説明

X線検査システム

【課題】X線検査装置の稼動状況が非定常状態の場合であっても、良品側の搬送経路に不良品が混入することを防止できるX線検査システムを提供する。
【解決手段】物品の搬送方向から見てX線検査システムの上流側または下流側の装置が停止することにより、X線検査システムの稼動状況が非定常状態となった場合、X線検査システム1の動作モードは停止モードに移行させられる。そして、停止モード移行時にX線検査システム1に滞在していた物品は、所定の数式によって求められる時間が経過するまでの間、X線検査装置による検査の結果に基づいて良品用および不良品用のコンベアのいずれかに振り分けられる。これにより、非定常状態となっても不良品が良品用のコンベアに振り分けられることを防止できる。また、非定常状態となってX線検査システムの動作が停止しても、シールドボックス内に物品5が残存するという問題も生じない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品にX線を照射して所定の検査を実行するとともに、検査結果に基づいて物品を良品と不良品とに振り分けるX線検査システムに関するもので、特にシステムの稼動状況が非定常状態である場合における振分手順の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、物品にX線を照射して異物の混入状況、物品の割れ欠け状態、または物品内の単品の不足状態等の検査(以下、これらの検査を総称して「X線検査」とも呼ぶ)を行い、その検査結果に基づいて物品を良品と不良品とに振り分けるX線検査装置が知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
【特許文献1】特開2003−050215号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、X線検査装置による異物の混入状況等の検査は、外部にX線が漏洩して人体に悪影響を及ぼすのを防止するため、鉛等の重金属によって形成されたシールドボックス内で物品にX線を照射することによって実行される。また、X線検査装置で検査される物品は、その物品の搬送方向からみて上流側の装置から、例えばベルトコンベアを介して供給される。さらに、X線検査装置で検査が完了した物品は、下流側の装置にベルトコンベアを介して供給される。
【0005】
したがって、X線検査装置の上流側および下流側のいずれかの装置で不具合が生じ、その影響により、ベルトコンベアを介して接続されるX線検査装置の動作が停止させられた場合、X線検査装置のオペレータは、その停止の際にシールドボックス内に物品が残存しているか否かを視認することができない。そして、場合によっては、シールドボックス内に残存している不良品が検査されることなく良品として扱われ、その結果、良品側に振り分けられるといった問題が生ずる。
【0006】
また、上流側の装置、下流側の装置、およびX線検査装置のそれぞれは、通常、ベルトコンベアによる物品の搬送速度が所定の範囲内になるように設定される。そして、各装置は、物品が所定の搬送速度で搬送される場合において正しく所定の処理(例えば、物品の計量、包装、検査、および振分等の各処理)が実行できるように設定されている。なお、搬送速度の範囲は、物品の種類や、X線検査システムの要求サイクルタイム等によって予め設定される。
【0007】
したがって、ベルトコンベアによる物品の搬送速度が所定範囲内とならない場合、例えば、X線検査装置を再起動させた直後や搬送速度が変動して所定範囲外となる場合には、正しくX線検査等の処理を実行することができない。その結果、本来不良品として取り扱うべき物品を誤って良品側に振り分けるという問題も生ずる。
【0008】
このように、X線検査装置が停止した場合や、物品の搬送速度が所定範囲内とならない場合、すなわち、X線検査装置の稼動状況が非定常状態となる場合には、不良品が良品側に振り分けられて混入するといった問題が生ずる。そして、以上の問題は、X線検査装置を含むX線検査システムについても同様に生ずる。
【0009】
そこで、本発明では、X線検査装置の稼動状況が非定常状態であっても、良品側の搬送経路に不良品が混入することを防止できるX線検査システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、請求項1の発明は、X線検査システムであって、X線の外部への漏洩を防止するシールドボックスを有し、前記シールドボックス内を搬送される物品に前記X線を照射して当該物品における異物の混入状況を検査するX線検査装置と、前記X線検査装置から受け取った物品を、良品用の第1の搬送経路と、不良品用の第2の搬送経路とに選択的に振り分ける振分装置と、を備え、前記振分装置は、前記X線検査装置から受け渡された前記物品を前記第1および第2の搬送経路に選択的に振り分ける分岐部、を有し、前記X線検査装置は、分岐部の振分動作を制御して、前記システムの稼動状況が定常状態の場合には、前記検査の結果に応じて、前記物品を前記第1および第2の搬送経路に選択的に振り分け、前記システムの稼動状況が非定常状態の場合には、前記物品を前記第2の搬送経路に振り分ける振分処理部、を有することを特徴とする。
【0011】
また、請求項2の発明は、請求項1に記載のX線検査システムにおいて、前記振分処理部は、前記システムが停止状態から再起動して定常状態に遷移した時点において、前記X線検査装置および前記振分装置の前記分岐部に滞在する前記物品のそれぞれを前記第2の搬送経路に振り分けることを特徴とする。
【0012】
また、請求項3の発明は、請求項2に記載のX線検査システムにおいて、前記X線検査装置内における前記物品の搬送路の長さを第1の搬送路長と、前記分岐部における前記物品の搬送路の長さを第2の搬送路長と、前記定常状態における前記物品の搬送速度を定常速度と、前記物品の長さに前記第1および第2の搬送路の長を加算したものを前記定常速度で除した値を第1の経過時間と、それぞれ定義した場合、前記振分処理部は、前記物品の搬送速度が定常速度になった時点から前記第1の経過時間が経過するまでの間、前記物品のぞれぞれを前記第2の搬送経路に振り分けることを特徴とする。
【0013】
また、請求項4の発明は、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のX線検査システムにおいて、前記振分処理部は、前記物品の搬送方向から見て、前記X線検査装置の上流側または前記振分装置の下流側の装置が停止した場合に、上流側または下流側の装置が停止した時点において前記X線検査装置および前記分岐部に滞在する前記物品のそれぞれを、前記検査の結果に基づいて前記第1または第2の搬送経路に振り分けるとともに、振り分け処理が完了した後に前記X線検査装置および前記振分装置を停止状態にすることを特徴とする。
