説明

X線分析装置および方法

【課題】結晶構造を有する試料から発生する散乱線および不純線を抑制し、回折X線を回避することができるX線分析装置等を提供する。
【解決手段】本発明のX線分析装置は、試料Sを試料Sの所定点周りに回転させながら1次X線2を照射し、試料Sから発生する2次X線4の強度を試料Sの回転角度と対応させた回折パターンを取得して記憶し、回折パターンを、2次X線4の強度を示す直線で強度の高低方向に走査しながら、直線が示す強度以下の強度をもつ回折パターン上の点を候補点とし、隣接する候補点間の回転角度差の最大値が所定の角度になったときに走査を止めて候補点の回転角度を記憶し、試料Sの測定点の座標に応じて、記憶した候補点の回転角度の中から測定点の座標に最も近い回転角度を読み出し、読み出した回転角度に試料Sを設定するとともに、試料Sの測定点を検出器7の視野V内に配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエーハ等の円板状の試料の任意の測定点について測定するX線分析装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、ウエーハの分析には、試料表面に1次X線を照射して、試料表面から発生する2次X線を検出し、その強度を測定して分析を行っているが、ウエーハなどの結晶構造を有する試料は、2次X線として、蛍光X線の他に回折X線を発生し得る。蛍光X線分析において、この回折X線が測定の障害となる場合があり、回折X線が発生する試料の回転方向は、結晶構造における(110)面、(111)面などである試料のカット面によって異なる。
【0003】
そこで、試料の蛍光X線分析に先立って、試料を試料の所定点周りに180度以上回転させながら、この試料に1次X線を照射して、試料から発生する蛍光X線および回折X線を含む2次X線を検出し、得られた2次X線強度が最小値を示す回転方向に試料を位置決めし、この状態で、試料を、その測定面に平行な面内で互いに直交するXY方向に移動させて、試料の測定面全域の分析を行なう蛍光X線分析方法がある(特許文献1)。
【0004】
また、図11に示すように、試料の縁近傍にある所望の測定点(測定部位)について、試料Sの上方の領域外から1次X線2が照射されて前記領域へ全反射するように位置させて測定すると、1次X線2の一部が板状の試料Sの鉛直な端面に照射され、四方に向けて強い散乱線9が発生する。この散乱線9の一部は、測定すべき蛍光X線に対して大きなバックグラウンドとなる。
【0005】
そこで、試料の縁近傍にある任意の測定点について、試料の上方の領域から1次X線が照射されて前記領域外へ全反射するように位置させて、試料の端面から発生する散乱線を抑制して、測定する全反射蛍光X線分析装置がある(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−126768号公報
【特許文献2】特開2002−5858号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の蛍光X線分析方法では、結晶構造が回転対称である試料から発生する回折X線が検出器に入射するのを回避することはできるが、結晶構造が回転対称でない試料から発生する回折X線を回避することができなかった。
【0008】
特許文献2に記載の全反射蛍光X線分析装置では、試料の縁近傍から発生する散乱線の影響を抑制することができるが、試料から発生する回折X線を回避することを考慮していないので、散乱線の影響を排除できる位置に試料を設定しても回折X線を回避することができず、試料によっては正確な分析ができなかった。
【0009】
そこで、本発明は前記従来の問題に鑑みてなされたもので、結晶構造を有する円板状の試料の縁近傍ならびに試料近傍の装置構造物から発生する散乱線および不純線を抑制回避するとともに、試料から発生する回折X線を回避することによって、簡単に正確な分析をすることができるX線分析装置および方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、本発明の第1構成のX線分析装置は、結晶構造を有する円板状の試料が載置される試料台と、試料に単色化した1次X線を照射するX線源と、試料から発生する2次X線を検出する検出器と、試料の測定面上の任意の測定点が前記検出器の視野内に配置されるように前記試料台を平行移動させる平行移動手段と、試料の測定面に垂直な軸を中心に前記試料台を回転させる回転手段と、前記X線源、平行移動手段および回転手段を制御する制御手段とを備え、試料の縁近傍にある任意の測定点について、試料の上方の領域から単色化した1次X線が照射されて前記領域外へ反射するように位置させて測定するX線分析装置である。
【0011】
ここで、前記制御手段が、試料の半径Rおよび試料の測定面における前記検出器の視野の半径Tに基づいて次式(1)から求められた角度2θ1以下であって、かつ4度以上である所定の角度をあらかじめ記憶している。
【0012】
