説明

X線コンピュータ断層撮影装置

【課題】本発明の目的は、X線コンピュータ断層撮影装置において、メンテナンス時期の適正化を図ることにある。
【解決手段】X線コンピュータ断層撮影装置は、回転フレーム21と、フレームを回転自在に支持する機構と、フレームに搭載されたX線管22と、フレームに搭載されたX線検出器23と、フレームが基準位置を通過することを検出する位置検出部26と、位置検出部の出力に基づいてフレームの累積的な回転数を計数する計数部72と、フレームの累積的な回転数のデータを記憶する記憶部73と具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線管等が被検体の周囲を回転する型のX線コンピュータ断層撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、被検体の断層像を撮影するためのX線コンピュータ断層撮影装置が広く利用されている。現在のX線コンピュータ断層撮影装置の主流は、被検体の周囲を、X線管とX線検出器とが連続的に回転するタイプである。
【0003】
ガントリには、X線管とX線検出器を搭載する円環状の回転フレーム(支持体)を回転駆動するモータが内蔵されている。それにより、X線管とX線検出器は、被検体に対して様々な方向からX線を照射しつつ透過X線の検出を行い、X線コンピュータ断層撮影装置は、その検出データに基づいて被検体の断層像の再構成を行う。ガントリ内には、回転するX線管やX線検出器等に対する電源供給や各種信号の取り出しなどを行うためのスリップリング及びブラシ(例えば、特許文献1)、ベアリング(例えば、特許文献2)、モータによる動力を伝達するためのプーリやベルト(例えば、特許文献3)などが設けられている。
【0004】
ガントリには、一般的に、被検体に対するスキャンのスライス角を変更するために支持体を傾斜(チルト)させる傾斜機構が設けられている(例えば、特許文献4)。この傾斜機構は、例えば特許文献5に示すように、モータ、ローラ、スプロケット、チェーン等を含んで構成されている。
【0005】
寝台には、例えば特許文献6号公報に記載のように、天板を上下方向及び水平方向に駆動させるための駆動手段が設けられている。この駆動手段による動力は、プーリやベルト等を介して天板に伝達される。
【0006】
このように、X線コンピュータ断層撮影装置には、スリップリング、ブラシ、ベアリング、プーリ、ベルト、ローラ、スプロケット、チェーンなどのような各種の消耗部品や清掃を要する部品が使用されていることから、装置の状態を適正に維持するためには、装置の清掃や点検、消耗部品の交換などのメンテナンスを適切なタイミングで行うことが重要となる。
【0007】
X線コンピュータ断層撮影装置のメンテナンスは、従来から、メーカ等が作成した参考データに基づいて設定された清掃周期、点検周期、部品交換周期にて行われることが多い。ここで、参考データとは、メーカ等が装置の寿命計算をするときなどに作成される部品等の耐久性に関するデータである。この参考データは、各メーカ独自の検査方法や負荷値等に基づいて作成されるのが一般的であり、その試験方法は統一されていない。例えば、対象部品を装置に組み込んだときの実際の負荷を与えて試験を行うケースもあれば、或る標準的な負荷値を与えた状態で試験を行うようなケースもある。
【0008】
このような従来のメンテナンスサービスでは、各病院におけるX線コンピュータ断層撮影装置の使用頻度に関わりなく、どの病院についても一律の周期にてメンテナンスが行われることから、次のような問題が生じるおそれがあった。すなわち、使用頻度の高いX線コンピュータ断層撮影装置については、同一期間における部品の消耗が大きいために適切なメンテナンス時期を逃してしまうおそれがあり、それにより装置が故障した場合には、修理期間中は装置を使用できない事態に陥りユーザに不都合が生じる。また、使用頻度の低いX線コンピュータ断層撮影装置については、同一期間における部品の消耗が小さいため、適切なメンテナンス時期の到来前にメンテナンスが行われる場合があり、ユーザは不要なコストを支払わなければならないおそれがある。
【0009】
このように、従来は、X線コンピュータ断層撮影装置の使用期間を基にメンテナンス時期が設定されていた訳だが、メンテナンスのタイミングは、装置の使用頻度、特に駆動部位を構成する部品の実際の動作量に基づいて決定されるべきである。しかし、従来のX線コンピュータ断層撮影装置では、そのような基準でメンテナンス時期を定めることはできなかった。
【0010】
また、X線コンピュータ断層撮影装置に用いられる部品の多数は当該装置用に開発されたものであることを鑑みると、部品の耐久性試験におけるサンプル数は大きく制限されてしまうのが現状である(例えば1〜3個程度)。したがって、参考データの信頼性は高いとは言い難く、メーカ等は、例えば、比較的短めのメンテナンス周期を設定するなどして、装置に不具合が発生する事態を未然に防止するなどの処置を講じていた。更に、X線コンピュータ断層撮影装置の技術者が、その経験を基にメンテナンスの時期を独断で指示する場合もあったが、そのメンテナンス時期の正当性については当然に疑問が生じるものである。
【0011】
このように信頼性や正当性の低いデータに基づくタイミングでメンテナンスが行われると、カスタマーエンジニア側においてはサービス提供時間や労力の浪費に繋がり、ユーザ側においてはコストの浪費や装置故障の危険性に直面することとなる。
【特許文献1】特開平8−280661号公報
【特許文献2】特開平5−305075号公報
【特許文献3】特開2002−112995号公報
【特許文献4】特開2003−52689号公報
【特許文献5】特開平5−91995号公報
【特許文献6】特開2003−126083号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、X線コンピュータ断層撮影装置において、メンテナンス時期の適正化を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の第1局面において、X線コンピュータ断層撮影装置は、回転フレームと、フレームを回転自在に支持する機構と、フレームに搭載されたX線管と、フレームに搭載されたX線検出器と、フレームが基準位置を通過することを検出する位置検出部と、位置検出部の出力に基づいてフレームの累積的な回転数を計数する計数部と、フレームの累積的な回転数のデータを記憶する記憶部と具備する。
本発明の第12面において、X線コンピュータ断層撮影装置は、回転フレームと、前記フレームを回転自在に支持する機構と、前記フレームに搭載されたX線管と、前記フレームに搭載されたX線検出器と、前記フレームの回転に伴ってパルスを発生するパルス発生部と、前記パルスの累積的な数を計数する計数部と、前記計数されたパルスの累積的な数のデータを記憶する記憶部とを具備する。
本発明の第3局面において、X線コンピュータ断層撮影装置は、回転フレームと、前記フレームを回転自在且つ傾斜自在に支持する機構と、前記フレームに搭載されたX線管と、前記フレームに搭載されたX線検出器と、前記フレームの傾斜に伴ってパルスを発生するパルス発生部と、前記パルスの累積的な数を計数する計数部と、前記計数されたパルスの累積的な数のデータを記憶する記憶部とを具備する。
