説明

X線撮像装置

【課題】全面撮像と部分撮像との相互の切替に関する操作性を向上すること。
【解決手段】本実施形態に係るX線撮像装置は、X線源1と、X線検出器5と、X線源から被検体へ照射するX線の照射野を限定するために開口可変のX線絞り3と、少なくとも第1、第2の状態から何れかの状態を選択操作可能なフットスイッチユニット20と、第1の状態が持続されている期間にX線を第1の照射野で被検体に照射するようにX線照射とX線絞りとを制御し、第2の状態が持続されている期間に第1の照射野より狭い第2の照射野でX線を被検体に照射するようにX線照射とX線絞りとを制御する撮像制御部9とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、X線撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
カテーテル術などのX線透視下での処置においては長時間のX線照射が必要とされる。このため防護板で保護したり、撮像レートを落としたりという工夫がなされているがその被曝低減効果は十分ではない。
【0003】
これに対し、ROI撮像という技術が知られている。これはオペレーターの指定する部分領域に限定してX線撮像を行うものである。しかし、全面撮像と部分撮像(ROI撮像ともいう)との切り替えにはその切替指示操作とともに、X線絞りの開口調整操作、そしてそれらが操作が完了してX線照射指示の操作を行うことが必要であり、また部分撮像から全面撮像に戻す際にも同様に面倒な操作が必要とされ、臨床上使いにくいという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−47034号公報
【特許文献2】特開平8−266535号公報
【特許文献3】特開2003−116845号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
目的は、全面撮像と部分撮像との相互の切替に関する操作性を向上することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施形態に係るX線撮像装置は、X線源と、前記X線源に対向配置され、被検体を透過したX線を検出するためのX線検出器と、前記X線源から前記被検体へ照射するX線の照射野を限定するために開口可変のX線絞りと、第1、第2の状態の一方から他方に選択操作可能なスイッチ部と、前記第1の状態が持続されている期間に前記X線を第1の照射野で前記被検体に照射するように前記X線源からのX線照射と前記X線絞りとを制御し、前記第2の状態が持続されている期間に前記第1の照射野より狭い第2の照射野で前記X線を前記被検体に照射するように前記X線源からのX線照射と前記X線絞りとを制御する撮像制御部とを具備する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本実施形態に係るX線撮像装置の構成を示す図である。
【図2】図1のX線源を含む撮像機構の構造例を示す図である。
【図3】図1のX線絞りに装備される可能遮蔽板を示す図である。
【図4】図1のフットスイッチユニットの構成例を示す図である。
【図5】図1のフットスイッチユニットの他の構成例を示す図である。
【図6】図1のフットスイッチユニットのさらに他の構成例を示す図である。
【図7】図1の撮像制御部による撮像処理の手順を示す流れ図である。
【図8】図7のS05、S16の表示例を示す図である。
【図9】図1の撮像制御部による撮像処理の他の手順を示す流れ図である。
【図10】図1の撮像制御部による撮像処理の他の手順を示す流れ図である。
【図11】図1の撮像制御部による撮像処理の他の手順を示す流れ図である。
【図12】図1の画像処理部及び撮像制御部によるROI位置の更新処理の手順を示す流れ図である。
【図13】図1の画像処理部及び撮像制御部によるROI位置の更新処理の他の手順を示す流れ図である。
【図14】バイプレーン型のX線撮像装置の構造例を示す図である。
【図15】本実施形態に係るバイプレーン型X線撮像装置に適応されたフットスイッチユニットの一例を示す図である。
【図16】図15の全面撮像(F/L)スイッチ74の押下に対応する画像表示の例を示す図である。
【図17】図15の部分撮像(F/L)スイッチ75の押下に対応する画像表示の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら本実施形態に係わるX線撮像装置を説明する。
