説明

X線分析方法およびその装置

【課題】石灰中の強熱減量の含有率を短時間で精度よく求めることができるX線分析方法およびその装置を提供する。
【解決手段】本発明のX線分析方法は、強熱減量の含有率が既知の石灰からなる標準試料Sに1次X線2を照射し、前記標準試料Sから発生するコンプトン散乱線6の強度を検出し、検出したコンプトン散乱線6の強度と強熱減量の含有率との相関を示す強熱減量の検量線を作成し、石灰からなる未知試料Sに1次X線2を照射し、前記未知試料Sから発生するコンプトン散乱線6の強度を検出し、前記強熱減量の検量線を用いて前記未知試料S中の強熱減量の含有率を求める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石灰中の強熱減量の含有率を求めるX線分析方法およびその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本願明細書において石灰とは、生石灰(主成分は酸化カルシウムCaO)、消石灰(主成分は水酸化カルシウムCa(OH))および石灰石(主成分は炭酸カルシウムCaCO)をいう。石灰石を熱分解して生石灰を製造しており、製造された生石灰中の強熱減量の管理が重要であり、下記の公定法によって定量されている。本願明細書において、強熱減量とは試料が強熱されたことによって生じる減量をいい、この減量を重量百分率(mass%)で表示したものを強熱減量の含有率という。
【0003】
公定法であるJIS R9011 2006 「石灰の試験方法」では、石灰石以外の石灰について規定し、強熱減量は石灰を1050℃で恒量になるまで時間をかけて強熱し、この石灰を秤量しその減量によって求めている。石灰石については、JIS M8850 1994 「石灰石分析方法」(上記JIS法と加熱過程に少し違いがある。)に規定されている方法によって同様に求めている。二酸化炭素の含有率は赤外線吸収法または容量法で求められている。また、生石灰の場合、生石灰の水分吸収劣化を示す数値として、強熱減量時に揮発する水分(HO)の含有率を扱うが、水分の含有率は、上記の方法によって求められた強熱減量の含有率から二酸化炭素(CO)の含有率を差し引いて求められている。このように、強熱減量の含有率は二酸化炭素の含有率と強熱減量時に揮発する水分の含有率とを加算したものとなる。以下、強熱減量時に揮発する水分を強熱減量中の水分と称する。石灰の主成分であるCaOやその他の成分であるMgO、SiO、Al、Fe、P、Sなどは蛍光X線分析方法によって定量されている。
【0004】
一方、石灰石等を熱分解して生石灰を製造し石灰原料とする場合、製造しつつある石灰原料中の酸化カルシウムの焼成具合を管理するために、炉前にて短時間(10分未満)に石灰原料中の酸化カルシウムの含有率(濃度)を測定している蛍光X線分析方法がある(特許文献1)。
【0005】
この蛍光X線分析方法は、主成分である酸化カルシウムと二酸化炭素の含有率が既知の石灰原料からなる標準試料に1次X線を照射し、カルシウムから発生する蛍光X線強度を検出し、試料から発生するコンプトン散乱線の強度を検出し、前記蛍光X線強度と前記コンプトン散乱線の強度との比と、酸化カルシウムの含有率との相関を示す検量線を作成して、石灰原料に1次X線を照射し、カルシウムから発生する蛍光X線強度を検出し、試料から発生するコンプトン散乱線の強度を検出し、前記蛍光X線強度と前記コンプトン散乱線の強度との比を求め、前記検量線を用いて酸化カルシウムの含有率を検出する石灰原料中の酸化カルシウムの含有率検出方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−306168号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この特許文献1には、Rh−Kαコンプトン散乱線の強度が、試料中の二酸化炭素の含有率ときわめてよい相関をもつことに着目し、Rh−Kαコンプトン散乱線の強度によって試料中の二酸化炭素の含有率を求めることが記載されており、石灰原料は主成分であるCaOと第2成分であるCOとが2元系をなすという考えに基づいている。この特許文献1には、X線分析方法による二酸化炭素の定量方法について記載されているが、強熱減量そのものおよび強熱減量中の水分の定量については記載されていない。
【0008】
そこで、X線分析方法による強熱減量および強熱減量中の水分の定量方法について、生石灰について実験(詳細については後述する)を行った結果、生石灰中の強熱減量の含有率とコンプトン散乱線の強度、特にRh−Kαコンプトン散乱線の強度とがよい相関をもつことを見出した。併せて、Rh−Kαコンプトン散乱線の強度は、強熱減量中の水分の含有率が一定であれば二酸化炭素の含有率ときわめてよい相関をもつが、水分の含有率が変動すると二酸化炭素の含有率とは相関せず、Rh−Kαコンプトン散乱線を用いて二酸化炭素の含有率を精度よく求めることができないことが分かった。したがって、従来の技術では、石灰中の強熱減量の含有率を短時間で精度よく求めることができない。
【0009】
本発明は、前記従来の問題に鑑みてなされたもので、石灰中の強熱減量の含有率を短時間で精度よく求めることができるX線分析方法およびその装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、本発明の第1構成のX線分析方法は、強熱減量の含有率が既知の石灰からなる標準試料に1次X線を照射し、前記標準試料から発生するコンプトン散乱線の強度を検出し、検出したコンプトン散乱線の強度と強熱減量の含有率との相関を示す強熱減量の検量線を作成し、石灰からなる未知試料に1次X線を照射し、前記未知試料から発生するコンプトン散乱線の強度を検出し、前記強熱減量の検量線を用いて前記未知試料中の強熱減量の含有率を求める。
