説明

X線コンピュータ断層撮像装置、医用画像処理装置、及び医用画像処理方法

【課題】ユーザーの画像診断の質を向上させること。
【解決手段】X線を発生するX線管と、前記X線管から発生され被検体を透過したX線を検出するX線検出器と、前記X線検出器の出力に基づいて前記被検体の胸部を対象とした第1ボリュームデータを再構成するボリュームデータ再構成ユニットと、前記第1ボリュームデータにおける前記被検体の肺野領域を特定する肺野領域特定ユニットと、前記肺野領域において低CT値領域と低CT値以外の領域とが弁別された第2ボリュームデータを発生する弁別ユニットと、前記第2ボリュームデータに基づいて、前記肺野領域に対する前記低CT値領域の存在割合に関する2次元分布を表す画像を発生する画像発生ユニットと、前記2次元分布を表す画像を表示する表示ユニットと、を具備するX線コンピュータ断層撮像装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、X線コンピュータ断層撮像装置、医用画像処理装置、及び医用画像処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
X線コンピュータ断層撮像装置を用いて、被検体の胸部を対象とした撮像を行うことで得られた、肺野領域が表示されたMPR画像を観察することで、ユーザーが肺野領域内における肺気腫の存在の有無や肺気腫の分布を目視で把握するという方法がある。また、X線コンピュータ断層撮像装置が、CT値を対象とした閾値処理を行うことにより肺野領域から抽出された、低CT値領域を色付して表示するという方法もある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記2つの方法では肺野領域における低CT値領域の分布を、特定の断面位置におけるMPR画像でしか確認できない。また、ユーザーが、低CT値領域の分布を目視で確認するため、低CT値領域の存在の有無や低CT値領域の分布状態を把握するのに時間を要してしまう。さらに、低CT値領域の存在の有無、及び低CT値領域の分布状態について、ユーザー間で異なる判断をする可能性がある。
【0004】
目的は、ユーザーの画像診断の質を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本実施形態に係るX線コンピュータ断層撮像装置は、X線を発生するX線管と、前記X線管から発生され被検体を透過したX線を検出するX線検出器と、前記X線検出器の出力に基づいて前記被検体の胸部を対象とした第1ボリュームデータを再構成するボリュームデータ再構成ユニットと、前記第1ボリュームデータにおける前記被検体の肺野領域を特定する肺野領域特定ユニットと、前記肺野領域において低CT値領域と低CT値以外の領域とが弁別された第2ボリュームデータを発生する弁別ユニットと、前記第2ボリュームデータに基づいて、前記肺野領域に対する前記低CT値領域の存在割合に関する2次元分布を表す画像を発生する画像発生ユニットと、前記2次元分布を表す画像を表示する表示ユニットと、を具備する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】図1は、本実施形態に係るX線コンピュータ断層撮像装置の内部構成を示すブロック図である。
【図2】図2は、本実施形態に係る画像処理のフローチャートを示す図である。
【図3】図3は、図1の肺野領域特定部により抽出された、肺野領域(肺野領域マスク)の画像を示す図である。
【図4】図4は、図1の2値化ボリュームデータ発生部により抽出された、肺気腫領域(肺気腫領域マスク)の画像を示す図である。
【図5】図5は、図1の2値化ボリュームデータ発生部により発生した色付けされた肺気腫領域マスクを任意の方面で切断した切断面を、図1のMPR画像発生部で発生したMPR断面上に重ねて表示した画像を示した図である。
【図6】図6は、図1の投影画像発生部により発生した、低CT値領域を表す投影画像を示す図である。
【図7】図7は、図6の投影画像をカラースケールに変換した投影分布画像を示す図である。
