説明

X線イメージ管の製造方法

【課題】外囲器に設ける電気接続部を少なくできるX線イメージ管の製造方法を提供する。
【解決手段】外囲器12に複数の電気接続部24が設けられるとともに外囲器12内に電気接続部24と接続されて複数の電極20が配置されるX線イメージ管11の製造方法である。外囲器12内にフォトセル31を配置し、このフォトセル31の一対の端子40,41を電極20が接続された電気接続部24aを含む2つの電気接続部24に接続する。外囲器12内で成膜される膜の膜厚測定時に、外囲器12内に照射される光を受けたフォトセル31からの出力信号を電気接続部24から外部に出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、膜厚を測定するためのフォトセルを用いたX線イメージ管の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、X線イメージ管は、外囲器内に入力部、入力部に対向する出力部、入力部と出力部との間に位置する集束電極および陽極などが設置されて構成されている。入力部は入力蛍光面および光電変換面を積層した構成となっており、出力部は出力蛍光面で構成されている。また、外囲器には、入力部を含む陰極、集束電極、陽極などの複数の電極をそれぞれ外部と電気的に接続するための複数の電気接続部が設けられている。
【0003】
そして、X線イメージ管に入射したX線は、入力部の入力蛍光面により蛍光に変換されてから光電変換面により電子に変換される。この電子は、電子ビームとなって集束電極および陽極などによる電子レンズ系によって加速集束され、出力部の出力蛍光面に衝突して可視光像に変換されるように構成されている。
【0004】
このようなX線イメージ管の製造工程において、外囲器内に設置した入力部に例えばアンチモンなどの所定の材料を蒸着させて光電変換面を成膜する工程がある。この成膜工程では、入力部に蒸着された膜厚を測定するために、予め外囲器内にフォトセルを設置した状態で成膜工程を実施することにより、外囲器内で入力部とともにフォトセルの受光面にも成膜される。そして、成膜前に外囲器内に一定光量の光を導入してフォトセルで測定した測定値と、成膜後に外囲器内に一定光量の光を導入してフォトセルで測定した測定値とを比較し、フォトセルの受光面に成膜された膜厚を測定することにより、入力部に成膜された膜厚を判定している。
【0005】
フォトセルを外囲器内に設置するには、フォトセルを外囲器に設けたフォトセル専用の電気接続部に接続し、フォトセルからの出力信号をフォトセル専用の電気接続部から外部に出力している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−186600号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
X線イメージ管の外囲器には複数の電気接続部が設けられるが、外囲器内に配置される複数の電極を接続するための電気接続部以外にも、フォトセルを接続するためのフォトセル専用の電気接続部を設けているため、外囲器に設ける電気接続部の数が多くなり、製造工数が増加し、コストが高くなる問題がある。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、外囲器に設ける電気接続部を少なくできるX線イメージ管の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本実施形態は、外囲器に複数の電気接続部が設けられるとともに外囲器内に電気接続部と接続されて複数の電極が配置されるX線イメージ管の製造方法である。外囲器内にフォトセルを配置し、このフォトセルの一対の端子を電極が接続された電気接続部を含む2つの電気接続部に接続する。外囲器内で成膜される膜の膜厚測定時に、外囲器内に照射される光を受けたフォトセルからの出力信号を電気接続部から外部に出力する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】X線イメージ管の製造方法の一実施形態を示し、X線イメージ管の一部の断面図である。
【図2】同上X線イメージ管の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0012】
図2に示すように、X線イメージ管11は、金属製の外囲器(真空外囲器)12を有し、この外囲器12にはX線の入射側に入力窓13が形成され、この入力窓13に対して反対側に出力窓14が形成されている。
【0013】
外囲器12内には、入力窓13の内側に入力窓13から入射したX線を電子に変換して放出する入力部15が設置され、出力窓14の内側に入力部15からの電子を可視光像に変換して出力する出力部16が形成されている。さらに、外囲器12内には、入力部15を含む陰極17、入力部15から出力部16に向かって進行する電子の進路に沿って電子を加速および集束する電子レンズを構成する複数の集束電極18および陽極19を含む、複数の電極20が設置されている。これら電極20は外囲器12に対して絶縁された状態で外囲器12内に設置されている。
【0014】
