X線位相コントラストイメージング用の高アスペクト比グリッドの製造方法
【課題】X線位相コントラストイメージング用の高アスペクト比グリッドの製造方法を提供する。
【解決手段】半導体基板306に高アスペクト比の凹部302を形成すると共に、凹部底表面にメッキ金属の初期成長サイトの生成を凹部側表面よりも促進するための表面プロファイル特徴部を形成する。その後、メッキにより金属を凹部に充填する。金属が充填された高アスペクト比の凹部を、X線位相コントラストイメージング装置においてX線格子として用いることができる。
【解決手段】半導体基板306に高アスペクト比の凹部302を形成すると共に、凹部底表面にメッキ金属の初期成長サイトの生成を凹部側表面よりも促進するための表面プロファイル特徴部を形成する。その後、メッキにより金属を凹部に充填する。金属が充填された高アスペクト比の凹部を、X線位相コントラストイメージング装置においてX線格子として用いることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高アスペクト比を有する表面形状を半導体基板に形成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
X線位相コントラストイメージング法は、例えば生体組織試料などの被写体の内部構造の検査に用いられる。一例として、X線位相コントラストイメージング装置は、被写体試料と画像検出器との間に配置される二つの格子を含む。第一の格子は、被写体試料の直ぐ下流側に配置される。第二の格子は、第一の格子と画像検出器との間に配置される。いくつかの実施態様では、第三の格子が、X線放射源と被写体試料との間に配置されて、被写体試料にX線を照射する空間的にコヒーレントな線光源のアレイを形成する。
【0003】
第二の格子は、基本的構造として、X線伝搬方向を横切る平面内にX線透過部とX線吸収部とが交互に配列された周期的アレイを含む。この周期的アレイのピッチは、例えば数μm程度である。X線透過部及びX線吸収部のX線伝搬方向の寸法(高さ)が、格子により得られるイメージングコントラストを決定する。例えば金製のX線吸収部において実現可能な高さは少なくとも10μm乃至15μmであり、それにより約25%のコントラストが得られる。より高いイメージングコントラストを得るためには、一般に、X線吸収部をより高くする必要がある。つまり、第二の格子のX線透過部及びX線吸収部の高さ対幅のアスペクト比を高くする必要がある。
【0004】
従来、X線位相コントラストイメージング装置の第二の格子を作成するために、まず半導体基板の表面に深く狭い線形凹部を狭い間隔で形成し、次いで電気メッキにより線形凹部に金を充填する技術がある。この技術は理論的には可能であるが、実際には、半導体基板の微小サイズで深さ対幅のアスペクト比が高い凹部に充填を行うことは困難な作業である。この充填が不均一であると、入射X線の吸収が不均一となって第二の格子のイメージング性能が低下する可能性がある。
【0005】
特許文献1に、定量的位相コントラスト画像を得るための干渉計の例が記載されている。特許文献2に、放射線位相画像撮影装置及びその構成部品である格子の例が記載されている。特許文献3に、半導体基板に高アスペクト比の凹部を形成する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許出願公開第2009/0092227号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2010/0061508号明細書
【特許文献3】特開2010−185728号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、半導体基板における微小サイズで高アスペクト比の凹部の電気メッキに関連する技術に係る。
【0008】
半導体基板の表面における深さ対幅のアスペクト比が高い凹部に従来の方法で電気メッキを施すと、メッキ金属イオンの一部が凹部の側壁に接触してメッキ金属の初期成長サイトを、その下方の領域にメッキ金属が完全に充填される前に、生成する可能性がある。凹部の側壁上に生成された初期成長サイトに蓄積し続けたメッキ金属は、凹部のそれら初期成長サイトの下方の領域がメッキ金属イオンと更に接触することを妨害するかもしれない。この妨害により、凹部の内側、特に凹部の底部分に堆積したメッキ金属の様々な領域に空隙が残る可能性がある。
【0009】
微小サイズで深さ対幅のアスペクト比が高い凹部に電気メッキを施す技術は、高コントラストのX線格子の作製に適用される。深く狭い線形凹部を狭い間隔で配列したアレイを半導体基板に形成し、次いで、金などのX線吸収能が高い金属を電気メッキにより線形凹部に充填することができる。結果として得られた構造は、平坦な半導体バッキング上に垂直に交互に立ち並んだ半導体材料(即ち、X線透過部)の薄層及び金(即ち、X線吸収部)の薄層を含む。
【0010】
線形凹部内に充填されたX線吸収金属の高さ及び均一性は、格子の性能に影響を及ぼす。例えば、X線吸収部(例えば、Au)の高さ方向に沿って空隙が存在すると、X線の吸収が不十分となり、多くのX線が格子の裏側に漏れて格子のイメージングコントラストが低下する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本明細書で説明するように、半導体基板に狭い間隔で配列された深さ対幅のアスペクト比が高い凹部に電気メッキ技術を用いてメッキ金属を中実かつ均一に充填するために、メッキ金属の初期成長サイトが凹部側表面よりも凹部底表面によく生成されるように、凹部側表面の形成前又は形成後に、凹部底表面上に表面プロファイル特徴部を形成する工程を行う。
【0012】
一般に、より多くの及び/又はより鋭い突起形状を有する凹部底表面上の粗い表面テクスチャは、平滑な側表面よりもメッキ金属イオンに対する誘引性が高い。この粗い表面テクスチャにより、メッキが凹部側表面に沿って上方に進行する前に凹部の底部分にメッキ金属を完全に充填することができる。本明細書では、凹部底表面上に粗い表面テクスチャ及び/又は突起を有する高アスペクト比の凹部を形成するためのいくつかの技術を説明する。
【0013】
また、半導体の表面において所定体積のメッキ溶液に対する接触表面積が大きいほど、メッキ金属イオンを誘引してメッキ金属の初期成長サイトを生成させる可能性が高い。したがって、凹部の平面寸法を変えないで凹部底表面の表面積を拡張する(例えば、凹部上部開口から離れる方向に凹部底表面を曲げる)ことにより、メッキ金属の初期成長サイトが凹部底表面上に生成される可能性を高めることができる。その結果、凹部の底部分のメッキ金属に空隙が形成される可能性が低くなる。本明細書では、凹部側表面と凹部底表面とが交わる位置にある平面から離れる方向に曲がった凹部底表面を有する高アスペクト比の凹部を形成するための技術も説明する。
【0014】
一態様において、本発明に係る方法は、上部開口と底表面と一つ以上の側表面とを有する凹部を半導体基板の第一の表面に形成する凹部形成工程であって、メッキ金属イオンを含むメッキ環境に半導体基板が曝露されたときに凹部の底表面が供するメッキ領域の活性を凹部の側表面が供するメッキ領域の活性よりも実質的に高める作用を有する拡張表面積又は粗面化表面テクスチャを有する表面プロファイル特徴部を凹部底表面上に形成する表面プロファイル特徴部形成工程を含む、凹部形成工程と、凹部が形成された半導体基板をメッキ環境に曝露して、メッキ金属導体の初期成長サイトを凹部底表面上に生成させ、メッキ金属導体を凹部底表面から凹部側表面に沿って成長させて凹部に充填する、メッキ工程と、を含む。
【0015】
いくつかの実施態様において、本発明に係る方法は、メッキ工程より前に、凹部底表面と凹部側表面の凹部底表面に隣接する最下部とを露出させたまま凹部側表面を部分的に覆う絶縁体被覆を半導体基板の第一の表面上に形成する、絶縁体被覆形成工程を更に含む。
【0016】
いくつかの実施態様において、凹部底表面の表面プロファイル特徴部は、凹部底表面上に形成された複数のシリコン針状体から成る。
【0017】
いくつかの実施態様において、凹部形成工程は、第一のエッチングプロセスを用いるエッチングを半導体基板の第一の表面に施して凹部側表面を実質的に平坦かつ平滑な端表面において終端するように形成する、第一のエッチング工程を更に含み、表面プロファイル特徴部形成工程は、第一のエッチング工程が完了した後に、第二のエッチングプロセスを用いるドライエッチングを凹部内の実質的に平坦かつ平滑な端表面に施して凹部内の端表面上に複数の突起を形成する、第二のエッチング工程を更に含み、複数の突起が形成された端表面が凹部底表面となる。
【0018】
いくつかの実施態様において、第一のエッチングプロセスは、第一のエッチングレシピを用いるボッシュプロセスであり、第二のエッチングプロセスは、第二のエッチングレシピを用いるボッシュプロセスであり、第二のエッチングレシピは、第一のエッチングレシピよりも多くの粒子を凹部底表面上に堆積させる作用を有する。
【0019】
いくつかの実施態様において、第一のエッチングレシピでは、第一の濃度のC4F8ガスを含むパッシベーションガス混合物を第一のエッチングプロセスの各パッシベーションサイクルにおいて用い、第二のエッチングレシピでは、第一の濃度よりも高い第二の濃度のC4F8ガスを含むパッシベーションガス混合物を第二のエッチングプロセスの各パッシベーションサイクルにおいて用いる。
【0020】
いくつかの実施態様において、第一のエッチングレシピでは、第一のエッチング継続時間を第一のエッチングプロセスの各エッチングサイクルにおいて用い、第二のエッチングレシピでは、第一のエッチング継続時間よりも短い第二のエッチング継続時間を第二のエッチングプロセスの各エッチングサイクルにおいて用いる。
【0021】
いくつかの実施態様において、第一のエッチングレシピでは、第一のパッシベーション継続時間を第一のエッチングプロセスの各パッシベーションサイクルにおいて用い、第二のエッチングレシピでは、第一のパッシベーション継続時間よりも長い第二のパッシベーション継続時間を第二のエッチングプロセスの各パッシベーションサイクルにおいて用いる。
【0022】
いくつかの実施態様において、凹部形成工程は、半導体基板の第一の表面に形成する予定の凹部の位置及び平面寸法を決める開口部を有するマスク層を半導体基板の第一の表面上に形成する、マスク層形成工程と、半導体基板の第一の表面にマスク層開口部を介して異方性エッチングを施して、凹部底表面上に形成する予定の表面プロファイル特徴部と同じ表面プロファイル特徴部を有する内面を有するキャビティを半導体基板の第一の表面に形成する、第一のエッチング工程と、第一のエッチング工程が完了した後に、半導体基板の第一の表面に形成する予定の凹部の上部開口を含む平面に対して垂直な方向にキャビティ内面に異方性エッチングを施して、凹部側表面と表面プロファイル特徴部を有する凹部底表面とを形成する、第二のエッチング工程と、を更に含む。
【0023】
いくつかの実施態様において、半導体基板は、シリコン単結晶から成るシリコン基板であり、シリコン基板の上面は、シリコン単結晶の(100)面であり、凹部は、長手方向がシリコン単結晶の[011]方向に沿っている線形の凹部である。
【0024】
いくつかの実施態様において、第一のエッチング工程で行う異方性エッチングは、KOH又はTMAH溶液を用いるウェットエッチングである。
【0025】
いくつかの実施態様において、第二のエッチング工程で行う異方性エッチングは、プラズマエッチャントを用いるドライエッチングである。
【0026】
いくつかの実施態様において、凹部底表面は、シリコン単結晶の{111}面に沿っていて凹部底表面の中央の直線において互いに交わる二つの平坦な小面を含む。
【0027】
いくつかの実施態様において、半導体基板は、シリコン単結晶から成るシリコン基板であり、シリコン基板の上面は、シリコン単結晶の(110)面であり、凹部は、長手方向がシリコン単結晶の[211]方向に沿っている線形の凹部である。
【0028】
いくつかの実施態様において、第二のエッチング工程で行う異方性エッチングは、KOH又はTMAH溶液を用いるウェットエッチングである。
【0029】
いくつかの実施態様において、凹部側表面は、シリコン単結晶の{111}面に沿っていて、凹部底表面は、シリコン単結晶の{111}面に沿っていて凹部底表面の中央の直線において互いに交わる二つの平坦な小面を含む。
【0030】
いくつかの実施態様において、凹部形成工程は、半導体基板の第一の表面に形成する予定の凹部の位置及び平面寸法を決める開口部であって真直側壁を有する開口部を有するフォトレジスト層を半導体基板の第一の表面上に形成する、フォトレジスト層形成工程と、フォトレジスト層をアニーリングして、真直側壁を有する開口部を変形させて開口部の内側方向へ湾曲した側壁を有する開口部とする、アニーリング工程と、湾曲した側壁を有する開口部を介して半導体基板の第一の表面にエッチングを施して、上部開口及び上部開口から離れる方向に湾曲した内面を有するキャビティを半導体基板の第一の表面に形成する、第一のエッチング工程と、第一のエッチング工程が完了した後に、キャビティ上部開口を含む平面に対して垂直な方向にキャビティ内面を介して半導体基板にエッチングを施して、凹部側表面と凹部上部開口から離れる方向に湾曲した凹部底表面とを形成する、第二のエッチング工程と、を更に含み、凹部底表面の湾曲が拡張表面積を供する。
【0031】
いくつかの実施態様において、半導体基板は、シリコン酸化物層とシリコン層とを含む。
【0032】
いくつかの実施態様において、キャビティはシリコン酸化物層に形成され、凹部はシリコン酸化物層の下のシリコン層に形成される。
【0033】
いくつかの実施態様において、第二のエッチング工程はボッシュプロセスを用いて行われ、シリコン酸化物層はボッシュプロセス用のマスク層となる。
【0034】
いくつかの実施態様において、凹部形成工程は、半導体基板の第一の表面上にフォトレジスト層を形成する、フォトレジスト層形成工程と、グレースケールマスクを用いてフォトレジスト層をパターニングして、半導体基板の第一の表面に形成する予定の凹部の位置及び平面寸法を決める薄層部であって薄層部の基部より上方に突き出た一つ以上の突起を呈する厚さプロファイルを有する薄層部をフォトレジスト層に形成する、薄層部形成工程と、パターニングされたフォトレジスト層を介して半導体基板の第一の表面にエッチングを施して、パターニングされたフォトレジスト層の厚さプロファイルに合致する一つ以上の突起を含む内面を有するキャビティを半導体基板の第一の表面に形成する、第一のエッチング工程と、第一のエッチング工程が完了した後に、キャビティの上部開口を含む平面に対して垂直な方向にキャビティ内面を介して半導体基板にエッチングを施して、凹部側表面とキャビティ内面に形成されていた一つ以上の突起に合致する一つ以上の突起を含む凹部底表面と、を形成する、第二のエッチング工程と、を更に含む。
【0035】
いくつかの実施態様において、半導体基板は、シリコン酸化物層とシリコン層とを含む。
【0036】
いくつかの実施態様において、キャビティはシリコン酸化物層に形成され、凹部はシリコン酸化物層の下のシリコン層に形成される。
【0037】
いくつかの実施態様において、第二のエッチング工程はボッシュプロセスを用いて行われ、シリコン酸化物層はボッシュプロセス用のマスク層となる。
【0038】
いくつかの実施態様において、凹部底表面は、凹部底表面の中央に単一の尖った突起を有する。
【0039】
いくつかの実施態様において、凹部底表面は、不規則に配置された突起を有する。
【0040】
いくつかの実施態様において、凹部底表面は、複数の突起の周期的アレイを有する。
【0041】
いくつかの実施態様において、凹部の深さと凹部底表面の幅とのアスペクト比は10:1乃至100:1である。
【0042】
いくつかの実施態様において、本方法により、半導体基板に上述の凹部を含む複数の凹部の周期的アレイが形成され、複数の凹部のそれぞれの底から上にメッキ金属導体が充填される。
【0043】
いくつかの実施態様において、凹部は、凹部側表面に沿って30μm乃至200μmの深さを有し、凹部底表面に沿って2μm乃至20μmの幅を有する。
【0044】
いくつかの実施態様において、凹部は、約100μmの深さと約3μmの幅とを有する。
【0045】
いくつかの実施態様において、メッキ金属導体は金である。
【0046】
いくつかの実施態様において、半導体基板はシリコンを含む。
【0047】
いくつかの実施態様において、表面プロファイル特徴部形成工程は、凹部底表面上に複数のシリコン針状体を形成する工程を含む。
【0048】
いくつかの実施態様において、表面プロファイル特徴部形成工程は、凹部底表面上に複数の突起を形成する工程を含む。
【0049】
いくつかの実施態様において、表面プロファイル特徴部形成工程は、凹部底表面上に単一の尖った突起を形成する工程を含む。
【0050】
いくつかの実施態様において、表面プロファイル特徴部形成工程は、凹部上部開口から離れる方向に曲がった凹部底表面を形成する工程を含む。
【0051】
いくつかの実施態様において、凹部上部開口から離れる方向に曲がった凹部底表面は、ある角度で互いに交わる二つ以上の平坦な小面を含む。
【0052】
いくつかの実施態様において、凹部上部開口から離れる方向に曲がった凹部底表面は、凹部上部開口から離れる方向に滑らかに湾曲した表面を含む。
【0053】
いくつかの実施態様において、表面プロファイル特徴部形成工程は、凹部側表面及び凹部底表面を覆う絶縁体被覆を半導体基板の第一の表面上に形成する、絶縁体被覆形成工程と、絶縁体被覆に対するエッチング速度よりも半導体基板に対するエッチング速度が高いドライエッチャントを用いるエッチングを凹部底表面に形成された絶縁体被覆に施して、凹部側表面に絶縁体被覆を残したままドライエッチャントにより凹部底表面から絶縁体被覆を完全に除去して凹部底表面を凹部上部開口から離れる方向に曲げる、エッチング工程と、を更に含む。
【0054】
一態様において、本発明に係る装置は、一つ以上の凹部が形成された半導体基板を含み、前記凹部は、凹部底表面と一つ以上の凹部側表面とを有し、前記凹部底表面は、前記凹部の深さよりも短い複数の突起を含み、前記凹部には、前記凹部底表面上に存在する前記複数の突起上に初期成長サイトを有するメッキ金属導体が充填されている。
【0055】
いくつかの実施態様において、凹部の深さと凹部底表面の幅とのアスペクト比は10:1乃至100:1である。
【0056】
いくつかの実施態様において、本装置はX線格子であり、一つ以上の凹部内に存在するメッキ金属導体と、一つ以上の凹部の間に存在する半導体材料と、により、X線格子の線形回析要素の周期的アレイが形成される。
【0057】
いくつかの実施態様において、一つ以上の凹部内に存在するメッキ金属導体は、線形形状の周期的アレイを形成し、各線形形状は、凹部側表面に対して垂直な平面において10mm乃至50mmの長さ及び2μm乃至3μmの幅を有し、線形形状の周期的アレイは、4μm乃至6μmのピッチを有する。
【0058】
いくつかの実施態様において、各凹部は、凹部側表面に沿って30μm乃至200μmの深さを有し、凹部底表面に沿って2μm乃至20μmの幅を有する。
【0059】
いくつかの実施態様において、各凹部は、約100μmの深さと約3μmの幅とを有する。
【0060】
いくつかの実施態様において、メッキ金属導体は金である。
【0061】
いくつかの実施態様において、半導体基板はシリコンを含む。
【0062】
いくつかの実施態様において、凹部底表面上の複数の突起は、凹部底表面上に形成された複数のシリコン針状体から成る。
【0063】
いくつかの実施態様において、凹部側表面は、絶縁体被覆により部分的に覆われていて、絶縁体被覆は、凹部側表面の凹部底表面に隣接する最下部を凹部内のメッキ金属導体に対して露出させている。
【0064】
別の態様において、本発明に係る装置は、複数の凹部が形成された半導体基板を含み、複数の凹部のそれぞれは、凹部上部開口と凹部底表面と一つ以上の凹部側表面とを有し、複数の凹部は、半導体基板において周期的アレイを形成していて、凹部底表面は、凹部上部開口から離れる方向に曲がって半導体基板内へ窪みを形成していて、凹部側表面と凹部底表面とが交わる位置にある平面からの窪みの深さは凹部の幅の少なくとも3分の1である。
【0065】
いくつかの実施態様において、凹部底表面は、メッキ金属導体により覆われていて、メッキ金属導体は、凹部底表面上の初期成長サイトから上に凹部側表面に沿って凹部に充填されている。
【0066】
いくつかの実施態様において、メッキ金属導体が充填された凹部の周期的アレイは、X線回折格子として用いられるために適した寸法を有する。
【0067】
いくつかの実施態様において、各凹部は、10mm乃至50mmの長さと2μm乃至3μmの幅と100μm乃至200μmの深さとを有し、周期的アレイは、4μm乃至6μmのピッチを有する。
【0068】
いくつかの実施態様において、凹部側表面は、絶縁体被覆により部分的に覆われていて、絶縁体被覆は、凹部側表面の凹部底表面に隣接する最下部を凹部内に存在するメッキ金属導体に対して露出させている。
【0069】
いくつかの実施態様において、凹部底表面は、ある角度で互いに交わる二つ以上の平坦な小面を含む。
【0070】
いくつかの実施態様において、凹部底表面は、凹部上部開口から離れる方向に滑らかに湾曲した表面を含む。
【0071】
いくつかの実施態様において、凹部の深さと凹部底表面の幅とのアスペクト比は10:1乃至100:1である。
【0072】
いくつかの実施態様において、各凹部は、凹部側表面に沿って30μm乃至200μmの深さを有し、凹部底表面に沿って2μm乃至20μmの幅を有する。
【0073】
別の態様において、本発明に係る装置は、複数の凹部が形成された半導体基板を含み、複数の凹部のそれぞれは、凹部上部開口と凹部底表面と一つ以上の凹部側表面とを有し、複数の凹部は、半導体基板において周期的アレイを形成していて、凹部底表面は凹部上部開口に近づく方向に突出した一つ以上の突起を有する。
【0074】
いくつかの実施態様において、凹部底表面は、メッキ金属導体により覆われていて、メッキ金属導体は、凹部底表面上の初期成長サイトから上に凹部側表面に沿って凹部に充填されている。
【0075】
いくつかの実施態様において、メッキ金属導体が充填された凹部の周期的アレイは、X線回折格子として用いられるために適した寸法を有する。
【0076】
いくつかの実施態様において、凹部内に存在するメッキ金属導体は、凹部底表面上の一つ以上の突起の頂点上に初期成長サイトを有する。
【0077】
いくつかの実施態様において、凹部側表面は、絶縁体被覆により部分的に覆われていて、絶縁体被覆は、凹部側表面の凹部底表面に隣接する最下部を凹部内に存在するメッキ金属導体に対して露出させている。
【0078】
いくつかの実施態様において、凹部底表面は、凹部底表面の中央又は中央付近の頂点で互いに交わる二つ以上の平坦な小面を含む。
【0079】
いくつかの実施態様において、凹部の深さと凹部底表面の幅とのアスペクト比は10:1乃至100:1である。
【0080】
いくつかの実施態様において、各凹部は、凹部側表面に沿って30μm乃至200μmの深さを有し、凹部底表面に沿って2μm乃至20μmの幅を有する。
【0081】
いくつかの実施態様において、凹部底表面上の一つ以上の突起は、凹部底表面上に形成された複数のシリコン針状体から成る。
【0082】
いくつかの実施態様において、各凹部は、10mm乃至50mmの長さと2μm乃至3μmの幅と100μm乃至200μmの深さとを有し、周期的アレイは、4μm乃至6μmのピッチを有する。
【0083】
別の態様において、本発明に係るX線回折装置は、X線放射源と、画像検出器と、X線放射源と画像検出器との間に配置された第一のX線格子と、第一のX線格子と画像検出器との間に配置された第二のX線格子と、を含み、第一のX線格子は、第一のX線格子のそれぞれ異なる部分を通過する複数のX線束の間に所定の位相差を生じさせるように構成され、第二のX線格子は、第一のX線格子を通過した複数のX線束に振幅干渉を生じさせるように構成され、第二のX線格子は、一つ以上の凹部が形成された半導体基板を含み、凹部は、凹部底表面と一つ以上の凹部側表面とを有し、凹部底表面は、複数の突起を含み、各凹部には、各凹部底表面上に存在する複数の突起上に初期成長サイトを有するメッキ金属導体が充填されている。
【0084】
様々な実施態様において、本明細書に記載の技術は、以下の利点の一つ以上を提供する。
【0085】
いくつかの実施態様において、本明細書に記載の技術を用いて、半導体基板に線形凹部の周期的アレイを形成し、電気メッキにより線形凹部にX線吸収金属(例えば、金)を均一かつ中実に充填することができる。結果として得られる構造は、X線回折格子として用いられるために適した寸法を有することができる。金属が充填された凹部により提供されるX線吸収は、格子の全体に亘って極めて均一であり、このX線格子を用いて作られたX線イメージング装置において、良好な精度及びコントラストを得ることができる。
【0086】
本明細書に記載の主題の一つ以上の実施態様の詳細を、添付の図面及び以下の説明に記載する。主題の他の特長、態様、及び利点は、説明、図面、及び特許請求の範囲から明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1A】格子を用いた位相コントラストイメージングのためのX線干渉計の概略図である。
【図1B】半導体基板に形成された格子の概略平面図である。
【図1C】半導体基板に形成された格子の概略側面図である。
【図2A】半導体基板内の高アスペクト比の凹部に充填されるメッキ金属に望ましくない空隙が形成される従来技術を示す図である。
【図2B】半導体基板内の高アスペクト比の凹部に充填されるメッキ金属に望ましくない空隙が形成される従来技術を示す図である。
【図2C】半導体基板内の高アスペクト比の凹部に充填されるメッキ金属に望ましくない空隙が形成される従来技術を示す図である。
【図2D】半導体基板内の高アスペクト比の凹部に充填されるメッキ金属に望ましくない空隙が形成される従来技術を示す図である。
【図2E】半導体基板内の高アスペクト比の凹部に充填されるメッキ金属に望ましくない空隙が形成される従来技術を示す図である。
【図2F】半導体基板内の高アスペクト比の凹部に充填されるメッキ金属に望ましくない空隙が形成される従来技術を示す図である。
【図3A】凹部側表面よりも凹部底表面上のメッキ条件を良くする底表面プロファイル特徴部を有する、深さ対幅アスペクト比が高い凹部の例を示す図である。
【図3B】凹部側表面よりも凹部底表面上のメッキ条件を良くする底表面プロファイル特徴部を有する、深さ対幅アスペクト比が高い凹部の例を示す図である。
【図3C】凹部側表面よりも凹部底表面上のメッキ条件を良くする底表面プロファイル特徴部を有する、深さ対幅アスペクト比が高い凹部の例を示す図である。
【図3D】凹部側表面よりも凹部底表面上のメッキ条件を良くする底表面プロファイル特徴部を有する、深さ対幅アスペクト比が高い凹部の例を示す図である。
【図4A】異なる凹部底表面プロファイルを有する深さ対幅のアスペクト比が高い凹部の例の内側における、メッキ金属の初期成長サイトの生成状態を示す図である。
【図4B】異なる凹部底表面プロファイルを有する深さ対幅のアスペクト比が高い凹部の例の内側における、メッキ金属の初期成長サイトの生成状態を示す図である。
【図4C】異なる凹部底表面プロファイルを有する深さ対幅のアスペクト比が高い凹部の例の内側における、メッキ金属の初期成長サイトの生成状態を示す図である。
