説明

X線コンピュータ断層撮影装置

【課題】心電同期再構成の可能なX線CT装置において画像再構成に必要な投影データの一部欠落を防止すること。
【解決手段】X線CT装置は、X線源101と、高電圧発生部104と、投影データを発生するために被検体を透過したX線を検出するX線検出器102と、投影データを心電図データと関連付けて記憶する記憶部203と、操作者指令に従って特定の心拍位相を設定する設定部212と、複数の心拍周期にわたる特定の心拍位相を中心とした複数の特定期間に収集した複数の投影データセットに基づいて断層像を再構成する再構成部206と、被検体の心拍数の変動範囲に基づいて特定期間を拡張する期間拡張部207と、拡張された特定期間に比較的高線量でX線を発生し、拡張された特定期間以外の他の期間に比較的低線量でX線を発生するために高電圧発生部を制御する制御部212とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、心電同期再構成(ECG gated reconstruction)の可能なX線コンピュータ断層撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
X線コンピュータ断層撮影装置は、被検体を透過したX線の強度に基づいて、被検体についての情報を画像により提供するものであり、疾病の診断、治療や手術計画等を初めとする多くの医療行為において重要な役割を果たしている。
【0003】
動きの速い心臓検査においては、心電同期スキャンが行われる。心電同期スキャンとは、スキャンと並行して心電図同期信号(トリガ信号、R波信号)や心電図波形信号(ECG信号)を収集し、データ収集後、心電図波形信号などを用いて心拍位相に同期した画像を得ることである。
【0004】
最近では、心臓検査において、心電情報を利用して特定位相のみX線曝射をすることで
被曝低減を図ることが試みられている。
【0005】
しかしながら、特開2000−342577号公報では、X線曝射期間をどのように決めるのか示されていない。また特開2000−51208号公報では、スキャン前に収集された1心拍分のR−R波間隔(心拍周期)を用いて、スキャン時のX線曝射期間を決めている。これは、心拍周期が一定の心臓ファントムに対して適用できるかもしれない。しかしながら、実際の被検体(患者)の心拍周期は不安定であり、スキャン前であっても数心拍分の心拍周期は一定ではなく、1心拍分の心拍周期だけを採用してX線曝射期間を決めるのは現実的ではない。また数秒〜数十秒間行われる心臓検査において、スキャン時の複数の心拍周期全てが、スキャン前の1心拍周期と完全に同一にならない。このため、操作者が再構成したい位相には、X線が曝射されず(データが得られず)、逆に不要な期間のデータが収集されてしまう恐れがある。
【0006】
また、上述の通り、X線コンピュータ断層撮影装置は、被検体を透過したX線の強度に基づいて、被検体についての情報を画像により提供するものであり、疾病の診断、治療や手術計画等を初めとする多くの医療行為において重要な役割を果たしている。X線コンピュータ断層撮影装置を使った動きの速い特に心臓検査では、画像の時間分解能の向上が重要な課題の一である。その課題に対する直接的な対処法としては、X線管の1回転あたりの時間の短縮、つまりスキャンの高速化にある。このスキャンの高速化により、心電図に同期してスキャンを行い心拍周期内の特定期間のデータだけを収集するいわゆる心電同期スキャン法が効果的に機能する。特定期間に限定してX線を発生し、又は特定期間にX線の強度を高く変調する。それにより連続的にX線を照射するよりも被曝線量の低減を図っている。
【0007】
しかし、不整脈等を原因として、所望する心拍時相の画像再構成に必要な投影データが収集されていない、または投影データが高SN比で収集されていないという事態が起こることがある。この事態では、再構成画像の画質劣化が生じる。場合によっては、再スキャンが必要となる場合もある。また、再構成前に上記事態を確認する術がない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、心電同期再構成の可能なX線コンピュータ断層撮影装置において、画像再構成に必要な投影データの一部欠落を防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1局面は、X線を発生するX線源と、前記X線源に印加するための高電圧を発生する高電圧発生部と、投影データを発生するために、被検体を透過したX線を検出するX線検出器と、前記投影データを前記被検体の心電図データと関連付けて記憶する記憶部と、操作者指令に従って特定の心拍位相を設定する設定部と、複数の心拍周期にわたる前記特定の心拍位相を中心とした複数の特定期間に収集した複数の投影データセットに基づいて、断層像を再構成する再構成部と、前記被検体の心拍数の変動範囲に基づいて、前記特定期間を拡張する期間拡張部と、前記拡張された特定期間に比較的高線量でX線を発生し、前記拡張された特定期間以外の他の期間に比較的低線量でX線を発生するために、前記高電圧発生部を制御する制御部とを備えたX線コンピュータ断層撮影装置である。
本発明の第2局面は、被検体から収集された心電情報を記憶部と、前記被検体の再構成する心拍位相を設定する設定部と、被検体に向けてX線を曝射するX線源と、前記X線源に高電圧を印加する高電圧発生部と、前記被検体を透過したX線を検出するX線検出器と、前記検出器で検出された投影データに基づいて、前記設定部にて設定された心拍位相の断層像を再構成する再構成部と、前記設定部にて設定された心拍位相を再構成するのに必要な期間にマージン期間を加えた第1の期間を高X線量でスキャンし、前記第2の期間を低X線量でスキャンするよう前記高電圧発生装置を制御する制御部とを備えたことを特徴とするX線コンピュータ断層撮影装置である。
本発明の第3局面は、被検体に向けてX線を曝射するX線源、このX線源に高電圧を印加する高電圧発生部、及び前記被検体を透過したX線を検出するX線検出器を有し、被検体をスキャンする架台と、被検体から収集された心電図を記憶部と、前記被検体の断層像を再構成する心拍位相範囲を設定する設定部と、前記検出器で検出された投影データに基づいて、前記設定部にて設定された心拍位相範囲のうち特定位相の断層像を再構成する再構成部と、前記スキャンとして並行して得られた心電図をトリガにして、前記設定部により設定された心拍位相範囲を高X線でスキャンし、前記心電サイクルのうち前記心拍位相範囲を除いた範囲を低X線量でスキャンするよう前記高電圧発生部を制御する制御部とを備えたことを特徴とするX線コンピュータ断層撮影装置である。
本発明の第4局面は、X線量を変調しながらヘリカルスキャンを行うスキャン部と、前記ヘリカルスキャンに並行して、投影データに基づいて断層像をファンビーム再構成により次々と再構成すると共に、前記ヘリカルスキャン終了後、投影データに基づいてコーンビーム再構成により画像を再構成する再構成部と、前記ヘリカルスキャンに並行して前記ファンビーム再構成を用いて次々と再構成された断層像を表示し、前記ヘリカルスキャン終了後に前記コーンビーム再構成を用いて再構成された画像を表示する表示部とを備えたことを特徴とするX線コンピュータ断層撮影装置である。
本発明の第5局面は、被検体に向けてX線を曝射するX線源、このX線源に高電圧を印加する高電圧発生部、及び前記被検体を透過したX線を検出するX線検出器を有し、被検体をスキャンするスキャン部と、前記スキャンと並行して、被検体から収集された心電図を記憶する記憶部と、前記被検体の断層像を再構成したい心拍位相を設定する設定部と、前記検出器で検出された投影データに基づいて、前記設定部にて設定された心拍位相の断層像を再構成する再構成部と、前記スキャンと並行して収集された心電図に基づいて、前記設定部により設定された心拍位相を含む所定の範囲にX線量を高くすると共に、当該所定の範囲を除く範囲にX線量を低下するよう前記高電圧発生部を制御する制御部とを備えたことを特徴とするX線コンピュータ断層撮影装置である。
本発明の第6局面は、被検体に向けてX線を曝射するX線源、このX線源に高電圧を印加する高電圧発生部、及び前記被検体を透過したX線を検出するX線検出器を有し、被検体をスキャンするスキャン部と、前記スキャン前及び前記スキャンと並行して、被検体から収集された心電図情報を記憶する記憶部と、前記被検体の断層像を再構成したい心拍位相を設定する設定部と、前記検出器で検出された投影データに基づいて、前記設定部にて設定された心拍位相の断層像を再構成する再構成部と、前記記憶部に記憶される前記スキャンとして並行して得られた心電図情報をトリガにして、前記記憶部に記憶された前記スキャン前に収集された複数の心拍数に基づいて決定された所定の範囲にX線量を高くし、当該所定の範囲を除く範囲にX線量を低下するよう前記高電圧発生部を制御する制御部とを備えたことを特徴とするX線コンピュータ断層撮影装置である。
本発明の第7局面は、X線を発生するX線源と、前記X線源に印加するための高電圧を発生する高電圧発生部と、投影データを発生するために、被検体を透過したX線を検出するX線検出器と、前記投影データを前記被検体の心電図データと関連付けて記憶する記憶部と、複数の心拍周期にわたる特定の心拍位相を中心とした複数の特定期間に収集した複数の投影データセットの間でビューが同じ投影データを加重加算する加算処理得部と、前記加重加算された複数の投影データセットに基づいて、断層像を再構成する再構成部とを具備することを特徴とするX線コンピュータ断層撮影装置である。
本発明の第8局面は、X線を発生するX線源と、投影データを発生するために、被検体を透過したX線を検出するX線検出器と、操作者指示に従って前記被検体の心拍周期内に特定期間を設定する特定期間設定部と、前記特定期間に収集した投影データに基づいて断層像を再構成する再構成部と、前記特定期間を、画像再構成に要する投影データの角度範囲に対応する時間幅に基づいて拡張する拡張処理部と、前記拡張された特定期間に従って前記X線管からのX線の発生/停止又は強度変調を制御する制御部とを具備するX線コンピュータ断層撮影装置である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、心電同期再構成の可能なX線コンピュータ断層撮影装置において、画像再構成に必要な投影データの一部欠落を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
(第1実施形態)
以下、図面を参照して本発明によるX線コンピュータ断層撮影装置の第1実施形態を説明する。なお、X線コンピュータ断層撮影装置には、X線管とX線検出器とが一体として被検体の周囲を回転する回転/回転(ROTATE/ROTATE)タイプと、リング状又は平面状に多数の検出素子がアレイされ、X線管のみが被検体の周囲を回転する固定/回転(STATIONARY/ROTATE)タイプ等様々なタイプがあり、いずれのタイプでも本発明を適用可能である。ここでは、現在、主流を占めている回転/回転タイプとして説明する。また、1スライスの断層像データを再構成するには、被検体の周囲1周、約360°分の投影データ(フル再構成法)が、またハーフ再構成法でも180°+α(α;ファン角)分の投影データが必要とされる。本実施形態では、動きの速い心臓等の撮影に有効なハーフ再構成法を採用する。
【0012】
また、入射X線を電荷に変換するメカニズムは、シンチレータ等の蛍光体でX線を光に変換し更にその光をフォトダイオード等の光電変換素子で電荷に変換する間接変換形と、X線による半導体内の電子正孔対の生成及びその電極への移動すなわち光導電現象を利用した直接変換形とが主流である。X線検出素子としては、それらのいずれの方式を採用してもよいが、ここでは、前者の間接変換形として説明する。また、本発明では、一管球型のX線コンピュータ断層撮影装置であっても、多管球型のX線コンピュータ断層撮影装置であってもいずれにも適用可能である。ここでは、一管球型として説明する。
【0013】
図1は、本実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影装置の概略構成を示している。このX線コンピュータ断層撮影装置は、被検体(患者)Pに関する投影データを収集するための架台装置(スキャン部)1、被検体Pを乗せるための寝台装置3、架台装置1及び寝台装置3を制御すると共に架台装置1によって収集されたデータに基づく画像再構成処理や画像表示等を行うコンソール2を備える。
