説明

X線小角散乱測定装置及びその測定方法

【課題】 2次元平面におけるナノサイズの粒子の大きさを測定するとともに、その粒子の2次元平面での平面的分布を測定するX線小角散乱測定装置を提供する。
【解決手段】本発明によれば,X線を放射するX線源と、X線源から放射されるX線を、単色化された平行光にして出射させるモノクロメーターと、出射されるX線が線状領域を照射するように、モノクロメーターのX線の出射領域を規定するスリットと、試料を搭載可能な平面ステージを前記試料がX線に照射される位置に搬送する搬送部と、X線の照射をうけた前記試料の線状領域から散乱されて形成されるX線散乱像を検出する2次元型検出器と、
を備え、前記搬送部が前記線状領域の長手方向と交差する方向に前記平面ステージを搬送するX線小角散乱測定装置が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、X線小角散乱測定装置並びにその装置を用いて試料を測定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ナノ粒子やナノ構造体等を利用した発光デバイスが注目されている。例えば、半導体ナノ粒子を蛍光体として利用し、この半導体ナノ粒子を分散させて平面体を形成することにより発光デバイスを作成する試みが行われている。CdSe等のII−VI族化合物半導体やInP等のIII−V族化合物半導体が、このデバイスの材料として研究され(例えば、非特許文献1及び2参照)、これらの半導体ナノ粒子を蛍光体として利用する場合、半導体ナノ粒子のサイズが小さくなるほど蛍光体の蛍光波長が短波長となることが知られている(例えば、非特許文献2参照)。このため、半導体ナノ粒子を分散させて形成された発光デバイスの場合、その発光特性の評価として、ナノ粒子のサイズの測定とともにその分布を測定することが重要となる。
【0003】
このナノ粒子のサイズを測定する方法として、粒子のサイズや形状に応じて生じるX線の散乱を利用するX線小角散乱法が知られている。例えば、基板上に作成されたナノ粒子等の試料の形状、分布、厚さ等の3次元的な情報を得るため、基板上の試料に対してX線を微小角度で照射し、前記試料から散乱されるX線を2次元型の検出器を用いて測定する反射X線小角散乱測定装置において、前記検出器6面上で測定されるX線の強度の一部を減衰させる減衰機構7を設けることが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−163260号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Olga I.Micic,Calvin J.Curtis,Kim M.Jones,Julian R.Sprague,and Arthur J.Nozik,Synthesis and Characterization of InP Quantum Dots,「The Journal of Physical Chemistry」,Vol.98,No.19,1994,p.4966−4969
【非特許文献2】C.B.Murray,D.J.Norris,and M.G.Bawendi,Synthesis and Characterization of Nearly Monodisperse CdE(E=S,Se,Te) Semiconductor Nanocrystallites,「Journal of the American Chemical Society」,1993,115,p.8706−8715
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、半導体ナノ粒子を分散させた平面体を測定する場合、上記の反射X線小角散乱測定装置は、2次元検出器を用いるものの、入射X線付近の散乱X線を測定する装置であるため、その測定範囲が十分でない場合がある。このため、測定範囲の拡大が望まれる。2次元平面(例えば、平面体)に分散しているナノサイズの粒子の大きさを測定し、その平面内で粒子がどのように分布しているかを評価する装置が望まれる。
【0007】
この発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、2次元平面におけるナノサイズの粒子の大きさを測定するとともに、その粒子の2次元平面での平面的分布を測定する装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明によれば、X線を放射するX線源と、X線源から放射されるX線を、単色化された平行光にして出射させるモノクロメーターと、出射されるX線が線状領域を照射するように、モノクロメーターのX線の出射領域を規定するスリットと、試料を搭載可能な平面ステージを前記試料がX線に照射される位置に搬送する搬送部と、X線の照射をうけた前記試料の線状領域から散乱されて形成されるX線散乱像を検出する2次元型検出器と、を備え、前記搬送部が前記線状領域の長手方向と交差する方向に前記平面ステージを搬送するX線小角散乱測定装置が提供される。