説明

X線可視薬物送達デバイス

本発明は、避妊薬の皮下投与またはホルモン補充療法のための、X線可視薬物送達デバイスを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、避妊およびホルモン補充療法の分野に関する。
【0002】
本発明は、避妊薬の皮下投与またはホルモン補充療法のための、X線可視薬物送達デバイスに関する。
【0003】
本発明によるデバイスは、特にインプラントの形態であり、以下インプラントと称する。
【背景技術】
【0004】
インプラノン(Implanon(登録商標))は、3年までの期間、人体に挿入される避妊用インプラントである。医師が誤って挿入したか、または医師がインプラントを挿入していなかったことが原因で、インプラントを容易に取り除くことができなかった症例が報告されている。インプラノンは、超音波検査法およびMRI法を用いて、体内で視覚化され得る。MRIによる視覚化は、常に容易に利用できるとは限らず、比較的複雑および高価である。超音波検査法による視覚化もまた、常に容易に利用できるとは限らず、特に、インプラントが誤って挿入された場合には、経験の浅い医師の手腕では困難である恐れがある。
【0005】
このインプラントは、3年後に取り除く(および取り替える)必要がある。その上、女性が妊娠を望む場合には、インプラントを取り除きたいと思う可能性がある。取り除くことについての他の理由は、癌、特に乳癌、卵巣癌または子宮癌などの疾患である可能性がある。
【0006】
したがって、インプラノンに類似の、X線可視のインプラントを得ることは好都合である。この目的は、インプラントの除去を容易にするために、またはインプラントが挿入されている患者を安心させることを可能にするために、インプラントの位置を突き止め、確認するための付加的な方法を得ることである。
【0007】
かかる企図されたX線可視インプラントは、X線不透過性成分が、(i)インプラントのホルモン放出プロフィールに影響を及ぼさない、および(ii)開口型インプラントを通り過ぎて体内に移動しないようなものである必要がある。
【0008】
X線可視医療用具は、例えばステント、カテーテル、MultiLoad(登録商標)などの子宮内用具、生体分解性インプラントおよび歯科用具などが知られている。避妊の分野において知られているX線可視薬物送達デバイスについては、GB 2168257に記載されているが、これには、プロゲストゲンレボノルゲストレルを含むX線可視膣リングが示されている。GB2168257は、X線不透過性成分が該リングからのレボノルゲストレルの放出率に及ぼす影響にも、またかかるリングが開口を有することにも関連付けてはいない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、避妊用デバイス中に存在するX線不透過性成分が、ホルモン放出率に著しい影響を及ぼさないことを究明することは非常に重要である。その理由として、ホルモン放出率に影響があれば、避妊法を用いる女性が場合によって、妊娠してしまう可能性や、望ましくない影響を受けてしまう可能性があるからである。
【0010】
さらに、避妊用/HRT用デバイス中に存在するX線不透過性成分が、X線不透過性成分関連の有害作用を引き起こすような所望されない量で、(開口型)インプラントの外部に放出され体内に移動しないことも非常に重要である。
【0011】
したがって、本発明は、X線不透過性成分がデバイスからのホルモン放出率に負の影響を及ぼさない、および体内に移動しない、避妊用および/またはHRT用X線可視インプラントを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、(i)(a)避妊に効果的または治療に効果的な量のデソゲストレルまたは3−ケトデソゲストレル、および(b)約4〜30重量%のX線不透過性物質が充填された、熱可塑性ポリマーコア、ならびに(ii)コアを覆っている非薬用熱可塑性ポリマー膜からなる1つの区画を含む、避妊薬の皮下投与またはホルモン補充療法のための、X線可視薬物送達デバイスを提供する。
【0013】
本発明は、さらに、(i)避妊に効果的または治療に効果的な量のデソゲストレルまたは3−ケトデソゲストレルが充填され、および不活性金属線を含む、熱可塑性ポリマーコア、ならびに(ii)コアを覆っている非薬用熱可塑性ポリマー膜からなる1つの区画を含む、避妊薬の皮下投与またはホルモン補充療法のための、X線可視薬物送達デバイスを提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