【図5A】凹部上部開口から離れる方向に屈曲した凹部底表面を有する、深さ対幅のアスペクト比が高い凹部(例えば、図3Aに示す凹部)を半導体基板に形成する方法の第一の例を示す図である。
【図5B】凹部上部開口から離れる方向に屈曲した凹部底表面を有する、深さ対幅のアスペクト比が高い凹部(例えば、図3Aに示す凹部)を半導体基板に形成する方法の第一の例を示す図である。
【図5C】凹部上部開口から離れる方向に屈曲した凹部底表面を有する、深さ対幅のアスペクト比が高い凹部(例えば、図3Aに示す凹部)を半導体基板に形成する方法の第一の例を示す図である。
【図6A】凹部上部開口から離れる方向に屈曲した凹部底表面を有する、深さ対幅のアスペクト比が高い凹部(例えば、図3Aに示す凹部)を半導体基板に形成する方法の第二の例を示す図である。
【図6B】凹部上部開口から離れる方向に屈曲した凹部底表面を有する、深さ対幅のアスペクト比が高い凹部(例えば、図3Aに示す凹部)を半導体基板に形成する方法の第二の例を示す図である。
【図6C】凹部上部開口から離れる方向に屈曲した凹部底表面を有する、深さ対幅のアスペクト比が高い凹部(例えば、図3Aに示す凹部)を半導体基板に形成する方法の第二の例を示す図である。
【図7A】凹部上部開口から離れる方向に湾曲した凹部底表面を有する、深さ対幅のアスペクト比が高い凹部(例えば、図3Bに示す凹部)を半導体基板に形成する方法の例を示す図である。
【図7B】凹部上部開口から離れる方向に湾曲した凹部底表面を有する、深さ対幅のアスペクト比が高い凹部(例えば、図3Bに示す凹部)を半導体基板に形成する方法の例を示す図である。
【図7C】凹部上部開口から離れる方向に湾曲した凹部底表面を有する、深さ対幅のアスペクト比が高い凹部(例えば、図3Bに示す凹部)を半導体基板に形成する方法の例を示す図である。
【図7D】凹部上部開口から離れる方向に湾曲した凹部底表面を有する、深さ対幅のアスペクト比が高い凹部(例えば、図3Bに示す凹部)を半導体基板に形成する方法の例を示す図である。
【図7E】凹部上部開口から離れる方向に湾曲した凹部底表面を有する、深さ対幅のアスペクト比が高い凹部(例えば、図3Bに示す凹部)を半導体基板に形成する方法の例を示す図である。
【図8A】凹部上部開口に近づく方向に屈曲して単一の尖った突起が存在する凹部底表面を有する、深さ対幅のアスペクト比が高い凹部(例えば、図3Cに示す凹部)を半導体基板に形成する方法の例を示す図である。
【図8B】凹部上部開口に近づく方向に屈曲して単一の尖った突起が存在する凹部底表面を有する、深さ対幅のアスペクト比が高い凹部(例えば、図3Cに示す凹部)を半導体基板に形成する方法の例を示す図である。
【図8C】凹部上部開口に近づく方向に屈曲して単一の尖った突起が存在する凹部底表面を有する、深さ対幅のアスペクト比が高い凹部(例えば、図3Cに示す凹部)を半導体基板に形成する方法の例を示す図である。
【図9A】尖った突起がいくつか存在する凹部底表面を有する、深さ対幅のアスペクト比が高い凹部(例えば、図3Cに示す凹部の変形例)を半導体基板に形成する方法の例を示す図である。
【図9B】尖った突起がいくつか存在する凹部底表面を有する、深さ対幅のアスペクト比が高い凹部(例えば、図3Cに示す凹部の変形例)を半導体基板に形成する方法の例を示す図である。
【図9C】尖った突起がいくつか存在する凹部底表面を有する、深さ対幅のアスペクト比が高い凹部(例えば、図3Cに示す凹部の変形例)を半導体基板に形成する方法の例を示す図である。
【図10A】多数の針状体が存在する粗い凹部底表面を有する、深さ対幅のアスペクト比が高い凹部(例えば、図3Dに示す凹部)を半導体基板に形成する方法の例を示す図である。
【図10B】多数の針状体が存在する粗い凹部底表面を有する、深さ対幅のアスペクト比が高い凹部(例えば、図3Dに示す凹部)を半導体基板に形成する方法の例を示す図である。
【図10C】多数の針状体が存在する粗い凹部底表面を有する、深さ対幅のアスペクト比が高い凹部(例えば、図3Dに示す凹部)を半導体基板に形成する方法の例を示す図である。
【図11A】深さ対幅のアスペクト比が高い凹部(例えば、図3A〜3Dのそれぞれに示す凹部)に電気メッキを施して凹部の底から上に金属を充填する方法の例を示す図である。
【図11B】深さ対幅のアスペクト比が高い凹部(例えば、図3A〜3Dのそれぞれに示す凹部)に電気メッキを施して凹部の底から上に金属を充填する方法の例を示す図である。
【図11C】深さ対幅のアスペクト比が高い凹部(例えば、図3A〜3Dのそれぞれに示す凹部)に電気メッキを施して凹部の底から上に金属を充填する方法の例を示す図である。
【図12A】凹部上部開口から離れる方向に屈曲した露出した凹部底表面と絶縁体被覆により全体的に覆われた凹部側表面とを有する、深さ対幅のアスペクト比が高い凹部を半導体基板に形成する方法の例を示す図である。
【図12B】凹部上部開口から離れる方向に屈曲した露出した凹部底表面と絶縁体被覆により全体的に覆われた凹部側表面とを有する、深さ対幅のアスペクト比が高い凹部を半導体基板に形成する方法の例を示す図である。
【図12C】凹部上部開口から離れる方向に屈曲した露出した凹部底表面と絶縁体被覆により全体的に覆われた凹部側表面とを有する、深さ対幅のアスペクト比が高い凹部を半導体基板に形成する方法の例を示す図である。
【図12D】凹部上部開口から離れる方向に屈曲した露出した凹部底表面と絶縁体被覆により全体的に覆われた凹部側表面とを有する、深さ対幅のアスペクト比が高い凹部を半導体基板に形成する方法の例を示す図である。
【図12E】凹部上部開口から離れる方向に屈曲した露出した凹部底表面と絶縁体被覆により全体的に覆われた凹部側表面とを有する、深さ対幅のアスペクト比が高い凹部を半導体基板に形成する方法の例を示す図である。
【図12F】凹部上部開口から離れる方向に屈曲した露出した凹部底表面と絶縁体被覆により全体的に覆われた凹部側表面とを有する、深さ対幅のアスペクト比が高い凹部を半導体基板に形成する方法の例を示す図である。
【0088】
図面において、層及び形状部分の多くは加工工程及びその結果をより明瞭に示すために誇張されて描かれている。それぞれの図面における同様の参照符号は同様の要素を示す。
【発明を実施するための形態】
【0089】
半導体基板に微小サイズで高アスペクト比の凹部を製作するための技術を、X線位相コントラストイメージング装置内のX線格子の製造に用いることができる。X線位相コントラストイメージング法は、X線束が試料の各部分を透過する際に生じるX線位相シフトについての情報をX線吸収量についての情報に加えて利用するものである。図1Aは、位相コントラストイメージング用の、格子を用いたX線干渉計100の概略図である。
【0090】
図1Aに示すように、干渉計100は、最も基本的な構成部品として、撮像される被写体106(例えば、生体組織試料)と画像検出器108との間に配置された二つの格子102及び104を含む。また、干渉計100は、被写体106の上流側に一つ以上の放射源110を含む。放射源110は、被写体106に向けてX線を放射する。X線束が被写体106を透過する際に、X線束の位相及び振幅が被写体106の内部構造により変化する。いくつかの実施態様において、X線源110がコヒーレントな放射源でない場合に、被写体106とX線源110との間に第三の格子(不図示)を配置して、空間的にコヒーレントな複数の放射源を形成することができる。
【0091】
第一の格子102は、透過X線の吸収能が低く位相シフトが大きい構造体であり、概ね数十μmのピッチを有する。第一の格子102は、平坦な半導体基板(例えば、シリコンウエハ)から作製されることができ、平行な線形凹部112(例えば、溝)が表面に形成されている。線形凹部112の深さは、線形凹部112を透過するX線束と、互いに隣接する線形凹部112を分離する半導体材料を透過するX線束と、の間に所定の位相差(例えば、π)が生じるように選択される。例えば、エネルギーレベル40keVに相当する波長のX線束に位相シフトπを生じさせる凹部112の深さは、約25μmである。
【0092】
第二の格子104は、第一の格子102を通過したX線束に振幅干渉を生じさせる。第二の格子104は、交互に配列されたX線透過部(即ち、X線低吸収能部)とX線高吸収能部とを含む。第二の格子104は、平坦な半導体基板(例えば、シリコンウエハ)から作製されることができ、平行な線形凹部114(例えば、溝)が表面に形成されている。線形凹部114には、X線吸収能が高い材料(例えば、金)が充填されている。凹部114内に充填された材料(例えば、金)により吸収可能なX線量は、凹部114内に充填された材料の厚さに依存する。したがって、凹部114内に充填された材料の厚さが、第二の格子104を通過した回折X線束により形成される画像のコントラストを決定する。
【0093】
図1Bは、半導体基板116(例えば、シリコンウエハ)に形成された第二の格子104の例の平面図である。第二の格子104は、線形凹部114(例えば、真直側壁を有する溝)の周期的アレイを含む。線形凹部114には、X線吸収能が高い材料(例えば、Au)が充填されている。線形凹部114の幅w(即ち、線形凹部114内に充填されたX線吸収材料の幅w)は、概ね1μm乃至数μm(例えば、1.5μm、2μm、又は3μm)であってもよい。線形凹部114の長さl1(即ち、線形凹部114内に充填されたX線吸収材料の長さl1)は、線形凹部114の幅wよりも遥かに大きくてもよい。例えば、線形凹部114の長さは、基板116のサイズや干渉計100について要求されるイメージングエリアにより、数十mm乃至数百mm程度(例えば、30mm、60mm、100mm、又は200mm)であってもよい。
【0094】
格子の横寸法l2は、線形凹部114の長さl1と同様であってもよく、例えば線形凹部114の長さl1に等しくてもよい。線形凹部114の周期的アレイのピッチpは、線形凹部114の幅wの約2倍であってもよい。互いに隣接する線形凹部114の間の半導体材料120の幅w’も、概ね1μm乃至数μm(例えば、1.5μm、2μm、又は3μm)である。
【0095】
図1Bに示すように、各線形凹部114は、半導体基板116の表面に垂直な二つの垂直側壁を有する。これら二つの垂直側壁の間の距離が、半導体基板116の表面に平行な平面における線形凹部114の幅wである。半導体ウエハに形成された各線形凹部114は、別の二つの対向する垂直側壁も有し、これら二つの対向する垂直側壁の間の距離が、線形凹部114の長さl1である。
【0096】
図1Cは、第二の格子104の例の概略側面図である。この側面図は、図1Bに示す半導体基板116を半導体基板116の表面124と線形凹部114の長手方向とに直交する平面で切った断面図に相当する。図1Cに示すように、線形凹部114は、実質的に平坦で半導体基板116の表面124に垂直な側壁122を有する。半導体基板116の表面124からの線形凹部114の深さdは、線形凹部114内に充填されたX線吸収材料118(例えば、Au)の厚さ又は高さでもある。X線吸収材料118の厚さ又は高さdが第二の格子104により得られるイメージングコントラストを決定し、厚さdが大きいとイメージングコントラストが高い。所定のイメージングコントラストを得るために必要なX線吸収材料の厚さdは、X線束のエネルギーが高いほど大きい。いくつかの実施態様において、半導体基板116の表面124内に刻まれた線形凹部114の深さd(即ち、X線吸収材料118の厚さd)は、数十μm乃至数百μm程度(例えば、25μm乃至200μm、50μm、100μm、又は200μm)である。
【0097】
図1Cに示すように、線形凹部114は、半導体基板116の全厚に亘って形成されてはいない。格子層126(即ち、半導体材料120(例えば、Si)とX線吸収材料118(例えば、Au)とが交互に配列されている層)の下に、半導体材料層が残存している。格子層126の下に残存する半導体材料層の厚さは、格子層126が形成されている半導体ウエハ116の元来の厚さに依存していてもよい。いくつかの実施態様において、残存する半導体材料層がその上の格子層126を構造的に十分に支持する限り、半導体ウエハ116を片側又は両側から薄くしてもよい。
【0098】
図1Cに示す側面図は、線形凹部114を、半導体基板116の上面に形成された、深さ対幅(d:w)のアスペクト比が高い凹部として示している。線形凹部114の深さ(X線吸収材料118の高さ)対幅のアスペクト比d:wは、様々な実施態様において、10:1乃至200:1程度(例えば、20:1、50:1、100:1、200:1等)であってもよい。異なる視点から見ると、格子層126を、X線透過半導体材料(例えば、Si)層120とX線吸収材料(例えば、Au)層118とが交互に配列されたものと見ることができる。各層は、半導体基板116の上面124に垂直な平面において平面寸法l1×dを有する。X線透過層(即ち半導体材料層120)は小さい厚さw’を有し、X線吸収層(即ち金層118)は小さい厚さwを有する。
【0099】
理想的には、X線吸収材料(例えば、金又は金合金)が、線形凹部114のアレイにおける各線形凹部114の底から上に全深dに亘って充填されている。実際には、半導体基板116に線形凹部114を形成した後に、X線吸収材料の金属イオンを含むメッキ環境(例えば、メッキ浴)に半導体基板116を置く。メッキ工程において、半導体基板116を負電位に保持してもよい。負に帯電した半導体基板116は、メッキ環境中の正に帯電した金属イオンを還元して半導体基板116の露出面上にメッキ金属として堆積させるための負電荷を与えることができる。
【0100】
微視的に見ると、メッキ工程中に、メッキ環境中のメッキ金属イオンの濃度が変動する可能性があり、半導体基板116の露出面上における負電荷の有効性が半導体基板116の露出面の全体に亘って常に均一ではない可能性がある。したがって、線形凹部114の露出した側表面よりも線形凹部114の底表面の方がメッキ金属イオンに対する誘引性が高いように工夫しないと、メッキ金属の初期成長サイトは線形凹部114の露出した側表面上に生成される可能性が統計的に高く、この傾向は線形凹部114の深さ対幅のアスペクト比が高いときに顕著である。
【0101】
図2Aに示すように、半導体基板200内の平坦な底を有する半導体凹部202を金イオンを含むメッキ環境204に曝露すると、金の初期堆積サイト206は凹部202の側表面208上に生成される可能性が高い。金の初期堆積サイト210が底表面212上にもほぼ同時に生成されたとしても、側表面208上の初期堆積サイト206からのメッキ金属の成長により、成長サイト206の下方の領域にメッキ金属が完全に充填される前に凹部202の全幅が速やかに塞がれて、成長サイト206の下方の領域がメッキ環境204と更に接することが妨害される可能性が高い。それにより、側表面208上の初期堆積サイト206の下方において、凹部202内に空隙214(即ち、凹部202内で未充填のまま残された領域)が形成される。
【0102】
凹部202の側表面208上の複数の初期堆積サイト206からメッキ金属が成長し続けると、より多くの空隙が凹部202の深さ方向に沿って形成される可能性がある。上述の問題は、凹部202の深さ対幅のアスペクト比が高いときに特に深刻である。このようなメッキ方法で作製されたX線格子(図1A〜1Cに示す第二の格子104等)は、線形凹部のそれぞれの吸収率が不均一であるので、X線格子のコントラスト及び精度が劣る。
【0103】
図2B〜2Fは、半導体基板内の高アスペクト比の凹部に電気メッキにより充填される金属に望ましくない空隙が形成されてしまう、別の従来技術を示す。まず、マスク226(例えば、線形の開口部224が形成されたシリコン酸化物層)の開口224を介して半導体基板222をエッチングすることにより、一つ以上の凹部220を形成する。図2Bに示すように、半導体基板222の平坦な表面228上にシリコン酸化物層226を設ける。次いで、シリコン酸化物層226に、半導体基板222に形成する予定の線形凹部と同じ長さ及び幅を有する開口224を形成する。
【0104】
次いで、ボッシュプロセスを用いて、深さ対幅のアスペクト比が高い凹部を半導体基板222に形成する。ボッシュプロセスは、短時間のエッチングサイクルとパッシベーションサイクルとを交互に繰り返す一連の工程を含み、数千サイクルのボッシュプロセスを用いて、深さ対幅のアスペクト比が最大で数百であるマイクロメートルオーダーの凹部を形成することができる。各ボッシュステップは、エッチングサイクルとそれに続くパッシベーションサイクルとを含む。まず、エッチングサイクルにおいて、エッチングガス混合物を用いて、エッチングガス混合物に曝露された半導体材料をエッチング除去する。次いで、パッシベーションサイクルにおいて、パッシベーションガス混合物を用いて、先のエッチングサイクルで新たに形成された凹部側壁及び凹部底表面上に保護層を形成する。その次のエッチングサイクルにおいて、エッチングガス混合物により、凹部底表面上に形成された保護層のみを貫いて選択的にエッチングを行うことでエッチングを半導体基板内へ少し深めて、少し延長された凹部側壁と新しい凹部底表面とを形成する。ボッシュステップを繰り返すことにより、深く狭い凹部を半導体基板に形成することができる(図2C参照)。このプロセスにより半導体基板内で基本的にエッチングが深さ方向に選択的に進むので、ボッシュプロセスによるエッチングは実質的に異方性のあるエッチングであるといえる。図面からは明らかでないが、ボッシュプロセスで得られた凹部は、ボッシュサイクルに起因する僅かな粗さ(スキャロップ)を凹部側表面上に有する。
【0105】
この従来技術において、メッキ金属の初期堆積サイトが凹部220の側表面上に生成されることを防止する試みを行う。図2Dに示すように、半導体基板222の凹部220の側壁232と底表面234とを含む露出表面全体の上に、例えば酸化物層230である絶縁体の薄い被覆を、例えばプラズマ化学気相成長法(PECVD)又は熱酸化法によって設ける。いくつかの実施態様において、絶縁体層230は、半導体基板222の上面の凹部220を取り囲む領域を覆う部分が他の部分よりも厚くてもよい。
【0106】
絶縁体層230を形成した後に、凹部220の底表面234をドライエッチングにより再露出させて、半導体基板222をメッキ環境に曝露した際に再露出している底表面234が最初にメッキされるようにする。しかしながら、従来技術では、凹部底表面を再露出させるために用いるエッチャント(例えば、CF4、CHF3)は、絶縁体被覆(例えば、SiO2)に対するエッチング速度の方がその下にある半導体材料(例えば、Si)に対するエッチング速度よりも高い。そのため、図2Eに示すように、ドライエッチングにより底表面234が再露出したときには、底表面234付近の側表面232も再露出している。また、エッチャントの半導体基板材料に対するエッチング速度が低いので、再露出した凹部底表面は実質的に平坦なままである。更に、ドライエッチングで生じたデブリが、底表面234付近の側表面232上に残る可能性もある。
【0107】
高アスペクト比の凹部を形成する方法(例えば、本例で用いるボッシュプロセス)で形成される凹部の底表面は一般に平滑で比較的平坦であるので、ドライエッチングにより底表面234が再露出したときに、露出した側表面232、特に側表面232のデブリ及び残存する絶縁体層230の縁付近の部分よりも、底表面234の方がメッキ金属イオンに対する誘引性が低くメッキ金属の堆積条件が劣っていることが多い。
【0108】
図2Fに示すように、図2Eに示す半導体基板222をメッキ環境に曝露してメッキを行うと、メッキ金属が底表面234付近の側表面232上にまず堆積して、それによる妨害のため、凹部220のメッキ金属238の下方の底部分に空隙236が形成される可能性がある。
【0109】
本明細書で説明するように、深さ対幅のアスペクト比が高い凹部の形成において、凹部の露出した側表面(特に、露出した凹部側表面の凹部底表面付近の部分)よりも凹部底表面の方がメッキ環境中のメッキ金属イオンに対する誘引性が高くなるように、凹部底表面に表面プロファイル特徴部を設ける工程を行う。
【0110】
図3A〜3Dに、凹部側表面よりも凹部底表面上のメッキ条件を良くする底表面プロファイル特徴部を有する、深さ対幅アスペクト比が高い凹部の例を示す。
【0111】
図3A及び3Bに示す凹部は、同じ深さで実質的に平坦な底表面を有する凹部(例えば、従来のボッシュプロセスを用いて形成された底表面を有する凹部)に比べて、凹部底表面が凹部上部開口から離れる方向に半導体基板内に入り込むように屈曲している。図2B〜2Fで説明したボッシュプロセスでは、結果として得られる高アスペクト比の凹部の底表面が僅かに下向きに湾曲している可能性はあるものの、湾曲した凹部底表面の平坦からの逸脱の程度は、極めて小さくて、凹部側壁に比べて凹部底表面のメッキ条件を良くする程の差異は生じない。
【0112】
対照的に、図3Aにおいて、凹部302は、半導体基板306の上面301の平坦部分に対して垂直な垂直側壁304を有する。いくつかの実施態様において、凹部302は、X線格子(例えば、図1A〜1Cに示す第二の格子104)に用いられるような線形凹部であってもよい。そのような実施態様において、各線形凹部302の底表面は、二つの平坦な小面308を含む。二つの平坦な小面308は、凹部302の上部開口312を含む平面に平行な平面310から離れて傾斜している。二つの平坦な小面308は、凹部底表面の中央線又は中央付近の直線(頂点314として示す)に沿って互いに交わっている。頂点314と平面310との間の距離は、凹部302の幅wの少なくとも3分の1(例えば、幅wの半分超)であってもよい。
【0113】
いくつかの実施態様において、凹部302は、微小サイズで深さ対幅のアスペクト比が高い他の種類の凹部を必要とする適用に応じて、正方形や矩形の上部開口312を有していてもよい。そのような実施態様において、各凹部302の底表面は、凹部底表面の中央又は中央付近の点で互いに交わる複数(例えば、四つ)の平坦な小面を有していてもよい。
【0114】
高アスペクト比の凹部の底表面を、凹部の上部開口を含む平面に平行な平面から離れて曲がっているように形成することにより、同じ寸法を有する凹部の底表面が平滑かつ実質的に平坦である場合と比較して、凹部底表面の表面積を著しく拡張することができる。電荷は半導体の内部よりも表面付近を流れやすい傾向があるので、凹部底表面の表面積を拡張することにより、凹部底表面上にメッキ金属イオンを誘引してメッキ金属を堆積させる機会を増大させることができる。
【0115】
特定の理論によって制限されるものでは全くないが、メッキ環境中に存在するメッキ金属イオンは、高アスペクト比の凹部の底表面付近の狭い範囲において所定の濃度を有し、凹部側表面の凹部底表面付近もメッキ環境に曝露されている場合には、その狭い範囲に存在するメッキ金属イオンを捕捉する機会を凹部側表面上の自由負電荷と凹部底表面上の自由負電荷とが競い合うであろう。凹部底表面上に存在する自由負電荷の量が凹部底表面付近の凹部側表面上に存在する自由負電荷の量よりも著しく多いならば、メッキ金属の初期成長サイトの多くが凹部底表面上に先に生成される可能性が高まる。これらの初期成長サイトがまず凹部底表面上に生成された後に、メッキを普通に継続して、メッキ金属を凹部底表面から凹部側表面に沿って上方に凹部の全長に亘って充填することができる。高アスペクト比の凹部がこのような曲がった底表面を有する場合、メッキ金属の空隙は、仮に生じたとしても、より少なくより小さいであろう。
【0116】
凹部底表面が呈する屈曲の程度は、半導体基板における結晶面の配向に依存していてもよい。例えば、凹部底表面の平坦な小面(例えば、小面308)がKOHエッチングによってシリコン基板の{111}面に沿って形成されているとき、各小面308と、各小面308が側表面304と交わる位置にある平面310(即ち、凹部上部開口を含む平面に平行な平面)と、の間の角度は約54°であってもよい。いくつかの実施態様において、異なる程度の屈曲が凹部底表面に形成されるように、エッチングの処方を最適化することができる。図3Aに示す凹部底表面プロファイルを形成する方法のいくつかの例を、図5A〜5C及び図6A〜6Cを参照してより詳細に説明する。
【0117】
凹部底表面の曲がり方は、図3Aに示すような角がある屈曲であってもよいが、図3Bに示すような湾曲であってもよい。図3Bに示すように、凹部322の底表面324は、上部開口326から離れる方向に半導体基板328内に入り込むように湾曲している。凹部底表面324と凹部側表面330とが交わる位置にある平面332から凹部底表面324の中央までの距離aが凹部322の幅wの1/3よりも大きいように、凹部底表面324の平均曲率半径は十分に小さい。いくつかの実施態様において、距離aは、凹部322の幅wの半分であってもよく、w/2乃至w/3であってもよい。
【0118】
図3Aに示す角張って屈曲した凹部底表面と同様に、図3Bに示す湾曲した表面プロファイルを有する凹部底表面324も、凹部底表面の表面積が拡張されているという利点を有し、凹部内の所定の体積のメッキ環境と接触する自由表面電荷の数が増加している。高アスペクト比の凹部が平坦な底表面を有している場合とは対照的に、図3Bに示す凹部322の底表面324は、凹部322の底表面324付近の側表面330よりもメッキ金属イオンに対する誘引性が高いメッキ金属堆積領域を提供する。
【0119】
例えば図2Eに示す構成と同様に、凹部322を絶縁体層により部分的に被覆して側表面330の下側部分及び底表面324だけをメッキ環境に曝露すると、メッキ金属の初期成長サイトが底表面324上にまず生成される。メッキ金属の初期成長サイトが底表面324上に確立されれば、メッキ金属を凹部322の底から上に均一に充填することができる。同様の寸法で平坦な底を有する凹部の内側のメッキ金属に見られる空隙と比較して、凹部322の内側に形成されるメッキ金属の空隙は、仮に生じたとしても、より少なく及び/又はより小さい。
【0120】
図3Cは、平坦な凹部底表面と比較して、また高アスペクト比の凹部の平滑な側表面と比較して、より良好なメッキ条件を提供することができる凹部底表面プロファイルの他の例を示す。図3Cに示すように、凹部342の底表面344は、凹部342の上部開口346に近づく方向に屈曲している。底表面344の表面積は、同じ寸法の凹部における平坦な底表面の表面積よりも大きい。更に、底表面344は、底表面344の中央又は中央付近である角度で互いに交わって尖った頂点350を形成する二つの平坦な小面348を含む。自由電荷は表面上の突起付近に集まる傾向があるので、メッキ工程において半導体基板352が負電位に保持されていると、半導体基板352の頂点350付近の表面は、底表面344付近の側表面354よりも高い濃度の自由電荷を有することができる。したがって、底表面344上の突起形状により、側表面354の底表面344付近の領域よりもメッキ金属イオンに対する誘引性が高いメッキ金属堆積領域が提供される。
【0121】
メッキ金属の初期成長サイトが底表面344の頂点350上に生成された後、メッキを初期成長サイトから続けて、メッキ金属を凹部342の底から上に均一に充填することができる。図8A〜8Cは、凹部上部開口に近づく方向に屈曲して単一の尖った突起が存在する凹部底表面を有する、深さ対幅のアスペクト比が高い凹部(例えば、図3Cに示す凹部342)を半導体基板に形成する方法の例を示す。
【0122】
図3Cに示す凹部342は凹部底表面上に一つの突起形状を有しているが、いくつかの実施態様において、凹部底表面上に二つ以上の突出した表面形状を形成して、それらの突起形状の各頂点上にメッキ金属の初期成長サイトを生成することができるようにしてもよい。図9A〜9Cは、尖った突起がいくつか存在する凹部底表面を有する、深さ対幅のアスペクト比が高い凹部(例えば、図3Cに示す凹部342の変形例)を半導体基板に形成する方法の例を示す。