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、X線を放射するX線源と、X線源から放射されるX線を、単色化された平行光にして出射させるモノクロメーターと、出射されるX線が線状領域を照射するように、モノクロメーターのX線の出射領域を規定するスリットと、試料を搭載可能な平面ステージを前記試料がX線に照射される位置に搬送する搬送部と、X線の照射をうけた前記試料の線状領域から散乱されて形成されるX線散乱像を検出する2次元型検出器と、を備え、前記搬送部が前記線状領域の長手方向と交差する方向に前記平面ステージを搬送するので、前記2次元型検出器が検出したX線散乱像におけるX線強度分布に基づいて、散乱角度に対するX線散乱強度分布を、前記線状領域における試料の各位置毎に求めることができる。このため、前記線状領域の長手方向と交差する方向に試料を移動させて測定することにより、前記試料内の2次元的なX線散乱強度分布を求めることができる。従って、ナノサイズの粒子等が分散された試料を測定することにより、試料内の各位置におけるナノサイズの粒子の大きさを測定できるとともに、その粒子の試料内での2次元的分布を測定できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】この発明の実施形態に係るX線小角散乱測定装置の光学系を説明するための図である。
【図2】この発明の実施形態に係るX線小角散乱測定装置の光学系を説明するための図である。
【図3】この発明の実施形態に係るX線小角散乱測定装置の外観図である。
【図4】この発明の実施形態に係るX線小角散乱測定装置の外観図である。
【図5】この発明の実施形態に係るX線小角散乱測定装置の制御部のブロック図である。
【図6】X線小角散乱法を用いて、試料1を測定したときのX線散乱強度を示す図である。
【図7】X線小角散乱法を用いて、試料2を測定したときのX線散乱強度を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
この発明のX線小角散乱測定装置は、X線を放射するX線源と、X線源から放射されるX線を、単色化された平行光にして出射させるモノクロメーターと、出射されるX線が線状領域を照射するように、モノクロメーターのX線の出射領域を規定するスリットと、試料を搭載可能な平面ステージを前記試料がX線に照射される位置に搬送する搬送部と、X線の照射をうけた前記試料の線状領域から散乱されて形成されるX線散乱像を検出する2次元型検出器と、を備え、前記搬送部が前記線状領域の長手方向と交差する方向に前記平面ステージを搬送することを特徴とする。
【0012】
この発明のX線小角散乱測定装置は、ナノサイズの粒子や構造体が含まれる構造物の測定に用いることが好ましい。この構造物は、特に平面状の構造物が好ましく、また、10nm以下の大きさの粒子、構造体が好ましい。また、この発明のX線小角散乱測定装置は、粒子等を液体又は固体に分散させた構造物の測定に用いてもよい。例えば、半導体ナノ粒子の測定に用いてもよく、液体及び固体(例えば、ゲル、流動体)に半導体ナノ粒子が分散されたものを測定対象としてもよい。
【0013】
また、この発明のX線小角散乱測定装置は、X線小角散乱法を採用し、散乱角度がおよそ10度以下で現れる小角領域で用いることができる。小角領域は、結晶構造に対応して現れる中角での回折現象と異なり、粒子のサイズや形状に応じて散乱が現れる。例えば、試料に拡散された半導体ナノ粒子中の電子密度が分かっている場合には、粒子のサイズ、ナノ粒子の空間密度が分かるため、X線小角散乱法はデバイスの評価を行うのに最適な手法となる。
【0014】
例えば、この発明のX線小角散乱測定装置は、2次元マトリックス状に分散されたナノ粒子から構成されるデバイス(半導体ナノ粒子が分散された発光素子など)の測定に用いることができる。この場合、ナノ粒子の大きさ、平面内での分布(デバイス内の平面的分布)を測定することができるため、信頼性に優れた発光デバイスが容易に製造できるようになる。また、この発明のX線小角散乱測定装置を用いることにより、デバイスを破壊することなく測定することができ、半導体ナノ粒子の構造に影響を与えずに測定することができる。つまり、この発明のX線小角散乱測定装置は、非破壊検査として優れる。X線小角散乱法では、散乱強度のピークに対応する角度と粒子の大きさに明確な関係があるので、小角領域においてX線の散乱強度を測定することにより、試料に含まれる粒子の大きさを求めることができる。従って、発光デバイスの平面に分散された粒子の大きさを測定し、平面内において、どのような大きさの粒子がどのように分布しているかを評価することにより、発光デバイスとしての評価(例えば、波長特性の評価)が可能となる。
【0015】
また、この発明のX線小角散乱測定装置は、他のX線反射(又は透過)に関する測定方法と兼用される装置であってもよい。例えば、X線装置回折法と兼用される装置であってもよい。ただし、Bragg角に相応する面間隔を持つ格子面が乱れなく等幅で有限個存在するとの仮定が成立する場合にX線装置回折法が有効であるため、測定対象(例えば、結晶)内に歪が存在する場合には、X線装置回折法に関する以下の式(1)の適用に限界が生じる。
D=K・λ/B・cosθ・・・式(1)
(Dは測定対象に含まれる粒子の大きさ[nm]、λは回折に用いられるX線の波長[nm]、θはBragg角[deg]、BはBragg角における回折ピークの半値幅[deg]を表わす。また、Kは加重係数であり、測定対象に含まれる粒子が理想的な球状を持つと仮定し、Dを体積加重平均径として平均値を求める場合にはKは0.94の値である。)