【0011】
本発明の第1構成のX線分析方法によれば、石灰の強熱減量の含有率を短時間で精度よく求めることができる。
【0012】
本発明の第2構成のX線分析方法は、強熱減量および二酸化炭素の含有率が既知の石灰からなる標準試料に1次X線を照射し、前記標準試料から発生するコンプトン散乱線の強度およびC−Kα線の強度を検出し、検出したコンプトン散乱線の強度と強熱減量の含有率との相関を示す強熱減量の検量線、および検出したC−Kα線の強度と二酸化炭素の含有率との相関を示す二酸化炭素の検量線を作成し、石灰からなる未知試料に1次X線を照射し、前記未知試料から発生するコンプトン散乱線の強度およびC−Kα線の強度を検出し、前記強熱減量の検量線および二酸化炭素の検量線を用いて前記未知試料中の強熱減量および二酸化炭素の含有率をそれぞれ求め、この求めた強熱減量の含有率から求めた二酸化炭素の含有率を差し引いて前記未知試料の強熱減量中の水分の含有率を求める。
【0013】
本発明の第2構成のX線分析方法によれば、第1構成のX線分析方法に加え、さらに石灰の強熱減量中の二酸化炭素と水分の含有率を短時間で精度よく求めることができる。
【0014】
本発明の第3構成のX線分析方法は、強熱減量の含有率が既知の石灰からなる標準試料に1次X線を照射し、前記標準試料から発生するコンプトン散乱線の強度を検出し、
強熱減量の含有率、および、二酸化炭素、MgO、SiO、Al、Fe、P、Sのうち少なくとも一つの成分の含有率が既知の石灰からなる補正用標準試料または石灰の仮想補正用標準試料を用いて、前記少なくとも一つの成分の影響について、コンプトン散乱線の強度と強熱減量の含有率との相関を示す強熱減量の検量線の補正のためのマトリックス補正係数を求め、前記検出したコンプトン散乱線の強度および前記求めたマトリックス補正係数を用いて強熱減量の補正検量線を作成し、石灰からなる未知試料に1次X線を照射し、前記未知試料から発生するコンプトン散乱線の強度、および、C、Mg、Si、Al、Fe、P、Sのうち前記少なくとも一つの成分に対応する蛍光X線の強度を検出し、前記強熱減量の補正検量線を用いて前記未知試料中の強熱減量の含有率を求める。本願明細書において石灰の仮想補正用標準試料とは、理論マトリックス補正係数を求めるために石灰の組成を仮定した仮想の試料をいう。
【0015】
本発明の第3構成のX線分析方法によれば、マトリックス補正をすることによって強熱減量の検量線の正確度が向上し、強熱減量の含有率をより優れた正確さで分析することができる。
【0016】
本発明の第4構成のX線分析方法は、強熱減量の含有率および二酸化炭素の含有率が既知の石灰からなる標準試料に1次X線を照射し、前記標準試料から発生するコンプトン散乱線の強度およびC−Kα線の強度を検出し、前記標準試料または石灰の仮想標準試料を用いて、二酸化炭素の影響について、コンプトン散乱線の強度と強熱減量の含有率との相関を示す強熱減量の検量線の補正のためのマトリックス補正係数を求め、前記検出したコンプトン散乱線の強度および前記求めたマトリックス補正係数を用いて強熱減量の補正検量線を作成するとともに、前記検出したC−Kα線の強度と二酸化炭素の含有率との相関を示す二酸化炭素の検量線を作成し、石灰からなる未知試料に1次X線を照射し、前記未知試料から発生するコンプトン散乱線の強度およびC−Kα線の強度を検出し、前記強熱減量の補正検量線および二酸化炭素の検量線を用いて前記未知試料中の強熱減量および二酸化炭素の含有率をそれぞれ求め、この求めた強熱減量の含有率から求めた二酸化炭素の含有率を差し引いて前記未知試料の強熱減量中の水分の含有率を求める。
【0017】
本発明の第4構成のX線分析方法によれば、マトリックス補正をすることによって強熱減量の検量線の正確度が向上し、二酸化炭素と水分の含有率をより優れた正確さで分析することができる。
【0018】
本発明の第5構成のX線分析装置は、試料に1次X線を照射するX線源と、前記X線源から1次X線が照射された試料から発生する2次X線の強度を検出する検出手段と、を備えるX線分析装置であって、強熱減量の含有率が既知の石灰からなる標準試料に前記X線源から1次X線を照射し、前記標準試料から発生するコンプトン散乱線の強度を前記検出手段で検出して、検出したコンプトン散乱線の強度と強熱減量の含有率との相関を示す強熱減量の検量線を作成する検量線作成手段と、石灰からなる未知試料に前記X線源から1次X線を照射し、前記未知試料から発生するコンプトン散乱線の強度を前記検出手段で検出して、前記検量線作成手段によって作成された強熱減量の検量線によって前記未知試料中の強熱減量の含有率を求める定量手段と、を備える。
【0019】
本発明の第5構成のX線分析装置によれば、石灰の強熱減量の含有率を短時間で精度よく求めることができる。
【0020】
本発明の第6構成のX線分析装置は、試料に1次X線を照射するX線源と、前記X線源から1次X線が照射された試料から発生する2次X線の強度を検出する検出手段と、を備えるX線分析装置であって、強熱減量および二酸化炭素の含有率が既知の石灰からなる標準試料に前記X線源から1次X線を照射し、前記標準試料から発生するコンプトン散乱線の強度およびC−Kα線の強度を前記検出手段で検出して、検出したコンプトン散乱線の強度と強熱減量の含有率との相関を示す強熱減量の検量線、および検出したC−Kα線の強度と二酸化炭素の含有率との相関を示す二酸化炭素の検量線を作成する検量線作成手段と、石灰からなる未知試料に前記X線源から1次X線を照射し、前記未知試料から発生するコンプトン散乱線の強度およびC−Kα線の強度を前記検出手段で検出して、前記検量線作成手段によって作成された強熱減量の検量線および二酸化炭素の検量線によって前記未知試料中の強熱減量および二酸化炭素の含有率をそれぞれ求める定量手段と、前記定量手段によって求められた強熱減量の含有率から求められた二酸化炭素の含有率を差し引いて前記未知試料の強熱減量中の水分の含有率を算出する水分算出手段と、を備える。
