説明

X線撮影装置

【課題】 X線照射領域の自動認識と、X線撮影とのいずれに失敗したのかを容易に認識することができるX線撮影装置を提供する。
【解決手段】 画像処理部7は、フラットパネルディテクタ2により検出したX線情報を画像処理することにより、X線照射領域を認識するX線照射領域認識部71と、X線照射領域認識部71により認識したX線照射領域以外の非有効領域を透過性を有する状態で一旦塗りつぶすとともに、X線情報の出力時に、透過性を有する状態で塗りつぶしたX線照射領域以外の非有効領域を黒く塗りつぶす非有効領域塗りつぶし部72とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、被検体に向けてX線を照射するX線管と、このX線管から照射され前記被検体を通過したX線を検出するX線検出部とを備えたX線撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
このようなX線撮影装置においては、撮影後の画像を、医師等が診断を行うために好適なものとする必要がある。例えば、特許文献1に記載の発明においては、入力画像の低周波成分を圧縮して高周波成分を伸長することにより、画像の低周波成分を減衰させて気管支などのコントラストを向上させる処理を行うために、関心領域を設定する画像処理装置が開示されている。
【0003】
また、このようなX線撮影装置においては、X線撮影時に、X線が照射されたX線照射領域を自動的に認識し、X線照射領域以外を黒く塗りつぶすことにより、X線撮影画像を医師が診断に使用するときに、診断をより容易に行えるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開第2007−37864号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような場合に、X線照射領域の自動認識に失敗した場合には、画像全体が黒く塗りつぶされることになる。このときには、オペレータがX線撮影に失敗したと認識して、再度X線撮影を実行することから、操作に手間がかかるばかりではなく、患者は余分なX線を被曝することになる。これは、X線照射領域を極めて小さな領域と誤認識する場合にも同様に生ずる現象である。
【0006】
この発明は上記課題を解決するためになされたものであり、X線照射領域の自動認識とX線撮影とのいずれに失敗したのかを容易に認識することができるX線撮影装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、被検体に向けてX線を照射するX線管と、前記X線管から照射され前記被検体を通過したX線を検出するX線検出部と、を備えたX線撮影装置において、前記X線検出部により検出したX線情報を画像処理することにより、X線照射領域を認識するX線照射領域認識手段と、前記X線照射領域認識手段により認識したX線照射領域以外の非有効領域を、透過性を有する状態で塗りつぶす非有効領域塗りつぶし手段を備えたことを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記非有効領域塗りつぶし手段は、前記X線検出部により検出したX線情報の出力時に、透過性を有する状態で塗りつぶしたX線照射領域以外の非有効領域を、黒く塗りつぶす。
【0009】
請求項3に記載の発明は、X線管から被検体に向けてX線を照射するとともに、前記X線管から照射され前記被検体を通過したX線をX線検出部で検出する撮影工程と、前記撮影工程において検出したX線情報を画像処理することにより、X線照射領域を認識するX線照射領域認識工程と、前記X線照射領域認識工程において認識したX線照射領域以外の非有効領域を、透過性を有する状態で塗りつぶして表示部に表示する第1の非有効領域塗りつぶし工程と、前記第1の非有効領域塗りつぶし工程において透過性を有する状態で塗りつぶされた非有効領域が正しい場合には、前記非有効領域を黒く塗りつぶす第2の非有効領域塗りつぶし工程と、前記第2の非有効領域塗りつぶし工程において前記非有効領域が黒く塗りつぶされた画像を保存する保存工程とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、X線照射領域以外の非有効領域を透過性を有する状態で塗りつぶすことから、X線照射領域の自動認識に失敗したのか、X線撮影に失敗したのかを容易に認識することができる。このため、X線撮影に成功しているにもかかわらず、再度、X線撮影が実行されることを防止することができる。
【0011】
請求項2に記載の発明によれば、X線領域の自動認識を正確に行った後にX線照射領域以外の非有効領域を黒く塗りつぶすことができ、正確に塗りつぶしが実行されて、診断を容易に行うことが可能となる。
【0012】
請求項3に記載の発明によれば、X線照射領域の自動認識に失敗したのか、X線撮影に失敗したのかを容易に認識することができ、X線撮影に成功しているにもかかわらず再度、X線撮影が実行されることを防止することができるとともに、X線領域の自動認識を正確に行った後にX線照射領域以外の非有効領域を黒く塗りつぶすことから、正確に塗りつぶしが実行されて診断を容易に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】この発明に係るX線撮影装置の概要図である。
【図2】この発明に係るX線撮影装置によるX線撮影後の画像表示動作を示すフローチャートである。