sinθ1=(R−T)/R (1)
【0013】
そして、前記制御手段が、以下のように動作する。まず、試料を試料の所定点周りに前記回転手段によって360度回転させながら前記X線源から単色化した1次X線を照射させ、前記検出器で検出する単色化した1次X線の波長の2次X線の強度を試料の回転角度と対応させた回折パターンを取得して記憶する。次に、前記回折パターンを、2次X線の強度を示す直線で強度の高低方向に走査しながら、前記直線が示す強度以下の強度をもつ前記回折パターン上の点を候補点とし、隣接する候補点間の回転角度差の最大値が前記所定の角度になったときに走査を止めて前記候補点の回転角度を記憶する。次に、試料の測定点の座標に応じて、前記記憶した候補点の回転角度の中から測定点の座標に最も近い回転角度を読み出し、前記回転手段および平行移動手段を制御して、前記読み出した回転角度に試料を設定するとともに、試料の測定点を前記検出器の視野内に配置して、測定を行う。
【0014】
さて、円板状の試料の縁近傍ならびに試料近傍の装置構造物から発生する散乱線および不純線を抑制回避するには、平面視で、1次X線の進行方向と、試料の中心から測定点へ向かう方向とが一致している状態で、つまり、初期状態からの試料の回転角度が試料のR−θ座標における測定点のθ座標に一致している状態で、測定を行うことが理想的である。しかし、その状態からの回転角度が、前式(1)で求められる±θ1の範囲内であれば、散乱線および不純線を十分に抑制回避できる。
【0015】
一方、上述の散乱線および不純線の抑制回避のために理想的な状態での試料の回転角度が、例えば前記回折パターンのいずれかのピークの回転角度に一致していれば、試料から発生する回折X線を回避するために、散乱線等抑制回避のための理想的な状態から試料を回転させる必要がある。一般に、回折パターンにおける1つのピークプロファイルの裾の幅は、回転角度でいえば4度未満であることはないから、回折X線回避のためのさらなる回転角度は、±2度の範囲よりも狭くなることはあり得ない。
【0016】
そこで、本発明の第1構成のX線分析装置では、制御手段が、2θ1以下でかつ4度以上である所定の角度をあらかじめ記憶しており、自動的に回折パターンを取得して2次X線の強度を示す直線で強度の高低方向に走査することにより、回折パターン上で回転角度において所定の角度以下で隣接して回折X線を回避できる候補点を求め、候補点の回転角度を記憶する。そして、試料の測定点の座標に応じて、記憶した回転角度の中から測定点の座標に最も近い回転角度(測定点の座標に一致する場合も含む)を読み出し、その読み出した回転角度に試料を設定するとともに、試料の測定点を検出器の視野内に配置する。
【0017】
このように、本発明の第1構成のX線分析装置によれば、試料の縁近傍にある任意の測定点について、散乱線および不純線の抑制回避のための理想的な状態を中心とする所定の角度の範囲で回折X線をも回避できる回転角度に試料が設定されるので、結晶構造を有する円板状の試料の縁近傍ならびに試料近傍の装置構造物から発生する散乱線および不純線を抑制回避するとともに、試料から発生する回折X線を回避することができ、したがって、簡単に正確な分析をすることができる。
【0018】
本発明の第2構成のX線分析装置は、以下に述べる制御手段の動作においてのみ、前記第1構成のX線分析装置と異なる。第2構成のX線分析装置の制御手段は、まず、試料を試料の所定点周りに前記回転手段によって360度回転させながら前記X線源から単色化した1次X線を照射させ、前記検出器で検出する単色化した1次X線の波長の2次X線の強度を前記検出器で検出する試料の主成分からの蛍光X線の強度で除した強度比について試料の回転角度と対応させた回折パターンを取得して記憶する。次に、前記回折パターンを、前記強度比を示す直線で強度比の高低方向に走査しながら、前記直線が示す強度比以下の強度比をもつ前記回折パターン上の点を候補点とし、隣接する候補点間の回転角度差の最大値が前記所定の角度になったときに走査を止めて前記候補点の回転角度を記憶する。
【0019】
この後、試料の測定点の座標に応じて、前記記憶した候補点の回転角度の中から測定点の座標に最も近い回転角度を読み出し、前記回転手段および平行移動手段を制御して、前記読み出した回転角度に試料を設定するとともに、試料の測定点を前記検出器の視野内に配置して、測定を行う動作は、第1構成のX線分析装置の制御手段と同じである。つまり、第2構成のX線分析装置は、第1構成のX線分析装置で用いる単色化した1次X線の波長の2次X線の強度に代えて、単色化した1次X線の波長の2次X線の強度を試料の主成分からの蛍光X線の強度で除した強度比を用いる。
【0020】
本発明の第2構成のX線分析装置によれば、試料の主成分からの蛍光X線を内標準線として、単色化した1次X線の波長の2次X線の強度を補正するので、回転手段の軸ぶれに起因する1次X線の試料への入射角度の変動の影響を除去して、より正確な回折パターンを取得でき、したがって、より正確な分析をすることができる。