【0014】
また、請求項5の発明は、請求項4に記載のX線検査システムにおいて、前記X線検査装置内の前記物品の搬送路の長さを第1の搬送路長と、前記分岐部の前記物品の搬送路の長さを第2の搬送路長と、前記定常状態における前記物品の搬送速度を定常速度と、前記物品の長さに前記第1および第2の搬送路長を加算した値を前記定常速度で除したものを第1の経過時間と、それぞれ定義した場合、前記振分処理部は、前記上流側または下流側の装置が停止した時点から前記第1の経過時間が経過するまで、前記物品のぞれぞれを前記検査の結果に基づいて前記第1または第2の搬送経路に振り分けることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1から請求項5に記載の発明によれば、X線検査システムが非定常状態となった場合には、物品を不良品用の第2の搬送経路に振り分けることができる。そのため、外部から内部の状況を視認できず、検査状況を把握できないシールドボックス内の物品について、未検査にも関わらず良品として第1の搬送経路に振り分けられ、良品側に不良品が混入することを防止できる。
【0016】
すなわち、内部を視認できるシールドボックスの場合、オペレータは、非定常状態となった時点における各物品の搬送位置を把握することができる。これにより、オペレータは、各物品についてX線による異物の混入状況の検査が完了しているか否かを判断することができる。そのため、オペレータは、この搬送位置に基づいて検査の完了した物品についてのみ振り分け処理を実行することができる。
【0017】
これに対して、請求項1から請求項5に記載されたシールドボックスは、X線が外部に漏洩することを防止するため設けられたものであり、その内部を視認することができない。そこで、非定常状態となった時点における各物品を第2の搬送経路に振り分ける。これにより、良品も第2の搬送経路に振り分けられることになるが、不良品が第1の搬送経路に振り分けられて良品側に混入することを確実に防止できる。
【0018】
特に、請求項2に記載の発明によれば、再起動時にX線検査システムの稼動状況が非定常状態となる期間において、X線検査装置および振り分け装置の分岐部に滞在する物品を不良品用の第2の搬送経路に振り分けることができる。そのため、不良品が良品用の第1の搬送経路に振り分けられて良品側に混入することを確実に防止できる。
【0019】
特に、請求項3に記載の発明によれば、再起動した時点からX線検査システム1の稼動状況が定常状態に遷移して第1の経過時間が経過するまで、物品を第2の搬送経路に振り分けることができる。そのため、X線検査システムの稼動状況が非定常状態の期間にX線検査装置および振り分け装置の分岐部に滞在した物品を確実に第2の搬送経路に振り分けることができ、良品側に不良品が混入することを確実に防止できる。
【0020】
特に、請求項4に記載の発明によれば、X線検査装置および振分装置の上流側または下流側の装置が停止しても、X検査装置および振分装置の稼動状況を停止することなく振分動作を継続することができる。そのため、当該停止した時点においてX線検査装置および振分装置の分岐部に滞在する物品を検査の結果に応じて確実に振り分けることができる。
【0021】
特に、請求項5に記載の発明によれば、上流側または下流側の装置が停止した時点から前記第1の経過時間が経過するまで、物品の振分動作を継続することができる。そのため、上流側または下流側の装置が停止した時点にX線検査装置および振分装置の分岐部に滞在する物品を、検査の結果に応じて確実に振り分けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0023】
<1.第1の実施の形態>
<1.1.X線検査システムの構成>
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るX線検査システム1の全体構成の一例を示す図である。X線検査システム1は、図1に示すように、主として、X線検査装置10と、振分装置80とを備える。
【0024】
X線検査装置10は、上流側から搬送方向AR1(Y軸正方向:紙面水平方向)に沿って搬送される各物品5に対してX線検査を実行することにより、各物品の内部または各物品のパッケージ内に包装された内容物に混入する異物の混入状況、各物品のパッケージ内に包装された内容物の数量、および、各物品のパッケージ内に包装された内容物の割れや欠け状況等を検査する装置である。図1に示すように、X線検査装置10は、主として、X線照射部20、ラインセンサ30、シールドボックス40、コンベア41、および、表示部50を備える。
【0025】
コンベア41は、搬送方向AR1から見てX線検査装置10の上流側の装置(例えば、物品の包装機等:図示省略)のコンベア51から供給される物品5を略水平方向に搬送する装置である。上流側の装置から受け渡された物品5は、シールドボックス40内を搬送させられて、X線による異物混入検査が行われる。すなわち、コンベア41は、物品5の検査領域であるシールドボックス40内に搬送する搬送部として使用される。そして、検査の完了した物品5は、コンベア41によって振分装置80に受け渡される。
【0026】
図2は、X線検査装置10のシールドボックス40の構成の一例を示す斜視図である。X線照射部20は、図1および図2に示すように、シールドボックス40の内部であって、コンベア41の上方に配置される。X線照射部20から照射されたX線は、コンベア41の下方に配置されるラインセンサ30で検出される。
【0027】
ラインセンサ30は、コンベア41を挟んでX線照射部20と逆側に配置される。すなわち、ラインセンサ30は、X線照射部20の略鉛直下方に配置される。また、ラインセンサ30は、搬送方向AR1に対して略垂直な方向(X軸方向)に配列された複数の受光素子31を有する。
【0028】
これにより、ラインセンサ30は、X線照射部20から照射されて物品5を透過したX線を各受光素子31にて検出し、1ライン分の画像データを検出することができる。そのため、コンベア41によって物品5を移動させつつ、1ライン分の画像データを複数検出することによって、物品5全体のX線透過画像を取得することができる。
【0029】
