説明

X線検査システム

【課題】X線検査によって不良品と判定された物品が、良品側に混入することを確実に防止できるX線検査システムを提供する。
【解決手段】X線検査装置10は、物品5をコンベア41によって搬送しつつX線を照射することによって、物品5のX線画像データを取得する。次に、X線画像データに基づき、物品5に異物が混入しているか否かの検査を実行する。振分装置80は、X線検査装置10による異物検査の結果に基づき、物品5を良品用のコンベア82と不良品用のコンベア83とに振り分ける。振分処理後、光電センサ85、86の検出結果に基づき、正しく振り分けられたか否かの確認処理が実行される。これにより、X線検査装置10によって不良品と判断された物品5が良品側のコンベア82に混入することを防止でき、物品5の振分動作を確実に実行できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品にX線を照射して所定の検査を実行するとともに、検査結果に基づいて物品を良品と不良品とに振り分けるX線検査システムに関するもので、特に、良品が振り分けられた側に不良品が混入することを防止する改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、物品にX線を照射して物品内に異物が含まれるか否かの異物検査を行い、その検査結果に基づいて異物の混入した物品を除去して、異物を含まない良品のみを次の工程に搬送させるX線(放射線)検査装置が知られている(例えば、特許文献1)。ここで、特許文献1には、検査により検出された異物の位置に基づいて、除去動作を行うX線検査装置に関する発明が開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開平09−292351号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の装置では、検査の結果、不良品であると判断された除去された不良品が確実に除去されて次工程に流入していなか否かを確認することはできない。すなわち、特許文献1の装置では、次工程に搬送された物品につき、不良品が含まれず、かつ、良品のみであることを保証できないといった問題が生じる。
【0005】
また、以上の問題は、X線を使用した異物検査だけでなく、
(1)物品にX線を照射して、当該物品のパッケージ内に含まれる内容物の数量を計数する入り数検査や、
(2)物品にX線を照射して、当該物品のパッケージ内に含まれる内容物の形状を調べることにより、物品が割れや欠けを有するか否かを検査する割れ欠け検査を行い、
これら検査結果に基づいて不良品を除去する場合にも同様に生ずる。
【0006】
そこで、本発明では、X線検査によって不良品と判定された物品が、良品側に混入することを確実に防止できるX線検査システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、請求項1の発明は、X線検査システムであって、搬送中の物品に対してX線を照射して、当該物品における異物の混入状況と混入位置とを検査するX線検査装置と、前記X線検査装置の下流側に設けられており、前記X線検査装置から受け取った検査済みの物品のうち、前記検査によって異物が混入していないと判断された第1の物品が搬送される第1の搬送経路に設けられており、前記第1の物品を検出する第1のセンサと、前記検査済みの物品のうち、前記検査によって異物が混入していると判断された第2の物品が搬送される第2の搬送経路に設けられており、前記第2の物品を検出する第2のセンサと、前記検査の結果に基づいて、前記検査済みの物品を前記第1の搬送経路と前記第2の搬送経路とに選択的に分岐させる分岐部と、を有する振分装置と、を備え、前記X線検査装置は、前記分岐部による前記検査済みの物品の振分状況を、前記第1の物品が到達するタイミングに前記第1のセンサで前記第1の物品を検出できるか否かによって、前記異物が前記第2のセンサ付近まで到達するタイミングに、第2のセンサで第2の物品を検出できるか否かによって、判定する判定部、を有することを特徴とする。
【0008】
また、請求項2の発明は、請求項1に記載のX線検査システムにおいて、前記判定部は、前記第2の物品に複数の異物が混入している場合に、各異物の混入位置で前記第2の物品を検出できるか否かによって振分状況を判定することを特徴とする。
【0009】
また、請求項3の発明は、請求項1または請求項2に記載のX線検査システムにおいて、前記物品は内容物をパッケージしたものであり、前記X線検査装置は、パッケージされた前記物品毎に異物の混入状況および混入位置を検査することを特徴とするX線検査システム。
【0010】
また、請求項4の発明は、請求項3に記載のX線検査システムにおいて、前記X線検査装置は、前記物品のX線透過情報の取得完了時点を第1の基準時刻と、前記第1の基準時刻における前記物品の前記下流側の先端部から前記分岐部までの距離であって、前記物品の搬送方向に沿った距離を第1の距離と、前記検査済みの物品の搬送速度を第1の速度と、前記第1の距離を前記第1の速度で除算した値を第1の時間と、前記第1の基準時刻から第1の時間経過することにより前記物品の前記下流側先端部が前記分岐部付近に到達する時刻を第1の到達時刻と、それぞれ定義し、前記第1の到達時刻を含む第1の時間帯に、前記検査済みの物品の検査結果に応じた振分動作を実行させる第1のタイミング制御部、をさらに備えることを特徴とする。
【0011】
また、請求項5の発明は、請求項1または請求項2に記載のX線検査システムにおいて、前記物品は不定形要素が集合し、ランダムな間隔で搬送される物であり、前記X線検査装置は、搬送中の前記物品に対して略同一の時間間隔で複数回の検査を周期的に行うことにより、前記異物の混入状況および混入位置を検査することを特徴とする。
【0012】
また、請求項6の発明は、請求項5に記載のX線検査システムにおいて、前記X線検査装置は、周期的に取得される前記物品のX線透過情報につき、当該X線透過情報の取得完了時点を第1の基準時刻と、前記X線透過情報に含まれる不定形要素群につき、第1の基準時刻における前記周期的に取得される前記物品のX線透過情報の前記物品の搬送方向から見て下流側の先端部から前記分岐部までの距離であって前記物品の搬送方向に沿った距離を第1の距離と、前記検査済みの物品の搬送速度を第1の速度と、前記第1の距離を前記第1の速度で除算した値を第1の時間と、前記第1の基準時刻から第1の時間経過することにより前記不定形要素群の前記先端部が前記分岐部付近に到達する時刻を第1の到達時刻と、それぞれ定義し、前記第1の到達時刻を含む第1の時間帯に、前記検査済みの物品の検査結果に応じた振分動作を実行させる第1のタイミング制御部、をさらに備えることを特徴とする。
【0013】