【0123】
図3Dは、多くの尖った突起(以下、針状体という)368が存在する凹部底表面プロファイルを有する高アスペクト比の凹部の例である凹部362を示す。複数の針状体368は、凹部362の底表面364上に「芝生のような(grassy)」表面テクスチャを形成する。針状体368の先端(即ち、頂点)366は、底表面364付近の平滑な側表面370よりも、メッキ金属イオンを強く誘引する。したがって、凹部362の表面をメッキ環境に曝露すると、メッキ金属の初期成長サイトが、凹部362の側表面370の底表面364付近の部分上ではなく、針状体368の先端上に生成される。
【0124】
メッキ金属の初期成長サイトが針状体368の先端366上に生成された後、メッキを続けて、メッキ金属を凹部362の底表面から側表面に沿って上に均一かつ中実に充填することができる。いくつかの実施態様において、複数の針状体368の先端366が、凹部362の上部開口372を含む平面に平行な同一の水平面上に概ね位置していてもよい。このような実施態様では、メッキ金属の初期成長サイトが針状体368の先端366上に生成されたときに、メッキ金属が実質的に水平な底表面を有することができる。メッキ金属の小さな空隙が針状体368の隙間に形成されるかもしれないが、これらの空隙は、微細であり、凹部362を用いて形成される格子において大きな散乱や性能劣化の原因にはならないであろう。
【0125】
様々な実施態様において、芝生状の表面テクスチャ(即ち、針状体の集合体)を凹部底表面上に形成するために用いられる処理方法に依存して、針状体は異なる外観を呈する。例えば、いくつかの実施態様において、複数の針状体は、芝生のような見掛けを有し、ある程度の不規則性がそれらの位置及び寸法にあってもよい。図10A〜10Cは、多数の針状体が存在する粗い凹部底表面を有する、深さ対幅のアスペクト比が高い凹部(例えば、図3Dに示す凹部362)を半導体基板に形成する方法の例を示す。
【0126】
特定の理論によって制限されるものでは全くないが、図4A〜4Cは、深さ対幅のアスペクト比が高い凹部の各例の内側における、電気メッキされた金属の初期成長サイトの生成状態を示す。
【0127】
図4Aは、平滑かつ実質的に平坦な底表面404を有する凹部402の例を示す。凹部402を含む半導体基板406がメッキ工程において負電位に保持されていると、自由表面電荷は、凹部402の底表面404上よりも側表面410上のデブリ及び絶縁体被覆408の縁付近に集中する。凹部402の底表面404よりも側壁410の方が、自由表面電荷の濃度が高いので、メッキ溶液のうち凹部402の底部に存在する部分中の金属イオンを強く誘引する。したがって、メッキ金属の初期成長サイトの多くは、底表面404上ではなく底表面404付近の側表面410上に生成される。初期成長サイト412の上にメッキ金属が蓄積し続けると、凹部402の側表面410上の初期成長サイト412の下方の領域に空隙が形成されるであろう。
【0128】
図4Bは、凹部422の上部開口から相当の距離だけ離れる方向に屈曲した底表面424を有する、深さ対幅のアスペクト比が高い凹部422を示す。凹部422の側表面426は、側表面426の底表面424付近の下側部分を除いて、絶縁体被覆430により覆われている。底表面424の屈曲により、底表面424は側表面426の底表面424付近の露出部分よりも面積が著しく大きくなっている。底表面424の表面積がより大きいということは、側表面426の底表面424付近の露出部分よりも底表面424の方が、メッキ溶液のうち凹部422の底部に存在する部分と接触する自由表面電荷の数が多い、ということを意味する。したがって、メッキ金属の初期成長サイト428は、側表面426の底表面424付近の露出部分上よりも底表面424上に生成される可能性が高い。初期成長サイト428の上にメッキ金属が蓄積し続けられると、メッキ金属が底表面424上の初期成長サイト428から凹部422の底から上に充填される。図4Bには平坦な小面を有する凹部底表面を例示しているが、上述と同じ原理が、凹部上部開口から離れる方向に湾曲した凹部底表面を有する凹部にも適用可能である。
【0129】
図4Cは、一つ以上の針状体448(例えば、シリコンの芝生状の表面テクスチャ)が凹部442の底表面446に存在する、半導体基板444内の高アスペクト比の凹部442を示す。凹部442の側表面450は、側表面450の底表面446付近の下側部分を除いて、絶縁体被覆452により覆われている。半導体基板444がメッキ工程において負電位に保持されていると、自由表面電荷は針状体448の頂点上に極めて集中する。したがって、メッキ金属の初期成長サイトは、側表面450の底表面446付近の露出部分上よりも底表面454上に(針状体448の先端に)生成される可能性が高い。メッキ金属が初期成長サイト454の上に蓄積し続けられると、メッキ金属が底表面446上の初期成長サイト454から側表面450に沿って凹部422の全長に亘って底から上に充填される。
【0130】
図5A〜5Cは、凹部上部開口から離れる方向に屈曲した凹部底表面を有する、深さ対幅のアスペクト比が高い凹部(例えば、図3Aに示す凹部302)を半導体基板に形成する方法の例を示す。
【0131】
図5A〜5Cに例示する方法では、平坦な上面が(100)面である単結晶から成る半導体基板500(例えば、単結晶シリコンウエハ)を用いる。まず、半導体基板500の平坦な上面の上に、マスク層502を形成する。マスク層502は、一つ以上の開口504がパターニングされた層(例えば、フォトレジスト、SiO2、Si3N4)であってもよい。マスク層502の各開口504は、半導体基板500の上面に形成される予定の凹部の開口と同じ形状及び寸法を有する。
【0132】
例えば、X線格子(例えば、図1A〜1Cに示す第二の格子104)に用いる線形凹部の形成のために、一つ以上の線形スロット504をマスク層502に形成する。本例示の方法では、マスク層502がパターニングされた後の半導体基板500の上面の平面図(図5Aの右上部)に示すように、マスク層502に形成された線形スロット504は、線形スロット504の長手方向が半導体基板500の[011]方向に沿うように配向されている。
【0133】
半導体基板500の上面の上に置かれたマスク層502に線形スロット504を形成した後、半導体基板500の上面に、KOH又は水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)エッチング溶液などのエッチャントを用いた異方性エッチングを施す。図5Bに示すように、異方性エッチングにより、半導体基板500の露出した上面から半導体材料が半導体基板500の{111}面に沿って選択的にエッチング除去される。エッチングの結果、半導体基板500の露出した上面に、二つの対向する平坦な小面508を有するキャビティ506が形成される。二つの対向する平坦な小面508は、図5Bに示すように、半導体基板500の表面に形成されたキャビティ506の中央の直線に沿って互いに交わっている。異方性エッチングにより形成されたキャビティ506の表面プロファイルが、高アスペクト比の凹部を半導体基板500に形成するために必要な所望の表面プロファイル特徴部を含むようになったら、エッチングを終了してよい。
【0134】
キャビティ506を形成する異方性ウェットエッチングが完了した後に、半導体基板500の上面を(例えば、深掘り反応性イオンエッチング(DRIE)プロセスで)ドライエッチングに曝露して、図5Cに示すように、高アスペクト比の凹部512の垂直な側壁510を形成することができる。凹部512が所望の深さに到達したら、ドライエッチングを終了してよい。ドライエッチングは、凹部512の上部開口を含む平面に対して垂直な方向において実質的に均一な速度で行うことができるので、半導体基板500の露出した上面から半導体材料を連続的に除去しながら、ドライエッチングを最初に始めたときにキャビティ506が有していた表面プロファイルを凹部512の底表面に転写することができる。
【0135】
したがって、ドライエッチングプロセスにより凹部512が所望の深さに到達して凹部512の垂直側壁510が完全に形成された時点において、凹部512の底表面は、底表面の中央の直線で互いに交わる二つの平坦な小面514を含んでいる。二つの平坦な小面514が互いに交わる位置は、底表面(即ち、小面514を含む表面)と凹部512の垂直側壁510とが交わる位置にある水平面516に対して、ある距離だけ下方にある。このようにして、図3Aに示す深さ対幅のアスペクト比が高い凹部が半導体基板500に形成される。続いて、半導体基板500をメッキ環境に曝露して、電気メッキにより凹部512の底から上まで金属導体(例えば、金)を充填することができる。
【0136】
図6A〜6Cは、凹部上部開口から離れる方向に屈曲した凹部底表面を有する、深さ対幅のアスペクト比が高い凹部(例えば、図3Aに示す凹部302)を半導体基板に形成する方法の他の例を示す。
【0137】
図6A〜6Cに例示する方法では、平坦な上面が(110)面である単結晶から成る半導体基板600(例えば、単結晶シリコンウエハ)を用いる。まず、半導体基板600の平坦な上面の上に、マスク層602を形成する。マスク層602は、一つ以上の開口604がパターニングされた層(例えば、フォトレジスト、SiO2、Si3N4)であってもよい。マスク層602の各開口604は、半導体基板600の上面に形成される予定の凹部の開口と同じ形状及び寸法を有する。
【0138】
例えば、X線格子(例えば、図1A〜1Cに示す第二の格子104)に用いる線形凹部の形成のために、一つ以上の線形スロット604をマスク層602に形成する。本例示の方法では、マスク層602がパターニングされた後の半導体基板600の上面の平面図(図6Aの右上部)に示すように、マスク層602に形成された線形スロット604は、線形スロット604の長手方向が半導体基板600の[211]方向に沿うように配向されている。
【0139】
半導体基板600の上面の上に置かれたマスク層602に線形スロット604を形成した後、半導体基板600の上面に、KOH又はTMAHエッチング溶液などのエッチャントを用いた異方性エッチングを施す。図6Bに示すように、異方性エッチングにより、半導体基板600の露出した上面から半導体材料が半導体基板600の{111}面に沿って選択的にエッチング除去される。エッチングの結果、キャビティ606の中央の直線に沿って互いに交わる二つの対向する平坦な小面608を有するキャビティ606が、半導体基板600に形成される。
【0140】
キャビティ606の二つの平坦な小面608がキャビティ606の中央の直線で互いに接続した後に異方性エッチングを継続すると、図6Cに示すように、凹部610の垂直側壁614が形成される。凹部610の垂直側壁614も、半導体基板600の{111}面に沿っている。
【0141】
KOH又はTMAHを用いた異方性エッチングを継続して凹部610が所望の深さに到達したら、異方性エッチングプロセスを終了してよい。エッチングプロセスの終了時点において、キャビティ606の表面プロファイルが凹部610の底表面に転写されている。半導体基板600に形成された凹部610の底表面は、凹部610の底表面の中央の直線で互いに交わる二つの対向する平坦な小面612を含んでいる。二つの平坦な小面612の交線である直線は、凹部610の底表面と凹部610の垂直側壁614とが交わる位置にある水平面616に対して、ある距離だけ下方にある。このようにして、図3Aに示す深さ対幅のアスペクト比が高い凹部が半導体基板600に形成される。続いて、半導体基板600をメッキ環境に曝露して、電気メッキにより凹部610の底から上まで金属導体を充填することができる。
【0142】
図5A〜5C及び図6A〜6Cにより説明した二つの方法例は同様の構造を形成するが、これら二つの方法例は少なくともいくつかの点において異なる。例えば、これら二つの方法例で用いられる半導体基板の結晶配向は互いに異なる。また、線形凹部は、半導体基板の表面において異なる結晶方向に沿って形成される。更に、図5A〜5Cに示す方法では二つのステップのエッチングプロセス(先にウェットエッチング、次いでドライエッチング)を用いて凹部の全体を形成し、図6A〜6Cに示す方法では単一のウェットエッチングプロセスを用いて凹部の全体を形成する。
【0143】
凹部上部開口から離れる方向に屈曲した凹部底表面を有する凹部を形成する方法の他の例を、図12A〜12Fを参照して本明細書で後述する。図12A〜12Fに示す方法は、少なくとも、凹部の内面が形成されて絶縁体被覆で被覆された後に図12A〜12Fに示す凹部の屈曲した底表面が形成されるという点において、図5A〜5C及び図6A〜6Cに例示する方法と異なる。
【0144】
図7A〜7Eは、凹部上部開口から離れる方向に曲がった凹部底表面を有する、深さ対幅のアスペクト比が高い凹部(例えば、図3Bに示す凹部322)を半導体基板に形成する方法の他の例を示す。本例示の方法では、凹部上部開口から離れる方向に湾曲した凹部底表面を有する、深く狭い凹部が形成される。従来のボッシュプロセスで形成された高アスペクト比の凹部も、凹部上部開口から離れる方向に少々湾曲した凹部底表面を有している場合があるが、図7A〜7Eに示す方法を用いて形成された凹部では、遥かに顕著な湾曲が凹部底表面に形成されて、凹部底表面の方が凹部底表面付近の平坦な凹部側表面よりもメッキ環境中のメッキ金属イオンに対する誘引性が極めて高くなる。
【0145】
図7Aに示すように、半導体基板700(例えば、シリコンウエハ又はシリコン−オン−オキサイド・ウエハ)の平坦な上面に、フォトレジスト層702を置く。次いで、フォトレジスト層702をパターニングして、フォトレジスト層702に開口704を形成し、開口704内のフォトレジストの下の領域を開口704を介して露出させる。フォトレジスト層702に形成される開口704は、半導体基板700の上面に平行な平面内での平面形状及び平面寸法が、半導体基板700に形成される予定の凹部と概ね同じである。
【0146】
例えば、半導体基板700に長さl、幅w及び深さdを有する線形凹部(例えば、図1B及び1Cに示す線形凹部114)が形成される場合、フォトレジスト層702の開口704の平面寸法はl×wに概ね等しい。フォトレジスト層702の厚さは、少なくとも幅wの半分である。
【0147】
フォトレジスト層702に開口704を形成したら、フォトレジスト層702を高温(例えば、約200℃)でフォトレジスト層の形状が変化し始めるまでアニールする。形成当初の開口704の側壁は、実質的に平坦であって半導体基板700の上面に対して垂直である。そして、加熱によってフォトレジストが半溶融することにより、フォトレジスト層が変形する。半溶融したフォトレジストの自重と表面張力との相互作用により、フォトレジスト層702に形成された開口704の側壁を含むフォトレジスト層702の露出面上に、湾曲した表面プロファイルが形成される。
【0148】
フォトレジスト層702に湾曲した表面プロファイルが形成されたら、フォトレジスト層702を冷却して図7Bに示すように湾曲した表面プロファイルを有する状態で再硬化させる。いくつかの実施態様において、図7Bに示すフォトレジスト層702に形成される開口704の平面寸法が正確にl×wとなるように、図7Aに示すフォトレジスト層702に形成する開口704の寸法を精密に調整してもよい。
【0149】
フォトレジスト層702を冷却してフォトレジスト層702の湾曲した表面プロファイルを安定させた後に、半導体基板700を等方性エッチングすることにより、フォトレジスト層702の湾曲した表面プロファイルを半導体基板700の上面に転写することができる。
【0150】
いくつかの実施態様において、半導体基板700は、ユニタリシリコンウエハであってもよい。フォトレジスト層702の湾曲したプロファイルをシリコンウエハに形成されたキャビティ706の表面に転写した後に、ボッシュプロセスを行って凹部の側壁を形成することができる。ボッシュプロセスは半導体基板700の上面に垂直な方向に高いエッチング速度を有するので、キャビティ706の湾曲した表面プロファイルを凹部底表面に転写しながら、凹部のエッチングを半導体基板700内へ深めて行くことができる。フォトレジスト層をボッシュプロセスのマスクとしても用いる実施態様では、キャビティ704がシリコン層に形成されたときにフォトレジスト層がシリコン基板上に十分な厚さで残存しているように、フォトレジスト層を比較的厚くしておくことが必要である。
【0151】
いくつかの実施態様において、このプロセスに用いる半導体基板700はシリコン−オン−インシュレータ基板であり、フォトレジスト層702の直下の層はシリコン酸化物層708である。シリコン酸化物層708をフォトレジスト層702を介して等方性エッチャントを用いてエッチングしたときに、フォトレジスト層702の湾曲したプロファイルをシリコン酸化物層708の表面上に完全に転写することが可能であるように、シリコン酸化物層708は少なくとも数μm(例えば、2μm乃至4μm)の厚さを有する。
【0152】
図7Cに示すように、シリコン酸化物層708のエッチングは、フォトレジスト層702の湾曲したプロファイルが酸化物層708の表面上に転写されるまで行う。つまり、酸化物層708の表面に、湾曲した表面プロファイルを有するキャビティ706を形成する。次いで、残っているフォトレジストがあったら除去して、酸化物層708を露出させる。いくつかの実施態様において、酸化物層708を研磨して酸化物層708のキャビティ706の外側の上面を平坦化する工程を、適宜追加してもよい。次いで、酸化物層708をマスク層として用いて、ボッシュプロセスを用いて酸化物層708の下のシリコン層710に深く狭い凹部712を形成することができる。
【0153】
図7D及び7Eに示すように、エッチング段階と堆積段階とを交互に繰り返すボッシュプロセスを続けると、半導体基板700のシリコン層710に、深く狭い凹部712の垂直側壁714が徐々に形成される。凹部712の底表面716は、酸化物マスク層708に以前に存在していたキャビティ706の底表面の湾曲形状を維持する。
【0154】
図7Cに示すように湾曲した側壁を有する開口部がある酸化物マスクではなく、通常の垂直な壁を有するマスクを用いたボッシュプロセスにより形成される凹部の底表面は、少々湾曲しているかもしれないが、その湾曲の量、即ち底表面の最も低い部分と底表面が側表面と交わる位置にある平面との間の距離は、数百nm程度以下に過ぎない。対照的に、図7A〜7Eに示すプロセスを用いると、凹部712の底表面716の湾曲の量、即ち底表面716の最も低い部分と底表面716が側表面714と交わる位置にある平面718との間の距離を、凹部712の幅wの半分にまで及ばせることができる。
【0155】
いくつかの実施態様において、深さ100μm及び幅2μmの深い凹部で、底表面716の最低点と底表面716が垂直な側表面714と交わる位置にある平面718との間の距離を、1μmにまで及ばせることができる。
【0156】
特定の理論によって制限されるものでは全くないが、シリコン酸化物層708をボッシュプロセス用のマスク層として用いることの利点の一つは、酸化物層708は長く続くボッシュプロセスの後でも通常のフォトレジスト層と違ってひび割れたり分解したりしないことである。したがって、高アスペクト比で深さが大きい(例えば、100μm程度)凹部を形成するために、酸化物層をボッシュプロセス用のマスクとして用いる。ボッシュプロセス中に酸化物層が部分的に侵食されて薄くなるかもしれないが、フォトレジスト層にありがちなひび割れの問題は酸化物層には起きない。いくつかの実施態様において、凹部712を形成した後に、酸化物層を除去又は平坦化してもよい。
【0157】
図8A〜8Cは、凹部上部開口に近づく方向に屈曲して単一の尖った突起が存在する凹部底表面を有する、深さ対幅のアスペクト比が高い凹部(例えば、図3Cに示す凹部342)を半導体基板に形成する方法の例を示す。
【0158】
本例示の方法では、グレースケールマスクを用いて、半導体基板の凹部を形成する予定の場所の上に、尖った表面形状部を有する厚さプロファイルを形成する。次いで、フォトレジスト層をマスクとして用いて、半導体基板に凹部を形成する。
【0159】
図8Aに示すように、半導体基板800の平坦面上にフォトレジスト層802を置く。次いで、フォトレジスト層802を、グレースケールマスク804を介して紫外光に曝露する。グレースケールマスク804は、紫外光の透過度がグレースケールマスク804の紫外光透過プロファイルに従ってグレースケールマスク804上の場所によって異なるように、特別に設計されている。本例において、グレースケールマスク804は、半導体基板800の表面の凹部が形成される予定の場所に合わせられる領域のみを紫外光が透過可能なように設計されている。図8Aの上部のグラフは、グレースケールマスク804の紫外光透過プロファイル806を表す。
【0160】
紫外光透過プロファイル806に示すように、半導体基板800の表面に長さl及び幅wの線形凹部を形成するためのグレースケールマスク804は、線形凹部を形成する予定の場所(例えば、2wのピッチを有する)に合致する場所の、長さl及び幅wを有する領域のストライプ808のみで、紫外光を透過させる。更に、各ストライプ808における紫外光透過度Tは、各ストライプ808の幅方向の両端で最高であり、各ストライプ808の各端から離れてストライプ808の中央に近づくにつれて直線的に低下している。
【0161】
フォトレジストの平坦な層802をグレースケールマスク804を介して紫外光に曝露してから現像すると、フォトレジスト層802は、半導体基板800の表面に平行な平面内の平面寸法だけでなく半導体基板800の表面に垂直な方向の厚さ寸法においてもパターニングされる。図8Aに示すように、現像後のフォトレジスト層802のプロファイルは、グレースケールマスク804の紫外光透過プロファイル806が反転した形を呈する。具体的には、フォトレジスト層802のうち、紫外光がグレースケールマスク804に遮られて全く照射されなかった領域は、平坦である。フォトレジスト層802のうち、紫外光がグレースケールマスク804を透過して照射された領域(即ち、フォトレジスト層802のうち、グレースケールマスク804の透過ストライプ808の下方の領域)では、フォトレジスト層802の表面プロファイルは、グレースケールマスク804の紫外光透過プロファイル806が反転した形となる。つまり、パターニングされたフォトレジスト層802は、フォトレジスト層802の平坦な底表面から離れる方向に突出した単一の尖った突起810を含んだ表面プロファイルを有する。本例示の方法では、単一の尖った突起810は、フォトレジスト層802の凹んだ部分の長さlに沿った単一の直線において互いに交わる二つの平坦な小面812を有する。
【0162】
フォトレジスト層802を、半導体基板800に形成する予定の凹部822の平面寸法及び底表面プロファイルに従って、平面寸法と厚さ寸法との両方においてパターニングした後、フォトレジスト層802を介して凹部822を形成するプロセスを行うことができる。いくつかの実施態様において、プラズマエッチングプロセスなどのドライエッチングプロセスにより凹部822を形成することができる。いくつかの実施態様において、ボッシュプロセスを用いて凹部822を形成してもよい。
【0163】
いくつかの実施態様において、ボッシュプロセスを用いて深い凹部を形成する場合、半導体基板800は、酸化物層814とシリコン層816とを含むシリコン−オン−オキサイド・ウエハであってもよい。エッチング中に、まずフォトレジストマスク802のプロファイルが酸化物層814に転写される。次いで、フォトレジスト層802を除去することができ、酸化物層814を、その下のシリコン層816に所望の深さの凹部822を形成する次のボッシュプロセス用のマスク層として使うことができる。図8Bに示すように、ボッシュプロセスの開始前に、酸化物層814の、更なるエッチングによりシリコン層816に形成される予定の凹部822の上の場所に、真直側壁を有するキャビティ820が形成されている。各キャビティ820の底表面には、二つの平坦な小面824を有する単一の尖った突起818が形成されている。
【0164】
次いで、ボッシュプロセスを行って、酸化物層814のキャビティ820の内側の表面プロファイルを凹部822の底表面に転写しながら、ボッシュプロセスのエッチングサイクル及びパッシベーションサイクルによって凹部822を深めることができる。凹部822が所望の深さに到達したら、ボッシュプロセスを終了してよい。結果として得られる凹部822のそれぞれは、垂直側壁826と単一の尖った突起828を含む底表面とを有する。各凹部822の底表面の単一の尖った突起828は、凹部822の上部開口に向かって突き出ている。図8Cにおいて、単一の尖った突起828は、直線において互いに交わる二つの平坦な小面830を有する。いくつかの実施態様において、図8A〜8Cに示す方法を用いて、他の表面プロファイルを有する単一の尖った突起を形成してもよい。
【0165】
上述の方法で、適切な紫外光透過プロファイルを有するマスクを用いることにより、凹部底表面上に単一の尖った突起を形成するだけでなく、凹部底表面上に多数の尖った突起を形成することもできる。図9A〜9Cは、尖った突起がいくつか存在する粗い凹部底表面を有する、深さ対幅のアスペクト比が高い凹部(例えば、図3Cに示す凹部342の変形例)を半導体基板に形成する方法の例を示す。
【0166】
図9Aに示すように、半導体基板900上に置かれたフォトレジスト層902のパターニングには、図8Aとは異なるグレースケールマスクを用いている。例えば、ここで用いるグレースケールマスクは、半導体基板900に形成される予定の凹部の平面形状及び位置に合致するフォトレジスト層902の領域904に厚さプロファイルを形成する、紫外光透過プロファイルを有することができる。パターニングされたフォトレジスト層902の厚さプロファイルは、例えば、周期的アレイ(例えば、2×2アレイ)状に配列された少数の尖った突起を有することができる。
【0167】
図9Bに示すように、パターニングされたフォトレジスト層902を介して半導体基板900をエッチングに曝露すると、フォトレジスト層902の領域904の内側の表面プロファイルが、エッチングにより形成されるキャビティ910の底表面912に転写される。つまり、キャビティ910の底表面912は、小周期のアレイ状に配列された突起形状914を有することになる。また、キャビティ910は、半導体基板900に形成される予定の凹部の平面形状及び寸法を決める垂直側壁を有する。
【0168】
いくつかの実施態様において、半導体基板900は、シリコン−オン−オキサイド・ウエハであり、酸化物層906及びシリコン層908を含む。パターニングされたフォトレジスト層902の直下の層は、酸化物層906である。パターニングされたフォトレジスト層902を介して酸化物層906をエッチングすると、フォトレジスト層902の垂直プロファイルが酸化物層906の表面上に転写される。次いで、フォトレジスト層902を除去して、パターニングされた酸化物層906を、その下のシリコン層908の次のエッチング用のマスクとして用いる。
【0169】
いくつかの実施態様において、ボッシュプロセスを用いて、シリコン層908に所望の深さの凹部916を形成することができる。各凹部916は、垂直側壁922と底表面918とを有するであろう。凹部916の底表面918は、酸化物層906に以前に存在していたキャビティ910の底表面912上の突起914に合致する尖った突起920を含むであろう。凹部916の底表面918は、凹部916の垂直な側表面922よりもメッキ金属イオンに対する誘引性が高く良好なメッキ金属堆積領域を提供するために十分な粗さを有する。凹部916をメッキ環境に曝露すると、凹部916の底表面918上の尖った突起920の上に、メッキ金属の初期成長サイトが生成される。
