説明

X線回折装置

【課題】円筒面変換処理と時間遅延積分処理との両方を同じ演算制御過程内で行うことを可能にすることにより、極めて分解能が高く、しかも強度の高い回折X線像を得ることができるX線回折装置を提供する。
【解決手段】CPU17、メモリ20等から成るコンピュータの外部にDSP(デジタルシグナルプロセッサ)から成る信号処理部21を設置して成るX線回折装置1である。測定装置2はX線回折測定を行う。2次元ピクセル型検出器12は複数のピクセルから出力されるデータ量の大きな2次元回折線データを高速通信線であるカメラリンクケーブル24を通して信号処理部21へ伝送する。信号処理部21は送られてきた大量の回折線データに対して円筒面変換処理26及び時間遅延積分処理27を行い、処理結果の画像データを1ラインの行データごとにバス23へ伝送する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料から出る回折X線を複数のピクセルを並べて成るピクセル型X線検出器によって検出して測定を行うX線回折装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、平板な2次元検出器を使ってスキャンを行う際に、一定の時間間隔をおいて隣接する検出素子の出力を加算するいくつかの方法がある。例えば、その1つとして、CCD(Charge Coupled Device/電荷結合素子)を使った2次元検出器で使用されている、CCDの電気的な特性を利用して蓄積された電荷を隣接する素子に転送する方法がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
別の方法として、Si(シリコン)等のフォトカウンティング素子を使った検出器で行われるような、計数値をデジタル回路あるいはコンピュータで演算する方法がある(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
これらのいずれも、X線回折パターンの計測に使った場合、シンチレーションカウンタのような点状の検出器に比べて、感度(すなわち、単位時間あたりの計数値)が向上するという利点を有するが、その反面、角度分解能が低下するという問題点を有している。
【0005】
角度分解能の低下という問題点を解消するために、検出器から得られた平板の画像を円筒面の画像に変換するという手法が知られている(例えば、特許文献3及び特許文献4参照)。円筒面変換は検出器から得られる1フレーム分(1画面分)の各画素データに基づいて行われるが、検出器のスキャンごとに得られる1フレーム分のデータは各画素ごとに積分される。このような積分手法は、一般に、時間遅延積分(TDI:Time Delay Integration)と呼ばれている。
【0006】
円筒面変換及び時間遅延積分を実現するため、従来は、検出器から得られた画像をそのままコンピュータに送ってそのコンピュータのソフトウエアで処理を行っていた。しかしながら、この方法においては単位時間あたりにコンピュータが受け取るデータの量が膨大になるため、測定速度が低下するという問題を招来する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−241509号公報
【特許文献2】特開2010−038722号公報
【特許文献3】特開2007−101247号公報
【特許文献4】特開2007−322384号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、従来装置における上記の問題点に鑑みて成されたものであって、X線回折装置において角度分可能の低下を防ぐと同時に、単位時間当たりにコンピュータが受け取るデータ量を減らして測定速度の低下も防ぐことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るX線回折装置は、概括的には、検出器とコンピュータの間に専用の高速演算回路を設置し、そこで円筒面変換と時間遅延積分とを行い、その結果をコンピュータに転送することで上記の目的を達成する。
【0010】
具体的には、本発明に係る第1のX線回折装置は、
(1)試料へ照射されるX線を発生するX線源と、
(2)2次元的に並べられた複数のピクセルを有しており、前記試料から出たX線をそれらのピクセルによって受光してピクセルごとに受光光量を信号として出力し、前記試料に対して所定のカメラ長で配置されたX線検出器と、
(3)前記X線源、前記試料及び前記X線検出器の少なくとも1つを赤道面内で移動させ、且つ前記試料に対する前記X線源の角度及び前記試料に対する前記X線検出器の角度を測角するゴニオメータと、
(4)前記X線源から出て前記試料で回折したX線を前記X線検出器が検出できるように前記ゴニオメータの動作を制御する演算制御部と、
(5)第1通信線を介して前記演算制御部に接続されており、前記X線検出器の出力信号を第2通信線を介して受け取って信号処理を行い処理後の信号を前記第1通信線を通して前記演算制御部へ伝送する信号処理部とを有し、
(6)前記信号処理部は、
(ア)平面である前記X線検出器のX線受光面で得られた複数の1フレーム分の画像データのそれぞれを、前記カメラ長を半径とする円筒面に写像する円筒面変換処理と、
(イ)円筒面変換処理後の複数の1フレーム分の画像データを、互いに1画素分ずつずらしながら積算する時間遅延積分処理と、
時間遅延積分処理後の2次元データを前記赤道面に直交する方向である子午線方向の行データごとに前記第1通信線へ伝送する処理とを行うことを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る第2のX線回折装置は、
(1)試料へ照射されるX線を発生するX線源と、
(2)1次元的に並べられた複数のピクセルを有しており、前記試料から出たX線をそれらのピクセルによって受光してピクセルごとに受光光量を信号として出力し、前記試料に対して所定のカメラ長で配置されたX線検出器と、