表示部50は、後述する図3に示すように、信号線74を介して制御部70と電気的に接続されており、制御部70からの画像信号に基づいて、所定の文字列やコマンドボタン等の図形を表示する。また、表示部50は、指や専用のペンで画面に触れることにより画面上の位置を指定することができる「タッチパネル」としての機能を有する。
【0030】
これにより、X線検査システム1のオペレータ(以下、単に、「オペレータ」と称する)は、表示部50に表示された内容に基づき、X線検査装置10に対して所定の動作を実行させることができる。また、表示部50には、物品の異物混入に関する検査の結果を表示することもできる。
【0031】
制御部70は、図1に示すように、プログラムや変数等を格納するメモリ71と、メモリ71に格納されたプログラムに従った制御を実行するCPU75とを備える。また、制御部70は、後述する図3に示すように、X線照射部20、ラインセンサ30、およびシールドボックス40等と、信号線74を介して電気的に接続される。したがって、CPU75は、メモリ71に格納されるプログラムに従って、X線照射部20からX線の照射処理、ラインセンサ30による撮像処理、コンベア41による物品5の搬送処理等に関する制御を所定のタイミングで実行することができる。
【0032】
振分装置80は、X線検査装置10の検査結果に基づいて、物品5を、例えば、異物が混入しない良品と、異物が混入する不良品とに振り分ける装置である。図1に示すように、振分装置80は、主として、検査済みの物品5を振り分けるドロップベルト81と、光電センサ85、86とを備える。
【0033】
ドロップベルト81は、X軸と略平行な回転軸81aを中心としてZ軸方向(上下方向)に回動可能に設けられた分岐部である。また、ドロップベルト81は、コンベア41と同様に、受け渡された物品5を搬送することができる。
【0034】
したがって、X線検査装置10の検査によって良品であると判断された物品5は、不図示の駆動機構によってドロップベルト81が略水平姿勢(図1の実線)とさせられることにより、良品用のコンベア82に受け渡される。一方、X線検査装置10の検査によって不良品であると判断された物品5は、ドロップベルト81が回動させられて図1の点線の姿勢とさせられることにより、不良品用のコンベア83に受け渡される。このように、ドロップベルト81は、検査済みの物品5をコンベア82およびコンベア83のいずれかに選択的に分岐させることができる。
【0035】
光電センサ85は、コンベア82に設けられており、X線検査装置10の検査によって良品と判断された物品5が、コンベア82に正しく振り分けられたか否かを検出するために使用される。すなわち、光電センサ85は、良品用の搬送経路に設けられた非接触型のセンサである。
【0036】
また同様に、光電センサ86は、コンベア83に設けられており、X線検査装置10の検査によって不良品であると判断された物品5が、コンベア83に正しく振り分けられたか否かを検出するために使用される。すなわち、光電センサ86は、不良品用の搬送経路に設けられた非接触型のセンサである。したがって、制御部70のCPU75は、光電センサ85、86の「ON」、「OFF」状態を検出することにより、物品5の振分状況を確認することができる。
【0037】
制御部90は、制御部70と同様に、プログラムや変数等を格納するメモリ91と、メモリ91に格納されたプログラムに従った制御を実行するCPU95とを備える。したがって、CPU95は、メモリ91に格納されるプログラムに従って、ドロップベルト81の振り分け処理等の制御を所定のタイミングで実行することができる。
【0038】
<1.2.X線検査装置の機能構成>
図3は、X線検査装置10の機能構成を説明するための図である。図3に示すように、CPU75は、主として、異物検出部76a、入り数検出部76b、割れ欠け検出部76c、振分処理部77、および停止時処理部78を有し、これらによりX線検査装置10の機能が実現される。また、メモリ71には、主として、画像データ格納部72、およびパラメータ格納部73の各格納領域が確保され、異物検出、入り数検査、および割れ欠け処理のそれぞれで使用されるデータが格納される。
【0039】
画像データ格納部72には、ラインセンサ30で検出された物品5全体のX線画像データ72aが格納される。図4は、ラインセンサ30によって撮像されたX線画像を説明するための図であり、図4(a)は異物を含まない物品のX線画像の例を、また、図4(b)は異物を含むX線画像の例を、それぞれ示す。
【0040】
X線画像データ72aは、ラインセンサ30によって検出された1ライン分の画像データ(例えば、図4(b)の場合、j=j0上の画像データ)の集合体であり、2次元画像として構成される。すなわち、画像データ72aは、ラインセンサ30によって検出された1ライン分の画像データを、撮像された時間順にj座標の昇順方向に並べた時系列データであり、物品5のX線透過情報として使用される。
【0041】
なお、必要な場合、ラインセンサ30で検出したデータにシェーディング等の補正処理を施したものをX線画像データ72aとして保存してもよい。
【0042】
異物検出部76aでは、画像データ格納部72に格納されたX線画像データ72aに基づき、物品5の混入状況の検査処理が実行される。図5は、図4(b)の物品5を透過したX線画像データを説明するための図である。ここでは、図4および図5を参照しつつ、X線画像データ72aによる異物検査の原理について説明する。なお、図5(a)は物品5の異物を含む部分の断面を、図5(b)は、図5(a)の断面部を透過した1ライン分のX線画像データであって、図4(b)のj=j0に対応する濃度分布曲線61を、それぞれ示す。
【0043】
例えば、本実施の形態においてX線検査の対象となる物品5の濃度分布曲線61は次のようになる。すなわち、(1)X<X1、および、X>X6となる範囲のように、X線が物品5を透過せずにラインセンサ30の各受光素子31に到達する場合、濃度値Dは最大値D1となる。また、(2)X1≦X≦X6となる範囲のように、X線が物品5を透過して各受光素子31に到達する場合、濃度値Dは、物品のZ軸方向の厚みが増加するにしたがって減少(反比例)する。ただし、(3)ただし、X3≦X≦X4となる範囲のように、異物Pが存在する部分の濃度値(D=D3)では、異物Pが存在しない部分の濃度値(D=D2)と比較して小さくなる。
【0044】