Implanon(登録商標)は、同軸ロッドからなる避妊用皮下インプラントである。このロッドのコアは、エトノゲストレル(3−ケトデソゲストレル)およびエチレン酢酸ビニル(EVA)コポリマー、すなわち約28%(m/m)の酢酸ビニルを含有するEVA 28の混合物を含む。膜層もまた、EVAポリマー、すなわち約14%(m/m)の酢酸ビニルを含有するEVA 14からなる。各ロッドは、質量129mgであり、エトノゲストレル68mgを含む。インプラノンは、長さ40mmおよび直径2mmであり、ならびに開口を有する。
【0015】
このインプラントは、ステンレス鋼製の針からなるアプリケータの内部に取り付けられ得る。この針は、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンポリマー(ABS)製のアプリケータにぴったり納められている。該アプリケータはシリンジに似た器具であり、本体、プランジャ、針およびポリプロピレン製シールドからなる。充填されたアプリケータは、ポリエチレンテレフタレートグリコール(PETG)製トレイの中に取り付けられ得る。このトレイは、その後蓋紙で密封され得る。
【0016】
本発明の目的は、Implanon(登録商標)などの避妊用/HRT用インプラントに、X線不透過性成分を加えることであり、X線技術によって体内にあるこの位置を確認するための可能性を提供すると同時に、このホルモン放出プロフィールを維持し、および該X線不透過性成分が所望されない量でインプラントの外部に放出され体内に移動しないことを保証する。
【0017】
当業者は、薬物送達デバイスの1バッチ分のホルモン放出プロフィールが、同じ薬物送達デバイスの別のバッチ分のものと、決して正確に同一であるわけではないことを十分認識している。したがって、本発明によると、本発明のX線可視インプラントのホルモン放出プロフィールの偏りが、Implanon(登録商標)のホルモン放出プロフィールから約15%未満である場合、これらのホルモン放出プロフィールは、同一または同等であると見なされる。該偏りは、溶出プロフィールを比較するための相違係数(F)を用いて算出され得る。該相違係数(F)は、2曲線間の各時点での差の百分率を算出する。
【0018】
【数1】

【0019】
ここで、Rは時点tでの基準品の分析値、Tは時点tでの被験品の分析値、およびnは比較のために採取した時点の数である。15まで(0〜15)のF1値により、2曲線の同一性または同等性が保証される。基準曲線は、他の制御放出パラメータが、被験品に比べて可能な限り絶えず一定であるようなものが選択される。
【0020】
インプラントの膜層中にX線不透過性成分を混合した場合には、X線可視度はほとんど達成されなかった。しかしながら、インプラントのコア中にX線不透過性成分を混合した場合には、X線可視度が達成された。活性なホルモン物質をも含むインプラントのコア中に、X線不透過性成分を混合したにもかかわらず、ホルモンの放出プロフィールは影響を受けなかった。
【0021】
この製造後、X線不透過性成分がインプラントのどの場所に位置するかを評価したところ、驚いたことに、以下のことがわかった。すなわち、X線不透過性成分のほとんどすべてがポリマー成分内に封入されており、およびいずれのX線不透過性成分もホルモンの結晶中にほとんど封入されていなかったことである。このことは、該ポリマー成分がインプラントの約36重量%にしか相当しないのに反し、該ホルモン成分がインプラントの約52.5重量%を占めるという事実を考慮すると予想外であった。ポリマー成分内に封入された結果として、X線不透過性成分の結晶はインプラントの開口端を通過してインプラントの外部へと移動することが不可能であった。X線不透過性成分がホルモンの結晶中に存在したならば、ホルモンの結晶が互いに連結する場合、X線不透過性成分はインプラントの外部へ移動することができた可能性がある。
【0022】
したがって、本発明は、(i)(a)避妊に効果的または治療に効果的な量のデソゲストレルまたは3−ケトデソゲストレル、および(b)約4〜30重量%のX線不透過性物質が充填された、熱可塑性ポリマーコア、ならびに(ii)コアを覆っている非薬用熱可塑性ポリマー膜からなる1つの区画を含む、避妊薬の皮下投与またはホルモン補充療法のための、X線可視薬物送達デバイスを提供する。
【0023】
1つの具体的な実施形態において、該X線可視薬物送達デバイスはインプラントである。
【0024】
該X線不透過性成分は、当技術分野において知られているようないずれの成分であってもよく、例として、硫酸バリウム、酸化チタン、酸化ビスマス、タンタル、タングステンまたは白金などが挙げられる。具体的な実施形態において、該X線不透過性物質は硫酸バリウムである。