(3)前記X線源、前記試料及び前記X線検出器の少なくとも1つを赤道面内で移動させ、且つ前記試料に対する前記X線源の角度及び前記試料に対する前記X線検出器の角度を測角するゴニオメータと、
(4)前記X線源から出て前記試料で回折したX線を前記X線検出器が検出できるように前記ゴニオメータの動作を制御する演算制御部と、
(5)第1通信線を介して前記演算制御手段に接続されており、前記X線検出器の出力信号を第2通信線を介して受け取って信号処理を行い処理後の信号を前記第1通信線を通して前記演算制御部へ伝送する信号処理部とを有し、
(6)前記信号処理部は、
(ア)平面である前記X線検出器のX線受光面で得られた複数の1ライン分の画像データのそれぞれを、前記カメラ長を半径とする円筒面に写像する円筒面変換処理と、
(イ)円筒面変換処理後の複数の1ライン分の画像データを、互いに1画素分ずつずらしながら積算する時間遅延積分処理と、
(ウ)時間遅延積分処理後の1次元データを1画素ずつ前記通信線へ伝送する処理とを行う
ことを特徴とするX線回折装置。
【0012】
上記第1及び第2のX線回折装置によれば、信号処理部を第1通信線を介して演算制御部に接続した。すなわち、信号処理部を演算制御部の外部に独立して設けた。演算制御部は、ゴニオメータ、その他の機器の動作の制御を担う制御部であり、通常は、ゴニオメータ等の動作のための制御に加えて演算制御部によって円筒面変換処理及び時間遅延積分処理の両方を行うことはデータ処理能力の関係上、極めて困難であった。円筒面変換処理及び時間遅延積分処理は非常に大量のデータを処理しなければならないからである。
【0013】
本発明では、ゴニオメータの動作の制御等を担う演算制御部の外部に信号処理部を独立して設け、その信号処理部によって円筒面変換処理及び時間遅延積分処理を行い、処理後のデータは1ラインの行データごとに演算制御部へ伝送するようにした。このため、ゴニオメータ等のための制御用のコンピュータに含まれる演算制御部による演算の遅れを招来することなく、円筒面変換処理及び時間遅延積分処理といった多量のデータ処理を要求される処理を行うことが可能となった。そして、円筒面変換処理に加えて時間遅延積分処理を併せて行えるようになったので、分解能が高く、しかも強度の強い回折線データを得ることができるようになった。
【0014】
本発明に係るX線回折装置においては、所定のX線露光時間内に前記複数のピクセルに蓄積された1フレーム分の信号を前記X線検出器から前記信号処理部へ前記第2通信線を介して一括して伝送することが望ましい。こうすれば、X線検出器から信号処理部への信号伝送を短時間で円滑に行うことができる。
【0015】
本発明に係るX線回折装置において、前記第1通信線はコンピュータの内部バス、又はコンピュータの内部バスとコンピュータ用通信線とを接続して成る通信線であることが望ましい。
コンピュータ用通信線は、例えば、TCP/IP、USB、IEEEの各規約に従った通信ケーブルや、その他のネットワーク用の通信ケーブルである。内部バスやコンピュータ用通信線は、それら自体が高性能な通信線であるが、ゴニオメータやその他の機器の制御を担当しなければならないので、この制御に加えて円筒面変換処理及び時間遅延積分処理といった大量のデータを扱う処理を担当することは非常に困難である。しかしながら、本発明では円筒面変換処理及び時間遅延積分処理は信号処理部で行い、データ量を減少させた上で第1通信線に信号を伝送している。従って、信号処理部の後段にコンピュータ用通信線やコンピュータの内部バスが接続されていても、信号伝送に滞りが生じることは無い。
【0016】
本発明に係るX線回折装置において、前記第2通信線は高速データ通信用線であることが望ましい。高速データ通信用線は、例えばカメラリンク規格に則ったケーブルであるカメラリンクケーブルや、カメラリンクケーブルと同等又はそれ以上のデータ伝送能力を備えた通信ケーブルである。
【0017】
カメラリンクは、デジタルカメラと画像収録デバイスとを接続するための規格である。カメラリンクは、デジタル信号を高速に伝送することに特化した通信規格であり、例えばクロック信号を含んだ非同期のシリアル伝送に基づいた通信方式である。このカメラリンクを用いた通信形態を用いることにより、X線検出器から出力される大量のデータ(すなわち、円筒面変換処理前及び時間遅延積分前の大量のピクセルデータ)を短時間内に確実に信号処理部へ伝送できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る第1及び第2のX線回折装置によれば、信号処理部を第1通信線を介して演算制御部に接続した。すなわち、信号処理部を演算制御部の外部に独立して設けた。演算制御部は、ゴニオメータ、その他の機器の動作の制御を担う制御部であり、通常は、ゴニオメータ等の動作のための制御に加えて演算制御部によって円筒面変換処理及び時間遅延積分処理の両方を行うことはデータ処理能力の関係上、極めて困難であった。円筒面変換処理及び時間遅延積分処理は非常に多量のデータを処理しなければならないからである。
【0019】
本発明では、ゴニオメータの動作の制御等を担う演算制御部の外部に信号処理部を独立して設け、その信号処理部によって円筒面変換処理及び時間遅延積分処理を行い、処理後のデータは1ラインの行データごとに演算制御部へ伝送するようにした。このため、演算制御部による演算の遅れを招来することなく、円筒面変換処理及び時間遅延積分処理といった多量のデータ処理を要求される処理を問題なく行うことが可能となった。そして、円筒面変換処理に加えて時間遅延積分処理を併せて行えるようになったので、分解能が高く、しかも強度の強い回折線データを得ることができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係るX線回折装置の一実施形態を示すブロック図である。
【図2】図1のX線回折装置の主要部である測定装置を示す斜視図である。