【0021】
本発明の第3構成のX線分析方法は、結晶構造を有する円板状の試料が載置される試料台と、試料に単色化した1次X線を照射するX線源と、試料から発生する2次X線を検出する検出器と、試料の測定面上の任意の測定点が前記検出器の視野内に配置されるように前記試料台を平行移動させる平行移動手段と、試料の測定面に垂直な軸を中心に前記試料台を回転させる回転手段とを備えるX線分析装置を用いて、試料の縁近傍にある任意の測定点について、試料の上方の領域から単色化した1次X線が照射されて前記領域外へ反射するように位置させて測定するX線分析方法である。
【0022】
この方法では、試料の半径Rおよび試料の測定面における前記検出器の視野の半径Tに基づいて前式(1)から求められた角度2θ1以下であって、かつ4度以上である所定の角度をあらかじめ記憶しておく。
【0023】
そして、以下のような手順を実行する。まず、試料を試料の所定点周りに前記回転手段によって360度回転させながら前記X線源から単色化した1次X線を照射させ、前記検出器で検出する単色化した1次X線の波長の2次X線の強度を試料の回転角度と対応させた回折パターンを取得して記憶する。次に、前記回折パターンを、2次X線の強度を示す直線で強度の高低方向に走査しながら、前記直線が示す強度以下の強度をもつ前記回折パターン上の点を候補点とし、隣接する候補点間の回転角度差の最大値が前記所定の角度になったときに走査を止めて前記候補点の回転角度を記憶する。次に、試料の測定点の座標に応じて、前記記憶した候補点の回転角度の中から測定点の座標に最も近い回転角度を読み出し、前記回転手段および平行移動手段によって、前記読み出した回転角度に試料を設定するとともに、試料の測定点を前記検出器の視野内に配置して、測定を行う。
【0024】
本発明の第3構成のX線分析方法は、前記第1構成のX線分析装置とカテゴリーが異なるのみであるので、同装置と同様の作用効果が得られる。
【0025】
本発明の第4構成のX線分析方法は、以下に述べる手順においてのみ、前記第3構成のX線分析方法と異なる。第4構成のX線分析方法では、まず、試料を試料の所定点周りに前記回転手段によって360度回転させながら前記X線源から単色化した1次X線を照射させ、前記検出器で検出する単色化した1次X線の波長の2次X線の強度を前記検出器で検出する試料の主成分からの蛍光X線の強度で除した強度比について試料の回転角度と対応させた回折パターンを取得して記憶する。次に、前記回折パターンを、前記強度比を示す直線で強度比の高低方向に走査しながら、前記直線が示す強度比以下の強度比をもつ前記回折パターン上の点を候補点とし、隣接する候補点間の回転角度差の最大値が前記所定の角度になったときに走査を止めて前記候補点の回転角度を記憶する。
【0026】
この後、試料の測定点の座標に応じて、前記記憶した候補点の回転角度の中から測定点の座標に最も近い回転角度を読み出し、前記回転手段および平行移動手段によって、前記読み出した回転角度に試料を設定するとともに、試料の測定点を前記検出器の視野内に配置して、測定を行う手順は、第3構成のX線分析方法と同じである。つまり、第4構成のX線分析方法は、第3構成のX線分析方法で用いる単色化した1次X線の波長の2次X線の強度に代えて、単色化した1次X線の波長の2次X線の強度を試料の主成分からの蛍光X線の強度で除した強度比を用いる。
【0027】
本発明の第4構成のX線分析方法は、前記第2構成のX線分析装置とカテゴリーが異なるのみであるので、同装置と同様の作用効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一実施形態のX線分析装置を示す概略図である。
【図2】同装置における試料の初期位置を示す図である。
【図3】同装置によって取得した回折パターンの例を示す図である。
【図4】同装置によって初期位置から試料の方向を変えずに測定点Aを測定する場合における試料と仮想線との位置関係を示す図である。
【図5】同様に測定点Bを測定する場合の試料と仮想線との位置関係を示す図である。
【図6】同様に測定点Cを測定する場合の試料と仮想線との位置関係を示す図である。
【図7】同様に測定点Dを測定する場合の試料と仮想線との位置関係を示す図である。
【図8】同装置によって回折パターンの取得を開始するときの試料位置を示す図である。
【図9】同装置によって測定点Fの測定に際して適切な回転角度および位置に設定された試料を示す図である。
【図10】測定点Cの測定に際して散乱線および不純線を抑制回避するための理想的な試料の状態を示す図である。