また、請求項7の発明は、請求項4または請求項6に記載のX線検査システムにおいて、前記判定部は、前記X線透過情報に含まれる前記異物につき、前記第1の基準時刻における前記異物のそれぞれの位置から前記第2のセンサまでの距離であって、前記物品の搬送方向に沿って求められる距離を第2の距離と、前記第2の距離を前記第1の搬送速度で除した値を第2の時間と、前記第1の基準時刻から第2の時間経過することにより前記物品が前記第2のセンサ付近に到達する時刻を第2の到達時刻と、それぞれ定義し、各異物について前記第2の到達時刻を含む第2の時間帯に前記第2の物品を検出できるか否かにより、前記第2の物品の振分状況を判定することを特徴とするX線検査装置。
【発明の効果】
【0014】
請求項1から請求項7に記載の発明によれば、(1)異物が混入していないと判定され、第1の搬送経路に振り分けられた第1の物品は、第1のセンサの検出結果に基づいて、(2)異物が混入していると判定され、第2の搬送経路に振り分けられた第2の物品は、第2のセンサの検出結果に基づいて、それぞれ振分状況を判定することができる。
【0015】
これにより、異物を含むと判定された第2の物品が第1の搬送経路に混入することを防止でき、また、異物を含まない第1の物品が第2の搬送経路に混入することを防止できる。そのため、物品の振分動作を確実に実行することができる。
【0016】
特に、請求項2に記載の発明によれば、複数の異物のそれぞれ異物位置にて振分状況を確認することができる。すなわち、物品が複数の異物を含む場合、物品の異物を含む部分のそれぞれが、第2の搬送経路に確実に振り分けられたか否かを確認することができる。そのため、各異物が第1の搬送経路に混入することを確実に防止でき、さらに良好に物品の振分動作を実行することができる。
【0017】
特に、請求項3に記載の発明によれば、パッケージされた物品毎に異物の混入状況を判定することができ、異物が含まれたパッケージを確実に第2の搬送経路に振り分けることができる。
【0018】
特に、請求項4に記載の発明によれば、第1の到達時刻を含む第1の時間帯に振分動作を実行することができる。そのため、X線検査装置の検査結果に基づいて異物を含むパッケージを第2の搬送経路に確実に振り分けることができる。
【0019】
特に、請求項5に記載の発明によれば、不定形要素群への異物の混入状況を判定し、異物が含まれた不定形要素群を確実に第2の搬送経路に振り分けることができる。
【0020】
特に、請求項6に記載の発明によれば、第1の到達時刻を含む第1の時間帯に振分動作を実行することができる。そのため、X線検査装置の検査結果に基づいて異物を含む不定形要素群を第2の搬送経路に確実に振り分けることができる。
【0021】
特に、請求項7に記載の発明によれば、第2の到達時刻を含む第2の時間帯における第2のセンサの検出結果に基づいて、第2の物品の振分状況を判定することができる。そのため、異物を含む第2の物品が第1の搬送経路に混入することを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0023】
<1.第1の実施の形態>
<1.1.X線検査システムの構成>
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るX線検査システム1の全体構成の一例を示す図である。X線検査システム1は、図1に示すように、主として、X線検査装置10と、振分装置80とを備える。
【0024】
X線検査装置10は、上流側から搬送方向AR1(Y軸正方向:紙面水平方向)に沿って搬送される各物品5に対してX線検査を実行することにより、各物品の内部または各物品のパッケージ内に包装された内容物に混入する異物の混入状況、各物品のパッケージ内に包装された内容物の数量、および、各物品のパッケージ内に包装された内容物の割れや欠け状況等を検査する装置である。図1に示すように、X線検査装置10は、主として、X線照射部20、ラインセンサ30、シールドボックス40、コンベア41、および、表示部50を備える。
【0025】
コンベア41は、搬送方向AR1から見てX線検査装置10の上流側の装置(例えば、物品の包装機等)から供給される物品5を略水平方向に搬送する装置である。上流側の装置から受け渡された物品5は、シールドボックス40内を搬送させられつつ、X線による異物混入検査が行われる。すなわち、コンベア41は、物品5の検査領域であるシールドボックス40内に搬送する搬送部として使用される。そして、検査の完了した物品5は、コンベア41によって振分装置80に受け渡される。
【0026】
図2は、X線検査装置10のシールドボックス40の構成の一例を示す斜視図である。X線照射部20は、図1および図2に示すように、シールドボックス40の内部であって、コンベア41の上方に配置される。X線照射部20から照射されたX線は、コンベア41の下方に配置されるラインセンサ30で検出される。
【0027】
ラインセンサ30は、コンベア41を挟んでX線照射部20と逆側に配置される。すなわち、ラインセンサ30は、X線照射部20の略鉛直下方に配置される。また、ラインセンサ30は、搬送方向AR1に対して略垂直な方向(X軸方向)に配列された複数の受光素子31を有する。
【0028】
これにより、ラインセンサ30は、X線照射部20から照射されて物品5を透過したX線を各受光素子31にて検出し、1ライン分の画像データを検出することができる。そのため、コンベア41によって物品5を移動させつつ、1ライン分の画像データを複数検出することによって、物品5全体のX線透過画像を取得することができる。
【0029】
表示部50は、後述する図3に示すように、信号線74を介して制御部70と電気的に接続されており、制御部70からの画像信号に基づいて、所定の文字列やコマンドボタン等の図形を表示する。また、表示部50は、指や専用のペンで画面に触れることにより画面上の位置を指定することができる「タッチパネル」としての機能を有する。
【0030】
これにより、オペレータは、表示部50に表示された内容に基づき、X線検査装置10に対して所定の動作を実行させることができる。また、表示部50には、物品の異物混入に関する検査の結果を表示することもできる。
【0031】
制御部70は、図1に示すように、プログラムや変数等を格納するメモリ71と、メモリ71に格納されたプログラムに従った制御を実行するCPU75とを備える。また、制御部70は、後述する図3に示すように、X線照射部20、ラインセンサ30、およびシールドボックス40等と、信号線74を介して電気的に接続される。したがって、CPU75は、メモリ71に格納されるプログラムに従って、X線照射部20からX線の照射処理、ラインセンサ30による撮像処理、コンベア41による物品5の移動処理等に関する制御を所定のタイミングで実行することができる。
【0032】
振分装置80は、X線検査装置10の検査結果に基づいて、物品5を、例えば、異物が混入しない良品と、異物が混入する不良品とに振り分ける装置である。図1に示すように、振分装置80は、主として、検査済みの物品5を振り分けるドロップベルト81と、光電センサ85、86とを備える。
【0033】