【図3】図1の制御系によって実行される処理を示すフローチャートである。
【図4】円筒面変換における円筒面から平面への写像の様子を模式的に示す図である。
【図5】円筒面変換における平面から円筒面への計数値の配分の様子を模式的に示す図である。
【図6】円筒面変換の際の位置の移動の様子をX線入射方向から見たときの投影図である。
【図7】円筒面変換における画素の移動に伴う計数値の配分の様子を示す図である。
【図8】円筒面変換における点の移動距離を示す図である。
【図9】円筒面変換後の画像の様子を模式的に示す図である。
【図10】円筒面変換後の画像を1フレーム(1画面)内で詰めて格納する様子を模式的に示す図である。
【図11】円筒面変換において移動する画素数と計数値の配分率を模式的に示す図である。
【図12】時間遅延積分処理における画像データの積分の手順を模式的に示す図である。
【図13】本発明に係るX線回折装置で用いる測定装置の他の実施形態を示す斜視図である。
【図14】本発明に係るX線回折装置の他の実施形態を示すブロック図である。
【図15】本発明に係るX線回折装置のさらに他の実施形態を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係るX線回折装置を実施形態に基づいて説明する。なお、本発明がこの実施形態に限定されないことはもちろんである。また、これ以降の説明では図面を参照するが、その図面では特徴的な部分を分かり易く示すために実際のものとは異なった比率で構成要素を示す場合がある。
【0022】
図1は本発明に係るX線回折装置の一実施形態をブロック図によって示している。このX線回折装置1は、測定を実現するために機械的な動作を行う部分である測定装置2と、その測定装置2の動作を制御する部分である制御部3とを有している。
【0023】
測定装置2は、例えば図2に示すように、測角器であるゴニオメータ4と、試料支持装置5とを有している。試料支持装置5は、測定対象である試料7を所定位置である試料支持位置で支持している。試料7は、本実施形態では粉末試料である。ゴニオメータ4は、入射側アーム8によってX線管9を支持している。ゴニオメータ4は、また、受光側アーム11によって2次元ピクセル型検出器12を支持している。図2では試料支持装置5及びゴニオメータ4を、具体的な形状ではなく模式化して示している。
【0024】
入射側アーム8は、試料7のX線受光面(図2の上側表面)を通って延びている軸線ωを中心として回転可能である。以下、この回転をθ回転と呼ぶことにする。他方、受光側アーム11も、同一の軸線ωを中心として回転可能である。以下、この回転を2θ回転と呼ぶことにする。入射側アーム8と受光側アーム11とは互いに独立して回転できるようになっている。
【0025】
X線管9の内部にはX線源であるX線焦点13が設けられている。このX線焦点13は、例えばフィラメントのような陰極に対向して配置された対陰極上に形成される。具体的には、フィラメントから放出された電子が対陰極の表面に衝突する領域がX線焦点13となる。本実施形態では、対陰極が回転対陰極であり、対陰極のX線衝突面がCu(銅)によって形成されており、X線焦点13からはCuKα線を含むX線が放出されるものとする。
【0026】
通常、X線焦点13は細長い線状の領域であり、そのX線焦点13の長手側からX線管9の外部へ取り出されたX線は断面形状が線状のX線でありラインフォーカスのX線と呼ばれている。一方、X線焦点13の短手側からX線管9の外部へ取り出されたX線は断面形状が矩形又はほぼ円形のX線でありポイントフォーカスのX線と呼ばれている。本実施形態では、図示の通り、ラインフォーカスのX線を取り出すようにしている。
【0027】
2次元ピクセル型検出器12は、平面内でマトリクス状に配列された複数のピクセル(画素)14と、その背面に設けられた回路ボード15とを有している。各ピクセル14はX線を受光して受光量に対応した電気信号を生成する。ピクセル14は、例えば半導体を用いて形成されたフォトカウンティング型のピクセルである。回路ボード15は、各ピクセル14に接続された増幅素子をマトリクス状に備えている。以上により、2次元ピクセル型検出器12は、複数のピクセル14の個々に生成されたX線強度信号を個々に同時に外部へ伝送する。ピクセル12の数は測定の種類に応じて自由に設定できる。本実施形態では、縦×横=512×512個とすることにする。
【0028】
2次元X線検出器12は、画素ごとにX線を検出でき、画素ごとに信号を出力できる構成の検出器であれば、任意の検出器を用いることができる。例えば、特開平6−342098号公報、特開平9−090048号公報、特開2010−038722号公報等に開示されている2次元ピクセル型検出器12や、CCDイメージセンサや、C−MOSイメージセンサ等といった2次元ピクセル型検出器を用いることができる。
【0029】
ゴニオメータ4の入射側アーム8をω軸線を中心としてθ回転させることにより、X線焦点13から出て試料7へ入射するX線の入射角度θを変化させることができる。また、受光側アーム11をω軸線を中心として2θ回転させることにより、2次元ピクセル型検出器12の中心ピクセルが試料7の中心部分を見込む角度θ1を変化させることができる。2次元ピクセル型検出器12が試料7を見込む角度θ1は、ピクセル型検出器12の中心ピクセルが試料7から回折角度θ1で出た回折X線を取込む角度である。
【0030】
X線回折測定が行われている間、試料7へのX線入射角度θは所望の回転速度で連続的又は間歇的に変化させられる。ゴニオメータ4は、X線入射角度θをそのように変化させると共に、ピクセル型検出器12による回折線取込み角度θ1を常にX線入射角度θと同じに変化するように制御する。従って、X線入射角度θに対するピクセル型検出器12の回折線取込み角度2θ(すなわち、ピクセル型検出器12の中心と試料7の中心とを結ぶ線が試料7へ入射するX線の中心線の延長となす角度)は、常に、X線入射角度θの2倍を維持する。つまり、ピクセルX線検出器12は、X線入射角度θの2倍の角度を維持するように、ω軸線を中心としてX線焦点13と同じ角速度で反対方向へ連続的又は間歇的にゴニオメータ4によって移動させられる。