【図11】従来のX線分析装置における試料からの散乱線発生部分の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の一実施形態のX線分析装置について説明する。この装置は、図1に示すように、シリコンウエーハなどの結晶構造を有する円板状の試料Sが載置される試料台8と、試料Sに単色化した1次X線2を照射するX線源1(X線管、分光素子などからなる)と、試料Sから発生する蛍光X線、回折X線などの2次X線4を検出する、SDDなどの半導体検出器である検出器7と、試料Sの測定面上の任意の測定点が検出器7の視野V内に配置されるように、より詳細には検出器7の視野Vの中心Pに配置されるように、試料台8を平行移動させる平行移動手段12と、試料Sの測定面に垂直な軸を中心に試料台8を回転させる回転手段11と、X線源1、平行移動手段12および回転手段11を制御する制御手段15とを備え、試料Sの縁近傍にある任意の測定点について、試料の上方の領域10から単色化した1次X線2が照射されて前記領域10外へ反射するように位置させて、つまり単色化した1次X線2を紙面の左方から試料Sの右側縁近傍に照射して、測定する全反射蛍光X線分析装置である。
【0030】
X線源1、検出器7は、それぞれ装置の所定の部位に固定されており、X線源1からの単色化した1次X線2は、試料台8に載置された試料Sの測定面における検出器7の視野Vの中心Pに向けて照射される。平行移動手段12および回転手段11は、図1において二点鎖線で示すように、試料台8に載置された試料Sを装置内の所定の平面に沿って移動、回転させる。したがって、平行移動手段12および回転手段11により試料Sが移動、回転されても、試料Sの測定面に対するX線源1からの1次X線2の照射角度、照射強度は一定であるとともに、試料Sの測定面における検出器7の視野Vの寸法形状も一定となり、検出器7の視野Vは、例えば半径T(図6)が10mmの円形である。
【0031】
ここでは、回転手段11は、試料台8に載置された試料Sの中心O周りに試料Sが回転されるように、試料台8を回転させる。平行移動手段12および回転手段11は、例えば特開平8−161049に開示されているような位置決め装置、つまり、3重軸により独立して回転制御されるように連結された、2本のアーム(平行移動手段)および試料台(回転手段)で構成する。平行移動手段12および回転手段11は、いわゆるXYθステージ、つまり、XYステージ(平行移動手段)およびその上に取り付けられたθステージ(回転手段)で構成してもよい。平行移動手段12は、それのみで試料Sの方向を変えずに試料Sを移動させるものでもよいし、回転手段11とともに動作して試料Sの方向を変えずに試料Sを移動させるものでもよい。
【0032】
試料Sは試料台8に載置され、図2に示すように、ウエーハのノッチNやオリフラ(orientation flat)などを基準として初期位置に設定される。試料Sの初期位置において、試料Sの中心Oと検出器7の視野Vの中心Pが一致し、試料Sの中心OからノッチNへ向かう方向と、1次X線2の平面視での進行方向が一致している。試料Sにおける測定点の位置は、例えば試料の測定面に固定されたR−θ座標で示され、θ座標において時計方向の角度を負として−θと、反時計方向の角度を正として+θと表示し、試料Sが回転手段11によって回転される回転角度は、時計方向を正として符号ωで表示する。
【0033】
つまり、例えば試料Sの縁にあってθ座標が−θ1である測定点C(図6)は、試料Sが初期位置から回転手段11によってθ座標分すなわち−θ1だけ回転されることにより、図2の初期位置におけるノッチNの位置にくる。なお、θ座標において時計方向の角度を正とするとともに、試料Sが回転手段11によって回転される回転角度について、反時計方向を正としてよい。また、図2等における符号I 、II、III 、IVは、それぞれ座標の第1象限、第2象限、第3象限、第4象限を示している。
【0034】
制御手段15(図1)は、試料Sの半径Rおよび試料Sの測定面における検出器7の視野Vの半径Tに基づいて次式(1)から求められた角度2θ1以下であって、かつ4度以上である所定の角度αをあらかじめ記憶している。
【0035】
sinθ1=(R−T)/R (1)
【0036】
角度2θ1がもつ意味について説明する。簡単のために、初期位置から試料Sの方向を変えずに試料Sを移動させる場合を想定し、図4に示すように、1次X線2の水平方向成分と同一方向を向いており(平面視で1次X線2の進行方向と平行であり)、試料Sの測定面における検出器7の視野Vに接する、2本の仮想線(仮想の直線)H、Mを考える。1次X線2の照射方向および検出器7の視野Vは装置において固定されているので、2本の仮想線H、Mも装置において固定されている。固定された1次X線2、検出器7の視野Vおよび2本の仮想線H、Mに対し、ここでは初期位置から試料Sの方向を変えずに試料Sが移動され、例えば第1象限で試料Sの縁にある測定点Aが、検出器7の視野Vの中心Pに配置されるとともに、1次X線2が照射されて測定される。
【0037】
図5に示すように、第1象限で試料Sの縁にある測定点B(R、−90)が検出器7の視野Vの中心Pに配置されて測定される場合には、右側仮想線Mが試料Sの測定面の外側にあり、1次X線2が試料Sの右側エッジに当たり、散乱線が発生する。また、1次X線2が試料Sの下方(図5の紙面奥方向)に存在する装置構造材に照射され、散乱線と不純線(試料Sの下方に存在する装置構造材から発生する蛍光X線)が発生する。このようにして発生した最初の散乱線と不純線が、さらなる散乱線と不純線を発生させる。これらの散乱線と不純線が検出器7に入射する。