【0014】
架台装置1は、X線管101、X線検出器102、回転フレーム103、高電圧発生装置104、架台駆動装置105、データ収集装置107を収容する筐体を備える。筐体は、被検体Pを挿入するための診断用開口部を有する。X線管101とX線検出器102は、架台駆動装置105により回転駆動されるリング状の回転フレーム103に搭載される。ここでは、回転フレーム103の回転軸をZ軸と定義する。Z軸を中心とした回転座系において、X線管101の焦点からX線検出器102の検出面中心を結ぶZ軸に直交する軸をX軸と定義する。Y軸はZ軸とX軸とにともに直交する。
【0015】
回転フレーム103は、スキャン制御部201の制御の下、架台駆動装置105により回転する。この回転フレーム103の回転に伴って、X線管101とX線検出器102とが被検体Pの周囲を回転する。スキャン制御部201の制御の下、高電圧発生装置104からX線管101に高電圧が印加されたとき、X線管101からX線が発生する。X線管101から発生し、被検体を透過したX線は、X線検出器102で検出され、データ収集装置107に投影データとして収集される。寝台装置3の天板302は、寝台駆動装置301により移動される。スキャン制御部201は、回転フレーム103の回転と、天板302の移動とを制御する。この制御により、回転フレーム103の定速回転中に天板302の連続的な移動を同期して行わせることができる。これにより、X線管101(X線源)が被検体Pに対して相対的に螺旋状に移動し、その螺旋軌道上の複数位置で投影データを収集するいわゆるヘリカルスキャンを実現することができる。
【0016】
本実施形態では、一例として、多列検出器の同時収集であるマルチヘリカルスキャンにより得られた投影データを処理する場合について説明するが、本実施形態は天板302が静止した状態で連続的に投影データを収集する、いわゆるダイナミックスキャン、ある位置で天板302が静止した状態で1回転分の投影データを収集し、その後天板302が移動して停止した後、次の位置で1回転分の投影データを収集する動作を繰り返すコンベンショナルスキャンに適用することもできる。
【0017】
回転フレーム103は筐体同様に中央部に開口部を有する。スキャン時には、その開口部に寝台装置3の天板302上に載置された被検体Pが挿入される。心電計106は、被検体Pに取り付けた電極から心電信号を検出するためのものであって、被検体Pの心臓から生じる微弱な電流を検出し、検出された電流の時間変化を心電図として出力する。なお、後述するように本実施形態では、システム制御部212において、心電計106にて得られた心電図情報(P波、Q波、R波、S波、T波、本実施形態ではR波)に基づいて心拍数を求めているが、心電計106にて心電情報を収集し、システム制御部212において心電図及び心拍数を求めても良い。また図1では、心電計106は、架台装置1の一部として示しているが、架台装置1とは独立に構成しても良く、心電計106からの心電図情報又は心電信号を収集する機能、投影データ記憶部203などの記憶部に心電信号を記憶できる機能を備えれば良い。
【0018】
X線管101の陰極−陽極間には高圧発生装置104から管電圧が印加され、またX線管101のフィラメントには高圧発生装置104からフィラメント電流(管電流)が供給される。管電圧の印加及びフィラメント電流の供給によりX線管101の陽極のターゲットからX線が発生する。
【0019】
X線検出器102は、被検体Pを透過したX線を検出するためのものである。X線検出器102は、マルチスライス型(多列型)、シングルスライス型(一列型)のいずれでも良いが、ここでは後述するX線変調機能より被曝低減効果の大きいマルチスライス型検出器として説明する。X線検出器102は、X線を検出する検出素子がチャンネル方向(Y軸方向に近似)及び被検体のスライス方向(z軸方向)にそれぞれ複数設けられている。例えば、複数のX線検出素子が、チャンネル方向に例えば約600〜1000個、スライス方向に24列〜256列など並設される。本実施形態では、0.5mm×0.5mmの正方の受光面を有する複数のX線検出素子が、チャンネル方向に1000個、スライス方向に64列配列された多列検出器とする。各検出素子は、シンチレータと、フォトダイオードォトチップ(図示せず)とを有している。X線検出器102は、均等サイズの検出素子がスライス方向に配列されたマルチスライス型検出器、サイズの異なる検出素子がスライス方向に複数配列された不均等ピッチのマルチスライス型検出器のどちらでも適用可能である。
【0020】
データ収集装置(DAS(data acquisition system)107は、検出器102からチャンネルごとに出力される信号を電圧信号に変換し、増幅し、さらにディジタル信号に変換する。このデータ(純生データともいう)は架台装置1の外部のコンソール2に供給される。コンソール2の前処理部202は、データ収集装置107から出力されるデータ(純生データ)に対してオフセット補正、レファレンス補正、感度補正等の補正処理を施す。前処理された純生データは一般的に生データと称する。ここでは、純生データと生データを総称して「投影データ」とする。
【0021】
投影データは、データ収集時のX線管101の回転角度を表すビュー(VIEW)、チャンネル番号、列番号(場合によっては天板302の位置)を表す各コードを関連付けられ、心電計106の心電図データ(心電信号)とともにコンソール2の投影データ記憶部203に記憶される。投影データと心電信号(或いは心電図情報)とは関連付けられている(当業者では同期付けられているとも言う)。投影データと心電信号とは、物理的に或いは個別に1つ又は2つ以上の記憶媒体のいずれに記憶しても良く、1つの記憶媒体に投影データ、心電信号それぞれの記憶領域を持っても良い。
【0022】
コンソール2は、上記前処理部202及び投影データ記憶部203とともに、スキャン制御部201、画像再構成処理部206、検査計画設定部207、画像記憶部209、表示部210、システム制御部212を有する。
【0023】
画像再構成処理部206は、記憶部203に記憶された心電図信号(或いはシステム制御部212にて求められた心拍数)、投影データに基づいて心電同期再構成を行う。画像再構成処理部206は、心電同期再構成としてハーフ再構成機能、セグメント再構成機能を備える。
【0024】
ハーフ再構成では、X線管が180度+α(αは扇状X線のファン角)の範囲をカバーする投影データグループを要する。セグメント再構成法では、投影データグループは、複数の投影データセット(複数のセグメントともいう)から構成される。複数の投影データセットは、複数の心拍周期にそれぞれ対応する。複数の投影データセット各々は、検査計画設定部207により指定された特定の心拍位相(再構成中心位相)を中心とした所定の時間幅を有する特定期間内に収集された投影データの集合である。
【0025】
例えば、「所望される特定の心拍位相:65%」、「セグメント再構成」、「セグメント数(投影データセット数):3」の場合は、連続した又は離散した3心拍周期から65%の心拍位相を中心とした所定期間内に収集した3つの投影データセットを選択する。3つの投影データセットは、180度+ファン角度をカバーする。
【0026】
図4に例示するように、3つの投影データセット(セグメント)A,B,C間で部分的にオーバーラップが生じる場合、つまり複数のセグメント間で同じビュー(X線管の角度)の投影データが存在している場合、画像再構成処理部206は、いずれか一方の投影データをビュー毎に選択するのではなく、一方のセグメントの投影データと、他方のセグメントの投影データとを、ビュー毎に加重加算する。重みは心拍数に応じて相対的に決定される。心拍数が低いほど高い重みを付け、心拍数が高いほど低い重みを付ける。つまり、心拍期間が長いほど高い重みを付け、心拍期間が短いほど低い重みを付ける。それによりモーションアーチファクトを低減する効果が奏され得る。例えば重みは次の式で決定される。セグメントAの投影データに対する重みWAは、セグメントAのデータ収集時の心拍数HRAと、セグメントAと部分的にオーバーラップするセグメントBのデータ収集時の心拍数HRBとにより
WA=((HRA+HRB)−HRA)/(HRA+HRB)
=HRB/(HRA+HRB)
セグメントBの投影データに対する重みWBは、次の通りである。
【0027】
WB=((HRA+HRB)−HRB)/(HRA+HRB)
=HRA/(HRA+HRB)
例えば、セグメントAを収集したときの心拍数が90bpsで、セグメントBを収集したときの心拍数が75bpsのとき、セグメントAの投影データに対する重みWAは、0.45、セグメントBの投影データに対する重みWBは、0.55に設定される。
【0028】
重みは心拍数に対応することには限定されない。例えば、画像再構成に要する角度範囲(180+α)に対して投影データセット各々が占める割合に、重みを対応付ける。割合が比較的高い投影データセット内の投影データに対して適用される重みは、割合が比較的低い投影データセット内の投影データに対して適用される重みよりも、高く設定する。例えば、セグメントAを収集したときの心拍数が90bpsで、セグメントBを収集したときの心拍数が75bpsのとき、セグメントAの投影データに対する重みWAは、0.3、セグメントBの投影データに対する重みWBは、0.7に設定される。
【0029】
なお、本実施形態では、セグメント再構成のセグメント数は、検査計画設定部207により設定されても良いが、心電計106(又は記憶部203)から取得された平均心拍数、或いはシステム制御部212により取得された平均心拍数とスキャン速度(回転ベース103の回転速度)等に基づいて自動的に決定されるものとする。
【0030】
画像再構成処理部206は、選択或いは集められた投影データセットに基づいて画像を再構成する。画像再構成処理部206は、ファンビーム再構成処理機能或いはコーンビーム再構成処理機能のいずれか1つを備えるものでも良いが、本実施形態では、ファンビーム再構成処理機能及びコーンビーム再構成処理機能の両方を備え、検査計画設定部207により設定された再構成処理機能の少なくともいずれかを用いて断層像などの画像を再構成する。
【0031】
さらに本実施形態では、検査計画設定部207によりコーンビーム再構成処理が設定された場合、画像再構成処理部206は、ヘリカルスキャンに並行して、ファンビーム再構成を用いて、検査計画設定部207により指定された再構成する心拍位相によらず(上記の例では65%だけでなく、その他の位相を含む、すなわち0〜100%の投影データ)、収集された投影データに基づいて断層像を次々と再構成する。
【0032】
そして画像再構成処理部206は、ヘリカルスキャン終了後に或いはバックグランドで、上記再構成対象の心拍位相の断層像を再構成するために選択された投影データに基づいてコーンビーム再構成により断層像(或いは3次元画像)を再構成するものとする。これにより、表示部210では、ヘリカルスキャンに追従して断層像をほぼリアルタイムに表示し、ヘリカルスキャン終了後に、リアルタイム表示される断層像より厳密な画像を表示することができる。
【0033】
本実施形態では、後述するように、スキャン中にX線量を変更(モジュレート)するが、操作者は実際にスキャン中にX線量が変更されているか否かを判断することが難しい。本実施形態では、投影データを、計算量の少ないファンビーム再構成を用いてスキャンと並行して再構成処理するため、ほぼリアルタイムに断層像を再構成することができる。断層像の画像SDはX線量の変調に伴い変化する。操作者は一般的にX線技師であるため、リアルタイムに表示される断層像の画像SDの変化によりX線量の変調を認識ことができる。また計算量が多いものの正確な断層像であるコーンビーム再構成により得られた断層像をスキャン終了後に表示部210に表示することにより、ファンビーム再構成法より正確な断層像により診断を行うことができる。
【0034】