図1、図2に示すように、X線源1は、C形アーム31の一端に取り付けられる。Cアーム31は、天井懸下アーム32及びスライダ33を介して、撮像固定点(アイソセンタ)で交差する直交3軸(X,Y,Z)に関して個別に回転自在に支持される。X線検出器5は、Cアーム31の他端に取り付けられる。X線検出器5は、X線源1に対して対向する。X線検出器5は、イメージインテンシファイアとTVカメラとの組み合わせ構造でもよいし、入射X線を直接的又は間接的に電荷に変換する複数の検出素子(画素)が2次元状に配列されてなる平面検出器(フラット・パネル・ディテクタ)であってもよい。撮像に際しては、X線源1とX線検出器5との間に、寝台天板上に載置された状態で被検体が配置される。
【0009】
X線源1は、高電圧発生器2に接続される。高電圧発生器2はX線源1の陰極陽極間に高電圧(管電圧)を印加する。また高電圧発生器2はX線源1のフィラメントに電流(フィラメント電流)を供給する。それによりX線源1からX線が発生される。高電圧発生器2の管電圧とフィラメント電流とは個別に可変である。撮像制御部9は高電圧発生器2に第1、第2制御信号を供給する。第1制御信号により高電圧発生器2がX線源1に印加する管電圧が変化される。第2制御信号により高電圧発生器2がX線源1に供給するフィラメント電流が変化される。管電圧及びフィラメント電流の変化は、被検体へ照射されるX線の照射線量を変化させる。
【0010】
X線絞り3がX線源1のX線放射窓に装備される。X線絞り3は、X線源1から被検体へ照射するX線の照射野を限定する。図3に示すように、X線絞り3は、個別可動式の複数の遮蔽板14〜17を備える。遮蔽板14〜17の枚数及び移動方式のバリエーションによりX線照射野は矩形、X軸に対して傾斜した矩形又は円形に制限される。説明の便宜上ここでは、遮蔽板14〜17は、4枚であり、X線照射野は矩形であるとして説明する。遮蔽板14〜17は典型的にはX線遮蔽性を有する鉛板である。遮蔽板14〜17は本来的にはX線の線質を変更するためのX線に対する半透明性を有するウェッジ、例えばモリブデン含有板であっても良い。絞り制御部10は、X線絞り3に装備された遮蔽板14〜17の移動を個別に制御する。それにより遮蔽板14〜17に囲まれた開口の中心位置及び開口の大きさ、例えば開口の対角線長や径を任意に変更することができる。
【0011】
なお、X線検出器5の受光面の一部分に制限してX線を照射する撮像を部分撮像又はROI撮像という。ROIはRegion of Interestの略称であり、つまり高い関心を寄せて注視している撮像域内の一部領域と定義され得る関心領域である。このときの照射野を第2照射野という。照射野とは典型的にはアイソセンタを通りX線中心軸に直交する撮像基準面に対してX線束が交わる領域の大きさとして定義される。また第2照射野に対応する開口を部分開口という。第2照射野よりも広い照射野を第1照射野という。典型的には第1照射野は、X線検出器5の受光面全域に対応する。ここでは第1照射野は、X線検出器5の受光面全域に対応する領域として説明するが、第2照射野よりも広ければ、受光面全域に対応する領域よりも狭い領域であっても良い。第1照射野での撮像を全面撮像という。第1照射野に対応する開口を全面開口という。また第1照射野内での第2照射野の中心位置及び大きさは絞り制御部10の制御下で任意に可変である。
【0012】
画像記憶部8はX線検出器5で撮像された画像データを記憶する。心電波形計測器(ECG)6は、被検体の心電波形を計測し、心電波形を解析して心拍時相を表すデータを出力する。心拍時相とは例えばR波から次のR波までの期間(一心拍期間)の各位置を百分率で正規化した指標である。画像記憶部8に記憶される画像データには個々に撮像時刻に対応する心拍時相データが関連付けられる。画像記憶部8に記憶された画像データは、画像処理部11を介してモニター13に表示される。モニター13は、図2に示した撮像機構とともに例えばカテーテル処置室内に設置される。
【0013】
