説明

X線撮影装置

【課題】透視画像中の任意の位置を基準として視野を変更することが可能なX線撮影装置を提供する。
【解決手段】実施形態のX線撮影装置は、撮影部と、変更部と、指定部と、制御部とを有する。撮影部は、被検体の透視画像を取得するものであり、X線源と、X線絞りと、検出器とを有する。X線絞りは、X線源から出力されたX線の照射範囲を変更可能に構成されている。検出器は、被検体を透過したX線を検出する。変更部は、透視画像の視野を変更する。指定部は、透視画像中の位置を指定する。制御部は、この指定位置を中心として透視画像の視野を変更するように変更部を制御し、かつ、この視野の変更に応じてX線の照射範囲を変更するようにX線絞りを制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明の実施形態はX線撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
X線診断装置は、被検体を透過したX線を検出して被検体内を画像化する装置である。X線診断装置は、たとえばアブレーション治療において、体内部位をリアルタイムで観察するために用いられる。このようなリアルタイムでの動画観察を「透視」と呼び、この動画像を「透視画像」と呼ぶ。また、アブレーション(ablation)とは、カテーテルを挿入して生体組織を電気焼灼する手技であり、不整脈の治療などに用いられる。このような治療においては、被検体の透視を行いつつ、カテーテルの挿入、電気焼灼の調整、患者の安全性の確認などを行うため、被曝量の低減を図ることが望ましい。そのための手法として、近年、「部分透視」と呼ばれる技術が開発された。
【0003】
部分透視とは、或る背景画像の部分領域をユーザが指定し、この部分領域に合わせてX線絞りを絞り込んで透視を行うことにより、この部分領域のライブ透視画像と、その周囲の領域(つまり、このライブ透視画像の背景領域)の背景画像とを合成表示させる手法である。このような部分透視によれば、必要な部分にのみX線を照射して透視を行うことができるので、被曝量の低減という顕著な効果が得られる。よって、部分透視は、アブレーションや脳神経外科手術のような長時間にわたる手術などにおいて有効と考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−167213号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
部分透視の実施中に視野の変更をユーザが望む場合がある。視野を変更する技術としては、FOV(Field Of View)切替機能やライブズーム機能などが知られている。しかし、これら技術は検出器の検出面の中心に対して視野を変更するものである。よって、変更後の視野にユーザが望む部位が描写されていないおそれがある。つまり、ユーザが望む部位を拡大/縮小表示させることは不可能であった。
【0006】
なお、FOV切替機能とは、検出器からの読み出し領域を変更するなどして検出器によるX線の検出領域を変更することによって視野を変更する技術である。ライブズーム機能とは、透視画像の拡大率をデジタル処理で変更する技術である。
【0007】
また、X線源と検出器との間の距離を変更してX線の照射範囲を調整するSID(Source Image Distance)動作なども知られているが、FOV切替機能やライブズーム機能と同様に、部分透視に用いられるには至っていない。
【0008】
この発明が解決しようとする課題は、透視画像中の任意の位置を基準として視野を変更することが可能なX線撮影装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
実施形態のX線撮影装置は、撮影部と、変更部と、指定部と、制御部とを有する。撮影部は、被検体の透視画像を取得するものであり、X線源と、X線絞りと、検出器とを有する。X線絞りは、X線源から出力されたX線の照射範囲を変更可能に構成されている。検出器は、被検体を透過したX線を検出する。変更部は、透視画像の視野を変更する。指定部は、透視画像中の位置を指定する。制御部は、この指定位置を中心として透視画像の視野を変更するように変更部を制御し、かつ、この視野の変更に応じてX線の照射範囲を変更するようにX線絞りを制御する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施形態のX線撮影装置の構成例を表す概略ブロック図である。