本発明の第4局面において、X線コンピュータ断層撮影装置は、被検体を支持する天板と、前記天板を長手方向に移動自在に支持する機構と、X線管と、前記被検体を挟んで前記X線管に対峙するX線検出器と、前記天板の移動に伴ってパルスを発生するパルス発生部と、前記パルスの累積的な数を計数する計数部と、前記計数されたパルスの累積的な数のデータを記憶する記憶部とを具備する。
本発明の第5局面において、X線コンピュータ断層撮影装置は、被検体を支持する天板と、前記天板を上下方向に移動自在に支持する機構と、X線管と、前記被検体を挟んで前記X線管に対峙するX線検出器と、前記天板の移動に伴ってパルスを発生するパルス発生部と、前記パルスの累積的な数を計数する計数部と、前記計数されたパルスの累積的な数のデータを記憶する記憶部とを具備する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、X線コンピュータ断層撮影装置において、メンテナンス時期の適正化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影装置について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、X線コンピュータ断層撮影装置には、X線管とX線検出器とが1体として被検体の周囲を回転する回転/回転タイプと、リング状に多数の検出素子がアレイされ、X線管のみが被検体の周囲を回転する固定/回転タイプ等様々なタイプがあり、いずれのタイプでも本発明を適用可能である。ここでは、現在、主流を占めている回転/回転タイプとして説明する。また、1スライスの断層像データを再構成するには、被検体の周囲1周、約360°分の投影データが、またハーフスキャン法でも180°+ビュー角分の投影データが必要とされる。いずれの再構成方式にも本発明を適用可能である。ここでは、前者を例に説明する。また、入射X線を電荷に変換するメカニズムは、シンチレータ等の蛍光体でX線を光に変換し更にその光をフォトダイオード等の光電変換素子で電荷に変換する間接変換形と、X線による半導体内の電子正孔対の生成及びその電極への移動すなわち光導電現象を利用した直接変換形とが主流である。X線検出素子としては、それらのいずれの方式を採用してもよいが、ここでは、前者の間接変換形として説明する。また、近年では、X線管とX線検出器との複数のペアを回転フレームに搭載したいわゆる多管球型のX線コンピュータ断層撮影装置の製品化が進み、その周辺技術の開発が進んでいる。本発明では、従来からの一管球型のX線コンピュータ断層撮影装置であっても、多管球型のX線コンピュータ断層撮影装置であってもいずれにも適用可能である。ここでは、一管球型として説明する。
【0016】
(X線コンピュータ断層撮影装置及びそのメンテナンスシステムの構成)
(X線コンピュータ断層撮影装置)
図1に示すように、本実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影装置1は、ガントリ2を有する。ガントリ2は、開口部2Aを有する。データ収集時には、寝台3により被検体が開口部2A内に配置される。寝台3は、矩形の天板31と、その長手方向と上下方向とに移動自在に天板31を支持する寝台機構32とを有する。ガントリ2には、コンピュータ端末4が接続される。コンピュータ端末4は、データ収集(スキャニング)、断層画像再構成、及び画像表示等を制御する。モニタ5は、、断層画像、付帯情報等を表示するために設けられる。キーボード、マウス、トラックボール等の入力装置6は、オペレータが操作入力を行うために設けられる。
【0017】
図2に示すように、ガントリ2は、略円環状の回転フレーム(支持体)21を有する。回転フレーム駆動部25は、回転フレーム21を回転中心軸RAを中心として回転自在に支持する機構と、回転パワーを発生するモータとを有する。回転フレーム駆動部25は、回転フレーム21を傾斜自在に支持する機構と、傾斜パワーを発生するモータとを有する。回転フレーム21には、X線管22と、X線検出器23とが搭載される。X線検出器23は、被検体Pを挟んでX線管22に対峙する。X線検出器23は、被検体Pを透過したX線を検出する。高電圧発生部24は、X線管22に供給されるフィラメント電流を発生し、またX線管22に印加される管電圧を発生するために設けられる。
【0018】
位置検出器26は、回転フレーム21が基準位置、典型的には、頂上のゼロ°の位置を通過することを検出し、パルスを発生する。位置検出器26には例えば光センサユニットが採用される。光センサユニットは固定部に対峙して配置された光源と受光部とを有する。光源と受光部とのギャップを回転フレーム21の特定位置に取り付けられた遮光板が通過するとき、受光部の出力信号が変化する。光センサユニットのパルス発生部は、受光部の出力信号の変化を検出して、パルスを発生する。
【0019】
位置検出器26は、回転パワーを発生するモータの軸変位に応じてパルスを発生するエンコーダ71とともに、X線管22の角度(投影角度)を計測するための既存の構成要素である。計測された投影角度は、コード化されて、投影データに関連付けられる。
【0020】
X線検出器23により検出される透過X線量データは、データ収集部27によって収集される。画像再構成部28は、データ収集部27により収集された投影データに基づいて断層像を再構成する。再構成された断層像は、コンピュータ端末4の制御にしたがってモニタ5に表示される。
【0021】
操作部10は、ガントリ2及び寝台3に対して動作指示を行うための操作入力を行うためのもので、上記コンソールを構成する入力装置6と、ガントリ2の筐体上に設けられた操作パネル2Bとを含んで構成される。オペレータは、この操作部10を操作することにより、検査の開始(X線の照射開始)、ガントリ2の回転フレーム21の回転やチルト、寝台3の天板31の上下移動や水平移動などの各種動作を指示することができる。
【0022】
装置制御部29は、ガントリ2に設けられたCPUやメモリから構成され、オペレータが操作部10に対して入力した操作内容や、位置検出器26による回転フレーム21の回転位置等の検出結果などに基づいて、上記メモリに記憶されたプログラムにしたがって装置各部、特に高電圧発生部24、回転フレーム駆動部25、寝台駆動部32、データ収集部27、画像再構成部28等を制御する。なお、装置制御部29をコンピュータ端末4に設けた構成を採用してもよい。
【0023】
ここで、図示は省略するが、回転フレーム駆動部25は、従来の構成と同様に、回転フレーム21を回転駆動させるための回転フレーム回転用モータ、回転フレーム21をチルトさせるための回転フレームチルト用モータ、ベアリング、プーリ、ベルト、ローラ、スプロケット、チェーンなど、回転フレーム21を回転・チルトさせるための部品を含む。また、回転フレーム21に設けられたX線管22等は、従来のように、スリップリング及びブラシを介して電源の供給を受けるようになっており、X線検出器23等は、このスリップリング及びブラシを介してデータを出力するようになっている。
【0024】