カテーテル処置室の床面上にはフットスイッチユニット20が配置される。フットスイッチユニット20はカテーテル処置を実施している医師自身が足により踏付操作することによりX線照射を伴うX線撮像の開始と終了とを指示するために設けられる。このフットスイッチユニット20は、ニュートラル状態から、第1の状態又は第2の状態に選択的に遷移することができるよう構成されている。典型的には、図4に示すように、第1、第2の2種類のフットスイッチ21、22がフットスイッチユニット20に装備される。もちろんフットスイッチユニット20はフットスイッチ21、22の他にスイッチを有していてもよい。第1のフットスイッチ21が踏付られたとき、スイッチボックス25では第1の状態が選択される。第2のフットスイッチ22が踏付られたとき、スイッチボックス25では第2の状態が選択される。第1、第2のフットスイッチ21、22のいずれも踏付られていないとき、スイッチボックス25では第1、第2いずれでもないニュートラルの状態が選択される。
【0014】
フットスイッチユニット20は第1、第2の状態を選択することができる限りにおいて、第1、第2の2種類のフットスイッチ21、22を設ける構造には限定されない。例えば、図5に示すように、単一のフットスイッチ23を設けて、フットスイッチ23が最下まで完全に踏み下げられたとき(全押しのとき)、スイッチボックス25では第1の状態が選択され、フットスイッチ23が途中まで踏み下げられたとき(半押しのとき)、スイッチボックス25では第2の状態が選択される。フットスイッチ23から足を離して最上部に復帰されたとき、ニュートラルの状態が選択される。また図6に示すように、フットスイッチユニット20は単一のシーソー式スイッチ24を有しても良い。シーソー式スイッチ24が左側に傾けられたとき、スイッチボックス25では第1の状態が選択され、シーソー式スイッチ24が右側に傾けられたとき、スイッチボックス25では第2の状態が選択される。フットスイッチ24から足を離して水平に復帰されたとき、ニュートラルの状態が選択される。等価機能を有する限りフットスイッチユニット20の構造は任意である。ここでは図4に示した第1、第2の2種類のフットスイッチ21、22を装備したフットスイッチユニット20を例に説明する。
【0015】
撮像制御部9は、フットスイッチユニット20の第1フットスイッチ21が継続的に踏み付けられている期間には、全面撮像を実行するために、高電圧発生部2を制御してX線を照射させ、それとともにX線絞り3を制御して開口を全開する。また、撮像制御部9は、フットスイッチユニット20の第2フットスイッチ22が継続的に踏み付けられている期間には、部分撮像を実行するために、高電圧発生部2を制御してX線を照射させ、それとともにX線絞り3を制御して開口を狭く絞る。第1、第2フットスイッチ21、22の何れかの単一操作により、X線照射が開口変更を伴って全面撮像と部分撮像とを瞬時に切り替えることを可能とする。近年の血管内治療の発達により、X線照射時間が長くなってきている。臨床現場からは被曝低減が要望されているが、このように単一操作による部分撮像と全面撮像との切り替えは、処置時間の短縮、そしてそれに伴う造影剤注入量の低減、そしてなによりも被曝低減を実現できる。
【0016】
図7を参照して、全面撮像と部分撮像との動作手順について詳細に説明する。初期的にはX線絞り3の開口は全開の状態に設けられる。撮像制御部9は、手技開始以後適時に医師により図8左側に示すように第1フットスイッチ21が踏まれるのを待機する(S01)。それをトリガとして撮像制御部9はX線発生を開始させ被検体にX線を照射させるために高電圧発生部2を制御する(S02)。X線は第1照射野で被検体に照射される。X線照射は第1フットスイッチ21から足を離して(S07)、ニュートラルの状態に復帰するまで継続される。X線照射が継続されている期間中にはX線検出器5で画像データが一定周期で繰り返し取得される(S03)。取得された画像データは画像記憶部8に記憶されるとともに(S04)、画像処理部11を経由してモニター13にライブで表示される(S05)。画像データはそれぞれ撮像時に対応する心拍位相のデータを関連付けられて記憶される。第1フットスイッチ21を踏んでいる期間中はX線絞り3の開口は全開であるので、全面撮像が繰り返し実行され、モニター13には動画として表示される。
【0017】
上記画像取得(S03)−画像表示(S05)の処理は第1フットスイッチ21から足を離す(S06)まで繰り返される。第1フットスイッチ21から足を離した時(S06)、撮像制御部9はX線の発生を停止させX線照射を停止させるために高電圧発生部2を制御する(S07)。それにより全面撮像は停止される。全面撮像が停止されたとき、撮像制御部9は全面撮像期間の最後に取得された全面画像のモニター13への表示を保持させるために画像記憶部8及び画像処理部11を制御する(いわゆるラストイメージホールド機能)。撮像制御部9は、検査/術式終了の指示が入力されないとき(S08)、第1、第2フットスイッチ21、22のいずれかが医師により踏まれてニュートラル状態から第1、第2のいずれかの状態に遷移するのを待機する。