【図2】実施形態のX線撮影装置の動作例を表すフローチャートである。
【図3】実施形態のX線撮影装置の動作例を説明するための概略図である。
【図4】実施形態のX線撮影装置の動作例を説明するための概略図である。
【図5】実施形態のX線撮影装置の動作例を説明するための概略図である。
【図6】実施形態のX線撮影装置の動作例を説明するための概略図である。
【図7】実施形態のX線撮影装置の動作例を表すフローチャートである。
【図8】実施形態のX線撮影装置の動作例を表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
X線撮影装置の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0012】
実施形態において、視野の変更とは、視野を拡大したり縮小したりすることをいう。また、視野の拡大(縮小)とは、慣用的に、表示される画像の倍率を上げる(下げる)ことをいう。
【0013】
[構成]
実施形態に係るX線撮影装置の構成例を図1に示す。寝台装置1には被検体100が載置される。X線撮影装置の各部は制御部5により制御される。特に、制御部5は、寝台装置1、X線制御部6、絞り制御部8及び画像処理部10を制御する。なお、実際のX線撮影装置には図1に示すもの以外の構成も含まれており、制御部5はそれら構成部分の制御も行う。操作部9は、X線撮影装置に対する操作入力や情報入力に用いられる。制御部5は、操作部9を介した入力内容に基づいてX線撮影装置を制御する。
【0014】
X線管2には、高電圧発生部7から、加速電圧(管電圧)と、電子流による電流(管電流)とが印加される。それにより、X線管2はX線を出力する。X線制御部6は、高電圧発生部7を制御して、管電圧の値及び管電流の値を設定する。また、X線制御部6は、高電圧発生部7からX線管1への管電圧や管電流の印加タイミングを制御する。また、X線制御部6は、高電圧発生部7を制御することにより、X線管2から出力されるX線のパルス幅(撮影時間、msec)を制御する。
【0015】
X線絞り3は、このX線の照射範囲を規定する。X線絞り3には複数の絞り羽根が設けられている。絞り制御部8は、これら絞り羽根を移動させる。それにより、X線絞り3によるX線の照射範囲が変更される。X線絞り3を通過したX線が被検体100に照射される。
【0016】
X線撮影装置は、X線管2とX線絞り3を一体的に移動可能に支持する支持機構を有する(図示せず)。この支持機構は、たとえば検査室の天井に設置されたレールに沿って移動可能とされ、かつ、上下方向に伸縮可能なアームである。また、寝台装置1の代わりに、立位撮影用のスタンドを用いる場合、このスタンドに設けられたX線検出部に対して水平方向に移動可能にX線管2とX線絞り3を支持する支持機構が用いられる。これら支持機構によるX線管2とX線絞り3の移動は、ユーザが手動で行うこともできるし、支持機構に設けられたアクチュエータを制御部5が制御するよう構成することにより電動で行うこともできる。また、同様の構成を適用してX線検出部4を移動可能に構成することも可能である。
【0017】
X線検出部4は、被検体100を透過したX線を検出する検出器を含む。この検出器としては、たとえば、平面検出器(flat panel detector、FPD)、イメージインテンシファイア(image intensifier、I.I.)、イメージングプレート(imaging plate、IP)などが用いられる。X線検出部4は、X線を検出して電気信号に変換して制御部5に送る。制御部5は、この電気信号を画像処理部10に送る。
【0018】
画像処理部10は、制御部5からの電気信号に対して各種の処理を施す。この処理には、ルックアップテーブル変換処理、ウィンドウレベル調整、ウィンドウ幅調整などの表示用処理が含まれる。この表示用処理により生成された画像データは表示部13に送られる。表示部13は、この画像データに基づく画像を表示する。また、画像処理部10により生成された画像データは画像記憶部14に記憶される。
【0019】
この実施形態における「撮影部」は、X線管2、X線絞り3及びX線検出部4を含んで構成される。撮影部は、被検体100を撮影してその内部形態や機能を画像化する。特に、撮影部は被検体100の透視画像を形成する。透視画像とは、前述のように、被検体100のライブ動画像である。
