X線回折測定装置
【課題】 X線回折測定装置を容易に搬送可能に構成するとともに、測定対象物のX線による回折環を簡単に形成できるようにする。
【解決手段】 X線回折測定装置は、ケース60を備えて、ケース60内に、測定対象物OBに向けてX線を出射するX線出射器10と、イメージングプレート21が取り付けられるテーブル20と、イメージングプレート21にレーザ光を照射して、出射した光を受光して受光強度に応じた受光信号を出力するレーザ検出装置40と、テーブル20を中心軸回りに回転させるスピンドルモータ37と、テーブル20をイメージングプレート21の受光面に平行な方向に移動するフィードモータ32とを収容する。ケース60は、測定対象物OB上に載置される傾斜面壁67を有し、傾斜面壁67には出射されたX線を通過させる貫通孔67aが設けられている。傾斜面壁67は、出射されたX線の光軸方向と所定の角度をなす。
【解決手段】 X線回折測定装置は、ケース60を備えて、ケース60内に、測定対象物OBに向けてX線を出射するX線出射器10と、イメージングプレート21が取り付けられるテーブル20と、イメージングプレート21にレーザ光を照射して、出射した光を受光して受光強度に応じた受光信号を出力するレーザ検出装置40と、テーブル20を中心軸回りに回転させるスピンドルモータ37と、テーブル20をイメージングプレート21の受光面に平行な方向に移動するフィードモータ32とを収容する。ケース60は、測定対象物OB上に載置される傾斜面壁67を有し、傾斜面壁67には出射されたX線を通過させる貫通孔67aが設けられている。傾斜面壁67は、出射されたX線の光軸方向と所定の角度をなす。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定対象物にX線を照射し、測定対象物で回折したX線によりイメージングプレートの表面に形成された回折環を測定するX線回折測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、測定対象物の残留応力を計算するために、X線回折による回折環の形状を測定するX線回折測定装置は知られている。この種のX線回折測定装置においては、装置を小型化でき、かつX線の照射時間を短くすることが可能な装置として、下記特許文献1に示されている装置がある。この装置は、X線を所定の角度で測定対象物に照射し、測定対象物で回折したX線(以下、回折X線という)を、感光性を有するイメージングプレートで受光し、イメージングプレートに形成された環状のX線回折像(以下、回折環という)の形状を測定する。そして、測定した回折環の形状をcosα法により分析して、測定対象物の残留応力を計算するようにしている。
【0003】
このcosα法によれば、X線の出射軸と測定対象物の法線を含む平面と、測定対象物の平面とがなす交線方向の応力(以下、垂直応力という)が計算され得るとともに、せん断応力も計算され得る。これは、ショットピーニングの効果を評価するのに適している。すなわち、ショットピーニングは、硬質の小球を噴射して金属の表面に当て、金属の表面に凹凸を形成して残留圧縮応力(垂直応力に属する)を生じさせることで金属の破壊強度を増加させるものであるが、凹凸がまばらであると、凹凸が形成された箇所では残留圧縮応力は大きくてもせん断応力が残り、金属の破壊強度の増加は不充分である。個々の凹凸が識別できない程度に凹凸が形成されたとき、せん断応力はほとんど「0」になり、金属の破壊強度の増加が充分となる。よって、ショットピーニングの後で、せん断応力を測定し、その値を確認することでショットピーニングが充分か否かを評価することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−241308号公報
【発明の概要】
【0005】
しかしながら、ショットピーニングが行われる材料は大型であることが多く、X線回折測定装置が設置された場所まで前記材料を持ち運ぶことは困難である。また、上記特許文献1に示されたX線回折測定装置は小型であるとはいえ、搬送するようには構成されておらず、このX線回折測定装置を測定対象物である材料の所まで持ち運ぶことも困難である。このため、この種のX線回折測定装置によりショットピーニングが充分か否かを評価することは行われていないのが現状である。また、ショットピーニングを評価することに限らず、建造物に固定された金属の残留応力を測定したいというニーズがあっても、X線回折測定装置を持ち運ぶのが困難であるため、そのようのニーズに応えられていないのが現状である。
【0006】
本発明は上記問題を解決するためになされたもので、その目的は、測定対象物の所まで容易に搬送できて、測定対象物にX線を照射し、測定対象物にて回折したX線によりイメージングプレートの表面に形成された回折環の形状を測定することが可能なX線回折測定装置を提供することにある。なお、下記本発明の各構成要件の記載においては、本発明の理解を容易にするために、後述する実施形態の対応箇所の符号を括弧内に記載しているが、本発明の各構成要件は、この実施形態の符号によって示された対応箇所の構成に限定解釈されるべきものではない。
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の特徴は、測定対象物(OB)に向けてX線を出射するX線出射器(10)と、中央にX線を通過させる貫通孔が形成されたテーブル(20)と、テーブルに取付けられて、中央部にてX線を通過させるとともに、測定対象物にて回折したX線の回折光を受光する受光面を有し、回折光の像である回折環を記録するイメージングプレート(21)と、レーザ光を出射するレーザ光源及びレーザ光を受光するフォトディテクタを有し、レーザ光をイメージングプレートの受光面に照射するとともに、レーザ光の照射によってイメージングプレートから出射された光を受光して受光強度に応じた受光信号を出力するレーザ検出装置(40)と、テーブルを貫通孔の中心軸回りに回転させる回転機構(37)と、テーブルをイメージングプレートの受光面に平行な方向にレーザ検出装置に対して相対的に移動させる移動機構(31〜33)と、X線出射器、テーブル、イメージングプレート、レーザ検出装置、回転機構及び移動機構を収容したケースとを備えたX線回折測定装置であって、ケースは、測定対象物上に面接触させてX線回折測定装置を載置させるための平面状の設置用壁(67)であって、X線出射器から出射されたX線を通過させる開口(67a)を設けた設置用壁を有し、設置用壁の法線とX線出射器から出射されたX線の光軸とがなす角度を、測定対象物にX線を照射した際に測定対象物から回折したX線が出射される所定角度に設定したことにある。
【0008】
この場合、前記所定角度は、例えば、30度乃至45度の範囲内の角度である。また、前記ケースは、X線出射器からX線が出射されるX線の光軸方向に垂直な下面壁(64)を有し、下面壁の一端部に下面壁に対して傾斜させた傾斜面壁を形成し、傾斜面壁を前記設置用壁とするとよい。また、前記ケースは、直方体形状に形成され、テーブルの移動方向における下面壁の一端部の角部に前記傾斜面壁を設けるとよい。
【0009】
上記のように構成した本発明においては、作業者は、X線回折測定装置を測定対象物のある場所へ搬送して、設置用壁を測定対象物上に面接触させることにより、X線回折測定装置を測定対象物上に載置する。この状態で、X線出射器からのX線を設置用壁に設けた開口を介して測定対象物に照射すれば、設置用壁の法線とX線出射器から出射されたX線の光軸とがなす角度が、測定対象物から回折したX線が出射される所定角度に設定されているので、測定対象物の表面の法線と前記X線の光軸とがなす角度も前記所定角度となり、測定対象物から回折したX線が出射されてイメージングプレートに回折したX線による回折環が形成される。そして、レーザ検出装置を作動させた状態で、回転機構及び移動機構を作動させることによりイメージングプレートをテーブルと共に移動及び回転させれば、イメージングプレートに形成された回折環の形状をレーザ光により測定できる。このように本発明によれば、X線回折装置を搬送する際には、X線出射器、テーブル、イメージングプレート、レーザ検出装置、回転機構及び移動機構を収容したケースを持ち運ぶだけでよいので、X線回折測定装置の搬送が容易となる。また、搬送後、設置用壁を測定対象物上に面接触させてX線回折測定装置を測定対象物上に載置し、X線出射器を作動させてX線を測定対象物に照射するだけで、イメージングプレートには回折X線による回折環が形成され、レーザ検出装置、回転機構及び移動機構を作動させれば、回折環の形状が測定される。そして、回折環の形状の測定結果に基づいて測定対象物の残留応力を計算できるので、ショットピーニング後の測定対象物など、搬送が難しい大きな測定対象物の残留応力の測定が簡単に行えるようになる。
【0010】
また、本発明の他の特徴は、ケースに、さらに、設置用壁を測定対象物上に面接触させた状態に維持するための支持脚(68a,68b)を設けたことにある。この場合、支持脚は、例えば折り畳み式であってもよいし、進退式であってもよい。これによれば、簡単な構成で、設置用壁を測定対象物上に面接触させて、X線回折測定装置を測定対象物上に載置させた状態を確実に維持できる。
【0011】
さらに、本発明の他の特徴は、ケースに、さらに、搬送用の取っ手(69)を設けたことにある。この場合、取っ手は、例えばケースの上面に設けるとよい。これによれば、取っ手を持つことによりX線回折測定装置を搬送できるので、X線回折測定装置の搬送がより容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係るX線回折測定装置を含むX線回折測定システムを示す全体概略図である。
【図2】図1のX線回折測定装置の拡大図である。
【図3】図1のコントローラによって実行される回折環撮像プログラムを示すフローチャートである。
【図4A】図1のコントローラによって実行される回折環読取りプログラムの前半部分を示すフローチャートである。
【図4B】前記回折環読取りプログラムの後半部分を示すフローチャートである。
【図5】図1のコントローラによって実行される回折環形状検出プログラムを示すフローチャートである。
【図6】図1のコントローラによって実行される回折環消去プログラムを示すフローチャートである。
【図7】イメージングプレートの移動限界位置からの移動距離と、イメージングプレートにおけるレーザ光の照射位置の半径方向距離(半径)との関係を説明するための図である。
【図8】読取りポイントの軌跡を説明する説明図である。
【図9】信号強度のピークを説明するための受光曲線の一例を示すグラフである。
【図10A】図1のX線回折測定装置の保管又は搬送状態を示す状態図である。
【図10B】図1のX線回折測定装置の回折環撮像状態を示す状態図である。
【図10C】図1のX線回折測定装置の回折環読取り状態を示す状態図である。
【図11】本発明の変形例に係るX線回折測定装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一実施形態に係るX線回折測定装置含むX線回折測定システムの構成について図1及び図2を用いて説明する。このX線回折測定システムは、測定対象物OBの残留応力を評価するために、X線を測定対象物OBに照射するとともに、同照射による測定対象物OBからの回折X線により形成される回折環の形状を検出する。
【0014】
X線回折測定装置は、X線を出射するX線出射器10と、回折X線による回折環が形成されるイメージングプレート21を取り付けるためのテーブル20と、テーブル20を回転及び移動させるテーブル駆動機構30と、イメージングプレート21に形成された回折環を測定するためのレーザ検出装置40と、これらのX線出射器10、テーブル20、テーブル駆動機構30及びレーザ検出装置40を収容するケース60とを備えている。また、ケース60内には、X線出射器10、テーブル20、テーブル駆動機構30及びレーザ検出装置40に接続されて作動制御したり、検出信号を入力したりするための各種回路も内蔵されており、図1においてケース60外に示された2点鎖線で示された各種回路は、ケース60内の2点鎖線内に納められている。なお、図1及び図2においては、回路基板、電線、固定具、空冷ファンなどは省略されている。
【0015】
ケース60は、平面状の前面壁61、後面壁62、上面壁63、下面壁64、左側面壁65及び右側面壁66(図示省略)を有する直方体状に形成されるとともに、前面壁61と下面壁64の角部を斜めに切断するように傾斜面壁67が設けられている。傾斜面壁67の中央部分には円形の貫通孔67aが設けられて、貫通孔67aを介して、回折環を形成するためのX線(X線出射器10から出射されたX線)を通過させるようになっている。そして、この傾斜面壁67を測定対象物OBの表面(上面)に密着すなわち面接触させて、測定対象物OBにX線を照射し、イメージングプレート21に回折環を形成するようになっている。
【0016】
左右側面壁65,66には、支持脚68a,68b(ただし、支持脚68bは図示省略)の上端部が回転可能に組み付けられている。これらの支持脚68a,68bは、このX線回折測定装置の保管時及び搬送時には、下面壁64に平行になるように折り畳まれて左右側面壁65,66に密着させて収納されており、このX線回折測定装置の使用時には、回転させて下面壁64に対して垂直方向に引き延ばし、下端部を測定対象物OB上に密着させて、傾斜面壁67を測定対象物OBの表面に密着すなわち面接触させて維持するようにする。なお、この支持脚68a,68bは、ケース60を図2の状態に維持できれば、何れか一方だけでもよい。また、ケース60の上面壁63には、取っ手69が取り付けられており、ユーザが手で取っ手69を持って、このX線回折測定装置を持ち運びできるようになっている。なお、このX線回折測定装置の搬送時に同時に搬送する装置は、後述するコンピュータ装置90及び高電圧電源95のみである。
【0017】
X線出射器10は、長尺状に形成され、ケース60内の上部にて前後方向に延設されてケース60に固定されており、高電圧電源95からの高電圧の供給を受け、X線制御回路71により制御されて、X線を下方に向けて出射する。X線出射器10から出射されたX線の光軸と、傾斜面壁67の法線とが所定の角度θをなすように、X線出射器10の出射口11の向きが設定されている。この所定の角度θは、測定対象物OBにX線を照射した場合に、測定対象物OBから回折したX線が出射される角度であり、例えば30度乃至45度の範囲内の所定角度である。なお、前記X線の光軸は、ケース60の上面壁63及び下面壁64に対して垂直であり、ケース60の前面壁61、後面壁62及び左右側面壁65,66に対して平行である。
【0018】
X線制御回路71は、後述するコンピュータ装置90を構成するコントローラ91によって制御され、X線出射器10から一定の強度のX線が出射されるように、X線出射器10に供給する駆動電流及び駆動電圧を制御する。また、X線出射器10は、図示しない冷却装置を備えていて、X線制御回路71は、この冷却装置に供給する駆動信号も制御する。これにより、X線出射器10の温度が一定に保たれる。
【0019】
テーブル駆動機構30は、X線出射器10の下方にて、移動ステージ31を備えている。移動ステージ31は、フィードモータ32及びスクリューロッド33により、X線出射器10から出射されたX線の光軸と測定対象物OBの法線とが成す平面内であって、前記X線の光軸に垂直な方向に移動可能となっている。フィードモータ32は、テーブル駆動機構30内に固定されていてケース60に対して移動不能となっている。スクリューロッド33は、X線出射器10から出射されたX線の光軸に垂直な方向に延設されていて、その一端部がフィードモータ32の出力軸に連結されている。スクリューロッド33の他端部は、テーブル駆動機構30内に設けた軸受部34に回転可能に支持されている。また、移動ステージ31は、それぞれテーブル駆動機構30内にて固定された、対向する1対の板状のガイド35,35により挟まれていて、スクリューロッド33の軸線方向に沿って移動可能となっている。すなわち、フィードモータ32を正転又は逆転駆動すると、フィードモータ32の回転運動が移動ステージ31の直線運動に変換される。フィードモータ32内には、エンコーダ32aが組み込まれている。エンコーダ32aは、フィードモータ32が所定の微小回転角度だけ回転するたびに、ハイレベルとローレベルとに交互に切り替わるパルス列信号を位置検出回路72及びフィードモータ制御回路73へ出力する。
【0020】
位置検出回路72及びフィードモータ制御回路73は、コントローラ91からの指令により作動開始する。測定開始直後において、フィードモータ制御回路73は、フィードモータ32を駆動して移動ステージ31をフィードモータ32側へ移動させる。位置検出回路72は、エンコーダ32aから出力されるパルス信号が入力されなくなると、移動ステージ31が移動限界位置に達したことを表す信号をフィードモータ制御回路73に出力し、カウント値を「0」に設定する。フィードモータ制御回路73は、位置検出回路72から移動限界位置に達したことを表す信号を入力すると、フィードモータ32への駆動信号の出力を停止する。上記の移動限界位置を移動ステージ31の原点位置とする。したがって、位置検出回路72は、移動ステージ31が図1及び図2にて左上方向に移動して移動限界位置に達したとき「0」を表す位置信号を出力し、移動ステージ31が移動限界位置から右下方向へ移動するとき、移動限界位置からの移動距離xを表す信号を位置信号として出力する。
【0021】