【0038】
一方、図6に示すように、第1象限で試料Sの縁にある測定点C(R、−θ1)が検出器7の視野Vの中心Pに配置されて測定される場合には、左側仮想線Hは試料Sの測定面を横切り、右側仮想線Mは試料Sの測定面に接している。したがって、一部の1次X線2が試料Sの右側エッジや試料Sの下方に存在する装置構造材に照射されても、それらから発生した散乱線および不純線は、検出器7の視野Vの外側に進行し、検出器7には入射しない。
【0039】
このように、左側仮想線Hと右側仮想線Mの2本の仮想線がともに試料Sの測定面上に位置するように(試料Sの測定面を横切るか、試料Sの測定面に接するように)試料Sを配置すると、散乱線および不純線が検出器7に入射しないようにすることができる。
【0040】
図7に示す第1象限で試料Sの縁にある測定点D(R、−θ2)の測定に際しては、左側仮想線Hと右側仮想線Mはともに試料Sの測定面を横切って試料Sの測定面上にあり、測定点Cのθ1(図6)と測定点Dのθ2の大きさについては、θ1>θ2である。
【0041】
これから分かるように、初期位置から試料Sの方向を変えずに試料Sを移動させる場合を想定すると、第1象限で試料Sの縁近傍にある測定点については、θ座標が0〜−θ1の範囲であれば、散乱線および不純線が検出器7に入射しないようにすることができる。第2象限で試料Sの縁近傍にある測定点についても同様に考えられるので、測定点のθ座標が−θ1〜+θ1の範囲であれば、散乱線および不純線が検出器7に入射しないようにすることができる。θ1の具体的な値は、図6に示した幾何学的な関係から、前述したように、例えば100mmである試料Sの半径Rおよび例えば10mmである検出器7の視野Vの半径Tに基づいて、前式(1)で例えば64度と求められる。
【0042】
さて、本発明のX線分析装置では、本来、初期位置から試料Sの方向を自由に変えつつ試料Sを移動させることができ、試料Sの縁近傍にある測定点、例えば図6で示した測定点C(R、−θ1)の測定に際して、散乱線および不純線を抑制回避するには、図10に示すように、平面視で、1次X線2の進行方向と、試料Sの中心から測定点Cへ向かう方向とが一致している状態で、つまり、初期位置(図2)からの試料Sの回転角度が試料SのR−θ座標における測定点Cのθ座標(−θ1)に一致している状態で、測定を行うことが理想的である。
【0043】
しかし、上述の初期位置から試料Sの方向を変えずに試料Sを移動させる場合の説明から理解されるように、このような理想的な状態に限らず、理想的な状態からの回転角度が±θ1の範囲内であれば、回転後の試料Sの方向を変えずに試料Sを移動させて、測定点Cを検出器7の視野Vの中心Pに配置することにより、散乱線および不純線の抑制回避に関して最悪でも図6の状態で測定できるので、散乱線および不純線を十分に抑制回避できる。このことは、測定点Cに限らず、試料Sの縁近傍にある任意の測定点に当てはまる。つまり、試料Sの縁近傍にある任意の測定点について、試料Sの回転角度が、散乱線および不純線の抑制回避のための理想的な状態での試料Sの回転角度を中心とする2θ1の範囲であれば、散乱線および不純線を十分に抑制回避できる。制御手段15(図1)があらかじめ記憶する所定の角度αの上限値である2θ1は、このような意味をもつ。所定の角度αの下限値である4度の意味については、後述する。
【0044】
図1において、あらかじめ所定の角度αを記憶した制御手段15は、以下のように動作する。まず、試料台8に載置されて初期位置にある試料Sを、試料Sの方向を変えずに移動させて、図8に示すように試料エッジからの散乱線の影響が少ない測定点E(R1、0)を検出器7の視野Vの中心Pに配置する(例えばR1=R/2である)。そして、試料Sを試料Sの中心O周りに回転手段11によって時計方向に360度回転させながらX線源1から単色化した1次X線2を照射させ、検出器7で検出する単色化した1次X線の波長の2次X線4の強度を検出器7で検出する試料Sの主成分からの蛍光X線4の強度で除した強度比について試料Sの回転角度ωと対応させた回折パターンを取得して記憶する。本実施形態の装置において、単色化した1次X線2としてW−Lβ線を照射し、単色化した1次X線の波長の2次X線4の強度としてW−Lβ線の強度を測定するとともに、試料Sの主成分からの蛍光X線4の強度としてSi−Kα線の強度を測定し、縦軸をW−Lβ線の強度/Si−Kα線の強度である強度比、横軸を試料Sの回転角度ωとして取得した回折パターンの例を図3に示す。
【0045】