【0020】
画像処理部10には、視野設定部11と表示制御部12が設けられている。視野設定部11は「変更部」の一例として機能する。
【0021】
視野設定部11は、透視画像の視野を設定する。また、視野設定部11は、被検体100の透視を実施しているときに、その視野を任意に変更する。視野の変更方法としては、前述したFOV切替機能、ライブズーム機能、SID動作などがある。
【0022】
FOV切替機能を用いる場合、視野設定部11は、X線検出部4によるX線の検出領域を変更することにより視野の変更を行う。ライブズーム機能を用いる場合、視野設定部11は、取得された透視画像の部分領域を抽出し(つまりトリミングし)、この部分領域のフレームサイズを拡大することにより視野の変更を行う。SID動作を行う場合、視野設定部11は、X線管2とX線検出部4との間の距離を変更することにより視野の変更を行う。この距離の変更は、X線管2とX線絞り3を移動させる、前述の支持機構を制御することによって実行できる。
【0023】
なお、図1に示す視野設定部11は、画像処理部10に設けられているが、これはライブズーム機能を適用する場合に対応した構成である。一方、FOV切替機能又はSID動作を適用する場合、視野設定部11は制御部5に設けられる。
【0024】
表示制御部12は部分透視を行う場合に動作する。部分透視とは、前述のように、或る背景画像の部分領域に合わせてX線絞り3を絞り込んで透視を行うことにより、この部分領域のライブ透視画像と、その周囲の背景画像とを合成表示させる手法である。部分透視では、X線絞り3により規定される第1の照射範囲で背景画像を取得した後、この第1の照射範囲よりも狭い第2の照射範囲を適用して透視画像を取得する。表示制御部12は、第1の照射範囲と第2の照射範囲との位置関係に基づいて、つまり第1の照射範囲内における第2の照射範囲に基づいて、背景画像と透視画像との合成画像を生成する。更に、表示制御部12は、生成された合成画像を表示部13に表示させる。
【0025】
操作部9は、透視画像(部分透視であっても、通常の透視であってもよい)中の位置を指定するために用いられる。操作部9は「指定部」の一例として機能する。指定部は、このような手動の構成には限定されず、透視画像中の位置を自動で指定する構成であってもよい。たとえば、画像処理部10内に指定部を設け、この指定部により透視画像を解析して所定の位置を特定して指定するように構成することができる。この所定の位置としては、所定の生体組織、病変部、過去の観察部位などがある。所定の生体組織の例として、心臓の弁、血管などがある。過去の観察部位を指定する構成は、同一部位を複数回にわたって観察する場合、たとえば経過観察や術前術後観察において用いられる。
【0026】
[動作]
実施形態に係るX線撮影装置の動作例を説明する。このX線撮影装置は、指定部により指定された位置を中心として透視画像の視野を変更し、かつ、この視野の変更に応じてX線の照射範囲を変更するように動作する。以下、この動作の各種具体例を説明する。
【0027】
〔第1の動作例〕
部分透視におけるX線撮影装置の動作例を説明する。図2は、この場合の動作の流れを示す。なお、通常の透視で得られる画像の視野を変更する場合も同様の処理が実行される。
【0028】
(S1:通常透視を行う)
まず、通常の透視を行う。通常の透視における視野としては、たとえば検出器の検出領域全体、つまり最大視野が適用される。X線撮影装置は、この透視画像を表示部13に表示させる。
【0029】
(S2:LIH画像を表示する)
操作部9を用いて通常の透視の終了の指示がなされると、画像処理部10は、その最後の静止画像(フレーム)を画像記憶部14に記憶させるとともに、表示部13に表示させる。この画像をLIH(Last Image Hold)画像と呼ぶことにする。LIH画像の概要を図3に示す。
【0030】
(S3:部分透視領域を指定する)
ユーザは、表示されたLIH画像を観察し、部分透視を適用する画像領域(部分透視領域)を指定する。部分透視領域はLIH画像の部分領域である。部分透視領域の指定は、たとえば操作部9を用いて行われる。図4は、図3に示すLIH画像200に対して指定された部分透視領域201の例を示す。
【0031】
(S4:部分透視を開始する)
