説明

X線撮影装置

【課題】 繰り返し撮影を実行する場合のX線量の誤差による画素値の変動を補正することが可能なX線撮影装置を提供する。
【解決手段】 第1回目の測定工程において演算したX線の積算値と2回目以降の測定工程において演算したX線の積算値との比を、2回目以降の測定時に測定したX線画像の画素値に乗算する構成であることから、繰り返し骨密度の測定を実行する場合においても、X線量の誤差による画素値の変動を補正することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、X線管と、X線管から照射され被検者を通過したX線を検出するX線検出器とを備えたX線撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図7は、このような従来のX線撮影装置の概要図である。
【0003】
このX線撮影装置は、被検者1を載置するテーブル2と、X線管31とコリメータ33とを備えたX線照射部3と、X線検出器としてのフラットパネルディテクタ4と、被検者1とフラットパネルディテクタ4との間に配設された散乱線除去グリッド42およびホトタイマー41とを備える。このX線撮影装置においては、X線管31から照射され、コリメータ33によりX線照射野を制限されたX線が被検者1に照射される。被検者1を通過したX線は、散乱線除去グリッド42により散乱線が除去され、フラットパネルディテクタ4においてX線画像として検出される。
【0004】
また、被検者1を通過したX線がホトタイマー41に照射された場合には、ホトタイマー41における蛍光板によりX線が光に変換されてホトセンサにより検出される。そして、このときの蛍光量と予め設定された基準値とが比較され、蛍光量が基準値に達した時点で、X線の照射が自動的に停止する構成となっている。
【0005】
このようなホトタイマーは、例えば、特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−257939号公開
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したホトタイマー41を使用したX線撮影装置は、被検者1を通過したX線量が一定値に達した時点でX線の照射を停止することから、常に一定のX線量で撮影を実行することができる。しかしながら、X線管の管電流はX線管のフィラメントの加熱により間接的に制御されていることもあり、X線量、すなわちX線の積算値を一定にしただけでは、常に一定の条件でX線撮影が行われるということはできない。
【0008】
例えば、骨密度測定等のように経過観察を目的とするX線撮影を実行するX線撮影装置においては、同一の被写体を固定撮影条件で何度撮影したとしても、高い再現性で撮影が行われるようにするために、変動率が低く精度が高いシステムが要求される。また、例えば、X線管とX線検出器とを被検者の体軸方向に移動させながら、一定時間毎に取り込んだ複数の検出画像をつなぎ合わせるX線撮影装置においては、一定時間毎に撮影される複数の画像の画素値の検出条件を一定に維持する必要がある。
【0009】
この発明は上記課題を解決するためになされたものであり、繰り返し撮影を実行する場合のX線量の誤差による画素値の変動を補正することが可能なX線撮影装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の発明は、X線管と、前記X線管から出射され被検者を通過したX線を検出するX線検出器と、前記X線管から出射され被検者に到達する前のX線の強度を測定するX線センサと、前記X線センサにより測定したX線量の積算値により前記X線検出器の検出値を補正する補正手段とを備えたことを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記補正手段は、X線検出器により検出したX線画像の画素値に対して、基準となるX線量の積算値と撮影時に前記X線センサにより測定したX線量の積算値との比を乗算することにより、補正後のX線画像の画素値を作成する。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の発明において、前記X線管から出射され被検者を通過したX線量の積算値が一定値となったときにX線の照射を停止するためのホトタイマーを備え、前記X線センサは、X線の照射を開始してから前記ホトタイマーの作用によりX線の照射が停止するまでの間にX線の強度を測定する。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれかに記載の発明において、同一部位を経過観察する骨密度測定を行う。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれかに記載の発明において、前記X線管と前記X線検出器を、前記被検者の体軸方向に移動させる移動機構を備え、一定時間毎に取り込んだ前記X線検出器による検出画像をつなぎ合わせる。