【0170】
上記の方法例では限られた数の凹部のみを図示しているが、当業者は、適切なマスクパターニングを同じ方法で用いることにより、多くの凹部が配列された複数のアレイを形成できることを認識するであろう。
【0171】
図10A〜10Cは、多数の針状体が存在する粗い凹部底表面を有する、深さ対幅のアスペクト比が高い凹部(例えば、図3Dに示す凹部362)を半導体基板に形成する方法の例を示す。
【0172】
本例示の方法では、図10Aに示すように、半導体基板1000上にパターニングされたマスク1002が形成される。いくつかの実施態様において、パターニングされたマスク1002は、シリコン−オン−オキサイド・ウエハのパターニングされた酸化物層であってもよく、半導体基板1000は、シリコン−オン−オキサイド・ウエハのシリコン層であってもよい。パターニングされた酸化物マスク1002は、その下の半導体基板1000で凹部が形成される予定の場所の上に、真直側壁を有する開口1004を有する。開口1004は、半導体基板1000に形成される予定の凹部と同じ平面寸法を有する。
【0173】
酸化物マスク1002を作成した後、酸化物マスク1002を介してボッシュプロセスを行って、半導体基板1000に凹部1006を形成することができる。ボッシュプロセスは、交互に繰り返されるエッチング段階及びパッシベーション段階を含む。エッチング段階では、所定時間(即ち、エッチング継続時間)の間、ある特定のガス混合物(例えば、SF6ガス)を基板1000の表面に向けて垂直に送る。エッチングガス混合物は、半導体基板の露出面を侵食して、凹部の底部分をやや深める。エッチングガス混合物は半導体基板を側方向にも侵食する(即ち、エッチングが等方的に進む)ので、このエッチング段階は、凹部1006の幅を開口1004の幅に近く保つために、比較的短く(例えば、数秒)しておく必要がある。
【0174】
パッシベーション段階では、所定時間(即ち、パッシベーション継続時間)の間、エッチングガス混合物とは異なるガス混合物(例えば、C4F8ガス)が、先のエッチング段階で露出された直後の凹部1006の側壁及び底表面上に保護層を形成する。パッシベーション段階の後に、エッチングガス混合物によるエッチング段階を再び始める。エッチングガス混合物により、凹部1006の底表面上に形成された保護層が侵食されるが、凹部1006の側表面上の保護層は比較的そのまま残る(即ち、エッチングが異方的に進む)。エッチングガス混合物が凹部1006の底表面上の保護層を貫通すると、エッチングガス混合物は、半導体基板1000内へエッチングを進めて、エッチング段階が再び終わるまで凹部1006をやや深める。ボッシュプロセスのエッチング段階及びパッシベーション段階を数千回繰り返して、所望の幅及び深さの高アスペクト比の凹部を形成することができる。この繰り返しにより半導体基板1000へエッチングが選択的に深さ方向に行われるため、ボッシュプロセスによるエッチングは異方性エッチングとみなすことができる。
【0175】
半導体基板1000に凹部1006を形成する上述のボッシュプロセスの間、エッチング段階及びパッシベーション段階のそれぞれのガス圧、温度、ガス混合物の組成、及び継続時間(これらを、ボッシュプロセスの「エッチングレシピ」と総称する)を、凹部1006の側壁1008及び底表面1010が平滑かつ平坦であるように、注意深く選定する。本例では、高アスペクト比の凹部を形成するためのレシピにより、起伏が数nm程度である凹部側壁を形成することができる。
【0176】
図10Bに示すように、高アスペクト比の凹部1006の側壁1008の全体は、実質的に平坦かつ垂直な凹部側壁と実質的に水平かつ平滑な凹部底表面とを有する深く狭い凹部を形成するように調製された、第一のボッシュレシピを用いて形成されている。次いで、第一のボッシュレシピとは異なる第二のボッシュレシピを用いて、凹部1006の底表面1010の表面テクスチャを改変する。第二のレシピは、第一のレシピに基づいてもよいが、保護材料の堆積を促進するように、及び/又はエッチング速度を下げるように、変更される。例えば、第二のレシピにおいて、エッチング段階で第一のレシピよりも圧力を上げ、及び/又は温度を下げてもよい。更に、又は代わりに、第二のレシピにおいて、堆積段階(パッシベーション段階)で、第一のレシピよりも堆積ガス混合物中のC4F8ガスの濃度を上げて材料の堆積を促進してもよい。更に、第二のレシピにおいて、第一のレシピよりもパッシベーション継続時間を長くしてもよい。
【0177】
図10Cに示すように、第二のレシピを用いたボッシュプロセスにより、凹部1006がやや深まるかもしれないが、より重要なことは、凹部1006の底表面1012上に、多くの針状体(シリコングラス(silicon grass)とも呼ばれる)から成る芝生状の表面特徴部が形成されることである。芝生状の表面特徴部を構成する針状体は、芝葉のような外観を呈する半導体材料の尖片である。特定の理論によって制限されるものでは全くないが、これらの針状体は、第二のボッシュエッチングプロセス中に凹部1006の底表面上に形成された堆積物の粒子が微小なマスクとして作用した結果物であってもよい。凹部1006の底表面上に所望のテクスチャができたら、第二のエッチングプロセスを終了してよい。
【0178】
図11A〜11Cに、深さ対幅のアスペクト比が高い凹部(例えば、図3A〜3Dのそれぞれに示す凹部)に電気メッキを施して凹部の底から上に金属を充填する方法の例を示す。図11A〜11Cに示す方法は、例えば、図5A〜10Cにより説明した各方法の後に行うことができる。図11A〜11Cに示す例では粗い底表面を有する凹部(例えば、底表面上にシリコン針状体を有する凹部)を金属(例えば、金)によりメッキしているが、本明細書に記載の他の表面プロファイルを有する凹部にも同じメッキ方法を適用することができる。
【0179】
図11Aに示すように、半導体基板1100には、メッキを促進するように特別に準備された凹部底表面プロファイルを有する高アスペクト比の凹部1102が形成されている。各凹部1102の底表面1104は、複数の突出した表面特徴部(例えば、シリコン針状体)を有する。いくつかの実施態様において、半導体基板1100の上面の上に、酸化物層1106(例えば、凹部1102を形成する際のボッシュプロセスにおいて用いられたマスク層)が残存しているかもしれない。次いで、図11Bに示すように、半導体基板1100の上面を、絶縁体の薄層1108で被覆する。絶縁体層1108は、半導体基板1100の上面の凹部1102を取り囲む平坦領域を覆う部分が他の部分よりも厚くてもよく、凹部1102内では底表面1104に近づくにつれて薄くなる。絶縁体被覆1108は、PECVD又は熱酸化法により設けることができる酸化物層であってもよい。
【0180】
いくつかの実施態様において、凹部1102が十分に狭く深いと、絶縁体被覆1108が凹部1102の底表面1104まで到達しない。いくつかの実施態様において、絶縁体被覆1108が凹部1102の底表面1104まで到達して凹部1102の側壁1110及び底表面1104を覆っている場合は、例えばドライエッチングにより、凹部1102の底表面1104から絶縁体被覆を除去する工程を行ってもよい。絶縁体被覆1108の厚さは、例えば10nm乃至50nmである。絶縁体被覆1108は、凹部1102の底表面1104がメッキされる前に凹部1102の側表面1110がメッキされることを防止する。
【0181】
図示の例において、凹部1102の側表面1110の最下部は絶縁体被覆1108で覆われないで露出しているかもしれないが、凹部1102の底表面1104に(例えば、本明細書において前述した方法により)形成されている特別な表面プロファイル特徴部の作用により、メッキ金属の初期成長サイトは、凹部1102の側表面1110の最下部よりも底表面1104に生成される可能性が高い。図11Cは、金イオンを含むメッキ浴などのメッキ環境に半導体基板1100を曝露すると、メッキ金属の初期成長サイトが凹部1102の底表面1104に生成されて、メッキ金属1112が初期成長サイトから凹部1102の底から上に中実かつ均一に充填されることを示す。いくつかの実施態様において、凹部1102の内側に充填された金属は、例えば、図1A〜1Cに示すX線格子104のX線吸収要素として用いることができる。
【0182】
図11A〜11Cに例示する方法では、メッキ金属の初期成長サイトの生成を促進する表面プロファイル特徴部を有するように凹部底表面を形成した後に、絶縁体被覆を凹部に設ける。図12A〜12Fに例示する別の方法では、まず、平坦な底を有する凹部を形成する。次いで、凹部の内面(凹部底表面及び凹部側表面を含む)を絶縁体被覆で被覆する。図12A〜12Fに例示する方法では、図2B〜2Fに示す従来の方法とは異なり、凹部側表面を再露出させることなく凹部底表面を優先的に再露出させるドライエッチングプロセスを用いて(例えば、異なるエッチャントにより)、凹部底表面を再露出させる。したがって、その後、凹部をメッキ環境に曝露した際に、メッキ金属を、凹部の再露出した底表面上にのみ堆積させて凹部の底から上に充填し始めることができる。
【0183】
図12Aに示すように、半導体基板1204(例えば、シリコンウエハ又はシリコン−オン−オキサイド・ウエハ)に、深さ対幅のアスペクト比が高い凹部1202が一つ以上形成されている。各凹部1202は、実質的に水平かつ平滑な底表面1206と、垂直側壁1208と、上部開口1210と、を有する。半導体基板1204の上面の凹部1202の開口1210を取り囲む部分は、平坦であり、凹部1202の底表面1206に対して実質的に平行である。いくつかの実施態様において、凹部1202は従来のボッシュプロセスにより形成され、半導体基板1204の上面の平坦な部分の上にマスク層1212(例えば、シリコン酸化物層)が残っていてもよい。
【0184】
図12Bに示すように、平坦な底表面1206を有する凹部1202を半導体基板1204に形成した後に、半導体基板1204の表面に絶縁体被覆1214を設ける。絶縁体被覆1214により、凹部1202の側表面1208及び底表面1206が覆われる。いくつかの実施態様においては、絶縁体被覆1214はPECVDにより堆積させた酸化物(例えば、SiO2)の薄層(例えば、厚さ数十nm)である。いくつかの実施態様においては、絶縁体被覆1214は熱酸化法により半導体基板1204の表面上に成長させた酸化物の薄層である。図12Bに示すように、絶縁体被覆1214の層は、半導体基板1204の上面の凹部1202の開口1210を取り囲む部分も覆っていてもよい。絶縁体被覆1214は、絶縁体被覆1214の下の半導体基板1204の表面上の自由電荷によりメッキ金属イオンがメッキ金属に還元されることを防止することができる。
【0185】
絶縁体被覆1214を半導体基板1204の表面に設けて凹部1202の内面を覆った後、被覆された半導体基板1204の表面を、上方からのドライエッチングに曝露することができる。図12Cに示すように、ドライエッチャント(例えば、SF6ガス)を用いて、凹部1202の底表面1206上に形成された絶縁体被覆1214を除去することができる。このドライエッチングプロセスにおいて用いるエッチャントとして、絶縁体被覆1214の材料(例えば、SiO2)に対するエッチング速度よりも半導体基板1204の材料(例えば、Si)に対するエッチング速度が遥かに高いものを選択する。図12Cに示すように、衝突するエッチャント(例えば、SF6)の方向性(例えば、底表面1206に垂直に向けられている)のため、底表面1206の中央部1216がまず再露出される。底表面1206の中央部1216が再露出された後(例えば、第一のエッチング継続時間の経過後)、凹部1202の側表面1208の上及び底表面1206の縁部の上に、絶縁体被覆材料がまだ残っている。
【0186】
図12Dに示すように、ドライエッチングを継続すると、凹部1202の底表面1206は、継続的にエッチングされて、凹部1202の上部開口1210から離れる方向に屈曲するように拡張される。対照的に、凹部1202の側表面1208上に形成されている絶縁体被覆1214は、実質的に損なわれないで残り、側表面1208をエッチャントから保護し続ける。凹部1202の底表面1206上に形成された絶縁体被覆が除去された後(例えば、第一のエッチング継続時間よりも短い第二のエッチング継続時間の経過後)、ドライエッチングを終了してよい。図12Dに示すように、ドライエッチングの後に、凹部1202の底表面1206は、凹部1202の底の中央においてある角度で互いに交わる二つの平坦な小面1218を含むことができる。図12Dに示す凹部1202の底表面1206の全体の表面積は、図12Aに示す凹部1202の平坦な底表面1206の表面積よりも、著しく拡張している。
【0187】
図12Eに示すように、半導体基板1204をメッキ金属イオン(例えば、金イオン)を含むメッキ環境に曝露すると、凹部1202の再露出され拡張された底表面1206上にメッキ金属の初期成長サイトが生成される。凹部1202の拡張された底表面1206上の初期成長サイトから成長したメッキ金属1220は、凹部1202を底から上に徐々に埋める。凹部1202の側表面1208は絶縁体被覆1214により完全に覆われているので、側表面1208がメッキ金属イオンに対する誘引性を底表面1206と競うことはなく、図12Fに示すように、凹部1202の内側に充填されたメッキ金属の全長に亘って、空隙が形成されることはない。
【0188】
本願の明細書及び特許請求の範囲の全体において、「前」、「後」、「上部」、「底部」、「左」、「右」、「上」、「下」、「上方」及び「下方」などの用語は、説明されているシステムの様々な構成要素の相対的な位置及び各構成要素の様々な部品の相対的な位置を説明するために使用されている。同様に、本願の明細書及び特許請求の範囲の全体において、「水平」や「垂直」に関する用語も、説明されているシステムの様々な構成要素の相対的な向き及び各構成要素の様々な部品の相対的な向きを説明するために使用されている。特定の構成要素、システム、又は装置についての説明において下記の相対的な向きや位置が明示的に述べられている場合を除き、これらの用語の使用は、システム、装置、構成要素、又はそれらの部品の、(1)地球の重力の方向に対して、(2)地面若しくは地平面に対して、(3)システム、装置、若しくはそれらの特定の構成要素が実際の製造、使用、若しくは輸送において有し得る方向に対して、又は(4)システム、装置、若しくはそれらの特定の構成要素が実際の製造、使用、若しくは輸送中に配設され得る表面に対して、特定の位置や向きを示唆するものではない。
【0189】
本発明のいくつかの実施形態を説明してきた。しかし、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、様々な変形を行うことができることが理解されよう。例えば、いくつかの処理工程は、異なる順序で行ってもよいし、変更又は省略してもよい。
【技術分野】
【0001】
本発明は、高アスペクト比を有する表面形状を半導体基板に形成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
X線位相コントラストイメージング法は、例えば生体組織試料などの被写体の内部構造の検査に用いられる。一例として、X線位相コントラストイメージング装置は、被写体試料と画像検出器との間に配置される二つの格子を含む。第一の格子は、被写体試料の直ぐ下流側に配置される。第二の格子は、第一の格子と画像検出器との間に配置される。いくつかの実施態様では、第三の格子が、X線放射源と被写体試料との間に配置されて、被写体試料にX線を照射する空間的にコヒーレントな線光源のアレイを形成する。
【0003】
第二の格子は、基本的構造として、X線伝搬方向を横切る平面内にX線透過部とX線吸収部とが交互に配列された周期的アレイを含む。この周期的アレイのピッチは、例えば数μm程度である。X線透過部及びX線吸収部のX線伝搬方向の寸法(高さ)が、格子により得られるイメージングコントラストを決定する。例えば金製のX線吸収部において実現可能な高さは少なくとも10μm乃至15μmであり、それにより約25%のコントラストが得られる。より高いイメージングコントラストを得るためには、一般に、X線吸収部をより高くする必要がある。つまり、第二の格子のX線透過部及びX線吸収部の高さ対幅のアスペクト比を高くする必要がある。
【0004】
従来、X線位相コントラストイメージング装置の第二の格子を作成するために、まず半導体基板の表面に深く狭い線形凹部を狭い間隔で形成し、次いで電気メッキにより線形凹部に金を充填する技術がある。この技術は理論的には可能であるが、実際には、半導体基板の微小サイズで深さ対幅のアスペクト比が高い凹部に充填を行うことは困難な作業である。この充填が不均一であると、入射X線の吸収が不均一となって第二の格子のイメージング性能が低下する可能性がある。
【0005】
特許文献1に、定量的位相コントラスト画像を得るための干渉計の例が記載されている。特許文献2に、放射線位相画像撮影装置及びその構成部品である格子の例が記載されている。特許文献3に、半導体基板に高アスペクト比の凹部を形成する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許出願公開第2009/0092227号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2010/0061508号明細書
【特許文献3】特開2010−185728号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、半導体基板における微小サイズで高アスペクト比の凹部の電気メッキに関連する技術に係る。
【0008】
半導体基板の表面における深さ対幅のアスペクト比が高い凹部に従来の方法で電気メッキを施すと、メッキ金属イオンの一部が凹部の側壁に接触してメッキ金属の初期成長サイトを、その下方の領域にメッキ金属が完全に充填される前に、生成する可能性がある。凹部の側壁上に生成された初期成長サイトに蓄積し続けたメッキ金属は、凹部のそれら初期成長サイトの下方の領域がメッキ金属イオンと更に接触することを妨害するかもしれない。この妨害により、凹部の内側、特に凹部の底部分に堆積したメッキ金属の様々な領域に空隙が残る可能性がある。
【0009】
微小サイズで深さ対幅のアスペクト比が高い凹部に電気メッキを施す技術は、高コントラストのX線格子の作製に適用される。深く狭い線形凹部を狭い間隔で配列したアレイを半導体基板に形成し、次いで、金などのX線吸収能が高い金属を電気メッキにより線形凹部に充填することができる。結果として得られた構造は、平坦な半導体バッキング上に垂直に交互に立ち並んだ半導体材料(即ち、X線透過部)の薄層及び金(即ち、X線吸収部)の薄層を含む。
【0010】
線形凹部内に充填されたX線吸収金属の高さ及び均一性は、格子の性能に影響を及ぼす。例えば、X線吸収部(例えば、Au)の高さ方向に沿って空隙が存在すると、X線の吸収が不十分となり、多くのX線が格子の裏側に漏れて格子のイメージングコントラストが低下する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本明細書で説明するように、半導体基板に狭い間隔で配列された深さ対幅のアスペクト比が高い凹部に電気メッキ技術を用いてメッキ金属を中実かつ均一に充填するために、メッキ金属の初期成長サイトが凹部側表面よりも凹部底表面によく生成されるように、凹部側表面の形成前又は形成後に、凹部底表面上に表面プロファイル特徴部を形成する工程を行う。
【0012】
一般に、より多くの及び/又はより鋭い突起形状を有する凹部底表面上の粗い表面テクスチャは、平滑な側表面よりもメッキ金属イオンに対する誘引性が高い。この粗い表面テクスチャにより、メッキが凹部側表面に沿って上方に進行する前に凹部の底部分にメッキ金属を完全に充填することができる。本明細書では、凹部底表面上に粗い表面テクスチャ及び/又は突起を有する高アスペクト比の凹部を形成するためのいくつかの技術を説明する。
【0013】
また、半導体の表面において所定体積のメッキ溶液に対する接触表面積が大きいほど、メッキ金属イオンを誘引してメッキ金属の初期成長サイトを生成させる可能性が高い。したがって、凹部の平面寸法を変えないで凹部底表面の表面積を拡張する(例えば、凹部上部開口から離れる方向に凹部底表面を曲げる)ことにより、メッキ金属の初期成長サイトが凹部底表面上に生成される可能性を高めることができる。その結果、凹部の底部分のメッキ金属に空隙が形成される可能性が低くなる。本明細書では、凹部側表面と凹部底表面とが交わる位置にある平面から離れる方向に曲がった凹部底表面を有する高アスペクト比の凹部を形成するための技術も説明する。
【0014】
一態様において、本発明に係る方法は、上部開口と底表面と一つ以上の側表面とを有する凹部を半導体基板の第一の表面に形成する凹部形成工程であって、メッキ金属イオンを含むメッキ環境に半導体基板が曝露されたときに凹部の底表面が供するメッキ領域の活性を凹部の側表面が供するメッキ領域の活性よりも実質的に高める作用を有する拡張表面積又は粗面化表面テクスチャを有する表面プロファイル特徴部を凹部底表面上に形成する表面プロファイル特徴部形成工程を含む、凹部形成工程と、凹部が形成された半導体基板をメッキ環境に曝露して、メッキ金属導体の初期成長サイトを凹部底表面上に生成させ、メッキ金属導体を凹部底表面から凹部側表面に沿って成長させて凹部に充填する、メッキ工程と、を含む。
【0015】
いくつかの実施態様において、本発明に係る方法は、メッキ工程より前に、凹部底表面と凹部側表面の凹部底表面に隣接する最下部とを露出させたまま凹部側表面を部分的に覆う絶縁体被覆を半導体基板の第一の表面上に形成する、絶縁体被覆形成工程を更に含む。
【0016】
いくつかの実施態様において、凹部底表面の表面プロファイル特徴部は、凹部底表面上に形成された複数のシリコン針状体から成る。
【0017】
いくつかの実施態様において、凹部形成工程は、第一のエッチングプロセスを用いるエッチングを半導体基板の第一の表面に施して凹部側表面を実質的に平坦かつ平滑な端表面において終端するように形成する、第一のエッチング工程を更に含み、表面プロファイル特徴部形成工程は、第一のエッチング工程が完了した後に、第二のエッチングプロセスを用いるドライエッチングを凹部内の実質的に平坦かつ平滑な端表面に施して凹部内の端表面上に複数の突起を形成する、第二のエッチング工程を更に含み、複数の突起が形成された端表面が凹部底表面となる。
【0018】
いくつかの実施態様において、第一のエッチングプロセスは、第一のエッチングレシピを用いるボッシュプロセスであり、第二のエッチングプロセスは、第二のエッチングレシピを用いるボッシュプロセスであり、第二のエッチングレシピは、第一のエッチングレシピよりも多くの粒子を凹部底表面上に堆積させる作用を有する。
【0019】
いくつかの実施態様において、第一のエッチングレシピでは、第一の濃度のC4F8ガスを含むパッシベーションガス混合物を第一のエッチングプロセスの各パッシベーションサイクルにおいて用い、第二のエッチングレシピでは、第一の濃度よりも高い第二の濃度のC4F8ガスを含むパッシベーションガス混合物を第二のエッチングプロセスの各パッシベーションサイクルにおいて用いる。
【0020】
いくつかの実施態様において、第一のエッチングレシピでは、第一のエッチング継続時間を第一のエッチングプロセスの各エッチングサイクルにおいて用い、第二のエッチングレシピでは、第一のエッチング継続時間よりも短い第二のエッチング継続時間を第二のエッチングプロセスの各エッチングサイクルにおいて用いる。
【0021】
いくつかの実施態様において、第一のエッチングレシピでは、第一のパッシベーション継続時間を第一のエッチングプロセスの各パッシベーションサイクルにおいて用い、第二のエッチングレシピでは、第一のパッシベーション継続時間よりも長い第二のパッシベーション継続時間を第二のエッチングプロセスの各パッシベーションサイクルにおいて用いる。
【0022】
いくつかの実施態様において、凹部形成工程は、半導体基板の第一の表面に形成する予定の凹部の位置及び平面寸法を決める開口部を有するマスク層を半導体基板の第一の表面上に形成する、マスク層形成工程と、半導体基板の第一の表面にマスク層開口部を介して異方性エッチングを施して、凹部底表面上に形成する予定の表面プロファイル特徴部と同じ表面プロファイル特徴部を有する内面を有するキャビティを半導体基板の第一の表面に形成する、第一のエッチング工程と、第一のエッチング工程が完了した後に、半導体基板の第一の表面に形成する予定の凹部の上部開口を含む平面に対して垂直な方向にキャビティ内面に異方性エッチングを施して、凹部側表面と表面プロファイル特徴部を有する凹部底表面とを形成する、第二のエッチング工程と、を更に含む。
【0023】
いくつかの実施態様において、半導体基板は、シリコン単結晶から成るシリコン基板であり、シリコン基板の上面は、シリコン単結晶の(100)面であり、凹部は、長手方向がシリコン単結晶の[011]方向に沿っている線形の凹部である。
【0024】
いくつかの実施態様において、第一のエッチング工程で行う異方性エッチングは、KOH又はTMAH溶液を用いるウェットエッチングである。
【0025】
いくつかの実施態様において、第二のエッチング工程で行う異方性エッチングは、プラズマエッチャントを用いるドライエッチングである。
【0026】
いくつかの実施態様において、凹部底表面は、シリコン単結晶の{111}面に沿っていて凹部底表面の中央の直線において互いに交わる二つの平坦な小面を含む。
【0027】
いくつかの実施態様において、半導体基板は、シリコン単結晶から成るシリコン基板であり、シリコン基板の上面は、シリコン単結晶の(110)面であり、凹部は、長手方向がシリコン単結晶の[211]方向に沿っている線形の凹部である。
【0028】
いくつかの実施態様において、第二のエッチング工程で行う異方性エッチングは、KOH又はTMAH溶液を用いるウェットエッチングである。
【0029】
いくつかの実施態様において、凹部側表面は、シリコン単結晶の{111}面に沿っていて、凹部底表面は、シリコン単結晶の{111}面に沿っていて凹部底表面の中央の直線において互いに交わる二つの平坦な小面を含む。
【0030】
いくつかの実施態様において、凹部形成工程は、半導体基板の第一の表面に形成する予定の凹部の位置及び平面寸法を決める開口部であって真直側壁を有する開口部を有するフォトレジスト層を半導体基板の第一の表面上に形成する、フォトレジスト層形成工程と、フォトレジスト層をアニーリングして、真直側壁を有する開口部を変形させて開口部の内側方向へ湾曲した側壁を有する開口部とする、アニーリング工程と、湾曲した側壁を有する開口部を介して半導体基板の第一の表面にエッチングを施して、上部開口及び上部開口から離れる方向に湾曲した内面を有するキャビティを半導体基板の第一の表面に形成する、第一のエッチング工程と、第一のエッチング工程が完了した後に、キャビティ上部開口を含む平面に対して垂直な方向にキャビティ内面を介して半導体基板にエッチングを施して、凹部側表面と凹部上部開口から離れる方向に湾曲した凹部底表面とを形成する、第二のエッチング工程と、を更に含み、凹部底表面の湾曲が拡張表面積を供する。
【0031】
いくつかの実施態様において、半導体基板は、シリコン酸化物層とシリコン層とを含む。
【0032】