制御部5は、ステップ3で指定された部分透視領域の位置情報を受けてX線絞り3を制御し、この位置情報に対応する照射領域を設定する。更に、制御部5は、X線制御部6を制御して、X線管2からX線を出力させる。これにより、部分透視が開始される。表示制御部12は、LIH画像を背景画像とし、かつ、部分透視領域のライブ動画像を透視画像として、これらの合成画像を生成し、表示部13に表示させる。この合成画像において、部分透視領域内はライブ動画像であり、その周囲の背景画像はLIH画像からなる静止画像である。
【0032】
(S5:注目位置を指定する)
ユーザは、部分透視領域内のライブ動画像を観察して注目位置を特定し、操作部9を用いてこれを指定する。その指定方法は、たとえばマウス等のポインティングデバイスによるクリック操作又はドラッグ操作である。クリック操作の場合、ユーザは注目位置にポインタを合わせてクリックを行う。ドラッグ操作の場合、注目位置を含む画像領域をユーザがドラッグ操作で指定すると、X線撮影装置(たとえば制御部5又は画像処理部10)がこの画像領域中の所定位置(たとえば中心位置)を注目位置として指定する。図5は、図4に示す部分透視領域201内に指定された注目位置202を示す。
【0033】
注目位置の指定を自動的に行うことも可能である。たとえば、画像処理部10が、部分透視領域内のライブ動画像のフレームを解析して所定の生体組織、病変部、過去の注目位置などを特定し、これを注目位置として指定する。
【0034】
(S6:視野を変更する)
ユーザは、操作部9を用いて、ステップ5で指定された注目位置を中心として視野を変更するための操作を行う。この操作は、たとえば、専用の操作部、又は汎用の操作デバイスを用いて行われる。専用の操作部はハードウェアキーであってもソフトウェアキーであってもよい。汎用の操作デバイスはたとえばマウスであり、そのマウスホイールの回転方向及び回転量に基づき視野の拡大率/縮小率が指定されるようになっている。また、視野の拡大率や縮小率を数値として入力するように構成することもできる。
【0035】
視野変更の操作内容は制御部5に送られる。制御部5は、ステップ5で指定された注目位置を中心として部分透視領域内の透視画像の視野を変更するように視野設定部11を制御する。更に、制御部5は、この視野の変更に応じてX線の照射範囲を変更するようにX線絞り3(つまり絞り制御部8)を制御する。
【0036】
視野設定部11及びX線絞り3の動作についてより詳しく説明する。前提として、表示部13に表示される画像には、所定の座標系が定義されている。この表示用座標系は、検出器の複数の検出素子の位置に対応付けられている。また、制御部5は、前述の支持機構に設けられたエンコーダにより、又はアクチュエータに対する制御内容により、X線管2の位置を認識している。更に、制御部5は、絞り制御部8に対する制御内容により、又はX線絞り3に設けられたエンコーダにより、X線絞り3の絞り状態、つまり絞り羽根の位置を認識している。視野設定部11は、視野変更の操作内容を受けて、部分透視領域(合成画像)における注目位置の座標を取得する。
【0037】
FOV切替機能により視野を変更する場合、視野設定部11(前述のように制御部5に設けられている)は、ステップ5で指定された注目位置の座標に対応する検出素子を特定する。この検出素子を基準検出素子と呼ぶ。更に、視野設定部11は、この基準検出素子と、部分透視領域内の検出素子群と、指定された視野の変更率(拡大率/縮小率)とに基づいて、変更後の視野に対応する検出素子を特定する。そして、視野設定部11は、特定された検出素子を選択的に動作させる。
【0038】
ライブズーム機能により視野を変更する場合、視野設定部11(画像処理部10に設けられている)は、ステップ5で指定された注目位置の座標と、指定された視野の変更率とに基づいてトリミングする画像領域を決定し、この画像領域を当該変更率に応じて拡大する。
【0039】
SID動作により視野を変更する場合、視野設定部11(前述のように制御部5に設けられている)は、ステップ5で指定された注目位置の座標と、X線管2の位置(及びX線検出部4の位置)と、指定された視野の変更率とに基づいて、X線管2を移動させる。このとき、X線検出部4の検出面に直交する方向におけるX線管2とX線検出部4との相対位置が変更されるとともに、必要に応じて、注目位置の座標に基づき検出面に平行な方向に当該相対位置が変更される。なお、SID動作は、FOV切替機能やライブズーム機能により変更された視野の微調整に用いることができる。