【図8】図8は、図1の投影画像発生部により発生した肺野領域マスクの投影画像を示す図である。
【図9】図9は、輪郭抽出部により抽出された肺野領域の輪郭画像を示す図である。
【図10】図10は、図7の投影分布画像に図9の輪郭を重ねた画像を示す図である。
【図11】図11は、図1のMPR画像発生部によりボリュームデータから生成された複数のコロナル断層面から、ボリュームデータ内に含まれる低CT値領域の分布を表す投影画像を発生するまでの流れを示した模式図である。
【図12】図12は、図8の投影画像を3次元ヒストグラムにより表した図である。
【図13】図13は、図12の3次元ヒストグラムから発生する3次元プロットを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照しながら本実施形態を説明する。なお、以下の説明において、略同一の機能及び構成を有する構成要素については、同一符号を付し、重複説明は必要な場合にのみ行う。
【0008】
図1は、本実施形態に係るX線コンピュータ断層撮像装置の構成を示した図である。図1に示されているように、X線コンピュータ断層撮像装置は架台(ガントリ)を有する。架台は、円環又は円板状の回転フレーム2を回転可能に支持する。回転フレーム2には、撮像領域中に天板に配置された被検体を挟んで対向するようにX線管球3と、2次元検出器システム4とが取り付けられている。ここで、説明のため、回転フレーム2の回転軸をZ軸、X線管球3の焦点と2次元検出器システム4の中心とを結ぶ撮像中心軸をY軸、YZ軸に直交する軸をX軸と規定する。撮像時には、典型的には、被検体Pは、体軸がZ軸に略一致するように撮像領域内に設置される。このXYZ座標系は、Z軸を回転中心とする回転座標系を構成する。
【0009】
X線管球3は、高電圧発生部5からの高電圧の印加とフィラメント電流の供給を受けてX線を発生する。2次元検出器システム4は、マルチスライス型の場合、チャンネル方向(X軸)に複数のチャンネルを有する検出素子の列をスライス方向(Z軸)に複数配列したものである。2次元アレイ型の場合、2次元検出器システム4は、チャンネル方向(X軸)とスライス方向(Z軸)との両方向に関して緻密に分布される複数のX線検出素子を有する。高電圧発生部5は、ホストコントローラからの指示情報に従って、スリップリング1を介してX線管球に高電圧を印加する。
【0010】
ホストコントローラ6は、図示しないCPU(central processing unit)及びメモリを含んでいる。ホストコントローラ6は、入力装置からの指示に従って、高電圧発生部5及び架台駆動部7等の動作を制御する。高電圧発生部5の制御を行うことにより、回転フレーム2が一定の角速度で連続回転し、X線管球3から連続的又は一定角度毎にX線が発生される。架台駆動部7は、ホストコントローラ6の制御に従って、天板保持機構を駆動可能である。
【0011】
2次元検出器システム4には、データ収集部8(DAS;data acquisition system)が接続される。データ収集部8は、2次元検出器システム4の各チャンネルの電流信号を電圧に変換し、増幅し、デジタル信号に変換する。データ収集部8で収集されたデータ(純生データ)は、光や磁気を使った非接触型又はスリップリング型の非接触データ伝送部9を経由して、前処理部10に送られる。非接触データ伝送部9は、データ収集回路8で収集されたデータ(純生データ)を、前処理部10に送る。前処理部10は、純生データに対してチャンネル間の感度不均一を補正、また主に金属部によるX線強吸収体による極端な信号強度の低下又は信号脱落の補正等の前処理を行う。
【0012】
ボリュームデータ再構成部11は、前処理部10により補正を受けたデータ(投影データ、生データ)に基づいて、撮像時刻の異なる複数のボリュームデータファイル(時系列ボリュームデータファイル)を発生する。図には示されていないが、CPUは、医師及び技師等のユーザーによって入力部12が操作等されることにより指令が入力されると、メモリに記憶しているプログラムを実行する。入力部12は、大きくは、メインコンソール及びシステムコンソールによって構成される。ネットワーク通信部13は、各規定に応じた通信制御を行う。ネットワーク通信部13は、電話回線等の電気的通信回線を通じてPACS(医用画像通信保管システム)等に接続することができる機能を有している。