【0021】
本発明の第6構成のX線分析装置によれば、第1構成のX線分析装置に加え、さらに石灰の強熱減量中の二酸化炭素と水分の含有率を短時間で精度よく求めることができる。
【0022】
本発明の第7構成のX線分析装置は、試料に1次X線を照射するX線源と、前記X線源から1次X線が照射された試料から発生する2次X線の強度を検出する検出手段と、を備えるX線分析装置であって、強熱減量の含有率、および、二酸化炭素、MgO、SiO、Al、Fe、P、Sのうち少なくとも一つの成分の含有率が既知の石灰からなる補正用標準試料または石灰の仮想補正用標準試料を用いて、前記少なくとも一つの成分の影響について、コンプトン散乱線の強度と強熱減量の含有率との相関を示す強熱減量の検量線の補正のためのマトリックス補正係数を算出する補正係数算出手段と、強熱減量の含有率が既知の石灰からなる標準試料に前記X線源から1次X線を照射し、前記標準試料から発生するコンプトン散乱線の強度を前記検出手段で検出して、その検出したコンプトン散乱線の強度および前記補正係数算出手段によって算出されたマトリックス補正係数を用いて強熱減量の補正検量線を作成する検量線作成手段と、石灰からなる未知試料に前記X線源から1次X線を照射し、前記未知試料から発生するコンプトン散乱線の強度、および、C、Mg、Si、Al、Fe、P、Sのうち前記少なくとも一つの成分に対応する蛍光X線の強度を前記検出手段で検出して、前記検量線作成手段によって作成された強熱減量の補正検量線を用いて前記未知試料中の強熱減量の含有率を求める定量手段と、を備える。
【0023】
本発明の第7構成のX線分析装置によれば、マトリックス補正をすることによって強熱減量の検量線の正確度が向上し、強熱減量の含有率をより優れた正確さで分析することができる。
【0024】
本発明の第8構成のX線分析装置は、試料に1次X線を照射するX線源と、前記X線源から1次X線が照射された試料から発生する2次X線の強度を検出する検出手段と、を備えるX線分析装置であって、強熱減量の含有率および二酸化炭素の含有率が既知の石灰からなる標準試料または石灰の仮想標準試料を用いて、二酸化炭素の影響について、コンプトン散乱線の強度と強熱減量の含有率との相関を示す強熱減量の検量線の補正のためのマトリックス補正係数を算出する補正係数算出手段と、前記標準試料に前記X線源から1次X線を照射し、前記標準試料から発生するコンプトン散乱線の強度およびC−Kα線の強度を前記検出手段で検出して、前記検出したコンプトン散乱線の強度および前記補正係数算出手段によって算出されたマトリックス補正係数を用いて強熱減量の補正検量線を作成するとともに、前記検出したC−Kα線の強度と二酸化炭素の含有率との相関を示す二酸化炭素の検量線を作成する検量線作成手段と、を備える。
【0025】
本発明の第8構成のX線分析装置は、さらに、石灰からなる未知試料に前記X線源から1次X線を照射し、前記未知試料から発生するコンプトン散乱線の強度およびC−Kα線の強度を前記検出手段で検出して、前記検量線作成手段によって作成された強熱減量の補正検量線および二酸化炭素の検量線を用いて前記未知試料中の強熱減量および二酸化炭素の含有率をそれぞれ求める定量手段と、前記定量手段によって求められた強熱減量の含有率から求められた二酸化炭素の含有率を差し引いて前記未知試料の強熱減量中の水分の含有率を算出する水分算出手段と、を備える。
【0026】
本発明の第8構成のX線分析装置によれば、マトリックス補正をすることによって強熱減量の検量線の正確度が向上し、二酸化炭素と水分の含有率をより優れた正確さで分析することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第1実施形態のX線分析装置を示す概略図である。
【図2】同実施形態における強熱減量の含有率を求めるための検量線を示す図である。
【図3】同実施形態における二酸化炭素の含有率を求めるための検量線を示す図である。
【図4】実験によって求めた強熱減量の含有率とRh−Kαコンプトン散乱線のX線強度との相関を示す図である。
【図5】同第2実施形態のX線分析装置を示す概略図である。
【図6】強熱減量の理論標準試料とRh−Kαコンプトン散乱線の理論X線強度とによって作成した検量線を示す図である。
【図7】強熱減量の理論標準試料とRh−Kαトムソン散乱線の理論X線強度とによって作成した検量線を示す図である。
【図8】二酸化炭素の含有率とRh−Kαコンプトン散乱線の理論X線強度との相関を示す図である。
【図9】同第3実施形態のX線分析装置を示す概略図である。
【図10】同実施形態における強熱減量の含有率を求めるための補正検量線を示す図である。
【図11】同実施形態における強熱減量の含有率を求めるためのマトリックス未補正検量線を示す図である。
【図12】同第4実施形態のX線分析装置を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の第1実施形態の分析方法について説明する。まず、この分析方法に用いるX線分析装置の構成について、図1にしたがって説明する。この装置は、試料台8に載置された、生石灰などの石灰からなる試料Sに、ロジウム(Rh)X線管などのX線源1から1次X線2を照射して、発生する2次X線4の強度を検出手段9で測定する蛍光X線分析装置などのX線分析装置である。2次X線4には、1次X線2が試料Sに照射されて発生する蛍光X線、コンプトン散乱線、トムソン散乱線などが含まれる。検出手段9は、試料Sから発生した2次X線4が入射されて測定対象の2次X線6を回折するフッ化リチウム(LiF)などの分光素子5と、その回折された2次X線6の強度を測定する検出器7とを含む。分光素子5と検出器7とは、図示しないゴニオメータにより、分光素子5で分光される2次X線6の波長を変えながらその2次X線6が検出器7に入射するように、一定の角度関係を保って回動される。