【0040】
X線絞り3の動作について説明する。制御部5は、このようにして変更された視野に基づき、X線絞り3の絞り羽根の位置を決定する。この処理は、たとえば、あらかじめ作成された、X線管2とX線検出部4との間の距離と、絞り羽根の位置と、X線検出部4の検出面におけるX線の照射領域との対応関係を記録した情報に基づいて実行される。また、このような情報に基づく演算処理によって絞り羽根の位置を決定するようにしてもよい。制御部5は、絞り制御部8を制御して、X線絞り3の絞り羽根を当該決定位置に移動させる。
【0041】
以上のようにして、部分透視における任意の位置を中心として視野の変更、及びこれに応じたX線絞り3の制御が実現される。なお、視野変更後の合成画像は、変更後の視野に応じて背景画像の領域が変更される。また、変更後の視野の画像を、表示部13の表示画面全体に拡大して表示させることも可能である。図6に示す視野拡大画像210は、図5に示す部分透視領域201内の画像の視野を、注目位置202を中心に拡大して得られた画像である。
【0042】
〔第2の動作例〕
第2及び第3の動作例では、透視画像中の位置の指定方法について説明する。これら指定方法は、部分透視であるか通常透視であるかは不問である。よって、これら指定方法を第1の動作例に適用することも可能である。以下、説明の簡略化のため、通常透視の場合を例として説明する。
【0043】
第2の動作例では、ユーザが透視画像中の2次元領域を指定する場合を説明する。図7に示すフローチャートは、この場合の動作の流れを表す。この動作例における画像の態様については、第1の動作例と同様であるので省略する。なお、以下の説明では、リアルタイムで得られる透視画像(ライブ動画像)を処理対象としているが、透視中に画像記憶部14に記憶された透視画像を処理対象としてもよい。
【0044】
(S11:通常透視を行う)
まず、通常の透視を行う。
【0045】
(S12:2次元領域を指定する)
ユーザは、通常の透視画像中の2次元領域を指定する。この2次元領域のサイズは任意である。この指定操作としては、たとえば前述のようにマウスを用いたドラッグ操作が用いられる。また、2次元領域の形状は任意であるが、ここでは矩形領域であるとする。
【0046】
(S13:中心位置を特定する)
制御部5は、ステップ12で指定された2次元領域の中心位置を特定する。この処理は、2次元領域に相当する座標の範囲に基づいて容易に行うことができる。なお、2次元領域が矩形以外の領域である場合、たとえば重心のように、当該2次元領域の内部の位置であって、2次元領域の広がりやその輪郭に対する位置関係に基づいて特定される任意の位置を中心位置とみなすことができる。
【0047】
(S14:視野を変更する)
ユーザは、操作部9を用いて、視野を変更するための操作を行う。この操作は、第1の動作例と同様であってよい。制御部5は、この操作内容を受けて以下の制御を行う。つまり、制御部5は、視野設定部11を制御し、ステップ13で特定された中心位置を中心として透視画像の視野を変更させる。更に、制御部5は、この視野の変更に応じてX線の照射範囲を変更するようにX線絞り3(つまり絞り制御部8)を制御する。これら制御に基づく動作は、第1の動作例と同様であってよい。
【0048】
〔第3の動作例〕
第3の動作例では、ユーザが透視画像中の一点を指定する場合を説明する。図8に示すフローチャートは、この場合の動作の流れを表す。この動作例における画像の態様については、第1の動作例と同様であるので省略する。以下の説明では、リアルタイムで得られる透視画像(ライブ動画像)を処理対象としているが、透視中に画像記憶部14に記憶された透視画像を処理対象としてもよい。
【0049】
(S21:通常透視を行う)
まず、通常の透視を行う。
【0050】
(S22:透視画像中の一点を指定する)
ユーザは、通常の透視画像中の一点を指定する。この指定方法としては、透視画像中の所望の位置をクリックする方法だけでなく、所望の位置にポインタを合わせるだけの方法もある。前者については前述したので、ここでは後者について説明する。
【0051】
ユーザは、マウス等のポインティングデバイスを操作して、所望の位置にポインタを配置させる。制御部5は、透視画像が定義された座標系における、ポインタの位置の座標を監視する。ポインタの移動が停止したことを認識すると、制御部5は、この停止位置を上記一点として指定する。