ここで、単色化した1次X線の波長の2次X線4の強度を試料Sの主成分からの蛍光X線4の強度で除した強度比を用いるのは、試料Sの主成分からの蛍光X線4を内標準線として、単色化した1次X線の波長の2次X線4の強度を補正することにより、回転手段11の軸ぶれに起因する1次X線2の試料Sへの入射角度の変動の影響を除去して、より正確な回折パターンを取得するためであるが、そのような補正が重要でない場合には、内標準線の強度で除した強度比に代えて、単色化した1次X線の波長の2次X線4の強度そのもの、例えばW−Lβ線の強度そのものを用いることもできる。この場合には、試料Sを試料Sの中心O周りに回転手段11によって時計方向に360度回転させながらX線源1から単色化した1次X線2を照射させ、検出器7で検出する単色化した1次X線の波長の2次X線4の強度を試料Sの回転角度ωと対応させた回折パターンを取得して記憶し、回折パターンの縦軸は、例えばW−Lβ線の強度となる。なお、単色化した1次X線2としては、W−Lβ線のようなX線管から発生する特性X線のほかに、X線管から発生する連続X線の所定波長部分が用いられる場合もある。
【0046】
さて、前述の散乱線および不純線の抑制回避のために理想的な状態での試料Sの回転角度が、取得した回折パターンにおいて例えばいずれかのピークまたはそのすぐ近くの回転角度に一致しているとすると、試料Sから発生する回折X線を回避するために、散乱線等抑制回避のための理想的な状態から試料Sを回転させる必要がある。一般に、回折パターンにおける1つのピークプロファイルの裾の幅は、回転角度でいえば4度未満であることはないから、回折X線回避のためのさらなる回転角度は、±2度の範囲よりも狭くなることはあり得ない。つまり、試料Sの縁近傍にある任意の測定点について、試料Sの回転角度が、散乱線および不純線の抑制回避のための理想的な状態での試料Sの回転角度を中心とする4度以上の範囲でなければ、試料Sから発生する回折X線を回避することができない。制御手段15(図1)があらかじめ記憶する所定の角度αの下限値である4度は、このような意味をもつ。
【0047】
なお、制御手段15があらかじめ記憶する所定の角度αは、回折X線回避のためには大きいことが好ましいが、2θ1以下でかつ4度以上の範囲において、X線分析装置の機械的な構造等を考慮して適切に選択される。結晶構造を有する試料Sであるシリコンウエーハ、液晶ガラス、ハードディスク、磁気ディスクなどは、半導体業界において、その直径が、50mm(2インチ)、76mm(3インチ)、100mm、125mm、150mm、200mm、300mmなどに規格化されており、検出器7の視野Vの半径Tが例えば10mm程度であるから、実際上、2θ1以下でかつ4度以上の範囲から所定の角度αを適切に選択することは可能である。
【0048】
また、サイズが相異なる複数の試料Sについて分析が予定される場合には、サイズごとに所定の角度α1、α2、α3…を選択して制御手段15に記憶させてもよいし、最も選択範囲が狭くなる最小のサイズについての所定の角度α例えば40度をすべてのサイズに適用することとして、その所定の角度αのみを制御手段15に記憶させてもよい。
【0049】
次に、制御手段15は、図3の回折パターンを、前記強度比つまりW−Lβ線の強度/Si−Kα線の強度である強度比を示す、横軸と平行な直線Lで、強度比の高低方向に、例えば低強度比側から走査しながら、直線Lが示す強度比以下の強度比をもつ回折パターン上のすべての点を候補点とし、隣接する候補点間の回転角度差の最大値が記憶した所定の角度αになったときに、例えば同最大値が所定の角度αにまで減少したときに、走査を止めてそのときの候補点の回転角度を記憶する。低強度比側からの走査は、強度比0から行ってもよいし、回折パターンにおける最低の強度比から行ってもよい。回折パターン上では、候補点が連続する部分もあれば、途切れる部分もあるが、途切れる部分においても、隣接する候補点間の回転角度差は所定の角度α以下となる。候補点は、実際には、機械的位置決め誤差等を見込んで決められる。
【0050】
なお、前述したように、内標準線の強度で除した強度比に代えて、単色化した1次X線の波長の2次X線4の強度そのもの、例えばW−Lβ線の強度そのものを用いる場合には、制御手段15は、回折パターンを、2次X線4つまりW−Lβ線の強度を示す、横軸と平行な直線Lで、強度の高低方向に、例えば低強度側から走査しながら、直線Lが示す強度以下の強度をもつ回折パターン上のすべての点を候補点とする。
【0051】
試料Sの測定点は、図示しないキーボード、マウス、タッチパネル等の入力手段を用いて入力され、制御手段15は、試料Sの測定点の座標に応じて、記憶した候補点の回転角度の中から測定点の座標に最も近い回転角度を読み出し、回転手段11および平行移動手段12を制御して、読み出した回転角度に試料Sを設定するとともに、試料Sの測定点を検出器7の視野Vの中心Pに配置して、測定を行う。
【0052】