いくつかの実施態様において、キャビティはシリコン酸化物層に形成され、凹部はシリコン酸化物層の下のシリコン層に形成される。
【0033】
いくつかの実施態様において、第二のエッチング工程はボッシュプロセスを用いて行われ、シリコン酸化物層はボッシュプロセス用のマスク層となる。
【0034】
いくつかの実施態様において、凹部形成工程は、半導体基板の第一の表面上にフォトレジスト層を形成する、フォトレジスト層形成工程と、グレースケールマスクを用いてフォトレジスト層をパターニングして、半導体基板の第一の表面に形成する予定の凹部の位置及び平面寸法を決める薄層部であって薄層部の基部より上方に突き出た一つ以上の突起を呈する厚さプロファイルを有する薄層部をフォトレジスト層に形成する、薄層部形成工程と、パターニングされたフォトレジスト層を介して半導体基板の第一の表面にエッチングを施して、パターニングされたフォトレジスト層の厚さプロファイルに合致する一つ以上の突起を含む内面を有するキャビティを半導体基板の第一の表面に形成する、第一のエッチング工程と、第一のエッチング工程が完了した後に、キャビティの上部開口を含む平面に対して垂直な方向にキャビティ内面を介して半導体基板にエッチングを施して、凹部側表面とキャビティ内面に形成されていた一つ以上の突起に合致する一つ以上の突起を含む凹部底表面と、を形成する、第二のエッチング工程と、を更に含む。
【0035】
いくつかの実施態様において、半導体基板は、シリコン酸化物層とシリコン層とを含む。
【0036】
いくつかの実施態様において、キャビティはシリコン酸化物層に形成され、凹部はシリコン酸化物層の下のシリコン層に形成される。
【0037】
いくつかの実施態様において、第二のエッチング工程はボッシュプロセスを用いて行われ、シリコン酸化物層はボッシュプロセス用のマスク層となる。
【0038】
いくつかの実施態様において、凹部底表面は、凹部底表面の中央に単一の尖った突起を有する。
【0039】
いくつかの実施態様において、凹部底表面は、不規則に配置された突起を有する。
【0040】
いくつかの実施態様において、凹部底表面は、複数の突起の周期的アレイを有する。
【0041】
いくつかの実施態様において、凹部の深さと凹部底表面の幅とのアスペクト比は10:1乃至100:1である。
【0042】
いくつかの実施態様において、本方法により、半導体基板に上述の凹部を含む複数の凹部の周期的アレイが形成され、複数の凹部のそれぞれの底から上にメッキ金属導体が充填される。
【0043】
いくつかの実施態様において、凹部は、凹部側表面に沿って30μm乃至200μmの深さを有し、凹部底表面に沿って2μm乃至20μmの幅を有する。
【0044】
いくつかの実施態様において、凹部は、約100μmの深さと約3μmの幅とを有する。
【0045】
いくつかの実施態様において、メッキ金属導体は金である。
【0046】
いくつかの実施態様において、半導体基板はシリコンを含む。
【0047】
いくつかの実施態様において、表面プロファイル特徴部形成工程は、凹部底表面上に複数のシリコン針状体を形成する工程を含む。
【0048】
いくつかの実施態様において、表面プロファイル特徴部形成工程は、凹部底表面上に複数の突起を形成する工程を含む。
【0049】
いくつかの実施態様において、表面プロファイル特徴部形成工程は、凹部底表面上に単一の尖った突起を形成する工程を含む。
【0050】
いくつかの実施態様において、表面プロファイル特徴部形成工程は、凹部上部開口から離れる方向に曲がった凹部底表面を形成する工程を含む。
【0051】
いくつかの実施態様において、凹部上部開口から離れる方向に曲がった凹部底表面は、ある角度で互いに交わる二つ以上の平坦な小面を含む。
【0052】
いくつかの実施態様において、凹部上部開口から離れる方向に曲がった凹部底表面は、凹部上部開口から離れる方向に滑らかに湾曲した表面を含む。
【0053】
いくつかの実施態様において、表面プロファイル特徴部形成工程は、凹部側表面及び凹部底表面を覆う絶縁体被覆を半導体基板の第一の表面上に形成する、絶縁体被覆形成工程と、絶縁体被覆に対するエッチング速度よりも半導体基板に対するエッチング速度が高いドライエッチャントを用いるエッチングを凹部底表面に形成された絶縁体被覆に施して、凹部側表面に絶縁体被覆を残したままドライエッチャントにより凹部底表面から絶縁体被覆を完全に除去して凹部底表面を凹部上部開口から離れる方向に曲げる、エッチング工程と、を更に含む。
【0054】
一態様において、本発明に係る装置は、一つ以上の凹部が形成された半導体基板を含み、前記凹部は、凹部底表面と一つ以上の凹部側表面とを有し、前記凹部底表面は、前記凹部の深さよりも短い複数の突起を含み、前記凹部には、前記凹部底表面上に存在する前記複数の突起上に初期成長サイトを有するメッキ金属導体が充填されている。
【0055】
いくつかの実施態様において、凹部の深さと凹部底表面の幅とのアスペクト比は10:1乃至100:1である。
【0056】
いくつかの実施態様において、本装置はX線格子であり、一つ以上の凹部内に存在するメッキ金属導体と、一つ以上の凹部の間に存在する半導体材料と、により、X線格子の線形回析要素の周期的アレイが形成される。
【0057】
いくつかの実施態様において、一つ以上の凹部内に存在するメッキ金属導体は、線形形状の周期的アレイを形成し、各線形形状は、凹部側表面に対して垂直な平面において10mm乃至50mmの長さ及び2μm乃至3μmの幅を有し、線形形状の周期的アレイは、4μm乃至6μmのピッチを有する。
【0058】
いくつかの実施態様において、各凹部は、凹部側表面に沿って30μm乃至200μmの深さを有し、凹部底表面に沿って2μm乃至20μmの幅を有する。
【0059】
いくつかの実施態様において、各凹部は、約100μmの深さと約3μmの幅とを有する。
【0060】
いくつかの実施態様において、メッキ金属導体は金である。
【0061】
いくつかの実施態様において、半導体基板はシリコンを含む。
【0062】
いくつかの実施態様において、凹部底表面上の複数の突起は、凹部底表面上に形成された複数のシリコン針状体から成る。
【0063】
いくつかの実施態様において、凹部側表面は、絶縁体被覆により部分的に覆われていて、絶縁体被覆は、凹部側表面の凹部底表面に隣接する最下部を凹部内のメッキ金属導体に対して露出させている。
【0064】
別の態様において、本発明に係る装置は、複数の凹部が形成された半導体基板を含み、複数の凹部のそれぞれは、凹部上部開口と凹部底表面と一つ以上の凹部側表面とを有し、複数の凹部は、半導体基板において周期的アレイを形成していて、凹部底表面は、凹部上部開口から離れる方向に曲がって半導体基板内へ窪みを形成していて、凹部側表面と凹部底表面とが交わる位置にある平面からの窪みの深さは凹部の幅の少なくとも3分の1である。
【0065】
いくつかの実施態様において、凹部底表面は、メッキ金属導体により覆われていて、メッキ金属導体は、凹部底表面上の初期成長サイトから上に凹部側表面に沿って凹部に充填されている。
【0066】
いくつかの実施態様において、メッキ金属導体が充填された凹部の周期的アレイは、X線回折格子として用いられるために適した寸法を有する。
【0067】
いくつかの実施態様において、各凹部は、10mm乃至50mmの長さと2μm乃至3μmの幅と100μm乃至200μmの深さとを有し、周期的アレイは、4μm乃至6μmのピッチを有する。
【0068】
いくつかの実施態様において、凹部側表面は、絶縁体被覆により部分的に覆われていて、絶縁体被覆は、凹部側表面の凹部底表面に隣接する最下部を凹部内に存在するメッキ金属導体に対して露出させている。
【0069】
いくつかの実施態様において、凹部底表面は、ある角度で互いに交わる二つ以上の平坦な小面を含む。
【0070】
いくつかの実施態様において、凹部底表面は、凹部上部開口から離れる方向に滑らかに湾曲した表面を含む。
【0071】
いくつかの実施態様において、凹部の深さと凹部底表面の幅とのアスペクト比は10:1乃至100:1である。
【0072】
いくつかの実施態様において、各凹部は、凹部側表面に沿って30μm乃至200μmの深さを有し、凹部底表面に沿って2μm乃至20μmの幅を有する。
【0073】
別の態様において、本発明に係る装置は、複数の凹部が形成された半導体基板を含み、複数の凹部のそれぞれは、凹部上部開口と凹部底表面と一つ以上の凹部側表面とを有し、複数の凹部は、半導体基板において周期的アレイを形成していて、凹部底表面は凹部上部開口に近づく方向に突出した一つ以上の突起を有する。
【0074】
いくつかの実施態様において、凹部底表面は、メッキ金属導体により覆われていて、メッキ金属導体は、凹部底表面上の初期成長サイトから上に凹部側表面に沿って凹部に充填されている。
【0075】
いくつかの実施態様において、メッキ金属導体が充填された凹部の周期的アレイは、X線回折格子として用いられるために適した寸法を有する。
【0076】
いくつかの実施態様において、凹部内に存在するメッキ金属導体は、凹部底表面上の一つ以上の突起の頂点上に初期成長サイトを有する。
【0077】
いくつかの実施態様において、凹部側表面は、絶縁体被覆により部分的に覆われていて、絶縁体被覆は、凹部側表面の凹部底表面に隣接する最下部を凹部内に存在するメッキ金属導体に対して露出させている。
【0078】
いくつかの実施態様において、凹部底表面は、凹部底表面の中央又は中央付近の頂点で互いに交わる二つ以上の平坦な小面を含む。
【0079】
いくつかの実施態様において、凹部の深さと凹部底表面の幅とのアスペクト比は10:1乃至100:1である。
【0080】
いくつかの実施態様において、各凹部は、凹部側表面に沿って30μm乃至200μmの深さを有し、凹部底表面に沿って2μm乃至20μmの幅を有する。
【0081】
いくつかの実施態様において、凹部底表面上の一つ以上の突起は、凹部底表面上に形成された複数のシリコン針状体から成る。
【0082】
いくつかの実施態様において、各凹部は、10mm乃至50mmの長さと2μm乃至3μmの幅と100μm乃至200μmの深さとを有し、周期的アレイは、4μm乃至6μmのピッチを有する。
【0083】
別の態様において、本発明に係るX線回折装置は、X線放射源と、画像検出器と、X線放射源と画像検出器との間に配置された第一のX線格子と、第一のX線格子と画像検出器との間に配置された第二のX線格子と、を含み、第一のX線格子は、第一のX線格子のそれぞれ異なる部分を通過する複数のX線束の間に所定の位相差を生じさせるように構成され、第二のX線格子は、第一のX線格子を通過した複数のX線束に振幅干渉を生じさせるように構成され、第二のX線格子は、一つ以上の凹部が形成された半導体基板を含み、凹部は、凹部底表面と一つ以上の凹部側表面とを有し、凹部底表面は、複数の突起を含み、各凹部には、各凹部底表面上に存在する複数の突起上に初期成長サイトを有するメッキ金属導体が充填されている。
【0084】
様々な実施態様において、本明細書に記載の技術は、以下の利点の一つ以上を提供する。
【0085】
いくつかの実施態様において、本明細書に記載の技術を用いて、半導体基板に線形凹部の周期的アレイを形成し、電気メッキにより線形凹部にX線吸収金属(例えば、金)を均一かつ中実に充填することができる。結果として得られる構造は、X線回折格子として用いられるために適した寸法を有することができる。金属が充填された凹部により提供されるX線吸収は、格子の全体に亘って極めて均一であり、このX線格子を用いて作られたX線イメージング装置において、良好な精度及びコントラストを得ることができる。
【0086】
本明細書に記載の主題の一つ以上の実施態様の詳細を、添付の図面及び以下の説明に記載する。主題の他の特長、態様、及び利点は、説明、図面、及び特許請求の範囲から明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1A】格子を用いた位相コントラストイメージングのためのX線干渉計の概略図である。
【図1B】半導体基板に形成された格子の概略平面図である。
【図1C】半導体基板に形成された格子の概略側面図である。
【図2A】半導体基板内の高アスペクト比の凹部に充填されるメッキ金属に望ましくない空隙が形成される従来技術を示す図である。
【図2B】半導体基板内の高アスペクト比の凹部に充填されるメッキ金属に望ましくない空隙が形成される従来技術を示す図である。
【図2C】半導体基板内の高アスペクト比の凹部に充填されるメッキ金属に望ましくない空隙が形成される従来技術を示す図である。
【図2D】半導体基板内の高アスペクト比の凹部に充填されるメッキ金属に望ましくない空隙が形成される従来技術を示す図である。
【図2E】半導体基板内の高アスペクト比の凹部に充填されるメッキ金属に望ましくない空隙が形成される従来技術を示す図である。
【図2F】半導体基板内の高アスペクト比の凹部に充填されるメッキ金属に望ましくない空隙が形成される従来技術を示す図である。
【図3A】凹部側表面よりも凹部底表面上のメッキ条件を良くする底表面プロファイル特徴部を有する、深さ対幅アスペクト比が高い凹部の例を示す図である。
【図3B】凹部側表面よりも凹部底表面上のメッキ条件を良くする底表面プロファイル特徴部を有する、深さ対幅アスペクト比が高い凹部の例を示す図である。
【図3C】凹部側表面よりも凹部底表面上のメッキ条件を良くする底表面プロファイル特徴部を有する、深さ対幅アスペクト比が高い凹部の例を示す図である。
【図3D】凹部側表面よりも凹部底表面上のメッキ条件を良くする底表面プロファイル特徴部を有する、深さ対幅アスペクト比が高い凹部の例を示す図である。
【図4A】異なる凹部底表面プロファイルを有する深さ対幅のアスペクト比が高い凹部の例の内側における、メッキ金属の初期成長サイトの生成状態を示す図である。
【図4B】異なる凹部底表面プロファイルを有する深さ対幅のアスペクト比が高い凹部の例の内側における、メッキ金属の初期成長サイトの生成状態を示す図である。
【図4C】異なる凹部底表面プロファイルを有する深さ対幅のアスペクト比が高い凹部の例の内側における、メッキ金属の初期成長サイトの生成状態を示す図である。
【図5A】凹部上部開口から離れる方向に屈曲した凹部底表面を有する、深さ対幅のアスペクト比が高い凹部(例えば、図3Aに示す凹部)を半導体基板に形成する方法の第一の例を示す図である。
【図5B】凹部上部開口から離れる方向に屈曲した凹部底表面を有する、深さ対幅のアスペクト比が高い凹部(例えば、図3Aに示す凹部)を半導体基板に形成する方法の第一の例を示す図である。
【図5C】凹部上部開口から離れる方向に屈曲した凹部底表面を有する、深さ対幅のアスペクト比が高い凹部(例えば、図3Aに示す凹部)を半導体基板に形成する方法の第一の例を示す図である。
【図6A】凹部上部開口から離れる方向に屈曲した凹部底表面を有する、深さ対幅のアスペクト比が高い凹部(例えば、図3Aに示す凹部)を半導体基板に形成する方法の第二の例を示す図である。
【図6B】凹部上部開口から離れる方向に屈曲した凹部底表面を有する、深さ対幅のアスペクト比が高い凹部(例えば、図3Aに示す凹部)を半導体基板に形成する方法の第二の例を示す図である。
【図6C】凹部上部開口から離れる方向に屈曲した凹部底表面を有する、深さ対幅のアスペクト比が高い凹部(例えば、図3Aに示す凹部)を半導体基板に形成する方法の第二の例を示す図である。
【図7A】凹部上部開口から離れる方向に湾曲した凹部底表面を有する、深さ対幅のアスペクト比が高い凹部(例えば、図3Bに示す凹部)を半導体基板に形成する方法の例を示す図である。
【図7B】凹部上部開口から離れる方向に湾曲した凹部底表面を有する、深さ対幅のアスペクト比が高い凹部(例えば、図3Bに示す凹部)を半導体基板に形成する方法の例を示す図である。
【図7C】凹部上部開口から離れる方向に湾曲した凹部底表面を有する、深さ対幅のアスペクト比が高い凹部(例えば、図3Bに示す凹部)を半導体基板に形成する方法の例を示す図である。
【図7D】凹部上部開口から離れる方向に湾曲した凹部底表面を有する、深さ対幅のアスペクト比が高い凹部(例えば、図3Bに示す凹部)を半導体基板に形成する方法の例を示す図である。
【図7E】凹部上部開口から離れる方向に湾曲した凹部底表面を有する、深さ対幅のアスペクト比が高い凹部(例えば、図3Bに示す凹部)を半導体基板に形成する方法の例を示す図である。
【図8A】凹部上部開口に近づく方向に屈曲して単一の尖った突起が存在する凹部底表面を有する、深さ対幅のアスペクト比が高い凹部(例えば、図3Cに示す凹部)を半導体基板に形成する方法の例を示す図である。
【図8B】凹部上部開口に近づく方向に屈曲して単一の尖った突起が存在する凹部底表面を有する、深さ対幅のアスペクト比が高い凹部(例えば、図3Cに示す凹部)を半導体基板に形成する方法の例を示す図である。
【図8C】凹部上部開口に近づく方向に屈曲して単一の尖った突起が存在する凹部底表面を有する、深さ対幅のアスペクト比が高い凹部(例えば、図3Cに示す凹部)を半導体基板に形成する方法の例を示す図である。
【図9A】尖った突起がいくつか存在する凹部底表面を有する、深さ対幅のアスペクト比が高い凹部(例えば、図3Cに示す凹部の変形例)を半導体基板に形成する方法の例を示す図である。
【図9B】尖った突起がいくつか存在する凹部底表面を有する、深さ対幅のアスペクト比が高い凹部(例えば、図3Cに示す凹部の変形例)を半導体基板に形成する方法の例を示す図である。
【図9C】尖った突起がいくつか存在する凹部底表面を有する、深さ対幅のアスペクト比が高い凹部(例えば、図3Cに示す凹部の変形例)を半導体基板に形成する方法の例を示す図である。
【図10A】多数の針状体が存在する粗い凹部底表面を有する、深さ対幅のアスペクト比が高い凹部(例えば、図3Dに示す凹部)を半導体基板に形成する方法の例を示す図である。
【図10B】多数の針状体が存在する粗い凹部底表面を有する、深さ対幅のアスペクト比が高い凹部(例えば、図3Dに示す凹部)を半導体基板に形成する方法の例を示す図である。
【図10C】多数の針状体が存在する粗い凹部底表面を有する、深さ対幅のアスペクト比が高い凹部(例えば、図3Dに示す凹部)を半導体基板に形成する方法の例を示す図である。
【図11A】深さ対幅のアスペクト比が高い凹部(例えば、図3A〜3Dのそれぞれに示す凹部)に電気メッキを施して凹部の底から上に金属を充填する方法の例を示す図である。
【図11B】深さ対幅のアスペクト比が高い凹部(例えば、図3A〜3Dのそれぞれに示す凹部)に電気メッキを施して凹部の底から上に金属を充填する方法の例を示す図である。
【図11C】深さ対幅のアスペクト比が高い凹部(例えば、図3A〜3Dのそれぞれに示す凹部)に電気メッキを施して凹部の底から上に金属を充填する方法の例を示す図である。
【図12A】凹部上部開口から離れる方向に屈曲した露出した凹部底表面と絶縁体被覆により全体的に覆われた凹部側表面とを有する、深さ対幅のアスペクト比が高い凹部を半導体基板に形成する方法の例を示す図である。
【図12B】凹部上部開口から離れる方向に屈曲した露出した凹部底表面と絶縁体被覆により全体的に覆われた凹部側表面とを有する、深さ対幅のアスペクト比が高い凹部を半導体基板に形成する方法の例を示す図である。
【図12C】凹部上部開口から離れる方向に屈曲した露出した凹部底表面と絶縁体被覆により全体的に覆われた凹部側表面とを有する、深さ対幅のアスペクト比が高い凹部を半導体基板に形成する方法の例を示す図である。
【図12D】凹部上部開口から離れる方向に屈曲した露出した凹部底表面と絶縁体被覆により全体的に覆われた凹部側表面とを有する、深さ対幅のアスペクト比が高い凹部を半導体基板に形成する方法の例を示す図である。
【図12E】凹部上部開口から離れる方向に屈曲した露出した凹部底表面と絶縁体被覆により全体的に覆われた凹部側表面とを有する、深さ対幅のアスペクト比が高い凹部を半導体基板に形成する方法の例を示す図である。
【図12F】凹部上部開口から離れる方向に屈曲した露出した凹部底表面と絶縁体被覆により全体的に覆われた凹部側表面とを有する、深さ対幅のアスペクト比が高い凹部を半導体基板に形成する方法の例を示す図である。
【0088】
図面において、層及び形状部分の多くは加工工程及びその結果をより明瞭に示すために誇張されて描かれている。それぞれの図面における同様の参照符号は同様の要素を示す。
【発明を実施するための形態】
【0089】
半導体基板に微小サイズで高アスペクト比の凹部を製作するための技術を、X線位相コントラストイメージング装置内のX線格子の製造に用いることができる。X線位相コントラストイメージング法は、X線束が試料の各部分を透過する際に生じるX線位相シフトについての情報をX線吸収量についての情報に加えて利用するものである。図1Aは、位相コントラストイメージング用の、格子を用いたX線干渉計100の概略図である。
【0090】
図1Aに示すように、干渉計100は、最も基本的な構成部品として、撮像される被写体106(例えば、生体組織試料)と画像検出器108との間に配置された二つの格子102及び104を含む。また、干渉計100は、被写体106の上流側に一つ以上の放射源110を含む。放射源110は、被写体106に向けてX線を放射する。X線束が被写体106を透過する際に、X線束の位相及び振幅が被写体106の内部構造により変化する。いくつかの実施態様において、X線源110がコヒーレントな放射源でない場合に、被写体106とX線源110との間に第三の格子(不図示)を配置して、空間的にコヒーレントな複数の放射源を形成することができる。
【0091】
第一の格子102は、透過X線の吸収能が低く位相シフトが大きい構造体であり、概ね数十μmのピッチを有する。第一の格子102は、平坦な半導体基板(例えば、シリコンウエハ)から作製されることができ、平行な線形凹部112(例えば、溝)が表面に形成されている。線形凹部112の深さは、線形凹部112を透過するX線束と、互いに隣接する線形凹部112を分離する半導体材料を透過するX線束と、の間に所定の位相差(例えば、π)が生じるように選択される。例えば、エネルギーレベル40keVに相当する波長のX線束に位相シフトπを生じさせる凹部112の深さは、約25μmである。
【0092】
第二の格子104は、第一の格子102を通過したX線束に振幅干渉を生じさせる。第二の格子104は、交互に配列されたX線透過部(即ち、X線低吸収能部)とX線高吸収能部とを含む。第二の格子104は、平坦な半導体基板(例えば、シリコンウエハ)から作製されることができ、平行な線形凹部114(例えば、溝)が表面に形成されている。線形凹部114には、X線吸収能が高い材料(例えば、金)が充填されている。凹部114内に充填された材料(例えば、金)により吸収可能なX線量は、凹部114内に充填された材料の厚さに依存する。したがって、凹部114内に充填された材料の厚さが、第二の格子104を通過した回折X線束により形成される画像のコントラストを決定する。
【0093】
図1Bは、半導体基板116(例えば、シリコンウエハ)に形成された第二の格子104の例の平面図である。第二の格子104は、線形凹部114(例えば、真直側壁を有する溝)の周期的アレイを含む。線形凹部114には、X線吸収能が高い材料(例えば、Au)が充填されている。線形凹部114の幅w(即ち、線形凹部114内に充填されたX線吸収材料の幅w)は、概ね1μm乃至数μm(例えば、1.5μm、2μm、又は3μm)であってもよい。線形凹部114の長さl1(即ち、線形凹部114内に充填されたX線吸収材料の長さl1)は、線形凹部114の幅wよりも遥かに大きくてもよい。例えば、線形凹部114の長さは、基板116のサイズや干渉計100について要求されるイメージングエリアにより、数十mm乃至数百mm程度(例えば、30mm、60mm、100mm、又は200mm)であってもよい。
【0094】
格子の横寸法l2は、線形凹部114の長さl1と同様であってもよく、例えば線形凹部114の長さl1に等しくてもよい。線形凹部114の周期的アレイのピッチpは、線形凹部114の幅wの約2倍であってもよい。互いに隣接する線形凹部114の間の半導体材料120の幅w’も、概ね1μm乃至数μm(例えば、1.5μm、2μm、又は3μm)である。
【0095】
図1Bに示すように、各線形凹部114は、半導体基板116の表面に垂直な二つの垂直側壁を有する。これら二つの垂直側壁の間の距離が、半導体基板116の表面に平行な平面における線形凹部114の幅wである。半導体ウエハに形成された各線形凹部114は、別の二つの対向する垂直側壁も有し、これら二つの対向する垂直側壁の間の距離が、線形凹部114の長さl1である。
【0096】
図1Cは、第二の格子104の例の概略側面図である。この側面図は、図1Bに示す半導体基板116を半導体基板116の表面124と線形凹部114の長手方向とに直交する平面で切った断面図に相当する。図1Cに示すように、線形凹部114は、実質的に平坦で半導体基板116の表面124に垂直な側壁122を有する。半導体基板116の表面124からの線形凹部114の深さdは、線形凹部114内に充填されたX線吸収材料118(例えば、Au)の厚さ又は高さでもある。X線吸収材料118の厚さ又は高さdが第二の格子104により得られるイメージングコントラストを決定し、厚さdが大きいとイメージングコントラストが高い。所定のイメージングコントラストを得るために必要なX線吸収材料の厚さdは、X線束のエネルギーが高いほど大きい。いくつかの実施態様において、半導体基板116の表面124内に刻まれた線形凹部114の深さd(即ち、X線吸収材料118の厚さd)は、数十μm乃至数百μm程度(例えば、25μm乃至200μm、50μm、100μm、又は200μm)である。
【0097】
図1Cに示すように、線形凹部114は、半導体基板116の全厚に亘って形成されてはいない。格子層126(即ち、半導体材料120(例えば、Si)とX線吸収材料118(例えば、Au)とが交互に配列されている層)の下に、半導体材料層が残存している。格子層126の下に残存する半導体材料層の厚さは、格子層126が形成されている半導体ウエハ116の元来の厚さに依存していてもよい。いくつかの実施態様において、残存する半導体材料層がその上の格子層126を構造的に十分に支持する限り、半導体ウエハ116を片側又は両側から薄くしてもよい。
【0098】
図1Cに示す側面図は、線形凹部114を、半導体基板116の上面に形成された、深さ対幅(d:w)のアスペクト比が高い凹部として示している。線形凹部114の深さ(X線吸収材料118の高さ)対幅のアスペクト比d:wは、様々な実施態様において、10:1乃至200:1程度(例えば、20:1、50:1、100:1、200:1等)であってもよい。異なる視点から見ると、格子層126を、X線透過半導体材料(例えば、Si)層120とX線吸収材料(例えば、Au)層118とが交互に配列されたものと見ることができる。各層は、半導体基板116の上面124に垂直な平面において平面寸法l1×dを有する。X線透過層(即ち半導体材料層120)は小さい厚さw’を有し、X線吸収層(即ち金層118)は小さい厚さwを有する。
【0099】
理想的には、X線吸収材料(例えば、金又は金合金)が、線形凹部114のアレイにおける各線形凹部114の底から上に全深dに亘って充填されている。実際には、半導体基板116に線形凹部114を形成した後に、X線吸収材料の金属イオンを含むメッキ環境(例えば、メッキ浴)に半導体基板116を置く。メッキ工程において、半導体基板116を負電位に保持してもよい。負に帯電した半導体基板116は、メッキ環境中の正に帯電した金属イオンを還元して半導体基板116の露出面上にメッキ金属として堆積させるための負電荷を与えることができる。
【0100】