【0025】
1つの実施形態において、該X線不透過性物質は約4〜25重量%である。他の実施形態において、該X線不透過性物質は約6〜20重量%である。さらに他の実施形態において、該X線不透過性物質は約4〜15重量%である。具体的な実施形態において、該X線不透過性物質は約8〜15重量%である。
【0026】
本発明を実施する際に使用され得る熱可塑性ポリマーは、原則として、医薬としての用途に適したいずれの熱可塑性ポリマー物質またはエラストマー物質であってもよく、例として、低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニルコポリマーおよびスチレン−ブタジエン−スチレンコポリマーなどが挙げられる。具体的な実施形態において、エチレン−酢酸ビニルコポリマー(ポリ−EVA)は、この優れた機械的性質および物理的性質(例えば、物質中のステロイドの溶解度)のために使用される。該ポリ−EVA物質はコアおよび膜に使用されることが可能であり、市販されているいずれのエチレン−酢酸ビニルコポリマーであってもよい。かかる物質には、例えば、以下の商用名で入手できる製品:Elvax、Evatane、Lupolen、Movriton、Ultrathene、AtevaおよびVestyparなどが挙げられる。
【0027】
コア中の該X線不透過性物質は、デバイスからのデソゲストレルまたは3−ケトデソゲストレルの放出に影響を及ぼさず、およびインプラントの外部へ移動しない。
【0028】
本発明は、さらに、(i)避妊に効果的または治療に効果的な量のデソゲストレルまたは3−ケトデソゲストレルが充填され、および不活性金属線を含む、熱可塑性ポリマーコア、ならびに(ii)コアを覆っている非薬用熱可塑性ポリマー膜からなる1つの区画を含む、避妊薬の皮下投与またはホルモン補充療法のための、X線可視薬物送達デバイスを提供する。
【0029】
該X線不透過性成分は、不活性なチタン線または、ある等級のステンレス鋼または金合金などの他の不活性材料であってもよい。具体的な実施形態において、該不活性金属線はチタン線である。
【0030】
該コア中の該金属線は、該デバイスからのデソゲストレルまたは3−ケトデソゲストレルの放出に影響を及ぼさない。
【0031】
本発明は、以下の実施例においてさらに記載されるが、かかる実施例は、請求された本発明の範囲を決して限定するためのものではない。
【実施例1】
【0032】
コア中に硫酸バリウムを含む2層構造のインプラントの調製
コア中に硫酸バリウムを含む2層構造のインプラントの調製は、以下の2つの工程から構成された。すなわち、エトノゲストレル(3−ケトデソゲストレル)、硫酸バリウムおよびEVA−28コポリマーの混合物を含むコア造粒物を製造すること(予備混合およびブレンド押出し)、ならびに該コアおよびEVA−14コポリマーの膜層からなる同軸ファイバーを製造することである。
【0033】
コア物質は、所望の量の材料(例えば、エトノゲストレル52.5重量%、EVA 36重量%、硫酸バリウム11.5重量%)をステンレス製ドラムに加えることにより調製され、その後この粉体混合物を、ジャイロホイール(rhoenrad)または相等品上、47rpmで該ドラムを回転させることにより予備混合した。続いて該粉体混合物を、共回転2軸押出機Berstorff ZE25(または相等品)に供給し、125℃の押出温度でブレンド押出しした。ブレンド押出しにより、エトノゲストレル(3−ケトデソゲストレル)および硫酸バリウムがEVA−28マトリックス中に均質に分散したストランドを得た。続いて該ストランドを粒状化し、コア造粒物にした。
【0034】
共押出装置は、膜物質を加工処理する膜押出機、および該ブレンド押出機によって供給されたコア物質を加工処理するコア押出機から構成された。メルトフローを紡糸口金に供給することにより、膜−コアファイバーを得た。両メルトフローのボリュームフローレートを、別の紡糸ポンプ一式によって制御した。押出温度は145℃、および押出速度は1m/minを使用した。押出しにより、直径2mmおよび膜厚60μmを有する同軸ファイバーを得た。該ファイバーを水浴中で室温に冷却し、風乾し、リールに巻いた。該同軸ファイバーを半自動切断機(Diosynthまたは相等品)を用いて4.0cmのロッドに切断した。
【実施例2】
【0035】
膜中に硫酸バリウムを含む2層構造のインプラントの調製
膜中に硫酸バリウムを含む2層構造のインプラントの調製は、以下の3つの工程から構成された。すなわち、エトノゲストレル(3−ケトデソゲストレル)およびEVA−28コポリマーの混合物を含むコア造粒物を製造すること(予備混合およびブレンド押出し)、硫酸バリウムおよびEVA−14コポリマーの混合物を含む膜造粒物を製造すること(予備混合およびブレンド押出し)、ならびに該コアおよび膜層からなる同軸ファイバーを製造することである。