フィードモータ制御回路73は、コントローラ91から移動ステージ31の移動先の位置を表す設定値を入力すると、その設定値に応じてフィードモータ32を正転又は逆転駆動する。位置検出回路72は、エンコーダ32aが出力するパルス信号のパルス数をカウントする。そして、位置検出回路72は、カウントしたパルス数を用いて移動ステージ31の現在の位置(移動限界位置からの移動距離x)を計算し、コントローラ91及びフィードモータ制御回路73に出力する。フィードモータ制御回路73は、位置検出回路72から入力した移動ステージ31の現在の位置が、コントローラ91から入力した移動先の位置と一致するまでフィードモータ32を駆動する。
【0022】
また、フィードモータ制御回路73は、移動ステージ31の移動速度を表す設定値をコントローラ91から入力する。そして、エンコーダ32aから入力したパルス信号の単位時間当たりのパルス数を用いて、移動ステージ31の移動速度を計算し、前記計算した移動ステージ31の移動速度がコントローラ91から入力した移動速度になるようにフィードモータ32を駆動する。
【0023】
一対のガイド35,35の上端は、板状の上壁36によって連結されている。上壁36には、貫通孔36aが設けられていて、貫通孔36aには、X線出射器10の出射口11の先端部が挿入されている。なお、X線出射器10の出射口11の先端が移動ステージ31に当接しないように、X線出射器10及び移動ステージ31の位置が設定されている。
【0024】
また、移動ステージ31には、スピンドルモータ37が組み付けられている。スピンドルモータ37内には、エンコーダ32aと同様のエンコーダ37aが組み込まれている。すなわち、エンコーダ37aは、スピンドルモータ37が所定の微小回転角度だけ回転する度に、ハイレベルとローレベルとに交互に切り替わるパルス列信号を、スピンドルモータ制御回路74及び回転角度検出回路75へ出力する。さらに、エンコーダ37aは、スピンドルモータ37が1回転するごとに、所定の短い期間だけローレベルからハイレベルに切り替わるインデックス信号を、コントローラ91及び回転角度検出回路75へ出力する。
【0025】
スピンドルモータ制御回路74及び回転角度検出回路75は、コントローラ91からの指令により作動開始する。スピンドルモータ制御回路74は、コントローラ91から、スピンドルモータ37の回転速度を表す設定値を入力する。そして、エンコーダ37aから入力したパルス信号の単位時間当たりのパルス数を用いてスピンドルモータ37の回転速度を計算し、計算した回転速度がコントローラ91から入力した回転速度になるように、駆動信号をスピンドルモータ37に供給する。回転角度検出回路75は、エンコーダ37aから出力されたパルス列信号のパルス数をカウントし、そのカウント値を用いてスピンドルモータ37の回転角度すなわちイメージングプレート21の回転角度θpを計算して、コントローラ91に出力する。そして、回転角度検出回路75は、エンコーダ37aから出力されたインデックス信号を入力すると、カウント値を「0」に設定する。すなわち、インデックス信号を入力した位置が回転角度0度の基準位置である。
【0026】
テーブル20は、円形状に形成され、スピンドルモータ37の出力軸の先端部に固定されている。テーブル20の中心軸と、スピンドルモータ37の出力軸の中心軸とは一致している。テーブル20は、下面中央部から下方へ突出した突出部22を有していて、突出部22の外周面には、ねじ山が形成されている。突出部22の中心軸は、スピンドルモータ37の出力軸の中心軸と一致している。テーブル20の下面には、イメージングプレート21が取付けられている。イメージングプレート21は、表面に蛍光体が塗布された円形のプラスチックフィルムである。イメージングプレート21の中心部には、貫通孔21aが設けられていて、この貫通孔21aに突出部22を通し、突出部22にナット状の固定具23をねじ込むことにより、イメージングプレート21が、固定具23とテーブル20の間に挟まれて固定される。固定具23は、円筒状の部材で、内周面に、突出部22のねじ山に対応するねじ山が形成されている。
【0027】
イメージングプレート21は、フィードモータ32によって駆動されて、移動ステージ31、スピンドルモータ37及びテーブル20と共に原点位置から回折環を撮像する回折環撮像位置へ移動する。また、イメージングプレート21は、スピンドルモータ37によって駆動されて回転しながら、フィードモータ32によって駆動されて、移動ステージ31、スピンドルモータ37及びテーブル20と共に撮像した回折環を読み取る回折環読取り領域内、及び回折環を消去する回折環消去領域内を移動する。なお、この場合のイメージングプレート21の移動においては、イメージングプレート21の中心軸が、X線出射器10から出射されたX線の光軸と測定対象物OBの法線とが成す平面内に保たれた状態で、前記X線の光軸に垂直な方向に移動する。
【0028】
また、移動ステージ31、スピンドルモータ37の出力軸、テーブル20、イメージングプレート21及び固定具23には、X線出射器10から出射されたX線を通過させる貫通孔がそれぞれ設けられている。これらの貫通孔の中心軸と、テーブル20の回転軸は一致している。すなわち、これらの貫通孔の中心軸と、X線出射器10から出射されるX線の光軸とが一致するとき、X線が測定対象物OBに照射されるようになっている。このように、X線を測定対象物OBに照射するときのイメージングプレート21の位置が、回折環撮像位置である。
【0029】
フィードモータ32の下方には、測定対象物OBにて反射したX線を受光する複数の受光素子からなる受光センサ25(例えば、X線CCD)が組み付けられている。受光センサ25は、測定対象物OB及びイメージングプレート21からフィードモータ32側に充分離れている。これにより、イメージングプレート21が回折環撮像位置にあるとき、受光センサ25は、測定対象物OBにて反射したX線を直接受光できる。受光センサ25の受光面は、測定対象物OBの表面と平行である。受光センサ25の受光面におけるX線の受光位置は、測定対象物OBの高さに対応している。言い換えれば、イメージングプレート21と測定対象物OBとの距離に対応している。受光センサ25は、それぞれの受光素子が受光した受光信号をセンサ信号取出回路76へ出力する。
【0030】
センサ信号取出回路76は、コントローラ91からの指令により作動開始し、受光センサ25から入力した受光信号を用いて、受光センサ25の受光面における受光信号のピーク位置を算出して受光位置を表す受光位置信号としてコントローラ91へ出力する。
【0031】
レーザ検出装置40は、回折環を撮像したイメージングプレート21にレーザ光を照射して、イメージングプレート21から入射した光の強度を検出する。レーザ検出装置40は、測定対象物OB及び回折環撮像位置にあるイメージングプレート21からフィードモータ32側に充分離れている。すなわち、イメージングプレート21が回折環撮像位置にあるとき、測定対象物OBにて回折したX線がレーザ検出装置40によって遮られないようになっている。レーザ検出装置40は、レーザ光源41と、コリメートレンズ42、反射鏡43、偏光ビームスプリッタ44、1/4波長板45及び対物レンズ46を備えている。
【0032】
レーザ光源41は、レーザ駆動回路77によって制御されて、イメージングプレート21に照射するレーザ光を出射する。レーザ駆動回路77は、コントローラ91によって制御され、レーザ光源41から所定の強度のレーザ光が出射されるように、駆動信号を制御して供給する。レーザ駆動回路77は、後述するフォトディテクタ52から出力された受光信号を入力して、受光信号の強度が所定の強度になるようにレーザ光源41に出力する駆動信号を制御する。これにより、イメージングプレート21に照射されるレーザ光の強度が一定に維持される。
【0033】
コリメートレンズ42は、レーザ光源41から出射されたレーザ光を平行光に変換する。反射鏡43は、コリメートレンズ42にて平行光に変換されたレーザ光を、偏光ビームスプリッタ44に向けて反射する。偏光ビームスプリッタ44は、反射鏡43から入射したレーザ光の大半(例えば、95%)をそのまま透過させる。1/4波長板45は、偏光ビームスプリッタ44から入射したレーザ光を直線偏光から円偏光に変換する。対物レンズ46は、1/4波長板45から入射したレーザ光をイメージングプレート21の表面に集光させる。この対物レンズ46から出射されるレーザ光の光軸は、X線出射器10から出射されたX線の光軸と測定対象物OBの法線とが成す平面内であって、前記X線の光軸に平行な方向、すなわち移動ステージ31の移動方向に対して垂直な方向である。
【0034】
対物レンズ46には、フォーカスアクチュエータ47が組み付けられている。フォーカスアクチュエータ47は、対物レンズ46をレーザ光の光軸方向に移動させるアクチュエータである。なお、対物レンズ46は、フォーカスアクチュエータ47が通電されていないときに、その可動範囲の中心に位置する。
【0035】
対物レンズ46によって集光されたレーザ光を、イメージングプレート21の表面であって、回折環が撮像されている部分に照射すると、輝尽発光(Photo−Stimulated Luminesence)現象が生じる。すなわち、回折環を撮像した後、イメージングプレート21にレーザ光を照射すると、イメージングプレート21の蛍光体が回折X線の強度に応じた光であって、レーザ光の波長よりも波長が短い光を発する。イメージングプレート21に照射されて反射したレーザ光の反射光及び蛍光体から発せられた光は、対物レンズ46及び1/4波長板45を通過して、偏光ビームスプリッタ44にて反射する。偏光ビームスプリッタ44の反射方向には、集光レンズ48、シリンドリカルレンズ49及びフォトディテクタ50が設けられている。集光レンズ48は、偏光ビームスプリッタ44から入射した光を、シリンドリカルレンズ49に集光する。シリンドリカルレンズ49は、透過した光に非点収差を生じさせる。フォトディテクタ50は、分割線で区切られた4つの同一正方形状の受光素子からなる4分割受光素子によって構成されており、時計回りに配置された受光領域A,B,C,Dに入射した光の強度に比例した大きさの検出信号を受光信号(a,b,c,d)として、増幅回路78に出力する。
【0036】
増幅回路78は、フォトディテクタ50から出力された受光信号(a,b,c,d)をそれぞれ同じ増幅率で増幅して受光信号(a’,b’,c’,d’)を生成し、フォーカスエラー信号生成回路79及びSUM信号生成回路80へ出力する。本実施形態においては、非点収差法によるフォーカスサーボ制御を用いる。フォーカスエラー信号生成回路79は、増幅された受光信号(a’,b’,c’,d’)を用いて、演算によりフォーカスエラー信号を生成する。すなわち、フォーカスエラー信号生成回路79は、(a’+c’)−(b’+d’)の演算を行い、この演算結果をフォーカスエラー信号としてフォーカスサーボ回路81へ出力する。フォーカスエラー信号(a’+c’)−(b’+d’)は、レーザ光の焦点位置のイメージングプレート21の表面からのずれ量を表している。
【0037】
フォーカスサーボ回路81は、コントローラ91により制御され、フォーカスエラー信号に基づいて、フォーカスサーボ信号を生成してドライブ回路82に出力する。ドライブ回路82は、このフォーカスサーボ信号に応じてフォーカスアクチュエータ47を駆動して、対物レンズ46をレーザ光の光軸方向に変位させる。この場合、フォーカスエラー信号(a’+c’)−(b’+d’)の値が常に一定値(例えば、ゼロ)となるようにフォーカスサーボ信号を生成することにより、イメージングプレート21の表面にレーザ光を集光させ続けることができる。
【0038】
SUM信号生成回路80は、受光信号(a’,b’,c’,d’)を合算してSUM信号(a’+b’+c’+d’)を生成し、A/D変換回路83に出力する。SUM信号の強度は、イメージングプレート21にて反射したレーザ光の強度と輝尽発光により発生した光の強度を合わせた強度に相当するが、イメージングプレート21にて反射したレーザ光の強度はほぼ一定であるので、SUM信号の強度は、輝尽発光により発生した光の強度に相当する。すなわち、SUM信号の強度は、イメージングプレート21に入射した回折X線の強度に相当する。A/D変換回路83は、コントローラ91によって制御され、SUM信号生成回路80からSUM信号を入力し、入力したSUM信号の瞬時値をディジタルデータに変換してコントローラ91に出力する。
【0039】
また、レーザ検出装置40は、集光レンズ51及びフォトディテクタ52を備えている。集光レンズ51は、レーザ光源41から出射されたレーザ光の一部であって、偏光ビームスプリッタ44を透過せずに反射したレーザ光をフォトディテクタ52の受光面に集光する。フォトディテクタ52は、受光面に集光された光の強度に応じた受光信号を出力する受光素子である。従って、フォトディテクタ52は、レーザ光源41が出射したレーザ光の強度に対応した受光信号をレーザ駆動回路77へ出力する。
【0040】
また、対物レンズ46に隣接して、LED53が設けられている。LED53は、LED駆動回路84によって制御されて、可視光を発して、イメージングプレート21に撮像された回折環を消去する。LED駆動回路84は、コントローラ91によって制御され、LED53に、所定の強度の可視光を発生させるための駆動信号を供給する。
【0041】
コンピュータ装置90は、コントローラ91、入力装置92及び表示装置93からなる。コントローラ91は、CPU、ROM、RAM、大容量記憶装置などを備えたマイクロコンピュータを主要部とした電子制御装置であり、大容量記憶装置に記憶された図3乃至図6の各種プログラムを実行する。入力装置92は、コントローラ91に接続されて、作業者により、各種パラメータ、作業指示などの入力のために利用される。表示装置93は、作業者に対して各種の設定状況、作動状況、測定結果などを視覚的に知らせる。高電圧電源95は、X線出射器10にX線出射のための高電圧を供給する。
【0042】
以下に、上記のように構成したX線回折測定装置を含むX線回折測定システムを用いて、測定対象物OBであるショットピーニングを行った後の鉄材の回折環を測定して残留応力を求める具体的方法について説明する。上記のように構成したX線回折装置においては、その保管状態及び搬送状態では、図10Aに示すように、支持脚68a,68bは、下面壁64に平行になるように折り畳まれて左右側面壁65,66に密着して収納されている。
【0043】
このような状態にあるX線回折測定装置を取っ手69を持って持ち運び、ショットピーニングを終えた測定対象物OBである鉄材の上に載せる。この場合、図2及び図10Bに示すように、支持脚68a,68bを下面壁64に対して垂直方向に回転させて、下端部を測定対象物OB上に密着させ、傾斜面壁67を測定対象物OBの表面に密着すなわち面接触させて、X線回折測定装置を測定対象物OBの表面上に維持するようにする。また、この場合、X線回折測定装置を、測定対象物OBである鉄材上であって、測定位置が傾斜面壁67に設けた貫通孔67aの位置に来るようにする。この状態では、X線出射器10から出射されたX線の光軸と傾斜面壁67の法線とが所定の角度θをなすように設定されているので、X線の光軸と測定対象物OBの表面の法線とがなす角度は、所定の角度θに設定される。これにより、測定対象物OBにX線が照射されれば、測定対象物OBから回折X線が出射され、イメージングプレート21上には回折環が形成される。
【0044】
その後、コンピュータ装置90及び高電圧電源95を上記の構成のX線回折測定装置に接続する。そして、作業者が、入力装置92を用いて、測定対象物OBの材質(例えば、鉄)を入力し、残留応力の測定開始を指示する。これにより、コントローラ91は、図3に示す回折環撮像プログラムの実行を開始する。
【0045】
この回折環撮像プログラムは図3のステップS100にて開始され、コントローラ91は、ステップS102にて、スピンドルモータ制御回路74を制御して、イメージングプレート21を低速回転させ、エンコーダ37aからインデックス信号を入力した時点で、イメージングプレート21の回転を停止させる。これにより、測定開始時において、イメージングプレート21の回転角度が0度に設定される。次に、コントローラ91は、ステップS104にて位置検出回路72の作動を開始させ、ステップS106にて、フィードモータ制御回路73を制御し、フィードモータ32の作動を開始させるとともに、位置検出回路72との協働によりフィードモータ32の作動を停止させて、イメージングプレート21を回折環撮像位置まで移動させる。
【0046】
次に、コントローラ91は、ステップS108にて、センサ信号取出回路76の作動を開始させる。次に、コントローラ91は、ステップS110にて、X線制御回路71を制御してX線出射器10にX線の出射を開始させる。これにより、X線が測定対象物OBに照射され、測定対象物OBの表面にて反射したX線が受光センサ25に受光される。次に、コントローラ91は、ステップS112にて、センサ信号取出回路76から受光位置信号を入力し、前記入力した受光位置信号を用いてイメージングプレート21と測定対象物OBとの距離Lを算出する。なお、この算出した距離Lは、後述する処理によって利用されるので、メモリに記憶しておく。そして、コントローラ91は、ステップS114にて、前記算出した距離Lが所定の基準範囲内にあるか否か判定する。距離Lが基準範囲内になければ、「No」と判定して、ステップS116にて、X線制御回路71を制御して測定対象物OBへのX線の照射を停止させる。
【0047】