ドロップベルト81は、X軸と略平行な回転軸81aを中心としてZ軸方向(上下方向)に回動可能に設けられた分岐部である。また、ドロップベルト81は、コンベア41と同様に、受け渡された物品5を搬送することができる。
【0034】
したがって、X線検査装置10の検査によって異物が混入していないと判断された物品5は、不図示の駆動機構によってドロップベルト81が略水平姿勢(図1の実線)とさせられることにより、良品用のコンベア82に受け渡される。一方、X線検査装置10の検査によって異物が混入していると判断された物品5は、ドロップベルト81が回動させられて図1の点線の姿勢とさせられることにより、不良品用のコンベア83に受け渡される。このように、ドロップベルト81は、検査済みの物品5をコンベア82およびコンベア83のいずれかに選択的に分岐させることができる。
【0035】
光電センサ85は、コンベア82に設けられており、X線検査装置10の検査によって良品と判断された物品5がコンベア82に正しく振り分けられたか否かを検出するために使用される。すなわち、光電センサ85は、良品用の搬送経路に設けられた非接触型のセンサである。
【0036】
また同様に、光電センサ86は、コンベア83に設けられており、X線検査装置10の検査によって異物を含み不良品であると判断された物品5がコンベア83に正しく振り分けられたか否かを検出するために使用される。すなわち、光電センサ86は、不良品用の搬送経路に設けられた非接触型のセンサである。
【0037】
制御部90は、制御部70と同様に、プログラムや変数等を格納するメモリ91と、メモリ91に格納されたプログラムに従った制御を実行するCPU95とを備える。したがって、CPU95は、メモリ91に格納されるプログラムに従って、ドロップベルト81の振り分け処理等の制御を所定のタイミングで実行することができる。
【0038】
<1.2.X線検査装置の機能構成>
図3は、X線検査装置10の機能構成を説明するための図である。図3に示すように、CPU75では、主として、異物検出部76a、入り数検出部76b、および割れ欠け検出部76cによってX線検査装置10の機能が実現される。また、メモリ71には、主として、画像データ格納部72、およびパラメータ格納部73の各格納領域が確保され、異物検出、入り数検査、および割れ欠け処理のそれぞれで使用されるデータが格納される。
【0039】
画像データ格納部72には、ラインセンサ30で検出された物品5全体のX線画像データ72aが格納される。
【0040】
図4は、ラインセンサ30によって撮像されたX線画像を説明するための図である。ここで、図4(a)は異物を含まない物品のX線画像の例を、また、図4(b)は異物を含むX線画像の例を、それぞれ示す。
【0041】
X線画像データ72aは、ラインセンサ30によって検出された1ライン分の画像データ(例えば、図4(b)の場合、j=j0上の画像データ)の集合体であり、2次元画像として構成される。すなわち、画像データ72aは、ラインセンサ30によって検出された1ライン分の画像データを、撮像された時間順にj座標の昇順方向に並べた時系列データであり、物品5のX線透過情報として使用される。
【0042】
なお、必要な場合、ラインセンサ30で検出したデータにシェーディング等の補正処理を施したものをX線画像データ72aとして保存してもよい。
【0043】
異物検出部76aでは、画像データ格納部72に格納されたX線画像データ72aに基づき、物品5の混入状況の検査する処理が実行される。図5は、図4(b)の物品5を透過したX線画像データを説明するための図である。ここでは、図4および図5を参照しつつ、X線画像データ72aによる異物検査の原理について説明する。なお、図5(a)は物品5の異物を含む部分の断面を、図5(b)は、図5(a)の断面部を透過した1ライン分のX線画像データであって、図4(b)のj=j0に対応する濃度分布曲線61を、それぞれ示す。
【0044】
例えば、本実施の形態においてX線検査の対象となる物品5の濃度分布曲線61は次のようになる。すなわち、(1)X<X1、および、X>X6となる範囲のように、X線が物品5を透過せずにラインセンサ30の各受光素子31に到達する場合、濃度値Dは最大値D1となる。また、(2)X1≦X≦X6となる範囲のように、X線が物品5を透過して各受光素子31に到達する場合、濃度値Dは、物品のZ軸方向の厚みが増加するにしたがって減少(反比例)する。ただし、(3)ただし、X3≦X≦X4となる範囲のように、異物Pが存在する部分の濃度値(D=D3)では、異物Pが存在しない部分の濃度値(D=D2)と比較して小さくなる。
【0045】
したがって、例えば、閾値分布曲線62を図5(b)の一点鎖線のように設定することにより、物品5に異物Pが含まれるか否かを判断することができる。すなわち、各X座標について、濃度分布曲線61の濃度値Dmと閾値分布曲線62の濃度値Dthを比較する。そして、Dm<Dthを満たす場合には、対応するX座標の部分に異物Pが含まれるものと判断する。一方、Dm≧Dthを満たす場合には、対応するX座標の部分に異物Pが含まれないものと判断する。
【0046】
このように、異物検出部76aでは、この閾値処理をX線画像データ72aのすべてのj座標について実行することにより、物品5全体にわたって異物の混入状況の検査を実行することができる。
【0047】
入り数検出部76bは、異物検出部76aと同様に、画像データ格納部72に格納されたX線画像データ72aに基づき、パッケージに包装された物品5の内容物の数量を計数する処理を施す。
【0048】
具体的には、物品5のパッケージ全体が含まれるように取得したX線画像データ72aについて所定の閾値によって2値化処理を施すことにより、パッケージ内に含まれるの各内容物を抽出する。そして、抽出された内容物の数量が、所望の数量と一致するか否かを判断する。なお、2値化処理に使用する閾値は実験等によって予め求めても良い。
【0049】
割れ欠け検出部76cは、異物検出部76aおよび入り数検出部76bと同様に、画像データ格納部72に格納されたX線画像データ72aに基づき、パッケージ内に包装された物品5の内容物が、所望の形状を有するか否かの検査を施す。
【0050】
具体的には、物品5のパッケージ全体が含まれるように取得したX線画像データ72aについて所定の閾値によって2値化処理を施すことにより、パッケージ内に含まれる各内容物を抽出する。そして、抽出された内容物の形状と、後述するパラメータ格納部73に予め格納された割れや欠けのない内容物の形状とを比較することにより、抽出された内容物が所望の形状を有するか、または、内容物に割れや欠けが存在するかを判断する。なお、2値化処理に使用する閾値は、入り数検出部76bと同様に、実験等によって予め求めても良い。
【0051】