微視的に見ると、メッキ工程中に、メッキ環境中のメッキ金属イオンの濃度が変動する可能性があり、半導体基板116の露出面上における負電荷の有効性が半導体基板116の露出面の全体に亘って常に均一ではない可能性がある。したがって、線形凹部114の露出した側表面よりも線形凹部114の底表面の方がメッキ金属イオンに対する誘引性が高いように工夫しないと、メッキ金属の初期成長サイトは線形凹部114の露出した側表面上に生成される可能性が統計的に高く、この傾向は線形凹部114の深さ対幅のアスペクト比が高いときに顕著である。
【0101】
図2Aに示すように、半導体基板200内の平坦な底を有する半導体凹部202を金イオンを含むメッキ環境204に曝露すると、金の初期堆積サイト206は凹部202の側表面208上に生成される可能性が高い。金の初期堆積サイト210が底表面212上にもほぼ同時に生成されたとしても、側表面208上の初期堆積サイト206からのメッキ金属の成長により、成長サイト206の下方の領域にメッキ金属が完全に充填される前に凹部202の全幅が速やかに塞がれて、成長サイト206の下方の領域がメッキ環境204と更に接することが妨害される可能性が高い。それにより、側表面208上の初期堆積サイト206の下方において、凹部202内に空隙214(即ち、凹部202内で未充填のまま残された領域)が形成される。
【0102】
凹部202の側表面208上の複数の初期堆積サイト206からメッキ金属が成長し続けると、より多くの空隙が凹部202の深さ方向に沿って形成される可能性がある。上述の問題は、凹部202の深さ対幅のアスペクト比が高いときに特に深刻である。このようなメッキ方法で作製されたX線格子(図1A〜1Cに示す第二の格子104等)は、線形凹部のそれぞれの吸収率が不均一であるので、X線格子のコントラスト及び精度が劣る。
【0103】
図2B〜2Fは、半導体基板内の高アスペクト比の凹部に電気メッキにより充填される金属に望ましくない空隙が形成されてしまう、別の従来技術を示す。まず、マスク226(例えば、線形の開口部224が形成されたシリコン酸化物層)の開口224を介して半導体基板222をエッチングすることにより、一つ以上の凹部220を形成する。図2Bに示すように、半導体基板222の平坦な表面228上にシリコン酸化物層226を設ける。次いで、シリコン酸化物層226に、半導体基板222に形成する予定の線形凹部と同じ長さ及び幅を有する開口224を形成する。
【0104】
次いで、ボッシュプロセスを用いて、深さ対幅のアスペクト比が高い凹部を半導体基板222に形成する。ボッシュプロセスは、短時間のエッチングサイクルとパッシベーションサイクルとを交互に繰り返す一連の工程を含み、数千サイクルのボッシュプロセスを用いて、深さ対幅のアスペクト比が最大で数百であるマイクロメートルオーダーの凹部を形成することができる。各ボッシュステップは、エッチングサイクルとそれに続くパッシベーションサイクルとを含む。まず、エッチングサイクルにおいて、エッチングガス混合物を用いて、エッチングガス混合物に曝露された半導体材料をエッチング除去する。次いで、パッシベーションサイクルにおいて、パッシベーションガス混合物を用いて、先のエッチングサイクルで新たに形成された凹部側壁及び凹部底表面上に保護層を形成する。その次のエッチングサイクルにおいて、エッチングガス混合物により、凹部底表面上に形成された保護層のみを貫いて選択的にエッチングを行うことでエッチングを半導体基板内へ少し深めて、少し延長された凹部側壁と新しい凹部底表面とを形成する。ボッシュステップを繰り返すことにより、深く狭い凹部を半導体基板に形成することができる(図2C参照)。このプロセスにより半導体基板内で基本的にエッチングが深さ方向に選択的に進むので、ボッシュプロセスによるエッチングは実質的に異方性のあるエッチングであるといえる。図面からは明らかでないが、ボッシュプロセスで得られた凹部は、ボッシュサイクルに起因する僅かな粗さ(スキャロップ)を凹部側表面上に有する。
【0105】
この従来技術において、メッキ金属の初期堆積サイトが凹部220の側表面上に生成されることを防止する試みを行う。図2Dに示すように、半導体基板222の凹部220の側壁232と底表面234とを含む露出表面全体の上に、例えば酸化物層230である絶縁体の薄い被覆を、例えばプラズマ化学気相成長法(PECVD)又は熱酸化法によって設ける。いくつかの実施態様において、絶縁体層230は、半導体基板222の上面の凹部220を取り囲む領域を覆う部分が他の部分よりも厚くてもよい。
【0106】
絶縁体層230を形成した後に、凹部220の底表面234をドライエッチングにより再露出させて、半導体基板222をメッキ環境に曝露した際に再露出している底表面234が最初にメッキされるようにする。しかしながら、従来技術では、凹部底表面を再露出させるために用いるエッチャント(例えば、CF4、CHF3)は、絶縁体被覆(例えば、SiO2)に対するエッチング速度の方がその下にある半導体材料(例えば、Si)に対するエッチング速度よりも高い。そのため、図2Eに示すように、ドライエッチングにより底表面234が再露出したときには、底表面234付近の側表面232も再露出している。また、エッチャントの半導体基板材料に対するエッチング速度が低いので、再露出した凹部底表面は実質的に平坦なままである。更に、ドライエッチングで生じたデブリが、底表面234付近の側表面232上に残る可能性もある。
【0107】
高アスペクト比の凹部を形成する方法(例えば、本例で用いるボッシュプロセス)で形成される凹部の底表面は一般に平滑で比較的平坦であるので、ドライエッチングにより底表面234が再露出したときに、露出した側表面232、特に側表面232のデブリ及び残存する絶縁体層230の縁付近の部分よりも、底表面234の方がメッキ金属イオンに対する誘引性が低くメッキ金属の堆積条件が劣っていることが多い。
【0108】
図2Fに示すように、図2Eに示す半導体基板222をメッキ環境に曝露してメッキを行うと、メッキ金属が底表面234付近の側表面232上にまず堆積して、それによる妨害のため、凹部220のメッキ金属238の下方の底部分に空隙236が形成される可能性がある。
【0109】
本明細書で説明するように、深さ対幅のアスペクト比が高い凹部の形成において、凹部の露出した側表面(特に、露出した凹部側表面の凹部底表面付近の部分)よりも凹部底表面の方がメッキ環境中のメッキ金属イオンに対する誘引性が高くなるように、凹部底表面に表面プロファイル特徴部を設ける工程を行う。
【0110】
図3A〜3Dに、凹部側表面よりも凹部底表面上のメッキ条件を良くする底表面プロファイル特徴部を有する、深さ対幅アスペクト比が高い凹部の例を示す。
【0111】
図3A及び3Bに示す凹部は、同じ深さで実質的に平坦な底表面を有する凹部(例えば、従来のボッシュプロセスを用いて形成された底表面を有する凹部)に比べて、凹部底表面が凹部上部開口から離れる方向に半導体基板内に入り込むように屈曲している。図2B〜2Fで説明したボッシュプロセスでは、結果として得られる高アスペクト比の凹部の底表面が僅かに下向きに湾曲している可能性はあるものの、湾曲した凹部底表面の平坦からの逸脱の程度は、極めて小さくて、凹部側壁に比べて凹部底表面のメッキ条件を良くする程の差異は生じない。
【0112】
対照的に、図3Aにおいて、凹部302は、半導体基板306の上面301の平坦部分に対して垂直な垂直側壁304を有する。いくつかの実施態様において、凹部302は、X線格子(例えば、図1A〜1Cに示す第二の格子104)に用いられるような線形凹部であってもよい。そのような実施態様において、各線形凹部302の底表面は、二つの平坦な小面308を含む。二つの平坦な小面308は、凹部302の上部開口312を含む平面に平行な平面310から離れて傾斜している。二つの平坦な小面308は、凹部底表面の中央線又は中央付近の直線(頂点314として示す)に沿って互いに交わっている。頂点314と平面310との間の距離は、凹部302の幅wの少なくとも3分の1(例えば、幅wの半分超)であってもよい。
【0113】
いくつかの実施態様において、凹部302は、微小サイズで深さ対幅のアスペクト比が高い他の種類の凹部を必要とする適用に応じて、正方形や矩形の上部開口312を有していてもよい。そのような実施態様において、各凹部302の底表面は、凹部底表面の中央又は中央付近の点で互いに交わる複数(例えば、四つ)の平坦な小面を有していてもよい。
【0114】
高アスペクト比の凹部の底表面を、凹部の上部開口を含む平面に平行な平面から離れて曲がっているように形成することにより、同じ寸法を有する凹部の底表面が平滑かつ実質的に平坦である場合と比較して、凹部底表面の表面積を著しく拡張することができる。電荷は半導体の内部よりも表面付近を流れやすい傾向があるので、凹部底表面の表面積を拡張することにより、凹部底表面上にメッキ金属イオンを誘引してメッキ金属を堆積させる機会を増大させることができる。
【0115】
特定の理論によって制限されるものでは全くないが、メッキ環境中に存在するメッキ金属イオンは、高アスペクト比の凹部の底表面付近の狭い範囲において所定の濃度を有し、凹部側表面の凹部底表面付近もメッキ環境に曝露されている場合には、その狭い範囲に存在するメッキ金属イオンを捕捉する機会を凹部側表面上の自由負電荷と凹部底表面上の自由負電荷とが競い合うであろう。凹部底表面上に存在する自由負電荷の量が凹部底表面付近の凹部側表面上に存在する自由負電荷の量よりも著しく多いならば、メッキ金属の初期成長サイトの多くが凹部底表面上に先に生成される可能性が高まる。これらの初期成長サイトがまず凹部底表面上に生成された後に、メッキを普通に継続して、メッキ金属を凹部底表面から凹部側表面に沿って上方に凹部の全長に亘って充填することができる。高アスペクト比の凹部がこのような曲がった底表面を有する場合、メッキ金属の空隙は、仮に生じたとしても、より少なくより小さいであろう。
【0116】
凹部底表面が呈する屈曲の程度は、半導体基板における結晶面の配向に依存していてもよい。例えば、凹部底表面の平坦な小面(例えば、小面308)がKOHエッチングによってシリコン基板の{111}面に沿って形成されているとき、各小面308と、各小面308が側表面304と交わる位置にある平面310(即ち、凹部上部開口を含む平面に平行な平面)と、の間の角度は約54°であってもよい。いくつかの実施態様において、異なる程度の屈曲が凹部底表面に形成されるように、エッチングの処方を最適化することができる。図3Aに示す凹部底表面プロファイルを形成する方法のいくつかの例を、図5A〜5C及び図6A〜6Cを参照してより詳細に説明する。
【0117】
凹部底表面の曲がり方は、図3Aに示すような角がある屈曲であってもよいが、図3Bに示すような湾曲であってもよい。図3Bに示すように、凹部322の底表面324は、上部開口326から離れる方向に半導体基板328内に入り込むように湾曲している。凹部底表面324と凹部側表面330とが交わる位置にある平面332から凹部底表面324の中央までの距離aが凹部322の幅wの1/3よりも大きいように、凹部底表面324の平均曲率半径は十分に小さい。いくつかの実施態様において、距離aは、凹部322の幅wの半分であってもよく、w/2乃至w/3であってもよい。
【0118】
図3Aに示す角張って屈曲した凹部底表面と同様に、図3Bに示す湾曲した表面プロファイルを有する凹部底表面324も、凹部底表面の表面積が拡張されているという利点を有し、凹部内の所定の体積のメッキ環境と接触する自由表面電荷の数が増加している。高アスペクト比の凹部が平坦な底表面を有している場合とは対照的に、図3Bに示す凹部322の底表面324は、凹部322の底表面324付近の側表面330よりもメッキ金属イオンに対する誘引性が高いメッキ金属堆積領域を提供する。
【0119】
例えば図2Eに示す構成と同様に、凹部322を絶縁体層により部分的に被覆して側表面330の下側部分及び底表面324だけをメッキ環境に曝露すると、メッキ金属の初期成長サイトが底表面324上にまず生成される。メッキ金属の初期成長サイトが底表面324上に確立されれば、メッキ金属を凹部322の底から上に均一に充填することができる。同様の寸法で平坦な底を有する凹部の内側のメッキ金属に見られる空隙と比較して、凹部322の内側に形成されるメッキ金属の空隙は、仮に生じたとしても、より少なく及び/又はより小さい。
【0120】
図3Cは、平坦な凹部底表面と比較して、また高アスペクト比の凹部の平滑な側表面と比較して、より良好なメッキ条件を提供することができる凹部底表面プロファイルの他の例を示す。図3Cに示すように、凹部342の底表面344は、凹部342の上部開口346に近づく方向に屈曲している。底表面344の表面積は、同じ寸法の凹部における平坦な底表面の表面積よりも大きい。更に、底表面344は、底表面344の中央又は中央付近である角度で互いに交わって尖った頂点350を形成する二つの平坦な小面348を含む。自由電荷は表面上の突起付近に集まる傾向があるので、メッキ工程において半導体基板352が負電位に保持されていると、半導体基板352の頂点350付近の表面は、底表面344付近の側表面354よりも高い濃度の自由電荷を有することができる。したがって、底表面344上の突起形状により、側表面354の底表面344付近の領域よりもメッキ金属イオンに対する誘引性が高いメッキ金属堆積領域が提供される。
【0121】
メッキ金属の初期成長サイトが底表面344の頂点350上に生成された後、メッキを初期成長サイトから続けて、メッキ金属を凹部342の底から上に均一に充填することができる。図8A〜8Cは、凹部上部開口に近づく方向に屈曲して単一の尖った突起が存在する凹部底表面を有する、深さ対幅のアスペクト比が高い凹部(例えば、図3Cに示す凹部342)を半導体基板に形成する方法の例を示す。
【0122】
図3Cに示す凹部342は凹部底表面上に一つの突起形状を有しているが、いくつかの実施態様において、凹部底表面上に二つ以上の突出した表面形状を形成して、それらの突起形状の各頂点上にメッキ金属の初期成長サイトを生成することができるようにしてもよい。図9A〜9Cは、尖った突起がいくつか存在する凹部底表面を有する、深さ対幅のアスペクト比が高い凹部(例えば、図3Cに示す凹部342の変形例)を半導体基板に形成する方法の例を示す。
【0123】
図3Dは、多くの尖った突起(以下、針状体という)368が存在する凹部底表面プロファイルを有する高アスペクト比の凹部の例である凹部362を示す。複数の針状体368は、凹部362の底表面364上に「芝生のような(grassy)」表面テクスチャを形成する。針状体368の先端(即ち、頂点)366は、底表面364付近の平滑な側表面370よりも、メッキ金属イオンを強く誘引する。したがって、凹部362の表面をメッキ環境に曝露すると、メッキ金属の初期成長サイトが、凹部362の側表面370の底表面364付近の部分上ではなく、針状体368の先端上に生成される。
【0124】
メッキ金属の初期成長サイトが針状体368の先端366上に生成された後、メッキを続けて、メッキ金属を凹部362の底表面から側表面に沿って上に均一かつ中実に充填することができる。いくつかの実施態様において、複数の針状体368の先端366が、凹部362の上部開口372を含む平面に平行な同一の水平面上に概ね位置していてもよい。このような実施態様では、メッキ金属の初期成長サイトが針状体368の先端366上に生成されたときに、メッキ金属が実質的に水平な底表面を有することができる。メッキ金属の小さな空隙が針状体368の隙間に形成されるかもしれないが、これらの空隙は、微細であり、凹部362を用いて形成される格子において大きな散乱や性能劣化の原因にはならないであろう。
【0125】
様々な実施態様において、芝生状の表面テクスチャ(即ち、針状体の集合体)を凹部底表面上に形成するために用いられる処理方法に依存して、針状体は異なる外観を呈する。例えば、いくつかの実施態様において、複数の針状体は、芝生のような見掛けを有し、ある程度の不規則性がそれらの位置及び寸法にあってもよい。図10A〜10Cは、多数の針状体が存在する粗い凹部底表面を有する、深さ対幅のアスペクト比が高い凹部(例えば、図3Dに示す凹部362)を半導体基板に形成する方法の例を示す。
【0126】
特定の理論によって制限されるものでは全くないが、図4A〜4Cは、深さ対幅のアスペクト比が高い凹部の各例の内側における、電気メッキされた金属の初期成長サイトの生成状態を示す。
【0127】
図4Aは、平滑かつ実質的に平坦な底表面404を有する凹部402の例を示す。凹部402を含む半導体基板406がメッキ工程において負電位に保持されていると、自由表面電荷は、凹部402の底表面404上よりも側表面410上のデブリ及び絶縁体被覆408の縁付近に集中する。凹部402の底表面404よりも側壁410の方が、自由表面電荷の濃度が高いので、メッキ溶液のうち凹部402の底部に存在する部分中の金属イオンを強く誘引する。したがって、メッキ金属の初期成長サイトの多くは、底表面404上ではなく底表面404付近の側表面410上に生成される。初期成長サイト412の上にメッキ金属が蓄積し続けると、凹部402の側表面410上の初期成長サイト412の下方の領域に空隙が形成されるであろう。
【0128】
図4Bは、凹部422の上部開口から相当の距離だけ離れる方向に屈曲した底表面424を有する、深さ対幅のアスペクト比が高い凹部422を示す。凹部422の側表面426は、側表面426の底表面424付近の下側部分を除いて、絶縁体被覆430により覆われている。底表面424の屈曲により、底表面424は側表面426の底表面424付近の露出部分よりも面積が著しく大きくなっている。底表面424の表面積がより大きいということは、側表面426の底表面424付近の露出部分よりも底表面424の方が、メッキ溶液のうち凹部422の底部に存在する部分と接触する自由表面電荷の数が多い、ということを意味する。したがって、メッキ金属の初期成長サイト428は、側表面426の底表面424付近の露出部分上よりも底表面424上に生成される可能性が高い。初期成長サイト428の上にメッキ金属が蓄積し続けられると、メッキ金属が底表面424上の初期成長サイト428から凹部422の底から上に充填される。図4Bには平坦な小面を有する凹部底表面を例示しているが、上述と同じ原理が、凹部上部開口から離れる方向に湾曲した凹部底表面を有する凹部にも適用可能である。
【0129】
図4Cは、一つ以上の針状体448(例えば、シリコンの芝生状の表面テクスチャ)が凹部442の底表面446に存在する、半導体基板444内の高アスペクト比の凹部442を示す。凹部442の側表面450は、側表面450の底表面446付近の下側部分を除いて、絶縁体被覆452により覆われている。半導体基板444がメッキ工程において負電位に保持されていると、自由表面電荷は針状体448の頂点上に極めて集中する。したがって、メッキ金属の初期成長サイトは、側表面450の底表面446付近の露出部分上よりも底表面454上に(針状体448の先端に)生成される可能性が高い。メッキ金属が初期成長サイト454の上に蓄積し続けられると、メッキ金属が底表面446上の初期成長サイト454から側表面450に沿って凹部422の全長に亘って底から上に充填される。
【0130】
図5A〜5Cは、凹部上部開口から離れる方向に屈曲した凹部底表面を有する、深さ対幅のアスペクト比が高い凹部(例えば、図3Aに示す凹部302)を半導体基板に形成する方法の例を示す。
【0131】
図5A〜5Cに例示する方法では、平坦な上面が(100)面である単結晶から成る半導体基板500(例えば、単結晶シリコンウエハ)を用いる。まず、半導体基板500の平坦な上面の上に、マスク層502を形成する。マスク層502は、一つ以上の開口504がパターニングされた層(例えば、フォトレジスト、SiO2、Si3N4)であってもよい。マスク層502の各開口504は、半導体基板500の上面に形成される予定の凹部の開口と同じ形状及び寸法を有する。
【0132】
例えば、X線格子(例えば、図1A〜1Cに示す第二の格子104)に用いる線形凹部の形成のために、一つ以上の線形スロット504をマスク層502に形成する。本例示の方法では、マスク層502がパターニングされた後の半導体基板500の上面の平面図(図5Aの右上部)に示すように、マスク層502に形成された線形スロット504は、線形スロット504の長手方向が半導体基板500の[011]方向に沿うように配向されている。
【0133】
半導体基板500の上面の上に置かれたマスク層502に線形スロット504を形成した後、半導体基板500の上面に、KOH又は水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)エッチング溶液などのエッチャントを用いた異方性エッチングを施す。図5Bに示すように、異方性エッチングにより、半導体基板500の露出した上面から半導体材料が半導体基板500の{111}面に沿って選択的にエッチング除去される。エッチングの結果、半導体基板500の露出した上面に、二つの対向する平坦な小面508を有するキャビティ506が形成される。二つの対向する平坦な小面508は、図5Bに示すように、半導体基板500の表面に形成されたキャビティ506の中央の直線に沿って互いに交わっている。異方性エッチングにより形成されたキャビティ506の表面プロファイルが、高アスペクト比の凹部を半導体基板500に形成するために必要な所望の表面プロファイル特徴部を含むようになったら、エッチングを終了してよい。
【0134】
キャビティ506を形成する異方性ウェットエッチングが完了した後に、半導体基板500の上面を(例えば、深掘り反応性イオンエッチング(DRIE)プロセスで)ドライエッチングに曝露して、図5Cに示すように、高アスペクト比の凹部512の垂直な側壁510を形成することができる。凹部512が所望の深さに到達したら、ドライエッチングを終了してよい。ドライエッチングは、凹部512の上部開口を含む平面に対して垂直な方向において実質的に均一な速度で行うことができるので、半導体基板500の露出した上面から半導体材料を連続的に除去しながら、ドライエッチングを最初に始めたときにキャビティ506が有していた表面プロファイルを凹部512の底表面に転写することができる。
【0135】
したがって、ドライエッチングプロセスにより凹部512が所望の深さに到達して凹部512の垂直側壁510が完全に形成された時点において、凹部512の底表面は、底表面の中央の直線で互いに交わる二つの平坦な小面514を含んでいる。二つの平坦な小面514が互いに交わる位置は、底表面(即ち、小面514を含む表面)と凹部512の垂直側壁510とが交わる位置にある水平面516に対して、ある距離だけ下方にある。このようにして、図3Aに示す深さ対幅のアスペクト比が高い凹部が半導体基板500に形成される。続いて、半導体基板500をメッキ環境に曝露して、電気メッキにより凹部512の底から上まで金属導体(例えば、金)を充填することができる。
【0136】
図6A〜6Cは、凹部上部開口から離れる方向に屈曲した凹部底表面を有する、深さ対幅のアスペクト比が高い凹部(例えば、図3Aに示す凹部302)を半導体基板に形成する方法の他の例を示す。
【0137】
図6A〜6Cに例示する方法では、平坦な上面が(110)面である単結晶から成る半導体基板600(例えば、単結晶シリコンウエハ)を用いる。まず、半導体基板600の平坦な上面の上に、マスク層602を形成する。マスク層602は、一つ以上の開口604がパターニングされた層(例えば、フォトレジスト、SiO2、Si3N4)であってもよい。マスク層602の各開口604は、半導体基板600の上面に形成される予定の凹部の開口と同じ形状及び寸法を有する。
【0138】
例えば、X線格子(例えば、図1A〜1Cに示す第二の格子104)に用いる線形凹部の形成のために、一つ以上の線形スロット604をマスク層602に形成する。本例示の方法では、マスク層602がパターニングされた後の半導体基板600の上面の平面図(図6Aの右上部)に示すように、マスク層602に形成された線形スロット604は、線形スロット604の長手方向が半導体基板600の[211]方向に沿うように配向されている。
【0139】
半導体基板600の上面の上に置かれたマスク層602に線形スロット604を形成した後、半導体基板600の上面に、KOH又はTMAHエッチング溶液などのエッチャントを用いた異方性エッチングを施す。図6Bに示すように、異方性エッチングにより、半導体基板600の露出した上面から半導体材料が半導体基板600の{111}面に沿って選択的にエッチング除去される。エッチングの結果、キャビティ606の中央の直線に沿って互いに交わる二つの対向する平坦な小面608を有するキャビティ606が、半導体基板600に形成される。
【0140】
キャビティ606の二つの平坦な小面608がキャビティ606の中央の直線で互いに接続した後に異方性エッチングを継続すると、図6Cに示すように、凹部610の垂直側壁614が形成される。凹部610の垂直側壁614も、半導体基板600の{111}面に沿っている。
【0141】
KOH又はTMAHを用いた異方性エッチングを継続して凹部610が所望の深さに到達したら、異方性エッチングプロセスを終了してよい。エッチングプロセスの終了時点において、キャビティ606の表面プロファイルが凹部610の底表面に転写されている。半導体基板600に形成された凹部610の底表面は、凹部610の底表面の中央の直線で互いに交わる二つの対向する平坦な小面612を含んでいる。二つの平坦な小面612の交線である直線は、凹部610の底表面と凹部610の垂直側壁614とが交わる位置にある水平面616に対して、ある距離だけ下方にある。このようにして、図3Aに示す深さ対幅のアスペクト比が高い凹部が半導体基板600に形成される。続いて、半導体基板600をメッキ環境に曝露して、電気メッキにより凹部610の底から上まで金属導体を充填することができる。
【0142】
図5A〜5C及び図6A〜6Cにより説明した二つの方法例は同様の構造を形成するが、これら二つの方法例は少なくともいくつかの点において異なる。例えば、これら二つの方法例で用いられる半導体基板の結晶配向は互いに異なる。また、線形凹部は、半導体基板の表面において異なる結晶方向に沿って形成される。更に、図5A〜5Cに示す方法では二つのステップのエッチングプロセス(先にウェットエッチング、次いでドライエッチング)を用いて凹部の全体を形成し、図6A〜6Cに示す方法では単一のウェットエッチングプロセスを用いて凹部の全体を形成する。
【0143】
凹部上部開口から離れる方向に屈曲した凹部底表面を有する凹部を形成する方法の他の例を、図12A〜12Fを参照して本明細書で後述する。図12A〜12Fに示す方法は、少なくとも、凹部の内面が形成されて絶縁体被覆で被覆された後に図12A〜12Fに示す凹部の屈曲した底表面が形成されるという点において、図5A〜5C及び図6A〜6Cに例示する方法と異なる。
【0144】
図7A〜7Eは、凹部上部開口から離れる方向に曲がった凹部底表面を有する、深さ対幅のアスペクト比が高い凹部(例えば、図3Bに示す凹部322)を半導体基板に形成する方法の他の例を示す。本例示の方法では、凹部上部開口から離れる方向に湾曲した凹部底表面を有する、深く狭い凹部が形成される。従来のボッシュプロセスで形成された高アスペクト比の凹部も、凹部上部開口から離れる方向に少々湾曲した凹部底表面を有している場合があるが、図7A〜7Eに示す方法を用いて形成された凹部では、遥かに顕著な湾曲が凹部底表面に形成されて、凹部底表面の方が凹部底表面付近の平坦な凹部側表面よりもメッキ環境中のメッキ金属イオンに対する誘引性が極めて高くなる。
【0145】