そして、コントローラ91は、ステップS118にて、表示装置93に、X線回折測定装置のセットが不適切である旨を表示する。そして、ステップS128にて、回折環撮像プログラムの実行を終了する。この場合、作業者は、X線回折測定装置を再度セットし直した後、入力装置92を用いて、再度、測定開始を指示する。上記のステップS110〜S116までの所要時間は僅かなので、イメージングプレート21には回折環が撮像されない。また、受光センサ25が測定対象物OBにて反射したX線を受光しない場合も、ステップS118にて、X線回折測定装置のセットが不適切である旨が表示される。この場合も、作業者は、X線回折測定装置をセットし直す。そして、前記測定開始の指示により、前述したステップS102〜S114の処理が再度実行され、距離Lが所定の基準範囲内になるまで前記処理が繰り返される。ただし、このようにステップS102〜S114の処理が繰り返し実行される場合には、ステップS102〜S108の処理は、実質的には不要である。
【0048】
一方、ステップS114の判定処理時に、距離Lが所定の基準範囲内である場合には、コントローラ91は、ステップS114にて「Yes」と判定して、ステップS120に処理を進め、センサ信号取出回路76の作動を停止させる。そして、コントローラ91は、ステップS122にて時間計測を開始し、ステップS124にてイメージングプレート21にX線による回折環を形成するための所定の設定時間が経過したか否かを判定する。時間計測開始から所定の設定時間を経過していなければ、ステップS124にて「No」と判定して判定処理を実行し続ける。すなわち、コントローラ91は、時間計測開始から所定の設定時間を経過するまで待機する。そして、時間計測開始から所定の設定時間を経過すると、コントローラ91は、ステップS124にて「Yes」と判定して、ステップS126にてX線制御回路71を制御してX線出射器10によるX線の照射を停止させ、ステップS128にて回折環撮像プログラムの実行を終了する。
【0049】
これにより、この状態では、測定対象物OBからの回折X線による回折環がイメージングプレート21に撮像されている。
【0050】
前記回折環撮像プログラムの実行後、コントローラ91は、図4A及び図4Bの回折環読取りプログラムの実行を開始する。この場合、コントローラ91は、この回折環読取りプログラムの実行に並行して、図5の回折環形状検出プログラムの実行をも開始する。回折環読取りプログラムの実行は図4AのステップS200にて開始され、コントローラ91は、ステップS202にて回折環基準半径R0を計算する。回折環基準半径R0は、測定対象物OBの残留応力が「0」である場合の回折環の半径である。回折環基準半径R0は、測定対象物OBの材質及びイメージングプレート21から測定対象物OBまでの距離Lに依存する。すなわち、残留応力が「0」であるので、回折角θxは材質(本実施形態では、鉄である)によって決定される。距離Lと回折環基準半径R0とは比例関係にあるので、予め材質ごとに、回折角θxを記憶しておけば、回折環基準半径R0を、R0=L・tan(θx)の演算によって算出できる。この計算された回折環基準半径R0はメモリに記憶される。
【0051】
前記ステップS202の処理後、コントローラ91は、ステップS204にて、フィードモータ制御回路73に、イメージングプレート21を回折環読取り領域内の読取り開始位置へ移動させることを指示する。フィードモータ制御回路73は、位置検出回路72と協働してフィードモータ32を駆動制御して、イメージングプレート21を読取り開始位置へ移動させる。このイメージングプレート21が読取り開始位置にある状態では、対物レンズ46の中心すなわちレーザ光の照射位置が前記計算した回折環基準半径R0よりも所定距離αだけ小さい位置に位置する。なお、所定距離αは、撮像した回折環の半径が回折環基準半径R0からずれる可能性のある距離よりもやや大きい距離である。これにより、後述の処理により、回折環の測定が充分に内側から開始されて、回折環が確実に検出される。このときのX線回折測定装置は、図10Cに示された状態にある。
【0052】
ここで、移動ステージ31の移動限界位置から図1及び図2の右下方向への移動距離xを表す位置検出回路72からの位置信号と、イメージングプレート21の中心からレーザ光の照射位置(対物レンズ46の中心位置)までの距離(すなわちレーザ光の照射位置の半径r)との関係について説明しておく。移動ステージ31すなわちイメージングプレート21が移動限界位置にある状態においては、図7(A)に示すように、イメージングプレート21の中心から対物レンズ46の中心位置までの距離をRxとする。なお、この場合、対物レンズ46は前記イメージングプレート21の中心位置から図1及び図2にて左上方向にあり、また前記距離Rxは予め測定されてコントローラ91に記憶されている。一方、図7(B)に示すように、イメージングプレート21を移動限界位置から図1及び図2の右下方向へ距離xだけ移動させると、レーザ光の照射位置の半径rは、r=x+Rxで表される。この場合、距離xは、前述のように位置検出回路72から出力される位置信号によって示されるので、今後の処理において、レーザ光の照射位置の半径rは、位置検出回路72から出力される位置信号によって表された距離xに予め記憶されている値Rxを加算することになる。
【0053】
そして、前記のように、イメージングプレート21を読取り開始位置へ移動させる場合には、図7(C)に示すように、レーザ光の照射位置は、回折環基準半径R0よりも所定距離αだけ内側に位置するので、この場合の半径rは距離R0−αに等しくなるはずである。したがって、イメージングプレート21を駆動限界位置から図1及び図2の右下方向へ移動させる距離xは、x=R0−α−Rxに等しくなる。すなわち、前記ステップS204における読取り開始位置への移動処理においては、位置検出回路72から出力される位置信号により表される距離x(=R0−α−Rx)だけ、テーブル20を図1及び図2の右下方向へ移動させればよい。
【0054】
次に、コントローラ91は、ステップS206にて、スピンドルモータ制御回路74に対して、所定の一定回転速度でイメージングプレート21を回転させることを指示する。スピンドルモータ制御回路74は、エンコーダ37aからのパルス信号を用いて回転速度を計算しながら、前記指示された一定回転速度でイメージングプレート21が回転するようにスピンドルモータ37の回転を制御する。したがって、イメージングプレート21は前記所定の一定回転速度で回転し始める。次に、コントローラ91は、ステップS208にて、レーザ駆動回路77を制御してレーザ光源41によるレーザ光のイメージングプレート21に対する照射を開始させる。
【0055】
次に、コントローラ91は、ステップS210にて、フォーカスサーボ回路81に対して、フォーカスサーボ制御の開始を指示する。これにより、フォーカスサーボ回路81は、増幅回路78及びフォーカスエラー信号生成回路79からのフォーカスエラー信号を用いて、ドライブ回路82を介してフォーカスアクチュエータ47を駆動制御することにより、フォーカスサーボ制御を開始する。その結果、対物レンズ46が、レーザ光の焦点がイメージングプレート21の表面に合うように光軸方向に駆動制御される。ステップS210の処理後、コントローラ91は、ステップS212にて、回転角度検出回路75及びA/D変換回路83の作動を開始させる。これにより、回転角度検出回路75は、スピンドルモータ37(イメージングプレート21)の基準位置からの回転角度θpをコントローラ91に出力し始め、A/D変換回路83は、SUM信号の瞬時値のディジタルデータをコントローラ91に出力し始める。
【0056】
次に、コントローラ91は、ステップS214にて、フィードモータ制御回路73に対して、イメージングプレート21の移動開始及び移動速度を指示する。フィードモータ制御回路73は、フィードモータ32を駆動制御して、イメージングプレート21を読取り開始位置から軸受部34側(図1及び図2の右下方向)へ一定速度で移動させる。これにより、レーザ光の照射位置が、イメージングプレート21において、回折環基準半径R0から所定距離αだけ内側から外側方向に一定速度で相対移動し始める。なお、この状態では、レーザ光の照射位置は、前記ステップS206,S214の処理により、相対的にイメージングプレート21上を螺旋状に回転している。
【0057】
前記ステップS214の処理後、コントローラ91は、ステップS216にて、周方向番号n及び半径方向番号mの値をそれぞれ「1」に初期設定する。周方向番号nは、イメージングプレート21における1回転をN個(所定の大きな値)で等分した周方向位置をそれぞれ表す「1」から最大値Nまで変化する整数である。半径方向番号mは、イメージングプレート21の内側から外側に向かう径方向位置をそれぞれ表し、イメージングプレート21が1回転するごとに「1」から「1」ずつ増加する値である。そして、これらの周方向番号n及び半径方向番号mにより、図8に示すように、イメージングプレート21上を螺旋状に移動する読取りポイントP(n,m)が示される。
【0058】
次に、コントローラ91は、ステップS218にて、回転角度検出回路75がエンコーダ37aからのインデックス信号を入力したか否かを判定する。回転角度検出回路75がインデックス信号を入力していなければ、コントローラ91はステップS218にて「No」と判定して、ステップS218の判定処理を繰り返し実行し続ける。回転角度検出回路75がインデックス信号を入力すると、コントローラ91は、ステップS218にて「Yes」と判定して、ステップS220にて、回転角度検出回路75からイメージングプレート21の現在の回転角度θpを取り込む。
【0059】
そして、コントローラ91は、ステップS222にて、現在の回転角度θpと変数nによって指定される回転角度(n−1)・θo(この場合、n=1であるので「0」)との差の絶対値|θp−(n−1)・θo|が所定の許容値未満であるか否か判定する。この場合、θoは、360度を周方向番号nの最大値Nで除した予め記憶されている所定値である。前記絶対値|θp−(n−1)・θo|が所定の許容値未満でなければ、コントローラ91は、ステップS222にて「No」と判定してステップS220,S222の処理を繰り返し実行する。すなわち、コントローラ91は、現在の回転角度θpが所定の回転角度(n−1)・θoにほぼ一致するまで待機する。そして、現在の回転角度θpが所定の回転角度(n−1)・θoにほぼ一致すると、コントローラ91は、ステップS222にて「Yes」すなわち前記絶対値|θp−(n−1)・θo|が所定の許容値未満であると判定して、ステップS224に進む。
【0060】
ステップS224においては、コントローラ91は、A/D変換回路83からSUM信号を取り込んで、読取りポイントP(n,m)の信号強度S(n,m)としてメモリにそれぞれ記憶する。また、このステップS224においては、位置検出回路72からの位置信号を取り込んで、位置信号によって表される距離xに所定距離Rxを加算して半径rを計算して、読取りポイントP(n,m)の半径r(n,m)として前記信号強度S(n,m)に対応させてメモリに記憶する。これにより、イメージングプレート21の読取りポイントP(n,m)からの輝尽発光の強度すなわち読取りポイントP(n,m)に対するX線回折光の強度を表す信号強度S(n,m)が、読取りポイントP(n,m)の半径を表す半径r(n,m)と共にメモリに記憶される。
【0061】
次に、コントローラ91は、ステップS226にて、前記記憶した信号強度S(n,m)が、所定の基準値以上であるか否か判定する。信号強度S(n,m)が所定の基準値以上であれば、コントローラ91は、ステップS226にて「Yes」と判定して、ステップS230に進む。一方、信号強度S(n,m)が、所定の基準値より小さければ、コントローラ91は、ステップS226にて「No」と判定して、ステップS228にて、前記記憶した信号強度S(n,m)及び半径r(n,m)を消去した後、ステップS230に進む。この信号強度S(n,m)及び半径r(n,m)の消去は、所定の基準値より小さな信号強度S(n,m)は回折X線強度の回折環半径方向のピーク位置の検出に不要であるからである。
【0062】
ステップS230においては、コントローラ91は、周方向番号nに「1」を加算する。そして、コントローラ91は、ステップS232にて、変数nが1周当たりの読取りポイントP(n,m)の数を表す値Nより大きいか、すなわちイメージングプレート21が1回転したか否かを判定する。この場合、n=2であり、周方向番号nは値N以下であるので、コントローラ91は、ステップS232にて「No」と判定して、ステップS220に戻る。
【0063】
そして、前述したステップS220〜S232の処理を、周方向番号nが値Nよりも大きくなるまで繰り返す。このステップS220〜S232の繰り返し処理により、回転角度0,θo,2・θo・・・(N−1) ・θoにそれぞれ対応した所定角度θoごとの信号強度S(n,m)及び半径r(n,m)がメモリに記憶される。ただし、この場合も、ステップS226,S228の処理により、信号強度S(n,m)が所定の基準値より小さければ、メモリに記憶された信号強度S(n,m)及び半径r(n,m)は消去される。
【0064】
このようなステップS220〜S232の循環処理により、周方向番号nが値Nよりも大きくなると、コントローラ91は、ステップS232にて「Yes」と判定して、ステップS234にて、後述の回折環形状検出プログラムによる終了指令の有無を判定する。未だ終了指令がないときは、コントローラ91は、ステップS234にて「No」と判定し、ステップS236にて半径方向番号mに「1」を加算し(この場合、m=2になる)、ステップS228にて周方向番号nを「1」に戻す。そして、コントローラ91は、前述したステップS218〜S232の処理を実行して、次の半径方向位置の回転角度0,θo,2・θo・・・(N−1) ・θoに対応した読取りポイントP(n,m)に関する信号強度S(n,m)及び半径r(n,m)をメモリに記憶する。
【0065】
そして、終了指令の指示があるまで、このようなステップS218〜S238の処理により、「1」ずつ順次大きくなる半径方向番号m(=1,2,3・・)と、各半径方向番号mごとに回転角度0,θo,2・θo・・・(N−1) ・θoにそれぞれ対応した周方向番号n(=1〜N)とにより指定される読取りポイントP(n,m)に対応する信号強度S(n,m)及び半径r(n,m)がメモリに順次記憶される。なお、この場合も、信号強度S(n,m)が所定の基準値より小さければ、メモリに記憶された信号強度S(n,m)及び半径r(n,m)は消去される。
【0066】
そして、前記回折環形状検出プログラムによる終了指令の指示があると、コントローラ91は、ステップS234にて「Yes」と判定し、図4BのステップS240に進む。ここで、この回折環読取りプログラムと並行して実行されている回折環形状検出プログラムについて説明する。
【0067】
回折環形状検出プログラムの実行は図5のステップS300にて開始され、コントローラ91は、ステップS302にて周方向番号nを「1」に初期設定する。なお、この周方向番号nは、回折環読取りプログラムの場合と同様に所定角度θoごとの周方向位置を示すものであるが、回折環読取りプログラムで用いられる周方向番号nとは独立したものである。
【0068】
前記ステップS302の処理後、コントローラ91は、ステップS304にて、詳しくは後述するピーク半径rp(n)が存在するか、すなわちピーク半径rp(n)が検出済みであるかを判定する。この場合、ピーク半径rp(n)においては、検出されたピーク半径の回転角度が周方向番号nによって表される。ピーク半径rp(n)が検出済みであれば、コントローラ91は、ステップS304にて「Yes」と判定して、ステップS306にて周方向番号nに「1」を加算し、ステップS308にて周方向番号nが所定数より大きいか否かを判定する。この場合の所定数も、1周の測定位置数を表す値Nである。周方向番号nが所定数以下であれば、コントローラ91は、ステップS308にて「No」と判定してステップS304に戻る。
【0069】
一方、ピーク半径rp(n)が未検出であれば、コントローラ91は、ステップS304にて「No」と判定して、ステップS310にて前記図4AのステップS224の処理によって記憶した信号強度S(n,m)の数が所定数以上であるか否か判定する。信号強度S(n,m)の数が所定数以上でなければ、コントローラ91は、ステップS310にて「No」と判定して、前述したステップS306,S308の処理を実行してステップS304又はステップS302に戻る。このステップS310の判定処理は、信号強度S(n,m)の数が少ない場合には後述するピーク検出処理を実行しても無駄であるからである。なお、前記図4AのステップS228の処理によって消去された信号強度S(n,m)は、記憶した信号強度S(n,m)としてカウントされない。
【0070】
一方、前記記憶した信号強度S(n,m)の数が所定数以上であるときは、コントローラ91は、ステップS310にて「Yes」と判定して、ステップS312にて、ピークの有無を判定する。すなわち、周方向番号nによって指定される周方向位置の全ての半径r(n,m)及び信号強度S(n,m)を用いて、SUM信号の値のピークの有無を判定する。具体的には、図9に示すように、周方向番号nによって指定される周方向位置の全ての半径r(n,m)を横軸に取り、その半径r(n,m)に対応させて信号強度S(n,m)を縦軸に取った受光曲線において、信号強度S(n,m)にピークが存在するか、すなわち信号強度S(n,m)が増加した後に減少したかを判定するとよい。そして、ピークが存在しなければ、コントローラ91は、ステップS312にて「No」と判定して、前述したステップS306,S308の処理を実行してステップS304又はステップS302に戻る。
【0071】