【0018】
次に、オペレーターはモニター13に表示保持されている全面画像上で関心点として例えばカテーテルの先端位置をマウス等を有するROI設定操作部12を介して指定する。その後、医師により第2フットスイッチ22が踏まれてオン状態に遷移されたとき(S11)、それをトリガとして撮像制御部9は絞り制御部10に、関心点を中心とした所定の大きさの関心領域(ROI)の範囲情報を開口変更を開始させるための制御信号とともに供給する。この制御信号により絞り制御部10は、絞り3の開口を全面開口からROIに対応する部分開口まで変更させるために図3右側に示す通り絞り14〜17の移動を開始する(S12)。ROIに対応する部分開口が確保された時点で、絞り14〜17の移動は停止される。
【0019】
開口変更開始と同期して、撮像制御部9はX線発生を開始させ被検体にX線を照射開始させるために高電圧発生部2を制御する(S13)。このように第2フットスイッチ22がオン状態になった時点で、開口変更が開始され、それとともにX線照射が開始される。換言すると、ROIに対応する部分開口が確保される前段階であって、第2フットスイッチ22を踏んだ後からX線照射が開始されライブ画像を視認することができる。第2フットスイッチ22を踏んでから、ROIに対応する部分開口が確保されるまでライブ画像の確認を待機する必要がない。
【0020】
X線照射野は全面に対応する第1照射野から徐々に狭くなり最終的に第2照射野で被検体に照射される。X線照射開始と同期して、X線検出器5による画像データの取得が開始される(S14)。取得された部分画像データは画像記憶部8及び画像処理部11を経由してモニター13に動画としてライブ表示される(S16)。
【0021】
ライブ表示される部分画像は、画像処理部11により、図8の右側に示すように、直前の全面撮像期間に取得され記憶されている全面画像上に位置整合して合成、ここでは重ねられる(superimpose)(S15)。なお、絞り3の開口が全面開口からROIに対応する部分開口まで変更している最中であっても、画像処理部11により、ROIに対応する範囲の画像(部分画像)がトリミングされ、全面画像に重ねられる。部分画像に合成される全面画像は、再生動画であっても良いし、動画を構成する複数の静止画の中の特定の1フレームの静止画、例えば直前の全面撮像期間における最終フレームの静止画であっても良い。再生全面画像を部分画像に合成するとき、全面画像を心拍同期のもとで再生することが好ましい。心拍同期再生により、全面画像の心拍位相をライブの部分画像の心拍位相と整合させることができる。
【0022】
部分撮像に際しては、撮像制御部9は、関心領域の位置及び大きさに関する情報を自動露光制御部(ABC;Automatic Bright Control)7に供給する。自動露光制御部7は、検出器5の出力から関心領域に対応するデータを抽出し、その露光量を表す平均値等を閾値に比較し、その比較結果を撮像制御部9に供給する。
【0023】
上記画像取得(S14)−画像表示(S16)の処理は第2フットスイッチ22から足を離す(S17)まで繰り返される。第2フットスイッチ22から足を離した時(S17)、撮像制御部9はX線の発生を停止させX線照射を停止させるために高電圧発生部2を制御する(S18)。それにより部分撮像は停止される。部分撮像が停止されたとき、撮像制御部9は部分撮像期間の最後に取得された部分画像をそれに合成された全面画像とともにモニター13に表示保持させるために画像記憶部8及び画像処理部11を制御する。
【0024】
また撮像制御部9は部分撮像が停止された時、絞り制御部10を制御して、絞り3の開口を部分開口から全面開口まで自動的に復帰させる(S19)。この自動復帰により、第1フットスイッチ21のオン操作の直後から全面画像を取得することができる。しかし、図9に示すように、全面撮像終了直後に、絞り3の開口を全面開口から部分開口に自動的に復帰させる手順を否定しない(S20)。また図10に示すように、部分撮像及び全面撮像の終了直後に、自動的な開口変更を行わない手順を否定するものでもない(S20)。図10の例では、全面撮像を断続的に繰り返す場合、また部分撮像を断続的に繰り返す場合には必要な開口で必要な照射野の画像を即時に取得することができる。
【0025】