【図3】表示部10における表示画面を示す模式図である。
【図4】表示部10における表示画面を示す模式図である。
【図5】表示部10における表示画面を示す模式図である。
【図6】表示部10における表示画面を示す模式図である。
【図7】表示部10における表示画面を示す模式図である。
【図8】表示部10における表示画面を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、この発明に係るX線撮影装置の概要図である。
【0015】
このX線撮影装置は、被検体である患者4を載置するテーブル3と、X線管1と、X線管1に付与する管電圧等を制御する高電圧発生部8と、X線検出部としてのフラットパネルディテクタ2と、装置全体を制御する制御部6と、後述するX線領域認識部71および非有効領域塗りつぶし部72とを有する画像処理部7と、ハードディスク等を備えた記憶部9と、CRT等から構成される表示部10とを備える。
【0016】
このX線撮影装置においては、X線管1からテーブル3上の患者4に向けてX線を照射し、患者4を通過したX線をフラットパネルディテクタ2により検出し、検出されたX線を画像処理部7において画像処理し、画像処理されたX線による映像信号を利用して表示部10にX線画像を表示する。
【0017】
このとき、画像処理部7におけるX線照射領域認識部71は、フラットパネルディテクタ2により検出したX線情報を画像処理することにより、X線が照射されたX線照射領域を認識する。また、画像処理部7における非有効領域塗りつぶし部72は、画像領域のうち、X線照射領域認識部71により認識したX線照射領域以外の非有効領域を、透過性を有する状態あるいは黒色に塗りつぶす。
【0018】
以下、この発明に係るX線撮影装置によるX線撮影動作について説明する。図2は、この発明に係るX線撮影装置によるX線撮影後の画像表示動作を示すフローチャートである。
【0019】
最初に、X線撮影を実行する(ステップS1)このときには、X線管1からテーブル3上の患者4に向けてX線を照射し、患者4を通過したX線をフラットパネルディテクタ2により検出し、検出されたX線による画像信号を画像処理部7に送信する。
【0020】
画像処理部7においては、最初に、この画像信号に基づいてX線照射領域を認識する(ステップS2)。すなわち、画像処理部7におけるX線照射領域認識部71は、フラットパネルディテクタ2により検出したX線情報に対して、エッジ検出等の画像処理を施すことにより、X線が照射されたX線照射領域を認識する。
【0021】
図3から図8は、表示部10における表示画面を示す模式図である。
【0022】
図3に示すように、画像処理部7におけるX線照射領域認識部71は、フラットパネルディテクタ2により検出したX線情報に対して、エッジ検出等の画像処理を施すことにより、X線が照射されたX線照射領域を認識して、表示部10の表示画面における画像領域100を、X線照射領域101と、X線照射領域101以外の非有効領域102とに区分する。この場合には、X線照射野を規制するコリメータの開度情報等が参考情報として利用される。
【0023】
図3に示すように、X線照射領域101においては、患者4の画像(この実施形態においては患者4における頸椎付近の画像)が鮮明に表示される。また、非有効領域102においては、患者4の画像が不鮮明に(ぼんやりと)表示される。なお、図3における符号103は患者4の氏名を表示する領域、符号104は撮影部位に対応した撮影条件を選択するアイコン領域、符号105は操作用のアイコン領域を示している。
【0024】
次に、画像処理部7は、X線照射領域認識部71により認識したX線照射領域101以外の非有効領域102を、透過性を有する状態で塗りつぶして表示部10に表示する第1の非有効領域塗りつぶし工程を実行する(ステップS3)。すなわち、画像処理部7における非有効領域塗りつぶし部72は、図4においてハッチングを付して示すように、表示部10の表示画面の画像領域100におけるX線照射領域101以外の非有効領域102を、その領域の画像が認識可能なように、透過性を有する状態で塗りつぶす。
【0025】
ここで、従来の装置においては、図5に示すように、X線照射領域101以外の非有効領域102を黒く塗りつぶしていた。このようにX線照射領域101以外の非有効領域102を黒く塗りつぶした場合には、X線撮影画像を医師が診断に使用するときに、診断をより容易に行えるという利点がある。
【0026】
しかしながら、例えば、X線照射領域101の自動認識に失敗した場合、あるいは、X線照射領域101を極めて小さな領域と誤認識した場合には、図6に示すように、画像全体が黒く塗りつぶされることになる。このような場合においては、オペレータがX線撮影に失敗したと認識して、再度X線撮影を実行することになり、操作に手間がかかるばかりではなく、患者は余分なX線を被曝することになる。
【0027】
しかしながら、この発明に係るX線撮影装置においては、X線照射領域101の自動認識に失敗した場合やX線照射領域101を極めて小さな領域と誤認識した場合には、図7に模式的に示すように、画像全体が透過性を有する状態で塗りつぶされることになる。このため、オペレータは、X線撮影に失敗したのではなく、X線照射領域認識部71が認識したX線照射領域101が誤っていると判断することができる。
【0028】