このように、ステップS302〜S312を繰り返し実行している間に、並行して実行されている回折環読取りプログラムの処理により、さらに半径r(n,m)及び信号強度S(n,m)が取り込まれてメモリに次々に記憶されていく。このため、ステップS312にてピークが検出されるようになり、検出されると、コントローラ91は、ステップS312にて「Yes」と判定して、ステップS314にて、ピークの半径r(n,m)をピーク半径rp(n)としてメモリに記憶する。次に、コントローラ91は、ステップS316にて、取得したピーク半径rp(n)の数が所定数以上であるか否かを判定する。この場合の所定数も、1周の測定位置数を表す値Nである。そして、取得したピーク半径rp(n)の数が所定数より小さければ、コントローラ91は、ステップS316にて「No」と判定し、前述したステップS306,S308の処理を実行してステップS304又はステップS302に戻る。
【0072】
このようにステップS302〜S316の処理を繰り返すことで、取得したピーク半径rp(n)の数が増えていき所定数に達すると、すなわち周方向の全ての読取りポイントP(n,m)にてピーク半径rp(n)が取得されると、コントローラ91は、ステップS316にて「Yes」と判定し、ステップS318にて回折環形状検出の終了を示す終了指令を出力する。そして、コントローラ91は、ステップS320にて回折環形状検出プログラムの実行を終了する。このような周方向の全ての読取りポイントP(n,m)におけるピーク半径rp(n)の検出により、回折環の形状が検出されたことになる。
【0073】
ここで、図4A及び図4Bの回折環読取りプログラムの説明にふたたび戻る。前述のように終了指令が出力されると、コントローラ91は、図4AのステップS234にて「Yes」と判定し、図4BのステップS240にて、フォーカスサーボ回路81に対してフォーカスサーボ制御の停止を指示することにより、フォーカスサーボ制御を停止させる。次に、コントローラ91は、ステップS242にて、レーザ駆動回路77を制御して、レーザ光源41によるレーザ光の照射を停止させる。さらに、コントローラ91は、ステップS244にて、A/D変換回路83及び回転角度検出回路75の作動を停止させ、ステップS246にて、フィードモータ制御回路73を制御してフィードモータ32の作動を停止させることにより、イメージングプレート21を停止させて、ステップS248にて回折環形状検出プログラムの実行を終了する。なお、この状態では、位置検出回路72の作動及びイメージングプレート21の回転は、以前と同様のまま継続されている。
【0074】
次に、コントローラ91は、図6の回折環消去プログラムを実行する。回折環消去プログラムの実行は、ステップS400にて開始され、コントローラ91は、ステップS402にて、フィードモータ制御回路73に、イメージングプレート21を回折環消去領域内の消去開始位置へ移動させることを指示する。フィードモータ制御回路73は、位置検出回路72と協働してフィードモータ32を駆動制御して、イメージングプレート21を消去開始位置へ移動させる。このイメージングプレート21が消去開始位置にある状態では、LED53から出力される可視光の中心が前記計算した回折環基準半径R0よりも所定距離γだけ小さい位置に位置する。具体的には、この位置は、イメージングプレート21が駆動限界位置にある状態において、イメージングプレート21の中心からLEDの可視光の中心までの距離をRy’とすると、位置検出回路72から出力される位置がR0−γ−Ry’になる位置である。なお、所定距離γは、前記所定距離αよりも若干大きく、前記撮像された回折環の半径よりは余裕をもってずれた位置である。これにより、後述の処理により、前記撮像された回折環が確実に消去される。
【0075】
次に、コントローラ91は、ステップS404にて、LED駆動回路84を制御してLED53による可視光のイメージングプレート21に対する照射を開始させる。次に、コントローラ91は、ステップS406にて、フィードモータ制御回路73に対して、イメージングプレート21の移動開始及び移動速度を指示する。フィードモータ制御回路73は、フィードモータ32を駆動制御して、イメージングプレート21を消去開始位置から軸受部34側(図1及び図2の右下方向)に一定速度で移動させる。これにより、LED53による可視光が、イメージングプレート21において、回転しながら、回折環基準半径R0から所定距離γ(γ>α)だけ内側から外側方向に一定速度で移動し始める。
【0076】
前記ステップS406の処理後、コントローラ91は、ステップS408にて位置検出回路72からイメージングプレート21の位置を表す位置信号を入力し、ステップS410にて、イメージングプレート21の現在の位置が消去終了位置を超えているか否かを判定する。この終了位置は、回折環基準半径R0よりも所定距離γだけ大きな位置である。具体的には、位置検出回路72から出力される位置がR0+γ−Ry’になる位置である。そして、イメージングプレート21の現在の位置が消去終了位置を超えるまで、コントローラ91は、ステップS410にて「No」と判定して、ステップS408,S410の処理を繰り返し実行する。これにより、回転するイメージングプレート21に対し、前記回折環基準半径R0から所定距離γだけ内側から所定距離γだけ外側まで、LED53による可視光が照射されるので、前記回折X線によって形成された回折環は内側から徐々に消去されていく。
【0077】
そして、イメージングプレート21の現在の位置が消去終了位置を超えると、コントローラ91は、ステップS410にて「Yes」と判定して、ステップS412にてフィードモータ制御回路73にイメージングプレート21の移動停止を指示し、ステップS414にてLED駆動回路84にLED53による可視光の照射停止を指示する。これにより、フィードモータ制御回路73は、フィードモータ32の作動を停止させることによりイメージングプレート21の移動を停止させる。LED駆動回路84は、LED53による可視光の照射を停止させる。この状態では、前記撮像された回折環は完全に消去されている。
【0078】
前記ステップS414の処理後、コントローラ91は、ステップS416にて位置検出回路72の作動を停止させ、ステップS418にてスピンドルモータ制御回路74に対してイメージングプレート21の回転停止を指示する。この指示に応答して、スピンドルモータ制御回路74は、スピンドルモータ37の作動を停止させて、イメージングプレート21の回転を停止させる。前記イメージングプレート21の回転停止後、コントローラ91は、ステップS420にて回折環消去プログラムの実行を終了する。
【0079】
上記のような回折環の測定後、作業者による入力装置92を用いた指示により、コントローラ91は、図示しないプログラムの実行により、上記回折環形状検出プログラムの実行によって取得した回折環の形状を表すデータを用いて、すなわちピーク半径rp(n)(n=1〜N)及びそれに対応した回転角度(n−1)θo(n=1〜N)を用いて、測定対象物OBである鉄材の測定箇所の残留圧縮応力(垂直応力)及びせん断応力を計算し、計算した結果に応じて鉄材のショットピーニングによる加工結果を評価する。なお、これらの残留圧縮応力及びせん断応力は、従来からよく知られているcosαを用いて計算されるとともに、その計算結果による残留圧縮応力及びせん断応力の大きさにより、ショットピーニングの評価もなされる。この場合、残留圧縮応力がある程度大きく、せん断応力が「0」に近い小さな値であればショットピーニングが良好であったと評価される。
【0080】
上記説明からも理解できるように、上記実施形態においては、X線回折測定装置をケース60内に収容するように構成したので、作業者は、X線回折測定装置を簡単に搬送できるようになる。そして、このX線回折測定装置の搬送後、設置用壁である傾斜面壁67を測定対象物OB上に面接触させることにより、X線回折測定装置を測定対象物OB上に載置する。この状態では、傾斜面壁67の法線とX線出射器10から出射されたX線の光軸とがなす角度が、測定対象物OBから回折したX線が出射される所定角度に設定されているので、測定対象物OBの表面の法線と前記X線の光軸とがなす角度も前記所定角度となる。したがって、X線出射器10からのX線を傾斜面壁67に設けた貫通孔67aを介して測定対象物OBに照射することにより、すなわち図3の回折環撮像プログラムの実行により、測定対象物OBから回折したX線が出射されてイメージングプレート21に回折したX線による回折環が形成される。その結果、作業者は、設置用壁である傾斜面壁67を測定対象物OB上に面接触させることにより、X線回折測定装置を測定対象物OB上に載置するという簡単な行為により、イメージングプレート21に回折環を形成させることができる。
【0081】
この回折環のイメージングプレート21への形成後、図4A及び図4Bの回折環読取りプログラムの実行及び図5の回折環形状検出プログラムの実行により、回折環の形状が検出される。そして、この検出された回折環の形状に基づいて、測定対象物OBの残留応力を計算できるので、ショットピーニング後の測定対象物OBの残留応力の測定が簡単に行えるようになり、ショットピーニングが良好であったか否かも簡単に評価できる。
【0082】
また、上記実施形態においては、ケース60に、搬送用の取っ手69を設けたので、X線回折測定装置の搬送がより容易になる。さらに、上記実施形態においては、設置用壁である傾斜面壁67を測定対象物OB上に接触させた状態に維持するための支持脚68a,68bを設けたので、簡単な構成で、傾斜面壁67を測定対象物OB上に密着すなわち面接触させて、X線回折測定装置を測定対象物OB上に載置させた状態を確実に維持できる。
【0083】
さらに、本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0084】
上記実施形態においては、ケース60の左右側面壁65,66に密着させて収納状態にある折り畳み式の支持脚68a,68bを90度回転させて、X線回折測定装置を図2の姿勢に維持させるようにしたが、この図2の姿勢と同じ姿勢を維持することができれば、どのような構造の支持部材を設けるようにしてもよい。例えば、X線回折測定装置の下面壁64に対して垂直方向に進退可能な支持脚を設け、この支持脚を下面壁64の下方に突出させて、X線回折測定装置を図2の姿勢に維持させるようにしてもよい。
【0085】
また、上記折り畳み式の支持脚68a,68bをなくし、ケース60の下面壁64と傾斜面壁67が交差する角度と等しい角度のある三角形のブロックを用意して、測定の際には、前記ブロックを測定対象物OBと下面壁64の間に挿入することにより、X線回折測定装置を図2と同じ姿勢に維持させるようにしてもよい。なお、この場合、X線回折測定装置の搬送時には、ブロックを搬送する必要も生じる。
【0086】
また、上記実施形態においては、測定対象物OBが大きくて、図2に示すように、X線回折測定装置を測定対象物OB上に載置し、測定対象物OBの残留応力を測定するために、イメージングプレート21に回折X線による回折環を撮像して、撮像した回折環の形状を測定することについて説明した。しかし、このX線回折測定装置は、測定対象物OBが小さいときの残留応力の測定にも対応させることもできる。この場合、図11に示すように、X線回折測定装置を固定支持する固定治具101を用意して、設置面FL上に固定治具101を置き、X線回折測定装置のケース60の左右側面壁65,66を固定治具101に固定することにより、傾斜面壁67が水平になるようにX線回折測定装置を固定支持する。
【0087】
そして、設置面FL上には、測定対象物OBを載置する昇降ステージ102aを備えた昇降機102を置く。昇降ステージ102aは、上下に昇降可能となっている。そして、小さな測定対象物OBの検査位置が傾斜面壁67に設けた貫通孔67aの位置に対向するように、測定対象物OBを昇降ステージ102a上に載置した後、測定対象物OBが傾斜面壁67に接触する高さ位置又は前記高さ位置に近接する位置まで、昇降ステージ102aを上昇させる。その後、上記実施形態と同様に、測定対象物OBにX線を照射してイメージングプレート21に回折環を撮像して、撮像した回折環の形状を測定して、残留応力を計算すれば、小さな測定対象物OBであっても、その残留応力を測定できる。
【0088】
また、上記実施形態においては、回折環の形状を測定するために、イメージングプレート21の回転角度が所定の回転角度になるごとに、信号強度S(n,m)及び半径r(n,m)を記憶するようにした。しかし、これに代えて、所定の時間間隔で、イメージングプレート21の回転角度θ(n,m)、信号強度S(n,m)及び半径r(n,m)を取得して記憶してもよい。
【0089】
また、上記実施形態においては、受光センサ25の受光位置を用いて、撮像した回折環の半径が回折環基準半径R0からずれる可能性のある領域を想定して、読取り開始位置を決定するようにした。しかし、回折環基準半径R0を用いることなく、常に一定の領域にレーザ光を照射するようにしてもよい。例えば、イメージングプレート21の全領域にレーザ光を照射するようにしてもよい。また、LED53による可視光の照射についても同様に、常に一定の領域にLED53から発せられた可視光を照射するようにしてもよい。例えば、イメージングプレート21の全領域にLED53からの可視光を照射するようにしてもよい。ただし、この場合、上記実施形態よりも測定時間が長くなる。
【0090】
また、上記実施形態においては、レーザ検出装置40は、フォーカスサーボ制御されるようにしたが、イメージングプレート21を回転させた際のイメージングプレート21の受光面と対物レンズ46との距離の変動が微小であれば、フォーカスサーボ制御は不要である。
【0091】
また、上記実施形態においては、イメージングプレート21に照射されるレーザ光は、一定強度のレーザ光としたが、これに代えて、予め設定されたハイレベルの強度と、予め設定されたローレベルの強度が繰り返されるパルス状のレーザ光とし、ハイレベルの強度になるタイミングでSUM信号の瞬時値を取得するようにしてもよい。この場合、イメージングプレート21のSUM信号の瞬時値を取得するポイントに瞬間的にハイレベルの強度のレーザ光を照射する。すなわち、SUM信号の瞬時値を取得するポイントにレーザ光が向かう状態では、レーザ光の強度はローレベルであり、輝尽発光により発生する光はほとんど無い。そして、SUM信号の瞬時値を取得するポイントに近づいたとき、レーザ光の強度がハイレベルになって輝尽発光による光が発生する。常にハイレベルの強度のレーザ光を照射した場合は、輝尽発光による光が生じ続けることで光の強度が減少するが、上記のように構成すれば、輝尽発光によって大きな強度の光を利用して、SUM信号の瞬時値を取得することができる。
【符号の説明】
【0092】
10…X線出射器、20…テーブル、21…イメージングプレート、25…受光センサ、30…テーブル駆動機構、31…移動ステージ、32…フィードモータ、33…スクリューロッド、37…スピンドルモータ、40…レーザ検出装置、41…レーザ光源、46…対物レンズ、50…フォトディテクタ、60…ケース、63…上面壁、64…下面壁、67…傾斜面壁、67a…貫通孔、68a,68b…支持脚、69…取っ手、90…コンピュータ装置、91…コントローラ
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定対象物にX線を照射し、測定対象物で回折したX線によりイメージングプレートの表面に形成された回折環を測定するX線回折測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、測定対象物の残留応力を計算するために、X線回折による回折環の形状を測定するX線回折測定装置は知られている。この種のX線回折測定装置においては、装置を小型化でき、かつX線の照射時間を短くすることが可能な装置として、下記特許文献1に示されている装置がある。この装置は、X線を所定の角度で測定対象物に照射し、測定対象物で回折したX線(以下、回折X線という)を、感光性を有するイメージングプレートで受光し、イメージングプレートに形成された環状のX線回折像(以下、回折環という)の形状を測定する。そして、測定した回折環の形状をcosα法により分析して、測定対象物の残留応力を計算するようにしている。
【0003】
このcosα法によれば、X線の出射軸と測定対象物の法線を含む平面と、測定対象物の平面とがなす交線方向の応力(以下、垂直応力という)が計算され得るとともに、せん断応力も計算され得る。これは、ショットピーニングの効果を評価するのに適している。すなわち、ショットピーニングは、硬質の小球を噴射して金属の表面に当て、金属の表面に凹凸を形成して残留圧縮応力(垂直応力に属する)を生じさせることで金属の破壊強度を増加させるものであるが、凹凸がまばらであると、凹凸が形成された箇所では残留圧縮応力は大きくてもせん断応力が残り、金属の破壊強度の増加は不充分である。個々の凹凸が識別できない程度に凹凸が形成されたとき、せん断応力はほとんど「0」になり、金属の破壊強度の増加が充分となる。よって、ショットピーニングの後で、せん断応力を測定し、その値を確認することでショットピーニングが充分か否かを評価することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−241308号公報
【発明の概要】
【0005】
しかしながら、ショットピーニングが行われる材料は大型であることが多く、X線回折測定装置が設置された場所まで前記材料を持ち運ぶことは困難である。また、上記特許文献1に示されたX線回折測定装置は小型であるとはいえ、搬送するようには構成されておらず、このX線回折測定装置を測定対象物である材料の所まで持ち運ぶことも困難である。このため、この種のX線回折測定装置によりショットピーニングが充分か否かを評価することは行われていないのが現状である。また、ショットピーニングを評価することに限らず、建造物に固定された金属の残留応力を測定したいというニーズがあっても、X線回折測定装置を持ち運ぶのが困難であるため、そのようのニーズに応えられていないのが現状である。