医師は手技が進むにつれ、カテーテルを動かす。動かした後の領域に関心領域を移動させ、関心点(関心領域)を随時変更する。また、医師は任意のタイミングで第1フットスイッチ21を押すことが可能であり、この時には絞りは全開し、検出器全面にX線が照射され、全面のX線画像が収集・表示される。
【0026】
上述の通り、医師によりマウスやタッチパネルを介して関心点が全面画像上に指定されると、その関心点を中心として所定の大きさで関心領域が設定される。しかし関心領域の位置及び大きさをデフォルト(プリセット)して関心点の指定を省略するようにしても良い。またマウスやタッチパネルを介して関心点を指定する代わりに、オペレーターがレーザーポイントなどの遠隔操作リモコンを用いて指定するようにしてもよい。関心領域の大きさは、オペレーターの指示に従って任意に変更可能である。さらに全面画像の全範囲をあらかじめ格子状に複数の関心領域候補を用意しておいて、それら候補のいずれかをオペレーターが選択するようにしてもよい。
【0027】
また画像処理部11において、造影画像を処理して、カテーテル先端、ステント、ガイドワイヤ先端、肺静脈入り口などあらかじめ指定した関心対象に類似する形状を自動抽出し、それらを収容する位置及び大きさで関心領域候補を発生して枠線として全面画像上に表示し、その可否をオペレーターに促すようにしてもよい。この場合、複数のカテーテルを用いた術式のときには、複数のカテーテル先端を自動的に抽出して、複数の関心領域候補を発生し、それら複数の関心領域候補の中から唯一の関心領域の選択をオペレーターに促すようにしてもよい。さらに唯一の関心領域の選択をも自動化する手法として、他種類のモダリティ画像、例えばCT画像から肺静脈を同定し、最も近い関心領域候補を唯一の関心領域として自動選択するようにしてもよい。ホールドされた単一の全面画像上で関心点を指定する代わりに、動画上で指定することは、動きのある臓器でも視野を逃すことが無くなる点で有利である。過去に使った関心領域の位置及び大きさを再現するようにしてもよい。
【0028】
図11に示すように、第2フットスイッチ22を押した時、撮像制御部9は、ROIが設定済みであるか否かを判断する(S21)。ROIが設定済みであるとき、撮像制御部9は、部分撮像を開始する。ROIが設定されていないとき、全面撮像を実行させる。
【0029】
図12には、画像処理部11による関心領域の自動更新処理手順について示している。ROIを設定した時の全面画像と、現在の全面画像とからそれぞれROIに対応する部分画像を取り出し(S31、S33)、それぞれからカテーテル像を抽出して二値化し(S32、S34)、それらの類似度を計算する(S35)。類似度は例えば差分の絶対値合計として計算される。類似度が所定の閾値と比較され(S36)、類似度が閾値よりも高いとき、つまりカテーテル像の変位が少ないとき、ROIの再設定は不要と判断される(S37)。類似度が閾値以下のとき、つまりカテーテル像の変位が大きいとき、ROIの再設定が必要と判断され、カテーテルに対するROIのずれが大きいことを表す警告メッセージがモニタ13に表示され(S38)、そして類似度が高くなる方向を計算し(S39)、類似度が閾値よりも高くなる位置にROIを自動的に再設定する(S40)。なお、図13に示すように、類似度が低いとき、全面画像を新たに取得して(S41)、当該新たな全面画像に対して所定のサーチ範囲内でROIを移動しながらカテーテルに関する二値画像を発生し、ROIを設定した時の全面画像に由来するカテーテルに関する二値画像との類似度が最大値を示すROI位置を探索する(S42)。探索したROIを新たなROIとして決定する(S43)。
【0030】
全面撮像と部分撮像とは同一の撮像条件で実施してもよいが、撮像制御部9で次の通り相違させても良い。総被曝が全面撮像時よりも低下すればよいので部分撮像でのX線量は全面撮像時のそれよりも増やしてもよい。部分撮像では散乱線が減少するため全面撮像に比べて少し暗くなるので、全面撮像のそれよりも管電流、管電圧、X線のパルス幅の少なくとも一つを高くして線量を増やす。またはX線条件は変えずに部分撮像時のゲインを全面撮像のそれよりも高くして画像を明るくするようにしてもよい。また部分撮像時にはカテーテルのみ見えればよいので、管電圧を上げ、管電流とパルス幅とを下げ、又はさらに硬い線質にするフィルタに変更して、被曝を低減する。散乱線分を補償する、画像ゲインをあげる等画像処理条件を全面撮像時と部分撮像時とで相違させるようにしてもよい。
【0031】