【0016】
一般に、半導体ナノ粒子は一般的な結晶と比べ表面近傍原子の割合が増えるため、表面近傍では結晶中と異なる静電ポテンシャルの影響からその結晶構造に歪みを有する可能性がある。その場合、数式(1)において、半値幅が広がる原因として、結晶サイズの減少と結晶のゆがみの双方が存在することとなるため、測定対象がデバイスに分散された半導体ナノ粒子である場合、半導体ナノ粒子へのX線装置回折法の適用に限界が生じる。このため、半導体ナノ粒子の測定では、粒子サイズを簡便かつ定量的に計測する方法としてX線小角散乱法が好ましいことになる。
【0017】
この発明の実施形態において、前記搬送部と前記2次元型検出器とを制御する制御部をさらに備え、前記制御部は、前記試料へのX線の入射角が一定の角度を保つように前記搬送部に前記平面ステージを搬送させ、前記搬送部が一定距離移動する毎に、前記2次元型検出器に前記X線散乱像を検出させてもよい。この実施形態によれば、前記試料の線状領域における長手方向の位置毎に散乱角度に対するX線散乱強度分布を算出するためのデータを、前記搬送部が一定距離移動する毎に自動的に取得する装置を提供できる。このため、前記試料内の2次元的なX線散乱強度分布を求めることができる。従って、例えば、試料内のナノサイズの粒子の大きさを測定できるとともに、その粒子の試料内での2次元的分布を測定できる。
【0018】
また、この発明の実施形態において、前記一定距離が前記スリット幅の大きさ以上であってもよい。この実施形態によれば、前記搬送部がスリット幅の大きさ以上の距離を移動する毎に、制御部が前記2次元型検出器に前記X線散乱像を検出させるので、前記搬送部の移動の前後においてX線により線状領域で照射される試料の位置が異なる。このため、試料の位置が重複しないX線散乱像のデータを取得できる。従って、より正確な2次元的なX線散乱強度分布を求めることができる。また、この実施形態によれば、少なくともスリットの幅単位で、X線散乱強度分布を算出するためのデータを取得できる。
【0019】
ここで、スリットの幅は、スリットがX線の出射領域を規定する幅であり、スリットがX線を出射させる領域を含む。つまり、X線がスリットを構成する材料を透過する領域を含み、物理的なスリットの幅で規定されるものではない。例えば、スリットがX線を減衰させるフィルターを含む構成であっても、スリットからX線が出射される領域の幅(短辺方向)がスリットの幅を構成する。
【0020】
また、スリットの幅は、スリットがX線により試料に投影されたときの幅であってもよい。この場合、X線源及びモノクロメーターとステージ上の試料との位置関係からX線により試料に投影されるスリットの幅を演算して、スリットの幅としてもよい。
【0021】
また、この発明の実施形態において、前記X線散乱像のX線強度分布及び前記2次元型検出器内の位置情報に基づいて、散乱角度に対するX線散乱強度分布を、前記試料の線状領域における長手方向の位置毎に演算する演算部を備えてもよい。
ここで、前記試料の線状領域における長手方向の位置は、スリットがX線により試料に投影されたときの、スリットの長手方向における試料の位置であり、1次元的な位置である。
この実施形態によれば、前記試料の線状領域における長手方向の各位置が示す散乱角度に対するX線散乱強度分布を自動的に演算する装置を提供できる。
【0022】
また、この発明の実施形態において、前記X線散乱像のX線強度分布及び前記2次元型検出器内の位置情報並びに前記搬送部が搬送した位置情報に基づいて、散乱角度に対するX線散乱強度分布を、前記試料の平面的な分布として演算する演算部を備えてもよい。この実施形態によれば、前記試料の線状領域における長手方向の各位置が示す散乱角度に対するX線散乱強度分布だけでなく、搬送部が一定距離搬送した距離単位の試料のX線散乱強度分布を自動で演算する装置を提供できる。
【0023】
また、この発明の実施形態は、前記X線散乱像のX線強度分布及び前記2次元型検出器内の位置情報に基づいて、散乱角度に対するX線散乱強度分布を、前記試料の線状領域における長手方向の位置毎に演算し、さらに、前記搬送部が搬送した位置情報に基づいて前記試料の平面的な分布として演算する演算部であってもよい。
【0024】
また、この実施形態において、前記制御部は、前記2次元型検出器に、バックグラウンドX線の強度を検出させ、前記演算部は、前記X線散乱像のX線強度から前記バックグラウンドX線の強度を減算して、試料に対するX線散乱強度分布を演算してもよい。この実施形態によれば、前記2次元型検出器が検出したX線散乱像のX線強度からより正確なX線散乱強度分布を得ることができる。
【0025】
また、この実施形態において、前記2次元型検出器は、2次元に画素が配列されたCCDであってもよいし、また、イメージングプレートであってもよい。前記2次元型検出器は、X線強度を測定でき、2次元的に検出器が配置された装置であればよい。
【0026】
また、この発明の試料のX線小角散乱を測定する測定方法は、この発明のX線小角散乱測定装置を用いて、前記試料へのX線の入射角が一定の角度を保つように前記搬送部に前記平面ステージを搬送させ、前記搬送部が一定距離移動する毎に、前記2次元型検出器に前記X線散乱像を検出させて、前記試料のX線小角散乱を測定することを特徴とする。