図7Aに示すように、半導体基板700(例えば、シリコンウエハ又はシリコン−オン−オキサイド・ウエハ)の平坦な上面に、フォトレジスト層702を置く。次いで、フォトレジスト層702をパターニングして、フォトレジスト層702に開口704を形成し、開口704内のフォトレジストの下の領域を開口704を介して露出させる。フォトレジスト層702に形成される開口704は、半導体基板700の上面に平行な平面内での平面形状及び平面寸法が、半導体基板700に形成される予定の凹部と概ね同じである。
【0146】
例えば、半導体基板700に長さl、幅w及び深さdを有する線形凹部(例えば、図1B及び1Cに示す線形凹部114)が形成される場合、フォトレジスト層702の開口704の平面寸法はl×wに概ね等しい。フォトレジスト層702の厚さは、少なくとも幅wの半分である。
【0147】
フォトレジスト層702に開口704を形成したら、フォトレジスト層702を高温(例えば、約200℃)でフォトレジスト層の形状が変化し始めるまでアニールする。形成当初の開口704の側壁は、実質的に平坦であって半導体基板700の上面に対して垂直である。そして、加熱によってフォトレジストが半溶融することにより、フォトレジスト層が変形する。半溶融したフォトレジストの自重と表面張力との相互作用により、フォトレジスト層702に形成された開口704の側壁を含むフォトレジスト層702の露出面上に、湾曲した表面プロファイルが形成される。
【0148】
フォトレジスト層702に湾曲した表面プロファイルが形成されたら、フォトレジスト層702を冷却して図7Bに示すように湾曲した表面プロファイルを有する状態で再硬化させる。いくつかの実施態様において、図7Bに示すフォトレジスト層702に形成される開口704の平面寸法が正確にl×wとなるように、図7Aに示すフォトレジスト層702に形成する開口704の寸法を精密に調整してもよい。
【0149】
フォトレジスト層702を冷却してフォトレジスト層702の湾曲した表面プロファイルを安定させた後に、半導体基板700を等方性エッチングすることにより、フォトレジスト層702の湾曲した表面プロファイルを半導体基板700の上面に転写することができる。
【0150】
いくつかの実施態様において、半導体基板700は、ユニタリシリコンウエハであってもよい。フォトレジスト層702の湾曲したプロファイルをシリコンウエハに形成されたキャビティ706の表面に転写した後に、ボッシュプロセスを行って凹部の側壁を形成することができる。ボッシュプロセスは半導体基板700の上面に垂直な方向に高いエッチング速度を有するので、キャビティ706の湾曲した表面プロファイルを凹部底表面に転写しながら、凹部のエッチングを半導体基板700内へ深めて行くことができる。フォトレジスト層をボッシュプロセスのマスクとしても用いる実施態様では、キャビティ704がシリコン層に形成されたときにフォトレジスト層がシリコン基板上に十分な厚さで残存しているように、フォトレジスト層を比較的厚くしておくことが必要である。
【0151】
いくつかの実施態様において、このプロセスに用いる半導体基板700はシリコン−オン−インシュレータ基板であり、フォトレジスト層702の直下の層はシリコン酸化物層708である。シリコン酸化物層708をフォトレジスト層702を介して等方性エッチャントを用いてエッチングしたときに、フォトレジスト層702の湾曲したプロファイルをシリコン酸化物層708の表面上に完全に転写することが可能であるように、シリコン酸化物層708は少なくとも数μm(例えば、2μm乃至4μm)の厚さを有する。
【0152】
図7Cに示すように、シリコン酸化物層708のエッチングは、フォトレジスト層702の湾曲したプロファイルが酸化物層708の表面上に転写されるまで行う。つまり、酸化物層708の表面に、湾曲した表面プロファイルを有するキャビティ706を形成する。次いで、残っているフォトレジストがあったら除去して、酸化物層708を露出させる。いくつかの実施態様において、酸化物層708を研磨して酸化物層708のキャビティ706の外側の上面を平坦化する工程を、適宜追加してもよい。次いで、酸化物層708をマスク層として用いて、ボッシュプロセスを用いて酸化物層708の下のシリコン層710に深く狭い凹部712を形成することができる。
【0153】
図7D及び7Eに示すように、エッチング段階と堆積段階とを交互に繰り返すボッシュプロセスを続けると、半導体基板700のシリコン層710に、深く狭い凹部712の垂直側壁714が徐々に形成される。凹部712の底表面716は、酸化物マスク層708に以前に存在していたキャビティ706の底表面の湾曲形状を維持する。
【0154】
図7Cに示すように湾曲した側壁を有する開口部がある酸化物マスクではなく、通常の垂直な壁を有するマスクを用いたボッシュプロセスにより形成される凹部の底表面は、少々湾曲しているかもしれないが、その湾曲の量、即ち底表面の最も低い部分と底表面が側表面と交わる位置にある平面との間の距離は、数百nm程度以下に過ぎない。対照的に、図7A〜7Eに示すプロセスを用いると、凹部712の底表面716の湾曲の量、即ち底表面716の最も低い部分と底表面716が側表面714と交わる位置にある平面718との間の距離を、凹部712の幅wの半分にまで及ばせることができる。
【0155】
いくつかの実施態様において、深さ100μm及び幅2μmの深い凹部で、底表面716の最低点と底表面716が垂直な側表面714と交わる位置にある平面718との間の距離を、1μmにまで及ばせることができる。
【0156】
特定の理論によって制限されるものでは全くないが、シリコン酸化物層708をボッシュプロセス用のマスク層として用いることの利点の一つは、酸化物層708は長く続くボッシュプロセスの後でも通常のフォトレジスト層と違ってひび割れたり分解したりしないことである。したがって、高アスペクト比で深さが大きい(例えば、100μm程度)凹部を形成するために、酸化物層をボッシュプロセス用のマスクとして用いる。ボッシュプロセス中に酸化物層が部分的に侵食されて薄くなるかもしれないが、フォトレジスト層にありがちなひび割れの問題は酸化物層には起きない。いくつかの実施態様において、凹部712を形成した後に、酸化物層を除去又は平坦化してもよい。
【0157】
図8A〜8Cは、凹部上部開口に近づく方向に屈曲して単一の尖った突起が存在する凹部底表面を有する、深さ対幅のアスペクト比が高い凹部(例えば、図3Cに示す凹部342)を半導体基板に形成する方法の例を示す。
【0158】
本例示の方法では、グレースケールマスクを用いて、半導体基板の凹部を形成する予定の場所の上に、尖った表面形状部を有する厚さプロファイルを形成する。次いで、フォトレジスト層をマスクとして用いて、半導体基板に凹部を形成する。
【0159】
図8Aに示すように、半導体基板800の平坦面上にフォトレジスト層802を置く。次いで、フォトレジスト層802を、グレースケールマスク804を介して紫外光に曝露する。グレースケールマスク804は、紫外光の透過度がグレースケールマスク804の紫外光透過プロファイルに従ってグレースケールマスク804上の場所によって異なるように、特別に設計されている。本例において、グレースケールマスク804は、半導体基板800の表面の凹部が形成される予定の場所に合わせられる領域のみを紫外光が透過可能なように設計されている。図8Aの上部のグラフは、グレースケールマスク804の紫外光透過プロファイル806を表す。
【0160】
紫外光透過プロファイル806に示すように、半導体基板800の表面に長さl及び幅wの線形凹部を形成するためのグレースケールマスク804は、線形凹部を形成する予定の場所(例えば、2wのピッチを有する)に合致する場所の、長さl及び幅wを有する領域のストライプ808のみで、紫外光を透過させる。更に、各ストライプ808における紫外光透過度Tは、各ストライプ808の幅方向の両端で最高であり、各ストライプ808の各端から離れてストライプ808の中央に近づくにつれて直線的に低下している。
【0161】
フォトレジストの平坦な層802をグレースケールマスク804を介して紫外光に曝露してから現像すると、フォトレジスト層802は、半導体基板800の表面に平行な平面内の平面寸法だけでなく半導体基板800の表面に垂直な方向の厚さ寸法においてもパターニングされる。図8Aに示すように、現像後のフォトレジスト層802のプロファイルは、グレースケールマスク804の紫外光透過プロファイル806が反転した形を呈する。具体的には、フォトレジスト層802のうち、紫外光がグレースケールマスク804に遮られて全く照射されなかった領域は、平坦である。フォトレジスト層802のうち、紫外光がグレースケールマスク804を透過して照射された領域(即ち、フォトレジスト層802のうち、グレースケールマスク804の透過ストライプ808の下方の領域)では、フォトレジスト層802の表面プロファイルは、グレースケールマスク804の紫外光透過プロファイル806が反転した形となる。つまり、パターニングされたフォトレジスト層802は、フォトレジスト層802の平坦な底表面から離れる方向に突出した単一の尖った突起810を含んだ表面プロファイルを有する。本例示の方法では、単一の尖った突起810は、フォトレジスト層802の凹んだ部分の長さlに沿った単一の直線において互いに交わる二つの平坦な小面812を有する。
【0162】
フォトレジスト層802を、半導体基板800に形成する予定の凹部822の平面寸法及び底表面プロファイルに従って、平面寸法と厚さ寸法との両方においてパターニングした後、フォトレジスト層802を介して凹部822を形成するプロセスを行うことができる。いくつかの実施態様において、プラズマエッチングプロセスなどのドライエッチングプロセスにより凹部822を形成することができる。いくつかの実施態様において、ボッシュプロセスを用いて凹部822を形成してもよい。
【0163】
いくつかの実施態様において、ボッシュプロセスを用いて深い凹部を形成する場合、半導体基板800は、酸化物層814とシリコン層816とを含むシリコン−オン−オキサイド・ウエハであってもよい。エッチング中に、まずフォトレジストマスク802のプロファイルが酸化物層814に転写される。次いで、フォトレジスト層802を除去することができ、酸化物層814を、その下のシリコン層816に所望の深さの凹部822を形成する次のボッシュプロセス用のマスク層として使うことができる。図8Bに示すように、ボッシュプロセスの開始前に、酸化物層814の、更なるエッチングによりシリコン層816に形成される予定の凹部822の上の場所に、真直側壁を有するキャビティ820が形成されている。各キャビティ820の底表面には、二つの平坦な小面824を有する単一の尖った突起818が形成されている。
【0164】
次いで、ボッシュプロセスを行って、酸化物層814のキャビティ820の内側の表面プロファイルを凹部822の底表面に転写しながら、ボッシュプロセスのエッチングサイクル及びパッシベーションサイクルによって凹部822を深めることができる。凹部822が所望の深さに到達したら、ボッシュプロセスを終了してよい。結果として得られる凹部822のそれぞれは、垂直側壁826と単一の尖った突起828を含む底表面とを有する。各凹部822の底表面の単一の尖った突起828は、凹部822の上部開口に向かって突き出ている。図8Cにおいて、単一の尖った突起828は、直線において互いに交わる二つの平坦な小面830を有する。いくつかの実施態様において、図8A〜8Cに示す方法を用いて、他の表面プロファイルを有する単一の尖った突起を形成してもよい。
【0165】
上述の方法で、適切な紫外光透過プロファイルを有するマスクを用いることにより、凹部底表面上に単一の尖った突起を形成するだけでなく、凹部底表面上に多数の尖った突起を形成することもできる。図9A〜9Cは、尖った突起がいくつか存在する粗い凹部底表面を有する、深さ対幅のアスペクト比が高い凹部(例えば、図3Cに示す凹部342の変形例)を半導体基板に形成する方法の例を示す。
【0166】
図9Aに示すように、半導体基板900上に置かれたフォトレジスト層902のパターニングには、図8Aとは異なるグレースケールマスクを用いている。例えば、ここで用いるグレースケールマスクは、半導体基板900に形成される予定の凹部の平面形状及び位置に合致するフォトレジスト層902の領域904に厚さプロファイルを形成する、紫外光透過プロファイルを有することができる。パターニングされたフォトレジスト層902の厚さプロファイルは、例えば、周期的アレイ(例えば、2×2アレイ)状に配列された少数の尖った突起を有することができる。
【0167】
図9Bに示すように、パターニングされたフォトレジスト層902を介して半導体基板900をエッチングに曝露すると、フォトレジスト層902の領域904の内側の表面プロファイルが、エッチングにより形成されるキャビティ910の底表面912に転写される。つまり、キャビティ910の底表面912は、小周期のアレイ状に配列された突起形状914を有することになる。また、キャビティ910は、半導体基板900に形成される予定の凹部の平面形状及び寸法を決める垂直側壁を有する。
【0168】
いくつかの実施態様において、半導体基板900は、シリコン−オン−オキサイド・ウエハであり、酸化物層906及びシリコン層908を含む。パターニングされたフォトレジスト層902の直下の層は、酸化物層906である。パターニングされたフォトレジスト層902を介して酸化物層906をエッチングすると、フォトレジスト層902の垂直プロファイルが酸化物層906の表面上に転写される。次いで、フォトレジスト層902を除去して、パターニングされた酸化物層906を、その下のシリコン層908の次のエッチング用のマスクとして用いる。
【0169】
いくつかの実施態様において、ボッシュプロセスを用いて、シリコン層908に所望の深さの凹部916を形成することができる。各凹部916は、垂直側壁922と底表面918とを有するであろう。凹部916の底表面918は、酸化物層906に以前に存在していたキャビティ910の底表面912上の突起914に合致する尖った突起920を含むであろう。凹部916の底表面918は、凹部916の垂直な側表面922よりもメッキ金属イオンに対する誘引性が高く良好なメッキ金属堆積領域を提供するために十分な粗さを有する。凹部916をメッキ環境に曝露すると、凹部916の底表面918上の尖った突起920の上に、メッキ金属の初期成長サイトが生成される。
【0170】
上記の方法例では限られた数の凹部のみを図示しているが、当業者は、適切なマスクパターニングを同じ方法で用いることにより、多くの凹部が配列された複数のアレイを形成できることを認識するであろう。
【0171】
図10A〜10Cは、多数の針状体が存在する粗い凹部底表面を有する、深さ対幅のアスペクト比が高い凹部(例えば、図3Dに示す凹部362)を半導体基板に形成する方法の例を示す。
【0172】
本例示の方法では、図10Aに示すように、半導体基板1000上にパターニングされたマスク1002が形成される。いくつかの実施態様において、パターニングされたマスク1002は、シリコン−オン−オキサイド・ウエハのパターニングされた酸化物層であってもよく、半導体基板1000は、シリコン−オン−オキサイド・ウエハのシリコン層であってもよい。パターニングされた酸化物マスク1002は、その下の半導体基板1000で凹部が形成される予定の場所の上に、真直側壁を有する開口1004を有する。開口1004は、半導体基板1000に形成される予定の凹部と同じ平面寸法を有する。
【0173】
酸化物マスク1002を作成した後、酸化物マスク1002を介してボッシュプロセスを行って、半導体基板1000に凹部1006を形成することができる。ボッシュプロセスは、交互に繰り返されるエッチング段階及びパッシベーション段階を含む。エッチング段階では、所定時間(即ち、エッチング継続時間)の間、ある特定のガス混合物(例えば、SF6ガス)を基板1000の表面に向けて垂直に送る。エッチングガス混合物は、半導体基板の露出面を侵食して、凹部の底部分をやや深める。エッチングガス混合物は半導体基板を側方向にも侵食する(即ち、エッチングが等方的に進む)ので、このエッチング段階は、凹部1006の幅を開口1004の幅に近く保つために、比較的短く(例えば、数秒)しておく必要がある。
【0174】
パッシベーション段階では、所定時間(即ち、パッシベーション継続時間)の間、エッチングガス混合物とは異なるガス混合物(例えば、C4F8ガス)が、先のエッチング段階で露出された直後の凹部1006の側壁及び底表面上に保護層を形成する。パッシベーション段階の後に、エッチングガス混合物によるエッチング段階を再び始める。エッチングガス混合物により、凹部1006の底表面上に形成された保護層が侵食されるが、凹部1006の側表面上の保護層は比較的そのまま残る(即ち、エッチングが異方的に進む)。エッチングガス混合物が凹部1006の底表面上の保護層を貫通すると、エッチングガス混合物は、半導体基板1000内へエッチングを進めて、エッチング段階が再び終わるまで凹部1006をやや深める。ボッシュプロセスのエッチング段階及びパッシベーション段階を数千回繰り返して、所望の幅及び深さの高アスペクト比の凹部を形成することができる。この繰り返しにより半導体基板1000へエッチングが選択的に深さ方向に行われるため、ボッシュプロセスによるエッチングは異方性エッチングとみなすことができる。
【0175】
半導体基板1000に凹部1006を形成する上述のボッシュプロセスの間、エッチング段階及びパッシベーション段階のそれぞれのガス圧、温度、ガス混合物の組成、及び継続時間(これらを、ボッシュプロセスの「エッチングレシピ」と総称する)を、凹部1006の側壁1008及び底表面1010が平滑かつ平坦であるように、注意深く選定する。本例では、高アスペクト比の凹部を形成するためのレシピにより、起伏が数nm程度である凹部側壁を形成することができる。
【0176】
図10Bに示すように、高アスペクト比の凹部1006の側壁1008の全体は、実質的に平坦かつ垂直な凹部側壁と実質的に水平かつ平滑な凹部底表面とを有する深く狭い凹部を形成するように調製された、第一のボッシュレシピを用いて形成されている。次いで、第一のボッシュレシピとは異なる第二のボッシュレシピを用いて、凹部1006の底表面1010の表面テクスチャを改変する。第二のレシピは、第一のレシピに基づいてもよいが、保護材料の堆積を促進するように、及び/又はエッチング速度を下げるように、変更される。例えば、第二のレシピにおいて、エッチング段階で第一のレシピよりも圧力を上げ、及び/又は温度を下げてもよい。更に、又は代わりに、第二のレシピにおいて、堆積段階(パッシベーション段階)で、第一のレシピよりも堆積ガス混合物中のC4F8ガスの濃度を上げて材料の堆積を促進してもよい。更に、第二のレシピにおいて、第一のレシピよりもパッシベーション継続時間を長くしてもよい。
【0177】
図10Cに示すように、第二のレシピを用いたボッシュプロセスにより、凹部1006がやや深まるかもしれないが、より重要なことは、凹部1006の底表面1012上に、多くの針状体(シリコングラス(silicon grass)とも呼ばれる)から成る芝生状の表面特徴部が形成されることである。芝生状の表面特徴部を構成する針状体は、芝葉のような外観を呈する半導体材料の尖片である。特定の理論によって制限されるものでは全くないが、これらの針状体は、第二のボッシュエッチングプロセス中に凹部1006の底表面上に形成された堆積物の粒子が微小なマスクとして作用した結果物であってもよい。凹部1006の底表面上に所望のテクスチャができたら、第二のエッチングプロセスを終了してよい。
【0178】
図11A〜11Cに、深さ対幅のアスペクト比が高い凹部(例えば、図3A〜3Dのそれぞれに示す凹部)に電気メッキを施して凹部の底から上に金属を充填する方法の例を示す。図11A〜11Cに示す方法は、例えば、図5A〜10Cにより説明した各方法の後に行うことができる。図11A〜11Cに示す例では粗い底表面を有する凹部(例えば、底表面上にシリコン針状体を有する凹部)を金属(例えば、金)によりメッキしているが、本明細書に記載の他の表面プロファイルを有する凹部にも同じメッキ方法を適用することができる。
【0179】
図11Aに示すように、半導体基板1100には、メッキを促進するように特別に準備された凹部底表面プロファイルを有する高アスペクト比の凹部1102が形成されている。各凹部1102の底表面1104は、複数の突出した表面特徴部(例えば、シリコン針状体)を有する。いくつかの実施態様において、半導体基板1100の上面の上に、酸化物層1106(例えば、凹部1102を形成する際のボッシュプロセスにおいて用いられたマスク層)が残存しているかもしれない。次いで、図11Bに示すように、半導体基板1100の上面を、絶縁体の薄層1108で被覆する。絶縁体層1108は、半導体基板1100の上面の凹部1102を取り囲む平坦領域を覆う部分が他の部分よりも厚くてもよく、凹部1102内では底表面1104に近づくにつれて薄くなる。絶縁体被覆1108は、PECVD又は熱酸化法により設けることができる酸化物層であってもよい。
【0180】
いくつかの実施態様において、凹部1102が十分に狭く深いと、絶縁体被覆1108が凹部1102の底表面1104まで到達しない。いくつかの実施態様において、絶縁体被覆1108が凹部1102の底表面1104まで到達して凹部1102の側壁1110及び底表面1104を覆っている場合は、例えばドライエッチングにより、凹部1102の底表面1104から絶縁体被覆を除去する工程を行ってもよい。絶縁体被覆1108の厚さは、例えば10nm乃至50nmである。絶縁体被覆1108は、凹部1102の底表面1104がメッキされる前に凹部1102の側表面1110がメッキされることを防止する。
【0181】
図示の例において、凹部1102の側表面1110の最下部は絶縁体被覆1108で覆われないで露出しているかもしれないが、凹部1102の底表面1104に(例えば、本明細書において前述した方法により)形成されている特別な表面プロファイル特徴部の作用により、メッキ金属の初期成長サイトは、凹部1102の側表面1110の最下部よりも底表面1104に生成される可能性が高い。図11Cは、金イオンを含むメッキ浴などのメッキ環境に半導体基板1100を曝露すると、メッキ金属の初期成長サイトが凹部1102の底表面1104に生成されて、メッキ金属1112が初期成長サイトから凹部1102の底から上に中実かつ均一に充填されることを示す。いくつかの実施態様において、凹部1102の内側に充填された金属は、例えば、図1A〜1Cに示すX線格子104のX線吸収要素として用いることができる。
【0182】
図11A〜11Cに例示する方法では、メッキ金属の初期成長サイトの生成を促進する表面プロファイル特徴部を有するように凹部底表面を形成した後に、絶縁体被覆を凹部に設ける。図12A〜12Fに例示する別の方法では、まず、平坦な底を有する凹部を形成する。次いで、凹部の内面(凹部底表面及び凹部側表面を含む)を絶縁体被覆で被覆する。図12A〜12Fに例示する方法では、図2B〜2Fに示す従来の方法とは異なり、凹部側表面を再露出させることなく凹部底表面を優先的に再露出させるドライエッチングプロセスを用いて(例えば、異なるエッチャントにより)、凹部底表面を再露出させる。したがって、その後、凹部をメッキ環境に曝露した際に、メッキ金属を、凹部の再露出した底表面上にのみ堆積させて凹部の底から上に充填し始めることができる。
【0183】
図12Aに示すように、半導体基板1204(例えば、シリコンウエハ又はシリコン−オン−オキサイド・ウエハ)に、深さ対幅のアスペクト比が高い凹部1202が一つ以上形成されている。各凹部1202は、実質的に水平かつ平滑な底表面1206と、垂直側壁1208と、上部開口1210と、を有する。半導体基板1204の上面の凹部1202の開口1210を取り囲む部分は、平坦であり、凹部1202の底表面1206に対して実質的に平行である。いくつかの実施態様において、凹部1202は従来のボッシュプロセスにより形成され、半導体基板1204の上面の平坦な部分の上にマスク層1212(例えば、シリコン酸化物層)が残っていてもよい。
【0184】
図12Bに示すように、平坦な底表面1206を有する凹部1202を半導体基板1204に形成した後に、半導体基板1204の表面に絶縁体被覆1214を設ける。絶縁体被覆1214により、凹部1202の側表面1208及び底表面1206が覆われる。いくつかの実施態様においては、絶縁体被覆1214はPECVDにより堆積させた酸化物(例えば、SiO2)の薄層(例えば、厚さ数十nm)である。いくつかの実施態様においては、絶縁体被覆1214は熱酸化法により半導体基板1204の表面上に成長させた酸化物の薄層である。図12Bに示すように、絶縁体被覆1214の層は、半導体基板1204の上面の凹部1202の開口1210を取り囲む部分も覆っていてもよい。絶縁体被覆1214は、絶縁体被覆1214の下の半導体基板1204の表面上の自由電荷によりメッキ金属イオンがメッキ金属に還元されることを防止することができる。
【0185】
絶縁体被覆1214を半導体基板1204の表面に設けて凹部1202の内面を覆った後、被覆された半導体基板1204の表面を、上方からのドライエッチングに曝露することができる。図12Cに示すように、ドライエッチャント(例えば、SF6ガス)を用いて、凹部1202の底表面1206上に形成された絶縁体被覆1214を除去することができる。このドライエッチングプロセスにおいて用いるエッチャントとして、絶縁体被覆1214の材料(例えば、SiO2)に対するエッチング速度よりも半導体基板1204の材料(例えば、Si)に対するエッチング速度が遥かに高いものを選択する。図12Cに示すように、衝突するエッチャント(例えば、SF6)の方向性(例えば、底表面1206に垂直に向けられている)のため、底表面1206の中央部1216がまず再露出される。底表面1206の中央部1216が再露出された後(例えば、第一のエッチング継続時間の経過後)、凹部1202の側表面1208の上及び底表面1206の縁部の上に、絶縁体被覆材料がまだ残っている。
【0186】
図12Dに示すように、ドライエッチングを継続すると、凹部1202の底表面1206は、継続的にエッチングされて、凹部1202の上部開口1210から離れる方向に屈曲するように拡張される。対照的に、凹部1202の側表面1208上に形成されている絶縁体被覆1214は、実質的に損なわれないで残り、側表面1208をエッチャントから保護し続ける。凹部1202の底表面1206上に形成された絶縁体被覆が除去された後(例えば、第一のエッチング継続時間よりも短い第二のエッチング継続時間の経過後)、ドライエッチングを終了してよい。図12Dに示すように、ドライエッチングの後に、凹部1202の底表面1206は、凹部1202の底の中央においてある角度で互いに交わる二つの平坦な小面1218を含むことができる。図12Dに示す凹部1202の底表面1206の全体の表面積は、図12Aに示す凹部1202の平坦な底表面1206の表面積よりも、著しく拡張している。
【0187】
図12Eに示すように、半導体基板1204をメッキ金属イオン(例えば、金イオン)を含むメッキ環境に曝露すると、凹部1202の再露出され拡張された底表面1206上にメッキ金属の初期成長サイトが生成される。凹部1202の拡張された底表面1206上の初期成長サイトから成長したメッキ金属1220は、凹部1202を底から上に徐々に埋める。凹部1202の側表面1208は絶縁体被覆1214により完全に覆われているので、側表面1208がメッキ金属イオンに対する誘引性を底表面1206と競うことはなく、図12Fに示すように、凹部1202の内側に充填されたメッキ金属の全長に亘って、空隙が形成されることはない。