【0006】
本発明は上記問題を解決するためになされたもので、その目的は、測定対象物の所まで容易に搬送できて、測定対象物にX線を照射し、測定対象物にて回折したX線によりイメージングプレートの表面に形成された回折環の形状を測定することが可能なX線回折測定装置を提供することにある。なお、下記本発明の各構成要件の記載においては、本発明の理解を容易にするために、後述する実施形態の対応箇所の符号を括弧内に記載しているが、本発明の各構成要件は、この実施形態の符号によって示された対応箇所の構成に限定解釈されるべきものではない。
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の特徴は、測定対象物(OB)に向けてX線を出射するX線出射器(10)と、中央にX線を通過させる貫通孔が形成されたテーブル(20)と、テーブルに取付けられて、中央部にてX線を通過させるとともに、測定対象物にて回折したX線の回折光を受光する受光面を有し、回折光の像である回折環を記録するイメージングプレート(21)と、レーザ光を出射するレーザ光源及びレーザ光を受光するフォトディテクタを有し、レーザ光をイメージングプレートの受光面に照射するとともに、レーザ光の照射によってイメージングプレートから出射された光を受光して受光強度に応じた受光信号を出力するレーザ検出装置(40)と、テーブルを貫通孔の中心軸回りに回転させる回転機構(37)と、テーブルをイメージングプレートの受光面に平行な方向にレーザ検出装置に対して相対的に移動させる移動機構(31〜33)と、X線出射器、テーブル、イメージングプレート、レーザ検出装置、回転機構及び移動機構を収容したケースとを備えたX線回折測定装置であって、ケースは、測定対象物上に面接触させてX線回折測定装置を載置させるための平面状の設置用壁(67)であって、X線出射器から出射されたX線を通過させる開口(67a)を設けた設置用壁を有し、設置用壁の法線とX線出射器から出射されたX線の光軸とがなす角度を、測定対象物にX線を照射した際に測定対象物から回折したX線が出射される所定角度に設定したことにある。
【0008】
この場合、前記所定角度は、例えば、30度乃至45度の範囲内の角度である。また、前記ケースは、X線出射器からX線が出射されるX線の光軸方向に垂直な下面壁(64)を有し、下面壁の一端部に下面壁に対して傾斜させた傾斜面壁を形成し、傾斜面壁を前記設置用壁とするとよい。また、前記ケースは、直方体形状に形成され、テーブルの移動方向における下面壁の一端部の角部に前記傾斜面壁を設けるとよい。
【0009】
上記のように構成した本発明においては、作業者は、X線回折測定装置を測定対象物のある場所へ搬送して、設置用壁を測定対象物上に面接触させることにより、X線回折測定装置を測定対象物上に載置する。この状態で、X線出射器からのX線を設置用壁に設けた開口を介して測定対象物に照射すれば、設置用壁の法線とX線出射器から出射されたX線の光軸とがなす角度が、測定対象物から回折したX線が出射される所定角度に設定されているので、測定対象物の表面の法線と前記X線の光軸とがなす角度も前記所定角度となり、測定対象物から回折したX線が出射されてイメージングプレートに回折したX線による回折環が形成される。そして、レーザ検出装置を作動させた状態で、回転機構及び移動機構を作動させることによりイメージングプレートをテーブルと共に移動及び回転させれば、イメージングプレートに形成された回折環の形状をレーザ光により測定できる。このように本発明によれば、X線回折装置を搬送する際には、X線出射器、テーブル、イメージングプレート、レーザ検出装置、回転機構及び移動機構を収容したケースを持ち運ぶだけでよいので、X線回折測定装置の搬送が容易となる。また、搬送後、設置用壁を測定対象物上に面接触させてX線回折測定装置を測定対象物上に載置し、X線出射器を作動させてX線を測定対象物に照射するだけで、イメージングプレートには回折X線による回折環が形成され、レーザ検出装置、回転機構及び移動機構を作動させれば、回折環の形状が測定される。そして、回折環の形状の測定結果に基づいて測定対象物の残留応力を計算できるので、ショットピーニング後の測定対象物など、搬送が難しい大きな測定対象物の残留応力の測定が簡単に行えるようになる。
【0010】
また、本発明の他の特徴は、ケースに、さらに、設置用壁を測定対象物上に面接触させた状態に維持するための支持脚(68a,68b)を設けたことにある。この場合、支持脚は、例えば折り畳み式であってもよいし、進退式であってもよい。これによれば、簡単な構成で、設置用壁を測定対象物上に面接触させて、X線回折測定装置を測定対象物上に載置させた状態を確実に維持できる。
【0011】
さらに、本発明の他の特徴は、ケースに、さらに、搬送用の取っ手(69)を設けたことにある。この場合、取っ手は、例えばケースの上面に設けるとよい。これによれば、取っ手を持つことによりX線回折測定装置を搬送できるので、X線回折測定装置の搬送がより容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係るX線回折測定装置を含むX線回折測定システムを示す全体概略図である。
【図2】図1のX線回折測定装置の拡大図である。
【図3】図1のコントローラによって実行される回折環撮像プログラムを示すフローチャートである。
【図4A】図1のコントローラによって実行される回折環読取りプログラムの前半部分を示すフローチャートである。
【図4B】前記回折環読取りプログラムの後半部分を示すフローチャートである。
【図5】図1のコントローラによって実行される回折環形状検出プログラムを示すフローチャートである。
【図6】図1のコントローラによって実行される回折環消去プログラムを示すフローチャートである。
【図7】イメージングプレートの移動限界位置からの移動距離と、イメージングプレートにおけるレーザ光の照射位置の半径方向距離(半径)との関係を説明するための図である。
【図8】読取りポイントの軌跡を説明する説明図である。
【図9】信号強度のピークを説明するための受光曲線の一例を示すグラフである。
【図10A】図1のX線回折測定装置の保管又は搬送状態を示す状態図である。
【図10B】図1のX線回折測定装置の回折環撮像状態を示す状態図である。
【図10C】図1のX線回折測定装置の回折環読取り状態を示す状態図である。
【図11】本発明の変形例に係るX線回折測定装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一実施形態に係るX線回折測定装置含むX線回折測定システムの構成について図1及び図2を用いて説明する。このX線回折測定システムは、測定対象物OBの残留応力を評価するために、X線を測定対象物OBに照射するとともに、同照射による測定対象物OBからの回折X線により形成される回折環の形状を検出する。
【0014】
X線回折測定装置は、X線を出射するX線出射器10と、回折X線による回折環が形成されるイメージングプレート21を取り付けるためのテーブル20と、テーブル20を回転及び移動させるテーブル駆動機構30と、イメージングプレート21に形成された回折環を測定するためのレーザ検出装置40と、これらのX線出射器10、テーブル20、テーブル駆動機構30及びレーザ検出装置40を収容するケース60とを備えている。また、ケース60内には、X線出射器10、テーブル20、テーブル駆動機構30及びレーザ検出装置40に接続されて作動制御したり、検出信号を入力したりするための各種回路も内蔵されており、図1においてケース60外に示された2点鎖線で示された各種回路は、ケース60内の2点鎖線内に納められている。なお、図1及び図2においては、回路基板、電線、固定具、空冷ファンなどは省略されている。
【0015】
ケース60は、平面状の前面壁61、後面壁62、上面壁63、下面壁64、左側面壁65及び右側面壁66(図示省略)を有する直方体状に形成されるとともに、前面壁61と下面壁64の角部を斜めに切断するように傾斜面壁67が設けられている。傾斜面壁67の中央部分には円形の貫通孔67aが設けられて、貫通孔67aを介して、回折環を形成するためのX線(X線出射器10から出射されたX線)を通過させるようになっている。そして、この傾斜面壁67を測定対象物OBの表面(上面)に密着すなわち面接触させて、測定対象物OBにX線を照射し、イメージングプレート21に回折環を形成するようになっている。
【0016】
左右側面壁65,66には、支持脚68a,68b(ただし、支持脚68bは図示省略)の上端部が回転可能に組み付けられている。これらの支持脚68a,68bは、このX線回折測定装置の保管時及び搬送時には、下面壁64に平行になるように折り畳まれて左右側面壁65,66に密着させて収納されており、このX線回折測定装置の使用時には、回転させて下面壁64に対して垂直方向に引き延ばし、下端部を測定対象物OB上に密着させて、傾斜面壁67を測定対象物OBの表面に密着すなわち面接触させて維持するようにする。なお、この支持脚68a,68bは、ケース60を図2の状態に維持できれば、何れか一方だけでもよい。また、ケース60の上面壁63には、取っ手69が取り付けられており、ユーザが手で取っ手69を持って、このX線回折測定装置を持ち運びできるようになっている。なお、このX線回折測定装置の搬送時に同時に搬送する装置は、後述するコンピュータ装置90及び高電圧電源95のみである。
【0017】
X線出射器10は、長尺状に形成され、ケース60内の上部にて前後方向に延設されてケース60に固定されており、高電圧電源95からの高電圧の供給を受け、X線制御回路71により制御されて、X線を下方に向けて出射する。X線出射器10から出射されたX線の光軸と、傾斜面壁67の法線とが所定の角度θをなすように、X線出射器10の出射口11の向きが設定されている。この所定の角度θは、測定対象物OBにX線を照射した場合に、測定対象物OBから回折したX線が出射される角度であり、例えば30度乃至45度の範囲内の所定角度である。なお、前記X線の光軸は、ケース60の上面壁63及び下面壁64に対して垂直であり、ケース60の前面壁61、後面壁62及び左右側面壁65,66に対して平行である。
【0018】
X線制御回路71は、後述するコンピュータ装置90を構成するコントローラ91によって制御され、X線出射器10から一定の強度のX線が出射されるように、X線出射器10に供給する駆動電流及び駆動電圧を制御する。また、X線出射器10は、図示しない冷却装置を備えていて、X線制御回路71は、この冷却装置に供給する駆動信号も制御する。これにより、X線出射器10の温度が一定に保たれる。
【0019】
テーブル駆動機構30は、X線出射器10の下方にて、移動ステージ31を備えている。移動ステージ31は、フィードモータ32及びスクリューロッド33により、X線出射器10から出射されたX線の光軸と測定対象物OBの法線とが成す平面内であって、前記X線の光軸に垂直な方向に移動可能となっている。フィードモータ32は、テーブル駆動機構30内に固定されていてケース60に対して移動不能となっている。スクリューロッド33は、X線出射器10から出射されたX線の光軸に垂直な方向に延設されていて、その一端部がフィードモータ32の出力軸に連結されている。スクリューロッド33の他端部は、テーブル駆動機構30内に設けた軸受部34に回転可能に支持されている。また、移動ステージ31は、それぞれテーブル駆動機構30内にて固定された、対向する1対の板状のガイド35,35により挟まれていて、スクリューロッド33の軸線方向に沿って移動可能となっている。すなわち、フィードモータ32を正転又は逆転駆動すると、フィードモータ32の回転運動が移動ステージ31の直線運動に変換される。フィードモータ32内には、エンコーダ32aが組み込まれている。エンコーダ32aは、フィードモータ32が所定の微小回転角度だけ回転するたびに、ハイレベルとローレベルとに交互に切り替わるパルス列信号を位置検出回路72及びフィードモータ制御回路73へ出力する。
【0020】
位置検出回路72及びフィードモータ制御回路73は、コントローラ91からの指令により作動開始する。測定開始直後において、フィードモータ制御回路73は、フィードモータ32を駆動して移動ステージ31をフィードモータ32側へ移動させる。位置検出回路72は、エンコーダ32aから出力されるパルス信号が入力されなくなると、移動ステージ31が移動限界位置に達したことを表す信号をフィードモータ制御回路73に出力し、カウント値を「0」に設定する。フィードモータ制御回路73は、位置検出回路72から移動限界位置に達したことを表す信号を入力すると、フィードモータ32への駆動信号の出力を停止する。上記の移動限界位置を移動ステージ31の原点位置とする。したがって、位置検出回路72は、移動ステージ31が図1及び図2にて左上方向に移動して移動限界位置に達したとき「0」を表す位置信号を出力し、移動ステージ31が移動限界位置から右下方向へ移動するとき、移動限界位置からの移動距離xを表す信号を位置信号として出力する。
【0021】
フィードモータ制御回路73は、コントローラ91から移動ステージ31の移動先の位置を表す設定値を入力すると、その設定値に応じてフィードモータ32を正転又は逆転駆動する。位置検出回路72は、エンコーダ32aが出力するパルス信号のパルス数をカウントする。そして、位置検出回路72は、カウントしたパルス数を用いて移動ステージ31の現在の位置(移動限界位置からの移動距離x)を計算し、コントローラ91及びフィードモータ制御回路73に出力する。フィードモータ制御回路73は、位置検出回路72から入力した移動ステージ31の現在の位置が、コントローラ91から入力した移動先の位置と一致するまでフィードモータ32を駆動する。
【0022】
また、フィードモータ制御回路73は、移動ステージ31の移動速度を表す設定値をコントローラ91から入力する。そして、エンコーダ32aから入力したパルス信号の単位時間当たりのパルス数を用いて、移動ステージ31の移動速度を計算し、前記計算した移動ステージ31の移動速度がコントローラ91から入力した移動速度になるようにフィードモータ32を駆動する。
【0023】
一対のガイド35,35の上端は、板状の上壁36によって連結されている。上壁36には、貫通孔36aが設けられていて、貫通孔36aには、X線出射器10の出射口11の先端部が挿入されている。なお、X線出射器10の出射口11の先端が移動ステージ31に当接しないように、X線出射器10及び移動ステージ31の位置が設定されている。
【0024】
また、移動ステージ31には、スピンドルモータ37が組み付けられている。スピンドルモータ37内には、エンコーダ32aと同様のエンコーダ37aが組み込まれている。すなわち、エンコーダ37aは、スピンドルモータ37が所定の微小回転角度だけ回転する度に、ハイレベルとローレベルとに交互に切り替わるパルス列信号を、スピンドルモータ制御回路74及び回転角度検出回路75へ出力する。さらに、エンコーダ37aは、スピンドルモータ37が1回転するごとに、所定の短い期間だけローレベルからハイレベルに切り替わるインデックス信号を、コントローラ91及び回転角度検出回路75へ出力する。
【0025】
スピンドルモータ制御回路74及び回転角度検出回路75は、コントローラ91からの指令により作動開始する。スピンドルモータ制御回路74は、コントローラ91から、スピンドルモータ37の回転速度を表す設定値を入力する。そして、エンコーダ37aから入力したパルス信号の単位時間当たりのパルス数を用いてスピンドルモータ37の回転速度を計算し、計算した回転速度がコントローラ91から入力した回転速度になるように、駆動信号をスピンドルモータ37に供給する。回転角度検出回路75は、エンコーダ37aから出力されたパルス列信号のパルス数をカウントし、そのカウント値を用いてスピンドルモータ37の回転角度すなわちイメージングプレート21の回転角度θpを計算して、コントローラ91に出力する。そして、回転角度検出回路75は、エンコーダ37aから出力されたインデックス信号を入力すると、カウント値を「0」に設定する。すなわち、インデックス信号を入力した位置が回転角度0度の基準位置である。
【0026】
テーブル20は、円形状に形成され、スピンドルモータ37の出力軸の先端部に固定されている。テーブル20の中心軸と、スピンドルモータ37の出力軸の中心軸とは一致している。テーブル20は、下面中央部から下方へ突出した突出部22を有していて、突出部22の外周面には、ねじ山が形成されている。突出部22の中心軸は、スピンドルモータ37の出力軸の中心軸と一致している。テーブル20の下面には、イメージングプレート21が取付けられている。イメージングプレート21は、表面に蛍光体が塗布された円形のプラスチックフィルムである。イメージングプレート21の中心部には、貫通孔21aが設けられていて、この貫通孔21aに突出部22を通し、突出部22にナット状の固定具23をねじ込むことにより、イメージングプレート21が、固定具23とテーブル20の間に挟まれて固定される。固定具23は、円筒状の部材で、内周面に、突出部22のねじ山に対応するねじ山が形成されている。
【0027】