【0029】
この装置は、以下の検量線作成手段11、定量手段12および水分算出手段13を備える。検量線作成手段11は、強熱減量および二酸化炭素の含有率が既知の石灰からなる標準試料SにX線源1から1次X線2を照射し、標準試料Sから発生する2次X線4を分光素子5で分光させたコンプトン散乱線6Aの強度およびC−Kα線6Bの強度を検出器7で検出して、検出したコンプトン散乱線6Aの強度と強熱減量の含有率との相関を示す強熱減量の検量線、および検出したC−Kα線6Bの強度と二酸化炭素の含有率との相関を示す二酸化炭素の検量線を作成し、作成されたそれぞれの検量線を記憶する。定量手段12は、石灰からなる未知試料SにX線源1から1次X線2を照射し、未知試料Sから発生する2次X線4を分光素子5で分光させたコンプトン散乱線6Aの強度およびC−Kα線6Bの強度を検出器7で検出して、検量線作成手段11によって作成、記憶された強熱減量の検量線および二酸化炭素の検量線を、それぞれ適用して未知試料S中の強熱減量および二酸化炭素の含有率をそれぞれ求める。水分算出手段13は、定量手段12によって求められた強熱減量の含有率から求められた二酸化炭素の含有率を差し引いて未知試料Sの強熱減量中の水分の含有率を算出する。すなわち、第1実施形態の方法は、石灰からなる試料中の強熱減量、二酸化炭素および強熱減量中の水分の含有率を求めるX線分析方法である。
【0030】
この装置を用いた第1実施形態の分析方法においては、図1における石灰からなる試料S中の強熱減量から発生するコンプトン散乱線6Aの強度、たとえば1次X線2を発生するX線源1にロジウム(Rh)X線管を用いたときにはRh−Kαコンプトン散乱線6Aの強度が、試料S中の強熱減量の含有率ときわめてよい相関をもつことに着目し、Rh−Kαコンプトン散乱線6Aの強度によって試料S中の強熱減量の含有率を求めることとした。本発明に先立って行った実験によって求めた強熱減量の含有率とRh−Kαコンプトン散乱線のX線強度との相関を図4に示す。この図4によるとRh−Kαコンプトン散乱線6Aの強度と強熱減量の含有率とが直線比例関係になっていることが分かる。
【0031】
第1実施形態においては、まず、図1に示すように、強熱減量と二酸化炭素の含有率が既知の石灰からなる標準試料Sを複数個用いて、これらの標準試料SにX線源1から1次X線2を照射して、強熱減量から発生するRh−Kαコンプトン散乱線6Aの強度と二酸化炭素の構成元素である炭素(C)から発生する蛍光X線すなわちC−Kα線6Bの強度とを検出器7にて検出し、検出したコンプトン散乱線6Aの強度と強熱減量の含有率との相関を示す強熱減量の検量線、および検出したC−Kα線6Bの強度と二酸化炭素の含有率との相関を示す二酸化炭素の検量線を検量線作成手段11で作成し、それぞれを記憶する。図2に作成された強熱減量の検量線を示す。C−Kα線6Bの強度と二酸化炭素の構成元素である炭素(C)の含有率との相関と、C−Kα線6Bの強度と二酸化炭素の含有率との相関とはともに直線比例関係であり、図3に二酸化炭素の検量線を示す。前記石灰からなる標準試料とは、生石灰中の強熱減量、二酸化炭素および強熱減量中の水分の含有率がJIS R9011 2006 「石灰の試験方法」によって求められた試料をいう。
【0032】
次に、図1に示すように、未知試料SにX線源1から1次X線2が照射され、強熱減量から発生するRh−Kαコンプトン散乱線6Aの強度と二酸化炭素の構成元素である炭素から発生するC−Kα線6Bの強度とが検出器7にて検出され、定量手段12によって各検出強度に検量線作成手段11が記憶した対応する検量線(図2および3)が適用されて、強熱減量および二酸化炭素の含有率(mass%)が求められる。
【0033】
次に、定量手段12によって求められた強熱減量の含有率(mass%)から二酸化炭素の含有率が差し引かれて、強熱減量中の水分の含有率(mass%)が水分算出手段13によって算出される。
【0034】
本実施形態の方法によれば、試料Sから発生するRh−Kαコンプトン散乱線6Aの強度とC−Kα線6Bの強度とのみを検出するだけで、石灰中の強熱減量、二酸化炭素、強熱減量中の水分のそれぞれの含有率を短時間で精度よく求めることができる。さらに、石灰の主成分であるCaOやその他の成分であるMgO、SiO、Al、Fe、P、Sなどは、従来から蛍光X線分析によって定量されているので、JIS R9011 2006 「石灰の試験方法」で規定されている石灰中の全ての成分を蛍光X線分析によって定量することができる。
【0035】
以下に本発明の第2実施形態の分析方法について説明する。まず、この方法に用いる装置を図5に示す。この装置は、図1に示すX線分析装置と同様に、X線源1、試料台8、分光素子5、検出手段9、検量線作成手段11および定量手段12を備えているが、水分算出手段13は備えず、石灰からなる試料中の強熱減量の含有率を求める蛍光X線分析装置などのX線分析装置である。
【0036】
この装置を用いて、第2実施形態の分析方法では、強熱減量が既知の石灰からなる標準試料Sを複数個用いて、これらの標準試料SにX線源1から1次X線2を照射して、強熱減量から発生するRh−Kαコンプトン散乱線6Aの強度を検出器7にて検出し、検出したコンプトン散乱線6Aの強度と強熱減量の含有率との相関を示す強熱減量の検量線を検量線作成手段11で作成し、記憶する。図2に作成された強熱減量の検量線を示す。
【0037】