そして、X線照射領域認識部71が認識したX線照射領域101が誤っていると判断した場合には(ステップS4)、オペレータが手動操作により、塗りつぶし領域を設定する(ステップS5)。そして、ステップS3に戻り、領域を再度確認する。一方、X線照射領域認識部71が認識したX線照射領域101が正しい場合には(ステップS4)、X線情報の出力指令を待つ(ステップS6)。
【0029】
ここで、X線情報の出力とは、画像処理部で画像処理したX線情報(X線画像)を、表示部10に表示し、あるいは、記憶部9に記録することを指す。この動作は、オペレータが操作ボタン等を操作することにより実行してもよく、あるいは、オペレータが検査終了操作を行った場合に並行して実行してもよい。
【0030】
X線情報の出力指令がなされた場合には(ステップS6)、画像処理部7は、X線照射領域認識部71により認識したX線照射領域101以外の非有効領域102を、黒く塗りつぶして表示部10に表示する第2の非有効領域塗りつぶし工程を実行する(ステップS7)。すなわち、画像処理部7における非有効領域塗りつぶし部72は、図5に示すように、表示部10の表示画面の画像領域100におけるX線照射領域101以外の非有効領域102を、黒く塗りつぶす。これにより、このX線撮影画像を医師が診断に使用するときに、診断をより容易に行うことができる。
【0031】
また、X線情報の出力指令がなされた場合には(ステップS6)、画像処理部7は、図5に示すように、X線照射領域101以外の非有効領域102を黒く塗りつぶした画像を、記憶部9に記録する(ステップS8)。
【0032】
なお、上述した実施形態においては、非有効領域塗りつぶし部72は、X線照射領域101以外の非有効領域102を透過性を有する状態で一旦塗りつぶした後(ステップS3)、X線情報の出力時にこの領域を黒く塗りつぶしている(ステップS7)。しかしながら、図8において模式的に示すように、非有効領域塗りつぶし部72は、X線照射領域101とX線照射領域101以外の非有効領域102とを、透過性を有する状態で塗りつぶしてもよい。
【0033】
例えば、X線照射領域101と、X線照射領域101以外の非有効領域102とを、各々、透過性を有する異なる色で4塗りつぶしてもよい。この場合においては、画像処理部7は、X線照射領域認識部71が認識したX線照射領域101が正しいときには、図5に示すように、X線照射領域101の塗りつぶしを解除するとともに、X線照射領域101以外の非有効領域102を黒く塗りつぶした後、このX線情報(X線画像)を、表示部10に表示するとともに、記憶部9に記録する。
【0034】
また、X線照射領域101を透過性が高い状態で塗りつぶすとともに、X線照射領域101以外の非有効領域102を透過性が低い状態で塗りつぶすようにしてもよい。この場合においては、画像処理部7は、X線照射領域認識部71が認識したX線照射領域101が正しいときに、図8に示すように、そのままのX線情報(X線画像)を、表示部10に表示するとともに、記憶部9に記録する。この場合には、このX線撮影画像を医師が診断に使用するときの視認性は若干低下するが、非有効領域102を黒く塗りつぶす工程を省略することが可能となる。
【符号の説明】
【0035】
1 X線管
2 フラットパネルディテクタ
3 テーブル
4 患者
6 制御部
7 画像処理部
8 高電圧発生部
9 記憶部
10 表示部
71 X線照射領域認識部
72 非有効領域塗りつぶし部
100 画像領域
101 X線照射領域
102 非有効領域


【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体に向けてX線を照射するX線管と、前記X線管から照射され前記被検体を通過したX線を検出するX線検出部と、を備えたX線撮影装置において、
前記X線検出部により検出したX線情報を画像処理することにより、X線照射領域を認識するX線照射領域認識手段と、
前記X線照射領域認識手段により認識したX線照射領域以外の非有効領域を、透過性を有する状態で塗りつぶす非有効領域塗りつぶし手段を備えたことを特徴とするX線撮影装置。
【請求項2】
請求項1に記載のX線撮影装置において、
前記非有効領域塗りつぶし手段は、前記X線検出部により検出したX線情報の出力時に、透過性を有する状態で塗りつぶしたX線照射領域以外の非有効領域を、黒く塗りつぶすX線撮影装置。
【請求項3】
X線管から被検体に向けてX線を照射するとともに、前記X線管から照射され前記被検体を通過したX線をX線検出部で検出する撮影工程と、
前記撮影工程において検出したX線情報を画像処理することにより、X線照射領域を認識するX線照射領域認識工程と、
前記X線照射領域認識工程において認識したX線照射領域以外の非有効領域を、透過性を有する状態で塗りつぶして表示部に表示する第1の非有効領域塗りつぶし工程と、
前記第1の非有効領域塗りつぶし工程において透過性を有する状態で塗りつぶされた非有効領域が正しい場合には、前記非有効領域を黒く塗りつぶす第2の非有効領域塗りつぶし工程と、
前記第2の非有効領域塗りつぶし工程において前記非有効領域が黒く塗りつぶされた画像を保存する保存工程と、
を備えたことを特徴とするX線撮影方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−111215(P2013−111215A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−259765(P2011−259765)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】