【0036】
コア物質(例えば、エトノゲストレル60重量%およびEVA−28 40重量%)ならびに膜物質(例えば、硫酸バリウム20重量%およびEVA−14 80重量%)は、所望の材料をステンレス製ドラムに加えることにより調製され、その後この粉体混合物を、ジャイロホイールまたは相等品上、47rpmで該ドラムを回転させることにより予備混合した。続いてコア粉体混合物を、共回転2軸押出機Berstorff ZE25(または相等品)に供給し、125℃の押出温度でブレンド押出しした。ブレンド押出しにより、エトノゲストレル(3−ケトデソゲストレル)がEVA−28マトリックス中に均質に分散したストランドを得た。続いて該ストランドを粒状化し、コア造粒物にした。膜粉体混合物については、原則的に同様の加工処理を実施したが、但し150℃というさらに高い押出温度で行った。これにより、硫酸バリウムがEVA−14マトリックス中に均質に分散したストランドを得た。続いて該ストランドを粒状化し、膜造粒物にした。
【0037】
共押出装置は、該ブレンド押出機によって供給された膜造粒物を加工処理する膜押出機、および該ブレンド押出機によって供給されたコア造粒物を加工処理するコア押出機から構成された。メルトフローを紡糸口金に供給することにより、膜−コアファイバーを得た。両メルトフローのボリュームフローレートを、別の紡糸ポンプ一式によって制御した。押出温度は120℃、および押出速度は1m/minを使用した。押出しにより、直径2mmおよび膜厚60μmを有する同軸ファイバーを得た。該ファイバーを水浴中で室温に冷却し、風乾し、リールに巻いた。該同軸ファイバーを4.0cmのロッドに切断した。
【実施例3】
【0038】
コア中に硫酸バリウムを含むインプラント、膜中に硫酸バリウムを含むインプラントおよび硫酸バリウムを含まないインプラント(インプラノン)間のX線可視度の比較
インプラントのX線写真を撮影し、続いてコア中または膜中のどちらか一方に硫酸バリウムを有するインプラントのX線可視度と、硫酸バリウムを含まないインプラント(インプラノン)のX線可視度とを比較した。図1は以下のことを示している。すなわち、膜層に硫酸バリウムを混合したものは、硫酸バリウムを含まないインプラントと比較して、X線可視度がほとんど改善されなかった。しかしながら、コア中に硫酸バリウムを混合することにより、インプラントのX線可視度が大いに改善された。
【0039】
コア中に硫酸バリウムを含むインプラントのX線可視度については、ブタ組織におけるin vivo試験も行った。この目的のために、コア中に硫酸バリウムを含むインプラントおよび硫酸バリウムを含まないインプラント(インプラノン)をブタの後肢に挿入し、続いてX線写真を撮影した。図2は、インプラント(サンプル7)を含む硫酸バリウムがはっきりと見えるが、インプラノンのインプラント(サンプル8)は見えないことを示している。
【実施例4】
【0040】
市販のインプラノンのホルモン放出プロフィールと比較した、コア中に硫酸バリウムを含むインプラントのホルモン放出プロフィール
インプラントのin vitro放出率プロフィールを2つの方法で試験した。加速放出率法を、エタノール/水(90/10)溶液中でインプラントを試験することにより行った。リアルタイム放出率法については、in vitro放出プロフィールを水中で試験した。両試験に関し、コア中に硫酸バリウムを含むインプラントの放出プロフィールを、硫酸バリウムを含まないインプラノンのプロフィールと比較した。
【0041】
インプラントの製造は、コア中に8、11.5および15重量%の硫酸バリウムを充填することにより行った。得られた加速放出プロフィールを図3に示す。図3は、放出プロフィールがすべて類似していること、およびコア中の硫酸バリウム含量の被験範囲内(0〜15重量%)では、X線不透過性成分がデバイスからのホルモン放出に影響を及ぼさないことを示している。同様の結論を、190日までのリアルタイム放出プロフィール(図4)から引き出すことができる。すなわち、コア中の硫酸バリウム含量の被験範囲内(0〜15重量%)では、X線不透過性成分がデバイスからのホルモン放出に影響を及ぼさないという結論である。
【0042】
これらの結論は、F1値を算出することにより実証された。加速放出率プロフィール(18日(同日を含む)まで)およびリアルタイム放出率プロフィール(190日(同日を含む)まで)の両方について、インプラノンの放出プロフィールを基準として、F1値を算出した。結果を表1に示す。15まで(0〜15)のF1値により、2曲線の同一性または同等性が保証される。