振分処理部77は、異物検出部76a、入り数検出部76bおよび割れ欠け検出部76cの検査結果に基づき、振分装置80のドロップベルト81による振り分け制御を実行する。例えば、異物検出部76aによって物品5が不良品であると判断された場合、振分処理部77から振分装置80に向けてNG信号が所定のタイミングで送信される。そして、NG信号を受信した振分装置80の制御部90が所定のタイミングでドロップベルト81を動作させることにより、物品5はドロップベルト81から不良品用のコンベア83に受け渡される。
【0052】
また、振分処理部77は、振分装置80の光電センサ85、86による検出結果に基づいて、物品5が正しく振り分けられたか否かの検査を実行する。すなわち、異物検出部76aによって良品と判断された場合には、物品5がコンベア82に振り分けられた否かを光電センサ85の検出結果に基づいて判断する。一方、不良品と判断された場合には、物品5がコンベア83に振り分けられたか否かを光電センサ86の検出結果に基づいて判断する。すなわち、振分処理部77は、物品5が正しく振り分けられたか否かを判定する判定部としても使用される。
【0053】
同様に、入り数検出部76bによって物品5のパッケージ内の内容物の数量が所望の数量と一致しないと判断された場合、および割れ欠け検出部76cによって物品5のパッケージ内の内要物に割れや欠けが存在すると判断された場合にも、上述の手順によって物品5はコンベア83に受け渡される。また、振分処理部77によって物品5が正しく振り分けられたか否かの検査も実行される。
【0054】
なお、NG信号が送信されるタイミング、およびドロップベルト81による振り分け動作のタイミングについては、後述する。
【0055】
パラメータ格納部73には、異物検出部76a、入り数検出部76b、および、割れ欠け検出部76cの各検出部で使用されるデータであって予め実験等によって求められたもの、すなわち、2値化処理で使用される閾値や、割れ欠け検出部76cで使用される内容物の所望の形状データ等が格納される。
【0056】
外部記憶装置79は、図3に示すように、制御部70と信号線74を介して接続されており、制御部70との間で所定の制御信号、およびデータの送受信を行うことができる。そのため、画像データ格納部72およびパラメータ格納部73に格納されるデータを外部記憶装置79に保存したり、外部記憶装置79に保存されるデータを画像データ格納部72およびパラメータ格納部73に格納することができる。また、X線検査装置10による検査結果を外部記憶装置79に保存することも可能である。
【0057】
警報部57は、X線検査装置10での検査処理や振分装置80の振分処理等で異常が発生した場合に、その旨をオペレータに知らせるために使用される。すなわち、異常が発生すると、警報部57は光や音等の警報を発することにより、オペレータに対して速やかに検査処理や振分処理等で異常が発生したことを通知することができる。そしてオペレータは、速やかに異常状態を把握して適切な措置を採ること(例えば、不良品が良品用のコンベア83に振り分けられた場合には、コンベア83から不良品を取り去ること)が可能となる。
【0058】
<1.3.X線検査システムによる物品の振り分け手順>
図6は、本実施の形態における物品5の振分処理を説明するためのタイミングチャートである。図7は、物品5の振分手順を説明するためのフローチャートである。また、図8は、振分動作を説明するための図である。ここでは、図6、図7および図8を参照しつつ、本実施の形態における物品5の振分手順について説明する。
【0059】
なお、説明の都合上、時刻t1より前の時点において、ドロップベルト81は、図8に示す実線の姿勢(略水平姿勢)にて保持されているものとする。また、以下では異物の混入状況の検査の結果に基づき、物品5を振り分ける処理について説明しているが、入り数検査および割れ欠け検査についても同様に振分処理を実行することができる。
【0060】
物品5の振分処理では、まず、ラインセンサ30によって物品5全体のX線画像の撮像が行われる(図7のステップS101)。すなわち、搬送方向AR1から見て下流側の物品先端部5a(図8参照)がラインセンサ30の直上に到達する時刻t1(図6参照)において、ラインセンサ30は、搬送中の物品5を透過したX線を検出して1ライン画像データを取得する処理を開始する。そして、物品5の上流側の先端部5b(図8参照)がラインセンサ30の直上に到達する時刻t2(図6参照)までの期間、1ライン画像データを取得する処理を継続することにより、物品5全体のX線画像データ72aの撮像が行われる。撮像されたX線画像データ72aは、メモリ71の画像データ格納部72に格納される(図3参照)。
【0061】
次に、X線画像の撮像が完了した時刻t2から時刻t3までの期間において(図6参照)、異物検出部76a(図3参照)は、物品5内に異物が存在するか否かを検査する異物検出処理を実行する(S102)。
【0062】
ステップS102の異物検出処理の結果、物品5内に異物が混入している判断された場合には(S103)、時刻t2から時間T1経過した時刻t4において、振分処理部77から振分装置80の制御部90(図1、図3参照)に向けてNG信号が送信される。
【0063】
続いて、NG信号を受信した振分装置80の制御部90は、ドロップベルト81の動作を制御して、時刻t6から時間T3の間、ドロップベルト81の姿勢を図8の点線で示される姿勢にて保持する。これにより、異物を含む物品5は、不良品用の搬送ラインであるコンベア83に振り分けられる(S104)。そして、時刻t6から振分時間T3が経過した時刻t10において、ドロップベルト81の姿勢は、制御部70によって、図8の点線で示される姿勢から実線で示される姿勢に遷移させられる。
【0064】
なお、時刻t2からNG信号を送信する時刻t4までの待機時間T1、時刻t2から振分動作を開始する時刻t6までの待機時間T2、および振分時間T3は、異物検出処理に要する時間、物品5の搬送速度、物品5の搬送方向AR1の長さ等に基づき予め設定してもよい。
【0065】
また、(1)搬送方向AR1に沿った物品5の長さをL0と、(2)コンベア41のうちラインセンサ30の直上から下流側のコンベア先端部41aまで部分につき、搬送方向AR1に沿った搬送路の長さをL3(後述する図9参照)と、(3)コンベア41、ドロップベルト81、およびコンベア83のそれぞれによる物品5の搬送速度をVと、それぞれ定義すると、X線画像の撮像完了時刻t2から物品5の先端部5aがドロップベルト81に到達するまでの経過時間T8は、数1によって求められる。
【0066】
T8 = (L3−L0)/V ・・・ (数1)
【0067】
したがって、物品5の先端部5aがドロップベルト81に到達する時刻(t2+T8)を含む時間帯にドロップベルト81を下降させて振分動作を実行できるよう、待機時間T2および振分時間T3を設定することにより、物品5を確実に振り分けることができる。
【0068】
ステップS104において物品5がコンベア83に振り分けられると、物品5は、さらに搬送方向AR3に搬送され続ける。そのため、物品5の下流側の先端部5aが光電センサ86に到達する時刻t8から上流側の先端部5bが光電センサ86に到達する時刻t14までの間、光電センサ86は、「ON」状態となる(図6参照)。