【0013】
肺野領域特定部14は、ボリュームデータを用いて被検体の肺野領域を特定する。被検体の肺野領域を特定する方法には、様々なものが存在するが、後述する領域拡張法や閾値を用いた処理が挙げられる。肺野領域は空気領域であり、他の臓器とのコントラストが明瞭であるため、閾値処理により比較的容易に肺野領域を抽出できる。
【0014】
2値化ボリュームデータ発生部15は、再構成部11で再構成されたボリュームデータを対象とした閾値処理により、2値化ボリュームデータを発生する。ボリュームデータ内の低CT値領域に画素値1を割り当て、低CT値以外の領域に画素値0を割り当てることにより2値化ボリューム画像を発生する。
【0015】
投影画像発生部16は、2値化ボリュームデータを対象とした加算投影処理を行うことにより、低CT値領域の分布を表す投影画像、及び肺野領域の投影画像を発生する。従って、投影画像における各座標の値は、投影線内に存在し画素値1を有するボクセルの和となる。表示部22は、CPUの制御によって投影画像等を表示する。
【0016】
輪郭抽出部17は、投影画像発生部で発生する肺野領域マスクを投影処理した投影画像に対して、肺野領域の輪郭を抽出する。具体的には、投影画像の全ての画素を対象として、画素値が1以上である画素のうち、画素値が0の画素に隣接している画素を特定することにより、肺野領域の輪郭が抽出される。
【0017】
合成画像発生部18は、輪郭抽出部17において抽出された肺野領域の輪郭を、2値化ボリュームデータを投影した投影画像に重ねた合成画像を発生する。合成画像には、右肺野領域の輪郭、左肺野領域の輪郭、低CT値領域の分布を表す左肺野領域、右肺野領域とが示されている。
【0018】
グラフ発生部19は、後述する式(3)により規格化された低CT領域(肺気腫)の厚みに関する2次元分布を表す投影画像(図8)に基づいて、投影画像を3次元的に表現したグラフを発生する。図13のグラフは、一例として図12のヒストグラムにおける各3次元バーの上面の重心を線で結んだポリゴン形状のグラフである。後述する式(3)により規格化された画素値の2次元分布を表す投影画像(図8)を立体的に表現することにより、低CT値の高低が高さとして表現されるため、図8に示されるような色の濃淡による把握よりも、ユーザーがより明瞭に低CT値領域の分布を把握することが期待できる。
【0019】
記憶部20は、発生したボリュームデータ等の種々のボリュームデータファイル、表示画像等、様々なデータを記憶する。MPR画像発生部21は、ボリュームデータを対象とした任意の切断面を表す画像を発生する。
【0020】
以下図2を参照しながら、本実施形態の画像処理プロセスを説明する。まず、記憶部20において、被検体の胸部を対象としたボリュームデータをメモリ等に入力する(S11)。次に、肺野領域特定部14において、ボリュームデータから領域拡張法等の方法により肺野領域を特定する。領域拡張法とは、操作者により肺野領域内に指定された出発点となる画素(シード点)を与え、それに隣接する画素を濃度値の類似性に基づいて順次統合しながら入力画像内のある領域を抽出する処理である。肺野領域特定部14は、図3に示されるように肺野領域101に画素値1を割り当て、肺野領域以外に画素値0を割り当てることにより、2値画像としての肺野領域マスクを発生する(S12)。
【0021】
次に、2値化ボリュームデータ発生部15において、ボリュームデータを対象とするCT値を用いた閾値処理を肺野領域内に限定して行うことにより、低CT値領域(肺気腫領域)と、低CT値領域以外とを区別(或いは弁別)した2値化ボリュームデータを発生する(S13)。具体的には、図4に示されるように、肺野領域内の低CT値領域102Aに画素値1を割り当て、低CT値領域以外102Bに画素値0を割り当てることにより、2値化ボリュームデータ(肺気腫領域マスク)を発生する。
【0022】