また、寝台駆動部32についても、従来と同様に、天板31を水平移動させるための天板水平移動用モータ、プーリ、ベルト、ブレーキ、クラッチ等の部品や、天板31を上下移動させるための天板上下移動用モータ、ボールネジ、LM(Linear Motion)ガイド、減速器等の駆動軸を構成する部品を含んで構成されている。回転フレーム駆動部25や寝台駆動部32を構成するこれらの部品は、メンテナンス(清掃、点検、交換等)が必要である。
【0025】
〔メンテナンスシステム〕
図3に示すように、ガントリ2、寝台3及びコンソール50は、病院等のユーザ側に配置されている。ガントリ2と寝台3、及び、ガントリ2とコンソール50のコンピュータ端末4は、それぞれ専用線で接続されている。
【0026】
また、X線コンピュータ断層撮影装置1のメンテナンスサービスを提供するサービス提供者側には、X線コンピュータ断層撮影装置1を管理するためのサーバ100が配置され、ユーザ側のコンソール50とインターネット等のネットワークを介して接続されている。
【0027】
なお、図3においては、X線コンピュータ断層撮影装置は1つしか図示されていないが、実際は、サーバ100により管理される複数のX線コンピュータ断層撮影装置が当該サーバ100に接続されている。
【0028】
ガントリ2には、X線管22やX線検出器23が設けられた回転フレーム21と、回転フレーム21を回転させるための回転フレーム駆動部25と、回転フレーム21が基準位置を通過することを検出してパルスを発生する位置検出器26と、ガントリ2と寝台3の操作を行うための操作パネル2Bと、回転フレーム駆動部25の回転モータの所定の軸変位に応じてパルスを発生するエンコーダ71と、位置検出器26のパルス数とエンコーダ71のパルス数とをそれぞれ計数するカウント部72と、カウント部72によるカウント数のデータを記憶する不揮発性記憶装置からなる記憶部73と、寝台3やコンソール50とデータの送受信を行う送受信部74と、ガントリ2及び寝台3の動作制御を行う制御部75とを含んで構成されている。
【0029】
回転フレーム駆動部25には、上述のように、回転フレーム21を回転させるための回転フレーム回転用モータと、回転フレーム21をチルトさせるための回転フレームチルト用モータとが設けられている。制御部75は、操作パネル2B又は入力装置6から入力された操作内容(回転フレーム21の回転又はチルト)を表す制御信号を回転フレーム駆動部25に送信する。回転フレーム駆動部25は、制御部75からの制御信号によって指定されるモータを駆動させることにより回転フレーム21を回転又はチルトさせる。ここで、回転フレーム21をチルトさせるための制御信号には、回転フレーム21を正の方向にチルトさせるための制御信号(プラス側チルト信号)と、負の方向にチルトさせるための制御信号(マイナス側チルト信号)とがある。また、回転フレーム21を回転させるための制御信号についても、回転フレーム21を正の方向(図2中の矢印方向;反時計回り方向)に回転させるためのプラス側回転信号と、負の方向(時計回り方向)に回転させるためのマイナス側回転信号とを使い分けてもよい。
【0030】
エンコーダ71は、回転フレーム駆動部25に含まれる各モータ毎に設けられている。例えば、当該各モータとしてエンコーダ付きモータを使用することができる。エンコーダ71は、そのモータの軸変位に応じてパルス信号を発生する。例えば、エンコーダ71は、モータの駆動軸が1回転する間に規定された数のパルス信号を発生する。
【0031】
カウント部72によるエンコーダ71からのパルス信号のカウント数は、回転フレーム駆動部25の各モータ毎に個別に記憶部73に記憶される。カウント部72による位置検出部26からのパルス信号のカウント数は、回転フレーム21の回転数を表すデータとして記憶部73に記憶される。カウント部72は、記憶部73に記憶されている回転フレーム21の回転数を初期値として、位置検出部26からのパルスに応じて1ずつ増分する。それにより、カウント部72は、回転数をリセットした時点以後の累積的な回転数を計数する。
【0032】
記憶部73に記憶されている回転数は、装置据付時にリセットされる。また、記憶部73に記憶されている回転数は、メンテナンス時にもリセットされる。
【0033】
パルス信号のカウント数の記憶部73への記憶は、カウントが終了する度毎にリアルタイムで行うようにしてもよいし、システムがシャットダウンされる前などの所定のタイミングで行うようにしてもよい。また、所定間隔(例えば1時間)毎に定期的にカウント数の記憶処理を行うようにしてもよい。
【0034】
なお、カウント部72、記憶部73、送受信部74及び制御部75は、単一の基板に形成されている。カウント部72、記憶部73、送受信部74または制御部75の故障は、基板交換により対処される。記憶部72に記憶される累積的回転数等は、基板交換によりリセットされてしまう。累積的回転数等の情報を保持するために、独立型計数器76が位置検出器26に対してコネクタ77を介して着脱自在に設けられる。独立型計数器76は、位置検出器26からのパルスを累積的に計数する計数部と、計数値を記憶する記憶部と、計数値を表示する表示部と、制御部と、バッテリーとを備えている。基板交換に際しては、独立型計数器76の表示部に表示させた計数値に、記憶部73のデータを初期化する。
【0035】
寝台3は、被検体Pが載置される天板31及びこの天板31を上下移動・水平移動させるための寝台駆動部32を有する。寝台駆動部32には、上述のように、天板水平移動用モータと天板上下移動用モータとが設けられている。水平移動用モータと上下移動用モータとにはそれぞれエンコーダ33が設けられる。エンコーダ33は、水平移動用モータの軸変位に応じてパルスを発生する。また、エンコーダ33は、上下移動用モータの軸変位に応じてパルスを発生する。ガントリ2とデータの送受信を行う送受信部34とを含んで構成されている。
【0036】
制御部75は、操作パネル2B又は入力装置6から入力された操作内容(天板31の水平移動又は上下移動)を表す制御信号を、送受信部74、34を介して寝台駆動部32に送信する。寝台駆動部32は、制御部75からの制御信号によって指定されるモータを駆動させることにより天板31を水平移動又は上下移動させる。ここで、天板31を水平移動させるための制御信号には、天板31をガントリ2の開口部2Aに進入させる方向に水平移動させるためのイン側移動信号と、開口部2Aから離脱させる方向に水平移動させるためのアウト側移動信号とがある。また、天板31を上下移動させるための制御信号には、天板31を上方に移動させるためのアップ側移動信号と、下方に移動させるためのダウン側回転信号とがある。
【0037】
エンコーダ33は、寝台駆動部32の各モータ毎に設けられており、そのモータの軸変位に応じてパルス信号を発生する。エンコーダ33は、天板31が1cm移動するごとにパルスを発生するように設計されている。送受信部34は、エンコーダ33により発生されたパルス信号をガントリ2に転送する。ガントリ2のカウント部72は、当該パルス信号のパルス数をカウントする。当該カウント数は、所定のタイミングで記憶部73に記憶される。
【0038】