【0043】
【表1】

【実施例5】
【0044】
コア中にチタン線を含むインプラントの調製
コアが不活性なチタン線を含むインプラントを調製するために、2mmの直径を有するインプラノンのロッドを、チタン線を挿入できるように改造した。これは、インプラント中の縦方向にドリルで管を注意深く作製することにより行った。直径0.40mmまたは0.60mmを有するスパイラルドリル(Gehring Spiralbohre、ドイツ)を使用した。0.40mmのスパイラルドリルは、0.25mmのチタン線を挿入するインプラントに使用し、一方0.60mmのドリルは、0.50mmのチタン線を挿入するインプラントに使用した。管を作製した後、チタン線が膜層を突き抜けないように考慮して、該線を注意深く挿入した。挿入後、該線を鋭いカッターを用いてロッドの端で切断した。
【実施例6】
【0045】
コア中にチタン線を含むインプラントとチタン線を含まないインプラント(インプラノン)とのX線可視度の比較
インプラントのX線写真を撮影し、続いてコア中にチタン線を有するインプラント間のX線可視度を、チタン線を含まないインプラント(インプラノン)と比較した。図5に示されるように、コア中にチタン線を挿入することにより、インプラントのX線可視度が大いに改善された。
【0046】
チタン線を含むインプラントのX線可視度については、ブタ組織におけるin vivo試験も行った。この目的のために、コア中にチタン線を含むインプラントおよび線を含まないインプラント(インプラノン)をブタの後肢に挿入し、続いてX線写真を撮影した。図6は、インプラント(サンプル4)を含むチタン線がはっきりと見えるが、インプラノンのインプラント(サンプル3)は見えないことを示している。
【実施例7】
【0047】
市販のインプラノンのホルモン放出プロフィールと比較した、コア中にチタン線を含むインプラントのホルモン放出プロフィール
インプラノンのin vitro放出率プロフィールを2つの方法で測定した。加速放出率法を、エタノール/水(90/10)溶液中でインプラントを試験することにより行った。リアルタイム放出率法については、in vitro放出プロフィールを水中で試験した。両試験に関し、コア中にチタン線を含むインプラントの放出プロフィールを、チタン線を含まないインプラノンのプロフィールと比較した。得られた加速放出プロフィールを図7に示す。図7は以下のことを示している。すなわち、すべての放出プロフィールが、基準インプラントであるインプラノンに匹敵していること、およびチタン線の直径の被験範囲内(0.25〜0.50mm)では、X線不透過性成分によってデバイスからのホルモン放出に及ぼされる影響が許容できるものであるということである。
【0048】
同様の結論を、118日までのリアルタイム放出プロフィール(図8)から引き出すことができる。すなわち、すべての放出プロフィールが、基準インプラントであるインプラノンに匹敵していること、およびチタン線の直径の被験範囲内(0.25〜0.50mm)では、X線不透過性成分によってデバイスからのホルモン放出に及ぼされる影響が許容できるものであるという結論である。
【0049】
これらの結論は、F1値を算出することにより実証された。加速放出率プロフィール(18日(同日を含む)まで)およびリアルタイム放出率プロフィール(118日(同日を含む)まで)の両方について、インプラノンの放出プロフィールを基準として、F1値を算出した。結果を表2に示す。15まで(0〜15)のF1値により、2曲線の同一性または同等性が保証された。
【0050】
【表2】

【実施例8】
【0051】
開口を有するインプラントから外部への硫酸バリウム粒子の移動
インプラント中の硫酸バリウムの分布を明らかにするため、および浸出時における硫酸バリウム粒子の損失の影響を把握するために、極低温の薄切片をインプラントからウルトラミクロトームを用いて作製した。続いてインプラントの該薄切片を、走査電子顕微鏡/エネルギー分散型X線分光法(SEM/EDX)を用いて、浸出前および浸出後に分析した。インプラントを浸出すると、エトノゲストレルの結晶をインプラントから除去することになる。浸出前および浸出後に調べることにより、硫酸バリウム/エトノゲストレル/EVA−28混合物の形態に関して情報が得られる。後方散乱電子(BSE)検出器を撮像に使用した。BSE画像において、硫酸バリウム粒子の存在は、硫酸バリウム粒子が明るく輝くことによって容易に認められる。
【0052】