【0069】
そこで、本実施の形態では、物品5に含まれる異物の混入位置が光電センサ86付近に到達するタイミングに、光電センサ86の「ON」、「OFF」状態を確認することによって、異物を含む物品5が正しくコンベア83に振り分けられたか否かの判断を行う。
【0070】
図9は、物品5に異物が混入している場合に、光電センサ86によって物品5の振分状況を確認するタイミングを説明するための図である。図9に示す物品5のうち、実線のものは時刻t2における物品5の位置を、破線のものは異物Pkが光電センサ86に到達する時刻(t2+T5)(図6参照)における物品5の位置を、それぞれ示す。
【0071】
なお、本実施の形態では、物品5に複数の異物Pn(nは自然数)が混入している場合、それぞれの異物Pnの含まれる位置について物品5の振分状況を確認することができるが、説明の都合上、図9に示す異物Pkについてのみ説明する。
【0072】
ここで、L0、L3、およびVに加えて、(4)先端部5aから異物Pkまでの搬送方向AR1に沿った距離をLkと、(5)ドロップベルト81の搬送方向AR1に沿った搬送路の長さをL4と、(6)不良品用のコンベア83のうち、上流側のコンベア先端部83aから光電センサ86までの部分につき、不良品の搬送方向AR3に沿った搬送路の長さをL5と、(7)ラインセンサ30から光電センサ86までの搬送方向AR1、AR3に沿った搬送路の長さをL2と、それぞれ定義すると、X線画像データ72aの撮像が完了した時刻t2から異物Pkが光電センサ86付近に到達するまでの時間T5は、数2によって求められる。
【0073】
T5 = ((L3+L4+L5)+Lk−L0)/V
= (L2+Lk−L0)/V ・・・ (数2)
【0074】
このように、本実施の形態では、時刻(t2+T5)を含む時間帯に光電センサ86の状態が「ON」および「OFF」のいずれの状態となるかを監視することにより、物品5の異物Pkが含まれる部分が、正しく振り分けられたか否かを判断する。
【0075】
これにより、物品5のうち異物の含まれる部分のそれぞれが、不良品用のコンベア83に振り分けられたか否かを確認することができ、各異物が良品側に混入することを確実に防止できる。
【0076】
すなわち、当該時間帯に光電センサ86が物品5を検出して「ON」状態となる期間が存在する場合(S105)、振分処理部77は、物品5のうち異物Pkの含まれる部分が正しく不良品側のコンベア83に振り分けられたと判断して振分処理を終了する。
【0077】
一方、当該時間帯に光電センサ86が「OFF」状態のままで「ON」状態に遷移しない場合(S105)、物品5の異物の含まれる部分が正しくコンベア83に振り分けられていないと判断し、警報部57によってオペレータに対して異常が発生した旨を通知して振分処理を終了する。
【0078】
なお、光電センサ86の「ON」、「OFF」状態を監視する時間帯の長さT7は、物品5の搬送速度Vや物品5の長さL0等に基づいて予め設定してもよい。
【0079】
これに対して、ステップS102の異物検出処理の結果、物品5内に異物が混入していないと判断された場合には(S103)、振分処理部77からはNG信号が送信されず、ドロップベルト81は、図8の実線で示される略水平姿勢にて保持され続ける。これにより、異物を含まない物品5は良品用の搬送ラインであるコンベア82に振り分けられる(S106)。
【0080】
続いて、物品5がコンベア82に振り分けられると、物品5は、さらに搬送方向AR2に搬送され続ける。そのため、物品5の下流側の先端部5aが光電センサ85に到達する時刻t7から上流側の先端部5bが光電センサ85に到達する時刻t13までの間、光電センサ85は、「ON」状態となる(図6参照)。
【0081】
そこで、本実施の形態では、物品5の中心位置が光電センサ85付近に到達するタイミングに光電センサ85の「ON」、「OFF」状態を確認することによって、異物を含まない物品5が正しくコンベア83に振り分けられたか否かの判断を行う。
【0082】
図10は、物品5に異物が混入していない場合に、光電センサ85によって物品5の振分状況を確認するタイミングを説明するための図である。図10に示された物品5のうち、実線のものは時刻t2における物品5の位置を、破線のものは物品5の中心位置Pcが光電センサ85に到達する時刻(t2+T4)における物品5の位置を、それぞれ示す。
【0083】
ここで、搬送方向AR1における物品5の中心位置をPcとし、(8)良品用のコンベア82のうち、上流側の先端部82aから光電センサ85までの部分につき、良品の搬送方向AR2に沿った搬送路の長さをL6と、(9)ラインセンサ30から光電センサ85までの搬送方向AR1、AR2に沿った搬送路の長さをL1と、それぞれ定義すると、X線画像データ72aの撮像が完了した時刻t2から物品5の中心位置Pcが光電センサ85に到達するまでの時間T4は、数3によって求められる。
【0084】
T4 = ((L3+L4+L6)−L0/2)/V
= (L1−L0/2)/V ・・・ (数3)
【0085】
このように、本実施の形態では時刻(t2+T4)を含む時間帯に光電センサ86の状態が「ON」および「OFF」のいずれの状態となるかを監視することにより、異物を含まない物品5が、正しく振り分けられたか否かを判断する。
【0086】
すなわち、当該時間帯に光電センサ85が物品5を検出して「ON」状態となる期間が存在する場合(S107)、振分処理部77は、物品5が正しく良品側のコンベア82に振り分けられたと判断して振分処理を終了する。
【0087】
一方、当該時間帯に光電センサ85が「OFF」状態のままで「ON」状態に遷移しない場合(S107)、物品5が正しくコンベア82に振り分けられていないと判断し、警報部57によってオペレータに対して異常が発生した旨を通知して振分処理を終了する。
【0088】
なお、光電センサ85の「ON」、「OFF」状態を監視する時間帯の長さT6は、物品5の搬送速度Vや物品5の長さL0等に基づいて予め設定してもよい。
【0089】
<1.4.第1の実施の形態のX線検査システムの利点>
以上のように、第1の実施の形態のX線検査システム1では、光電センサ85、86によって物品5の振分状況を検出することができる。これにより、物品5が異物検出部76aの検出結果に基づいて正しく振り分けられたか否かを確認することができる。そのため、異物を含むと判断された物品5が良品側のコンベア82に、また、異物を含まないと判断された物品5が不良品側のコンベア83に、それぞれ混入することを防止でき、その結果、物品の振分動作を確実に実行することができる。
【0090】
また、第1の実施の形態のX線検査システム1では、物品5が複数の異物Pを含む場合(図9参照)、各異物Pの混入位置にて振分状況を確認することができる。そのため、各異物Pが良品用のコンベア82に混入することを確実に防止でき、さらに良好に物品の振分動作を実行することができる。
【0091】
<2.第2の実施の形態>