したがって、例えば、閾値分布曲線62を図5(b)の一点鎖線のように設定することにより、物品5に異物Pが含まれるか否かを判断することができる。すなわち、各X座標について、濃度分布曲線61の濃度値Dmと閾値分布曲線62の濃度値Dthを比較する。そして、Dm<Dthを満たす場合には、対応するX座標の部分に異物Pが含まれるものと判断する。一方、Dm≧Dthを満たす場合には、対応するX座標の部分に異物Pが含まれないものと判断する。
【0045】
このように、異物検出部76aでは、この閾値処理をX線画像データ72aのすべてのj座標について実行することにより、物品5全体にわたって異物の混入状況の検査を実行することができる。
【0046】
入り数検出部76bは、異物検出部76aと同様に、画像データ格納部72に格納されたX線画像データ72aに基づき、パッケージに包装された物品5の内容物の数量を計数する処理を施す。
【0047】
具体的には、物品5のパッケージ全体が含まれるように取得したX線画像データ72aについて所定の閾値によって2値化処理を施すことにより、パッケージ内に含まれるの各内容物を抽出する。そして、抽出された内容物の数量が、所望の数量と一致するか否かを判断する。なお、2値化処理に使用する閾値は実験等によって予め求めても良い。
【0048】
割れ欠け検出部76cは、異物検出部76aおよび入り数検出部76bと同様に、画像データ格納部72に格納されたX線画像データ72aに基づき、パッケージ内に包装された物品5の内容物が、所望の形状を有するか否かの検査を施す。
【0049】
具体的には、物品5のパッケージ全体が含まれるように取得したX線画像データ72aについて所定の閾値によって2値化処理を施すことにより、パッケージ内に含まれる各内容物を抽出する。そして、抽出された内容物の形状と、後述するパラメータ格納部73に予め格納された割れや欠けのない内容物の形状とを比較することにより、抽出された内容物が所望の形状を有するか、または、内容物に割れや欠けが存在するかを判断する。なお、2値化処理に使用する閾値は、入り数検出部76bと同様に、実験等によって予め求めても良い。
【0050】
振分処理部77は、異物検出部76a、入り数検出部76bおよび割れ欠け検出部76cの検査結果に基づき、振分装置80のドロップベルト81による振り分け制御を実行する。例えば、異物検出部76aによって物品5が不良品であると判断された場合、振分処理部77から振分装置80に向けてNG信号が所定のタイミングで送信される。そして、NG信号を受信した振分装置80の制御部90が所定のタイミングでドロップベルト81を動作させることにより、物品5はドロップベルト81から不良品用のコンベア83に受け渡される。
【0051】
また、振分処理部77は、振分装置80の光電センサ85、86による検出結果に基づいて、物品5が正しく振り分けられたか否かの検査を実行する。すなわち、異物検出部76aによって良品と判断された場合には、物品5がコンベア82に振り分けられた否かを光電センサ85の検出結果に基づいて判断する。一方、不良品と判断された場合には、物品5がコンベア83に振り分けられたか否かを光電センサ86の検出結果に基づいて判断する。すなわち、振分処理部77は、物品5が正しく振り分けられたか否かを判定する判定部としても使用される。
【0052】
同様に、入り数検出部76bによって物品5のパッケージ内の内容物の数量が所望の数量と一致しないと判断された場合、および割れ欠け検出部76cによって物品5のパッケージ内の内要物に割れや欠けが存在すると判断された場合にも、上述の手順によって物品5はコンベア83に受け渡される。そして、振分処理部77によって物品5が正しく振り分けられたか否かの検査も実行される。
【0053】
なお、NG信号が送信されるタイミング、およびドロップベルト81による振り分け動作のタイミングについては、後述する。
【0054】
停止時処理部78は、物品5の搬送方向から見てX線検査システム1の上流側または下流側の装置(図示省略)のいずれかで不具合が発生し、これら上流側または下流側の装置の動作が停止することにより、X線検査システム1の稼動状況が定常状態から非定常状態に遷移した場合に、物品5の異物検出処理および振分処理を統括して制御する処理部である。なお、停止時処理部78による処理手順の詳細については後述する。
【0055】
パラメータ格納部73には、異物検出部76a、入り数検出部76b、および、割れ欠け検出部76cの各検出部で使用されるデータであって予め実験等によって求められたもの、すなわち、2値化処理で使用される閾値や、割れ欠け検出部76cで使用される内容物の所望の形状データ等が格納される。
【0056】
外部記憶装置79は、図3に示すように、制御部70と信号線74を介して接続されており、制御部70との間で所定の制御信号、およびデータの送受信を行うことができる。そのため、画像データ格納部72およびパラメータ格納部73に格納されるデータを外部記憶装置79に保存したり、外部記憶装置79に保存されるデータを画像データ格納部72およびパラメータ格納部73に格納することができる。また、X線検査装置10による検査結果を外部記憶装置79に保存することも可能である。
【0057】
警報部57は、X線検査装置10での検査処理や振分装置80の振分処理等で異常が発生した場合に、その旨をオペレータに知らせるために使用される。すなわち、異常が発生すると、警報部57は光や音等の警報を発することにより、オペレータに対してX線検査システム1の稼動状況が非定常状態に遷移したことを通知することができる。
【0058】
<1.3.X線検査システムによる物品の振り分け手順>
図6は、物品5の振分処理を説明するためのタイミングチャートである。図7は、定常状態における物品5の振分手順を説明するためのフローチャートである。図8は、振分動作を説明するための図である。図9は、非定常状態における物品5の振分手順を説明するためのフローチャートである。ここでは、図6ないし図9を参照しつつ、X線検査システム1の稼動状況が定常状態および非定常状態における物品5の振分手順について説明する。
【0059】
なお、説明の都合上、時刻t1より前の時点において、ドロップベルト81は、図8に示す実線の姿勢(略水平姿勢)にて保持されているものとする。また、以下では異物の混入状況の検査の結果に基づき、物品5を振り分ける処理について説明しているが、入り数検査および割れ欠け検査についても同様に振分処理を実行することができる。
【0060】
X線検査システム1の稼動状況が定常状態である場合における物品5の振分処理では、まず、ラインセンサ30によって物品5全体のX線画像の撮像が行われる(図7のステップS101)。そして、撮像されたX線画像データ72aは、メモリ71の画像データ格納部72に格納される(図3参照)。次に、X線画像の撮像が完了した時刻t2から時刻t3までの期間において(図6参照)、異物検出部76a(図3参照)は、物品5内に異物が存在するか否かを検査する異物検出処理を実行する(S102)。