図5は、図1の2値化ボリュームデータ発生部15により発生した、色付けされた肺気腫領域マスクを任意の方面で切断した切断面をMPR断面上に重ねて(加算投影して)表示した画像を示した図である。MPR画像は、カラーバーにおいて、画素値に対応づけられた色で表示される。その後、投影画像発生部16により、3次元の低CT値領域マスクを2次元平面に投影した低CT値領域の投影画像が発生される(S14)。この投影画像を発生するプロセスについて、以下詳細に説明する。
【0023】
まず、発生された低CT値領域マスク(肺気腫領域マスク)のデータが、記憶部20から読み込まれる。例えばアキシャル面の左上を原点とし、横軸をx軸、投影方向をy軸、体軸をz軸となるように低CT値領域マスクに対して座標変換を行う。投影処理は、次の式(1)に示すように、定義された(x,y,z)座標においてx座標とz座標を固定し、低CT値領域マスク内を対象としたy座標の総和を算出する。それにより図8に示されるような投影画像が発生される。
【数1】

【0024】
ここで、Mask_e(x,y,z)は、肺気腫領域マスク(低CT値領域マスク)内の各画素である。また、式(1)の記載では、コロナル断層面が512枚存在することになる。しかし、コロナル断層面の数は512に限られず、任意の整数値を取り得る。式(1)のような計算方法を用いる場合、ボリュームデータを対象として複数のコロナル断層面を発生させ、コロナル断層面を用いて投影画像を発生する方法と、コロナル断層面を発生させずに、ボリュームデータ内の各画素を投影処理することにより投影画像を発生する方法とがある。さらに、断層面は、コロナル断層面に限られるものではなく、後述するように、アキシャル断層面やサジタル断層面など任意の方向の断層面も考えられる。
【0025】
図12は、コロナル断層面を用いる場合における、複数のコロナル断面を用いた投影処理により、投影画像が発生するまでの流れを模式的に示した図である。ここでは、投影方向はコロナル方向に決定される。まず、2値化ボリュームデータ(低CT値領域マスク)を用いて、ここではまず投影処理の簡素化のためにコロナル方向に沿って配置された複数のコロナル断層面を発生する。次に、複数のコロナル断層面の各座標に関して、x座標とz座標を固定し、y方向に沿って全ての画素の画素値を足し合わせることにより、Map_e(x,z)を計算する。コロナル断層面を用いない場合には、2値化ボリュームデータ内の各座標を対象として、x座標とz座標を固定し、y方向に沿って全ての画素の画素値を足し合わせることによりMap_e(x,z)を計算する。
【数2】

【0026】
ここで、Mask_l(x,y,z)は、肺野領域マスク内の各画素である。発生された肺野領域マスクの投影画像(Map_l(x,y,z))の例を図8に示す。(2)式の処理についても(1)式と同様に、肺野領域マスクを用いてコロナル方向に沿って複数のコロナル断層面を発生させ、コロナル断層面を用いて投影画像を発生する方法と、コロナル断層面を発生させずに、ボリュームデータ内の各画素を投影処理することにより投影画像を発生する方法がある。コロナル断層面を用いる場合には、複数のコロナル断層面の各座標に関して、x座標とz座標を固定し、y方向に沿って全てのコロナル断層面における画素の画素値を足し合わせることにより、Map_l(x,z)を計算する。コロナル断層面を用いない場合には、肺野領域マスク内の各座標を対象として、x座標とz座標を固定し、y方向に沿って全ての画素の画素値を足し合わせることにより、Map_l(x,z)を計算する。
【0027】
さらに、以下の式によりMap_e(x,z)をMap_l(x,z)で除することにより、投影軸に沿った低CT値領域の厚みを肺野領域の厚みにより規格化する。それにより、肺野領域に対する肺気腫の進行程度を示す指標として活用することができる。式(1)の左辺に示されるような、投影処理により得られる投影平面における各座標の絶対値は、被検体毎に体厚が異なり実用上はあまり意味を有しないため、このような規格化を行う。
【数3】

【0028】
(3)式で示される値を有する投影画像の例を図6に示す。投影画像発生部により発生した図6に示されるような投影画像では、(3)式に示されるような値に応じたグレーレベルが、低CT値領域103の画素値に割り当てられる。従って、投影画像は、グレーレベルに応じた白黒の濃淡で表現される。