この発明によれば、前記試料の線状領域における長手方向の位置毎に、散乱角度に対するX線散乱強度分布を算出するためのデータを、前記搬送部が一定距離移動する毎に取得するので、前記試料内の2次元的なX線散乱強度分布を求めることができる。従って、例えば、試料内におけるナノサイズの粒子の大きさを測定できるとともに、その粒子の試料内での2次元的分布を測定できる。
【0027】
また、この発明の試料に含まれる粒子の大きさを測定する方法は、この発明のX線小角散乱測定装置を用いて、前記X線散乱像を前記2次元型検出器に検出させ、前記X線散乱像のX線強度分布及び前記2次元型検出器内の位置情報に基づいて、散乱角度に対するX線散乱強度分布を、前記試料の線状領域における長手方向の位置毎に演算することを特徴とする。
この発明によれば、前記2次元型検出器が検出したX線散乱像におけるX線強度分布に基づいて、散乱角度に対するX線散乱強度分布を、前記線状領域における試料の各位置毎に求めて試料に含まれる粒子の大きさを測定できる。このため、前記線状領域の長手方向と交差する方向に試料を移動させて測定することにより、前記試料内の2次元的なX線散乱強度分布を求めて試料を解析できる。従って、ナノサイズの粒子等が分散された試料を測定することにより、試料内の各位置におけるナノサイズの粒子の大きさを解析できるとともに、その粒子の試料内での2次元的分布を解析できる。
【0028】
また、この発明の試料を解析する解析方法に係る実施形態は、この発明の試料のX線小角散乱を測定する測定方法に加えて、前記測定方法により測定された前記X線散乱像のX線強度分布及び前記2次元型検出器内の位置情報並びに前記搬送部が搬送した位置情報に基づいて、散乱角度に対するX線散乱強度分布を、前記試料の平面的な分布として演算して、試料に含まれる粒子の大きさを測定してもよい。この実施形態によれば、試料が示す2次元的なX線散乱強度分布を求めることができる。
【0029】
以下、X線小角散乱法を説明するとともに、図面に示す実施形態を用いて、この発明を詳述する。
【0030】
(実施形態に係る装置)
この発明の実施形態に係るX線小角散乱測定装置について、図1〜図4を参照して説明する。図1及び図2に、この実施形態に係るX線小角散乱測定装置の光学系を説明するための概念図を示す。図3及び4に、この実施形態に係るX線小角散乱測定装置の外観図を示す。図1は、この装置の光学系の斜視図であり、図2は、この装置の光学上面図である。また、図3は、この装置の上面図であり、図4は、この装置の側面図である。
【0031】
図1に示すように、この実施形態に係るX線小角散乱測定装置は、X線源1と、モノクロメーター2と、スリット3と、2次元型検出器6とを備える光学系により構成されている。
【0032】
X線源1は、線焦点のX線源であり、X線管を用いている。この実施形態では、X線がスリット3を介して試料5を線状の領域で照射するため、線焦点のX線源を用いるとよい。例えば、X線管銅の特性X線であるKα線を放射する線焦点のX線管を用いる。X線源から放射されたX線は、モノクロメーター2において平行光にするため、モノクロメーター2の特性と考慮して、適切な発散角を有するX線源を選定するとよい。
【0033】
また、モノクロメーター2は、X線源から放射されるX線を単色化させるとともに平行光にして、X線を出射させている。この実施形態では、モノクロメーター2として、多層膜型のX線ミラーが用いられている。モノクロメーター2には、X線源から放射されるX線の波長特性に応じて市販のものを選定すればよい。例えば、多層膜ミラーなどのモノクロメーターを用いることができる。
【0034】
また、スリット3は、モノクロメーターから出射されるX線が試料上で線状領域を照射するように、X線の出射領域を規定している。この出射領域は、X線が試料5に入射する角度ωとスリットの幅dにより定まっている。つまり、試料5に入射するX線の実効的な光線幅をdSとすると、光線幅dSは、以下の式で表すことができる。
S=d/sinω・・・(式2)
この光線幅は、試料内の各点のA方向の測定領域幅(角度ωがある一定値のときの、2次元型検出器6の測定幅)を決定することになる。このため、スリットの幅d(開口幅)を変更できるように構成することにより、X線の光線幅dを調整できるとよい。例えば、スリット3を取り替え可能な装置としてもよいし、スリット3の開口部を覆うようにしてスライドする板を設けて、X線の光線幅dを調整できるように構成してもよい。
【0035】
また、2次元型検出器6は、2次元に画素(ピクセル)が配列されたCCDが用いられ、このCCDの画素は、図1のA及びB方向にマトリックス状に配置されている。2次元型検出器6は、試料5がX線に照射されたときに試料5から散乱されるX線の強度を検出したり、バックグラウンドX線の強度を検出したりする機能を備えている。2次元型検出器6は、各画素が検出したX線強度値と各画素の位置情報とを出力するので、この実施形態に係る装置は、X線散乱強度を位置A,B双方に対する分布を持つ関数としてマトリックスデータとして検出できる。
なお、2次元型検出器6には、例えば、イメージングプレートを用いてもよい。
【0036】