未知試料SにX線源1から1次X線2が照射され、強熱減量から発生するRh−Kαコンプトン散乱線6Aの強度が検出器7にて検出され、定量手段12によって各検出強度に検量線作成手段11が記憶した検量線(図2)が適用されて、強熱減量の含有率(mass%)が求められる。
【0038】
本実施形態の方法によれば、試料Sから発生するRh−Kαコンプトン散乱線6Aの強度を検出して、石灰中の強熱減量の含有率を短時間で精度よく求めることができる。
【0039】
次に、本発明に先立って行った実験および理論的検証について説明する。強熱減量、二酸化炭素および強熱減量中の水分の含有率が既知の標準試料を用いて、Rh−Kαコンプトン散乱線の強度と強熱減量の含有率との相関について調べた。強熱減量が0.63〜10.07mass%の範囲にある複数の標準試料を用い、測定したRh−Kαコンプトン散乱線の強度をプロットした検量線を図4に示す。図4に示すようにRh−Kαコンプトン散乱線の強度は強熱減量の含有率と極めてよい直線関係が得られ、正確度は0.33mass%であった。
【0040】
この実験結果を検証するために理論的検証を行ったので、それについて説明する。強熱減量が1.0〜11.0mass%の範囲にあり、元素が均一に分布し、共存元素の影響なども考慮した試料を理論標準試料とし、蛍光X線分析FP法に基づくソフトウエアを用いてRh−Kαコンプトン散乱線とRh−Kαトムソン散乱線との理論X線強度を求めて作成した検量線を図6と図7に示す。図6がRh−Kαコンプトン散乱線の検量線であり、図7がRh−Kαトムソン散乱線の検量線である。Rh−Kαコンプトン散乱線の検量線の相関係数は0.9993であり、Rh−Kαトムソン散乱線の検量線の相関係数は0.9988である。Rh−Kαコンプトン散乱線の検量線はRh−Kαトムソン散乱線の検量線に比べて高勾配であり、Rh−Kαコンプトン散乱線の検量線が好ましい。
【0041】
次に、上記と同様にして二酸化炭素の含有率が0〜10mss%の範囲の理論標準試料についてRh−Kαコンプトン散乱線の理論X線強度との相関を求めた結果を図8に示す。強熱減量中の水分の含有率が一定で1.0mass%であると、二酸化炭素の含有率とRh−Kαコンプトン散乱線の理論X線強度とはよい相関を示している。図8における二酸化炭素の含有率2mass%の位置の縦軸方向のプロット点は、含有率2.0mass%の二酸化炭素からのRh−Kαコンプトン散乱線の理論X線強度が水分の含有率(下方から順に、0、0.5、1.0、1.5、2.0、2.5mass%)に応じて変化することを表している。すなわち、強熱減量中の水分の含有率が一定であれば二酸化炭素の含有率とRh−Kαコンプトン散乱線の理論X線強度とはよい相関を示すが、水分の含有率が変化すると、良好な相関を示さない。したがって、Rh−Kαコンプトン散乱線を用いて二酸化炭素の含有率を精度よく求めることはできない。
【0042】
そのため、本発明においては二酸化炭素の含有率を求めるにはRh−Kαコンプトン散乱線を使用せずに、二酸化炭素の構成元素である炭素の含有率をC−Kα線を用いて求め、その含有率を換算して二酸化炭素の含有率を求めている。
【0043】
特許文献1にRh−Kαコンプトン散乱線の強度によって試料中の二酸化炭素の含有率(濃度)を求めることが記載されているが、この文献には水分の含有率について記載されていない。これは、原料石灰石の表面の付着水は100℃を越えた段階で既に揮発し、原料からの持ち込み水分は存在せず、炉前での生石灰は水分を含んでいない試料となり、二酸化炭素の含有率とRh−Kαコンプトン散乱線の強度とがよい相関を示したと思われる。
【0044】
以下に本発明の第3実施形態の分析方法について説明する。まず、この方法に用いる装置を図9に示す。この装置は、図1に示すX線分析装置と同様に、X線源1、試料台8、分光素子5、検出手段9、検量線作成手段11、定量手段12および水分算出手段13を備えており、さらに補正係数算出手段14を備え、マトリックス補正をすることによって石灰からなる試料S中の強熱減量、二酸化炭素および強熱減量中の水分の含有率を求める蛍光X線分析装置である。
【0045】
補正係数算出手段14は、強熱減量の含有率、および、二酸化炭素、MgO、SiO、Al、Fe、P、Sのうち少なくとも一つの成分の含有率が既知の石灰からなる補正用標準試料または石灰の仮想補正用標準試料のコンプトン散乱線4の強度を用いて、二酸化炭素、MgO、SiO、Al、Fe、P、Sのうち少なくとも一つの成分の影響について、コンプトン散乱線の強度と強熱減量の含有率との相関を示す強熱減量の検量線の補正のためのマトリックス補正係数を算出する。
【0046】
検量線作成手段11は、強熱減量の含有率および二酸化炭素の含有率が既知の石灰からなる標準試料SにX線源1から1次X線2を照射し、前記標準試料Sから発生するコンプトン散乱線6Aの強度およびC−Kα線6Bの強度を検出手段9で検出して、補正係数算出手段14によって算出されたマトリックス補正係数を用いて強熱減量の補正検量線を作成するとともに、検出したC−Kα線の強度と二酸化炭素の含有率との相関を示す二酸化炭素の検量線を作成して作成された強熱減量の補正検量線および二酸化炭素の検量線を記憶する。
【0047】
定量手段12は、石灰からなる未知試料SにX線源1から1次X線2を照射し、未知試料Sから発生するコンプトン散乱線6Aの強度およびC−Kα線6Bの強度を検出手段9で検出して、検量線作成手段11によって作成された強熱減量の補正検量線および二酸化炭素の検量線を、それぞれ適用して未知試料S中の強熱減量および二酸化炭素の含有率をそれぞれ求める。水分算出手段13は、第1実施形態と同様に未知試料Sの強熱減量中の水分の含有率を算出する。
【0048】