【0061】
ステップS102の異物検出処理の結果、物品5内に異物が混入している判断された場合には(S103)、時刻t2から時間T1経過した時刻t4において、振分処理部77から振分装置80の制御部90(図1、図3参照)に向けてNG信号が送信される。
【0062】
続いて、NG信号を受信した振分装置80の制御部90は、ドロップベルト81の動作を制御して、時刻t6から時間T3の間、ドロップベルト81の姿勢を図8の点線で示される姿勢にて保持する。これにより、異物を含む物品5は、不良品用の搬送ラインであるコンベア83に振り分けられる(S104)。そして、時刻t6から振分時間T3が経過した時刻t10において、ドロップベルト81の姿勢は、制御部70によって、図8の点線で示される姿勢から実線で示される姿勢に遷移させられる。
【0063】
なお、時刻t2からNG信号を送信する時刻t4までの待機時間T1、時刻t2から振分動作を開始する時刻t6までの待機時間T2、および振分時間T3は、異物検出処理に要する時間、物品5の搬送速度、物品5の搬送方向AR1の長さ等に基づき予め設定してもよい。
【0064】
ステップS104において物品5がコンベア83に振り分けられると、物品5は、さらに搬送方向AR3(図8参照)に搬送され続ける。そのため、物品5の下流側の先端部5aが光電センサ86に到達する時刻t8から上流側の先端部5bが光電センサ86に到達する時刻t14までの間、光電センサ86は、「ON」状態となる(図6参照)。したがって、本実施の形態では、物品5に含まれる異物の混入位置が光電センサ86付近に到達するタイミングに、光電センサ86の「ON」、「OFF」状態を確認することによって、異物を含む物品5が正しくコンベア83に振り分けられたか否かの判断を行う。
【0065】
すなわち、時刻t2から時間T15が経過した時点を含む時間帯に、光電センサ86が物品5を検出して「ON」状態となる期間が存在する場合(S105)、振分処理部77は、物品5のうち異物の含まれる部分が正しく不良品側のコンベア83に振り分けられたと判断して振分処理を終了する。一方、当該時間帯に光電センサ86が「OFF」状態のままで「ON」状態に遷移しない場合(S105)、物品5の異物の含まれる部分が正しくコンベア83に振り分けられていないと判断し、警報部57によってオペレータに対して異常が発生した旨を通知して振分処理を終了する。
【0066】
なお、光電センサ86の「ON」、「OFF」状態を監視する時間帯の長さT7は、物品5の長さL0(図8参照)や物品5の搬送速度V等に基づいて予め設定してもよい。
【0067】
これに対して、ステップS102の異物検出処理の結果、物品5内に異物が混入していないと判断された場合には(S103)、振分処理部77からはNG信号が送信されず、ドロップベルト81は、図8の実線で示される略水平姿勢にて保持され続ける。これにより、異物を含まない物品5は良品用の搬送ラインであるコンベア82に振り分けられて(S106)、さらに搬送方向AR2(図8参照)に搬送され続ける。そして、物品5の下流側の先端部5aが光電センサ85に到達する時刻t7から上流側の先端部5bが光電センサ85に到達する時刻t13までの間、光電センサ85は、「ON」状態となる(図6参照)。したがって光電センサ85の「ON」、「OFF」状態を確認することによって、異物を含まない物品5が正しくコンベア83に振り分けられたか否かの判断を行う。
【0068】
すなわち、時刻t2から時間T14が経過した時点を含む時間帯に光電センサ85が物品5を検出して「ON」状態となる期間が存在する場合(S107)、振分処理部77は、物品5が正しく良品側のコンベア82に振り分けられたと判断して振分処理を終了する。一方、当該時間帯に光電センサ85が「OFF」状態のままで「ON」状態に遷移しない場合(S107)、物品5が正しくコンベア82に振り分けられていないと判断し、警報部57によってオペレータに対して異常が発生した旨を通知して振分処理を終了する。
【0069】
なお、光電センサ85の「ON」、「OFF」状態を監視する時間帯の長さT6は、物品5の搬送速度Vや物品5の長さL0等に基づいて予め設定してもよい。
【0070】
これに対して、X線検査システム1の上流側または下流側の装置(図示省略)が停止してX線検査システム1の稼動状況が非定常状態となる場合、以下の手順によって振分処理が実行される。
【0071】
ステップS201では、不具合等によって停止した装置からX線検査装置10に向けて送信される停止信号が、X線検査装置10によって受信されたか否かの確認を行う。そして、X線検査装置10の制御部70によって、この停止信号が受信された判断されると、停止時処理部78が起動させられて、X線検査装置10の動作モードが通常の検査を実行可能な通常モードから、X線検査システム1の動作を停止させる停止モードに移行する(S202)。すなわち、X線検査装置10および振分装置80の動作モードは、非定常状態に対応したものに移行する。
【0072】
ここで、停止モードに移行する際、コンベア51による物品の搬送動作も停止させられる。これにより、X線検査装置10の上流側からの物品5の供給は停止させられる。そのため、X線検査システム1では、停止モードに移行した際にX線検査装置10および振分装置80に滞在する物品(以下、「停止時滞在物品」とも呼ぶ)5について振分動作を実行することになる。
【0073】
ステップS203およびS204では、停止時滞在物品5のすべてがコンベア82、83のいずれかに振り分けられるまでの間、図7のステップS101〜S108の処理、すなわち、X線検査システム1の稼動状況が定常状態の場合に実行される検査処理および振分処理と同様な処理が実行される。
【0074】
上述のように、X線検査システム1の稼動状況が定常状態の場合、コンベア41、ドロップベルト81、およびコンベア82、83のそれぞれによる物品5の搬送速度は、所定の範囲内となるように設定される。したがって、
(1)搬送方向AR1に沿ったコンベア41の搬送路の長さをL7と、
(2)搬送方向AR1に沿ったドロップベルト81の搬送路の長さをL4と、
(3)搬送方向AR1に沿った物品5の長さをL0と、
(4)コンベア41、82、83、およびドロップベルト81のそれぞれによる物品5の搬送速度をVと、