部分画像の表示方法としては、上述では、部分画像を全面画像に重ねて表示するように説明したが、部分画像だけを表示し、遮蔽した領域は黒化して表示するようにしてもよい。また部分画像だけを、全面画像と同じマトリクスサイズまで拡大して表示するようにしてもよい。また部分画像を全面画像に重ねて表示するに際して、いずれか一方の画像を白黒反転して表示するようにしてもよい。さらに部分画像を全面画像に重ねて表示するに際して、部分画像を半透明にして表示しても良い。
【0032】
上述では、第2フットスイッチ22を離したときに、部分撮像が終了すると説明したが、Cアーム31の移動を検知したとき、部分撮像を自動的に終了し、全面撮像に自動的に切り替えるようにしてもよい。Cアーム31を移動前の元位置に戻した場合は、移動前の元の関心領域を再現する。
【0033】
全面撮像と部分撮像とを、X線照射と開口変更とを伴って単一操作で切り替える技術的思想は上述したシングルプレーンタイプだけでなく、図14に示すバイプレーンタイプにも適用できる。周知の通り、バイプレーンタイプのX線診断装置では、天板に仰向けに載置される被検体に対して正面(フロンタル)と側面(ラテラル)との2方向から撮像が可能な装置である。図15には、バイプレーンタイプのX線診断装置に好適なフットスイッチユニット71を例示している。フットスイッチ72がオン状態に操作されたとき、側面側の全面撮像は実行されず、正面側の全面撮像が実行される。フットスイッチ73がオン状態に操作されたとき、正面側の全面撮像は実行されず、側面側の全面撮像が実行される。フットスイッチ72、73の間に配置されるフットスイッチ74がオン状態に操作されたとき、図16に示すように、側面側の全面撮像と正面側の全面撮像との両方が実行される。これら全面撮像に係るフットスイッチ72、73、74から少し離間して例えばそれらの右側に部分撮像に係るフットスイッチ75が配置される。フットスイッチ75がオン状態に操作されたとき、図17に示すように、側面側の部分撮像と正面側の部分撮像との両方が実行される。このように使用頻度が高いと考えられるフットスイッチを絞り、その数を最小限に抑えることで、誤操作を抑制し、操作性を向上させることができる。
【0034】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0035】
1…X線源、2…高電圧発生器、3…X線絞り、5…X線検出器、6…心電波形計測器(ECG)、7…自動露光制御部、8…画像記憶部、9…撮像制御部、10…絞り制御部、11…画像処理部、13…モニター、20…フットスイッチユニット、21…第1フットスイッチ、22…第2フットスイッチ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線を照射するX線源と、
前記X線源に対向配置され、被検体を透過したX線を検出するためのX線検出器と、
前記X線源から前記被検体へ照射するX線の照射野を限定するために開口可変のX線絞りと、
第1、第2の状態の一方から他方に選択操作可能なスイッチ部と、
前記第1の状態が持続されている期間に前記X線を第1の照射野で前記被検体に照射するように前記X線源からのX線照射と前記X線絞りとを制御し、前記第2の状態が持続されている期間に前記第1の照射野より狭い第2の照射野で前記X線を前記被検体に照射するように前記高電圧発生部と前記X線絞りとを制御する撮像制御部とを具備することを特徴とするX線撮像装置。
【請求項2】
前記第1の照射野に対応する第1画像に前記第2の照射野に対応する第2画像を合成する画像処理部をさらに備えることを特徴とする請求項1記載のX線撮像装置。
【請求項3】
前記画像処理部は前記第2の状態が持続されている期間に前記第1の照射野に対応する第1画像を動画又は静止画として前記第2の照射野に対応する第2画像に合成することを特徴とする請求項2記載のX線撮像装置。
【請求項4】
前記画像処理部は、前記第1画像の輝度レベルと前記第2画像の輝度レベルとを略等価に揃えるように前記第1画像と前記第2画像との一方の画像処理条件を他方の画像処理条件と相違させることを特徴とする請求項2記載のX線撮像装置。
【請求項5】
前記第1の状態が持続されている期間の前記X線の照射線量に対して、前記第2の状態が持続されている期間の前記X線の照射線量が多いことを特徴とする請求項1記載のX線撮像装置。
【請求項6】
前記第1の状態が持続されている期間に前記X線源に印加される管電圧に対して、前記第2の状態が持続されている期間に前記X線源に印加される管電圧が高いことを特徴とする請求項1記載のX線撮像装置。