【0052】
(S23:視野を変更する)
ユーザは、操作部9を用いて、視野を変更するための操作を行う。この操作は、たとえばマウスホイールの回転操作である。制御部5は、この操作内容を受けて以下の制御を行う。つまり、制御部5は、視野設定部11を制御し、ステップ22で指定された一点の位置を中心として透視画像の視野を変更させる。更に、制御部5は、この視野の変更に応じてX線の照射範囲を変更するようにX線絞り3(つまり絞り制御部8)を制御する。これら制御に基づく動作は、第1の動作例と同様であってよい。
【0053】
[作用・効果]
実施形態に係るX線撮影装置の作用及び効果について説明する。
【0054】
実施形態に係るX線撮影装置は、撮影部と、視野設定部11と、操作部9と、制御部5とを有する。撮影部は、被検体100をX線で撮影して透視画像を取得するよう機能する。そのために、撮影部は、X線管2、X線絞り3及びX線検出部4を含んで構成される。視野設定部11は、透視画像の視野を変更する。操作部9(及び/又は制御部5)は、透視画像中の位置を指定する。制御部5は、この指定位置を中心として透視画像の視野を変更するように視野設定部11を制御し、かつ、この視野の変更に応じてX線の照射範囲を変更するようにX線絞り3を制御する。
【0055】
このようなX線撮影装置によれば、ユーザが任意に指定した透視画像中の位置を中心として視野を変更することが可能である。また、視野の変更に応じてX線の照射範囲を変更するように構成されているので、無駄な被曝を防止することができる。
【0056】
また、実施形態に係るX線撮影装置によれば、通常の透視の場合においても部分透視の場合においても、透視画像の任意の位置を中心として視野を変更することが可能である。
【0057】
また、実施形態に係るX線撮影装置によれば、FOV切替機能、ライブズーム機能及びSID動作の少なくともいずれかを用いて視野を変更することができる。もちろん、これら以外の方法で視野の変更を行うように構成することも可能である。
【0058】
また、実施形態に係るX線撮影装置によれば、透視画像中の2次元領域を指定し、この2次元領域の中心位置を中心として視野を変更することができる。それにより、指定した2次元領域を基準の視野サイズとしつつ、その中心に対して視野を変更することができる。なお、このような2次元領域の指定に用いられる操作部9は、「第1の操作部」に相当する。
【0059】
また、実施形態に係るX線撮影装置によれば、透視画像中の一点を指定し、この一点の位置を中心として視野を変更することができる。それにより、ユーザが観察を望む正にその位置及びその周辺を詳細に観察することが可能である。なお、このような一点の指定に用いられる操作部9は、「第2の操作部」に相当する。
【0060】
また、実施形態に係るX線撮影装置は、連続的又は段階的な操作が可能な操作部9、たとえばマウスホイールを有する。そして、制御部5は、この連続的又は段階的な操作に基づいて視野設定部11を制御し、透視画像の視野を連続的に又は段階的に変更させることができる。それにより、視野の変更操作を円滑に行うことができる。なお、このような操作部9は、「第3の操作部」に相当する。
【0061】
[変形例]
上記実施形態に係るX線撮影装置に対して各種の変形を施すことが可能である。
【0062】
たとえば、ユーザによる透視画像中の位置の指定を支援するための機能を設けることができる。その一例として、透視画像における注目位置の候補を視認可能に提示することができる。この候補としては、所定の生体組織、病変部、過去に指定された注目位置などがある。前二者を候補として提示する場合、画像処理部10は、透視画像を解析して、所定の生体組織や病変部に相当する画像領域を特定し、これらを視認可能に透視画像上に提示する。過去に指定された注目位置を提示する場合、指定された注目位置をその都度(又はユーザの要求に応じて)記憶し、これを読み出して提示する。このとき、過去の透視画像と今回の透視画像とを比較し、過去の注目位置に相当する今回の透視画像中の画像領域を特定する処理を行ってもよい。
【0063】
また、注目位置の複数の候補を提示することができる。複数の候補は、互いに識別可能に提示される。複数の候補は、同種のものだけでもよいし、同種のものと異種のものとを含んでいてもよい。たとえば、病変部に相当する複数の候補を提示してもよいし、所定の生体組織と病変部とを提示してもよい。後者の場合、その種別を認識できるように、たとえば表示色を違えるなどの制御を行うことができる。