イメージングプレート21は、フィードモータ32によって駆動されて、移動ステージ31、スピンドルモータ37及びテーブル20と共に原点位置から回折環を撮像する回折環撮像位置へ移動する。また、イメージングプレート21は、スピンドルモータ37によって駆動されて回転しながら、フィードモータ32によって駆動されて、移動ステージ31、スピンドルモータ37及びテーブル20と共に撮像した回折環を読み取る回折環読取り領域内、及び回折環を消去する回折環消去領域内を移動する。なお、この場合のイメージングプレート21の移動においては、イメージングプレート21の中心軸が、X線出射器10から出射されたX線の光軸と測定対象物OBの法線とが成す平面内に保たれた状態で、前記X線の光軸に垂直な方向に移動する。
【0028】
また、移動ステージ31、スピンドルモータ37の出力軸、テーブル20、イメージングプレート21及び固定具23には、X線出射器10から出射されたX線を通過させる貫通孔がそれぞれ設けられている。これらの貫通孔の中心軸と、テーブル20の回転軸は一致している。すなわち、これらの貫通孔の中心軸と、X線出射器10から出射されるX線の光軸とが一致するとき、X線が測定対象物OBに照射されるようになっている。このように、X線を測定対象物OBに照射するときのイメージングプレート21の位置が、回折環撮像位置である。
【0029】
フィードモータ32の下方には、測定対象物OBにて反射したX線を受光する複数の受光素子からなる受光センサ25(例えば、X線CCD)が組み付けられている。受光センサ25は、測定対象物OB及びイメージングプレート21からフィードモータ32側に充分離れている。これにより、イメージングプレート21が回折環撮像位置にあるとき、受光センサ25は、測定対象物OBにて反射したX線を直接受光できる。受光センサ25の受光面は、測定対象物OBの表面と平行である。受光センサ25の受光面におけるX線の受光位置は、測定対象物OBの高さに対応している。言い換えれば、イメージングプレート21と測定対象物OBとの距離に対応している。受光センサ25は、それぞれの受光素子が受光した受光信号をセンサ信号取出回路76へ出力する。
【0030】
センサ信号取出回路76は、コントローラ91からの指令により作動開始し、受光センサ25から入力した受光信号を用いて、受光センサ25の受光面における受光信号のピーク位置を算出して受光位置を表す受光位置信号としてコントローラ91へ出力する。
【0031】
レーザ検出装置40は、回折環を撮像したイメージングプレート21にレーザ光を照射して、イメージングプレート21から入射した光の強度を検出する。レーザ検出装置40は、測定対象物OB及び回折環撮像位置にあるイメージングプレート21からフィードモータ32側に充分離れている。すなわち、イメージングプレート21が回折環撮像位置にあるとき、測定対象物OBにて回折したX線がレーザ検出装置40によって遮られないようになっている。レーザ検出装置40は、レーザ光源41と、コリメートレンズ42、反射鏡43、偏光ビームスプリッタ44、1/4波長板45及び対物レンズ46を備えている。
【0032】
レーザ光源41は、レーザ駆動回路77によって制御されて、イメージングプレート21に照射するレーザ光を出射する。レーザ駆動回路77は、コントローラ91によって制御され、レーザ光源41から所定の強度のレーザ光が出射されるように、駆動信号を制御して供給する。レーザ駆動回路77は、後述するフォトディテクタ52から出力された受光信号を入力して、受光信号の強度が所定の強度になるようにレーザ光源41に出力する駆動信号を制御する。これにより、イメージングプレート21に照射されるレーザ光の強度が一定に維持される。
【0033】
コリメートレンズ42は、レーザ光源41から出射されたレーザ光を平行光に変換する。反射鏡43は、コリメートレンズ42にて平行光に変換されたレーザ光を、偏光ビームスプリッタ44に向けて反射する。偏光ビームスプリッタ44は、反射鏡43から入射したレーザ光の大半(例えば、95%)をそのまま透過させる。1/4波長板45は、偏光ビームスプリッタ44から入射したレーザ光を直線偏光から円偏光に変換する。対物レンズ46は、1/4波長板45から入射したレーザ光をイメージングプレート21の表面に集光させる。この対物レンズ46から出射されるレーザ光の光軸は、X線出射器10から出射されたX線の光軸と測定対象物OBの法線とが成す平面内であって、前記X線の光軸に平行な方向、すなわち移動ステージ31の移動方向に対して垂直な方向である。
【0034】
対物レンズ46には、フォーカスアクチュエータ47が組み付けられている。フォーカスアクチュエータ47は、対物レンズ46をレーザ光の光軸方向に移動させるアクチュエータである。なお、対物レンズ46は、フォーカスアクチュエータ47が通電されていないときに、その可動範囲の中心に位置する。
【0035】
対物レンズ46によって集光されたレーザ光を、イメージングプレート21の表面であって、回折環が撮像されている部分に照射すると、輝尽発光(Photo−Stimulated Luminesence)現象が生じる。すなわち、回折環を撮像した後、イメージングプレート21にレーザ光を照射すると、イメージングプレート21の蛍光体が回折X線の強度に応じた光であって、レーザ光の波長よりも波長が短い光を発する。イメージングプレート21に照射されて反射したレーザ光の反射光及び蛍光体から発せられた光は、対物レンズ46及び1/4波長板45を通過して、偏光ビームスプリッタ44にて反射する。偏光ビームスプリッタ44の反射方向には、集光レンズ48、シリンドリカルレンズ49及びフォトディテクタ50が設けられている。集光レンズ48は、偏光ビームスプリッタ44から入射した光を、シリンドリカルレンズ49に集光する。シリンドリカルレンズ49は、透過した光に非点収差を生じさせる。フォトディテクタ50は、分割線で区切られた4つの同一正方形状の受光素子からなる4分割受光素子によって構成されており、時計回りに配置された受光領域A,B,C,Dに入射した光の強度に比例した大きさの検出信号を受光信号(a,b,c,d)として、増幅回路78に出力する。
【0036】
増幅回路78は、フォトディテクタ50から出力された受光信号(a,b,c,d)をそれぞれ同じ増幅率で増幅して受光信号(a’,b’,c’,d’)を生成し、フォーカスエラー信号生成回路79及びSUM信号生成回路80へ出力する。本実施形態においては、非点収差法によるフォーカスサーボ制御を用いる。フォーカスエラー信号生成回路79は、増幅された受光信号(a’,b’,c’,d’)を用いて、演算によりフォーカスエラー信号を生成する。すなわち、フォーカスエラー信号生成回路79は、(a’+c’)−(b’+d’)の演算を行い、この演算結果をフォーカスエラー信号としてフォーカスサーボ回路81へ出力する。フォーカスエラー信号(a’+c’)−(b’+d’)は、レーザ光の焦点位置のイメージングプレート21の表面からのずれ量を表している。
【0037】
フォーカスサーボ回路81は、コントローラ91により制御され、フォーカスエラー信号に基づいて、フォーカスサーボ信号を生成してドライブ回路82に出力する。ドライブ回路82は、このフォーカスサーボ信号に応じてフォーカスアクチュエータ47を駆動して、対物レンズ46をレーザ光の光軸方向に変位させる。この場合、フォーカスエラー信号(a’+c’)−(b’+d’)の値が常に一定値(例えば、ゼロ)となるようにフォーカスサーボ信号を生成することにより、イメージングプレート21の表面にレーザ光を集光させ続けることができる。
【0038】
SUM信号生成回路80は、受光信号(a’,b’,c’,d’)を合算してSUM信号(a’+b’+c’+d’)を生成し、A/D変換回路83に出力する。SUM信号の強度は、イメージングプレート21にて反射したレーザ光の強度と輝尽発光により発生した光の強度を合わせた強度に相当するが、イメージングプレート21にて反射したレーザ光の強度はほぼ一定であるので、SUM信号の強度は、輝尽発光により発生した光の強度に相当する。すなわち、SUM信号の強度は、イメージングプレート21に入射した回折X線の強度に相当する。A/D変換回路83は、コントローラ91によって制御され、SUM信号生成回路80からSUM信号を入力し、入力したSUM信号の瞬時値をディジタルデータに変換してコントローラ91に出力する。
【0039】
また、レーザ検出装置40は、集光レンズ51及びフォトディテクタ52を備えている。集光レンズ51は、レーザ光源41から出射されたレーザ光の一部であって、偏光ビームスプリッタ44を透過せずに反射したレーザ光をフォトディテクタ52の受光面に集光する。フォトディテクタ52は、受光面に集光された光の強度に応じた受光信号を出力する受光素子である。従って、フォトディテクタ52は、レーザ光源41が出射したレーザ光の強度に対応した受光信号をレーザ駆動回路77へ出力する。
【0040】
また、対物レンズ46に隣接して、LED53が設けられている。LED53は、LED駆動回路84によって制御されて、可視光を発して、イメージングプレート21に撮像された回折環を消去する。LED駆動回路84は、コントローラ91によって制御され、LED53に、所定の強度の可視光を発生させるための駆動信号を供給する。
【0041】
コンピュータ装置90は、コントローラ91、入力装置92及び表示装置93からなる。コントローラ91は、CPU、ROM、RAM、大容量記憶装置などを備えたマイクロコンピュータを主要部とした電子制御装置であり、大容量記憶装置に記憶された図3乃至図6の各種プログラムを実行する。入力装置92は、コントローラ91に接続されて、作業者により、各種パラメータ、作業指示などの入力のために利用される。表示装置93は、作業者に対して各種の設定状況、作動状況、測定結果などを視覚的に知らせる。高電圧電源95は、X線出射器10にX線出射のための高電圧を供給する。
【0042】
以下に、上記のように構成したX線回折測定装置を含むX線回折測定システムを用いて、測定対象物OBであるショットピーニングを行った後の鉄材の回折環を測定して残留応力を求める具体的方法について説明する。上記のように構成したX線回折装置においては、その保管状態及び搬送状態では、図10Aに示すように、支持脚68a,68bは、下面壁64に平行になるように折り畳まれて左右側面壁65,66に密着して収納されている。
【0043】
このような状態にあるX線回折測定装置を取っ手69を持って持ち運び、ショットピーニングを終えた測定対象物OBである鉄材の上に載せる。この場合、図2及び図10Bに示すように、支持脚68a,68bを下面壁64に対して垂直方向に回転させて、下端部を測定対象物OB上に密着させ、傾斜面壁67を測定対象物OBの表面に密着すなわち面接触させて、X線回折測定装置を測定対象物OBの表面上に維持するようにする。また、この場合、X線回折測定装置を、測定対象物OBである鉄材上であって、測定位置が傾斜面壁67に設けた貫通孔67aの位置に来るようにする。この状態では、X線出射器10から出射されたX線の光軸と傾斜面壁67の法線とが所定の角度θをなすように設定されているので、X線の光軸と測定対象物OBの表面の法線とがなす角度は、所定の角度θに設定される。これにより、測定対象物OBにX線が照射されれば、測定対象物OBから回折X線が出射され、イメージングプレート21上には回折環が形成される。
【0044】
その後、コンピュータ装置90及び高電圧電源95を上記の構成のX線回折測定装置に接続する。そして、作業者が、入力装置92を用いて、測定対象物OBの材質(例えば、鉄)を入力し、残留応力の測定開始を指示する。これにより、コントローラ91は、図3に示す回折環撮像プログラムの実行を開始する。
【0045】
この回折環撮像プログラムは図3のステップS100にて開始され、コントローラ91は、ステップS102にて、スピンドルモータ制御回路74を制御して、イメージングプレート21を低速回転させ、エンコーダ37aからインデックス信号を入力した時点で、イメージングプレート21の回転を停止させる。これにより、測定開始時において、イメージングプレート21の回転角度が0度に設定される。次に、コントローラ91は、ステップS104にて位置検出回路72の作動を開始させ、ステップS106にて、フィードモータ制御回路73を制御し、フィードモータ32の作動を開始させるとともに、位置検出回路72との協働によりフィードモータ32の作動を停止させて、イメージングプレート21を回折環撮像位置まで移動させる。
【0046】
次に、コントローラ91は、ステップS108にて、センサ信号取出回路76の作動を開始させる。次に、コントローラ91は、ステップS110にて、X線制御回路71を制御してX線出射器10にX線の出射を開始させる。これにより、X線が測定対象物OBに照射され、測定対象物OBの表面にて反射したX線が受光センサ25に受光される。次に、コントローラ91は、ステップS112にて、センサ信号取出回路76から受光位置信号を入力し、前記入力した受光位置信号を用いてイメージングプレート21と測定対象物OBとの距離Lを算出する。なお、この算出した距離Lは、後述する処理によって利用されるので、メモリに記憶しておく。そして、コントローラ91は、ステップS114にて、前記算出した距離Lが所定の基準範囲内にあるか否か判定する。距離Lが基準範囲内になければ、「No」と判定して、ステップS116にて、X線制御回路71を制御して測定対象物OBへのX線の照射を停止させる。
【0047】
そして、コントローラ91は、ステップS118にて、表示装置93に、X線回折測定装置のセットが不適切である旨を表示する。そして、ステップS128にて、回折環撮像プログラムの実行を終了する。この場合、作業者は、X線回折測定装置を再度セットし直した後、入力装置92を用いて、再度、測定開始を指示する。上記のステップS110〜S116までの所要時間は僅かなので、イメージングプレート21には回折環が撮像されない。また、受光センサ25が測定対象物OBにて反射したX線を受光しない場合も、ステップS118にて、X線回折測定装置のセットが不適切である旨が表示される。この場合も、作業者は、X線回折測定装置をセットし直す。そして、前記測定開始の指示により、前述したステップS102〜S114の処理が再度実行され、距離Lが所定の基準範囲内になるまで前記処理が繰り返される。ただし、このようにステップS102〜S114の処理が繰り返し実行される場合には、ステップS102〜S108の処理は、実質的には不要である。
【0048】
一方、ステップS114の判定処理時に、距離Lが所定の基準範囲内である場合には、コントローラ91は、ステップS114にて「Yes」と判定して、ステップS120に処理を進め、センサ信号取出回路76の作動を停止させる。そして、コントローラ91は、ステップS122にて時間計測を開始し、ステップS124にてイメージングプレート21にX線による回折環を形成するための所定の設定時間が経過したか否かを判定する。時間計測開始から所定の設定時間を経過していなければ、ステップS124にて「No」と判定して判定処理を実行し続ける。すなわち、コントローラ91は、時間計測開始から所定の設定時間を経過するまで待機する。そして、時間計測開始から所定の設定時間を経過すると、コントローラ91は、ステップS124にて「Yes」と判定して、ステップS126にてX線制御回路71を制御してX線出射器10によるX線の照射を停止させ、ステップS128にて回折環撮像プログラムの実行を終了する。
【0049】
これにより、この状態では、測定対象物OBからの回折X線による回折環がイメージングプレート21に撮像されている。
【0050】
前記回折環撮像プログラムの実行後、コントローラ91は、図4A及び図4Bの回折環読取りプログラムの実行を開始する。この場合、コントローラ91は、この回折環読取りプログラムの実行に並行して、図5の回折環形状検出プログラムの実行をも開始する。回折環読取りプログラムの実行は図4AのステップS200にて開始され、コントローラ91は、ステップS202にて回折環基準半径R0を計算する。回折環基準半径R0は、測定対象物OBの残留応力が「0」である場合の回折環の半径である。回折環基準半径R0は、測定対象物OBの材質及びイメージングプレート21から測定対象物OBまでの距離Lに依存する。すなわち、残留応力が「0」であるので、回折角θxは材質(本実施形態では、鉄である)によって決定される。距離Lと回折環基準半径R0とは比例関係にあるので、予め材質ごとに、回折角θxを記憶しておけば、回折環基準半径R0を、R0=L・tan(θx)の演算によって算出できる。この計算された回折環基準半径R0はメモリに記憶される。
【0051】
前記ステップS202の処理後、コントローラ91は、ステップS204にて、フィードモータ制御回路73に、イメージングプレート21を回折環読取り領域内の読取り開始位置へ移動させることを指示する。フィードモータ制御回路73は、位置検出回路72と協働してフィードモータ32を駆動制御して、イメージングプレート21を読取り開始位置へ移動させる。このイメージングプレート21が読取り開始位置にある状態では、対物レンズ46の中心すなわちレーザ光の照射位置が前記計算した回折環基準半径R0よりも所定距離αだけ小さい位置に位置する。なお、所定距離αは、撮像した回折環の半径が回折環基準半径R0からずれる可能性のある距離よりもやや大きい距離である。これにより、後述の処理により、回折環の測定が充分に内側から開始されて、回折環が確実に検出される。このときのX線回折測定装置は、図10Cに示された状態にある。
【0052】