第3実施形態の分析方法においては、まず、強熱減量の含有率および二酸化炭素の含有率が既知の石灰からなる標準試料SにX線源1から1次X線2を照射し、標準試料Sから発生するコンプトン散乱線6Aの強度およびC−Kα線6Bの強度を検出手段9で検出する。次に、石灰の組成を次のように仮定した石灰の仮想補正用標準試料を用いて図9に示す装置の補正係数算出手段14に理論マトリックス補正係数を算出させる。例えば、石灰試料をHOとCaOの2元系と考え、含有率が6mass%の強熱減量を基準として、共存成分であるMgO、SiO、Al、Fe、P、Sおよび二酸化炭素の含有率を変化させて補正係数算出手段14に理論マトリックス補正係数を算出させる。算出によって求められた理論マトリックス補正係数を表1に示す。
【0049】
理論マトリックス補正係数の算出には、例えば下記の(1)式を用いる。
【0050】
【表1】

【0051】
【数1】

【0052】
検量線作成手段11に、検出手段9で検出したコンプトン散乱線6Aの強度と補正係数算出手段14で算出された理論マトリックス補正係数とを用いて強熱減量の補正検量線を作成させるとともに、検出手段9で検出したC−Kα線6Bの強度を用いて二酸化炭素の検量線を作成させ、記憶させる。作成された強熱減量の補正検量線を図10に示す。図10の強熱減量の補正検量線において、横軸は強熱減量の含有率(mass%)、縦軸はRh−Kαコンプトン散乱線強度である。この強熱減量の補正検量線の正確度は0.146mass%である。
【0053】
定量手段12は、石灰からなる未知試料SにX線源1から1次X線2を照射し、未知試料Sから発生する2次X線4を分光素子5で分光させたコンプトン散乱線6Aの強度、C−Kα線6Bの強度および、Mg、Si、Al、Fe、P、Sの蛍光X線の強度を検出器7で検出して、検量線作成手段11によって作成、記憶された強熱減量の補正検量線および二酸化炭素の検量線を、それぞれ適用して未知試料S中の強熱減量および二酸化炭素の含有率をそれぞれ求める。水分算出手段13は、定量手段12によって求められた強熱減量の含有率から求められた二酸化炭素の含有率を差し引いて未知試料Sの強熱減量中の水分の含有率を算出する。すなわち、第3実施形態の方法は、石灰からなる試料中の強熱減量の含有率を、共存成分であるMgO、SiO、Al、Fe、P、Sおよび二酸化炭素のマトリックス補正を行って求めるとともに二酸化炭素および強熱減量中の水分の含有率を求めるX線分析方法である。
【0054】
図10に示す強熱減量の補正検量線を評価するために、共存成分であるMgO、SiO、Al、Fe、P、Sおよび二酸化炭素のマトリックス補正を行わない強熱減量の検量線を作成して比較した。MgO、SiO、Al、Fe、P、Sおよび二酸化炭素の含有率が下記の表2に示す範囲にある石灰標準試料Sを用いて、検量線作成手段11によって強熱減量の検量線を作成した。作成された強熱減量のマトリックス未補正検量線を図11に示す。このマトリックス未補正検量線の正確度は0.172mass%であった。上記で求めた図10のマトリックス補正検量線の正確度は0.146mass%であり、マトリックス補正を行うことによって検量線の正確度が向上することが分かった。このように、第3実施形態の分析方法によれば、マトリックス補正をすることによって強熱減量の検量線の正確度が向上し、強熱減量、二酸化炭素および水分の含有率をより優れた正確さで分析することができる。
【0055】
【表2】

【0056】
第3実施形態の分析方法では、MgO、SiO、Al、Fe、P、Sおよび二酸化炭素のマトリックス補正を行ったが、これらの成分のうち少なくとも一つの成分、例えば二酸化炭素のみについて、マトリックス補正を行ってもよい。
【0057】
以下に本発明の第4実施形態の分析方法について説明する。まず、この方法に用いる装置を図12に示す。この装置は、図9に示すX線分析装置と同様に、X線源1、試料台8、分光素子5、検出手段9、検量線作成手段11、定量手段12および補正係数算出手段14を備えているが、水分算出手段13を備えず、石灰からなる試料S中の強熱減量の含有率を求める蛍光X線分析装置である。
【0058】
第4実施形態の分析方法においては、まず、強熱減量の含有率が既知の石灰からなる標準試料SにX線源1から1次X線2を照射し、標準試料Sから発生するコンプトン散乱線6Aの強度を検出手段9で検出する。次に、第3実施形態と同様にして、補正係数算出手段14に、共存成分のMgO、SiO、Al、Fe、P、Sおよび二酸化炭素のマトリックス補正係数を算出させる。検量線作成手段11に、検出手段9で検出したコンプトン散乱線6Aの強度と補正係数算出手段14で算出された理論マトリックス補正係数とを用いて強熱減量の補正検量線を作成させ、記憶させる。定量手段12は、検量線作成手段11によって作成、記憶された強熱減量の補正検量線によって未知試料S中の強熱減量の含有率を求める。すなわち、第4実施形態の方法は、マトリックス補正を行って石灰からなる試料中の強熱減量の含有率を求めるX線分析方法である。
【0059】
第4実施形態の方法によれば、マトリックス補正をすることによって強熱減量の検量線の正確度が向上し、強熱減量の含有率をより優れた正確さで分析することができる。
【0060】