【0029】
また、投影画像発生部は、図6に示されるような投影画像を色付けすることにより、色付けされた投影画像(図7)を発生する。低CT値領域104は、(3)式で示される値と対応付けられたカラーバーにおける特定の色で表示される。S14と並列して、投影画像発生部において、肺野領域内においてのみ、画素値1を有する3次元の肺野領域マスクを2次元平面に投影することにより、肺野領域投影画像を発生する(S15)。S15の画像処理後、肺野領域投影画像を用いて、画素値が0の画素に隣接している画素値が1以上の画素を輪郭抽出部17において抽出することにより肺野領域の輪郭線を抽出する処理を行う(S16)。
【0030】
特定された肺野領域の輪郭を図9に示す。図9に示されるように肺野領域の抽出された輪郭を表示する画像は、右肺野領域の輪郭105と、左肺野領域の輪郭106とを含む。
【0031】
図10は、図9に示されるような抽出された輪郭を図8に示される投影画像に重ねた合成画像である。合成画像は、合成画像発生部18により発生される。合成画像には、右肺野領域107、右肺野領域108、左肺野輪郭109、及び左肺野輪郭110とが含まれる。このように、輪郭と、低CT値領域の分布を表す投影画像とを合成した合成画像を表示することにより、肺野領域内の低CT値領域の位置分布をより明確に把握することが可能となる(S17)。
【0032】
図11は、2値化ボリュームデータから複数のコロナル断面を発生し、投影処理により投影画像を発生するまでの模式図である。2値化ボリュームデータからコロナル方向に沿って配置された複数のコロナル断層面を発生する。xとyを固定し、512枚のコロナル断層面それぞれに存在する画素値Mask_e(x,yi,z)を用いた投影処理により、投影平面Map_e(x,z)を発生する。
【0033】
図12は、式(3)で計算された値を有する投影画像(図8)を3次元ヒストグラムという表現形式で表したものである。z軸における数字は、式(3)で示される値である。このように、式(3)の値を立体的に表示することにより、明瞭に低CT値領域の分布をユーザーが把握できる。
【0034】
図13は、式(3)で計算された値を有する投影画像を表すグラフである。このグラフでは、x’,y’,z’座標系により与えられる。x’,y’,z’はx,,y,Map(x,z)にそれぞれ対応する。これにより、図13に示されるような3次元座標空間(x’,y’,z’)において、対応する点をプロットし、プロットした点を線で結ぶことにより図13に示されるようなプロット画像が発生する。
【0035】
なお、以上述べた実施形態では、肺野領域に対する低CT地領域の存在を、コロナル断面を用いて表示する場合を例示した。しかしながら、本実施形態は、当該例に拘泥されず、例えば肺野領域に対する低CT地領域の存在を、アキシャル断面或いはサジタル断面を用いて表示するようにしてもよい。例えば、サジタル断面を用いる場合、ステップS13において取得されるボリュームデータを、左の肺野領域を含む第1のサブボリュームと右の肺野領域を含む第2のサブボリュームとに分割し、各サブボリュームのそれぞれにつき、サジタル断面を投影面としてS14以降の処理を適用すればよい。最終的には、左の肺野領域に対する低CT地領域の存在を示す第1の画像、及び右の肺野領域に対する低CT地領域の存在を示す第2の画像がそれぞれ個別に取得されることになる。第1及び第2の画像は、ステップS17において、左右の肺野領域の位置調整を行った後、一枚の画像として所定の形態で表示される。
【0036】
以上、本実施形態の一例を示した。本実施形態によって期待される効果を以下に示す。CT画像の全てのスライスを確認しなくても、肺野領域全体における低CT値領域(肺気腫領域)の分布が一目で把握できる。従って、低CT値領域を目視で確認する手間が省け、見落としを低減することが可能となる。また、低CT値領域分布の判断について、ユーザー間の誤差を低減できる可能性がある。
【0037】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0038】