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。第2の実施の形態におけるX線検査システム1は、第1の実施の形態のX線検査システム1と比較して
(1)検査対象物が相違する点と、
(2)X線画像データの取得方法が相違する点と、
を除いては、第1の実施の形態と同じである。そこで、以下ではこの相違点を中心に説明する。なお、以下の説明において、第1の実施の形態のX線検査システム1における構成要素と同様な構成要素については同一符号を付している。これら同一符号の構成要素は、第1の実施の形態において説明済みであるため、本実施形態では説明を省略する。
【0092】
ここで、本実施の形態の検査対象物について説明する。図11は、本実施の形態における検査対象物としての物品105の一例を示す図である。第1の実施の形態の物品5は、それぞれが略同一の形状を有していたが、本実施の形態の物品105は、図11に示すように、略同一形状を有しない不定形要素が集合した、いわゆる、「バラ物」であり、各不定形要素がランダムな間隔でコンベア41上を搬送される。
【0093】
<2.1.X線検査システムによる物品の振り分け手順>
図12は、本実施の形態における物品105の振分処理を説明するためのタイミングチャートである。ここでは、図12と、第1の実施の形態で説明した図7および図8とを参照しつつ、本実施の形態における物品105の振分手順について説明する。なお、説明の都合上、時刻t1より前の時点において、ドロップベルト81は、図8に示す実線の姿勢(略水平姿勢)にて保持されているものとする。
【0094】
振分処理では、時刻t1から時間T3の間、物品105のX線画像が撮像される(図7のステップS101)。すなわち、ステップS101では、物品105について撮像範囲108(後述する図13参照)のX線画像が撮像される。そして、この撮像処理は、時間T3の間隔で周期的に繰り返し行われる。撮像された各X線画像データ72aは、画像データ格納部72に格納される。なお、時間T3の間隔で撮像処理を実行するのは、後述するNG信号に対応してドロップベルト81が下降する期間T3と対応させるためである。
【0095】
次に、異物検出部76a(図3参照)によって、各撮像範囲に含まれる物品105に異物が混入しているか否かの検査が実行される(S102)。例えば、時刻t1から時刻t2までの間に取得したX線画像データ72aについては、時刻t2から時刻t3までの期間に異物検出処理が実行される。また、その他のX線画像データ72aについても、撮像処理が完了した際に異物検出処理が実行される。
【0096】
ステップS102の異物検出処理の結果、撮像範囲108内に異物が混入していると判断された場合には(S103)、振分処理部77から振分装置80の制御部90(図1、図3参照)に向けてNG信号が送信される。例えば、時刻t1から時刻t2の間に撮像したX線画像データ72aの撮像範囲108に異物が混入していると判断された場合には、時刻t2から時間T1経過した時刻t4において、NG信号が送信される。また同様に、その他の撮像範囲108についても、対応するX線画像の撮像が完了した時点から時間T1経過した際に、NG信号が送信される。
【0097】
なお、搬送方向AR1に沿った撮像範囲108の長さをL10(図13参照)と定義すると、X線画像の撮像完了時刻t2から撮像範囲108に含まれる物品105の先端部108aがドロップベルト81に到達するまでの経過時間T9は、数4によって求められる。
【0098】
T9 = (L3−L10)/V ・・・ (数4)
【0099】
したがって、撮像範囲108に含まれる物品105の先端部108aがドロップベルト81に到達する時刻(t2+T9)を含む時間帯にドロップベルト81を下降させて振分動作を実行できるよう、待機時間T2および振分時間T3を設定することにより、撮像範囲108に含まれる物品105を確実に振り分けることができる。
【0100】
また、上述のように、ステップS101の撮像処理は、時間T3の間隔で周期的に実行される。したがって、連続的に振分処理を実行するためには、異物検出処理は、時間T3以下で終了することが必要となる。また同様に、NG信号の送信も時間T3の間隔で行われる必要がある。
【0101】
続いて、NG信号を受信した振分装置80の制御部90は、ドロップベルト81の動作を制御して時間T3の間、ドロップベルト81の姿勢を図8の点線で示される姿勢にて保持する。これにより、対応する撮像範囲108に含まれる物品105は、コンベア83に振り分けられる(S104)。
【0102】
すなわち、撮像範囲108に1つ以上の異物が含まれている場合、撮像範囲108に含まれる物品105は、コンベア83に振り分けられる。そのため、異物を含む「バラ物」が良品側のコンベア82に振り分けられることを防止できる。
【0103】
ステップS105では、光電センサ86の検出結果に基づいて、物品105の異物を含む部分が正しく振り分けられたか否かを判定する。なお、振分状況の判定は、各撮像範囲108について実行されるが、説明の都合上、時刻t1から時刻t2の間に取得したX線画像データ72aに対応する撮像範囲108についてのみ説明する。
【0104】
図13は、撮像範囲108に含まれる物品105に異物が混入している場合において、光電センサ86によって物品105の振分状況を確認するタイミングを説明するための図である。図13中の搬送方向AR1から見て上流側の一点鎖線は、時刻t2に撮像が完了したX線画像の撮像範囲を、また、下流側の一点鎖線は、時刻t2に撮像が完了したX線画像の撮像範囲に含まれる物品105が、コンベア41、ドロップベルト81およびコンベア83によって移動させられることにより、当該物品105が時間(t2+T15)(図12参照)に到達する位置を、それぞれ示す。
【0105】
なお、本実施の形態では、第1の実施の形態と同様に、撮像範囲108に複数の異物Pn(nは自然数)が混入している場合、それぞれの異物Pnの含まれる位置について物品105の振分状況を確認することができるが、説明の都合上、図13に示す異物Pkについてのみ説明する。
【0106】
ここで、L3、L4、L5、Lk、およびVに加えて、搬送方向AR1に沿った撮像範囲108の長さをL10(図13参照)と定義すると、X線画像データ72aの撮像が完了した時刻t2から異物Pkが光電センサ86に到達するまでの時間T15は、数5によって求められる。
【0107】
T15 = ((L3+L4+L5)+Lk−L10)/V
= (L2+Lk−L10)/V ・・・ (数5)
【0108】
したがって、本実施の形態では、各X線画像の撮像が完了した時刻から時間T15の経過した時点を含む時間帯に、光電センサ86の状態が「ON」および「OFF」のいずれの状態となるかを監視することにより、物品105の異物Pkが含まれる部分が、正しく振り分けられたか否かを判断することができる。
【0109】