それぞれ定義すると、X線検査システム1の動作モードが停止モードに移行した際にX線検査システム1内に滞在する停止時滞在物品5のすべてがコンベア82、83のいずれかに振り分けられるまでに必要となる経過時間の最大値T21は、数1によって求められる。
【0075】
T21 = (L0+L7+L4)/V ・・・ (数1)
【0076】
このように、本実施の形態では停止モードに移行した場合、停止モードに移行した時点から時間T21が経過するまでの間、X線検査システム1を稼動させ続けることができる。これにより、経過時間T21を経た後にX線検査システム1の動作を停止させてもシールドボックス40内に停止時滞在物品5が残存することがなく、すべての停止時滞在物品5は、コンベア82、83のいずれかに振り分けられる。なお、所定の範囲内にある搬送速度を、特に、「定常速度」とも呼ぶ。
【0077】
さらに、L7、L4、L0、およびVに加えて、
(5)良品用のコンベア82のうち、上流側の先端部82aから光電センサ85までの部分につき、良品の搬送方向AR2に沿った搬送路の長さをL5と、
(6)不良品用のコンベア83のうち、上流側のコンベア先端部83aから光電センサ86までの部分につき、不良品の搬送方向AR3に沿った搬送路の長さをL6と、
それぞれ定義すると、停止時滞在物品5のすべてが、良品側の光電センサ85に到達するために必要となる経過時間の最大値T22、および不良品側の光電センサ86に到達するために必要となる経過時間の最大値T23は、それぞれ数2および数3によって求められる。
【0078】
T22 = (L0+L7+L4+L5)/V ・・・ (数2)
【0079】
T23 = (L0+L7+L4+L6)/V ・・・ (数3)
【0080】
したがって、停止モードに移行した場合であってもX線検査システムを稼動させ続け、停止モードに移行した時点から時間T22、T23のうち最大となる方の時間が経過した後にX線検査システム1の動作を停止させることにより、光電センサ85、86の検出結果に基づいて停止時滞在物品5を良品と不良品とに確実に振り分けることができる。
【0081】
このように、ステップS203およびS204では、所定の経過時間T21ないしT23のいずれかが経過するまで停止時滞在物品5の振分動作が実行される。そして、所定の時間が経過すると(S204)、X線検査装置10および振分装置80の動作が停止させられて(S205)、X線検査システム1による検査処理および振分処理が終了する。
【0082】
ところで、シールドボックス40は、その内部で照射されたX線が外部に漏洩することを防止するため、鉛等の重金属によって形成される。これにより、シールドボックス40の内部の状況をシールドボックス40の外部から視認することができない。そのため、X線検査装置10の動作が停止しても、オペレータは、シールドボックス40内部の状況(例えば、シールドボックス40内に物品5が存在するかどうか等)を把握することができないといった問題が生ずる。
【0083】
また、シールドボックス40内には、X線照射部20から物品5に向けてX線が照射されている。したがって、被爆防止のため、オペレータ自身の作業によって残存する物品5を取り除くことが困難な場合もある。
【0084】
これに対して、本実施の形態では、シールドボックス40内を含めてX線検査システム1内に滞在する物品5が、すべてコンベア82、83のいずれかに振分られた後にX線検査システム1の動作を停止することができる。そのため、本実施の形態では、上述の問題、すなわち、シールドボックス40内に滞在する物品5の把握、および、シールドボックス40内から物品5を取り除くことに関する問題は生じない。
【0085】
<1.4.第1の実施の形態のX線検査システムの利点>
以上のように、第1の実施の形態では、X線検査システム1の上流側または下流側の装置が停止し、X線検査システム1の稼動状況が非定常状態となった場合でも、X線検査システム1の動作モードが停止モードに移行した時点から所定時間T21〜T23のいずれかが経過するまでの間、X線検査システム1を稼動しつづけることができる。
【0086】
そのため、停止時滞在物品5のすべてがコンベア82、83のいずれかに振り分けられるまでの間、検査処理および振分処理を継続して実行し、その後にX線検査装置10および振分装置80を停止状態にすることができる。その結果、シールドボックス40内に停止時滞在物品5が残存するという問題は生じない。また、不良品が良品用のコンベア82に混入することを確実に防止できる。
【0087】
<2.第2の実施の形態>
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。第2の実施の形態におけるX線検査システム1は、第1の実施の形態のX線検査システム1と比較して、停止時処理部78に代えて再起動時処理部178(後述する図10参照)を有する点を除いては、第1の実施の形態と同じである。そこで、以下ではこの相違点を中心に説明する。
【0088】
なお、以下の説明において、第1の実施の形態のX線検査システム1における構成要素と同様な構成要素については同一符号を付している。これら同一符号の構成要素は、第1の実施の形態において説明済みであるため、本実施形態では説明を省略する。
【0089】
<2.1.X線検査装置の機能構成>
図10は、本実施の形態におけるX線検査システム1の制御部70の概略構成を示す機能ブロック図である。上述のように、X線検査システム1のコンベア41、ドロップベルト81、およびコンベア82、83のそれぞれによる物品5の搬送速度は、X線検査システム1の稼動状況が定常状態の場合、所定の範囲内となるように設定される。すなわち、コンベア41、82、83、およびドロップベルト81は、略同一の搬送速度で物品5を搬送する。そして、X線検査システム1にて実行される検査処理および振分処理は、この搬送速度が所定の範囲内となる定常状態において正しく実行できるように調整される。
【0090】
しかし、X線検査システム1のX線検査装置10および振分装置80を停止状態から再起動する場合、搬送速度の値はゼロから所定値まで増加させられる。すなわち、再起動時から一定期間内は搬送速度が所定の範囲内とならず、X線検査システム1の稼動状況は非定常状態となる。
【0091】
また、X線検査システム1を再起動させた際に、搬送方向AR1から見てX線照射部20より下流側に物品5が残存している場合、この残存する物品5がラインセンサ30から見て下流側に位置すると、物品5のX線検査を実行することなくドロップベルト81に到達することになる。その結果、不良品であるにも関わらず良品側に振り分けられるといった問題が生ずる可能性もある。