なお、スキャンと並行してファンビーム再構成される対象の投影データは、検査計画設定部207にて指定された全ての検出素子列で収集される投影データとしても良いが、X線検出器102の1列分の検出素子列(例えば、スライス方向の中央列、64列のマルチ検出器であれば中央の32列又は33列)の投影データ、或いはX線検出器102の複数列分の検出素子列の投影データ(例えば、スライス方向の中央複数列。64列のマルチ検出器であれば中央の31列目、32列目、33列目、34列目)を加算したデータが計算スピードを向上させるために好ましい。またスキャンに並行してリアルタイム再構成を実現するために、上述のようなファンビーム再構成を行うに代わりに、検査計画設定部207により設定されたデータ収集形態の全ての検出素子列ではなく、その中の一部の列(1列又は複数列)の検出素子列のデータに基づいてコーンビーム再構成処理により断層像を再構成しても良い。このような一部の検出素子列のデータに基づくコーンビーム再構成処理でも計算速度を向上させることができる。
【0035】
コーンビーム再構成処理は、例えばFeldkamp法と呼ばれる再構成方法を利用して、投影データに基づく画像再構成を行うのが好ましい。Feldkamp再構成法は、スライス方向(Z軸方向)に広い対象領域を複数のボクセルの集合体として扱って、X線吸収係数の3次元的分布データ(以下「ボリュームデータ(複数のボクセルデータが立体的(3次元的)に集合したもの)」という。)を発生するために、ファンビーム・コンボリューション・バックプロジェクション法をもとに改良された近似的再構成法である。つまり、Feldkamp再構成法は、データをファン投影データとみなして畳み込み、そしてバックプロジェクションは、回転中心軸に対して実際のコーン角に応じた斜めのレイに沿って行なわれる。なお、コーンビーム再構成処理として、投影データを3次元的に扱い、コーンパラ変換を行い(平行ビームに並べ替え)、並べ替えられた投影データに基づいて3次元逆投影を行っても良い。
【0036】
またファンビーム再構成処理は、例えばファンビーム・コンボリューション・バックプロジェクション法を利用したもので、バックプロジェクションで、X線(レイ)がX線管101の回転軸対して直交するものと仮定(投影データがZ軸方向に垂直方向のX線により得られたと仮定)して、投影データに基づいて画像再構成する。
【0037】
再構成された断層像は、画像記憶部209に一旦記憶されて、表示部210に表示される。或いは、操作者の指示により任意断面の断層像、任意方向からの投影像、レンダリング処理による特定臓器の3次元表面画像等のいわゆる疑似3次元画像データに変換されて、画像記憶部209を介して表示部210に表示される。
【0038】
検査計画設定部207は、キーボードや各種スイッチ、マウス等を備え、操作者が検査計画を設定するためのユーザインターフェース機能を有する。検査計画設定部207は、検査計画を支援するための表示部(表示部210に対して独立或いは合体したもの)を有し、表示部210に表示される設定画面上で検査計画を選択・作成する。検査計画として設定されるパラメータは、検査対象部位、シーケンス、被検体(患者)のデータを収集するためのスキャン条件、画像再構成を行うための再構成条件、再構成された画像を表示する際の表示条件、呼吸練習時やスキャン間の音声の発生タイミング等がある。
【0039】
設定対象の検査対象部位は、頭部、胸部、腹部、腰部、下肢などがあるが、本実施形態では、検査計画設定部207の設定画面上に複数の検査対象部位を表示し、その中から、胸部(選択対象に心臓があれば心臓)を選択するものとする。
【0040】
シーケンスとしては、スキャンから画像再構成までのシーケンス、スキャンから画像転送までのシーケンス、スキャンから画像記録までのシーケンス等があるが、本実施形態では、スキャンから画像表示までのシーケンスを検査計画設定部207により選択する。
【0041】
スキャン条件としては、スキャンタイプ、スキャンの収集形態を示すデータ収集形態、再構成範囲、心電同期スキャンに関する条件などがある。本実施形態では、スキャンタイプとして、コンベンショナルスキャン、ヘリカルスキャン、ダイナミックスキャンの3種類が用意される。本実施形態では、データ収集形態をスライス数×スライス厚で示し、「64×0.5」、「32×0.5」の2種類の条件を記憶しておき、検査計画設定部207においていずれかを選択可能とする。ここでは、「64×0.5」、すなわち64スライスを0.5mm用の検出素子列で同時収集する、を選択するものとする。予め記憶されたデータ収集形態は上記の2種類に限らず、3種類以上でも良い。また数値についてもX線検出器102の構造が異なれば、当然異なる。再構成範囲はスキャン期間とも呼ばれるもので、本実施形態では検査計画設定部207において開始位置、終了位置を入力・設定するものとする。
【0042】
本実施形態では、検査計画設定部207において心電同期スキャンに関する条件として、再構成する心拍位相、心拍数変動範囲、心電同期再構成モード(ハーフ再構成/セグメント再構成のいずれか)、ヘリカルピッチ、標準スキャン期間のX線量に関する条件等を設定する。なお、ヘリカルピッチは、コンベンショナルスキャン及びダイナミックスキャンが選択された場合は、設定されない。心拍数(Heart rate)は、1分間当たりに換算した心拍数、あるR波から次のR波までの間隔(R−R間隔)と示しても良い。
【0043】
再構成心拍位相は、「%」又は「msec」で設定する。「%」は、心電図上、あるR波の位置を0%とし次のR波の位置を100%として、R波から次のR波までの期間を0〜100%で規格化したものであり、当該期間の位置を表現したものである。「msec」は、R波を基準とした遅れ時間(スキャン遅延時間)を表現したものである。本実施形態では、検査計画設定部207により%で設定し、システム制御部212においてスキャン前に遅延時間に自動変換し、スキャン制御部201はスキャン中、遅延時間msを基準に制御するものとする。
【0044】
再構成する心拍位相は、例えば操作者が再構成をしたい中心位相であり、検査計画設定部207のキーボード等を用いて任意の数値で入力されるか、或いは表示画面にスキャン前に収集された心電図を表示し、心電図上にマーキングすることで設定する。設定心拍位相としては、モーションアーチファクトを軽減するために65〜85%のいずれかが望ましい。本実施形態では、検査計画設定部207により、再構成する心拍位相として75%を設定するものとする。
【0045】
心拍数変動範囲は、操作者により検査計画設定部207を用いて例えば70〜80bpmのように数値で入力されても良いし、図3Aに示すように、時間と心拍数の関係を示すグラフ上にラインカーソルで設定されても良い。心拍数変動範囲が数値で入力される場合は、スキャン前における数心拍の心拍数の代表値(例えば、呼吸練習期間すなわち音声発生期間や検査計画設定時の中央値、平均値、最大心拍数、最小心拍数のいずれか又は組み合わせなど)を表示画面に参考情報として表示するのが望ましい。これにより、操作者は心拍数変動範囲を効率的に設定することができる。また時間と心拍数との関係を示すグラフにて設定される場合は、図3Aに示すように心電図と並列に表示させても良いし、心電図を表示しなくても良い。
【0046】
また心拍数変動範囲は、上述のように操作者により入力や設定が行われず、80〜100bpmなどのように予めデフォルトで範囲が決められておいても良い。
【0047】
図3Bに示すように、さらに心拍数変動範囲は、システム制御部212により、スキャン前における数心拍の心拍数の上記代表値に基づいて自動的に決定されても良い。例えば、システム制御部212により求められた呼吸練習期間或いは検査計画設定時の最大心拍数と最小心拍数を心拍数変動範囲として決定したり、スキャン前に求められた心拍数の中から上位及び下位の数個の心拍数を除いた最大心拍数と最小心拍数を心拍数変動範囲として決定したり、スキャン前に求められた平均値又は中央値を中心とした例えば20又は30bpmの範囲を心拍数変動範囲と決定する。
【0048】
また心拍数変動範囲は、システム制御部212において求めたスキャン前の心拍数セットのうち適切な心拍数変動範囲(例えば最小心拍数、最大心拍数)をデフォルトで表示部に表示させ、操作者がキーボード等を用いて編集するような半自動化にしても良い。
【0049】
本実施形態では、操作者により検査計画設定部207を用いて心拍数変動範囲を数値で入力・設定するものとする。この設定前に検査計画設定部207は、表示画面に心電同期スキャンに関する条件を設定するためのナビ画面を起動し、心拍数変動範囲の入力欄と共に、再構成する心拍位相の入力欄、X線量に関する条件の入力欄、心電同期再構成モード(ハーフ再構成/セグメント再構成)の選択欄、上記代表値情報表示欄を少なくとも表示するのが好ましい。これにより、操作者は心電同期スキャンに関する条件と、他の条件とを識別して入力することができるため、誤操作を防止することができる。
【0050】
標準スキャン期間のX線量に関する条件としては、管電流、管電圧等があり、操作者は検査計画設定部207において、例えば管電圧135kV、管電流350mAなどの数値を入力する。一般的には、管電流は、フィラメント電流により制御される。
【0051】
標準スキャン期間とは、特定の心拍位相の設定に用いた心拍周期を基準として、特定の心拍位相を中心とした所定の時間幅を有するセグメント期間を、被検体の心拍数の変動範囲に基づいて拡張した期間である。または、標準スキャン期間とは、被検体の関して平均的な心拍周期を基準として設定したセグメント期間を、被検体の心拍数の変動範囲に基づいて拡張した期間である。なお、セグメント期間は、断層像を再構成するのに要する投影データセットを収集する期間として定義される。
【0052】
具体的には、標準スキャン期間の始点は、最大心拍数(最短心拍周期)に対応するセグメント期間の始点に一致され、標準スキャン期間の終点は、最小心拍数(最長心拍周期)に対応するセグメント期間の終点に一致される。
【0053】
この標準スキャン期間にわたってX線を高線量に維持する。被検体の心拍数が変動しても、それを許容できる。標準スキャン期間のどこからでも高SNRの投影データセットを取り出すことができる。高SNRの投影データセットから高画質の断層像を発生することができる。
【0054】
説明の便宜上、標準スキャン期間という表現を用いており、第1の期間などと表現しても良い。なお、以下、心拍期間内で標準スキャン期間を除く期間を、低線量スキャン期間(又は第2の期間)と称する。
【0055】
また、検査計画設定部207において、標準スキャン期間及び低X線量スキャン期間の両方の管電圧及び管電流を入力するようにしても良い(この場合、低X線量スキャン期間の管電流値が標準X線スキャン期間の管電流値より大きな管電流値を設定できないよう制限するのが望ましい)。本実施形態では標準スキャン期間の管電圧、管電流を設定する。これにより、操作者の誤操作を防止し且つ操作者の負担を軽減することができる。
【0056】
また検査計画設定部207は、再構成条件として、再構成方式(ファンビーム再構成/コーンビーム再構成)、再構成スライス厚、再構成間隔などを入力する。本実施形態では、再構成方式としてコーンビーム再構成を設定したものとする。
【0057】
また検査計画設定部207は、画像表示条件として、ウインドウレベル、ウインドウ幅などを設定する。
【0058】
このように検査計画設定部207にて設定された検査計画は、システム制御部212に送信される。システム制御部212は、検査計画設定部207により設定された検査計画を実現させるためのプログラムを有し、スキャン制御部201、投影データ記憶部203、画像再構成処理部206などを制御する。このシステム制御部212の統括的制御によりスキャンから画像再構成までの一連のシーケンスが実現される。
【0059】
システム制御部212は、スキャンに同期して心電計106にて収集される心電図データ(心電信号)を、記憶部203から読み出して、心電図データから例えばR波を抽出する。またシステム制御部212は、スキャン開始前に心電計106にて収集された心電図データを、記憶部203から読み出して、心拍数(心拍数)を複数心拍分求める。さらにシステム制御部212は、複数心拍分の心拍数から、上述の代表値(心拍数の平均値、最大心拍数、最小心拍数など)を取得する。
【0060】