【0031】
制御部3は、例えば、CPU(Central Processing Unit)17、ROM(Read Only Memory)18、RAM(Random Access Memory)19、メモリ20、信号処理部21を有している。これらの各要素は第1通信線としての内部バス23によって互いに接続されている。内部バス23は、命令用バスとデータ用バスとが共通でも良く、それらが互いに別々でも良い。図2に示した測定装置2の電気制御系統は入出力インターフェース29を介して内部バス23に接続されている。また、ディスプレイ、プリンタ等といった表示装置22が、入出力インターフェース29を介して内部バス23に接続されている。
【0032】
測定装置2内のピクセル型検出器12の出力端子は第2通信線としての高速通信用線、例えばカメラリンクケーブル24によって信号処理部21の入力端子に接続されている。カメラリンクは、通信規約が単純である非同期式の入出力インターフェースであり、簡単であるが故にデータを高速で伝送することができる通信方式である。このカメラリンクは、例えば、先頭にクロック信号を含んでいる24ビットのシリアル信号を用いた通信方式であり、先頭のクロック信号によって同期を取る方式である。
【0033】
信号処理部21は、デジタル信号処理に特化したマイクロプロセッサであるデジタル・シグナル・プロセッサ(DSP)や、マイクロコンピュータや、ハードウエア構成の信号処理回路等によって構成される。本実施形態では、XILINX(ザイリンクス)社製のDSPであるVertex(バーテックス)6(商品名)を用いるものとする。DSP21は内部にメモリ25を有しており、そのメモリ25内に記憶されているプログラムソフトに従って必要な処理、本実施形態では円筒面変換処理26及び時間遅延積分処理27の2つの処理を行うようになっている。これらの処理については後述する。メモリ25は、円筒面変換処理26や時間遅延積分処理27による処理後のデータを記憶する記憶領域を含んでいる。
【0034】
制御部3内のメモリ20には、図2に示す測定装置2を用いてX線回折測定を実現するためのプログラムソフトである回折測定プログラム30と、測定によって求められた生のデータを記憶するためのデータ記憶領域31とが設けられている。回折測定プログラム30は、測定によって求められた生のデータに基づいて各種の解析を実現するための解析プログラムも含んでいる。また、データ記憶領域31は解析プログラムに従って実現された解析の結果である解析データを記憶する領域も含んでいる。
【0035】
回折測定プログラム30は、図3に示すように、X線の発生を制御する処理(ステップS2)、ゴニオメータの動作を制御する処理(ステップS3)、装置の安全を管理する処理(ステップS4)、信号処理部21からデータを読み込む処理(ステップS5)、そして、必要なデータに対して画像処理を行ってディスプレイ上に表示したり、プリンタで印字したりする処理(ステップS7、S8)等といった測定を遂行するための各種の処理を実行する。
【0036】
以下、図1に示す信号処理部21によって実現される円筒面変換処理及び時間遅延積分処理について説明する。
(円筒面変換の方式)
図2において、入射X線の中心線R0を含みω軸線に直角な平面が赤道面である。ピクセル型検出器12のX線受光面が赤道面と交わる線L0が検出器上での赤道線である。赤道線L0に直交する線L1が子午線である。回転中心であるω軸線からピクセル型検出器12の子午線L1までの距離N1がカメラ長である。
【0037】
平面である2次元ピクセル型検出器12で得られた画像を、子午線L1で検出面と接し半径がカメラ長N1と等しい円筒面M0に写像する処理が円筒面変換処理である。変換によって得られる画像は、あたかも円筒面上に実際の検出器と同じ大きさのピクセルが並んだ検出器で得られた画像と同じになることが要求される。図4は図2において検出器12の検出面及び円筒面M0を矢印A方向(子午線L1の延長の矢印)から見た状態を示している。図4に示すように、円筒面M0上で1つのピクセルに相当する面積に照射されるX線は、平面上では広がって複数のピクセルに照射されることになり、且つ隣接するピクセルでの計数値は異なっている。このため、円筒面M0上の2次元画像を厳密に得ることは不可能である。
【0038】
円筒面変換に当たっては、ピクセルの素子数と同じ数のセルを持ち、初期値が0(ゼロ)であるメモリ領域(図1の符号25)を用意する。そして、ピクセルで得られた計数値を、そのピクセルの中心に照射されるX線が円筒面M0を通過する位置(図5参照)に相当する場所にあるメモリセル及びその周りに配分することにより、円筒面変換処理が実現される。
【0039】
(配分の方法)
円筒面変換を行ったとき、図6に示すように、平面上での点P1は円筒面上の点Q1に写像される。点の移動距離は画素の大きさとは無関係であるため、円筒面上ではある特定のピクセルに全ての計数値が配分されず、図7に示すように、その近傍の4つのピクセルに配分されることになる。それらのピクセルへの配分率は点の移動距離から計算する。
【0040】
(点の移動距離)
図8(a)及び図8(b)に、カメラ長N1が「R」であるときの、平面上での点P1と円筒面上での点Q1との関係を示す。「a」は、検出器のダイレクトビーム位置P0からの点P1の赤道方向の距離を示しており、「b」はダイレクトビーム位置P0からの点P1の子午線方向の距離を示している。「r」は、ダイレクトビーム位置P0からの点Q1までの円筒面上での弧の長さを示している。
【0041】
画像を円筒面に変換することによって点P1は、
赤道方向で、a−r
子午線方向で、Δb
だけ移動する。これらの移動距離と、点P1の座標及びカメラ長Rとの関係は、