【請求項7】
前記第1の照射野は前記X線絞りの略全開の開口に対応し、前記第2の照射野は前記X線絞りの部分的な開口に対応することを特徴とする請求項1記載のX線撮像装置。
【請求項8】
前記撮像制御部は、前記被検体に対して前記X線源が所定の撮像角度に位置するときに前記第2の照射野が所定の位置及び大きさに設定するよう前記X線絞りの開口を制御することを特徴とする請求項1記載のX線撮像装置。
【請求項9】
前記第2の照射野は、前記第1画像上で指定された関心領域に応じて設定されることを特徴とする請求項1記載のX線撮像装置。
【請求項10】
前記撮像制御部は、前記第2画像内における前記関心領域の像の位置に応じて前記第2の照射野の位置を移動するよう前記X線絞りの開口を制御することを特徴とする請求項9記載のX線撮像装置。
【請求項11】
前記撮像制御部は、前記第2画像内における前記関心領域の像の変位が所定距離を超えるとき、前記第2の状態から前記第1の状態に切り替えることを促すためのメッセージを視覚、聴覚又はその組み合わせにより出力するための制御信号を出力することを特徴とする請求項9記載のX線撮像装置。
【請求項12】
前記撮像制御部は、前記第2の状態が解除されたとき、前記X線絞りの開口を前記第1の照射野に対応する開口に変更させるよう前記X線絞りを制御することを特徴とする請求項1記載のX線撮像装置。
【請求項13】
X線を照射するX線源と、
前記X線源に対向配置され、被検体を透過したX線を検出するためのX線検出器と、
前記X線源から前記被検体へ照射するX線の照射野を限定するために開口可変のX線絞りと、
操作者によりオン/オフ操作される第1のスイッチと、
前記操作者によりオン/オフ操作される第2のスイッチと、
前記第1のスイッチのオン状態が持続されている期間に前記X線を第1の照射野で前記被検体に照射するように前記X線源からのX線照射と前記X線絞りとを制御し、前記第2のスイッチのオン状態が持続されている期間に前記第1の照射野より狭い第2の照射野で前記X線を前記被検体に照射するように前記X線源からのX線照射と前記X線絞りとを制御する撮像制御部とを具備することを特徴とするX線撮像装置。
【請求項14】
X線を照射するX線源と、
前記X線源に対向配置され、被検体を透過したX線を検出するためのX線検出器と、
前記X線源から前記被検体へ照射するX線の照射野を限定するために開口可変のX線絞りと、
操作者によりオン/オフ操作されるスイッチと、
前記スイッチがオフ状態からオン状態に切り替え操作された時に前記X線の発生が開始されるとともに前記X線絞りの開口の変更が開始されるように前記X線源からのX線照射と前記X線絞りとを制御する撮像制御部とを具備することを特徴とするX線撮像装置。
【請求項15】
X線を照射する第1X線源と、
前記第1X線源に対向配置され、被検体を透過したX線を検出するための第1X線検出器と、
前記第1X線源から前記被検体へ照射するX線の照射野を限定するために開口可変の第1X線絞りと、
X線を照射する第2X線源と、
前記第2X線源に対向配置され、前記被検体を透過したX線を検出するための第2X線検出器と、
前記第2X線源から前記被検体へ照射するX線の照射野を限定するために開口可変の第2X線絞りと、
操作者によりオン/オフ操作される第1のスイッチと、
前記操作者によりオン/オフ操作される第2のスイッチと、
前記第1のスイッチのオン状態に持続されている期間に前記X線を第1の照射野で前記被検体に照射するように前記第1、第2X線源からのX線照射と前記第1、第2X線絞りとを制御し、前記第2のスイッチのオン状態に持続されている期間に前記第1の照射野より狭い第2の照射野で前記X線を前記被検体に照射するように前記第1、第2X線源からのX線照射と前記第1、第2X線絞りとを制御する撮像制御部とを具備することを特徴とするX線撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−75782(P2012−75782A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−225730(P2010−225730)
【出願日】平成22年10月5日(2010.10.5)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【出願人】(594164531)東芝医用システムエンジニアリング株式会社 (892)
【Fターム(参考)】