コンソール50は、当該コンソール50の制御や各種演算処理を実行するためのコンピュータ端末4のCPUやメモリからなる制御部41と、コンピュータ端末4のハードディスクドライブ等からなる記憶部42と、ガントリ2やサーバ100とデータの送受信を行う送受信部43と、前述のモニタ5及び入力装置6とを含んで構成されている。
【0039】
サーバ100は、当該サーバ100の制御や各種演算処理を実行するためのCPUやメモリからなる制御部101と、ハードディスクドライブ等からなる記憶部102と、各種画面を表示するモニタ103と、キーボードやマウスやトラックボール等からなる入力装置104と、コンソール50とデータの送受信を行う送受信部105とを含んで構成されている。
【0040】
[X線コンピュータ断層撮影装置の動作]
以上のような構成を備える本実施形態のX線コンピュータ断層撮影装置1の動作について、図4〜図7に示すフローチャートを参照して詳細に説明する。なお、これらフローチャートに示す処理は、パルス信号のカウント数をリアルタイムで記憶するように構成された場合のものであるが、他の記憶タイミングの構成を採用する場合においても同様の処理が実行される。
【0041】
まず、回転フレーム駆動部25により回転フレーム21が回転駆動される場合(図4)、回転フレーム駆動部25により回転フレーム21がチルトされる場合(図5)、寝台駆動部32により天板31が水平移動される場合(図6)、及び、寝台駆動部32により天板31が上下移動される場合(図7)において、X線コンピュータ断層撮影装置1が各駆動部の動作量に関する情報(回転数、パルス数)を取得するための動作の一例について説明する。なお、これらの各場合において、オペレータの操作に基づいて実行される動作について説明するが、装置制御部29がプログラムにしたがって自動的に回転フレーム21や天板31を駆動する場合においても、X線コンピュータ断層撮影装置1は同様の動作を実行する。
【0042】
ここで、本発明において「動作量」とは、回転フレーム21や天板31を駆動させるために回転フレーム駆動部25や寝台駆動部32が実際に動作する量と、回転フレーム駆動部25や寝台駆動部32が回転フレーム21や天板31を実際に動作させた量との双方を包含するものとし、前者としては回転フレーム駆動部25等の動作時間や動作回数などが該当し、後者としては、回転フレーム21等の移動量や回転量などが該当する。より詳しくは、動作時間に基づく動作量としては、回転フレーム駆動部25等のモータの回転動作時間などが該当する。また、動作回数に基づく動作量としては、回転フレーム駆動部25等のモータの回転数などが該当する。また、移動量に基づく動作量としては、支持板21の傾斜(チルト)角度や、天板31の水平/上下移動量などが該当する。また、回転量に基づく動作量としては、支持板21の回転数などが該当する。
【0043】
〔回転フレームが回転駆動される場合;図4〕
回転フレーム駆動部25により回転フレーム21が回転駆動される場合におけるX線コンピュータ断層撮影装置1の動作について説明する。オペレータが操作パネル2B又は入力装置6から回転フレーム21を回転させるための操作を行うと(S01)、ガントリ2の制御部75は、回転フレーム駆動部25に制御信号を送信し、回転フレーム回転用モータを所定の回転速度で回転させる(S02)。当該モータの動力は、各種の部品を介して回転フレーム21に伝達されて回転フレーム21を回転させる。
【0044】
カウント部72は、記憶部73から、前回までの回転フレーム21の累積的な回転数を読み出す(S03)。カウント部72は、計数値を、読み出した回転数に初期化する。
【0045】
回転フレーム21が基準位置を通過するとき、位置検出器26は、パルスを発生する(S04)。カウント部72は、位置検出器26からのパルスに応じて、回転数を1ずつ増分する(S05)。つまり、位置検出器26からのパルス信号に応じて回転数をカウントアップする。
【0046】
回転フレーム21が停止すると(S06;YES)、カウント部72は、そのときのカウント数を、今回までの回転フレーム21の累積的な回転数として記憶部73に記憶させる(S07)。ここで、S06における回転フレーム21の回転移動終了の検出は、操作パネル2B等からの回転停止操作に対応する制御信号などに基づいて行われる。
【0047】
記憶部73に記憶された回転数は、入力装置6等からの操作に基づいてモニタ5に表示される。また、当該カウント数をモニタ5に常時表示するようにしてもよい。更に、当該カウント数の上限値をあらかじめ設定しておき、カウント数が当該上限値に達したことに対応して、回転フレーム21の回転に関する部品のメンテナンス時期を報知するように構成してもよい。その報知方法としては、例えば、メンテナンス時機が到来したことを示す警告画面をモニタ5に表示させたり、図示しないスピーカから警告音を出力させるなどの形態を採用することができる。また、メンテナンス時期の日付等を表示するようにしてもよい。また、当該カウント数の上限値を各部品の耐久性を基に部品毎に設定し、各部品毎にメンテナンス時期を報知するように構成してもよい。
【0048】
このようなX線コンピュータ断層撮影装置1の動作により、回転フレーム21の回転数を表すカウント数、すなわち、回転フレーム駆動部25の回転フレーム回転用モータ及びその動力を伝達する部品の動作量情報が記憶部73に記憶されるとともに、回転フレーム21の回転に関する部品のメンテナンス時期をオペレータに知らせることができる。ここで、記憶部73に記憶される当該動作量情報(カウント数)は、操作パネル2B、入力装置6又は入力装置104からの操作に基づいてリセットされる(「0」に設定される)まで、もしくは、プログラムによって自動的にリセットされるまで蓄積されるようになっている。したがって、記憶部73には、前回のリセット以降における回転フレーム21の回転に関する部品の動作量情報が記憶される。
【0049】
なお、カウント部72は、位置検出器26からのパルスを計数するものとして説明したが、エンコーダ71のパルスを計数するようにしてもよい。また、エンコーダ71はモータの軸変位に応じてパルスを発生するように説明したが、エンコーダ71はモータの動作時間に応じてパルス信号を発生するように構成してもよい。例えば、当該モータが1秒間動作する毎にパルス信号を生成するように構成できる。その場合、カウント部72によるカウント数は、当該モータの動作時間に基づく対象部品の動作量情報を表す。
【0050】
また、カウント部72による回転数を、記憶部73に記憶されている回転数に上書き記憶させるように説明したが、検査毎、日毎、週毎、月毎に回転数を計数し、記憶するようにしてもよい。累積的な回転数は、記憶された回転数を合計することにより計算される。
【0051】
〔回転フレームがチルトされる場合;図5〕
回転フレーム駆動部25により回転フレーム21がチルト(傾動)される場合におけるX線コンピュータ断層撮影装置1の動作について説明する。オペレータが操作パネル2B又は入力装置6から回転フレーム21をチルトさせるための操作を行うと(S11)、ガントリ2の制御部75は、回転フレーム駆動部25に制御信号を送信し、回転フレームチルト用モータを所定の回転速度で回転させる(S12)。当該モータの動力は、各種の部品を介して回転フレーム21に伝達されて回転フレーム21をチルトさせる。
【0052】