であることから、赤道方向の移動距離をΔLとすると、
ΔL=a−r
=a−RΔ2θ ……(2)
である。
【0042】
また、子午線方向の移動距離Δbは、



となる。
【0043】
(変換後の画像)
円筒面変換を施すと、検出器から得られた画像は図9で示すように変形する。従って、次の処理工程で時間遅延積分処理を行う場合、円筒面変換を行わない場合と同じ足し合わせを行うと、正しい画像が得られない。そのため、図10に示すように、変換後の画像を格納するメモリ領域にはスキャンの逆方向に詰め、子午線方向の長さは元の画像と同じにして、変換によって幅が狭くなり正しい足し合わせでの結果が得られない部分には0(ゼロ)を充填して画像を作る。このとき、変換によって短くなった画像を格納するのに必要な赤道方向のピクセル数をLtとすると、時間遅延積分処理における1列の画像データはLt枚の画像を足し合わせて作る。
【0044】
(計数値配分先の決定)
円筒面変換では、検出器から得た2次元画像の計数値を円筒面用のメモリ領域に配分する。このとき、計数値をどのメモリセルに配分するかは、変換による画素の移動距離で決まる。一方、変換後の画像はメモリ領域のスキャンの逆方向に詰めて格納するため、計数値を配分するセルの決定はそれも考慮して行う。
【0045】
今、検出器の赤道方向のピクセル数を「M」、子午線方向のピクセル数を「N」とし、ピクセル及び画素の座標を図10のように定める。また、ダイレクトビームが照射される位置の座標を、

(m+ε,n+ε) 0≦ε,ε≦1

とし、さらにピクセルの大きさを「s」とすると、中心が平面上の座標

(m+0.5,n+0.5)

にある画素の円筒面変換による移動量を画素の座標系で考えれば、式(2)、(3)から、
【0046】

【0047】

となる。ここで、関数floor(x)を、xを超えない整数を返すものと定義すると、この画素の計数値を配分する先の画素の(隅の)座標は、円筒面上では、
【0048】

【0049】

で得られるm,nを使って、
【0050】
(m,n
(m+1,n
(m,n+1)
(m+1,n+1)
と表すことができる。また、円筒面の赤道方向の長さLtは、
【0051】