図1及び2に示されるように、2次元型検出器6は、画素(ピクセル)が配列する向き(図1のB方向)がスリットの長手方向と平行になるように配置されている。このように配置すると、2次元検出器6が検出するX線は試料5から散乱されるX線であるため、2次元検出器6におけるB方向の各ピクセルの位置は、試料におけるY方向の各位置と一致することになる。また、2次元検出器6におけるA方向の各画素の位置は、散乱角2θに対応することになる。このため、2次元検出器6の各画素が検出したX線の強度から、試料におけるY方向の各位置からのX線散乱強度を容易に算出することができる。つまり、各位置が示す散乱角度に対するX線散乱強度分布を容易に算出することができる。
【0037】
なお、2次元型検出器6は、ステージ4(又は試料5)との間に、縦発散防止用のソーラースリットを導入してもよい。これにより、試料から縦方向への散乱角度が大きくなり、試料内各点からの散乱がY方向で混成する場合、X線散乱の混成によるピーク算出の誤りを防ぐことができる。ソーラースリットの位置は、2次元型検出器6とステージ4(又は試料5)との間であればよく、試料がX線散乱をした後の個所であればよい。
【0038】
また、この実施形態に係る装置は、図3及び図4に示すように、試料を搭載可能なステージ4と、ステージ4を、試料5がX線に照射される位置に搬送する搬送部70とを備えている。
【0039】
ステージ4は、板状体で形成され、その一方の面に試料5を保持可能なように構成されている。図3及び図4に示す実施形態では、試料5はステージ4を構成する板状体の表面(図3では側面)にホルダー41によって保持するように構成され、ステージ4は搬送部(X軸スライダーを含む)70上に配置されて固定されている。
【0040】
また、搬送部70は、X軸スライダー70と、Y軸スライダー72と、回転部74と、2次元検出部回転部76と、スライダー78とで構成されている。X軸スライダー70及びY軸スライダー72並びに回転部74は、ステージ4を搬送するものであり、2次元検出部回転部76及びスライダー78は、2次元検出器6を搬送するものである。
【0041】
また、X軸スライダー70は、モーター71に駆動されてステージ4を搬送するように構成されている。さらに、X軸スライダー70はモーター73に駆動されて動作(移動)するY軸スライダー72に設置されている。X軸スライダー70は、ステージ4に搭載された試料5にX線が照射されるようにその位置調整をするために設けられ、Y軸スライダー72は、ステージ4上に搭載された試料5とX線ユニット10及び2次元型検出器6との高さ位置を調整するために設けられている。X軸スライダー70及びY軸スライダー72を移動させることにより、試料5の所望の位置にX線が照射されるように調整する。
【0042】
また、回転部74は、モーター75により駆動されて回転するように構成され、装置本体100に固定されたX線ユニット10(X線源1が収納されたユニット)に対して回転可能に構成されている。回転部74は、ステージ4上に搭載された試料5にX線が入射する角度ω(上記式(2))を調整するために設けられている。回転部74にY軸スライダー72が設置されているので、回転部74を回転させることにより、ステージ4、X軸スライダー70及びY軸スライダー72を介して、X線ユニット10から照射されたX線が試料5に所望の角度ωで入射するように調整される。
【0043】
回転部74により調整される角度ωは、X軸スライダー70及びステージ4とモノクロメーター2により平行光にされ放射されるX線とが平行となる位置から1度程度、回転可能であるように構成されている。X線小角散乱測定法は、散乱X線が試料内を通過することなく2次元検出器6に到達することが必要であるため、角度ω、つまりX線が試料5に入射する角度ωが1度以下であるようにする。このため、例えば、X軸スライダー70及びステージ4がX線ユニット10(X線源1が収納されたユニット)から照射されるX線と平行となるように構成され、回転部が1度程度回転可能なように構成されればよい。
【0044】
また、2次元検出部回転部76は、ステージ5が設置された回転部74と分離して回転するように構成され、2次元型検出器6がスライダー78を介して2次元検出部回転部76上に設けられている。2次元検出部回転部76は、回転機構(モーターを含む)751により駆動されて回転し、回転機構751により2次元検出器6の位置が調整可能に構成されている。この2次元検出部回転部76の回転は、その回転中心が回転部74と同じ点を中心にして回転するように構成され(その回転中心を共用し)、その回転により、ステージ4上の試料5と2次元型検出器6との位置がずれないように形成されている。
【0045】
また、スライダー(搬送部)78は、2次元型検出器用回転部76上に設置され、スライダー(搬送部)78上に2次元型検出器6が設けられている。
【0046】
2次元検出部回転部76及びスライダー(搬送部)78は、試料5からのX線散乱角度が大きく、2次元検出器6の画素の配列範囲を超えてX線散乱ピークが現れる場合、X線散乱ピークがこの配列範囲におさまるように2次元検出器6の位置を調整するため、配置されている。2次元型検出器用回転部76及びスライダー(搬送部)78を回転又は移動させて、2次元検出器6が所望の位置に調整される。
【0047】