例えば、図9の測定点F(R、−30)の測定に際しては、記憶した候補点の回転角度の中から測定点のθ座標(−30)に最も近い回転角度(−30±αの範囲内で、−30そのものを含む)を読み出し、それが例えば−15度(345度)であったとすると、回転手段11および平行移動手段12を制御して、読み出した回転角度−15度に試料Sを設定するとともに、測定点Fを検出器7の視野Vの中心Pに配置し、試料Sを図9に示す状態にする。そして、測定点FにX線源1から1次X線2を照射し、試料Sから発生する2次X線4の強度を検出器7で測定する。図9の状態にされる前の試料Sの状態は、初期位置(図2)であってもよいし、別の測定点を測定し終えた状態のままであってもよい。また、そのような状態から、回転手段11および平行移動手段12はどのような手順で動作してもよく、最終的に試料Sを図9に示す状態にすればよい。試料Sの縁近傍以外の測定点についても同様にして測定される。測定結果は、図示しない表示手段(例えば液晶ディスプレイ)に表示される。
【0053】
このように、本実施形態のX線分析装置によれば、試料Sの縁近傍にある任意の測定点について、散乱線および不純線の抑制回避のための理想的な状態を中心とする所定の角度αの範囲で回折X線をも回避できる回転角度に試料Sが設定されるので、結晶構造を有する円板状の試料Sの縁近傍ならびに試料S近傍の装置構造物から発生する散乱線および不純線を抑制回避するとともに、試料Sから発生する回折X線を回避することができ、したがって、簡単に正確な分析をすることができる。
【0054】
また、例えば本実施形態のX線分析装置を用いて、前記所定の角度αを記憶しておき、制御手段15の動作として説明した手順で、試料Sの任意の測定点について、試料Sの回転角度を設定するとともに、試料Sの測定点を検出器7の視野Vの中心Pに配置して、測定を行うX線分析方法も、本発明の実施形態である。
【0055】
本実施形態のX線分析装置については、全反射蛍光X線分析装置として説明したが、本発明のX線分析装置は、全反射型でないエネルギー分散型蛍光X線分析装置であってもよいし、波長分散型蛍光X線分析装置であってもよい。また、蛍光X線分析装置、X線反射率測定装置、X線回折装置などが組み合わされた複合型のX線分析装置であってもよい。
【符号の説明】
【0056】
1 X線源
2 1次X線
4 2次X線
7 検出器
8 試料台
10 試料の上方の領域
11 回転手段
12 平行移動手段
15 制御手段
A〜F 試料の測定点
L 2次X線の強度または強度比を示す直線
R 試料の半径
S 試料
T 検出器の視野の半径
V 検出器の視野
ω 試料の回転角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶構造を有する円板状の試料が載置される試料台と、
試料に単色化した1次X線を照射するX線源と、
試料から発生する2次X線を検出する検出器と、
試料の測定面上の任意の測定点が前記検出器の視野内に配置されるように前記試料台を平行移動させる平行移動手段と、
試料の測定面に垂直な軸を中心に前記試料台を回転させる回転手段と、
前記X線源、平行移動手段および回転手段を制御する制御手段とを備え、
試料の縁近傍にある任意の測定点について、試料の上方の領域から単色化した1次X線が照射されて前記領域外へ反射するように位置させて測定するX線分析装置であって、
前記制御手段が、
試料の半径Rおよび試料の測定面における前記検出器の視野の半径Tに基づいて次式(1)から求められた角度2θ1以下であって、かつ4度以上である所定の角度をあらかじめ記憶しており、
sinθ1=(R−T)/R (1)
試料を試料の所定点周りに前記回転手段によって360度回転させながら前記X線源から単色化した1次X線を照射させ、前記検出器で検出する単色化した1次X線の波長の2次X線の強度を試料の回転角度と対応させた回折パターンを取得して記憶し、
前記回折パターンを、2次X線の強度を示す直線で強度の高低方向に走査しながら、前記直線が示す強度以下の強度をもつ前記回折パターン上の点を候補点とし、隣接する候補点間の回転角度差の最大値が前記所定の角度になったときに走査を止めて前記候補点の回転角度を記憶し、
試料の測定点の座標に応じて、前記記憶した候補点の回転角度の中から測定点の座標に最も近い回転角度を読み出し、前記回転手段および平行移動手段を制御して、前記読み出した回転角度に試料を設定するとともに、試料の測定点を前記検出器の視野内に配置するX線分析装置。
【請求項2】
結晶構造を有する円板状の試料が載置される試料台と、
試料に単色化した1次X線を照射するX線源と、
試料から発生する2次X線を検出する検出器と、
試料の測定面上の任意の測定点が前記検出器の視野内に配置されるように前記試料台を平行移動させる平行移動手段と、
試料の測定面に垂直な軸を中心に前記試料台を回転させる回転手段と、
前記X線源、平行移動手段および回転手段を制御する制御手段とを備え、
試料の縁近傍にある任意の測定点について、試料の上方の領域から単色化した1次X線が照射されて前記領域外へ反射するように位置させて測定するX線分析装置であって、
前記制御手段が、
試料の半径Rおよび試料の測定面における前記検出器の視野の半径Tに基づいて次式(1)から求められた角度2θ1以下であって、かつ4度以上である所定の角度をあらかじめ記憶しており、
sinθ1=(R−T)/R (1)
