源15の回転時に、送出された中心放射線21は、正接して、アイソセンターを中心とした円25に位置する。
【0030】
このような幾何学的形状の構造の場合にアイソセンター19を中心に形成される線量は、アイソセンター19へ中心放射線23を配向した時に加えられるであろう線量と比べて格段に均一になる。
【0031】
これは、反対向きに示された2つの放射方向に基づいて明確に示される。各放射方向によって加えられる最大線量は、もはやアイソセンター19内にはなく、それぞれ、アイソセンター19の反対の箇所に位置する。アイソセンター19内自体では、この反対の方向の放射によって線量部分が合算される。これは明らかに最大線量を下回る。線量部分の合算によって、アイソセンター19内に、個々の線量部分自体よりも最大線量に格段に近い線量が加えられる。全体的にこれによって、格段に均一な線量が加えられる。
【0032】
理想的なケースでは、むしろ、平坦用フィルターが完全に省かれる。この場合には、線量出力が平坦用フィルターにおいて破壊されない。これによって、目標体により高い線量率が照射される。これによって照射時間は格段に短くなる。
【0033】
付加的に、ここでもコリメータ17が設けられる。これは加えられる線量を目標体に合わせ、制限する。
【0034】
原理を放射線治療機器11に基づいて説明した場合でも、同じ原理、アイソセンター19を中心に形成される線量分布の線量均一化が得られる。これは、X線によって作動する画像形成機器、例えばコンピュータトモグラフ(CT)またはコーンビーム−CTに伝送される。
【符号の説明】
【0035】
11 放射線治療機器、 13 ガントリー、 15 X線源、 17 コリメータ、 19 アイソセンター、 21 中心放射線、 23 線量分布、 25 円

【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線で作動する医療機器であって、
・中心放射線に沿って最大強度を有するX線コーンビームを送出するX線源と、
・当該X線放射源をアイソセンターを中心に回転させる回転装置とを有しており、
前記X線コーンビームの中心軸は、アイソセンターを近軸で通過するように配向されている、
ことを特徴とする、X線で作動する医療機器。
【請求項2】
前記アイソセンターを中心に回転させた時に、異なる空間方向から送出された前記中心放射線が前記アイソセンターを中心とした仮想の円に対して正接するように、前記X線コーンビームの中心軸が前記アイソセンターを近軸で通過するように配向されている、請求項1記載のX線で作動する医療機器。
【請求項3】
前記医療機器は放射線治療機器として構成されている、請求項1または2記載の、X線で作動する医療機器。
【請求項4】
前記X線コーンビームのビーム路内にコリメータが設けられており、X線のビームプロファイルを側方で制限する、請求項1から3までのいずれか1項記載の、X線で作動する医療機器。
【請求項5】
前記X線コーンビームのビーム路内に、空間的な線量均一化に用いられる減衰用フィルターが配置されていない、請求項1から4までのいずれか1項記載の、X線で作動する医療機器。
【請求項6】
医療機器を作動させる方法であって、
・中心放射線に沿って最大強度を有しているX線コーンビームを送出するX線源を準備するステップと、
・当該X線源をアイソセンターを中心に回転させるステップとを有しており、
前記X線コーンビームの中心軸を、アイソセンターを近軸で通過するように配向する、ことを特徴とする、医療機器を作動させる方法。
【請求項7】
前記アイソセンターを中心に回転させた時に、異なる空間方向から送出された中心放射線が、アイソセンターを中心とした仮想の円に対して正接するように、前記X線コーンビームの中心軸を、アイソセンターを近軸で通過するように配向する、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記X線コーンビームのビーム路内に、空間的な線量均一化に用いられる減衰用フィルターを配置しない、請求項6または7記載の方法。
【請求項9】
前記X線コーンビームをコリメートする、請求項6から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
中心放射線に沿って最大強度を有し、かつX線で作動する医療機器においてX線源からアイソセンターの周りに異なる空間方向から送出されるX線コーンビームの中心放射線を各空間方向でアイソセンターの側方を通過するように配向することによる、前記アイソセンターを中心とした領域における線量均一化のための当該X線コーンビームの使用。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2013−520255(P2013−520255A)
【公表日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−554264(P2012−554264)
【出願日】平成23年2月2日(2011.2.2)
【国際出願番号】PCT/EP2011/051459
【国際公開番号】WO2011/104075
【国際公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(390039413)シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト (2,104)
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Wittelsbacherplatz 2, D−80333 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】