ここで、移動ステージ31の移動限界位置から図1及び図2の右下方向への移動距離xを表す位置検出回路72からの位置信号と、イメージングプレート21の中心からレーザ光の照射位置(対物レンズ46の中心位置)までの距離(すなわちレーザ光の照射位置の半径r)との関係について説明しておく。移動ステージ31すなわちイメージングプレート21が移動限界位置にある状態においては、図7(A)に示すように、イメージングプレート21の中心から対物レンズ46の中心位置までの距離をRxとする。なお、この場合、対物レンズ46は前記イメージングプレート21の中心位置から図1及び図2にて左上方向にあり、また前記距離Rxは予め測定されてコントローラ91に記憶されている。一方、図7(B)に示すように、イメージングプレート21を移動限界位置から図1及び図2の右下方向へ距離xだけ移動させると、レーザ光の照射位置の半径rは、r=x+Rxで表される。この場合、距離xは、前述のように位置検出回路72から出力される位置信号によって示されるので、今後の処理において、レーザ光の照射位置の半径rは、位置検出回路72から出力される位置信号によって表された距離xに予め記憶されている値Rxを加算することになる。
【0053】
そして、前記のように、イメージングプレート21を読取り開始位置へ移動させる場合には、図7(C)に示すように、レーザ光の照射位置は、回折環基準半径R0よりも所定距離αだけ内側に位置するので、この場合の半径rは距離R0−αに等しくなるはずである。したがって、イメージングプレート21を駆動限界位置から図1及び図2の右下方向へ移動させる距離xは、x=R0−α−Rxに等しくなる。すなわち、前記ステップS204における読取り開始位置への移動処理においては、位置検出回路72から出力される位置信号により表される距離x(=R0−α−Rx)だけ、テーブル20を図1及び図2の右下方向へ移動させればよい。
【0054】
次に、コントローラ91は、ステップS206にて、スピンドルモータ制御回路74に対して、所定の一定回転速度でイメージングプレート21を回転させることを指示する。スピンドルモータ制御回路74は、エンコーダ37aからのパルス信号を用いて回転速度を計算しながら、前記指示された一定回転速度でイメージングプレート21が回転するようにスピンドルモータ37の回転を制御する。したがって、イメージングプレート21は前記所定の一定回転速度で回転し始める。次に、コントローラ91は、ステップS208にて、レーザ駆動回路77を制御してレーザ光源41によるレーザ光のイメージングプレート21に対する照射を開始させる。
【0055】
次に、コントローラ91は、ステップS210にて、フォーカスサーボ回路81に対して、フォーカスサーボ制御の開始を指示する。これにより、フォーカスサーボ回路81は、増幅回路78及びフォーカスエラー信号生成回路79からのフォーカスエラー信号を用いて、ドライブ回路82を介してフォーカスアクチュエータ47を駆動制御することにより、フォーカスサーボ制御を開始する。その結果、対物レンズ46が、レーザ光の焦点がイメージングプレート21の表面に合うように光軸方向に駆動制御される。ステップS210の処理後、コントローラ91は、ステップS212にて、回転角度検出回路75及びA/D変換回路83の作動を開始させる。これにより、回転角度検出回路75は、スピンドルモータ37(イメージングプレート21)の基準位置からの回転角度θpをコントローラ91に出力し始め、A/D変換回路83は、SUM信号の瞬時値のディジタルデータをコントローラ91に出力し始める。
【0056】
次に、コントローラ91は、ステップS214にて、フィードモータ制御回路73に対して、イメージングプレート21の移動開始及び移動速度を指示する。フィードモータ制御回路73は、フィードモータ32を駆動制御して、イメージングプレート21を読取り開始位置から軸受部34側(図1及び図2の右下方向)へ一定速度で移動させる。これにより、レーザ光の照射位置が、イメージングプレート21において、回折環基準半径R0から所定距離αだけ内側から外側方向に一定速度で相対移動し始める。なお、この状態では、レーザ光の照射位置は、前記ステップS206,S214の処理により、相対的にイメージングプレート21上を螺旋状に回転している。
【0057】
前記ステップS214の処理後、コントローラ91は、ステップS216にて、周方向番号n及び半径方向番号mの値をそれぞれ「1」に初期設定する。周方向番号nは、イメージングプレート21における1回転をN個(所定の大きな値)で等分した周方向位置をそれぞれ表す「1」から最大値Nまで変化する整数である。半径方向番号mは、イメージングプレート21の内側から外側に向かう径方向位置をそれぞれ表し、イメージングプレート21が1回転するごとに「1」から「1」ずつ増加する値である。そして、これらの周方向番号n及び半径方向番号mにより、図8に示すように、イメージングプレート21上を螺旋状に移動する読取りポイントP(n,m)が示される。
【0058】
次に、コントローラ91は、ステップS218にて、回転角度検出回路75がエンコーダ37aからのインデックス信号を入力したか否かを判定する。回転角度検出回路75がインデックス信号を入力していなければ、コントローラ91はステップS218にて「No」と判定して、ステップS218の判定処理を繰り返し実行し続ける。回転角度検出回路75がインデックス信号を入力すると、コントローラ91は、ステップS218にて「Yes」と判定して、ステップS220にて、回転角度検出回路75からイメージングプレート21の現在の回転角度θpを取り込む。
【0059】
そして、コントローラ91は、ステップS222にて、現在の回転角度θpと変数nによって指定される回転角度(n−1)・θo(この場合、n=1であるので「0」)との差の絶対値|θp−(n−1)・θo|が所定の許容値未満であるか否か判定する。この場合、θoは、360度を周方向番号nの最大値Nで除した予め記憶されている所定値である。前記絶対値|θp−(n−1)・θo|が所定の許容値未満でなければ、コントローラ91は、ステップS222にて「No」と判定してステップS220,S222の処理を繰り返し実行する。すなわち、コントローラ91は、現在の回転角度θpが所定の回転角度(n−1)・θoにほぼ一致するまで待機する。そして、現在の回転角度θpが所定の回転角度(n−1)・θoにほぼ一致すると、コントローラ91は、ステップS222にて「Yes」すなわち前記絶対値|θp−(n−1)・θo|が所定の許容値未満であると判定して、ステップS224に進む。
【0060】
ステップS224においては、コントローラ91は、A/D変換回路83からSUM信号を取り込んで、読取りポイントP(n,m)の信号強度S(n,m)としてメモリにそれぞれ記憶する。また、このステップS224においては、位置検出回路72からの位置信号を取り込んで、位置信号によって表される距離xに所定距離Rxを加算して半径rを計算して、読取りポイントP(n,m)の半径r(n,m)として前記信号強度S(n,m)に対応させてメモリに記憶する。これにより、イメージングプレート21の読取りポイントP(n,m)からの輝尽発光の強度すなわち読取りポイントP(n,m)に対するX線回折光の強度を表す信号強度S(n,m)が、読取りポイントP(n,m)の半径を表す半径r(n,m)と共にメモリに記憶される。
【0061】
次に、コントローラ91は、ステップS226にて、前記記憶した信号強度S(n,m)が、所定の基準値以上であるか否か判定する。信号強度S(n,m)が所定の基準値以上であれば、コントローラ91は、ステップS226にて「Yes」と判定して、ステップS230に進む。一方、信号強度S(n,m)が、所定の基準値より小さければ、コントローラ91は、ステップS226にて「No」と判定して、ステップS228にて、前記記憶した信号強度S(n,m)及び半径r(n,m)を消去した後、ステップS230に進む。この信号強度S(n,m)及び半径r(n,m)の消去は、所定の基準値より小さな信号強度S(n,m)は回折X線強度の回折環半径方向のピーク位置の検出に不要であるからである。
【0062】
ステップS230においては、コントローラ91は、周方向番号nに「1」を加算する。そして、コントローラ91は、ステップS232にて、変数nが1周当たりの読取りポイントP(n,m)の数を表す値Nより大きいか、すなわちイメージングプレート21が1回転したか否かを判定する。この場合、n=2であり、周方向番号nは値N以下であるので、コントローラ91は、ステップS232にて「No」と判定して、ステップS220に戻る。
【0063】
そして、前述したステップS220〜S232の処理を、周方向番号nが値Nよりも大きくなるまで繰り返す。このステップS220〜S232の繰り返し処理により、回転角度0,θo,2・θo・・・(N−1) ・θoにそれぞれ対応した所定角度θoごとの信号強度S(n,m)及び半径r(n,m)がメモリに記憶される。ただし、この場合も、ステップS226,S228の処理により、信号強度S(n,m)が所定の基準値より小さければ、メモリに記憶された信号強度S(n,m)及び半径r(n,m)は消去される。
【0064】
このようなステップS220〜S232の循環処理により、周方向番号nが値Nよりも大きくなると、コントローラ91は、ステップS232にて「Yes」と判定して、ステップS234にて、後述の回折環形状検出プログラムによる終了指令の有無を判定する。未だ終了指令がないときは、コントローラ91は、ステップS234にて「No」と判定し、ステップS236にて半径方向番号mに「1」を加算し(この場合、m=2になる)、ステップS228にて周方向番号nを「1」に戻す。そして、コントローラ91は、前述したステップS218〜S232の処理を実行して、次の半径方向位置の回転角度0,θo,2・θo・・・(N−1) ・θoに対応した読取りポイントP(n,m)に関する信号強度S(n,m)及び半径r(n,m)をメモリに記憶する。
【0065】
そして、終了指令の指示があるまで、このようなステップS218〜S238の処理により、「1」ずつ順次大きくなる半径方向番号m(=1,2,3・・)と、各半径方向番号mごとに回転角度0,θo,2・θo・・・(N−1) ・θoにそれぞれ対応した周方向番号n(=1〜N)とにより指定される読取りポイントP(n,m)に対応する信号強度S(n,m)及び半径r(n,m)がメモリに順次記憶される。なお、この場合も、信号強度S(n,m)が所定の基準値より小さければ、メモリに記憶された信号強度S(n,m)及び半径r(n,m)は消去される。
【0066】
そして、前記回折環形状検出プログラムによる終了指令の指示があると、コントローラ91は、ステップS234にて「Yes」と判定し、図4BのステップS240に進む。ここで、この回折環読取りプログラムと並行して実行されている回折環形状検出プログラムについて説明する。
【0067】
回折環形状検出プログラムの実行は図5のステップS300にて開始され、コントローラ91は、ステップS302にて周方向番号nを「1」に初期設定する。なお、この周方向番号nは、回折環読取りプログラムの場合と同様に所定角度θoごとの周方向位置を示すものであるが、回折環読取りプログラムで用いられる周方向番号nとは独立したものである。
【0068】
前記ステップS302の処理後、コントローラ91は、ステップS304にて、詳しくは後述するピーク半径rp(n)が存在するか、すなわちピーク半径rp(n)が検出済みであるかを判定する。この場合、ピーク半径rp(n)においては、検出されたピーク半径の回転角度が周方向番号nによって表される。ピーク半径rp(n)が検出済みであれば、コントローラ91は、ステップS304にて「Yes」と判定して、ステップS306にて周方向番号nに「1」を加算し、ステップS308にて周方向番号nが所定数より大きいか否かを判定する。この場合の所定数も、1周の測定位置数を表す値Nである。周方向番号nが所定数以下であれば、コントローラ91は、ステップS308にて「No」と判定してステップS304に戻る。
【0069】
一方、ピーク半径rp(n)が未検出であれば、コントローラ91は、ステップS304にて「No」と判定して、ステップS310にて前記図4AのステップS224の処理によって記憶した信号強度S(n,m)の数が所定数以上であるか否か判定する。信号強度S(n,m)の数が所定数以上でなければ、コントローラ91は、ステップS310にて「No」と判定して、前述したステップS306,S308の処理を実行してステップS304又はステップS302に戻る。このステップS310の判定処理は、信号強度S(n,m)の数が少ない場合には後述するピーク検出処理を実行しても無駄であるからである。なお、前記図4AのステップS228の処理によって消去された信号強度S(n,m)は、記憶した信号強度S(n,m)としてカウントされない。
【0070】
一方、前記記憶した信号強度S(n,m)の数が所定数以上であるときは、コントローラ91は、ステップS310にて「Yes」と判定して、ステップS312にて、ピークの有無を判定する。すなわち、周方向番号nによって指定される周方向位置の全ての半径r(n,m)及び信号強度S(n,m)を用いて、SUM信号の値のピークの有無を判定する。具体的には、図9に示すように、周方向番号nによって指定される周方向位置の全ての半径r(n,m)を横軸に取り、その半径r(n,m)に対応させて信号強度S(n,m)を縦軸に取った受光曲線において、信号強度S(n,m)にピークが存在するか、すなわち信号強度S(n,m)が増加した後に減少したかを判定するとよい。そして、ピークが存在しなければ、コントローラ91は、ステップS312にて「No」と判定して、前述したステップS306,S308の処理を実行してステップS304又はステップS302に戻る。
【0071】
このように、ステップS302〜S312を繰り返し実行している間に、並行して実行されている回折環読取りプログラムの処理により、さらに半径r(n,m)及び信号強度S(n,m)が取り込まれてメモリに次々に記憶されていく。このため、ステップS312にてピークが検出されるようになり、検出されると、コントローラ91は、ステップS312にて「Yes」と判定して、ステップS314にて、ピークの半径r(n,m)をピーク半径rp(n)としてメモリに記憶する。次に、コントローラ91は、ステップS316にて、取得したピーク半径rp(n)の数が所定数以上であるか否かを判定する。この場合の所定数も、1周の測定位置数を表す値Nである。そして、取得したピーク半径rp(n)の数が所定数より小さければ、コントローラ91は、ステップS316にて「No」と判定し、前述したステップS306,S308の処理を実行してステップS304又はステップS302に戻る。
【0072】
このようにステップS302〜S316の処理を繰り返すことで、取得したピーク半径rp(n)の数が増えていき所定数に達すると、すなわち周方向の全ての読取りポイントP(n,m)にてピーク半径rp(n)が取得されると、コントローラ91は、ステップS316にて「Yes」と判定し、ステップS318にて回折環形状検出の終了を示す終了指令を出力する。そして、コントローラ91は、ステップS320にて回折環形状検出プログラムの実行を終了する。このような周方向の全ての読取りポイントP(n,m)におけるピーク半径rp(n)の検出により、回折環の形状が検出されたことになる。
【0073】
ここで、図4A及び図4Bの回折環読取りプログラムの説明にふたたび戻る。前述のように終了指令が出力されると、コントローラ91は、図4AのステップS234にて「Yes」と判定し、図4BのステップS240にて、フォーカスサーボ回路81に対してフォーカスサーボ制御の停止を指示することにより、フォーカスサーボ制御を停止させる。次に、コントローラ91は、ステップS242にて、レーザ駆動回路77を制御して、レーザ光源41によるレーザ光の照射を停止させる。さらに、コントローラ91は、ステップS244にて、A/D変換回路83及び回転角度検出回路75の作動を停止させ、ステップS246にて、フィードモータ制御回路73を制御してフィードモータ32の作動を停止させることにより、イメージングプレート21を停止させて、ステップS248にて回折環形状検出プログラムの実行を終了する。なお、この状態では、位置検出回路72の作動及びイメージングプレート21の回転は、以前と同様のまま継続されている。
【0074】
次に、コントローラ91は、図6の回折環消去プログラムを実行する。回折環消去プログラムの実行は、ステップS400にて開始され、コントローラ91は、ステップS402にて、フィードモータ制御回路73に、イメージングプレート21を回折環消去領域内の消去開始位置へ移動させることを指示する。フィードモータ制御回路73は、位置検出回路72と協働してフィードモータ32を駆動制御して、イメージングプレート21を消去開始位置へ移動させる。このイメージングプレート21が消去開始位置にある状態では、LED53から出力される可視光の中心が前記計算した回折環基準半径R0よりも所定距離γだけ小さい位置に位置する。具体的には、この位置は、イメージングプレート21が駆動限界位置にある状態において、イメージングプレート21の中心からLEDの可視光の中心までの距離をRy’とすると、位置検出回路72から出力される位置がR0−γ−Ry’になる位置である。なお、所定距離γは、前記所定距離αよりも若干大きく、前記撮像された回折環の半径よりは余裕をもってずれた位置である。これにより、後述の処理により、前記撮像された回折環が確実に消去される。
【0075】
次に、コントローラ91は、ステップS404にて、LED駆動回路84を制御してLED53による可視光のイメージングプレート21に対する照射を開始させる。次に、コントローラ91は、ステップS406にて、フィードモータ制御回路73に対して、イメージングプレート21の移動開始及び移動速度を指示する。フィードモータ制御回路73は、フィードモータ32を駆動制御して、イメージングプレート21を消去開始位置から軸受部34側(図1及び図2の右下方向)に一定速度で移動させる。これにより、LED53による可視光が、イメージングプレート21において、回転しながら、回折環基準半径R0から所定距離γ(γ>α)だけ内側から外側方向に一定速度で移動し始める。