なお、強熱減量、二酸化炭素とともに共存成分のMgO、SiO、Al、Fe、PおよびSを同時に分析してもよい。その分析方法は、強熱減量の含有率、および、二酸化炭素、MgO、SiO、Al、Fe、P、Sのうち少なくとも一つの成分の含有率が既知の石灰からなる標準試料に1次X線を照射し、前記標準試料から発生するコンプトン散乱線の強度、および、C、Mg、Si、Al、Fe、P、Sのうち、前記少なくとも一つの成分に対応する蛍光X線の強度を検出し、石灰からなる補正用標準試料または石灰の仮想補正用標準試料のコンプトン散乱線の強度を用いて、前記少なくとも一つの成分の影響について、コンプトン散乱線の強度と強熱減量の含有率との相関を示す強熱減量の検量線の補正のためのマトリックス補正係数を求め、前記検出したコンプトン散乱線の強度および前記求めたマトリックス補正係数を用いて強熱減量の補正検量線および検出した前記少なくとも一つの成分に対応する蛍光X線の強度を用いて前記少なくとも一つの成分の検量線を作成し、石灰からなる未知試料に1次X線を照射し、前記未知試料から発生するコンプトン散乱線の強度、および、前記少なくとも一つの成分に対応する蛍光X線の強度を検出し、前記強熱減量の補正検量線および前記少なくとも一つの成分の検量線を用いて前記未知試料中の強熱減量の含有率および前記少なくとも一つの成分の含有率を求める。
【0061】
さらに、強熱減量、二酸化炭素および強熱減量中の水分とともに、主成分であるCaO、共存成分のMgO、SiO、Al、Fe、PおよびSを同時に分析してもよい。
【0062】
強熱減量、二酸化炭素および強熱減量中の水分とともに、主成分であるCaO、共存成分のMgO、SiO、Al、Fe、PおよびSを、上記のように同時に分析することによって、石灰分析において必要とされる全ての成分を蛍光X線分析装置で正確に定量することができる。
【0063】
なお、第3実施形態では理論マトリックス補正係数を求めるのに算出式として上記の(1)式を用いたが、公知の他の算出式を用いてもよいし、石灰からなる補正用標準試料を用いて補正係数算出手段14に回帰計算によりマトリックス補正係数を算出させて求めてもよい。また、補正係数算出手段14を使用せずに、別途、理論X線強度を計算し、設定した石灰の仮想補正用標準試料の含有率との関係から手計算方式で理論マトリックス補正係数を求めてもよい。
【0064】
第1〜第4実施形態の方法で用いた装置は、波長分散型の蛍光X線分析装置として説明したが、エネルギー分散型の蛍光X線分析装置でもよい。
【0065】
なお、本実施形態では1次X線2を発生するX線源1としてロジウムX線管を用いたが、本発明においては、ロジウムX線管に限らず、ターゲットがモリブデンやパラジウム等で形成されたX線管を用いることができる。
【0066】
また、本実施形態では試料として生石灰について説明したが、石灰石、消石灰、タンカル(炭酸カルシウム)などについても本発明は適用できる。
【符号の説明】
【0067】
1 X線源
2 1次X線
4、6 2次X線
9 検出手段
11 検量線作成手段
12 定量手段
13 水分算出手段
14 補正係数算出手段
S 試料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
強熱減量の含有率が既知の石灰からなる標準試料に1次X線を照射し、
前記標準試料から発生するコンプトン散乱線の強度を検出し、
検出したコンプトン散乱線の強度と強熱減量の含有率との相関を示す強熱減量の検量線を作成し、
石灰からなる未知試料に1次X線を照射し、前記未知試料から発生するコンプトン散乱線の強度を検出し、
前記強熱減量の検量線を用いて前記未知試料中の強熱減量の含有率を求めるX線分析方法。
【請求項2】
強熱減量および二酸化炭素の含有率が既知の石灰からなる標準試料に1次X線を照射し、
前記標準試料から発生するコンプトン散乱線の強度およびC−Kα線の強度を検出し、
検出したコンプトン散乱線の強度と強熱減量の含有率との相関を示す強熱減量の検量線、および検出したC−Kα線の強度と二酸化炭素の含有率との相関を示す二酸化炭素の検量線を作成し、
石灰からなる未知試料に1次X線を照射し、前記未知試料から発生するコンプトン散乱線の強度およびC−Kα線の強度を検出し、
前記強熱減量の検量線および二酸化炭素の検量線を用いて前記未知試料中の強熱減量および二酸化炭素の含有率をそれぞれ求め、
この求めた強熱減量の含有率から求めた二酸化炭素の含有率を差し引いて前記未知試料の強熱減量中の水分の含有率を求めるX線分析方法。
【請求項3】
試料に1次X線を照射するX線源と、
前記X線源から1次X線が照射された試料から発生する2次X線の強度を検出する検出手段と、
を備えるX線分析装置であって、
強熱減量の含有率が既知の石灰からなる標準試料に前記X線源から1次X線を照射し、前記標準試料から発生するコンプトン散乱線の強度を前記検出手段で検出して、検出したコンプトン散乱線の強度と強熱減量の含有率との相関を示す強熱減量の検量線を作成する検量線作成手段と、
石灰からなる未知試料に前記X線源から1次X線を照射し、前記未知試料から発生するコンプトン散乱線の強度を前記検出手段で検出して、前記検量線作成手段によって作成された強熱減量の検量線によって前記未知試料中の強熱減量の含有率を求める定量手段と、
を備えるX線分析装置。
【請求項4】
試料に1次X線を照射するX線源と、
前記X線源から1次X線が照射された試料から発生する2次X線の強度を検出する検出手段と、
を備えるX線分析装置であって、
強熱減量および二酸化炭素の含有率が既知の石灰からなる標準試料に前記X線源から1次X線を照射し、前記標準試料から発生するコンプトン散乱線の強度およびC−Kα線の強度を前記検出手段で検出して、検出したコンプトン散乱線の強度と強熱減量の含有率との相関を示す強熱減量の検量線、および検出したC−Kα線の強度と二酸化炭素の含有率との相関を示す二酸化炭素の検量線を作成する検量線作成手段と、
石灰からなる未知試料に前記X線源から1次X線を照射し、前記未知試料から発生するコンプトン散乱線の強度およびC−Kα線の強度を前記検出手段で検出して、前記検量線作成手段によって作成された強熱減量の検量線および二酸化炭素の検量線によって前記未知試料中の強熱減量および二酸化炭素の含有率をそれぞれ求める定量手段と、
前記定量手段によって求められた強熱減量の含有率から求められた二酸化炭素の含有率を差し引いて前記未知試料の強熱減量中の水分の含有率を算出する水分算出手段と、