ここで、搬送部70(X軸スライダー70、Y軸スライダー72)とスリット3との関係について説明する。X線の出射領域を規定しているスリット3は、その長手方向が図4に示すS方向(Y軸スライダー72の移動可能な方向と平行な方向)となるように配置されているため、X線が試料5を照射する線状の領域(X線によるスリット3の投影像)の長辺方向(図4のS2方向)とX軸スライダー70の移動可能な方向(図4のX方向)とが直交している。また、スリット3は、その長手方向(図4のS方向)と2次元検出器6の画素が並ぶ方向(図4のB方向)とが平行するように配置されている。このため、上記で説明したように、試料のY方向と2次元検出器6のB方向とが対応する関係となっている。
【0048】
X線の出射領域を規定しているスリットの長手方向は、図4に示すS方向と一致しなくともよいが、X線が試料5を照射する線状の領域(X線によるスリット3の投影像)の長辺方向とX軸スライダー70の移動可能な方向とが交差する方向にあるように、スリットの長手方向又はX軸スライダー70の移動可能な方向を設定するとよい。X軸スライダー70を移動させることにより、スリットの長手方向の幅で試料5を走査してX線強度を測定できる(スリットの長手方向以外の方向に向かって試料が散乱するX線強度を測定できる)。この場合、上記で説明したX方向とY方向が直交する関係にないので、2次元検出器6の各ピクセルが検出したX線の強度から、試料におけるY方向の各位置からのX線散乱強度を算出するときに、この角度関係を考慮して算出する必要がある。
【0049】
(制御部及び演算部)
この実施形態に係る装置は、図4に示すように、装置本体部100に制御部8を備えている。また、制御部8は、装置外部にあるCPU(演算部)9に電気的に接続されている。この装置は、制御部8とCPU(演算部)9とが、上記で説明した動作を自動的に行い、X線散乱強度分布を演算して、試料を解析するように構成されている。図5に制御部8とCPU(演算部)9との接続関係(ブロック図)を示す。図5は、実施形態に係るX線小角散乱測定装置の制御部のブロック図である。
【0050】
図5に示すように、制御部8は、配線を介して、X軸モータ71、Y軸モータ73、θ軸モータ75、2次元検出器モータ751、2次元検出器6、X線源ユニット10(X線源1)に接続され、これらの動作の制御を行うよう構成されている。また、制御部8は、配線を介して、CPU9に接続されている。X軸モータ71、Y軸モータ73、θ軸モータ75、2次元検出器モータ751は、それぞれX軸スライダ70、Y軸スライダ72、θ軸回転部74、2次元検出器回転部76に接続され、これらを駆動するように構成されている。
【0051】
制御部8は、前記試料へのX線の入射角が一定の角度を保つように、X軸スライダ70にステージを搬送させる。つまり、制御部8は、θ軸モータ75を停止させ回転部74を回転させない状態で(一定の角度で固定した状態で)、X軸モータ71を駆動し、X軸スライダ70を移動させる。また、制御部8は、X軸スライダ70を一定距離移動させる毎に、2次元型検出器6に試料5から散乱されたX線散乱像を検出させる。これにより、制御部8は、X軸スライダ70に応じたX線散乱像のX線強度分布データを得る。
【0052】
CPU(演算部)9は、2次元型検出器からX線散乱像のX線強度分布データを受信して、2次元型検出器内の画素(ピクセル)の位置情報と各画素のX線強度値とから、X線により照射された線状領域の長手方向における試料5内各位置のX線強度、つまり、試料の各位置が示す散乱角度に対するX線散乱強度分布を、演算する。
【0053】
制御部8がX軸スライダ70を移動させて一定距離移動する毎に2次元検出器にX線強度を検出させている場合、CPU(演算部)9は、2次元型検出器からX線散乱像のX線強度分布データを受信するとともに、制御部8からX軸スライダ70の搬送距離等の位置情報を受信して、2次元型検出器内の画素の位置情報及び各画素のX線強度値並びにX軸スライダ70の位置情報から、試料5のX線により照射された線状領域の線方向と試料が搬送された方向との各位置が示す散乱角度に対するX線散乱強度分布を演算する(つまり、散乱角度に対するX線散乱強度分布を、前記試料の平面的な分布として演算する)。
【0054】
なお、X線散乱強度分布を演算するにあたり、バックグラウンドX線(バックグラウンド放射線ともいう)の強度を用いて演算するように、X線小角散乱測定装置を構成してもよい。例えば、制御部8は、2次元型検出器6に、バックグラウンドX線の強度を検出させ、CPU9は、2次元型検出器6が検出したX線散乱像のX線強度から前記バックグラウンドX線の強度を減算して、試料が示すX線散乱強度分布を演算してもよい。
また、この実施形態では、制御部8及びCPU9が装置を自動的に動作させ演算させているが、この動作、演算を手動で行ってもよい。例えば、以下に説明する装置の動作、使用方法を手動で行ってもよい。
【0055】
(実施形態に係る装置の動作及び使用方法)
次に、図3及び図4を参照して、この実施形態に係る装置の動作、使用方法について説明する。
【0056】
まず、試料5をホルダー41によりステージ4に固定する(ステップ1)。
【0057】
次いで、X線が試料5に照射されるように、X軸スライダー70、Y軸スライダー72で試料5の位置を調整する。また、X線が小角で試料5に入射するように回転部74を調整する(ステップ2)。このとき、試料5が散乱するX線を2次元検出器6が検出するように、2次元検出部回転部76及びスライダー78の位置を調整する。このステップ2までがこの装置の準備段階である。
【0058】