さらにシステム制御部212は、検査計画設定部207により設定された再構成する心拍位相及び心拍数の範囲(心拍数変動範囲)に基づいて、当該設定部207に設定された管電流値を用いてスキャンする標準X線量スキャン期間(再構成する心拍位相及びマージン/誤差範囲をスキャンする時の管電流値の期間)と、当該スキャン期間より低管電流値にてスキャンする低X線量スキャン期間(標準X線量スキャン期間の管電流値より低管電流値の期間)とを決定する。標準X線量スキャン期間及び低X線量スキャン期間は、R波から遅延時間で計算されるのが好ましい。なお、システム制御部212は、検査計画設定部207により設定された再構成する心拍位相及び心拍数変動範囲に基づいて標準X線量スキャン期間及び低X線量スキャン期間を計算するものでも良いが、再構成する心拍位相及び心拍数の範囲に対して標準X線量スキャン期間及び低X線量スキャン期間が関連付けられて記憶する記憶部を有し、検査計画設定部207により設定された再構成する心拍位相及び心拍数変動範囲に従って標準X線量スキャン期間及び低X線量スキャン期間を決定することが望ましい。
【0061】
ここで、標準X線量スキャン期間(設定管電流値の期間)及び低X線量スキャン期間(変調させる低管電流値の期間)の決定方法について、図2を用いて詳細に説明する。
【0062】
図2(a)は、スキャン前、例えば呼吸練習時の心拍数(心拍数)の変化を示し、図2(b)は、被検体を実際にスキャンしている時の心拍数の変化を示し、図2(c)は、スキャン前に得られた最大心拍数の心電図を、実際にスキャンしている時に収集されたR波を基準として示し、図2(d)は、スキャン前に得られた最小心拍数の心電図を、実際にスキャンしている時に収集されたR波を基準として示したものである。なお、図中の白抜きの四角マークは、再構成する心拍位相を示す。
【0063】
図2(b)に示す通り、スキャン時の心拍数は、60bpm、60bpm、83bpm、83bpm、83bpmと変化したとする。操作者が画像再構成したい位相がR波から75%とすると、白抜きの四角マークのみに標準X線量(図2(e)中の300mAでのX線量)でX線が曝射され、その他の期間にはX線が曝射されないことが理想的である。しかしながら、スキャン時における心拍数はスキャン前にはどのように変化するか正確には分からない。
【0064】
そこで、本方法では、スキャン前に収集した複数周期分の心拍数から、スキャン期間の心拍数の誤差範囲を予測する。ここでは、図2(a)に示す通り、スキャン前の練習時の心拍数は、60bpm、60bpm、83bpm、83bpm、90bpmと変化しているので、スキャン時の心拍数の変動は、最大心拍数は90bpm、最小心拍数は60bpmであると予測できる。特に、呼吸練習期間は実際のスキャン時と同様に被検体が息止めを行うので、呼吸練習期間の複数周期分の心拍数を用いて、スキャン時の心拍数変動範囲、すなわち最大心拍数及び最小心拍数を予測することは有効である。
【0065】
そして、スキャン中に同期収集される心電情報からR波をピックアップし、このR波を基準にして、最大心拍数90bpmの再構成心拍位相75%を標準スキャン期間の開始位置とし、最小心拍数の60bpmの再構成心拍位相75%を標準スキャン期間の終了位置、残りを低X線量スキャン期間と決定する。これら開始位置、終了位置は、R波からの遅延時間として換算する。標準スキャン期間のX線量(若しくは、管電流値及び管電圧値のうち少なくとも管電流値を含むX線量に関する条件)は、検査計画設定部207にて設定された管電流値を適用する。低X線量スキャン期間のX線量若しくはX線量に関する条件は、標準スキャン期間の設定条件に従って自動的に決定されても良い。具体的には、低X線量スキャン期間のX線量若しくはX線量に関する条件は、標準スキャン期間のX線量若しくはX線量に関する条件の約1/3〜1/2(例えば標準スキャン期間の設定管電流値が300mA、設定管電圧値が135KVの場合、低X線量スキャン期間の管電流値を設定管電流値の1/3:100mA、管電圧値を設定管電圧値と等しく135kV)と予め決めておく、或いは低X線量スキャン期間のX線量に関する条件を固定値(例えば、管電流値を90mA、管電圧値を125kv)と予め決定しておく。
【0066】
なお図2の例では、最大心拍数、最小心拍数を用いた期間設定方法について説明したが、心拍数変動範囲は、最大心拍数、最小心拍数に限らず、上述した通り、スキャン前に求められた全心拍数の中から上位及び下位の数個の心拍数を除いた最大心拍数と最小心拍数、スキャン前に求められた平均値又は中央値から所定の範囲(例えば平均値が70bpmとすると、その前後10bpmの60〜80bpm)、など種々の値を適用できるのは言うまでも無い。
【0067】
また本実施形態では、心拍数変動範囲を検査計画設定部207において任意の範囲を設定可能な例を説明しているが、操作者が入力した数値の範囲又はラインカーソルの範囲が、閾値より大きくなった場合、本変調が使用できないように当該範囲を確定(検査計画を確定)できないようにするのが良い。これは、実際の患者がスキャン時に心拍数変動範囲が15〜30bpmを超えることは少なく、心拍数変動範囲の大きい患者は不整脈などを起こしていると推測されるため、そのような値をそのまま用いるのは好ましくないからである。
【0068】
さて、システム制御部212は、上述のように決定された標準スキャン期間、或いは標準スキャン期間と低X線量スキャン期間とに従って、X線量の変調を制御するためのX線制御信号をスキャン制御部201に対して供給する。例えば、X線制御信号がLOWレベルのときは、高電圧発生装置104からX線管101に低線量用の管電圧、管電流が印加され、低X線量のX線がX線管101から発生する。一方、X線制御信号がHIGHレベルのときには、高電圧発生装置104からX線管101に高線量用の管電圧、管電流(ここでは検査計画設定部207にて設定された管電圧値、低管電流値)が印加されるので、高X線量のX線がX線管101から発生する。システム制御部212は、低X線量スキャン期間には、X線制御信号をLOWレベルにセットし、一方、標準スキャン期間には、X線制御信号をHIGHレベルにセットする。これにより、X線は、低X線量スキャン期間には低線量で曝射され、標準スキャン期間には高線量で曝射されるので、スキャン中被検体の心拍数が変動しても、所望する心拍位相を再構成するのに必要な投影データを確実に得ることができ、且つ診断に供しない期間の低被曝化を図ることができる。
【0069】
なお、システム制御部212は、上述の通り、標準スキャン期間に高X線量、低X線量スキャン期間に低X線量でスキャンするように制御しているが、高電圧発生装置104からX線管101に供給される管電流など(或いはX線量)は、低X線量スキャン期間から標準スキャン期間へ急激に切り替えない。すなわちシステム制御部212は、図2(e)に示す通り、低X線量スキャン期間と標準スキャン期間との間に移行期間を有し、高電圧発生装置104からの管電流など(或いはX線量)を徐々に移り変える。またシステム制御部212は、低X線量スキャン期間の管電流を、検査計画設定部207にて設定される場合を除いて、予め定められた閾値(管電流値)以下にならないよう制御する。これは、管電流を低X線量スキャン期間から標準スキャン期間へ急激に高くしたり、逆に標準スキャン期間から低X線量スキャン期間に急激に低くすると、X線管101や高電圧発生装置104に過負荷を与えことによる故障の要因を防止するためである。
【0070】
システム制御部212は、スキャン制御部201に対してX線量調整の制御の他、回転フレーム103の回転制御、天板302の移動制御を統括的に行うために、スキャン制御部201に対して制御信号を供給する。これを受け、スキャン制御部201は制御信号に従って各種制御を行い、投影データが収集される。投影データは、投影データ記憶部203にビュー、X線検出器102のチャンネル番号、列番号、そして心電信号(心電図データ)に関連付けられ一時的に記憶される。画像再構成処理部206は、投影データ記憶部203に記憶される投影データを、スキャンと並行してファンビーム再構成法を用いて断層像データを次々と再構成し、スキャン終了後に(若しくはバックグランドで)コーンビーム再構成法を用いて全スキャン期間の断層像データを再構成する。画像再構成処理部206により再構成された断層像データは、画像記憶部209を介して表示部210に供給され、表示部210に表示される。
【0071】
次に、このように構成されたX線コンピュータ断層撮影装置の動作を説明する。
【0072】
本実施形態のX線コンピュータ断層撮影装置を用いた心臓検査は、大別して、呼吸練習、検査計画設定、スキャン、画像再構成、その他処理という流れで行われる。
【0073】
まず操作者は、スキャン前に被検体に呼吸練習をさせる。呼吸練習にあたって被検体に電極を取り付け、心電図信号を正確に収集していることを心電計106にて確認する。操作者は心電計106が心電図信号を収集することを確認できれば、呼吸練習を本装置に設けられた呼吸練習機能に従って行う。操作者は、検査計画設定部207を用いて息止め時間を設定する。つづいて、操作者が検査計画設定部207を用いて開始を指示すると、架台装置1から、「息を吸って下さい」、「息をとめて下さい」、「やめて下さい」などの音声が発生される。心電計106は、音声発生期間、すなわち呼吸練習期間の心電情報を収集し、コンソール2に送信する。コンソール2では、受信した心電情報を記憶部203を介してシステム制御部212に送信する。システム制御部212は、呼吸練習期間における1周期毎(R波−R波間)の心拍数を求める。
【0074】
次に操作者は、本装置に設けられた検査計画支援機能において被検体の心臓検査の検査計画をたてる。具体的には、検査計画設定部207において、検査対象部位として胸部(選択対象に心臓があれば心臓)を選択する。検査対象部位として心臓を選択されると、検査計画設定部207の設定画面上には心臓用の詳細パラメータ支援情報が表示される。操作者は、この支援情報を参照しながら、検査計画設定部207のキーボード、マウスなどを用いて、スキャン条件、再構成条件などを入力する。スキャン条件としては、スキャンタイプ(ここではヘリカルスキャン)、データ収集形態(64スライスを0.5mm用の検出素子列で同時収集する/32スライスを1.0mm用の検出素子列で同時収集する)、再構成範囲としての開始位置、終了位置、心電同期スキャンに関する条件などを入力・設定する。再構成条件としては、再構成方式(ファンビーム再構成法/コーンビーム再構成法)、再構成スライス数、再構成スライス厚等がある。本実施形態では再構成方式としてはコーンビーム再構成法を選択する。
【0075】
心電同期スキャンに関する条件としては、再構成する心拍位相、心拍数変動範囲、再構
成モード(ハーフ再構成/セグメント再構成)、ヘリカルピッチ、スキャン速度、標準ス
キャン範囲のX線量に関する条件(管電流、管電圧)が設定される。
【0076】
このような検査計画が選択され、確認ボタンがクリックされると、選択された検査計画に関する情報がシステム制御部212に転送される。
【0077】
システム制御部212は、検査計画設定部207により設定された再構成する心拍位相及び心拍数変動範囲に従って標準X線量スキャン期間及び低X線量スキャン期間を決定する。システム制御部212は、標準X線量スキャン期間及び低X線量スキャン期間をR波からの遅延時間として求める。
【0078】
操作者は心電計106にて心電図信号を収集されていることを確認すると、検査計画設定部207により検査開始指示を行う。この開始指示信号を受けて、システム制御部212は、スキャン制御部201、投影データ記憶部203、画像再構成処理部206などを制御する。
【0079】
スキャン制御部201は、架台駆動装置105及び寝台駆動装置301を制御し、架台駆動装置105は検査計画設定部207にて設定されたスキャン速度に到達するように回転フレーム103を回転し、寝台駆動装置301は天板302をスキャン開始位置の直前(ヘリカルスキャンの助走位置)まで移動する。
【0080】
そして、回転フレーム103のスピードが設定スピードに到達すると、寝台駆動装置301は天板302をスライス方向(z軸方向)にスライドをする。天板302のスライドスピードが一定になったときに、検査計画設定部207で設定された管電圧、管電流が高電圧発生装置104からX線管101へ供給され、X線が曝射される。
【0081】
高電圧発生装置104からX線管101へ管電圧、管電流が供給されるにあたって、システム制御部212は次のような処理を行う。
【0082】