【0064】
この発明の実施形態を説明したが、上記の実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0065】
1 寝台装置
2 X線管
3 X線絞り
4 X線検出部
5 制御部
6 X線制御部
7 高電圧発生部
8 絞り制御部
9 操作部
10 画像処理部
11 視野設定部
12 表示制御部
13 表示部
14 画像記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線源と、前記X線源から出力されたX線の照射範囲を変更可能なX線絞りと、被検体を透過した前記X線を検出する検出器とを有し、前記被検体の透視画像を取得する撮影部と、
前記透視画像の視野を変更する変更部と、
前記透視画像中の位置を指定する指定部と、
当該指定位置を中心として前記透視画像の視野を変更するように前記変更部を制御し、かつ、当該視野の変更に応じて前記照射範囲を変更するように前記X線絞りを制御する制御部と、
を備えるX線撮影装置。
【請求項2】
前記撮影部は、第1の照射範囲を適用して背景画像を取得し、かつ、前記第1の照射範囲よりも狭い第2の照射範囲を適用して透視画像を取得し、
前記第1の照射範囲と前記第2の照射範囲との位置関係に基づいて前記背景画像と当該透視画像との合成画像を生成し、前記合成画像を表示部に表示させる表示制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記合成画像における当該透視画像の視野を前記変更部に変更させる、
ことを特徴とする請求項1に記載のX線撮影装置。
【請求項3】
前記背景画像は、前記第1の照射範囲を適用して前記撮影部により取得された透視画像における最後のフレームであることを特徴とする請求項2に記載のX線撮影装置。
【請求項4】
前記変更部は、前記検出器によるX線の検出領域を変更することにより、前記透視画像の視野を変更することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載のX線撮影装置。
【請求項5】
前記変更部は、前記撮影部により取得された透視画像の部分領域を抽出し、抽出された前記部分領域のフレームサイズを拡大することにより、前記透視画像の視野を変更することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載のX線撮影装置。
【請求項6】
前記変更部は、前記X線源と前記検出器との間の距離を変更することにより、前記透視画像の視野を変更することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載のX線撮影装置。
【請求項7】
前記指定部は、
前記透視画像中の2次元領域を指定するための第1の操作部を含み、
指定された前記2次元領域の中心位置を前記透視画像中の位置とする、
ことを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載のX線撮影装置。
【請求項8】
前記指定部は、
前記透視画像中の一点を指定するための第2の操作部を含み、
指定された前記一点を前記透視画像中の位置とする、
ことを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載のX線撮影装置。
【請求項9】
連続的又は段階的な操作が可能な第3の操作部を有し、
前記制御部は、前記連続的又は段階的な操作に基づいて前記変更部を制御し、前記透視画像の視野を連続的に又は段階的に変更させる、
ことを特徴とする請求項1〜請求項8のいずれか一項に記載のX線撮影装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−111156(P2013−111156A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−258671(P2011−258671)
【出願日】平成23年11月28日(2011.11.28)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】