1…スリップリング、2…回転フレーム、3…X線管球、4…2次元検出器システム、5…高電圧発生部、6…ホストコントローラ、7…架台駆動部、8…データ収集部(DAS)データ収集回路、9…非接触データ伝送部、10…前処理部、11…ボリュームデータ再構成部、12…入力部、13…ネットワーク通信部、14…肺野領域特定部、15…2値化ボリュームデータ発生部、16…投影画像発生部、17…輪郭抽出部、18…合成画像発生部、19…グラフ発生部、20…記憶部、21…MPR画像発生部、22…表示部、101…肺野領域マスク、102…2値化ボリュームデータ、102A…2値化ボリュームデータ内に限定された低CT値領域、102B…2値化ボリュームデータ内に限定された低CT値以外の領域、103…2値化ボリュームデータ内のコロナル断層面における低CT値領域、104…投影画像における低CT値領域、105…右肺野領域の輪郭
106…左肺野領域の輪郭、107…右肺野領域の低CT値領域、108…右肺野領域の輪郭、109…左肺野領域の低CT値領域、110…左肺野領域の輪郭

【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線を発生するX線管と、
前記X線管から発生され被検体を透過したX線を検出するX線検出器と、
前記X線検出器の出力に基づいて前記被検体の胸部を対象とした第1ボリュームデータを再構成するボリュームデータ再構成ユニットと、
前記第1ボリュームデータにおける前記被検体の肺野領域を特定する肺野領域特定ユニットと、
前記肺野領域において低CT値領域と低CT値以外の領域とが弁別された第2ボリュームデータを発生する弁別ユニットと、
前記第2ボリュームデータに基づいて、前記肺野領域に対する前記低CT値領域の存在割合に関する2次元分布を表す画像を発生する画像発生ユニットと、
前記2次元分布を表す画像を表示する表示ユニットと、
を具備するX線コンピュータ断層撮像装置。
【請求項2】
前記画像発生部は、複数の時刻にそれぞれ対応する複数の前記2次元分布を表す画像を発生し、
前記表示部は、前記複数の2次元分布を表す画像を動画表示する請求項1記載のX線コンピュータ断層撮像装置。
【請求項3】
前記弁別ユニットは、前記第1ボリュームデータの前記肺野領域に対して閾値処理を行うことにより、前記低CT値領域と前記低CT値以外の領域とが弁別された前記第2ボリュームデータを発生する請求項1記載のX線コンピュータ断層撮像装置。
【請求項4】
前記第2ボリュームデータを用いて、前記低CT値領域の2次元分布を表すグラフを発生するグラフ発生ユニットをさらに具備し、
前記表示ユニットは、前記グラフを表示する請求項1記載のX線コンピュータ断層撮像装置。
【請求項5】
前記グラフ発生ユニットは、前記第2のボリュームデータを用いて、所定の投影方向を基準とする複数の断層面を発生させ、前記複数の断層面に基づいて、前記グラフを発生する請求項4記載のX線コンピュータ断層撮像装置。
【請求項6】
前記画像発生ユニットは、コロナル断面を投影面とする投影処理を実行することにより、前記肺野領域に対する前記低CT値領域の存在割合に関する2次元分布を表す画像を発生する請求項1記載のX線コンピュータ断層撮像装置。
【請求項7】
前記画像発生ユニットは、アキシャル断面を投影面とする投影処理を実行することにより、前記肺野領域に対する前記低CT値領域の存在割合に関する2次元分布を表す画像を発生する請求項1記載のX線コンピュータ断層撮像装置。
【請求項8】
前記画像発生ユニットは、
前記第2ボリュームデータを、前記被検体の左の肺野領域を含む第1のサブボリュームデータと前記被検体の右の肺野領域を含む第2のサブボリュームデータとに分割し、
前記第1及び第2のサブボリュームデータのそれぞれにつき、とする投影処理を実行することにより、前記左の肺野領域に対する前記低CT値領域の存在割合に関する2次元分布を表す画像である第1の画像と、前記右の肺野領域に対する前記低CT値領域の存在割合に関する2次元分布を表す画像である第2の画像と、を発生する請求項1記載のX線コンピュータ断層撮像装置。