カウント部72は、記憶部73から、チルトに関する前回までの累積的なカウント数を読み出す(S13)。カウント部72は、計数値を、読み出したカウント数に初期化する。
【0053】
エンコーダ71は、回転フレーム駆動部25の回転フレームチルト用モータの軸変位に応じてパルス信号を発生する(S14)。換言すると、エンコーダ71は、回転フレーム21が所定角度チルトするごとにパルス信号を発生する。ここで、当該モータの駆動時間に基づいてパルス信号を発生する、例えば1秒ごとにパルス信号を発生するようにしてもよい。
【0054】
カウント部72は、エンコーダ71からのパルスに応じて、カウント数を1ずつ増分する(S15)。回転フレーム21のチルト動作が終了されると(S16;YES)、カウント部72は、カウント数を記憶部73に記憶させる(S17)。記憶されるカウント数は、前回のリセット時点から今回のチルト動作終了時点までの期間に回転フレーム21が移動した累積的な距離(角度)に対応している。なお、ステップS16におけるチルト動作の終了の検出は、操作パネル2B等からのチルト終了操作に基づく制御信号等に基づいてなされる。
【0055】
記憶部73に記憶されたカウント数は、入力装置6等からの操作に基づいてモニタ5に表示される。また、当該カウント数をモニタ5に常時表示するようにしてもよい。更に、当該カウント数の上限値をあらかじめ設定しておき、カウント数が当該上限値に達したことに対応して、回転フレーム21のチルトに関する部品のメンテナンス時期を報知するように構成してもよい。その報知方法は、回転フレーム21の回転駆動のケースと同様である。
【0056】
このようなX線コンピュータ断層撮影装置1の動作により、回転フレーム21がどれだけ傾斜されたかを表すカウント数、すなわち、回転フレーム駆動部25の回転フレームチルト用モータ及びその動力を伝達する部品の動作量情報が記憶部73に記憶されるとともに、回転フレーム21のチルトに関する部品のメンテナンス時期をオペレータに知らせることができる。当該動作量情報についても、オペレータ等によりカウント数がリセットされるまで蓄積される。
【0057】
エンコーダ71は、回転フレーム駆動部25の回転フレームチルト用モータの動作時間に基づいてパルス信号を生成するようになっているが(S14)、位置検出器26により検出される回転フレーム21の傾斜角度に基づいてパルス信号を生成するように構成してもよい。例えば、回転フレーム21が1度傾斜される度にパルス信号を生成するようなエンコーダ71を適用することができる。また、カウント部72による動作量情報(カウント数)の記憶処理(S17)についても、回転駆動の場合と同様の処理形態を適用できる。
【0058】
また、回転フレームチルト用モータの回転方向に応じて、すなわち、回転フレーム21が正の方向にチルトされた場合と、負の方向にチルトされた場合とについて、それぞれ個別の周波数等にてパルス信号を生成し、各パルス信号をそれぞれ個別にカウントしてそのカウント数を記憶するように構成してもよい。なお、当該モータの回転方向は、制御部75からの制御信号(プラス側回転信号、マイナス側回転信号)の種別や、当該モータの実際の回転方向に基づいて検出される。〔寝台の天板が水平移動される場合;図6〕
寝台駆動部32により天板31が長手方向に水平移動される場合におけるX線コンピュータ断層撮影装置1の動作について説明する。オペレータが操作パネル2B又は入力装置6から天板31を水平移動させるための操作を行う(S21)。
【0059】
カウント部72は、記憶部73から、前回までの天板水平移動に関する累積的なカウント数を読み出す(S22)。カウント部72は、計数値を、読み出したカウント数に初期化する。
【0060】
ガントリ2の制御部75は、送受信部74を制御して制御信号を寝台3に送信する(S23)。寝台3の送受信部34にて受信された当該制御信号は、寝台駆動部32に送信され、天板水平移動用モータが当該制御信号に基づいて所定の回転速度で回転される(S24)。当該モータの動力は、各種の部品を介して天板31に伝達されて天板31を水平移動させる。
【0061】
エンコーダ33は、天板水平移動用モータの軸変位に応じてパルス信号を発生する(S25)。送受信部34は、エンコーダ33からのパルス信号をガントリ2に送信する(S26)。
【0062】
ガントリ2の送受信部74により受信された当該パルス信号は、カウント部72に送信される。カウンタ部72は、エンコーダ33からのパルスに応じてカウント数を1ずつ増分する(S27)。
【0063】
天板31の水平移動が終了されると(S28;YES)、カウント部72は、カウント数を記憶部73に記憶させる(S29)。記憶されるカウント数は、前回のリセット時点から今回のチルト動作終了時点までの期間に天板31が水平移動した累積的な距離に対応している。
【0064】
記憶部73に記憶されたカウント数は、入力装置6等からの操作に基づいてモニタ5に表示される。また、当該カウント数をモニタ5に常時表示するようにしてもよい。更に、当該カウント数の上限値をあらかじめ設定しておき、カウント数が当該上限値に達したことに対応して、天板31の水平移動に関する部品のメンテナンス時期を報知するように構成してもよい。その報知方法は、回転フレーム21の回転駆動のケースと同様である。
【0065】
このようなX線コンピュータ断層撮影装置1の動作により、天板31がどれだけ水平移動されたかを表すカウント数、すなわち、寝台駆動部32の天板水平移動用モータ及びその動力を伝達する部品の動作量情報が記憶部73に記憶されるとともに、天板31の水平移動に関する部品のメンテナンス時期をオペレータに知らせることができる。当該動作量情報についても、オペレータ等によりカウント数がリセットされるまで蓄積される。
【0066】
なお、エンコーダ33は、寝台駆動部32の天板水平移動用モータが単位時間動作する毎にパルス信号を生成するようになっているが(S24を参照)、天板31の水平位置を検出する位置検出器を寝台3に設け、この位置検出器からの検出信号に基づいてパルス信号を生成するように構成してもよい。その場合、当該位置検出器は、天板31が例えば10センチメートル水平移動される度に検出信号を出力するように構成され、記憶部73に記憶される動作量情報は、天板31が水平方向に何十センチメートル移動されたかを表すデータとなる。また、カウント部72による動作量情報(カウント数)の記憶処理(S29)についても、回転フレーム21の回転駆動やチルトの場合と同様の処理形態を適用することができる。
【0067】
また、天板水平移動用モータの回転方向に応じて、すなわち、天板31がガントリ2の開口部2Aに進入される方向に移動された場合と、開口部2Aから離脱される方向に移動された場合とについて、それぞれ個別の周波数等にてパルス信号を生成し、各パルス信号をそれぞれ個別にカウントしてそのカウント数を記憶するように構成してもよい。なお、当該モータの回転方向は、制御部75からの制御信号(イン側移動信号、アウト側移動信号)の種別や、当該モータの実際の回転方向に基づいて検出される。
【0068】
〔寝台の天板が上下移動される場合;図7〕
寝台駆動部32により天板31が上下移動される場合におけるX線コンピュータ断層撮影装置1の動作について説明する。オペレータが操作パネル2B又は入力装置6から天板31を上下移動させるための操作を行う(S31)。