を備えるX線分析装置。
【請求項5】
強熱減量の含有率が既知の石灰からなる標準試料に1次X線を照射し、
前記標準試料から発生するコンプトン散乱線の強度を検出し、
強熱減量の含有率、および、二酸化炭素、MgO、SiO、Al、Fe、P、Sのうち少なくとも一つの成分の含有率が既知の石灰からなる補正用標準試料または石灰の仮想補正用標準試料を用いて、前記少なくとも一つの成分の影響について、コンプトン散乱線の強度と強熱減量の含有率との相関を示す強熱減量の検量線の補正のためのマトリックス補正係数を求め、
前記検出したコンプトン散乱線の強度および前記求めたマトリックス補正係数を用いて強熱減量の補正検量線を作成し、
石灰からなる未知試料に1次X線を照射し、前記未知試料から発生するコンプトン散乱線の強度、および、C、Mg、Si、Al、Fe、P、Sのうち前記少なくとも一つの成分に対応する蛍光X線の強度を検出し、
前記強熱減量の補正検量線を用いて前記未知試料中の強熱減量の含有率を求めるX線分析方法。
【請求項6】
強熱減量の含有率および二酸化炭素の含有率が既知の石灰からなる標準試料に1次X線を照射し、
前記標準試料から発生するコンプトン散乱線の強度およびC−Kα線の強度を検出し、
前記標準試料または石灰の仮想標準試料を用いて、二酸化炭素の影響について、コンプトン散乱線の強度と強熱減量の含有率との相関を示す強熱減量の検量線の補正のためのマトリックス補正係数を求め、
前記検出したコンプトン散乱線の強度および前記求めたマトリックス補正係数を用いて強熱減量の補正検量線を作成するとともに、前記検出したC−Kα線の強度と二酸化炭素の含有率との相関を示す二酸化炭素の検量線を作成し、
石灰からなる未知試料に1次X線を照射し、前記未知試料から発生するコンプトン散乱線の強度およびC−Kα線の強度を検出し、
前記強熱減量の補正検量線および二酸化炭素の検量線を用いて前記未知試料中の強熱減量および二酸化炭素の含有率をそれぞれ求め、
この求めた強熱減量の含有率から求めた二酸化炭素の含有率を差し引いて前記未知試料の強熱減量中の水分の含有率を求めるX線分析方法。
【請求項7】
試料に1次X線を照射するX線源と、
前記X線源から1次X線が照射された試料から発生する2次X線の強度を検出する検出手段と、
を備えるX線分析装置であって、
強熱減量の含有率、および、二酸化炭素、MgO、SiO、Al、Fe、P、Sのうち少なくとも一つの成分の含有率が既知の石灰からなる補正用標準試料または石灰の仮想補正用標準試料を用いて、前記少なくとも一つの成分の影響について、コンプトン散乱線の強度と強熱減量の含有率との相関を示す強熱減量の検量線の補正のためのマトリックス補正係数を算出する補正係数算出手段と、
強熱減量の含有率が既知の石灰からなる標準試料に前記X線源から1次X線を照射し、前記標準試料から発生するコンプトン散乱線の強度を前記検出手段で検出して、その検出したコンプトン散乱線の強度および前記補正係数算出手段によって算出されたマトリックス補正係数を用いて強熱減量の補正検量線を作成する検量線作成手段と、
石灰からなる未知試料に前記X線源から1次X線を照射し、前記未知試料から発生するコンプトン散乱線の強度、および、C、Mg、Si、Al、Fe、P、Sのうち前記少なくとも一つの成分に対応する蛍光X線の強度を前記検出手段で検出して、前記検量線作成手段によって作成された強熱減量の補正検量線を用いて前記未知試料中の強熱減量の含有率を求める定量手段と、
を備えるX線分析装置。
【請求項8】
試料に1次X線を照射するX線源と、
前記X線源から1次X線が照射された試料から発生する2次X線の強度を検出する検出手段と、
を備えるX線分析装置であって、
強熱減量の含有率および二酸化炭素の含有率が既知の石灰からなる標準試料または石灰の仮想標準試料を用いて、二酸化炭素の影響について、コンプトン散乱線の強度と強熱減量の含有率との相関を示す強熱減量の検量線の補正のためのマトリックス補正係数を算出する補正係数算出手段と、
前記標準試料に前記X線源から1次X線を照射し、前記標準試料から発生するコンプトン散乱線の強度およびC−Kα線の強度を前記検出手段で検出して、前記検出したコンプトン散乱線の強度および前記補正係数算出手段によって算出されたマトリックス補正係数を用いて強熱減量の補正検量線を作成するとともに、前記検出したC−Kα線の強度と二酸化炭素の含有率との相関を示す二酸化炭素の検量線を作成する検量線作成手段と、
石灰からなる未知試料に前記X線源から1次X線を照射し、前記未知試料から発生するコンプトン散乱線の強度およびC−Kα線の強度を前記検出手段で検出して、前記検量線作成手段によって作成された強熱減量の補正検量線および二酸化炭素の検量線を用いて前記未知試料中の強熱減量および二酸化炭素の含有率をそれぞれ求める定量手段と、
前記定量手段によって求められた強熱減量の含有率から求められた二酸化炭素の含有率を差し引いて前記未知試料の強熱減量中の水分の含有率を算出する水分算出手段と、
を備えるX線分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−32372(P2012−32372A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−57019(P2011−57019)
【出願日】平成23年3月15日(2011.3.15)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 第46回X線分析討論会、日本分析化学会X線分析研究懇談会、平成22年10月23日
【出願人】(000250339)株式会社リガク (206)
【出願人】(591039643)矢橋工業株式会社 (10)
【Fターム(参考)】