これにより、物品105のうち異物の含まれる部分のそれぞれが、不良品用のコンベア83に振り分けられたか否かを確認することができ、各異物が良品側に混入することを確実に防止できる。
【0110】
すなわち、当該時間帯に光電センサ86が物品105を検出して「ON」状態となる期間が存在する場合(S105)、振分処理部77は、各撮像範囲108に含まれる物品105のうち異物Pkの含まれる部分が正しく不良品側のコンベア83に振り分けられたと判断して振分処理を終了する。
【0111】
一方、当該時間帯に光電センサ86が「OFF」状態のままで「ON」状態に遷移しない場合(S105)、物品105の異物の含まれる部分が正しくコンベア83に振り分けられていないと判断し、警報部57によってオペレータに対して異常が発生した旨を通知して振分処理を終了する。
【0112】
これに対して、ステップS102の異物検出処理の結果、撮像範囲108に含まれる物品105内に異物が混入していないと判断された場合には(S103)、振分処理部77からはNG信号が送信されず、ドロップベルト81は、図8の実線で示される略水平姿勢にて保持され続ける。これにより、異物を含まない物品105はコンベア82に振り分けられる(S106)。
【0113】
すなわち、撮像範囲108に異物が含まれない場合、撮像範囲108に含まれる物品105は、コンベア82に振り分けられる。そのため、異物を含まない「バラ物」が不良品側のコンベア82に誤って振り分けられることを防止できる。
【0114】
ステップS107では、光電センサ85の検出結果に基づいて、異物を含まない物品105が正しく振り分けられたか否かを判定する。なお、振分状況の判定は、ステップS105の場合と同様に、各撮像範囲108について実行されるが、説明の都合上、時刻t1から時刻t2の間に取得したX線画像データ72aに対応する撮像範囲108についてのみ説明する。
【0115】
図14は、撮像範囲108に含まれる物品105に異物が混入していない場合において、光電センサ85によって物品105の振分状況を確認するタイミングを説明するための図である。図14中の搬送方向AR1から見て上流側の一点鎖線は、時刻t2に撮像が完了したX線画像の撮像範囲を、また、下流側の一点鎖線は、時刻t2に撮像が完了したX線画像の撮像範囲に含まれる物品105が、コンベア41、ドロップベルト81およびコンベア83によって移動させられることにより、当該物品105が時間(t2+T15)(図12参照)に到達する位置を、それぞれ示す。
【0116】
ここで、搬送方向AR1における撮像範囲108の中心位置をPcとすると、図14より、X線画像データ72aの撮像が完了した時刻t2から中心位置Pcが光電センサ85に到達するまでの時間T14は、数6によって求められる。
【0117】
T14 = ((L3+L4+L6)−L10/2)/V
= (L1−L10/2)/V ・・・ (数6)
【0118】
したがって、本実施の形態では、各X線画像の撮像が完了した時刻から時間T14の経過した時点を含む時間帯に、光電センサ85の状態が「ON」および「OFF」のいずれの状態となるかを監視することにより、物品105が正しく振り分けられたか否かを判断することができる。
【0119】
すなわち、当該時間帯に光電センサ85が物品105を検出して「ON」状態となる期間が存在する場合(S107)、振分処理部77は、物品105が正しく良品側のコンベア82に振り分けられたと判断して振分処理を終了する。
【0120】
一方、当該時間帯に光電センサ85が「OFF」状態のままで「ON」状態に遷移しない場合(S107)、物品105が正しくコンベア82に振り分けられていないと判断し、警報部57によってオペレータに対して異常が発生した旨を通知して振分処理を終了する。
【0121】
<2.2.第2の実施の形態のX線検査システムの利点>
以上のように、第2の実施の形態のX線検査システム1では、第1の実施の形態と同様に、光電センサ85、86によって各撮像範囲に含まれる物品105の振分状況を検出することができる。これにより、異物検出部76aの検出結果に基づいて、各撮像範囲に含まれる物品105が正しく振り分けられたか否かを確認することができる。そのため、異物を含む物品105が良品側に、また、異物を含まない物品105が不良品側に、それぞれ混入することを防止できる。
【0122】
また、第2の実施の形態のX線検査システム1では、撮像範囲108に複数の異物Pが含まれる場合(図13参照)、各異物Pの混入位置にて振分状況を確認することができる。すなわち、異物P毎に振分状態を確認することができる。そのため、各異物Pが良品用のコンベア82に混入することを確実に防止でき、さらに良好に物品の振分動作を実行することができる。
【0123】
<3.変形例>
以上、本発明の実施の形態について説明したが、この発明は上記の例に限定されるものではない。
【0124】
(1)第1の実施の形態において、濃度分布曲線61の閾値処理は、閾値分布曲線62に基づき実行しているが、これに限定されるものでない。例えば、図5(b)の破線63のように、一定値D=D6を閾値とし、濃度分布曲線61の各X座標に対応する濃度値Dとを比較することによって閾値処理を実行してもよい。
【0125】
(2)また、第1の実施の形態では、物品5ごとに撮像、異物検出、および振分の一連の処理を直列的に実行しているが、これに限定されるものでなく、複数の物品5について、撮像処理、異物検出処理、および振分処理を並列的に実行してもよい。例えば、ある物品5が、コンベア82、83のいずれかに振り分けられる前に、次の物品5についてX線画像データ72aの撮像処理を実行してもよい。
【0126】
(3)また、第1および第2の実施の形態では、ドロップベルト81によって2方向に物品5、105を分岐させているが、これに限定されるものでなく、例えば、振分アーム等によって3方向以上の複数の方向に物品5、105を分岐させてもよい。
【0127】
(4)さらに、第1および第2の実施の形態では、物品5、105を透過するX線情報によって異物検出処理を実行し、この検出結果に基づいて物品5、105の振分処理を実行しているが、異物検出処理はこれに限定されるものでない。例えば、磁界の変化により異物としての金属を検出してもよい。すなわち、第1および第2の実施の形態の振分処理は、金属検出システム等の非接触物品検査システムに利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0128】
【図1】本発明の実施の形態におけるX線検査システムの全体構成の一例を示す図である。
【図2】X線検査装置のシールドボックス内部の構成の一例を示す斜視図である。
【図3】X線検査装置の制御部の概略構成を示す機能ブロック図である。
【図4】ラインセンサによって撮像されたX線画像を説明するための図である。
【図5】X線による異物検査の原理を説明するための図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態における物品の振分処理を説明するためのタイミングチャートである。