入力部15は、入力窓13に向かって凸曲面に形成された入力基板、この入力基板の入力窓13と対向する面とは反対側の面に形成されてX線を蛍光に変換する入力蛍光面、およびこの入力蛍光面に積層されて蛍光を電子に変換する光電変換面を有している。また、出力部16には、電子を可視光に変換する出力蛍光面が形成されている。また、複数の集束電極18および陽極19は環状に形成されている。
【0015】
図1に示すように、入力部15は環状の支持フレーム23によって外囲器12内に支持されている。この支持フレーム23は、金属製で、入力部15が溶接にて固定されているとともに電気的に接続されている。
【0016】
外囲器12には、入力部15の近傍位置に、入力部15が電気的に接続される電気接続部24aが設けられている。この電気接続部24aは、外囲器12に開けられた貫通孔を閉塞する例えばガラスなどの絶縁部25を貫通し、外囲器12とは絶縁された状態に設けられている。金属製のワイヤ26の一端が支持フレーム23に溶接によって電気的に接続され、他端が電気接続部24aに溶接によって電気的に接続され、中間部が例えばガラスなどの絶縁部材27で外囲器12に支持されている。このワイヤ26および支持フレーム23を介して入力部15と電気接続部24とが電気的に接続されている。
【0017】
なお、図1には、入力部15が接続される電気接続部24aしか示していないが、外囲器12には各電極20毎に同様の電気接続部24が設けられ、これら各電気接続部24と各電極20とがそれぞれワイヤ26などの接続部材で電気的に接続されている。また、外囲器12の金属製の外囲器本体12aも、他の電気接続部24とは絶縁されている電気接続部24として構成されている。
【0018】
また、支持フレーム23には、フォトセル31が設置されている。このフォトセル31は、密閉された筐体32、およびこの筐体32内に配置された例えばフォトダイオードなどの光電変換素子33を有している。
【0019】
筐体32は、金属製で筒状のケース34、このケース34の一端開口を閉塞する透明なガラス板35、および他端開口を閉塞する絶縁板36を有している。
【0020】
光電変換素子33は、受光面をガラス板35に対向させて絶縁板36に取り付けられている。光電変換素子33が例えばフォトダイオードの場合、アノードおよびカソードを有し、アノードと絶縁板36を貫通するリード37とが例えばワイヤボンディングによって形成される溶断可能部としてのワイヤ38で電気的に接続され、カソードがワイヤ39でケース34に電気的に接続されている。ワイヤ38は、例えば金などの材料で細く形成され、外部から所定の電流値以上の溶断電流が流れることで溶断可能としている。
【0021】
光電変換素子33のアノードに接続されたリード37と、光電変換素子33のカソードに接続されたケース34とが、フォトセル31の一対の端子40,41として構成されている。
【0022】
フォトセル31のケース34が支持フレーム23に設けられた開口部23aに嵌め込まれて溶接にて固定されているとともに電気的に接続され、フォトセル31のリード37が外囲器12に溶接にて固定されているとともに電気的に接続されている。これにより、フォトセル31の一方の端子40がリード37によって外囲器12に電気的に接続され、他方の端子41が支持フレーム23およびワイヤ26を通じて電気接続部24aに電気的に接続されている。また、支持フレーム23に固定されたフォトセル31のガラス板35の表面は、入力部15の蛍光入力面および光電変換面が積層形成される面に対向されている。
【0023】
そして、このように構成されているX線イメージ管11の製造工程において、入力部15の蛍光入力面に光電変換面の膜を形成する成膜工程がある。
【0024】
この成膜工程にあたっては、予め、外囲器12内にフォトセル31を配置し、このフォトセル31の一対の端子40,41を電極20が接続された電気接続部24aを含む2つの電気接続部24に接続しておく。すなわち、上述したように、フォトセル31の一方の端子40をリード37によって外囲器本体12aに電気的に接続し、他方の端子41を支持フレーム23およびワイヤ26を通じて入力部15用(陰極17用)の電気接続部24aに電気的に接続する。
【0025】
さらに、外囲器12の外部において、外囲器本体12aと電気接続部24aとの間にフォトセル31からの出力信号を測定する測定器を接続し、外囲器12に設けられている図示しない光導入部から外囲器12内に一定光量の光を照射する。この外囲器12内に照射された一定光量の光がフォトセル31のガラス板35を透過して光電変換素子33に入射し、光電変換素子33が光の入射量に応じた出力信号を外囲器本体12aおよび電気接続部24aを通じて測定器に出力する。測定器は、光電変換素子33からの出力信号を入力し、基準となる初期測定値として記憶する。
【0026】
成膜工程では、外囲器12内において、入力部15の入力蛍光面に例えばアンチモンなどの所定の材料を蒸着させて所定の膜厚の光電変換面を成膜する。このとき、フォトセル31のガラス板35の表面にも、入力部15に形成される膜の膜厚と同じ膜厚の膜が成膜される。
【0027】