【0015】
請求項6に記載の発明は、X線管から出射され被検者を通過したX線をX線検出器により検出することによりX線画像の画素値を測定するとともに、前記X線管から出射され被検者に到達する前のX線の強度を測定してその積算値を演算する第1撮影工程と、X線管から出射され被検者を通過したX線をX線検出器により検出することによりX線画像の画素値を測定するとともに、前記X線管から出射され被検者に到達する前のX線の強度を測定してその積算値を演算する第2撮影工程と、前記第1撮影工程において演算した積算値と前記第2撮影工程において演算した積算値との比を、前記第2撮影工程において測定したX線画像の画素値に乗算する補正工程とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1、請求項2および請求項6に記載の発明によれば、X線センサにより測定したX線量の積算値によりX線検出器の検出値を補正することから、繰り返し撮影を実行する場合のX線強度の誤差による画素値の変動を補正することが可能となる。
【0017】
請求項3に記載の発明によれば、ホトタイマーによりX線の積算値を一定に維持しながら、そのときのX線強度の誤差による画素値の変動を補正することが可能となる。
【0018】
請求項4に記載の発明によれば、同一部位を経過観察する骨密度測定を実行する場合に、変動率が低く精度が高い撮影を行うことが可能となる。
【0019】
請求項5に記載の発明によれば、一定時間毎に取り込んだ前記X線検出器による検出画像をつなぎ合わせる場合において、複数の画像の画素値の検出条件を一定に維持することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】この発明の第1実施形態に係るX線撮影装置の概要図である。
【図2】この発明の第1実施形態に係るX線撮影装置における主要な制御系を示すブロック図である。
【図3】X線撮影装置を利用して、同一のX線条件で試行的に5回のX線照射を行ったときのX線の強度を示すグラフである。
【図4】この発明の第2実施形態に係るX線撮影装置の概要図である。
【図5】この発明の第2実施形態に係るX線撮影装置における主要な制御系を示すブロック図である。
【図6】画像のつなぎ合わせ処理を模式的に示す説明図である。
【図7】従来のX線撮影装置の概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、この発明の第1実施形態に係るX線撮影装置の概要図である。
【0022】
このX線撮影装置は、同一部位の骨部を一定の期間毎に経過観察することにより骨密度測定を行うものである。このX線撮影装置は、被検者1を載置するテーブル2と、X線管31とX線センサ32とコリメータ33とを備えたX線照射部3と、X線検出器としてのフラットパネルディテクタ4と、被検者1とフラットパネルディテクタ4との間に配設された散乱線除去グリッド42およびホトタイマー41とを備える。このX線撮影装置においては、X線管31から照射され、コリメータ33によりX線照射野を制限されたX線が被検者1に照射される。被検者1を通過したX線は、散乱線除去グリッド42により散乱線が除去され、フラットパネルディテクタ4においてX線画像として検出される。
【0023】
また、X線管31から出射され、被検者1を通過したX線がホトタイマー41に照射された場合には、ホトタイマー41における蛍光板によりX線が光に変換されてホトセンサにより検出される。そして、このときの蛍光量と予め設定された基準値とが比較され、蛍光量が基準値に達した時点で、X線の照射が自動的に停止する構成となっている。
【0024】
さらに、このX線撮影装置においては、X線照射部3に配設されたX線センサ32を利用して、X線管31から出射され被検者1に到達する前のX線のX線量の積算値を測定する構成となっている。このX線センサ32としては、ホトタイマーや蛍光光量計、あるいは、X線線量計等のX線の強度を測定するセンサを使用することができる。
【0025】
図2は、この発明の第1実施形態に係るX線撮影装置における主要な制御系を示すブロック図である。
【0026】
このX線撮影装置は、装置全体を制御する制御部60を備える。この制御部60は、後述する積算値演算部61、係数演算部62、係数乗算部63および記憶部64を備える。また、この制御部60は、インターフェース66を介して、上述したX線管31、フラットパネルディテクタ4、X線センサ32、ホトタイマー41と接続されている。また、この制御部60は、インターフェース66を介して、X線撮影画像を表示するための液晶表示パネルやCRT等から成る表示部5とも接続されている。
【0027】