【0076】
前記ステップS406の処理後、コントローラ91は、ステップS408にて位置検出回路72からイメージングプレート21の位置を表す位置信号を入力し、ステップS410にて、イメージングプレート21の現在の位置が消去終了位置を超えているか否かを判定する。この終了位置は、回折環基準半径R0よりも所定距離γだけ大きな位置である。具体的には、位置検出回路72から出力される位置がR0+γ−Ry’になる位置である。そして、イメージングプレート21の現在の位置が消去終了位置を超えるまで、コントローラ91は、ステップS410にて「No」と判定して、ステップS408,S410の処理を繰り返し実行する。これにより、回転するイメージングプレート21に対し、前記回折環基準半径R0から所定距離γだけ内側から所定距離γだけ外側まで、LED53による可視光が照射されるので、前記回折X線によって形成された回折環は内側から徐々に消去されていく。
【0077】
そして、イメージングプレート21の現在の位置が消去終了位置を超えると、コントローラ91は、ステップS410にて「Yes」と判定して、ステップS412にてフィードモータ制御回路73にイメージングプレート21の移動停止を指示し、ステップS414にてLED駆動回路84にLED53による可視光の照射停止を指示する。これにより、フィードモータ制御回路73は、フィードモータ32の作動を停止させることによりイメージングプレート21の移動を停止させる。LED駆動回路84は、LED53による可視光の照射を停止させる。この状態では、前記撮像された回折環は完全に消去されている。
【0078】
前記ステップS414の処理後、コントローラ91は、ステップS416にて位置検出回路72の作動を停止させ、ステップS418にてスピンドルモータ制御回路74に対してイメージングプレート21の回転停止を指示する。この指示に応答して、スピンドルモータ制御回路74は、スピンドルモータ37の作動を停止させて、イメージングプレート21の回転を停止させる。前記イメージングプレート21の回転停止後、コントローラ91は、ステップS420にて回折環消去プログラムの実行を終了する。
【0079】
上記のような回折環の測定後、作業者による入力装置92を用いた指示により、コントローラ91は、図示しないプログラムの実行により、上記回折環形状検出プログラムの実行によって取得した回折環の形状を表すデータを用いて、すなわちピーク半径rp(n)(n=1〜N)及びそれに対応した回転角度(n−1)θo(n=1〜N)を用いて、測定対象物OBである鉄材の測定箇所の残留圧縮応力(垂直応力)及びせん断応力を計算し、計算した結果に応じて鉄材のショットピーニングによる加工結果を評価する。なお、これらの残留圧縮応力及びせん断応力は、従来からよく知られているcosαを用いて計算されるとともに、その計算結果による残留圧縮応力及びせん断応力の大きさにより、ショットピーニングの評価もなされる。この場合、残留圧縮応力がある程度大きく、せん断応力が「0」に近い小さな値であればショットピーニングが良好であったと評価される。
【0080】
上記説明からも理解できるように、上記実施形態においては、X線回折測定装置をケース60内に収容するように構成したので、作業者は、X線回折測定装置を簡単に搬送できるようになる。そして、このX線回折測定装置の搬送後、設置用壁である傾斜面壁67を測定対象物OB上に面接触させることにより、X線回折測定装置を測定対象物OB上に載置する。この状態では、傾斜面壁67の法線とX線出射器10から出射されたX線の光軸とがなす角度が、測定対象物OBから回折したX線が出射される所定角度に設定されているので、測定対象物OBの表面の法線と前記X線の光軸とがなす角度も前記所定角度となる。したがって、X線出射器10からのX線を傾斜面壁67に設けた貫通孔67aを介して測定対象物OBに照射することにより、すなわち図3の回折環撮像プログラムの実行により、測定対象物OBから回折したX線が出射されてイメージングプレート21に回折したX線による回折環が形成される。その結果、作業者は、設置用壁である傾斜面壁67を測定対象物OB上に面接触させることにより、X線回折測定装置を測定対象物OB上に載置するという簡単な行為により、イメージングプレート21に回折環を形成させることができる。
【0081】
この回折環のイメージングプレート21への形成後、図4A及び図4Bの回折環読取りプログラムの実行及び図5の回折環形状検出プログラムの実行により、回折環の形状が検出される。そして、この検出された回折環の形状に基づいて、測定対象物OBの残留応力を計算できるので、ショットピーニング後の測定対象物OBの残留応力の測定が簡単に行えるようになり、ショットピーニングが良好であったか否かも簡単に評価できる。
【0082】
また、上記実施形態においては、ケース60に、搬送用の取っ手69を設けたので、X線回折測定装置の搬送がより容易になる。さらに、上記実施形態においては、設置用壁である傾斜面壁67を測定対象物OB上に接触させた状態に維持するための支持脚68a,68bを設けたので、簡単な構成で、傾斜面壁67を測定対象物OB上に密着すなわち面接触させて、X線回折測定装置を測定対象物OB上に載置させた状態を確実に維持できる。
【0083】
さらに、本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0084】
上記実施形態においては、ケース60の左右側面壁65,66に密着させて収納状態にある折り畳み式の支持脚68a,68bを90度回転させて、X線回折測定装置を図2の姿勢に維持させるようにしたが、この図2の姿勢と同じ姿勢を維持することができれば、どのような構造の支持部材を設けるようにしてもよい。例えば、X線回折測定装置の下面壁64に対して垂直方向に進退可能な支持脚を設け、この支持脚を下面壁64の下方に突出させて、X線回折測定装置を図2の姿勢に維持させるようにしてもよい。
【0085】
また、上記折り畳み式の支持脚68a,68bをなくし、ケース60の下面壁64と傾斜面壁67が交差する角度と等しい角度のある三角形のブロックを用意して、測定の際には、前記ブロックを測定対象物OBと下面壁64の間に挿入することにより、X線回折測定装置を図2と同じ姿勢に維持させるようにしてもよい。なお、この場合、X線回折測定装置の搬送時には、ブロックを搬送する必要も生じる。
【0086】
また、上記実施形態においては、測定対象物OBが大きくて、図2に示すように、X線回折測定装置を測定対象物OB上に載置し、測定対象物OBの残留応力を測定するために、イメージングプレート21に回折X線による回折環を撮像して、撮像した回折環の形状を測定することについて説明した。しかし、このX線回折測定装置は、測定対象物OBが小さいときの残留応力の測定にも対応させることもできる。この場合、図11に示すように、X線回折測定装置を固定支持する固定治具101を用意して、設置面FL上に固定治具101を置き、X線回折測定装置のケース60の左右側面壁65,66を固定治具101に固定することにより、傾斜面壁67が水平になるようにX線回折測定装置を固定支持する。
【0087】
そして、設置面FL上には、測定対象物OBを載置する昇降ステージ102aを備えた昇降機102を置く。昇降ステージ102aは、上下に昇降可能となっている。そして、小さな測定対象物OBの検査位置が傾斜面壁67に設けた貫通孔67aの位置に対向するように、測定対象物OBを昇降ステージ102a上に載置した後、測定対象物OBが傾斜面壁67に接触する高さ位置又は前記高さ位置に近接する位置まで、昇降ステージ102aを上昇させる。その後、上記実施形態と同様に、測定対象物OBにX線を照射してイメージングプレート21に回折環を撮像して、撮像した回折環の形状を測定して、残留応力を計算すれば、小さな測定対象物OBであっても、その残留応力を測定できる。
【0088】
また、上記実施形態においては、回折環の形状を測定するために、イメージングプレート21の回転角度が所定の回転角度になるごとに、信号強度S(n,m)及び半径r(n,m)を記憶するようにした。しかし、これに代えて、所定の時間間隔で、イメージングプレート21の回転角度θ(n,m)、信号強度S(n,m)及び半径r(n,m)を取得して記憶してもよい。
【0089】
また、上記実施形態においては、受光センサ25の受光位置を用いて、撮像した回折環の半径が回折環基準半径R0からずれる可能性のある領域を想定して、読取り開始位置を決定するようにした。しかし、回折環基準半径R0を用いることなく、常に一定の領域にレーザ光を照射するようにしてもよい。例えば、イメージングプレート21の全領域にレーザ光を照射するようにしてもよい。また、LED53による可視光の照射についても同様に、常に一定の領域にLED53から発せられた可視光を照射するようにしてもよい。例えば、イメージングプレート21の全領域にLED53からの可視光を照射するようにしてもよい。ただし、この場合、上記実施形態よりも測定時間が長くなる。
【0090】
また、上記実施形態においては、レーザ検出装置40は、フォーカスサーボ制御されるようにしたが、イメージングプレート21を回転させた際のイメージングプレート21の受光面と対物レンズ46との距離の変動が微小であれば、フォーカスサーボ制御は不要である。
【0091】
また、上記実施形態においては、イメージングプレート21に照射されるレーザ光は、一定強度のレーザ光としたが、これに代えて、予め設定されたハイレベルの強度と、予め設定されたローレベルの強度が繰り返されるパルス状のレーザ光とし、ハイレベルの強度になるタイミングでSUM信号の瞬時値を取得するようにしてもよい。この場合、イメージングプレート21のSUM信号の瞬時値を取得するポイントに瞬間的にハイレベルの強度のレーザ光を照射する。すなわち、SUM信号の瞬時値を取得するポイントにレーザ光が向かう状態では、レーザ光の強度はローレベルであり、輝尽発光により発生する光はほとんど無い。そして、SUM信号の瞬時値を取得するポイントに近づいたとき、レーザ光の強度がハイレベルになって輝尽発光による光が発生する。常にハイレベルの強度のレーザ光を照射した場合は、輝尽発光による光が生じ続けることで光の強度が減少するが、上記のように構成すれば、輝尽発光によって大きな強度の光を利用して、SUM信号の瞬時値を取得することができる。
【符号の説明】
【0092】
10…X線出射器、20…テーブル、21…イメージングプレート、25…受光センサ、30…テーブル駆動機構、31…移動ステージ、32…フィードモータ、33…スクリューロッド、37…スピンドルモータ、40…レーザ検出装置、41…レーザ光源、46…対物レンズ、50…フォトディテクタ、60…ケース、63…上面壁、64…下面壁、67…傾斜面壁、67a…貫通孔、68a,68b…支持脚、69…取っ手、90…コンピュータ装置、91…コントローラ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象物に向けてX線を出射するX線出射器と、
中央にX線を通過させる貫通孔が形成されたテーブルと、
前記テーブルに取付けられて、中央部にてX線を通過させるとともに、測定対象物にて回折したX線の回折光を受光する受光面を有し、回折光の像である回折環を記録するイメージングプレートと、
レーザ光を出射するレーザ光源及びレーザ光を受光するフォトディテクタを有し、レーザ光を前記イメージングプレートの受光面に照射するとともに、レーザ光の照射によって前記イメージングプレートから出射された光を受光して受光強度に応じた受光信号を出力するレーザ検出装置と、
前記テーブルを貫通孔の中心軸回りに回転させる回転機構と、
前記テーブルを前記イメージングプレートの受光面に平行な方向に前記レーザ検出装置に対して相対的に移動させる移動機構と、
前記X線出射器、前記テーブル、前記イメージングプレート、前記レーザ検出装置、前記回転機構及び前記移動機構を収容したケースとを備えたX線回折測定装置であって、
前記ケースは、測定対象物上に面接触させてX線回折測定装置を載置させるための平面状の設置用壁であって、前記X線出射器から出射されたX線を通過させる開口を設けた設置用壁を有し、
前記設置用壁の法線と前記X線出射器から出射されたX線の光軸とがなす角度を、測定対象物にX線を照射した際に測定対象物から回折したX線が出射される所定角度に設定したことを特徴とするX線回折測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載のX線回折測定装置において、
前記所定角度は、30度乃至45度の範囲内の角度であるX線回折測定装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のX線回折測定装置において、
前記ケースは、X線出射器からX線が出射されるX線の光軸方向に垂直な下面壁を有し、前記下面壁の一端部に前記下面壁に対して傾斜させた傾斜面壁を形成し、前記傾斜面壁を前記設置用壁とすることを特徴とするX線回折測定装置。
【請求項4】
請求項3に記載のX線回折測定装置において、
前記ケースは、直方体形状に形成され、前記テーブルの移動方向における下面壁の一端部の角部に前記傾斜面壁を設けたことを特徴とするX線回折測定装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のうちのいずれか一つに記載のX線回折測定装置において、
前記ケースに、さらに、前記設置用壁を測定対象物上に接触させた状態に維持するための支持脚を設けたことを特徴とするX線回折測定装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のうちのいずれか一つに記載のX線回折測定装置において、
前記ケースに、さらに、搬送用の取っ手を設けたことを特徴とするX線回折測定装置。
【請求項1】
測定対象物に向けてX線を出射するX線出射器と、
中央にX線を通過させる貫通孔が形成されたテーブルと、
前記テーブルに取付けられて、中央部にてX線を通過させるとともに、測定対象物にて回折したX線の回折光を受光する受光面を有し、回折光の像である回折環を記録するイメージングプレートと、
レーザ光を出射するレーザ光源及びレーザ光を受光するフォトディテクタを有し、レーザ光を前記イメージングプレートの受光面に照射するとともに、レーザ光の照射によって前記イメージングプレートから出射された光を受光して受光強度に応じた受光信号を出力するレーザ検出装置と、
前記テーブルを貫通孔の中心軸回りに回転させる回転機構と、
前記テーブルを前記イメージングプレートの受光面に平行な方向に前記レーザ検出装置に対して相対的に移動させる移動機構と、
前記X線出射器、前記テーブル、前記イメージングプレート、前記レーザ検出装置、前記回転機構及び前記移動機構を収容したケースとを備えたX線回折測定装置であって、
前記ケースは、測定対象物上に面接触させてX線回折測定装置を載置させるための平面状の設置用壁であって、前記X線出射器から出射されたX線を通過させる開口を設けた設置用壁を有し、
前記設置用壁の法線と前記X線出射器から出射されたX線の光軸とがなす角度を、測定対象物にX線を照射した際に測定対象物から回折したX線が出射される所定角度に設定したことを特徴とするX線回折測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載のX線回折測定装置において、
前記所定角度は、30度乃至45度の範囲内の角度であるX線回折測定装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のX線回折測定装置において、
前記ケースは、X線出射器からX線が出射されるX線の光軸方向に垂直な下面壁を有し、前記下面壁の一端部に前記下面壁に対して傾斜させた傾斜面壁を形成し、前記傾斜面壁を前記設置用壁とすることを特徴とするX線回折測定装置。
【請求項4】
請求項3に記載のX線回折測定装置において、
前記ケースは、直方体形状に形成され、前記テーブルの移動方向における下面壁の一端部の角部に前記傾斜面壁を設けたことを特徴とするX線回折測定装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のうちのいずれか一つに記載のX線回折測定装置において、
前記ケースに、さらに、前記設置用壁を測定対象物上に接触させた状態に維持するための支持脚を設けたことを特徴とするX線回折測定装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のうちのいずれか一つに記載のX線回折測定装置において、
前記ケースに、さらに、搬送用の取っ手を設けたことを特徴とするX線回折測定装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図11】
【公開番号】特開2013−113737(P2013−113737A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−260665(P2011−260665)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(000112004)パルステック工業株式会社 (179)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(000112004)パルステック工業株式会社 (179)
【Fターム(参考)】
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