システム制御部212は、スキャンに同期して心電計106にて収集される心電図データ(心電信号)を、記憶部203から読み出して、心電図データ(心電信号)からR波を次々にピックアップする。そしてシステム制御部212は、同期収集された心電信号のR波、決定された標準スキャン期間及び低X線量スキャン期間におけるR波からの遅延時間に基づいて、X線量変調制御のためのX線制御信号をスキャン制御部201に送信する。スキャン制御部201は、標準スキャン期間におけるR波からの遅延時間に高X線量が曝射されるようにHIGHレベルを示すX線制御信号を送信し、低X線量スキャン期間におけるR波からの遅延時間に低X線量が曝射されるようにLOWレベルを示すX線制御信号を送信する。
【0083】
高電圧発生装置104は、スキャン制御部201からのX線制御信号を受け、当該信号がHIGHレベルであれば検査計画設定部207により設定された管電圧、管電流をX線管101に供給する。一方、高電圧発生装置104は、スキャン制御部201からのX線制御信号がLOWレベルであれば、例えば、管電圧をHIGHレベルと同一としをHIGHレベルの約1/3の管電流値の管電流を供給する。これによりX線管101から標準スキャン期間(期間)に高X線量のX線が曝射され、低X線量スキャン期間(期間)に低X線量のX線が曝射される。標準スキャン期間から低X線量スキャン期間へ移るときは、移行期間で徐々に管電流(X線量)が下がり、低X線量期間で上記1/3の管電流値(X線量)となり、一方、低X線量スキャン期間から標準スキャン期間へ移るときは移行期間に徐々に管電流(X線量)が上がり、標準スキャン期間で設定された管電流値(X線量)となる。
【0084】
このようにして、心電計106による心電信号の収集と、検査計画設定部207にて設定されたデータ収集形態でヘリカルスキャンとが並行に行われ、ヘリカルスキャン中にX線量が変調(モジュレート)される。
【0085】
被検体を透過したX線は、X線検出器103において検出されアナログ電気信号の投影データに変換され、データ収集回路107でディジタル電気信号の投影データに変換された後、図示しないデータ伝送部を介して、前処理部202に送られ、各種補正処理を受ける。
【0086】
投影データは、データ収集時のX線管101の回転角度を表すビュー(VIEW)、チャンネル番号、列番号等が関連付けられ、心電計106の心電図データ(心電信号)とともににコンソール2の投影データ記憶部203に記憶される。
【0087】
画像再構成処理部206は、ヘリカルスキャンと並行して、検査計画設定部207にて設定されたデータ収集形態(全検出素子列)のうち一部の検出素子列で収集される投影データに基づいて、リアルタイム再構成を行い、断層像を次々と再構成し、表示部210は次々に再構成された断層像を表示する。そして、画像再構成処理部206は、ヘリカルスキャン終了後に或いはバックグランドで、検査計画設定部207により指定された再構成する心拍位相に関係するデータ(ここでは、セグメント再構成にて集められた同一心拍位相の投影データ)に対して重み付けを行い、コーンビーム再構成を用いて、検査計画設定部207にて設定された再構成範囲における複数の断層像を、設定画像ピッチ及び設定画像スライス厚で再構成し、表示部210はコーンビーム再構成された断層像を表示する。
【0088】
このように本実施形態では、心電同期スキャンにおいてX線量を変調させるにあたり、指定された再構成心拍位相を再構成するのに必要な期間だけでなく、マージン期間を設定X線条件でスキャンすることにより、被検体の心拍数(R−R間隔)の変動があっても、被検体への被曝低減を図りつつ、再構成心拍位相の投影データを操作者が所望するX線量(すなわち所望するS/Nの画像)で得ることができる。
【0089】
また本実施形態では、スキャン前に収集された複数の心拍数及び操作者が指定した再構成心拍位相に基づいて標準スキャン期間を決定することにより、スキャン時の心拍数の変動すなわち誤差範囲を予測したスキャンを行うことができるので、被検体への被曝低減を図りつつ操作者が所望とする再構成心拍位相のデータを確実に得ることができる。
【0090】
また本実施形態では、呼吸練習期間の複数の心拍数に基づいて標準スキャン期間を決定している。スキャン時には呼吸練習期間と同様に息止めを行うので、心拍数の変動範囲の予測を精度良く行うことができる。
【0091】
また本実施形態では、スキャン前に収集された複数の心拍数の中から、最大心拍数及び最小心拍数をピックアップし、心拍数変動範囲として用いているので、スキャン時の心拍数変動範囲の予測精度を向上させることができる。
【0092】
また本実施形態では、操作者により標準スキャン期間及び低線量スキャン期間のうち、標準スキャン期間のX線条件(管電圧及び管電流)を設定するだけで良いので、標準スキャン期間に低X線用のX線条件、低線量スキャン期間に高X線用のX線条件を設定するという間違いを防止することができる。
【0093】
また本実施形態では、ヘリカルスキャンと並行して、検査計画設定部207にて設定されたデータ収集形態の全検出素子列のうち一部の検出素子列で収集される投影データに基づいて、リアルタイム再構成を行い、断層像を次々と再構成し、表示部210に次々に再構成された断層像を表示し、ヘリカルスキャン終了後に或いはバックグランドで、検査計画設定部207により指定された再構成する心拍位相に関係する投影データに基づいてコーンビーム再構成を用いて断層像を再構成する。これにより、操作者はリアルタイムに断層像を確認することができるので、画像SDの変化によりX線量の変調が行われているか否かを確認することができる。またスキャン終了後に正確な断層像により診断を行うことができる。
【0094】
更に本実施形態では、標準スキャン期間と低X線量スキャン期間との間に移行期間を設けることや、或いは低X線量スキャン期間の管電流をある値以下にならないよう制限を設けることにより、X線管101などへの過度な負荷を避けることができるので、故障を防止することができる。
【0095】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。
【0096】
例えば、上記実施形態では、標準スキャン期間に設定X線条件のX線量でスキャンし、低X線量スキャン期間に標準スキャン期間(設定X線条件)に比べて低X線量でスキャンしているが、低X線量スキャン期間に被検体に曝射されるX線を停止・遮蔽したり、或いは低X線量スキャン期間にX線量ゼロの期間を設けても良い。
【0097】
また上述の実施形態では、心拍数変動範囲を、検査計画設定部207にて設定することやシステム制御部212にて決定することを説明したが、心拍変動範囲は必ずしも設定・決定する必要はない。これに代わり、検査計画設定部207にて再構成する心拍位相を中心位相だけでなくマージン位相を入力・設定したり、或いは再構成する心拍位相に基づいてマージン位相を決定しても良い。これにより、少なくとも1つの心拍数における再構成中心位相に必要なデータに対して若干余分に高X線量でスキャンすることができるので、スキャン中に少々の心拍数変動があったとしても、被曝低減を図りつつ所望する再構成中心位相の画像を再構成することができ、心拍数変動範囲を入力・設定の手間を省くことができる。
【0098】
また呼吸練習時などのスキャン前の心電情報から心拍数変動範囲を設定しないで、スキャン中に収集される1心拍以上の心拍数に基づいて、心拍数変動範囲(若しくは直接、標準スキャン期間)を決定しても良い。
【0099】
またスキャン前及びスキャン時の両方の心電情報に従って心拍数変動範囲を決定しても良い。システム制御部212により、スキャン中に並行して収集された心電情報に従って求められた心拍数が、スキャン前に決定された心拍数変動範囲を超えた場合、その後は、スキャン途中であってもX線変調をしないで設定管電流・管電圧のX線量を維持する。これにより、万一、患者がスキャン中に不整脈などを起こしたときにでも、再構成する心拍位相のデータを得ることができる。
【0100】
さらに本実施形態のように操作者が心拍数変動範囲を入力するのではなく、システム制御部212が、スキャン前に収集され記憶部203に記憶された心電データに基づいて複数周期分の心拍数を計算し、心拍数変動範囲を自動的に設定するのでも良い。この際、自動設定される心拍数変動範囲の基準となる心拍数は、最大心拍数、最小心拍数に限らず、平均値や中央値でも良い。
【0101】
また心拍数変動範囲(例えば最大心拍数、最小心拍数)における再構成心拍位相と1対1に対応する期間を標準スキャン期間と決定しないで、標準スキャン期間に若干のマージン(例えば、数パーセント、数msec)を加えた期間を設定管電流値でスキャンするようにしても良い。
【0102】
また検査計画設定部207の表示部に、息止め練習期間の一部の心拍数(例えば息止め開始から数心拍分、息止め終了から直前の数心拍)に関する情報に限定して表示、或いは一部の心拍位相の心電図に限定して表示する。そして操作者にこの表示を参照させながら、心拍数や再構成したい心拍位相を設定させる構成としても良い。図3に示す通り、心拍数は息止め開始直後に心拍数が最大で、徐々に低くなり、息止め終了間近で最小HRになる傾向がある。このため本変形例のように構成すれば、操作者は、最大心拍数或いは最小心拍数に対応する心電図で再構成心拍位相を設定することになるので、最大心拍数低くなる誤差/最小心拍数より高くなる誤差を考えれば良い。この場合、システム制御部212は、標準スキャン期間を、操作者により指定された心拍数又は心電図を最大心拍数とし、その10〜20bpm低い心拍数が最小心拍数と計算し、最大心拍数に対応する時刻を標準スキャン期間の開始時刻、計算された最小心拍数に対応する時刻を終了時刻と決定する。息止め終了から直前の数心拍の心拍数や心電図が表示されている場合は、操作者により指定された心拍数又は心電図を最小心拍数とし、その10〜20bpm高い心拍数が最大心拍数と計算し、最小心拍数に対応する時刻を標準スキャン期間の終了時刻、計算された最大心拍数に対応する時刻を開始時刻と決定する。
【0103】
更に、本実施形態では、標準スキャン期間のX線量(或いは管電流値)を一定で示したが、標準スキャン期間のX線量を複数段階に変化させても良い。例えば、標準スキャン期間のうち所定ビュー(例えば45−135度、225度―270度)を若干高めのX線量(管電流値)とし、その他のビュー(例えば315度−45度、135度―225度)は若干低めとしたり、再構成範囲位置決め用のスカウト像のためのスカウトスキャンにより収集された投影データに基づいて、標準スキャン期間の管電流値を複数段階に設定しても良い。
【0104】
また本実施形態では、低X線量スキャン期間の管電流値を、標準スキャン期間の設定管電流値に基づいて決定したり、或いは検査計画設定部207にて設定しているが、これらに限らない。例えば、心臓のスキャンに先立って造影剤流入タイミングを図るためのプリキャン、すなわち心臓スキャンより低線量の心臓の上流側(例えば頸部)においてモニタリングスキャンで得られた投影データに基づいて断層像をリアルタイム再構成して、CT値やマスク像からの増加した値を表示部210に表示する場合、モニタリングスキャンの管電流値を下限とし、標準スキャン期間の設定管電流値を上限とし、低X線量スキャン期間の管電流値を上限と下限の間で変化するように決めても良い。これにより、操作者は、標準スキャン期間、モニタリングスキャン期間、及び低X線量スキャン期間の3種類の管電流値を決定しなくて良いので、操作者のX線条件の手間を軽減することができる。
【0105】
さらに、本実施形態では、2心拍以上のセグメント(パッチ)の集めてセグメント再構成を行うが、心拍数、回転スピード等の関係から不要なパッチを収集する恐れがある。例えば、1心拍目、2心拍目、4心拍目の3セグメントでハーフスキャン分(180度+ファン角度)の投影データを集めることはできる場合、3心拍目が1心拍目の一部と2心拍目の一部にオーバーラップしてしまうが、4心拍目のセグメントの投影データを収集するために3心拍目の心拍位相にもX線を曝射してしまう。このような場合、システム制御部212は、1心拍目、2心拍目、4心拍目の3セグメント(心拍位相)については標準スキャン期間の管電流値でスキャンを行うが、3心拍目のセグメント(心拍位相)については低線量スキャンの管電流値でスキャンを行うよう制御する。つまり、システム制御部212は、セグメント再構成において、セグメント間でのオーバーラップ部分が大きい場合は、少なくとも1以上のセグメント(心拍位相)については、標準スキャン期間と決定しないで低X線量スキャン期間と決定する。換言すると、同一ビュー(パッチ)のデータを複数回収集する場合は、複数回のうち少なくとも1回を標準スキャン期間としないで低X線量スキャン期間とする。これにより、被検体に対する更なる被曝低減を図ることができる。