となる。
【0052】
(計数値の配分率)
式(4),(5)で表される、変換に伴う画素の移動量の小数部分を次のように定義すると、



移動する画素数と計数値の配分率は図11のようになる。これらの式を全てのmについて事前に計算し表にしておけば、赤道方向の移動距離に関してはその表から直接求めることができる。また、同じことをnについて行えば子午線方向の移動距離も表から求めることができる。しかしながら、それを行うと表があまりにも大きくなるため、本実施形態での円筒面変換は、

(n+ε−n−0.5),(1−cosΔ2θ)

のみの表を作成しておき、子午線方向の移動距離に関しては変換の実行時にその表の値とnの値から、画素の移動先と計数値の配分率を計算する。
【0053】
(時間遅延積分処理)
本実施形態絵は、所定時間ごと、例えば5msごとに図2のピクセル型検出器12から1フレーム分、すなわち1画面分の2次元画像データが一括して出力される。そして、個々の1フレーム分の画像データが上記の円筒面変換処理を受ける。その結果、図12に模式的に示すように、円筒面変換処理を受けた複数の画像データDが図1のメモリ25内に記憶される。
【0054】
時間遅延積分処理部27は、円筒面変換後の1フレーム分の各画像データDを互いに1画素分だけずらせながら、各ピクセル内のデータを積分して行く。これにより、回折角度2θが同じである回折X線強度データが積分、すなわち加算又は蓄積されることになり、結果的に、強度の強い回折線データを得ることが可能となる。時間遅延積分処理後の画像データは、CPU17からの指令に従って、行データ(図12の符号32に相当するデータ)ごとに信号処理部21からバス23へ送り出され、RAM19又はメモリ20へ伝送されて記憶される。
【0055】
本実施形態で用いている図1のコンピュータは、CPU17、バス23等によって構成されたコンピュータである。このコンピュータは図3に示した多種多様な演算制御を担っており、ピクセル型検出器12から送り出される大量のデータから成る画像データを直接に処理することは、データ処理構造上又はデータ転送構造上の制約からみて極めて困難である。
【0056】
しかしながら、本実施形態では、DSPによって構成された信号処理部21をコンピュータの外部に設け、この信号処理部21によってデータ量の大きい画像データを受け取って円筒面変換処理及び時間遅延積分処理の両方を行い、信号処理部21からコンピュータへは、単に画像データの1行分だけのデータが順次に伝送されるだけである。このため、コンピュータは図3の演算制御を行った上でピクセル型検出器12からの画像データをも支障なく高速に処理でき、必要に応じて、図3のステップS7で画像処理を行って、図1の表示装置22、例えばディスプレイやプリンタによって視覚的に表示を行うことができる。
【0057】
以上のように、本実施形態では、演算制御部であるコンピュータの外部に信号処理部21を設け、データ量の大きい画像データはこの信号処理部21が担当し、コンピュータにはデータ量の小さい画像データが伝送されるので、処理するデータ量が非常に大ききくなる処理である円筒変換処理及び時間遅延積分処理の両方をコンピュータを用いて実現できるようになった。
【0058】
そして、円筒面変換処理と時間遅延積分処理との両方を結合させて実現したことにより、X線粉末回折測定において、極めて分解能が高く、しかも強度の強い回折線データを得ることができた。
【0059】
本実施形態において、ゴニオメータ4にはこのコンピュータからファームウエアに対して測角範囲や測角スピード等の必要な情報が送られる。情報を受け取ったファームウエアはその指示に従ってゴニオメータ4を駆動する。ゴニオメータ4に設置されている2次元ピクセル型検出器12は取得したX線強度データを信号処理部21を介してコンピュータに伝送する。
【0060】
コンピュータはゴニオメータ4の他、X線管9を含むX線発生装置や、その他の各装置へ指示を送る。さらに、コンピュータは保安機構からの情報を受け取ったり、場合によっては測定中に、その測定と平行してデータ処理を行う。従って、本実施形態で用いるコンピュータは高性能のコンピュータであり、多面的な演算制御を同時に行うコンピュータである。本実施形態のコンピュータが高性能であるといっても、同時に多面的な制御や解析を行っているため、さらなる高負荷をかけることはコンピュータの動きを遅くし、測定等の速度に影響を及ぼす。
【0061】
他方、高い角度分解能を維持するためには円筒面変換が不可欠である。円筒面変換を行わない場合には、データがボケてブロードになってしまう。円筒面変換を行う場合、従来は1フレーム分のデータ全部をゴニオメータ等のための制御用コンピュータへ送ってそのコンピュータによって処理する必要があった。
【0062】
しかし、測定速度を速め、且つ角度分解能を良くするためには、検出器から複数の1フレーム分のデータを大量に送り出す必要があり、通常のネット(すなわち信号線)ではそのような大量のデータを伝送することができず、従って、測定速度を速めることはできなかった。
【0063】