【0188】
本願の明細書及び特許請求の範囲の全体において、「前」、「後」、「上部」、「底部」、「左」、「右」、「上」、「下」、「上方」及び「下方」などの用語は、説明されているシステムの様々な構成要素の相対的な位置及び各構成要素の様々な部品の相対的な位置を説明するために使用されている。同様に、本願の明細書及び特許請求の範囲の全体において、「水平」や「垂直」に関する用語も、説明されているシステムの様々な構成要素の相対的な向き及び各構成要素の様々な部品の相対的な向きを説明するために使用されている。特定の構成要素、システム、又は装置についての説明において下記の相対的な向きや位置が明示的に述べられている場合を除き、これらの用語の使用は、システム、装置、構成要素、又はそれらの部品の、(1)地球の重力の方向に対して、(2)地面若しくは地平面に対して、(3)システム、装置、若しくはそれらの特定の構成要素が実際の製造、使用、若しくは輸送において有し得る方向に対して、又は(4)システム、装置、若しくはそれらの特定の構成要素が実際の製造、使用、若しくは輸送中に配設され得る表面に対して、特定の位置や向きを示唆するものではない。
【0189】
本発明のいくつかの実施形態を説明してきた。しかし、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、様々な変形を行うことができることが理解されよう。例えば、いくつかの処理工程は、異なる順序で行ってもよいし、変更又は省略してもよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部開口と底表面と一つ以上の側表面とを有する凹部を半導体基板の第一の表面に形成する凹部形成工程であって、メッキ金属イオンを含むメッキ環境に前記半導体基板が曝露されたときに前記凹部の底表面が供するメッキ領域の活性を前記凹部の側表面が供するメッキ領域の活性よりも実質的に高める作用を有する拡張表面積又は粗面化表面テクスチャを有する表面プロファイル特徴部を前記凹部底表面上に形成する表面プロファイル特徴部形成工程を含む、凹部形成工程と、
前記凹部が形成された前記半導体基板を前記メッキ環境に曝露して、メッキ金属導体の初期成長サイトを前記凹部底表面上に生成させ、前記メッキ金属導体を前記凹部底表面から前記凹部側表面に沿って成長させて前記凹部に充填する、メッキ工程と、
を含む方法。
【請求項2】
前記メッキ工程より前に、前記凹部底表面と前記凹部側表面の前記凹部底表面に隣接する最下部とを露出させたまま前記凹部側表面を部分的に覆う絶縁体被覆を前記半導体基板の第一の表面上に形成する、絶縁体被覆形成工程を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記凹部底表面の前記表面プロファイル特徴部は、前記凹部底表面上に形成された複数のシリコン針状体から成る、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記凹部形成工程は、第一のエッチングプロセスを用いるエッチングを前記半導体基板の第一の表面に施して前記凹部側表面を実質的に平坦かつ平滑な端表面において終端するように形成する、第一のエッチング工程を更に含み、
前記表面プロファイル特徴部形成工程は、第一のエッチング工程が完了した後に、第二のエッチングプロセスを用いるドライエッチングを前記凹部内の実質的に平坦かつ平滑な前記端表面に施して前記凹部内の前記端表面上に複数の突起を形成する、第二のエッチング工程を更に含み、
前記複数の突起が形成された前記端表面が前記凹部底表面となる、
請求項1乃至3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
第一のエッチングプロセスは、第一のエッチングレシピを用いるボッシュプロセスであり、
第二のエッチングプロセスは、第二のエッチングレシピを用いるボッシュプロセスであり、
第二のエッチングレシピは、第一のエッチングレシピよりも多くの粒子を前記凹部底表面上に堆積させる作用を有する、
請求項4に記載の方法。
【請求項6】
第一のエッチングレシピでは、第一の濃度のC4F8ガスを含むパッシベーションガス混合物を第一のエッチングプロセスの各パッシベーションサイクルにおいて用い、
第二のエッチングレシピでは、第一の濃度よりも高い第二の濃度のC4F8ガスを含むパッシベーションガス混合物を第二のエッチングプロセスの各パッシベーションサイクルにおいて用いる、
請求項5に記載の方法。
【請求項7】
第一のエッチングレシピでは、第一のエッチング継続時間を第一のエッチングプロセスの各エッチングサイクルにおいて用い、
第二のエッチングレシピでは、第一のエッチング継続時間よりも短い第二のエッチング継続時間を第二のエッチングプロセスの各エッチングサイクルにおいて用いる、
請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
第一のエッチングレシピでは、第一のパッシベーション継続時間を第一のエッチングプロセスの各パッシベーションサイクルにおいて用い、
第二のエッチングレシピでは、第一のパッシベーション継続時間よりも長い第二のパッシベーション継続時間を第二のエッチングプロセスの各パッシベーションサイクルにおいて用いる、
請求項5乃至7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記凹部形成工程は、
前記半導体基板の第一の表面に形成する予定の前記凹部の位置及び平面寸法を決める開口部を有するマスク層を前記半導体基板の第一の表面上に形成する、マスク層形成工程と、
前記半導体基板の第一の表面に前記マスク層開口部を介して異方性エッチングを施して、前記凹部底表面上に形成する予定の前記表面プロファイル特徴部と同じ表面プロファイル特徴部を有する内面を有するキャビティを前記半導体基板の第一の表面に形成する、第一のエッチング工程と、
前記第一のエッチング工程が完了した後に、前記半導体基板の第一の表面に形成する予定の前記凹部の上部開口を含む平面に対して垂直な方向に前記キャビティ内面に異方性エッチングを施して、前記凹部側表面と前記表面プロファイル特徴部を有する前記凹部底表面とを形成する、第二のエッチング工程と、
を更に含む、請求項1乃至3のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記半導体基板は、シリコン単結晶から成るシリコン基板であり、
前記シリコン基板の上面は、前記シリコン単結晶の(100)面であり、
前記凹部は、長手方向が前記シリコン単結晶の[011]方向に沿っている線形の凹部である、
請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記半導体基板は、シリコン単結晶から成るシリコン基板であり、
前記シリコン基板の上面は、前記シリコン単結晶の(110)面であり、
前記凹部は、長手方向が前記シリコン単結晶の[211]方向に沿っている線形の凹部である、
請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記凹部形成工程は、
前記半導体基板の第一の表面に形成する予定の前記凹部の位置及び平面寸法を決める開口部であって真直側壁を有する開口部を有するフォトレジスト層を前記半導体基板の第一の表面上に形成する、フォトレジスト層形成工程と、
前記フォトレジスト層をアニーリングして、前記真直側壁を有する開口部を変形させて開口部の内側方向へ湾曲した側壁を有する開口部とする、アニーリング工程と、
前記湾曲した側壁を有する開口部を介して前記半導体基板の第一の表面にエッチングを施して、上部開口及び前記上部開口から離れる方向に湾曲した内面を有するキャビティを前記半導体基板の第一の表面に形成する、第一のエッチング工程と、
前記第一のエッチング工程が完了した後に、前記キャビティ上部開口を含む平面に対して垂直な方向に前記キャビティ内面を介して前記半導体基板にエッチングを施して、前記凹部側表面と前記凹部上部開口から離れる方向に湾曲した前記凹部底表面とを形成する、第二のエッチング工程と、
を更に含み、
前記凹部底表面の前記湾曲が前記拡張表面積を供する、
請求項1乃至3のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記凹部形成工程は、
前記半導体基板の第一の表面上にフォトレジスト層を形成する、フォトレジスト層形成工程と、
グレースケールマスクを用いて前記フォトレジスト層をパターニングして、前記半導体基板の第一の表面に形成する予定の前記凹部の位置及び平面寸法を決める薄層部であって薄層部の基部より上方に突き出た一つ以上の突起を呈する厚さプロファイルを有する薄層部を前記フォトレジスト層に形成する、薄層部形成工程と、
前記パターニングされたフォトレジスト層を介して前記半導体基板の第一の表面にエッチングを施して、前記パターニングされたフォトレジスト層の前記厚さプロファイルに合致する一つ以上の突起を含む内面を有するキャビティを前記半導体基板の第一の表面に形成する、第一のエッチング工程と、
前記第一のエッチング工程が完了した後に、前記キャビティの上部開口を含む平面に対して垂直な方向に前記キャビティ内面を介して前記半導体基板にエッチングを施して、前記凹部側表面と前記キャビティ内面に形成されていた前記一つ以上の突起に合致する一つ以上の突起を含む前記凹部底表面と、を形成する、第二のエッチング工程と、
を更に含む、請求項1乃至3のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記凹部の深さと前記凹部底表面の幅とのアスペクト比は10:1乃至100:1である、請求項1乃至13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記方法により、前記半導体基板に前記凹部を含む複数の凹部の周期的アレイが形成され、前記複数の凹部のそれぞれの底から上に前記メッキ金属導体が充填される、請求項1乃至14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記凹部は、前記凹部側表面に沿って30μm乃至200μmの深さを有し、前記凹部底表面に沿って2μm乃至20μmの幅を有する、請求項1乃至15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
前記凹部は、100μmの深さと3μmの幅とを有する、請求項1乃至15のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
前記メッキ金属導体は金である、請求項1乃至17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
前記半導体基板はシリコンを含む、請求項1乃至18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
前記表面プロファイル特徴部形成工程は、前記凹部底表面上に複数のシリコン針状体を形成する工程を含む、請求項1乃至19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
前記表面プロファイル特徴部形成工程は、前記凹部底表面上に複数の突起を形成する工程を含む、請求項1乃至19のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
前記表面プロファイル特徴部形成工程は、前記凹部底表面上に単一の尖った突起を形成する工程を含む、請求項1乃至19のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
前記表面プロファイル特徴部形成工程は、前記凹部上部開口から離れる方向に曲がった前記凹部底表面を形成する工程を含む、請求項1乃至19のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
前記凹部上部開口から離れる方向に曲がった前記凹部底表面は、ある角度で互いに交わる二つ以上の平坦な小面を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記凹部上部開口から離れる方向に曲がった前記凹部底表面は、前記凹部上部開口から離れる方向に滑らかに湾曲した表面を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記凹部側表面の少なくとも一部は絶縁体材料により被覆される、請求項1乃至25のいずれかに記載の方法。
【請求項27】
前記絶縁体材料はプラズマ化学気相成長法により前記凹部側表面に置かれる、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記絶縁体材料は熱酸化法により前記凹部側表面に生成される、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記表面プロファイル特徴部形成工程は、
前記凹部側表面及び前記凹部底表面を覆う絶縁体被覆を前記半導体基板の第一の表面上に形成する、絶縁体被覆形成工程と、
前記絶縁体被覆に対するエッチング速度よりも前記半導体基板に対するエッチング速度が高いドライエッチャントを用いるエッチングを前記凹部底表面に形成された前記絶縁体被覆に施して、前記凹部側表面に前記絶縁体被覆を残したまま前記ドライエッチャントにより前記凹部底表面から前記絶縁体被覆を完全に除去して前記凹部底表面を前記凹部上部開口から離れる方向に曲げる、エッチング工程と、
を更に含む、請求項1乃至3のいずれかに記載の方法。
【請求項1】
上部開口と底表面と一つ以上の側表面とを有する凹部を半導体基板の第一の表面に形成する凹部形成工程であって、メッキ金属イオンを含むメッキ環境に前記半導体基板が曝露されたときに前記凹部の底表面が供するメッキ領域の活性を前記凹部の側表面が供するメッキ領域の活性よりも実質的に高める作用を有する拡張表面積又は粗面化表面テクスチャを有する表面プロファイル特徴部を前記凹部底表面上に形成する表面プロファイル特徴部形成工程を含む、凹部形成工程と、
前記凹部が形成された前記半導体基板を前記メッキ環境に曝露して、メッキ金属導体の初期成長サイトを前記凹部底表面上に生成させ、前記メッキ金属導体を前記凹部底表面から前記凹部側表面に沿って成長させて前記凹部に充填する、メッキ工程と、
を含む方法。
【請求項2】
前記メッキ工程より前に、前記凹部底表面と前記凹部側表面の前記凹部底表面に隣接する最下部とを露出させたまま前記凹部側表面を部分的に覆う絶縁体被覆を前記半導体基板の第一の表面上に形成する、絶縁体被覆形成工程を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記凹部底表面の前記表面プロファイル特徴部は、前記凹部底表面上に形成された複数のシリコン針状体から成る、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記凹部形成工程は、第一のエッチングプロセスを用いるエッチングを前記半導体基板の第一の表面に施して前記凹部側表面を実質的に平坦かつ平滑な端表面において終端するように形成する、第一のエッチング工程を更に含み、
前記表面プロファイル特徴部形成工程は、第一のエッチング工程が完了した後に、第二のエッチングプロセスを用いるドライエッチングを前記凹部内の実質的に平坦かつ平滑な前記端表面に施して前記凹部内の前記端表面上に複数の突起を形成する、第二のエッチング工程を更に含み、
前記複数の突起が形成された前記端表面が前記凹部底表面となる、
請求項1乃至3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
第一のエッチングプロセスは、第一のエッチングレシピを用いるボッシュプロセスであり、
第二のエッチングプロセスは、第二のエッチングレシピを用いるボッシュプロセスであり、
第二のエッチングレシピは、第一のエッチングレシピよりも多くの粒子を前記凹部底表面上に堆積させる作用を有する、
請求項4に記載の方法。
【請求項6】
第一のエッチングレシピでは、第一の濃度のC4F8ガスを含むパッシベーションガス混合物を第一のエッチングプロセスの各パッシベーションサイクルにおいて用い、
第二のエッチングレシピでは、第一の濃度よりも高い第二の濃度のC4F8ガスを含むパッシベーションガス混合物を第二のエッチングプロセスの各パッシベーションサイクルにおいて用いる、
請求項5に記載の方法。
【請求項7】
第一のエッチングレシピでは、第一のエッチング継続時間を第一のエッチングプロセスの各エッチングサイクルにおいて用い、
第二のエッチングレシピでは、第一のエッチング継続時間よりも短い第二のエッチング継続時間を第二のエッチングプロセスの各エッチングサイクルにおいて用いる、
請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
第一のエッチングレシピでは、第一のパッシベーション継続時間を第一のエッチングプロセスの各パッシベーションサイクルにおいて用い、
第二のエッチングレシピでは、第一のパッシベーション継続時間よりも長い第二のパッシベーション継続時間を第二のエッチングプロセスの各パッシベーションサイクルにおいて用いる、
請求項5乃至7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記凹部形成工程は、
前記半導体基板の第一の表面に形成する予定の前記凹部の位置及び平面寸法を決める開口部を有するマスク層を前記半導体基板の第一の表面上に形成する、マスク層形成工程と、
前記半導体基板の第一の表面に前記マスク層開口部を介して異方性エッチングを施して、前記凹部底表面上に形成する予定の前記表面プロファイル特徴部と同じ表面プロファイル特徴部を有する内面を有するキャビティを前記半導体基板の第一の表面に形成する、第一のエッチング工程と、
前記第一のエッチング工程が完了した後に、前記半導体基板の第一の表面に形成する予定の前記凹部の上部開口を含む平面に対して垂直な方向に前記キャビティ内面に異方性エッチングを施して、前記凹部側表面と前記表面プロファイル特徴部を有する前記凹部底表面とを形成する、第二のエッチング工程と、
を更に含む、請求項1乃至3のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記半導体基板は、シリコン単結晶から成るシリコン基板であり、
前記シリコン基板の上面は、前記シリコン単結晶の(100)面であり、
前記凹部は、長手方向が前記シリコン単結晶の[011]方向に沿っている線形の凹部である、
請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記半導体基板は、シリコン単結晶から成るシリコン基板であり、
前記シリコン基板の上面は、前記シリコン単結晶の(110)面であり、
前記凹部は、長手方向が前記シリコン単結晶の[211]方向に沿っている線形の凹部である、
請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記凹部形成工程は、
前記半導体基板の第一の表面に形成する予定の前記凹部の位置及び平面寸法を決める開口部であって真直側壁を有する開口部を有するフォトレジスト層を前記半導体基板の第一の表面上に形成する、フォトレジスト層形成工程と、
前記フォトレジスト層をアニーリングして、前記真直側壁を有する開口部を変形させて開口部の内側方向へ湾曲した側壁を有する開口部とする、アニーリング工程と、
前記湾曲した側壁を有する開口部を介して前記半導体基板の第一の表面にエッチングを施して、上部開口及び前記上部開口から離れる方向に湾曲した内面を有するキャビティを前記半導体基板の第一の表面に形成する、第一のエッチング工程と、
前記第一のエッチング工程が完了した後に、前記キャビティ上部開口を含む平面に対して垂直な方向に前記キャビティ内面を介して前記半導体基板にエッチングを施して、前記凹部側表面と前記凹部上部開口から離れる方向に湾曲した前記凹部底表面とを形成する、第二のエッチング工程と、
を更に含み、
前記凹部底表面の前記湾曲が前記拡張表面積を供する、
請求項1乃至3のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記凹部形成工程は、
前記半導体基板の第一の表面上にフォトレジスト層を形成する、フォトレジスト層形成工程と、
グレースケールマスクを用いて前記フォトレジスト層をパターニングして、前記半導体基板の第一の表面に形成する予定の前記凹部の位置及び平面寸法を決める薄層部であって薄層部の基部より上方に突き出た一つ以上の突起を呈する厚さプロファイルを有する薄層部を前記フォトレジスト層に形成する、薄層部形成工程と、
前記パターニングされたフォトレジスト層を介して前記半導体基板の第一の表面にエッチングを施して、前記パターニングされたフォトレジスト層の前記厚さプロファイルに合致する一つ以上の突起を含む内面を有するキャビティを前記半導体基板の第一の表面に形成する、第一のエッチング工程と、
前記第一のエッチング工程が完了した後に、前記キャビティの上部開口を含む平面に対して垂直な方向に前記キャビティ内面を介して前記半導体基板にエッチングを施して、前記凹部側表面と前記キャビティ内面に形成されていた前記一つ以上の突起に合致する一つ以上の突起を含む前記凹部底表面と、を形成する、第二のエッチング工程と、
を更に含む、請求項1乃至3のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記凹部の深さと前記凹部底表面の幅とのアスペクト比は10:1乃至100:1である、請求項1乃至13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記方法により、前記半導体基板に前記凹部を含む複数の凹部の周期的アレイが形成され、前記複数の凹部のそれぞれの底から上に前記メッキ金属導体が充填される、請求項1乃至14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記凹部は、前記凹部側表面に沿って30μm乃至200μmの深さを有し、前記凹部底表面に沿って2μm乃至20μmの幅を有する、請求項1乃至15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
前記凹部は、100μmの深さと3μmの幅とを有する、請求項1乃至15のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
前記メッキ金属導体は金である、請求項1乃至17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
前記半導体基板はシリコンを含む、請求項1乃至18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
前記表面プロファイル特徴部形成工程は、前記凹部底表面上に複数のシリコン針状体を形成する工程を含む、請求項1乃至19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
前記表面プロファイル特徴部形成工程は、前記凹部底表面上に複数の突起を形成する工程を含む、請求項1乃至19のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
前記表面プロファイル特徴部形成工程は、前記凹部底表面上に単一の尖った突起を形成する工程を含む、請求項1乃至19のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
前記表面プロファイル特徴部形成工程は、前記凹部上部開口から離れる方向に曲がった前記凹部底表面を形成する工程を含む、請求項1乃至19のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
前記凹部上部開口から離れる方向に曲がった前記凹部底表面は、ある角度で互いに交わる二つ以上の平坦な小面を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記凹部上部開口から離れる方向に曲がった前記凹部底表面は、前記凹部上部開口から離れる方向に滑らかに湾曲した表面を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記凹部側表面の少なくとも一部は絶縁体材料により被覆される、請求項1乃至25のいずれかに記載の方法。
【請求項27】
前記絶縁体材料はプラズマ化学気相成長法により前記凹部側表面に置かれる、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記絶縁体材料は熱酸化法により前記凹部側表面に生成される、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記表面プロファイル特徴部形成工程は、
前記凹部側表面及び前記凹部底表面を覆う絶縁体被覆を前記半導体基板の第一の表面上に形成する、絶縁体被覆形成工程と、
前記絶縁体被覆に対するエッチング速度よりも前記半導体基板に対するエッチング速度が高いドライエッチャントを用いるエッチングを前記凹部底表面に形成された前記絶縁体被覆に施して、前記凹部側表面に前記絶縁体被覆を残したまま前記ドライエッチャントにより前記凹部底表面から前記絶縁体被覆を完全に除去して前記凹部底表面を前記凹部上部開口から離れる方向に曲げる、エッチング工程と、
を更に含む、請求項1乃至3のいずれかに記載の方法。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図2E】
【図2F】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7A】
【図7D】
【図7E】
【図9C】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図11A】
【図11C】
【図12A】
【図12B】
【図12C】
【図12D】
【図12E】
【図12F】
【図7B】
【図7C】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図9A】
【図9B】
【図11B】
【図1B】
【図1C】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図2E】
【図2F】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7A】
【図7D】
【図7E】
【図9C】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図11A】
【図11C】
【図12A】
【図12B】
【図12C】
【図12D】
【図12E】
【図12F】
【図7B】
【図7C】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図9A】
【図9B】
【図11B】
【公開番号】特開2013−49923(P2013−49923A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−184382(P2012−184382)
【出願日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
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