【0069】
カウント部72は、記憶部73から、前回までの天板上下移動に関する累積的なカウント数を読み出す(S32)。カウント部72は、計数値を、読み出したカウント数に初期化する。
【0070】
ガントリ2の制御部75は、送受信部74を制御して制御信号を寝台3に送信する(S33)。寝台3の送受信部34にて受信された当該制御信号は、寝台駆動部32に送信され、天板上下移動用モータが当該制御信号に基づいて所定の回転速度で回転される(S34)。当該モータの動力は、各種の部品を介して天板31に伝達されて天板31を上下移動させる。
【0071】
エンコーダ33は、天板上下移動用モータの軸変位に応じてパルス信号を発生する(S35)。送受信部34は、エンコーダ33からのパルス信号をガントリ2に送信する(S36)。
【0072】
ガントリ2の送受信部74により受信された当該パルス信号は、カウント部72に送信される。カウンタ部72は、カウント数を1ずつ増分する(S37)。
【0073】
天板31の上下移動が終了されると(S38;YES)、カウント部72は、そのときのカウント数を記憶部73に記憶させる(S39)。記憶されるカウント数は、前回のリセット時点から今回のチルト動作終了時点までの期間に天板31が上下移動した累積的な距離に対応している。
【0074】
記憶部73に記憶されたカウント数は、入力装置6等からの操作に基づいてモニタ5に表示される。また、当該カウント数をモニタ5に常時表示するようにしてもよい。更に、当該カウント数の上限値をあらかじめ設定しておき、カウント数が当該上限値に達したことに対応して、天板31の上下移動に関する部品のメンテナンス時期を報知するように構成してもよい。その報知方法は、回転フレーム21の回転駆動のケースと同様である。
【0075】
このようなX線コンピュータ断層撮影装置1の動作により、天板31がどれだけ上下移動されたかを表すカウント数、すなわち、寝台駆動部32の天板上下移動用モータ及びその動力を伝達する部品の動作量情報が記憶部73に記憶されるとともに、天板31の上下移動に関する部品のメンテナンス時期をオペレータに知らせることができる。当該動作量情報についても、オペレータ等によりカウント数がリセットされるまで蓄積される。
【0076】
なお、エンコーダ33は、寝台駆動部32の天板上下移動用モータが単位時間動作する毎にパルス信号を生成するようになっているが(S34を参照)、天板31の上下位置を検出する位置検出器を寝台3に設け、この位置検出器からの検出信号に基づいてパルス信号を生成するように構成してもよい。その場合、当該位置検出器は、天板31が例えば1センチメートル上下移動される度に検出信号を出力するように構成され、記憶部73に記憶される動作量情報は、天板31が上下方向に何センチメートル移動されたかを表すデータとなる。また、カウント部72による動作量情報(カウント数)の記憶処理(S39)についても、回転フレーム21の回転駆動やチルトの場合と同様の処理形態を適用することができる。
【0077】
また、天板上下移動用モータの回転方向に応じて、すなわち、天板31が上方向に移動された場合と、下方向に移動された場合とについて、それぞれ個別の周波数等にてパルス信号を生成し、各パルス信号をそれぞれ個別にカウントしてそのカウント数を記憶するように構成してもよい。なお、当該モータの回転方向は、制御部75からの制御信号(アップ側移動信号、ダウン側移動信号)の種別や、当該モータの実際の回転方向に基づいて検出される。
【0078】
[X線コンピュータ断層撮影装置の変形例]
上記実施形態のX線コンピュータ断層撮影装置1では、ガントリ2に内蔵されたカウンタ部72によってパルス信号をカウントする構成を採用したが、ガントリ2の外部に付属したカウンタによってパルス信号のカウント処理を実行するようにしてもよい。
【0079】
また、ガントリ2に内蔵された記憶部73にパルス信号のカウント数を記憶させるように構成されているが、電池式等のバックアップ機能付メモリや、CD−RやDVD−RAM等の記憶媒体に当該カウント数を記憶させるようにしてもよい。
【0080】
[メンテナンスシステムの使用形態]
図8は回転フレーム21の累積的回転数の表示動作の手順を表すフローチャートである。回転フレーム21のチルト、天板31の水平移動、天板31の上下移動に関するカウント数の表示については、回転フレーム21の累積的回転数の表示動作と基本的に同一であるので、説明は省略する。
【0081】
コンソール50の制御部41は、メイン電源投入時、検査終了時又は定期的に、ガントリ2の記憶部73から、回転フレーム21の累積的回転数のデータを読み出し、モニタ5に表示させる(S41)。回転フレーム21の累積的回転数のデータは、送受信部43を介してサーバ100に送信される(S42)。より具体的に説明すると、制御部41が送受信部43を介してガントリ2に制御信号を送信すると、ガントリ2の制御部75は、当該制御信号に基づいて記憶部73に記憶された累積的回転数のデータを読み出し、送受信部74を介してコンソール50に送信する。コンソール50の制御部41は、送受信部34を制御して当該累積的回転数のデータをサーバ100に送信する。
【0082】
なお、カウント数に上限値が設定されている場合、記憶部73に記憶されたカウント数が当該上限値に達した時点で、累積的回転数のデータをサーバ100に送信するようにしてもよい。その場合、例えば、制御部75(又は制御部41)により実際のカウント数と当該上限値とを比較し、そのカウント数が当該上限値の例えば90パーセントを超えたことに対応して、コンソール50からサーバ100に動作量情報を送信するように構成できる。
【0083】
ステップS42においてコンソール50から送信された累積的回転数のデータをサーバ100の送受信部105が受信すると(S43)、制御部101は、当該累積的回転数のデータを記憶部102に記憶させるとともに(S44)、モニタ103に表示させる(S45)。ここで、ステップS43にて受信された累積的回転数を自動的にモニタ103に表示させてもよいし、オペレータが入力装置104を操作して表示要求を行ったことに対応して累積的回転数を表示させるようにしてもよい。
【0084】
このようなメンテナンスシステムの第1の使用形態によれば、メンテナンスサービス提供者は、X線コンピュータ断層撮影装置が設置されている病院等に赴かなくても当該X線コンピュータ断層撮影装置の累積的回転数等を把握することができるので、時間や労力の無駄を省くことができる。ユーザ側においても、過度なメンテナンスに対するコストの浪費や、メンテナンスの遅れによる装置の故障等による損害が回避される。また、カスタマーエンジニアは、X線コンピュータ断層撮影装置の累積的回転数等を常に把握することができるので、各X線コンピュータ断層撮影装置毎に適切なタイミングでメンテナンスを施すことができる。更に、カスタマーエンジニアが複数のX線コンピュータ断層撮影装置を担当している場合、それら複数の装置のメンテナンス予定を容易にかつ有効に組むことができる。このように、当該メンテナンスシステムによれば、X線コンピュータ断層撮影装置のリモートメンテナンスを好適に行うことが可能となる。