この成膜工程で成膜された膜の膜厚を、フォトセル31を用いて測定する。すなわち、外囲器12に設けられている図示しない光導入部から外囲器12内に一定光量の光を照射する。この外囲器12内に照射された一定光量の光がフォトセル31のガラス板35の表面に蒸着された膜およびガラス板35を透過して光電変換素子33に入射し、光電変換素子33が光の入射量に応じた出力信号を外囲器本体12aおよび電気接続部24aを通じて測定器に出力する。このとき、光電変換素子33が光の入射量は、ガラス板35の表面に蒸着された膜の膜厚に応じた光の入射量となる。
【0028】
測定器は、光電変換素子33からの出力信号を入力し、成膜後の測定値を取得して基準となる初期測定値と比較するとともに、予め測定によって特定されている膜厚と光電変換素子33の出力値との関係に基づいて、フォトセル31のガラス板35の表面に成膜された膜厚すなわち入力部15に成膜された膜厚を判定する。
【0029】
また、フォトセル31を用いた膜厚測定後には、外囲器12の外部において、フォトセル31の一対の端子40,41が接続された外囲器本体12aおよび電気接続部24aに溶断電源を接続し、外囲器本体12aおよび電気接続部24aを通じてフォトセル31に所定の溶断電流を流す。
【0030】
このとき、外囲器本体12aからリード37およびワイヤ38を通じて光電変換素子33のアノードに対して溶断電流を流すことにより、例えば金などの材料で細く形成されているワイヤ38が溶断する。ワイヤ38を溶断させることにより、フォトセル31が接続された一対の端子40,41が接続された外囲器本体12aと電気接続部24aとの間を遮断し、絶縁する。
【0031】
このように、X線イメージ管11の製造方法によれば、フォトセル31の一対の端子40,41を電極20が接続された電気接続部24aを含む2つの電気接続部24に接続し、外囲器12内で成膜される膜の膜厚測定時に、外囲器12内に照射される光を受けたフォトセル31からの出力信号を電気接続部24から外部に出力するため、外囲器12にフォトセル31の専用の電気接続部を新たに追加することなく、フォトセル31を用いた測定回路を形成することができ、外囲器12に設ける電気接続部を少なくでき、製造工数を削減し、コストアップを抑制することができる。
【0032】
さらに、フォトセル31を用いた膜厚測定後には、外部からフォトセル31が接続された電気接続部24を通じてフォトセル31に所定の溶断電流を流すため、フォトセル31のワイヤ38を溶断させ、フォトセル31が接続された2つの電気接続部24間を遮断し、絶縁することができる。これにより、電極20を接続する電気接続部24をフォトセル31の接続に共用していても、X線イメージ管11の使用時には電気接続部24を電極20への通電に正常に使用できる。
【0033】
また、フォトセル31の一方の端子40は外囲器12に接続し、他方の端子41は複数の電極20のうちのX線を電子に変換する入力部15である陰極17と接続される電気接続部24aに接続するため、フォトセル31を入力部15に成膜する膜厚の測定に利用できる。
【0034】
なお、フォトセル31の一対の端子40,41を接続する電気接続部24は、外囲器本体12aおよび入力部15用(陰極17用)の電気接続部24aに限らず、他の電極20用の電気接続部24でもよい。
【0035】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0036】
11 X線イメージ管
12 外囲器
15 入力部
17 陰極
20 電極
24 電気接続部
31 フォトセル
38 溶断可能部としてのワイヤ
40,41 端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外囲器に複数の電気接続部が設けられるとともに前記外囲器内に前記電気接続部と接続されて複数の電極が配置されるX線イメージ管の製造方法において、
前記外囲器内にフォトセルを配置し、このフォトセルの一対の端子を前記電極が接続された前記電気接続部を含む2つの前記電気接続部に接続し、
前記外囲器内で成膜される膜の膜厚測定時に、前記外囲器内に照射される光を受けた前記フォトセルからの出力信号を前記電気接続部から外部に出力する
ことを特徴とするX線イメージ管の製造方法。
【請求項2】
前記フォトセルは、所定の溶断電流が流れることで溶断して一対の端子間を遮断する溶断可能部を有しており、
前記膜厚測定後に、外部から前記電気接続部を通じて前記フォトセルに所定の溶断電流を流し、前記フォトセルの前記溶断可能部を溶断させて前記フォトセルが接続された2つの前記電気接続部間を絶縁する
ことを特徴とする請求項1記載のX線イメージ管の製造方法。
【請求項3】
前記フォトセルの一方の端子は前記外囲器に接続し、他方の端子は複数の前記電極のうちのX線を電子に変換する入力部である陰極と接続される電気接続部に接続する
ことを特徴とする請求項1または2記載のX線イメージ管の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−84366(P2013−84366A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−221825(P2011−221825)
【出願日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(503382542)東芝電子管デバイス株式会社 (369)
【Fターム(参考)】