【0106】
(第2実施形態)
以下、図面を参照して本発明によるX線コンピュータ断層撮影装置(X線CT又はCTスキャナともいう)の第2実施形態を説明する。なお、X線コンピュータ断層撮影装置には、X線管と放射線検出器とが1体として被検体の周囲を回転する回転/回転(ROTATE/ROTATE)タイプと、リング状に多数の検出素子がアレイされ、X線管のみが被検体の周囲を回転する固定/回転(STATIONARY/ROTATE)タイプ等様々なタイプがあり、いずれのタイプでも本発明を適用可能である。ここでは、現在、主流を占めている回転/回転タイプとして説明する。
【0107】
また、再構成法には、フル再構成法、ハーフ再構成法、セグメント再構成法がある。これら再構成法は、1スライスの断層像データを再構成するのに必要な角度範囲が相違する。なお、X線管が、1スライスの断層像データを再構成するのに必要な角度範囲を回転するのに要する時間を、時間分解能という。フル再構成法は、1スライスの断層像データを再構成するのに、X線管が360°回転する間に収集された投影データを必要とする。ハーフ再構成法は、1スライスの断層像データを再構成するのに、X線管が(180°+α)回転する間に収集された投影データを必要とする。なお、αはX線の広がり角、つまりファン角を表す。セグメント再構成法は、セグメント数がnであるとき、{(180/n)°+α/n}の範囲の投影データを連続する又は離散するnの心拍周期の中から集めてきて、(180°+α)分の投影データを揃える方法であり、このセグメント再構成法の時間分解能は、X線管が{(180/n)°+α/n}の角度範囲を回転するのに要する時間として与えられる。いずれの再構成方式にも本発明を適用可能である。ここでは、ハーフスキャン法を例に説明する。
【0108】
また、入射X線を電荷に変換するメカニズムは、シンチレータ等の蛍光体でX線を光に変換し更にその光をフォトダイオード等の光電変換素子で電荷に変換する間接変換形と、X線による半導体内の電子正孔対の生成及びその電極への移動すなわち光導電現象を利用した直接変換形とが主流である。X線検出素子としては、それらのいずれの方式を採用してもよいが、ここでは、前者の間接変換形として説明する。また、近年では、X線管とX線検出器との複数のペアを回転リングに搭載したいわゆる多管球型のX線コンピュータ断層撮影装置の製品化が進み、その周辺技術の開発が進んでいる。本発明では、従来からの一管球型のX線コンピュータ断層撮影装置であっても、多管球型のX線コンピュータ断層撮影装置であってもいずれにも適用可能である。ここでは、一管球型として説明する。
【0109】
図5は本実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影装置の構成を示している。このX線コンピュータ断層撮影装置は、被検体に関する投影データを収集するために構成された架台1を有する。架台1は、X線管10と多チャンネル型X線検出器23を有する。X線管10と多チャンネル型X線検出器23は、架台駆動装置25により回転駆動される円環形状の回転フレーム12に、中央部分の開口部を挟んで互いに対向する位置関係で、搭載される。スキャンに際しては、開口部に、寝台2の天板2a上に載置された被検体Pが挿入される。被検体Pの心電図を検出するために、被検体Pには心電計22が装着される。
【0110】
多チャンネル型X線検出器23に隣接して参照X線検出器24が設置される。参照X線検出器24には、被検体を透過しないX線が入射する。参照X線検出器24は、X線管10で発生されて、ほとんど減衰を受けていないX線の出力強度を検出し、そのデータ(以下、X線出力データという)を発生する。参照X線検出器24は、X線の出力強度を表すX線出力データを発生することができる他の構成要素、例えばX線管10の管電流を計測する電流計(図6の11−1)、またはX線管10のフィラメント電流を計測する電流計(図6の11−2)に置き換えることができる。
【0111】
図6に示すように、ガラス管10−1内の真空状態に置かれた陰極10−3と陽極10−2との間には高電圧発生器21の管電圧発生部21−1により高電圧(管電圧)が印加される。X線管10のフィラメント10−4には高電圧発生器21のフィラメント電流発生部21−2からフィラメント電流が供給される。フィラメント電流の供給により発生した熱電子が高電圧下で加速され、陽極10−2のタングステンターゲットに衝突することにより、X線が発生する。
【0112】
図5に戻る。一般的にDAS(data acquisition system) と呼ばれているデータ収集装置26は、検出器23からチャンネルごとに出力される信号を電圧信号に変換し、増幅し、さらにディジタル信号に変換する。このデータ(生データ)は架台外部の計算機ユニット3に供給される。
【0113】
計算機ユニット3の前処理ユニット34は、データ収集装置26から出力されるデータ(生データ)に対して感度補正等の補正処理を施して投影データを出力する。この投影データは計算機システム3の投影データ記憶装置37に送られ、タイムコードとともに記憶される。投影データ記憶装置37には、心電計22の心電図データも記憶される。
【0114】
計算機システム3は、上記前処理ユニット34及び投影データ記憶装置37とともに、システムコントローラ29、入力器39、ディスプレイ38、スキャンコントローラ30、再構成ユニット36、R波検出部42、X線出力制御エキスパートシステム43、X線出力データ記憶部41から構成される。再構成ユニット36は、フル再構成処理、ハーフ再構成処理、セグメント再構成処理のいずれにも対応しているが、ここではハーフ再構成処理として説明する。R波検出部42は、心電計22の心電図データから特徴波として典型的にはR波を検出する機能と、そのR波の周期に基づいて被検体Pの心拍数を繰り返し計測する機能とを備えている。
【0115】
X線出力データ記憶部41は、上記参照X線検出器24で発生されたX線出力データを、タイムコードとともに記憶する。
【0116】
X線出力制御エキスパートシステム43は、操作者から入力器39を介して百分率表現で指定された画像再構成を所望する心拍時相に従って、被検体の心拍周期内に特定期間を時間(ミリ秒)表現で設定する機能とともに、この特定期間を、画像再構成に要する投影データの角度範囲に対応する時間幅(時間分解能)及びX線の立ち上がり時間に基づいて拡張処理する機能と、拡張処理された特定期間のデータをスキャンコントローラ30に供給する機能とを有している。スキャンコントローラ30は、拡張処理された特定期間のデータに基づいて、心電同期スキャンを実行する。つまり、心電図のR波を基準として特定期間にX線管10からX線を発生し、特定期間以外の期間ではX線を停止する。または心電図のR波を基準として特定期間にX線管10から比較的高い強度でX線を発生し、特定期間以外の期間では比較的低い強度でX線を発生する。X線の発生/停止又はX線の変調は、管電圧とフィラメント電流とのいずれか又は組み合わせにより制御される。ここではX線の変調として説明する。
【0117】
なお、上記X線の立ち上がり時間は、X線強度がほぼゼロ値から予め決められた強度値(比較的高出力値)の例えば90%の値に達するのに要する時間、又は予め決められた比較的低強度値から予め決められた強度値(比較的高出力値)の例えば90%の値に達するのに要する時間として定義される。ここでは後者の例を説明する。
【0118】
図7に示すように、システムコントローラ29の制御のもとで、スキャン前の準備段階に、被検体による息止めの試行(練習)が実施され(S11)、その息止めの試行期間をすくなくとも含む期間の心電図が、心電計22により計測される。R波検出部42において心電図に基づいてR波が検出される(S12)。R波検出部42では、R波の検出とともに、R波の間隔を心拍周期として計測し、息止めの試行期間中の最短心拍周期と最長心拍周期とが特定される。心電図は図9に例示するようにディスプレイ38に表示される。この画面上で第1と第2の少なくとも2つの心拍位相が入力器39を介して指定される(S13)。第1の心拍位相から第2の心拍位相までの期間が、高SN比の投影データを収集して高画質の画像再構成を所望する期間である。典型的には、心拍位相は、単一の心拍周期の全体期間を百としたときの百分率(%)で指定される。例えば30%と80%が指定される。
【0119】
X線出力制御エキスパートシステム43は、百分率で指定された期間を、R波からの経過時間(ミリ秒)に変換する。図8に示すように、まず、第1の心拍位相(例えば30%)に対応するR波からの経過時間(第1時刻という)が、最短心拍周期から決定される(S14)。一方、第2の心拍位相(例えば80%)に対応するR波からの経過時間(第2時刻という)が、最長心拍周期から決定される(S15)。
【0120】
次に、X線出力制御エキスパートシステム43は、ミリ秒で表現された高画質画像を所望している第1時刻から第2時刻までの期間(特定期間)の始点(第1時刻)を、1スライスの断層像データを再構成するのに必要とされるここでは(180°+α)をX線管10が回転するのに要する時間(時間分解能)“Δt(180+α)”の1/2の時間だけ、早める(S16)。X線出力制御エキスパートシステム43は、この第1時刻を、予め決められているX線の立ち上がり時間だけさらに早める(S17)。
【0121】
同様に、X線出力制御エキスパートシステム43は、ミリ秒で表現された高画質画像を所望している第1時刻から第2時刻までの期間(特定期間)の終点(第2時刻)を、時間分解能“Δt(180+α)”の1/2の時間だけ、遅らせる(S18)。
【0122】
このように特定期間の始点を最短心拍周期から決定し、終点を最長心拍周期から決定するとともに、この特定期間を時間分解能とX線立ち上がり時間とに基づいて拡張することにより、心電同期スキャンにおいて、所望する心拍時相の画像再構成に必要な投影データが収集されていない、または投影データが予定した比較的高いSN比で収集されていないという事態の発生を軽減することができる。
【0123】
図9に示すように、X線出力制御エキスパートシステム43は、息止め試行期間の心電図に、S16で決定された第1時刻からS18で決定された第2時刻までの期間(再構成に必要なデータ範囲)と、S17で決定された第1時刻からS18で決定された第2時刻までの期間(予定されるX線高出力期間)とを、同じ時間軸上に表示する。前者の期間は、高画質画像が必要とされる期間であり、後者の期間はX線が高強度で出力される予定期間を表している。操作者は、両期間の不一致を画面上で確認することができる。操作者は、入力器39の操作により、必要に応じてX線が高強度で出力される予定期間を拡張し、又は短縮することができる。なお、S16で決定された第1時刻からS18で決定された第2時刻までの期間(再構成に必要なデータ範囲)に代えて、被検体の心電図又は特定波形の系列から指示された百分率により特定した期間(高画質画像を必要としている範囲)を表示するようにしても良い。
【0124】
X線出力制御エキスパートシステム43で決定された第1時刻から第2時刻までの期間に関するデータがX線出力制御エキスパートシステム43からスキャンコントローラ30に供給される。スキャンコントローラ30は、入力器39に搭載されているトリガーボタンの操作を待って、心電同期スキャンを開始する(S19)。
【0125】
スキャンコントローラ30は、心電同期スキャンの中でX線変調制御を行う。スキャンコントローラ30は、R波検出部42で検出されたR波パルスから所定時間経過して第1時刻に達した時点で、X線を低出力から高出力に変調し、その高出力状態をR波パルスから所定時間経過して第2時刻に達する時点まで継続する。スキャンコントローラ30は、R波検出部42で検出されたR波パルスから所定時間経過して第2時刻に達した時点でX線を高出力から低出力に変調する。このようなX線出力変調制御を心拍周期ごとに繰り返す。
【0126】
その心電同期スキャンの継続期間中、データ収集装置26で収集された投影データは計算機システム3の投影データ記憶装置37に送られ、タイムコードとともに記憶される。心電計22の心電図データも投影データ記憶装置37に記憶される。また、参照X線検出器24で発生されたX線出力データも、タイムコードとともにX線出力データ記憶部41に記憶される(S21)。