図9は、コアが約11.5重量%の硫酸バリウムで充填されたインプラントの形態を示す。明るい点は硫酸バリウムを表すが、この点は主にEVA−28物質に位置する、すなわち、不規則な形をした灰/黒色の点はエトノゲストレルの結晶を表すが、この点は明るい点を全く含んでいないことが確認され得る。図10は、浸出された同サンプルを示す。左側の部分は膜物質であり、一方右側の部分は浸出コアを示す。濃い色の穴がはっきりと見える。該穴は、エトノゲストレルの結晶が浸出前に存在した位置を表すが、この穴は明るい点をほとんど含んでいない。
【0053】
数バッチ分における硫酸バリウム含量も、浸出前および浸出後(エタノール/水(90/10)中18日)に灰化を用いて試験した。これにより、エトノゲストレルの結晶がインプラントの外部へ浸出された後、硫酸バリウムの結晶がインプラントの外部へ移動する可能性についての情報が得られる。この結果(表3)は、浸出時に硫酸バリウム含量において大きな変化がないことを示す。したがって、硫酸バリウムの結晶は、開口端を通過してインプラントの外部へ全くまたはほとんど移動しなかったと結論付けることができる。
【0054】
表3における結果と図9および図10を結び付けることにより、(明るい点で示された)X線不透過性成分は該ホルモンの結晶によってほとんど封入されておらず、および該X線不透過性成分の多くが該ポリマーEVA−28によって封入されていたと結論付けることができる。
【0055】
【表3】

【実施例9】
【0056】
コア中に硫酸バリウムを含むインプラントと硫酸バリウムを含まないインプラント(インプラノン)とのX線可視度の比較
インプラントのX線写真(26KWおよび0.6mAsにて)を撮影し、続いてコア中に硫酸バリウムを有するインプラントのX線可視度と、硫酸バリウムを含まないインプラント(インプラノン)のX線可視度とを比較した。図11は、コア中に硫酸バリウムを混合することにより、インプラントのX線可視度が大いに改善されたことを示している。コア中の硫酸バリウム含量がほんの4重量%だけでも有するインプラント(サンプル4)は、はっきりと見えるが、硫酸バリウムを含まないインプラノンのインプラント(サンプル1)は見えない。
【0057】
測定されたX線透過度は、インプラントのX線可視度に対する定量値である。数はX線カメラのX線被曝量(ピクセル/面積)(X線透過度)を表す。表4および図12は、コア中の硫酸バリウムの含量が4重量%と低いインプラント(サンプル4)のX線透過量が、BaSOを含まないインプラント(サンプル1)とは有意に異なることを示している。
【0058】
【表4】

【実施例10】
【0059】
市販のインプラノン(硫酸バリウムなし)のホルモン放出プロフィールと比較した、コア中に硫酸バリウムを含むインプラントのホルモン放出プロフィール
インプラントのin vitro放出率プロフィールを2つの方法で試験した。加速放出率法を、エタノール/水(90/10)溶液中でインプラントを試験することにより行った。リアルタイム放出率法については、in vitro放出プロフィールを水中で試験した。両試験に関し、コア中に硫酸バリウムを含むインプラントの放出プロフィールを、硫酸バリウムを含まないインプラノンのプロフィールと比較した。
【0060】
インプラントの製造は、コア中に4、20および30重量%の硫酸バリウムを充填することにより行った。得られた加速放出プロフィールを図13に示す。図13は、放出プロフィールがすべて類似していること、およびコア中の硫酸バリウム含量の被験範囲内(0〜30重量%)では、X線不透過性成分がデバイスからのホルモン放出に影響を及ぼさないことを示している。同様の結論を、76日までのリアルタイム放出プロフィール(図14)から引き出すことができる。すなわち、コア中の硫酸バリウム含量の被験範囲内(0〜30重量%)では、X線不透過性成分がデバイスからのホルモン放出に影響を及ぼさないという結論である。
【0061】
これらの結論は、F1値を算出することにより実証された。加速放出率プロフィール(18日(同日を含む)まで)およびリアルタイム放出率プロフィール(76日(同日を含む)まで)の両方について、0重量%インプラントの放出プロフィールを基準として、F1値を算出した。結果を表5に示す。15まで(0〜15)のF1値により、2曲線の同一性または同等性が保証される。
【0062】
【表5】


【実施例11】
【0063】
開口を有するインプラントから外部への硫酸バリウム粒子の移動