【0092】
そこで、再起動時処理部178では、再起動時のようにX線検査システム1の稼動状況が非定常状態となる場合において、X線検査システム1内の物品5をすべて不良品用のコンベア83に振り分ける処理を実行する。なお、停止時処理部78による処理手順の詳細については後述する。
【0093】
<2.2.X線検査システムによる物品の振り分け手順>
図11は、再起動した後にX線検査システム1の稼動状況が定常状態に移行するまでの期間における物品5の振分手順を説明するためのフローチャートである。図12は、X線検査システム1が再起動した後に定常状態に移行するまでの期間におけるNG信号の送信処理および振分動作を説明するためのタイミングチャートである。ここでは、図11および図12と、第1の実施の形態で説明した図6とを参照しつつ、再起動時における物品5の振分処理について説明する。
【0094】
X線検査システム1が再起動させられると、X線検査装置10のコンベア41と、振分装置80のドロップベルト81およびコンベア82、83とのそれぞれは、物品5の搬送動作を開始する。そこで、ステップS301では、再起動時処理部178によってコンベア41、82、83、およびドロップベルト81のそれぞれによる物品5の搬送速度の検出処理が実行される。
【0095】
ステップS301において、それぞれの搬送速度が所定範囲内まで到達していない場合には、X線検査装置10から振分装置80に向けてNG信号が送信され、再度ステップS301の処理が実行される(S302)。振分装置80がNG信号を受信すると、ドロップベルト81は回転軸81aを中心に回動させられて、期間T3の間、図8に示す点線の姿勢に保持される。
【0096】
ここで、X線検査装置10から送信されるNG信号とドロップベルト81による振分動作の関係について説明する。図12は、X線検査システム1が再起動した後に定常状態に移行するまでの期間におけるNG信号の送信処理および振分動作を説明するためのタイミングチャートである。
【0097】
振分装置80は、X線検査装置10から送信されたNG信号を1回受信すると、ドロップベルト81は、当該NG信号を受信した時点から時間T3が経過するまでの間、図8に示す点線の姿勢に保持される。したがって、コンベア41、82、83、およびドロップベルト81のそれぞれによる搬送速度の検出処理を時間T3毎に行い、これら搬送速度が所定の範囲内でないと判断された場合には、X線検査装置10から振分装置80に向けて時間T3毎にNG信号を送信することにより、ドロップベルト81は、図8に示す点線の姿勢に保持される続ける(図12参照)。そのため、NG信号が送信され続けられる期間において、各物品5は、不良品用のコンベア83に振り分けられることになる。
【0098】
一方、コンベア41、82、83、およびドロップベルト81による搬送速度のすべてが所定の範囲内となった場合には(S301)、ステップS303およびS304の処理が実行される。
【0099】
ステップS303およびS304では、ステップS301において搬送速度が所定の範囲内となったと判断された際にX線検査システム1内に滞在する物品(以下、「再起動時滞在物品」とも呼ぶ)5のすべてを、不良品用のコンベア83に振り分ける処理を実行する。
【0100】
具体的には、搬送速度が所定の範囲内となったと判断された時点から経過時間T21(数1参照)を経るまでの間(S303)、時間T3毎に、X線検査装置10から振分装置80に向けてNG信号を送信する(S304)。これにより、ドロップベルト81は時間T21が経過するまで、図8に示す点線の姿勢に保持される続け、再起動時滞在物品5は、すべて不良品用のコンベア83に振り分けられる。
【0101】
そのため、本実施の形態では、(1)再起動時の際に、搬送方向AR1から見てX線照射部20より下流側に物品5が残存している場合や、(2)物品5の搬送速度が所定の範囲内にないことにより正常に検査処理を実行することができなかった場合において、誤って良品と判断された不良品が良品用のコンベア82に振り分けられる可能性を排除することができる。
【0102】
そして、搬送速度が所定の範囲内となったと判断された時点から時間T21が経過してX線検査システム1の稼動状況が定常状態となると(S303)、X線検査システム1は通常の動作モードに移行し、上述したステップS101〜S108の処理(図7参照)が実行される(S305)。
【0103】
<2.3.第2の実施の形態のX線検査システムの利点>
以上のように、第2の実施の形態では、再起動時のようにX線検査システム1の稼動状況が非定常状態にある場合において、再起動時滞在物品5のすべてを不良品用のコンベア83に振り分けることができる。そのため、再起動時滞在物品5に含まれる不良品が良品側に混入する可能性を排除することができ、良好な振分処理を実行することができる。
【0104】
<3.変形例>
以上、本発明の実施の形態について説明したが、この発明は上記の例に限定されるものではない。
【0105】
(1)第1および第2の実施の形態の制御部70は、説明の都合上、停止時処理部78および再起動時処理部178のいずれか一方を有するものとして説明しているが(図3および図10参照)、これに限定されるものでない。制御部70は、停止時処理部78および再起動時処理部178の両方を有していてもよい。
【0106】
(2)また、第1の実施の形態では、物品5ごとに撮像、異物検出、および振分の一連の処理を直列的に実行しているが、これに限定されるものでなく、複数の物品5について、撮像処理、異物検出処理、および振分処理を並列的に実行してもよい。例えば、ある物品5が、コンベア82、83のいずれかに振り分けられる前に、次の物品5についてX線画像データ72aの撮像処理を実行してもよい。
【0107】
(3)また、第1の実施の形態では、X線検査システム1の稼動状況が非定常状態となった場合、停止時滞在物品5のすべてについて通常の検査処理および振分処理を施すことにより振分動作を実行しているが、これに限定されない。例えば、停止時滞在物品5のすべてを不良品用のコンベア83に振り分けてもよい。この場合、場合によっては良品も不良品として取り扱われることになるが、不良品が良品用のコンベア82の混入することは確実に防止することができる。
【0108】
(4)また、第2の実施の形態では、X線検査システム1を停止状態から再起動させた際における振分処理について説明したが、これに限定されるものでない。例えば、X線検査システム1が動作状態にあるが、物品5の搬送速度が所定範囲外となって稼動状況が非定常状態に遷移した場合であっても、第2の実施の形態の振分処理を適用することができる。