本実施形態において、例えば、512×512のピクセル数、1ピクセルで4バイトのデータ量、5msの測定間隔で測定が行われるとすると、転送速度は約210Mバイト/秒となる。現在、通常に使用されているLAN(Local Area Network)の速度は100baseである。最新の1000baseの規格でも、実効速度は現実には200Mバイト/秒程度と考えられる。こらは、ハードウエアとTCP/IPのプロトコルの問題で、アプリケーション層では実際には数分の1程度の速度しか出ないためである。従って、現状の通信線によって210Mバイト/秒のような多量のデータ量のデータを伝送することは不可能である。
【0064】
従来のX線回折装置においては、上記のような通信速度の問題を解決しない限り、ボケの無いデータを得るために円筒面変換を行い、且つ速度を速くした測定を行うということができなかった。
【0065】
本実施形態では、検出器側で円筒面変換処理を行い、且つ円筒面変換処理後の複数の1フレーム分のデータに関して時間遅延積分の技術を用いることで、コンピュータへ送るデータのデータ量を減らすことが可能となった。そして、これにより、検出器から出力される膨大なX線強度データを、従来から使用されているコンピュータによって支障なく処理できるようになった。
【0066】
なお、本実施形態では検出器12と信号処理部21との間を高速通信可能なカメラリンクケーブル24で結ぶことにより、膨大なデータ量のデータについての上記の通信速度の問題を解決した。検出器12とコンピュータとの間を全てカメラリンクケーブル24で結べば、通信速度の関係を根本的に解決できるようにも考えられるが、カメラリンク規格は使用するケーブルの長さに制限があり、そのため、検出器12とコンピュータとの間の全てをカメラリンクケーブル24で結ぶことは現実には無理がある。
【0067】
この点に関し、本実施形態は、検出器12とコンピュータとの間に信号処理部21を設け、膨大なデータ量のX線強度データをカメラリンクケーブル24を通して信号処理部21へ伝送し、信号処理部21によってデータ量を減らした上でデータをコンピュータへ伝送するようにした。このため、信号処理部21とコンピュータとを結ぶ信号線は従来の通信線、例えばLANを用いて支障なく行えるようになった。従来の通信線によれば長さの制限は問題とならない。
【0068】
(他の実施形態1)
以上、好ましい実施形態を挙げて本発明を説明したが、本発明はその実施形態に限定されるものでなく、請求の範囲に記載した発明の範囲内で種々に改変できる。
【0069】
例えば、上記の実施形態では、半導体によって形成された複数のピクセルを縦方向及び横方向の両方に並べて成るフォトカウンティング型の2次元ピクセルX線検出器12を用いたが、これに代えて、図13に示すように、2θ回転方向に沿って複数のピクセル14を直線的に並べて成る1次元ピクセル型検出器33を用いることもできる。
【0070】
この1次元ピクセル型検出器33を用いた場合でも、円筒面M0上での写像を求める円筒面変換処理が行われ、さらに円筒面変換処理後の複数の1フレーム分の画像データを1画素分だけずらせながらピクセルデータを積分する時間遅延積分処理の両方が行われる。
【0071】
図2に示した2次元ピクセル型検出器12を用いた場合は、図12に模式的に示したように、図1の信号処理部21から行データ32ごとに画像データを伝送したが、図13に示す1次元ピクセル型検出器33を用いた場合には、行データではなく1つの画素データごとにデータ伝送が行われる。
【0072】
(他の実施形態2)
図1の実施形態ではコンピュータによって構成された制御部3の内部に信号処理部21を格納した。つまり、信号処理部21が内部バス23を通して演算処理部であるCPU17に接続されていた。これに代えて、図14に示すように;
(1)制御部3の外部に信号処理部21を配置し、
(2)ピクセル型検出器12と信号処理部21とをカメラリンクケーブル24のような高速データ通信用線で接続し、
(3)信号処理部21と制御部3とを、内部バス23とコンピュータ用通信線であるLANケーブル28とを接続して成る通信線で接続する
構成とすることもできる。LANケーブル28は、例えばTCP/IP,USB,IEEE1394等の通信規約に従った通信ケーブルである。
【0073】
この実施形態では、カメラリンクケーブル24のような高速データ通信用線が第2通信線として機能し、内部バス23とコンピュータ用通信線であるLANケーブル28とを接続して成る通信線が第1通信線として機能している。
【0074】
(他の実施形態3)
さらには、図15に示すように、検出器16の内部にピクセル型検出器12及び信号処理部21を格納し、ピクセル型検出器12と信号処理部21とをカメラリンクケーブル24のような高速データ通信用線で接続し、信号処理部21と制御部3とをLAN28と内部バス23とを接続して成る通信線で接続する構成とすることもできる。LANケーブル28は、例えばTCP/IP,USB,IEEE1394等の通信規格に従った通信ケーブルである。
【0075】
この実施形態でも、カメラリンクケーブル24のような高速データ通信用線が第2通信線として機能し、内部バス23とコンピュータ用通信線であるLANケーブル28とを接続して成る通信線が第1通信線として機能している。
【符号の説明】