図3は、このX線撮影装置を利用して、同一のX線条件で試行的に5回のX線照射を行ったときのX線の強度を示すグラフである。
【0028】
この図において、横軸は時間を示し、縦軸はX線センサ32の出力電流値、すなわち、X線の強度を示している。この図に示すように、同一X線条件でX線照射を行った場合においても、X線の強度の変化は、各照射毎に異なっている。なお、この図において、各グラフと横軸とにより囲まれる領域の面積は、X線量の積算値を表している。
【0029】
下記の表1は、上述したように、試行的に5回のX線照射を行った場合の、各グラフと横軸とにより囲まれる領域の面積(X線量の積算値)と、そのときにフラットパネルディテクタ4により検出した画素値等との関係を示す表である。
【0030】
【表1】

【0031】
この表1におけるフラットパネルディテクタ4により検出した「画素値」は、例えば、フラットパネルディテクタ4における中央部付近の3cm×3cmの領域の画素値の平均値を表している。なお、この表における「分散」は、5回の試行的なX線照射を行った場合の分散値を示している。また、「変動率」は、[(分散/平均)×100]で計算された値(%)を示している。また、「係数」は、第1回目のX線照射時の「面積」の値と2回目以降のX線照射時の「面積」の値との比を示している。さらに、「補正後」とは、「画素値」と「係数」とを乗算した値を示している。
【0032】
この表からも明らかなように、同一のX線条件で試行的に5回のX線照射を行ったときには、フラットパネルディテクタ4により検出した画素値についても、図3における各グラフと横軸とにより囲まれる領域の面積で表されるX線量の積算値についても、比較的大きな変動が存在する。しかしながら、画素値に対して、基準となる第1回目のX線量の積算値と第2回目以降のX線量の積算値の測定値との比を乗算した補正後の画素値の変動率は極めて小さいものとなっている。このため、この発明に係るX線撮影装置においては、フラットパネルディテクタ4により検出したX線画像の画素値に対して、基準となるX線量の積算値と撮影時にX線センサ32により測定したX線量の積算値の測定値との比を乗算することにより、X線画像の画素値を補正するようにしている。
【0033】
この第1実施形態に係るX線撮影装置により骨密度測定を行う場合、第1回目の撮影時には、通常通り撮影を実行する。すなわち、X線管31からX線を出射し、被検者1と散乱線除去グリッド42を通過したX線をフラットパネルディテクタ4により検出する。そして、ホトタイマー41により検出したX線量の積算値が基準値に達した時点で、X線の照射が自動的に停止する。そして、そのときのフラットパネルディテクタ4によりX線を検出して得たX線画像の画素値に基づいて、表示部5にX線画像が表示される。このときのX線管31から出射されたX線量はX線センサ32により測定され、その積算値が制御部60における積算値演算部61により演算されている。このX線量の積算値は、記憶部64に記憶される。
【0034】
骨密度測定のための2回目以降の撮影時においても、X線管31からX線を出射し、被検者1と散乱線除去グリッド42を通過したX線をフラットパネルディテクタ4により検出する。そして、ホトタイマー41により検出したX線量の積算値が基準値に達した時点で、X線の照射が自動的に停止する。この場合においても、X線管31から出射されたX線量はX線センサ32により測定され、その積算値が制御部60における積算値演算部61により演算されている。
【0035】
第2回目以降の撮影時においては、制御部60における係数演算部62が、第1回目の測定時のX線管31から出射されたX線量の積算値と、第2回目の測定時のX線管31から出射されたX線量の積算値との比により、係数を演算する。また、係数乗算部63が、フラットパネルディテクタ4によりX線を検出して得たX線画像の画素値に対して、この係数を乗算することにより、画素値を補正する。そして、係数が乗算された画素値に基づいて、表示部5にX線画像が表示される。
【0036】
このように、この発明に係るX線撮影装置により骨密度の測定を行う場合には、第1回目の測定工程において演算したX線の積算値と2回目以降の測定工程において演算したX線の積算値との比を、2回目以降の測定時に測定したX線画像の画素値に乗算する構成であることから、繰り返し骨密度の測定を実行する場合においても、X線量の誤差による画素値の変動を補正することが可能となる。
【0037】
次に、この発明の他の実施の形態について説明する。図4は、この発明の第2実施形態に係るX線撮影装置の概要図である。また、図5は、この発明の第2実施形態に係るX線撮影装置における主要な制御系を示すブロック図である。なお、上述した第1実施形態と同一の部材については、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0038】