インプラント中の硫酸バリウムの分布を明らかにするため、および浸出時における硫酸バリウム粒子の損失の影響を把握するために、極低温の薄切片をインプラントからウルトラミクロトームを用いて作製した。続いてインプラントの該薄切片を、走査電子顕微鏡/エネルギー分散型X線分光法(SEM/EDX)を用いて、浸出前および浸出後に分析した。インプラントを浸出すると、エトノゲストレルの結晶をインプラントから除去することになる。浸出前および浸出後に調べることにより、硫酸バリウム/エトノゲストレル/EVA−28混合物の形態に関して情報が得られる。後方散乱電子(BSE)検出器を撮像に使用した。BSE画像において、硫酸バリウム粒子の存在は、硫酸バリウム粒子が明るく輝くことによって容易に認められる。
【0064】
図15は、コアが約4、20および30重量%の硫酸バリウムで充填されたインプラントの形態を示す。明るい点は硫酸バリウムを表すが、この点は主にEVA−28物質に位置する、すなわち、不規則な形をした灰/黒色の点はエトノゲストレルの結晶を表すが、この点は明るい点を全く含んでいないことが確認され得る。図16は、浸出された同サンプルを示す。ブランクの部分は膜物質であり、一方明るい点を含んだ部分は浸出コアを示す。濃い色の穴がはっきりと見える。該穴は、エトノゲストレルの結晶が浸出前に存在した位置を表すが、この穴は明るい点をほとんど含んでいない。
【0065】
数バッチ分における硫酸バリウム含量も、浸出前および浸出後(エタノール/水(90/10)中18日)に灰化を用いて試験した。これにより、エトノゲストレルの結晶がインプラントの外部へ浸出された後、硫酸バリウムの結晶がインプラントの外部へ移動する可能性についての情報が得られる。この結果(表6)は、浸出時に硫酸バリウム含量において大きな変化がないことを示す。したがって、硫酸バリウムの結晶は、開口端を通過してインプラントの外部へ全くまたはほとんど移動しなかったと結論付けることができる。
【0066】
表6における結果と図15および図16を結び付けることにより、(明るい点で示された)X線不透過性成分は該ホルモンの結晶によってほとんど封入されておらず、および該X線不透過性成分の多くが該ポリマーEVA−28によって封入されていたと結論付けることができる。
【0067】
【表6】

【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】a)は硫酸バリウム(BaSO)を含まない(すなわちインプラノンに等しい)インプラントを示すX線写真である。b)は膜中に20重量%のBaSOを含むインプラントを示すX線写真である。c)はコア中に11.5重量%のBaSOを含むインプラントを示すX線写真である。
【図2】ブタ組織に挿入された、硫酸バリウムを含まない(サンプル8)、およびコア中に11.5重量%のBaSOを含む(サンプル7)インプラントを示すX線写真である。
【図3】コア中に0、8、11.5および15重量%の硫酸バリウムを含むインプラントを示す加速放出プロフィールである。(0重量%のインプラントはインプラノンに等しい。)
【図4】コア中に0、8、11.5および15重量%の硫酸バリウムを含むインプラントを示す、190日までのリアルタイム放出プロフィールである。(0重量%のインプラントはインプラノンに等しい。)
【図5】a)はBaSOもチタン線も含まない(すなわちインプラノンに等しい)インプラントを示すX線写真である。b)は0.5mmのチタン線を含むインプラントを示すX線写真である。
【図6】ブタ組織に挿入された、チタン線を含まない(サンプル3)、およびコア中に0.5mmのチタン線を含む(サンプル4)インプラントを示すX線写真である。
【図7】コア中に0.25mmのチタン線を含むインプラント、コア中に0.50mmのチタン線を含むインプラント、およびチタン線を含まない基準インプラント(インプラノンに等しい)を示す加速放出プロフィールである。
【図8】コア中に0.25mmのチタン線を含むインプラント、コア中に0.50mmのチタン線を含むインプラント、およびチタン線を含まない基準インプラント(インプラノンに等しい)を示すリアルタイム放出プロフィールである。
【図9】コア中に11.5重量%の硫酸バリウムを含むインプラントを示す後方散乱電子(BSE)検出写真(拡大率350倍)である。
【図10】コア中に11.5重量%の硫酸バリウムを含む浸出インプラントを示すBSE検出写真(拡大率3500倍)である。左側の濃い部分は膜である。
【図11】a)はBaSOを含まない(すなわちインプラノンに等しい、サンプル1)インプラントを示すX線写真である。b)はコア中に11.5重量%のBaSOを含む(サンプル2およびサンプル3)インプラントを示すX線写真である。c)はコア中に4重量%のBaSOを含むインプラントを示すX線写真である。d)はコア中に20重量%のBaSOを含むインプラントを示すX線写真である。e)はコア中に30重量%のBaSOを含むインプラントを示すX線写真である。