次いで、この実施形態に係る装置を用いて、試料5へのX線の入射角が一定の角度を保つように、X軸スライダー(搬送部)70を搬送させ、X軸スライダー(搬送部)70を一定距離移動させる(ステップ3)。ここで、X軸スライダー(搬送部)70を移動させる一定距離は、スリットの幅以上とする。つまり、スリットの幅単位で、X軸スライダー(搬送部)70を移動させる。この実施形態の場合、スリットの幅は、スリットがX線により試料に投影されたときの幅を意味している。
【0059】
次いで、2次元型検出器6に試料5から散乱されたX線散乱像を検出させる(ステップ4)。これにより、スリットによりX線が試料を照射した幅単位で、前記試料の線状領域における長手方向(図1のX方向)の位置毎のX線散乱強度データを得ることができる。このデータは、散乱角度に対するX線散乱強度分布を算出するためのデータとなる。
【0060】
次いで、上記と同様に、前記試料へのX線の入射角が一定の角度を保たれるように、X軸スライダー(搬送部)70を一定距離移動させ(ステップ5)、その後、2次元型検出器6に試料5から散乱されたX線の強度を検出させる(ステップ6)。つまり、上記のステップ3及び4と同じ動作を装置に行わせる。これにより、上記ステップ4及び5で測定した位置から一定距離離れた位置で、試料の各位置の散乱角度に対するX線散乱強度分布を算出するためのデータを得ることができる。
【0061】
次いで、X軸スライダーの移動距離が測定したい範囲を超えるまで、上記ステップ5及び6(つまり、ステップ3及び4)の動作を繰り返す(ステップ7)。これにより、試料での平面的なX線散乱強度分布を算出するためのデータを得ることができる。なお、ステップ3において、X軸スライダー(搬送部)70を一定距離移動させているが、このステップ3を行わず、ステップ4を実施してもよい。
【0062】
上記のステップ1〜ステップ7の方法で得たデータから、試料を解析する。つまり、X線が散乱される角度は、試料の電子密度の差がある領域(例えば、試料に含まれる粒子のサイズ)に依存することを利用して、試料に含まれる構造物の大きさを算出する。
なお上記で説明したように、この実施形態に係る装置は、試料のY方向と2次元検出器6のB方向とが対応する関係となっているので、ステップ4及び5(又はステップ5及び6)の段階で、前記X線散乱像のX線強度分布及び前記2次元型検出器内の位置情報に基づいて、散乱角度に対するX線散乱強度分布を前記試料の線状領域における長手方向の位置毎に演算して試料を解析してもよい。また、上記ステップ7が終了した段階で、記X線散乱像のX線強度分布及び前記2次元型検出器内の位置情報(例えば、ピクセルの各位置)並びに前記搬送部が搬送した位置情報(上記の一定距離の倍数や各ステップでのステージの位置等)に基づいて、散乱角度に対するX線散乱強度分布を前記試料の平面的な分布として演算して試料を解析してもよい。
【0063】
(半導体ナノ粒子へのX線小角散乱法の適用)
次に、この実施形態に係るX線小角散乱法を用いて、半導体ナノ粒子を測定する場合について説明する。
一般に、X線小角散乱法は、均一な媒質中に分散された1〜10nm程度の大きさの粒子が存在するとき、その粒子の電子密度と媒質の電子密度の差によって、X線散乱が生じることを利用する方法である。このX線散乱について、X線が散乱される角度は、電子密度の差がある領域、すなわち媒質中の粒子の大きさに依存する。このため、粒子の大きさが大きいほど散乱角は小さくなる。このX線小角散乱法を適用するに当たり、粒子・媒質はともにそれぞれの領域内での電子密度が均一であることが必要とされる。このため、粒子・媒質について、晶質・非晶質のいずれであるか、固体・液体等のどの相に属するのかにより、X線小角散乱法の適用が問われることはなく、電子密度が均一であれば、1〜10nm程度の大きさの粒子を測定できる。
【0064】
従って、半導体ナノ粒子を測定する場合でも、半導体ナノ粒子と媒質との間で電子密度差があれば、半導体ナノ粒子の粒子の大きさに依存して散乱のピークが現れる。X線源として、銅の特性X線であるKα線を用いれば、その波長は0.152nmであるので、2θが1度から10度の角度で測定を行うと仮定すれば、ほぼ1−10nmの大きさを持つ粒子の測定がX線小角散乱法によって可能である。
【0065】
(実証実験)
図6及び図7にX線小角散乱法を用いて半導体デバイスの粒子の大きさを測定した例を示す。図6及び図7は、X線小角散乱法を用いて、ヘキサン溶媒中にInPナノ粒子が分散させた試料を測定したときのX線散乱強度を示す図である。図6及び図7は、それぞれ試料1、試料2をX線小角散乱法により測定したものであり、これらの測定では、X線として銅の特性エックス線のうちKα線を用いた。なお、このX線の波長は0.152nmである。
図6及び図7に示すように、半導体ナノ粒子からの散乱により、それぞれ3.2度および2.8度まで大きく幅広いピーク値を持つことが分かる。
表1に、これらの試料について、図6及び図7のX線小角散乱法から求めた粒子サイズ(体積荷重分布の平均値)を示す。表の右欄は、これらの試料の蛍光波長である。
【0066】
【表1】

【0067】
表1に示すように、III−V族の代表的な化合物であるInPでは、粒子サイズが3.4nmから3.8nmと変化すると、蛍光波長が530nmから620nmと変位することが理解できる。表1から、X線小角散乱法を用いた粒子サイズの測定は、光波長を事前に評価する手法として利用することができることが理解できる。