【0085】
また、サーバ100の管理下にある複数のX線コンピュータ断層撮影装置に関する累積的回転数等や実際の部品の消耗度合などの情報を収集して解析することにより、部品の実際的な寿命や故障の傾向等を導き出すことができ、更に、その導出結果をメンテナンス周期の設定等にフィードバックさせることで、より好適なタイミングでメンテナンスを行うことができる。
【0086】
図9には回転フレーム21の累積的回転数の管理動作の手順を示している。まず、サーバ100(又はコンソール50)を介して、部品の耐久性等を応じた回転フレーム21の累積的回転数の上限値が設定される(S51)。当該上限値は、X線コンピュータ断層撮影装置のメンテナンス時期を鑑みて設定されるものである。メンテナンスに赴くまでの時間差を考慮して、上限値は低めに設定される。
【0087】
サーバ100の制御部101は、上限値の設定情報を記憶部102に記憶させるとともに(S52)、送受信部105を介してコンソール50に送信する(S53)。コンソール50の制御部41は、送受信部43により受信されたサーバ100からの上限値設定情報を記憶部42に記憶させる(S54)。
【0088】
X線コンピュータ断層撮影装置1による検査(スキャニング)が行われると(S55)、図4〜図7のフローチャートに示したような処理により、回転フレーム21の累積的回転数が計数され、記憶部73に記憶される(S56)。コンソール50の制御部41は、所定のタイミングで(例えば毎日1回)記憶部73に記憶されたカウント数を呼び出して、記憶部42に記憶された上限値と比較する(S57)。
【0089】
X線コンピュータ断層撮影装置1の使用が繰り返され、記憶部73に記憶された累積的回転数が上限値に達すると(S58;YES)、コンソール50の制御部41は、その旨を表す情報(上限値到達情報)を送受信部34によりサーバ100に送信するとともに、メンテナンスを促すメッセージと累積的回転数とをモニタ5に表示させる(S59)。
【0090】
サーバ100の送受信部105がコンソール50からの上限値到達情報を受信すると、制御部101は、当該情報に基づいて、モニタ103にメンテナンスを促すメッセージと累積的回転数とをモニタ5に表示させる(S60)。
【0091】
モニタ103による画面の表示態様としては、例えば、当該X線コンピュータ断層撮影装置1が設置されている施設(病院等)の名称やその連絡先、あるいはメンテナンスを行うべき装置部位名や部品名などの表示とともに、メンテナンス時期の日付や、メンテナンス時期が到来した旨などの表示を行う。また、複数のX線コンピュータ断層撮影装置の管理情報を一覧表示する画面を用いる場合には、メンテナンス時期を報知するX線コンピュータ断層撮影装置の管理情報を他と異なる色で表示させるようにしてもよい。また、メンテナンス時期の報知に関わる部品名のみを異なる色で表示させるようにしてもよい。
【0092】
また、ステップS60において、モニタ103による画面表示に代えて、又は、当該画面表示とともに、図示しないスピーカ等による音声出力によって、X線コンピュータ断層撮影装置1のメンテナンス時期を報知するようにしてもよい。
【0093】
また、ステップS51において、各部品について複数の上限値を設定するようにしてもよい。例えば、清掃、点検、交換などメンテナンスの種類毎に上限値を設定することができる。
【0094】
このような第2の使用形態の一具体例を以下に示す。まず、ステップS51における上限値設定処理としては、回転フレーム21の回転駆動に関するカウント数について、例えば、スリップリングについての上限値L1を10,000、ブラシについての上限値L2を5,000、回転フレーム回転用モータについての上限値L3を15,000に設定するなど、回転フレーム21の回転に関わる部品毎に上限値がそれぞれ設定される。回転フレーム21のチルト、天板31の水平移動、上下移動についても、動作量情報の上限値が各部品毎に設定される。これら上限値の設定情報は、記憶部102に記憶されるとともに(S52)、ユーザ側のコンソール50に送信されて記憶部42に記憶される(S53、S54)。
【0095】
X線コンピュータ断層撮影装置1による検査が行われ、回転フレーム21や天板31が駆動されると(S55)、その使用状況に応じてカウント数が蓄積されていく(S56)。コンソール50の制御部41は、蓄積されたカウント数を上限値と比較する(S57)。例えば、回転フレーム21の回転に関するカウント数がLであったとすると、当該カウント数Lを、対応する上限値L1、L2、L3、・・・、Ln(部品数n)と比較する。全てのi=1、2、・・・、nについてL<Liである場合(S58;N)、報知は行わずにX線コンピュータ断層撮影装置1の使用が継続される(S55)。
【0096】
一方、或るi=1、2、・・・、nについてL≧Liである場合(S58;Y)、例えばL=11,000≧L1、L2である場合、制御部41は、回転フレーム21の回転に関するカウント数が上限値L1とL2に達したことを表す上限値到達情報を生成してサーバ100に送信する(S59)。サーバ100の制御部101は、当該上限値到達情報に基づき、上限値L1、L2に対応するスリップリング及びブラシのメンテナンス時期を示す画面をモニタ103に表示させる(S60)。回転フレーム21のチルト、天板31の水平移動、上下移動に関する部品についても同様にメンテナンス時期が報知される。
【0097】
このようなメンテナンスシステムの第2の使用形態によれば、X線コンピュータ断層撮影装置のメンテナンス時期をサービスセンターに居ながらにして知ることができるので、時間や労力の無駄を省くことができるとともに、適切なタイミングでメンテナンスを施すことができ、X線コンピュータ断層撮影装置のリモートメンテナンスを好適に行うことが可能となる。
【0098】
以上のような本実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影装置及びそのメンテナンスシステムによれば、好適なタイミングでメンテナンスできることに基づく信頼性の高さをアピールすることにより、ユーザ及びサービス提供者は安心感を持って装置を使用できるものと期待される。更に、ユーザの病院等に訪れる患者等に対しても安心感を与えられると思われる。
【0099】
以上において具体的に説明した構成は、本発明のX線コンピュータ断層撮影装置及びそのメンテナンスシステムの一例を示したに過ぎないものであり、本発明の要旨の範囲内における各種の変形を施すことが可能である。
【0100】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】図1は本発明の実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影装置の外観図である。
【図2】図2は本実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影装置の全体構成を表す図である。
【図3】図3は本実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影装置の主要部の構成を表す図である。