【請求項9】
前記表示ユニットは、前記左の肺野領域と前記右の肺野領域との位置が対応するように
前記第1及び第2の画像を表示する請求項8記載のX線コンピュータ断層撮像装置。
【請求項10】
被検体の胸部を対象とするX線CTスキャンによって得られたデータを用いて、第1ボリュームデータを再構成させるボリュームデータ再構成機能ユニットと、
前記第1ボリュームデータにおける前記被検体の肺野領域を特定する肺野領域特定ユニットと、
前記肺野領域において低CT値領域と低CT値以外の領域とが弁別された第2ボリュームデータを発生する弁別ユニットと、
前記第2ボリュームデータに基づいて、前記肺野領域に対する前記低CT値領域の存在割合に関する2次元分布を表す画像を発生する画像発生ユニットと、
前記2次元分布を表す画像を表示する表示ユニットと、
を具備する医用画像処理装置。
【請求項11】
前記画像発生部は、複数の時刻にそれぞれ対応する複数の前記2次元分布を表す画像を発生し、
前記表示部は、前記複数の2次元分布を表す画像を動画表示する請求項10記載の医用画像処理装置。
【請求項12】
前記弁別ユニットは、前記第1ボリュームデータの前記肺野領域に対して閾値処理を行うことにより、前記低CT値領域と前記低CT値以外の領域とが弁別された前記第2ボリュームデータを発生する請求項10記載の医用画像処理装置。
【請求項13】
前記第2ボリュームデータを用いて、前記低CT値領域の2次元分布を表すグラフを発生するグラフ発生ユニットをさらに具備し、
前記表示ユニットは、前記グラフを表示する請求項10記載の医用画像処理装置。
【請求項14】
前記グラフ発生ユニットは、前記第2のボリュームデータを用いて、所定の投影方向を基準とする複数の断層面を発生させ、前記複数の断層面に基づいて、前記グラフを発生する請求項13記載の医用画像処理装置。
【請求項15】
前記画像発生ユニットは、コロナル断面を投影面とする投影処理を実行することにより、前記肺野領域に対する前記低CT値領域の存在割合に関する2次元分布を表す画像を発生する請求項10記載の医用画像処理装置。
【請求項16】
前記画像発生ユニットは、アキシャル断面を投影面とする投影処理を実行することにより、前記肺野領域に対する前記低CT値領域の存在割合に関する2次元分布を表す画像を発生する請求項10記載の医用画像処理装置。
【請求項17】
前記画像発生ユニットは、
前記第2ボリュームデータを、前記被検体の左の肺野領域を含む第1のサブボリュームデータと前記被検体の右の肺野領域を含む第2のサブボリュームデータとに分割し、
前記第1及び第2のサブボリュームデータのそれぞれにつき、とする投影処理を実行することにより、前記左の肺野領域に対する前記低CT値領域の存在割合に関する2次元分布を表す画像である第1の画像と、前記右の肺野領域に対する前記低CT値領域の存在割合に関する2次元分布を表す画像である第2の画像と、を発生する請求項10記載の医用画像処理装置。
【請求項18】
前記表示ユニットは、前記左の肺野領域と前記右の肺野領域との位置が対応するように
前記第1及び第2の画像を表示する請求項17記載の医用画像処理装置。
【請求項19】
被検体の胸部を対象とするX線CTスキャンによって得られたデータを用いて、第1ボリュームデータを再構成し、
前記第1ボリュームデータにおける前記被検体の肺野領域を特定し、
前記肺野領域において低CT値領域と低CT値以外の領域とが弁別された第2ボリュームデータを発生し、
前記第2ボリュームデータに基づいて、前記肺野領域に対する前記低CT値領域の存在割合に関する2次元分布を表す画像を発生し、
前記2次元分布を表す画像を表示すること、
を具備する医用画像処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−99520(P2013−99520A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−226247(P2012−226247)
【出願日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】