試料を試料の所定点周りに前記回転手段によって360度回転させながら前記X線源から単色化した1次X線を照射させ、前記検出器で検出する単色化した1次X線の波長の2次X線の強度を前記検出器で検出する試料の主成分からの蛍光X線の強度で除した強度比について試料の回転角度と対応させた回折パターンを取得して記憶し、
前記回折パターンを、前記強度比を示す直線で強度比の高低方向に走査しながら、前記直線が示す強度比以下の強度比をもつ前記回折パターン上の点を候補点とし、隣接する候補点間の回転角度差の最大値が前記所定の角度になったときに走査を止めて前記候補点の回転角度を記憶し、
試料の測定点の座標に応じて、前記記憶した候補点の回転角度の中から測定点の座標に最も近い回転角度を読み出し、前記回転手段および平行移動手段を制御して、前記読み出した回転角度に試料を設定するとともに、試料の測定点を前記検出器の視野内に配置するX線分析装置。
【請求項3】
結晶構造を有する円板状の試料が載置される試料台と、
試料に単色化した1次X線を照射するX線源と、
試料から発生する2次X線を検出する検出器と、
試料の測定面上の任意の測定点が前記検出器の視野内に配置されるように前記試料台を平行移動させる平行移動手段と、
試料の測定面に垂直な軸を中心に前記試料台を回転させる回転手段とを備えるX線分析装置を用いて、
試料の縁近傍にある任意の測定点について、試料の上方の領域から単色化した1次X線が照射されて前記領域外へ反射するように位置させて測定するX線分析方法であって、
試料の半径Rおよび試料の測定面における前記検出器の視野の半径Tに基づいて次式(1)から求められた角度2θ1以下であって、かつ4度以上である所定の角度をあらかじめ記憶しておき、
sinθ1=(R−T)/R (1)
試料を試料の所定点周りに前記回転手段によって360度回転させながら前記X線源から単色化した1次X線を照射させ、前記検出器で検出する単色化した1次X線の波長の2次X線の強度を試料の回転角度と対応させた回折パターンを取得して記憶し、
前記回折パターンを、2次X線の強度を示す直線で強度の高低方向に走査しながら、前記直線が示す強度以下の強度をもつ前記回折パターン上の点を候補点とし、隣接する候補点間の回転角度差の最大値が前記所定の角度になったときに走査を止めて前記候補点の回転角度を記憶し、
試料の測定点の座標に応じて、前記記憶した候補点の回転角度の中から測定点の座標に最も近い回転角度を読み出し、前記回転手段および平行移動手段によって、前記読み出した回転角度に試料を設定するとともに、試料の測定点を前記検出器の視野内に配置するX線分析方法。
【請求項4】
結晶構造を有する円板状の試料が載置される試料台と、
試料に単色化した1次X線を照射するX線源と、
試料から発生する2次X線を検出する検出器と、
試料の測定面上の任意の測定点が前記検出器の視野内に配置されるように前記試料台を平行移動させる平行移動手段と、
試料の測定面に垂直な軸を中心に前記試料台を回転させる回転手段とを備えるX線分析装置を用いて、
試料の縁近傍にある任意の測定点について、試料の上方の領域から単色化した1次X線が照射されて前記領域外へ反射するように位置させて測定するX線分析方法であって、
試料の半径Rおよび試料の測定面における前記検出器の視野の半径Tに基づいて次式(1)から求められた角度2θ1以下であって、かつ4度以上である所定の角度をあらかじめ記憶しておき、
sinθ1=(R−T)/R (1)
試料を試料の所定点周りに前記回転手段によって360度回転させながら前記X線源から単色化した1次X線を照射させ、前記検出器で検出する単色化した1次X線の波長の2次X線の強度を前記検出器で検出する試料の主成分からの蛍光X線の強度で除した強度比について試料の回転角度と対応させた回折パターンを取得して記憶し、
前記回折パターンを、前記強度比を示す直線で強度比の高低方向に走査しながら、前記直線が示す強度比以下の強度比をもつ前記回折パターン上の点を候補点とし、隣接する候補点間の回転角度差の最大値が前記所定の角度になったときに走査を止めて前記候補点の回転角度を記憶し、
試料の測定点の座標に応じて、前記記憶した候補点の回転角度の中から測定点の座標に最も近い回転角度を読み出し、前記回転手段および平行移動手段によって、前記読み出した回転角度に試料を設定するとともに、試料の測定点を前記検出器の視野内に配置するX線分析方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2013−104762(P2013−104762A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−248202(P2011−248202)
【出願日】平成23年11月14日(2011.11.14)
【特許番号】特許第5092052号(P5092052)
【特許公報発行日】平成24年12月5日(2012.12.5)
【出願人】(000250339)株式会社リガク (206)
【Fターム(参考)】