【0127】
心電同期スキャンの継続期間中、スキャンコントローラ30は、被検体の心拍数が予め決められた上限心拍数を超過したとき、または直前心拍周期の心拍数がその一つ前の心拍周期の心拍数よりも早くなって、その差が予め決められた上限心拍数差(例えば19ppm)を超過したとき、つまり直前心拍周期がその一つ前の心拍周期よりも極端に短くなったときは、それ以後はX線の出力変調制御を中止する(S22)。図10に示すように、現時点の直前の心拍周期Snの心拍数が48であり、その一つ前の心拍周期Sn-1の心拍数が68であり、それらの心拍数差“20”が上限心拍数差“19”を超過したとき、それ以後の心拍周期Sn+1からはX線の出力変調制御を中止して、定常的にX線の高出力を維持する。この中止制御により、不整脈が生じたとしてもデータ欠落を回避することができる。
【0128】
息止めから所定時間経過等のあらけじめ決定されているスキャン終了条件が満たされた時点で、スキャンが終了される(S23)。
【0129】
図11に示すように、スキャン終了後に、X線出力制御エキスパートシステム43は、投影データ記憶部37に記憶された心電図データを表示するとともに、S16で決定された第1時刻からS18で決定された第2時刻までの期間(再構成に必要なデータ範囲)と、S21でX線出力データ記憶部41に記憶されたX線出力データに基づいて特定した実際にX線が高出力で発生された期間(高画質が確保された期間)とを、タイムコードに従って同じ時間軸上に表示する(S24)。なお、S16で決定された第1時刻からS18で決定された第2時刻までの期間(再構成に必要なデータ範囲)に代えて、被検体の心電図又は特定波形の系列から指示された百分率により特定した期間(高画質画像を必要としている範囲)を表示するようにしても良い。
【0130】
X線出力制御エキスパートシステム43は、S13で指定された百分率から各心拍周期ごとに特定した高画質画像が所望された期間が、S21でX線出力データ記憶部41に記憶されたX線出力データに基づいて特定したX線の高出力期間(高画質が確保された期間)から一部でも外れている心拍周期を自動検出する(S25)。または当該心拍周期を操作者が判断して手動で指定することもできる。再構成ユニット36では、検出された心拍周期内に収集された投影データを除外して、画像再構成を行う(S26)。
【0131】
本実施形態によると、所望する心拍時相の画像再構成に必要な投影データが収集されていない、または投影データが予定した比較的高いSN比で収集されていないという事態の発生を軽減することができる。
【0132】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0133】
【図1】本発明の第1実施形態によるX線コンピュータ断層撮影装置の構成を示す図。
【図2】第1実施形態において、高X線期間を示す図。
【図3A】図1の操作部から手動で設定される心拍数の変動範囲を示す図。
【図3B】図1のシステム制御部により自動で設定される心拍数の変動範囲を示す図。
【図4】図1の再構成処理部によるセグメントのオーバーラップを示す図。
【図5】本発明の実施形態によるX線コンピュータ断層撮影装置の構成を示す図。
【図6】図1のX線管の概略図。
【図7】本実施形態によるスキャンとその前後処理の処理手順を示すフローチャート。
【図8】図7の補足説明図。
【図9】図5のX線出力制御エキスパートシステムによるスキャン中の画面例を示す図。
【図10】図7のS22において心拍数差が上限心拍数差を超過したときのX線変調制御停止動作を示す図。
【図11】図5のX線出力制御エキスパートシステムによるS24のスキャン終了後の確認画面例を示す図。
【符号の説明】
【0134】
1…架台装置(スキャン部)、2…コンソール、3…寝台装置、101…X線管、102…X線検出器、103…回転フレーム、104…高電圧発生装置、105…架台駆動装置、107…データ収集装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線を発生するX線源と、
前記X線源に印加するための高電圧を発生する高電圧発生部と、
投影データを発生するために、被検体を透過したX線を検出するX線検出器と、
前記投影データを前記被検体の心電図データと関連付けて記憶する記憶部と、
操作者指令に従って特定の心拍位相を設定する設定部と、
複数の心拍周期にわたる前記特定の心拍位相を中心とした複数の特定期間に収集した複数の投影データセットに基づいて、断層像を再構成する再構成部と、
前記設定手段により設定された特定の心拍位相及び心拍数の変動範囲に基づいて、前記被検体の心電周期のうち高いX線でスキャンする第1の期間を決定する決定部と、
前記第1の期間に比較的高線量でX線を発生し、前記第1の期間以外の第2の期間に比較的低線量でX線を発生するように、前記X線管の管電流を制御する制御部とを備えたことを特徴とするX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項2】
前記心拍数の変動範囲は、複数心拍分の心拍数に基づいて決定されることを特徴とする請求項1記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項3】
前記心拍数の変動範囲は、操作者指令に従って決定されることを特徴とする請求項1記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項4】
前記心拍数の変動範囲は、前記投影データの収集前に得られた複数の心拍数の中の代表値に基づいて決定されることを特徴とする請求項1記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項5】
前記心拍数の変動範囲は、呼吸練習期間の最大心拍数と最小心拍数の範囲に決定されることを特徴とする請求項1記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項6】
前記決定部は、前記被検体の心拍数の変動範囲に基づいて、前記特定期間を拡張する期間拡張するものであり、前記拡張された期間の始点は、前記最大心拍数に対応する期間の始点に設定され、前記拡張された期間の終点は、前記最小心拍数に対応する期間の終点に設定されることを特徴とする請求項5記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記X線源の管電流を前記拡張された特定期間と前記他の期間とで変調するために前記高電圧発生装置を制御することを特徴とする請求項1記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記特定期間の管電流値を操作者指示にしたがって決定し、前記他の期間の管電流値を前記特定期間の管電流値に基づいて決定することを特徴とする請求項7記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記特定期間と前記他の期間との間に、前記特定期間の管電流値と前記他の期間の管電流値との間の管電流値の移行期間を設けることを特徴とする請求項7記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項10】
前記特定の心拍位相及び心拍数の変動範囲は、R波を基準とした遅れ時間に変換され、
前記制御部は、変換された遅れ時間で前記管電流を制御することを特徴とする請求項1記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項11】
前記スキャン前の心拍数の時間変化を表すグラフを表示する表示部と、
前記グラフ上に心拍数の変動範囲を指定するための操作部とをさらに備えることを特徴とする請求項3記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項12】
前記表示部は、少なくとも最大心拍数又は最小心拍数を含む一部の時間と心拍数の関係を示すグラフ、及びこのグラフの対応期間の心電図を表示することを特徴とする請求項11記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項13】
前記制御部は、前記投影データの収集と並行して得られた心拍数が前記心拍数の変動範囲から外れているとき、前記他の期間に前記高X線量で前記X線を発生するために前記X線管の管電流を制御することを特徴とする請求項1記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項14】
前記制御部は、前記投影データの収集に先立って、造影剤流入タイミングを図るためのプリスキャンを行う場合、前記特定の期間の管電流値と前記プリスキャン時の管電流値との範囲で、前記他の期間の管電流値が変化するように前記高電圧発生部を制御することを特徴とする請求項1記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項15】
前記再構成部は、前記複数の投影データセットの間でビューが同じ投影データを加重加算することを特徴とする請求項1記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項16】
前記再構成部は、前記ビューが同じ投影データに対して、前記投影データを収集した心拍周期の心拍数に対応する重みを適用することを特徴とする請求項15記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項17】
前記心拍数が比較的高い心拍周期に収集した投影データに対して適用される重みは、前記心拍数が比較的低い心拍周期に収集した投影データに対して適用される重みよりも、低いことを特徴とする請求項16記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項18】
前記再構成部は、前記ビューが同じ投影データに対して、画像再構成に要する角度範囲に対して前記投影データセット各々が占める割合に対応する重みを適用することを特徴とする請求項15記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項19】
前記割合が比較的高い投影データセット内の投影データに対して適用される重みは、前記割合が比較的低い投影データセット内の投影データに対して適用される重みよりも、高いことを特徴とする請求項18記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項20】
前記投影データはは、ヘリカルスキャンにより収集され、
前記再構成部は、前記ヘリカルスキャンに並行して、前記X線検出器の少なくとも一部の投影データに基づいて断層像をリアルタイム再構成により次々と再構成すると共に、前記ヘリカルスキャン終了後、投影データに基づいてコーンビーム再構成により画像を再構成することを特徴とする請求項1記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項21】
被検体から収集された心電情報を記憶部と、
前記被検体の再構成する心拍位相を設定する設定部と、
被検体に向けてX線を曝射するX線源と、
前記X線源に高電圧を印加する高電圧発生部と、
前記被検体を透過したX線を検出するX線検出器と、
前記検出器で検出された投影データに基づいて、前記設定部にて設定された心拍位相の断層像を再構成する再構成部と、
前記設定部にて設定された心拍位相を再構成するのに必要な期間にマージン期間を加えた第1の期間を高X線量でスキャンし、前記第2の期間を低X線量でスキャンするよう前記X線管の管電流を制御する制御部とを備えたことを特徴とするX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項22】
被検体に向けてX線を曝射するX線源、このX線源に高電圧を印加する高電圧発生部、及び前記被検体を透過したX線を検出するX線検出器を有し、被検体をスキャンする架台と、
被検体から収集された心電図を記憶部と、
前記被検体の断層像を再構成する心拍位相範囲を設定する設定部と、
前記検出器で検出された投影データに基づいて、前記設定部にて設定された心拍位相範囲のうち特定位相の断層像を再構成する再構成部と、