【図4】図4は本実施形態において、回転フレームの回転に関する計数動作の手順を表すフローチャートである。
【図5】図5は本実施形態において、回転フレームの傾斜に関する計数動作の手順を表すフローチャートである。
【図6】図6は本実施形態において、天板の水平移動に関する計数動作の手順を表すフローチャートである。
【図7】図7は本実施形態において、天板の上下移動に関する計数動作の手順を表すフローチャートである。
【図8】図8は本実施形態において、回転フレームの累積的回転数の表示及び送信動作の手順を表すフローチャートである。
【図9】図9は本実施形態において、回転フレームの累積的回転数の管理動作の手順を表すフローチャートである。
【符号の説明】
【0102】
1…X線コンピュータ断層撮影装置、2…位置検出器、3…寝台、4…コンピュータ端末、5…モニタ、6…入力装置、10…操作部、21…回転フレーム(支持体)、22…X線管、23…X線検出器、24…高電圧発生部、25…回転フレーム駆動部、27…データ収集部、28…画像再構成部、29…装置制御部、31…天板、32…寝台機構、41…制御部、42…記憶部、43…送受信部、50…コンソール、71…エンコーダ、72…カウント部、73…記憶部、74…送受信部、75…制御部、76…独立型計数器、77…コネクタ、100…サーバ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転フレームと、
前記フレームを回転自在に支持する機構と、
前記フレームに搭載されたX線管と、
前記フレームに搭載されたX線検出器と、
前記フレームが基準位置を通過することを検出する位置検出部と、
前記位置検出部の出力に基づいて前記フレームの累積的な回転数を計数する計数部と、
前記フレームの累積的な回転数のデータを記憶する記憶部と具備することを特徴とするX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項2】
前記フレームの累積的な回転数が所定の上限値に達したとき、メンテナンスを促すメッセージを表示する表示部をさらに備えることを特徴とする請求項1記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項3】
前記フレームの累積的な回転数を表示する表示部をさらに備えることを特徴とする請求項1記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項4】
前記フレームの累積的な回転数が所定の上限値に達したとき、前記フレームの累積的な回転数のデータを外部のメンテナンスシステムに送信する送信部をさらに備えることを特徴とする請求項1記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項5】
前記フレームの累積的な回転数のデータを外部のメンテナンスシステムに送信する送信部をさらに備えることを特徴とする請求項1記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項6】
前記位置検出部とコネクタで接続される独立型の計数器をさらに備えることを特徴とする請求項1記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項7】
回転フレームと、
前記フレームを回転自在に支持する機構と、
前記フレームに搭載されたX線管と、
前記フレームに搭載されたX線検出器と、
前記フレームの回転に伴ってパルスを発生するパルス発生部と、
前記パルスの累積的な数を計数する計数部と、
前記計数されたパルスの累積的な数のデータを記憶する記憶部とを具備することを特徴とするX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項8】
前記パルス発生部は、前記フレームの回転のための動力を発生するモータの軸変位にもとなって前記パルスを発生するエンコーダであることを特徴とする請求項7記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項9】
前記パルスの累積的な数が所定の上限値に達したとき、メンテナンスを促すメッセージを表示する表示部をさらに備えることを特徴とする請求項7記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項10】
前記パルスの累積的な数を表示する表示部をさらに備えることを特徴とする請求項7記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項11】
前記パルスの累積的な数が所定の上限値に達したとき、前記パルスの累積的な数のデータを外部のメンテナンスシステムに送信する送信部をさらに備えることを特徴とする請求項7記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項12】
前記パルスの累積的な数のデータを外部のメンテナンスシステムに送信する送信部をさらに備えることを特徴とする請求項7記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項13】
回転フレームと、
前記フレームを回転自在且つ傾斜自在に支持する機構と、
前記フレームに搭載されたX線管と、
前記フレームに搭載されたX線検出器と、
前記フレームの傾斜に伴ってパルスを発生するパルス発生部と、
前記パルスの累積的な数を計数する計数部と、
前記計数されたパルスの累積的な数のデータを記憶する記憶部とを具備することを特徴とするX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項14】
被検体を支持する天板と、
前記天板を長手方向に移動自在に支持する機構と、
X線管と、
前記被検体を挟んで前記X線管に対峙するX線検出器と、
前記天板の移動に伴ってパルスを発生するパルス発生部と、
前記パルスの累積的な数を計数する計数部と、
前記計数されたパルスの累積的な数のデータを記憶する記憶部とを具備することを特徴とするX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項15】
被検体を支持する天板と、
前記天板を上下方向に移動自在に支持する機構と、
X線管と、
前記被検体を挟んで前記X線管に対峙するX線検出器と、
前記天板の移動に伴ってパルスを発生するパルス発生部と、
前記パルスの累積的な数を計数する計数部と、
前記計数されたパルスの累積的な数のデータを記憶する記憶部とを具備することを特徴とするX線コンピュータ断層撮影装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−6917(P2006−6917A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−146973(P2005−146973)
【出願日】平成17年5月19日(2005.5.19)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【出願人】(594164531)東芝医用システムエンジニアリング株式会社 (892)
【Fターム(参考)】