【0068】
以上のように、この実施形態に係るX線小角散乱測定装置は、2次元型検出器内の画素の位置情報及び各画素が検出したX線強度分布から、X線により線状領域に照射された試料の各位置が示す散乱角度に対するX線散乱強度分布を求めることができる。例えば、InPナノ粒子が分散させたデバイスを試料として測定することにより、このデバイスにおける2次元平面でのInPナノ粒子の大きさを測定することができ、また、その粒子の平面的分布を測定することができる。
【0069】
以上、実施形態を挙げて、この発明を説明したが、この発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。例えば、光学系はモノクロメーターとスリットについて説明したが、そのほかの光学系(ミラー、プリズム、真空の空間等)が含まれてもよい。また、実施形態で示した種々の特徴は、互いに組み合わせることができ、1つの実施形態中に複数の特徴が含まれている場合、そのうちの1又は複数個の特徴を適宜抜き出して、単独で又は組み合わせて、この発明に採用することができる。
【符号の説明】
【0070】
1 X線源
10 X線源ユニット
2 モノクロメーター
3 スリット
4 試料ステージ
5 試料
6 2次元X線検出器
7 搬送部
70,72,78 スライダー(搬送部)
74,76 回転部(搬送部)
71,73,75,79 モーター(搬送
8 制御部
9 CPU(演算部)
100 装置本体部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線を放射するX線源と、
X線源から放射されるX線を、単色化された平行光にして出射させるモノクロメーターと、
出射されるX線が線状領域を照射するように、モノクロメーターのX線の出射領域を規定するスリットと、
試料を搭載可能な平面ステージを前記試料がX線に照射される位置に搬送する搬送部と、
X線の照射をうけた前記試料の線状領域から散乱されて形成されるX線散乱像を検出する2次元型検出器と、
を備え、
前記搬送部が前記線状領域の長手方向と交差する方向に前記平面ステージを搬送することを特徴とするX線小角散乱測定装置。
【請求項2】
前記搬送部と前記2次元型検出器とを制御する制御部をさらに備え、前記制御部は、
前記試料へのX線の入射角が一定の角度を保つように前記搬送部に前記平面ステージを搬送させ、
前記搬送部が一定距離移動する毎に、前記2次元型検出器に前記X線散乱像を検出させる、請求項1に記載のX線小角散乱測定装置。
【請求項3】
前記一定距離がスリットの幅の大きさ以上である請求項2に記載のX線小角散乱測定装置。
【請求項4】
前記X線散乱像のX線強度分布及び前記2次元型検出器内の位置情報に基づいて、散乱角度に対するX線散乱強度分布を、前記試料の線状領域における長手方向の位置毎に演算する演算部を備える請求項1に記載のX線小角散乱測定装置。
【請求項5】
前記X線散乱像のX線強度分布及び前記2次元型検出器内の位置情報並びに前記搬送部が搬送した位置情報に基づいて、散乱角度に対するX線散乱強度分布を、前記試料の平面的な分布として演算する演算部を備える請求項2又は3に記載のX線小角散乱測定装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記2次元型検出器に、バックグラウンドX線の強度を検出させ、
前記演算部は、前記X線散乱像のX線強度から前記バックグラウンドX線の強度を減算して、試料に対するX線散乱強度分布を演算する請求項4又は5に記載のX線小角散乱測定装置。
【請求項7】
前記2次元型検出器は、2次元に画素が配列されたCCD又はイメージングプレートである請求項1〜6のいずれか1つに記載のX線小角散乱測定装置。
【請求項8】
請求項1に記載のX線小角散乱測定装置を用いて、前記試料へのX線の入射角が一定の角度を保つように前記搬送部に前記平面ステージを搬送させ、前記搬送部が一定距離移動する毎に、前記2次元型検出器に前記X線散乱像を検出させて、前記試料のX線小角散乱を測定する測定方法。
【請求項9】
請求項1に記載のX線小角散乱測定装置を用いて、前記X線散乱像を前記2次元型検出器に検出させ、前記X線散乱像のX線強度分布及び前記2次元型検出器内の位置情報に基づいて、散乱角度に対するX線散乱強度分布を、前記試料の線状領域における長手方向の位置毎に演算して試料に含まれる粒子の大きさを測定する方法。
【請求項10】
請求項8に記載の測定方法により測定された前記X線散乱像のX線強度分布及び前記2次元型検出器内の位置情報並びに前記搬送部が搬送した位置情報に基づいて、散乱角度に対するX線散乱強度分布を、前記試料の平面的な分布として演算して、試料に含まれる粒子の大きさを測定する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−185643(P2011−185643A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−49184(P2010−49184)
【出願日】平成22年3月5日(2010.3.5)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】