前記スキャンとして並行して得られた心電図をトリガにして、前記設定部により設定された心拍位相範囲を高X線でスキャンし、心電周期のうち前記心拍位相範囲を除いた範囲を低X線量でスキャンするよう前記X線管の管電流を制御する制御部とを備えたことを特徴とするX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項23】
X線量を変調しながらヘリカルスキャンを行うスキャン部と、
前記ヘリカルスキャンに並行して、投影データに基づいて断層像をファンビーム再構成により次々と再構成すると共に、前記ヘリカルスキャン終了後、投影データに基づいてコーンビーム再構成により画像を再構成する再構成部と、
前記ヘリカルスキャンに並行して前記ファンビーム再構成を用いて次々と再構成された断層像を表示し、前記ヘリカルスキャン終了後に前記コーンビーム再構成を用いて再構成された画像を表示する表示部とを備えたことを特徴とするX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項24】
被検体に向けてX線を曝射するX線源、このX線源に高電圧を印加する高電圧発生部、及び前記被検体を透過したX線を検出するX線検出器を有し、被検体をスキャンするスキャン部と、
前記スキャンと並行して、被検体から収集された心電図を記憶する記憶部と、
前記被検体の断層像を再構成したい心拍位相を設定する設定部と、
前記検出器で検出された投影データに基づいて、前記設定部にて設定された心拍位相の断層像を再構成する再構成部と、
前記スキャンと並行して収集された心電図に基づいて、前記設定部により設定された心拍位相を含む所定の範囲にX線量を高くすると共に、当該所定の範囲を除く範囲にX線量を低下するよう前記X線管の管電流を制御する制御部とを備えたことを特徴とするX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項25】
被検体に向けてX線を曝射するX線源、このX線源に高電圧を印加する高電圧発生部、及び前記被検体を透過したX線を検出するX線検出器を有し、被検体をスキャンするスキャン部と、
前記スキャン前及び前記スキャンと並行して、被検体から収集された心電図情報を記憶する記憶部と、
前記被検体の断層像を再構成したい心拍位相を設定する設定部と、
前記検出器で検出された投影データに基づいて、前記設定部にて設定された心拍位相の断層像を再構成する再構成部と、
前記記憶部に記憶される前記スキャンとして並行して得られた心電図情報をトリガにして、前記記憶部に記憶された前記スキャン前に収集された複数の心拍数に基づいて決定された所定の範囲にX線量を高くし、当該所定の範囲を除く範囲にX線量を低下するよう前記X線管の管電流を制御する制御部とを備えたことを特徴とするX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項26】
前記制御部は、前記所定の範囲を除く範囲におけるX線量が所定値より低くならないように前記X線管の管電流を制御することを特徴とする請求項24記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項27】
X線を発生するX線源と、
前記X線源に印加するための高電圧を発生する高電圧発生部と、
投影データを発生するために、被検体を透過したX線を検出するX線検出器と、
前記投影データを前記被検体の心電図データと関連付けて記憶する記憶部と、
複数の心拍周期にわたる特定の心拍位相を中心とした複数の特定期間に収集した複数の投影データセットの間でビューが同じ投影データを加重加算する加算処理得部と、
前記加重加算された複数の投影データセットに基づいて、断層像を再構成する再構成部とを具備することを特徴とするX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項28】
前記再構成部は、前記ビューが同じ投影データに対して、前記投影データを収集した心拍周期の心拍数に対応する重みを適用することを特徴とする請求項27記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項29】
前記心拍数が比較的高い心拍周期に収集した投影データに対して適用される重みは、前記心拍数が比較的低い心拍周期に収集した投影データに対して適用される重みよりも、低いことを特徴とする請求項28記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項30】
前記再構成部は、前記ビューが同じ投影データに対して、画像再構成に要する角度範囲に対して前記投影データセット各々が占める割合に対応する重みを適用することを特徴とする請求項27記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項31】
前記割合が比較的高い投影データセット内の投影データに対して適用される重みは、前記割合が比較的低い投影データセット内の投影データに対して適用される重みよりも、高いことを特徴とする請求項30記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項32】
X線を発生するX線源と、
投影データを発生するために、被検体を透過したX線を検出するX線検出器と、
操作者指示に従って前記被検体の心拍周期内に特定期間を設定する特定期間設定部と、
前記特定期間に収集した投影データに基づいて断層像を再構成する再構成部と、
前記特定期間を、画像再構成に要する投影データの角度範囲に対応する時間幅に基づいて拡張する拡張処理部と、
前記拡張された特定期間に従って前記X線管からのX線の発生/停止又は強度変調を制御する制御部とを具備するX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項33】
前記拡張された特定期間内のX線強度は、前記拡張された特定期間以外の期間のX線強度よりも高い請求項32記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項34】
前記拡張された特定期間内ではX線は発生され、前記拡張された特定期間以外の期間ではX線は停止される請求項32記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項35】
前記特定期間は、前記画像再構成に要する投影データの角度範囲に対応する時間幅の1/2の時間を前後それぞれ拡張される請求項32記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項36】
前記特定期間の始期は、前記画像再構成に要する投影データの角度範囲に対応する時間幅の1/2の時間に加えて、前記X線の発生又は変調にともなう前記X線の立ち上がり時間又はそれに相当する時間を早められる請求項35記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項37】
前記画像再構成に要する投影データの角度範囲に対応する時間幅は、前記X線管がハーフ再構成法に応じた(180°+ファン角)を回転するのに要する時間である請求項32記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項38】
前記特定期間の始期は、前記被検体から事前に取得した複数の心拍周期の中の最短時間に基づいて決定され、前記特定期間の終期は、前記被検体から事前に取得した複数の心拍周期の中の最長時間に基づいて決定される請求項32記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項39】
前記特定期間の始期と終期は、前記心電図の特定波形からの経過時間として設定される請求項32記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項40】
前記特定期間設定手段は、前記操作者から前記心拍周期全体を百としたときの百分率で指示された前記特定期間の始期と終期を、前記心電図の特定波形からの経過時間に変換する請求項32記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項41】
前記制御部は、前記被検体の心拍数が予め設定された上限数を超過したとき、前記X線の発生/停止又は強度変調の制御を中止する請求項32記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項42】
前記制御部は、前記被検体の心拍数の変動が予め設定された上限数を超過したとき、前記X線の発生/停止又は強度変調の制御を中止する請求項32記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項43】
前記X線管の出力又はそれを反映する信号を計測する計測部と、
前記計測部の出力のデータを、時間と対応付けられ得る情報とともに記憶する記憶部とをさらに備える請求項40記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項44】
前記被検体の心電図又は前記特定波形の系列を、前記指示された百分率に対応する再構成に使うデータ範囲と、前記記憶された前記計測部の出力のデータから特定した前記X線が発生又は高強度を維持する期間ととともに表示する手段をさらに備える請求項43記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項45】
前記再構成に使うデータ範囲が、前記記憶された前記計測部の出力のデータから特定した前記X線が発生又は高強度を維持する期間から外れている心拍周期において収集した投影データが画像再構成処理から除外される請求項44記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項46】
前記再構成に使うデータ範囲が、前記記憶された前記計測部の出力のデータから特定した前記X線が発生又は高強度を維持する期間から外れている心拍周期を操作者が指定するための指定手段をさらに備える請求項45記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項47】
前記再構成に使うデータ範囲が、前記記憶された前記計測部の出力のデータから特定した前記X線が発生又は高強度を維持する期間から外れている心拍周期を自動抽出するための手段をさらに備える請求項45記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項48】
前記被検体の心電図又は前記特定波形の系列を、前記被検体の心電図又は前記特定波形の系列から前記指示された百分率により特定した期間と、前記記憶された前記計測部の出力のデータから特定した前記X線が発生又は高強度を維持する期間ととともに表示する手段をさらに備える請求項43記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項49】
X線を発生するX線源と、
前記X線源に印加するための高電圧を発生する高電圧発生部と、
投影データを発生するために、被検体を透過したX線を検出するX線検出器と、
前記投影データを前記被検体の心電図データと関連付けて記憶する記憶部と、
操作者指令に従って特定の心拍位相を設定する設定部と、
複数の心拍周期にわたる前記特定の心拍位相を中心とした複数の特定期間に収集した複数の投影データセットに基づいて、断層像を再構成する再構成部と、
前記被検体の心拍数の変動範囲に基づいて、前記特定期間を拡張する期間拡張部と、
前記拡張された特定期間に比較的高線量でX線を発生し、前記拡張された特定期間以外の他の期間に比較的低線量でX線を発生するために、前記X線管の管電流を制御する制御部とを備えたことを特徴とするX線コンピュータ断層撮影装置。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−117719(P2007−117719A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−240330(P2006−240330)
【出願日】平成18年9月5日(2006.9.5)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】