【図7】物品の振分手順を説明するためのフローチャートである。
【図8】振分動作を説明するための図である。
【図9】本発明の第1の実施の形態において、物品に異物が混入している場合に物品の振分状況を確認するタイミングを説明するための図である。
【図10】本発明の第1の実施の形態において、物品に異物が混入していない場合に物品の振分状況を確認するタイミングを説明するための図である。
【図11】本発明の第2の実施の形態の物品を説明するための図である。
【図12】本発明の第2の実施の形態における物品の振分処理を説明するためのタイミングチャートである。
【図13】本発明の第2の実施の形態において、物品の振分状況を確認する動作を説明するための図である(不良ライン側)。
【図14】本発明の第2の実施の形態において、物品の振分状況を確認する動作を説明するための図である(良品ライン側)。
【符号の説明】
【0129】
1 X線検査システム
5、105 物品
10 X線検査装置
20 X線照射部
30 ラインセンサ
40 シールドボックス
41、82、83 コンベア
57 警報部
70、90 制御部
71、91 メモリ
72 画像データ格納部
72a 画像データ
75、95 CPU
76a 異物検出部
76b 入り数検出部
76c 割れ欠け検出部
80 振分装置
81 ドロップベルト
85、86 光電センサ
85a、86a 投光部
85b、86b 受光部
108 撮像範囲
AR1 搬送方向
P(Pn、Pk、Pk+1、Pk+2) 異物
Pc 中心位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線検査システムであって、
(a) 搬送中の物品に対してX線を照射して、当該物品における異物の混入状況と混入位置とを検査するX線検査装置と、
(b) 前記X線検査装置の下流側に設けられており、
(b-1) 前記X線検査装置から受け取った検査済みの物品のうち、前記検査によって異物が混入していないと判断された第1の物品が搬送される第1の搬送経路に設けられており、前記第1の物品を検出する第1のセンサと、
(b-2) 前記検査済みの物品のうち、前記検査によって異物が混入していると判断された第2の物品が搬送される第2の搬送経路に設けられており、前記第2の物品を検出する第2のセンサと、
(b-3) 前記検査の結果に基づいて、前記検査済みの物品を前記第1の搬送経路と前記第2の搬送経路とに選択的に分岐させる分岐部と、
を有する振分装置と、
を備え、
前記X線検査装置は、
(a-1) 前記分岐部による前記検査済みの物品の振分状況を、
(i) 前記第1の物品が到達するタイミングに前記第1のセンサで前記第1の物品を検出できるか否かによって、
(ii) 前記異物が前記第2のセンサ付近まで到達するタイミングに、第2のセンサで第2の物品を検出できるか否かによって、
判定する判定部、
を有することを特徴とするX線検査システム。
【請求項2】
請求項1に記載のX線検査システムにおいて、
前記判定部は、前記第2の物品に複数の異物が混入している場合に、各異物の混入位置で前記第2の物品を検出できるか否かによって振分状況を判定することを特徴とするX線検査システム。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のX線検査システムにおいて、
前記物品は内容物をパッケージしたものであり、
前記X線検査装置は、パッケージされた前記物品毎に異物の混入状況および混入位置を検査することを特徴とするX線検査システム。
【請求項4】
請求項3に記載のX線検査システムにおいて、
前記X線検査装置は、
(I) 前記物品のX線透過情報の取得完了時点を第1の基準時刻と、
(II) 前記第1の基準時刻における前記物品の前記下流側の先端部から前記分岐部までの距離であって、前記物品の搬送方向に沿った距離を第1の距離と、
(III) 前記検査済みの物品の搬送速度を第1の速度と、
(IV) 前記第1の距離を前記第1の速度で除算した値を第1の時間と、
(V) 前記第1の基準時刻から第1の時間経過することにより前記物品の前記下流側先端部が前記分岐部付近に到達する時刻を第1の到達時刻と、
それぞれ定義し、
前記第1の到達時刻を含む第1の時間帯に、前記検査済みの物品の検査結果に応じた振分動作を実行させる第1のタイミング制御部、
をさらに備えることを特徴とするX線検査システム。
【請求項5】
請求項1または請求項2に記載のX線検査システムにおいて、
前記物品は不定形要素が集合し、ランダムな間隔で搬送される物であり、
前記X線検査装置は、搬送中の前記物品に対して略同一の時間間隔で複数回の検査を周期的に行うことにより、前記異物の混入状況および混入位置を検査することを特徴とするX線検査システム。
【請求項6】
請求項5に記載のX線検査システムにおいて、
前記X線検査装置は、
(I) 周期的に取得される前記物品のX線透過情報につき、当該X線透過情報の取得完了時点を第1の基準時刻と、
(II) 前記X線透過情報に含まれる不定形要素群につき、第1の基準時刻における前記周期的に取得される前記物品のX線透過情報の前記物品の搬送方向から見て下流側の先端部から前記分岐部までの距離であって前記物品の搬送方向に沿った距離を第1の距離と、
(III) 前記検査済みの物品の搬送速度を第1の速度と、
(IV) 前記第1の距離を前記第1の速度で除算した値を第1の時間と、
(V) 前記第1の基準時刻から第1の時間経過することにより前記不定形要素群の前記先端部が前記分岐部付近に到達する時刻を第1の到達時刻と、
それぞれ定義し、
前記第1の到達時刻を含む第1の時間帯に、前記検査済みの物品の検査結果に応じた振分動作を実行させる第1のタイミング制御部、
をさらに備えることを特徴とするX線検査システム。
【請求項7】
請求項4または請求項6に記載のX線検査システムにおいて、
前記判定部は、
(VI) 前記X線透過情報に含まれる前記異物につき、前記第1の基準時刻における前記異物のそれぞれの位置から前記第2のセンサまでの距離であって、前記物品の搬送方向に沿って求められる距離を第2の距離と、
(VII) 前記第2の距離を前記第1の搬送速度で除した値を第2の時間と、
(VIII) 前記第1の基準時刻から第2の時間経過することにより前記物品が前記第2のセンサ付近に到達する時刻を第2の到達時刻と、
それぞれ定義し、
各異物について前記第2の到達時刻を含む第2の時間帯に前記第2の物品を検出できるか否かにより、前記第2の物品の振分状況を判定することを特徴とするX線検査システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2006−78258(P2006−78258A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−260983(P2004−260983)
【出願日】平成16年9月8日(2004.9.8)
【出願人】(000147833)株式会社イシダ (859)
【Fターム(参考)】