この第2実施形態に係るX線撮影装置は、X線管31、X線センサ32およびコリメータ33と、フラットパネルディテクタ4、散乱線除去グリッド42およびホトタイマー41とを、被検者1の体軸方向に同期させて移動させる移動機構6を備え、一定時間毎に取り込んだフラットパネルディテクタ4による検出画像を、制御部60におけるつなぎ合わせ部65でつなぎ合わせる構成を有する。
【0039】
図6は、画像のつなぎ合わせ処理を模式的に示す説明図である。
【0040】
X線管31を被検者1の体軸方向に移動させながらフラットパネルディテクタ4により検出した画像を一定時間毎に取り込んだ場合には、例えば、図6に示す画像P1乃至P6を得ることができる。なお、図6においては、説明の便宜上6枚の画像のみを図示しているが、実際には、撮影領域全域を網羅する多数の画像が得られることになる。そして、これらの画像に対して、つなぎ合わせ部65がつなぎ合わせ処理を実行することにより、図6に示す撮影画像Pが形成される。
【0041】
このようなX線撮影装置において、X線管31を常時点灯させるのではなく、一定時間毎に撮影を行うたびにX線を照射する場合においては、図3に示すように、X線照射毎にX線の強度等が異なることになる。このため、この実施形態に係るX線撮影装置においても、第2回目以降の画像の取り込み時においては、制御部60における係数演算部62が、第1回目の画像の取り込み時にX線管31から出射されたX線量の積算値と、第2回目の画像の取り込み時にX線管31から出射されたX線量の積算値との比により、係数を演算する。また、係数乗算部63が、フラットパネルディテクタ4によりX線を検出して得たX線画像の画素値に対して、この係数を乗算することにより、画素値を補正する。そして、係数が乗算された画素値に基づいて、つなぎ合わせ部65が画像をつなぎ合わせた後、表示部5につなぎ合わせられたX線画像が表示される。
【符号の説明】
【0042】
1 被検者
2 テーブル
3 X線照射部
4 フラットパネルディテクタ
5 表示部
6 移動機構
31 X線管
32 X線センサ
33 コリメータ
41 ホトタイマー
42 散乱除去グリッド
60 制御部
61 積算値演算部
62 係数演算部
63 係数乗算部
64 記憶部
65 つなぎ合わせ部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線管と、
前記X線管から出射され被検者を通過したX線を検出するX線検出器と、
前記X線管から出射され被検者に到達する前のX線の強度を測定するX線センサと、
前記X線センサにより測定したX線量の積算値により前記X線検出器の検出値を補正する補正手段と、
を備えたことを特徴とするX線撮影装置。
【請求項2】
請求項1に記載のX線撮影装置において、
前記補正手段は、X線検出器により検出したX線画像の画素値に対して、基準となるX線量の積算値と撮影時に前記X線センサにより測定したX線量の積算値との比を乗算することにより、補正後のX線画像の画素値を作成するX線撮影装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のX線撮影装置において、
前記X線管から出射され被検者を通過したX線量の積算値が一定値となったときにX線の照射を停止するためのホトタイマーを備え、
前記X線センサは、X線の照射を開始してから前記ホトタイマーの作用によりX線の照射が停止するまでの間にX線の強度を測定するX線撮影装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載のX線撮影装置において、
同一部位を経過観察する骨密度測定を行うX線撮影装置。
【請求項5】
請求項1から請求項3のいずれかに記載のX線撮影装置において、
前記X線管と前記X線検出器を、前記被検者の体軸方向に移動させる移動機構を備え、一定時間毎に取り込んだ前記X線検出器による検出画像をつなぎ合わせるX線撮影装置。
【請求項6】
X線管から出射され被検者を通過したX線をX線検出器により検出することによりX線画像の画素値を測定するとともに、前記X線管から出射され被検者に到達する前のX線の強度を測定してその積算値を演算する第1撮影工程と、
X線管から出射され被検者を通過したX線をX線検出器により検出することによりX線画像の画素値を測定するとともに、前記X線管から出射され被検者に到達する前のX線の強度を測定してその積算値を演算する第2撮影工程と、
前記第1撮影工程において演算した積算値と前記第2撮影工程において演算した積算値との比を、前記第2撮影工程において測定したX線画像の画素値に乗算する補正工程と、
を備えたことを特徴とするX線撮影方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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