【0076】
1.X線回折装置、 2.測定装置、 3.制御部、 4.ゴニオメータ、 5.試料支持装置、 7.試料、 8.入射側アーム、 9.X線管、 11.受光側アーム、 12.2次元ピクセル型検出器(X線検出器)、 13.X線焦点、 14.複数のピクセル、 15.回路ボード、 16.検出器、 20.メモリ、 21.信号処理部、 22.表示装置、 23.内部バス、 24.カメラリンクケーブル、 25.メモリ、 26.円筒面変換処理部、 27.時間遅延積分処理部、 28.LAN、 32.行データ、 33.1次元ピクセル型検出器、 a.赤道方向の距離、 b.子午線方向の距離、 D.画像データ、 L0.赤道線、 L1.子午線、 M0.円筒面、 N1.カメラ長、 P0.ダイレクトビーム位置、 P1.平面上での点、 Q1.円筒面上の点、 R0.入射X線の中心線、 θ.X線入射角度、 θ1.検出器見込み角度(回折線取込み角度)、 ω.回転軸線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料へ照射されるX線を発生するX線源と、
2次元的に並べられた複数のピクセルを有しており、前記試料から出たX線をそれらのピクセルによって受光してピクセルごとに受光光量を信号として出力し、前記試料に対して所定のカメラ長で配置されたX線検出器と、
前記X線源、前記試料及び前記X線検出器の少なくとも1つを赤道面内で移動させ、且つ前記試料に対する前記X線源の角度及び前記試料に対する前記X線検出器の角度を測角するゴニオメータと、
前記X線源から出て前記試料で回折したX線を前記X線検出器が検出できるように前記ゴニオメータの動作を制御する演算制御部と、
第1通信線を介して前記演算制御部に接続されており、前記X線検出器の出力信号を第2通信線を介して受け取って信号処理を行い処理後の信号を前記第1通信線を通して前記演算制御部へ伝送する信号処理部と、を有し、
前記信号処理部は、
平面である前記X線検出器のX線受光面で得られた複数の1フレーム分の画像データのそれぞれを、前記カメラ長を半径とする円筒面に写像する円筒面変換処理と、
円筒面変換処理後の複数の1フレーム分の画像データを、互いに1画素分ずつずらしながら積算する時間遅延積分処理と、
時間遅延積分処理後の2次元データを前記赤道面に直交する方向である子午線方向の行データごとに前記第1通信線へ伝送する処理と、を行う
ことを特徴とするX線回折装置。
【請求項2】
試料へ照射されるX線を発生するX線源と、
1次元的に並べられた複数のピクセルを有しており、前記試料から出たX線をそれらのピクセルによって受光してピクセルごとに受光光量を信号として出力し、前記試料に対して所定のカメラ長で配置されたX線検出器と、
前記X線源、前記試料及び前記X線検出器の少なくとも1つを赤道面内で移動させ、且つ前記試料に対する前記X線源の角度及び前記試料に対する前記X線検出器の角度を測角するゴニオメータと、
前記X線源から出て前記試料で回折したX線を前記X線検出器が検出できるように前記ゴニオメータの動作を制御する演算制御部と、
第1通信線を介して前記演算制御手段に接続されており、前記X線検出器の出力信号を第2通信線を介して受け取って信号処理を行い処理後の信号を前記第1通信線を通して前記演算制御部へ伝送する信号処理部と、を有し、
前記信号処理部は、
平面である前記X線検出器のX線受光面で得られた複数の1ライン分の画像データのそれぞれを、前記カメラ長を半径とする円筒面に写像する円筒面変換処理と、
円筒面変換処理後の複数の1ライン分の画像データを、互いに1画素分ずつずらしながら積算する時間遅延積分処理と、
時間遅延積分処理後の1次元データを1画素ずつ前記通信線へ伝送する処理と、を行う
ことを特徴とするX線回折装置。
【請求項3】
所定のX線露光時間内に前記複数のピクセルのそれぞれに蓄積された1フレーム分の信号を前記X線検出器から前記信号処理部へ前記第2通信線を介して一括して伝送することを特徴とする請求項1又は請求項2記載のX線回折装置。
【請求項4】
前記第1通信線はコンピュータの内部バス、又はコンピュータの内部バスとコンピュータ用通信線とを接続して成る通信線であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1つに記載のX線回折装置。
【請求項5】
前記第2通信線は高速データ通信用線であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1つに記載のX線回折装置。
【請求項6】
前記高速データ通信用線は、カメラリンク規格に則ったケーブルであるカメラリンクケーブルであることを特徴とする請求項5記載のX線回折装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−88094(P2012−88094A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−233168(P2010−233168)
【出願日】平成22年10月16日(2010.10.16)
【出願人】(000250339)株式会社リガク (206)
【Fターム(参考)】