【図12】BaSO含量(重量(%))の関数としてのインプラントを示すX線透過度グラフである。
【図13】コア中に0、4、20および30重量%の硫酸バリウムを含むインプラントを示す加速放出プロフィールである。(0重量%のインプラントはインプラノンに等しい。)
【図14】コア中に0、4、20および30重量%の硫酸バリウムを含むインプラントを示す、76日までのリアルタイム放出プロフィールである。(0重量%のインプラントはインプラノンに等しい。)
【図15】a)はコア中に4重量%の硫酸バリウムを含むインプラントを示す後方散乱電子(BSE)検出写真(拡大率350倍)である。b)はコア中に20重量%の硫酸バリウムを含むインプラントを示す後方散乱電子(BSE)検出写真(拡大率350倍)である。c)はコア中に30重量%の硫酸バリウムを含むインプラントを示す後方散乱電子(BSE)検出写真(拡大率350倍)である。
【図16】a)はコア中に4重量%の硫酸バリウムを含む浸出インプラントを示すBSE検出写真(拡大率3500倍)である。左側の濃い部分は膜である。b)はコア中に20重量%の硫酸バリウムを含む浸出インプラントを示すBSE検出写真(拡大率3500倍)である。左側の濃い部分は膜である。c)はコア中に30重量%の硫酸バリウムを含む浸出インプラントを示すBSE検出写真(拡大率3500倍)である。左側の濃い部分は膜である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)(a)避妊に効果的または治療に効果的な量のデソゲストレルまたは3−ケトデソゲストレル、および(b)約4から30重量%のX線不透過性物質が充填された、熱可塑性ポリマーコア、ならびに(ii)コアを覆っている非薬用熱可塑性ポリマー膜からなる1つの区画を含む、避妊薬の皮下投与またはホルモン補充療法のための、X線可視薬物送達デバイス。
【請求項2】
X線不透過性物質が、約6から20重量%である、請求項1に記載のX線可視薬物送達デバイス。
【請求項3】
X線不透過性物質が、約8から15重量%である、請求項1に記載のX線可視薬物送達デバイス。
【請求項4】
コア中のX線不透過性物質が、デバイスからのデソゲストレルまたは3−ケトデソゲストレルの放出に影響を及ぼさない、請求項1から3のいずれか一項に記載のX線可視薬物送達デバイス。
【請求項5】
X線不透過性粒子が、インプラントの外部へ移動しない、請求項1から4のいずれか一項に記載のX線可視薬物送達デバイス。
【請求項6】
X線不透過性物質が硫酸バリウムである、請求項1から5のいずれか一項に記載のX線可視薬物送達デバイス。
【請求項7】
デバイスがインプラントである、請求項1から6のいずれか一項に記載のX線可視薬物送達デバイス。
【請求項8】
熱可塑性ポリマーがポリエチレン酢酸ビニルである、請求項1から7のいずれか一項に記載のX線可視薬物送達デバイス。
【請求項9】
(i)避妊に効果的または治療に効果的な量のデソゲストレルまたは3−ケトデソゲストレルが充填され、および不活性金属線を含む、熱可塑性ポリマーコア、ならびに(ii)コアを覆っている非薬用熱可塑性ポリマー膜からなる1つの区画を含む、避妊薬の皮下投与またはホルモン補充療法のための、X線可視薬物送達デバイス。
【請求項10】
コア中の金属線が、デバイスからのデソゲストレルまたは3−ケトデソゲストレルの放出に影響を及ぼさない、請求項9に記載のX線可視薬物送達デバイス。
【請求項11】
不活性金属線がチタン線である、請求項9または10に記載のX線可視薬物送達デバイス。
【請求項12】
デバイスがインプラントである、請求項9から11のいずれか一項に記載のX線可視薬物送達デバイス。
【請求項13】
熱可塑性ポリマーがポリエチレン酢酸ビニルである、請求項9から12のいずれか一項に記載のX線可視薬物送達デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公表番号】特表2007−529469(P2007−529469A)
【公表日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−503338(P2007−503338)
【出願日】平成17年3月14日(2005.3.14)
【国際出願番号】PCT/EP2005/051150
【国際公開番号】WO2005/089814
【国際公開日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【出願人】(398057282)ナームローゼ・フエンノートチヤツプ・オルガノン (93)
【Fターム(参考)】