【0109】
(5)また、第2の実施の形態では、X線検査システム1が再起動した時点から、コンベア41、82、83、およびドロップベルト81のそれぞれによる物品の搬送速度が定常速度になった時点から時間T21が経過するまでの間、再起動時滞在物品5を不良品用コンベア83に振り分けているが、これに限定されるものでない。
【0110】
例えば、搬送速度が定常速度に達するまでの時間が、時間T21と比較して小さい場合、X線検査システム1が再起動した時点から時間T21が経過するまでの間、物品5をコンベア83に振り分けることによっても、再起動時滞在物品5のすべてを不良品側に振り分けることができる。
【0111】
(6)また、第2の実施の形態では、物品の搬送速度が定常速度になった時点から時間T21が経過するまでの間、物品5をコンベア83に振り分けているがこれに限定されるものでなく、例えば、時間T23が経過するまでの間、物品5を不良品用のコンベア83に振り分けてもよい。これにより、物品5の振分処理を確実に実行することができる。
【0112】
(7)また、第1の実施の形態では、他の装置が停止してX線検査システム1の稼動状況が非定常状態となった場合、X線検査システム1の動作モードが停止モードに移行してから所定時間経過した後に、X線検査装置10および振分装置80の動作を停止させているが、これに限定されるもんでない。
【0113】
図13は、本発明の実施の形態におけるX線検査システム1のハードウェア構成の他の例を説明するための図である。図13に示すように、当該他のハードウェア構成は、X線検査装置10に物品5の有無を検出することができる光電センサ58a、58bを有する点を除いては、第1および第2の実施の形態のX線検査システム1と同様なハードウェア構成を有する。そして、光電センサ58a、58bによる物品5の検出状況を判断することによって、X線検査システム1の停止タイミングを制御することができる。
【0114】
例えば、時間T24を数4のように定義すると、X線検査システム1の動作モードが停止モードに移行した時点から時間T24に経過するまでの間に、光電センサ58bによって停止時滞在物品5を検出することができない場合、時間T24が経過した後においてコンベア41からドロップベルト81に向けて物品5が供給されることはない。
【0115】
T21 = (L7+L4)/V ・・・ (数4)
【0116】
これにより、時間T24が経過した時点において、ドロップベルト81に物品5が滞在していない場合、X線検査システム1のコンベア41、ドロップベルト81に停止時滞在物品5は存在しないことになる。そのため時間T24が経過した時点においてX線検査システム1の動作を停止させてもよい。
【0117】
(8)さらに、第1および第2の実施の形態では、X線検査処理の結果に基づいて物品5、の振分処理を実行しているが、振分処理の判断基準となる検査処理はこれに限定されるものでない。例えば、磁界の変化により異物としての金属を検出してもよい。すなわち、第1および第2の実施の形態の振分処理は、金属検出システム等の非接触物品検査システムに利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0118】
【図1】本発明の実施の形態におけるX線検査システムの全体構成の一例を示す図である。
【図2】X線検査装置のシールドボックス内部の構成の一例を示す斜視図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態におけるX線検査装置の制御部の概略構成を示す機能ブロック図である。
【図4】ラインセンサによって撮像されたX線画像を説明するための図である。
【図5】X線による異物検査の原理を説明するための図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態における物品の振分処理を説明するためのタイミングチャートである。
【図7】X線検査装置の稼動状況が定常状態である場合における物品の振分手順を説明するためのフローチャートである。
【図8】振分動作を説明するための図である。
【図9】本発明の第1の実施の形態において、X線検査装置の稼動状況が非定常状態となった場合における物品の振分手順を説明するためのフローチャートである。
【図10】本発明の第2の実施の形態におけるX線検査装置の制御部の概略構成を示す機能ブロック図である。
【図11】本発明の第2の実施の形態において、X線検査システム1を再起動させた場合における物品の振分手順を説明するためのフローチャートである。
【図12】本発明の第2の実施の形態において、X線検査装置を再起動させた場合における物品の振分処理を説明するためのタイミングチャートである。
【図13】本発明の実施の形態におけるX線検査システムのハードウェア構成の他の例を示す図である。
【符号の説明】
【0119】
1 X線検査システム
5、105 物品
10 X線検査装置
20 X線照射部
30 ラインセンサ
40 シールドボックス
41、82、83 コンベア
57 警報部
70、90 制御部
71、91 メモリ
72 画像データ格納部
72a 画像データ
75、95 CPU
76a 異物検出部
76b 入り数検出部
76c 割れ欠け検出部
78 停止時処理部
80 振分装置
81 ドロップベルト
58a、58b、85、86 光電センサ
178 再起動時処理部
AR1〜AR3 搬送方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線検査システムであって、
(a) X線の外部への漏洩を防止するシールドボックスを有し、前記シールドボックス内を搬送される物品に前記X線を照射して当該物品における異物の混入状況を検査するX線検査装置と、
(b) 前記X線検査装置から受け取った物品を、良品用の第1の搬送経路と、不良品用の第2の搬送経路とに選択的に振り分ける振分装置と、
を備え、
前記振分装置は、
(b-1) 前記X線検査装置から受け渡された前記物品を前記第1および第2の搬送経路に選択的に振り分ける分岐部、
を有し、
前記X線検査装置は、
(a-1) 分岐部の振分動作を制御して、
前記システムの稼動状況が定常状態の場合には、前記検査の結果に応じて、前記物品を前記第1および第2の搬送経路に選択的に振り分け、
前記システムの稼動状況が非定常状態の場合には、前記物品を前記第2の搬送経路に振り分ける振分処理部、
を有することを特徴とするX線検査システム。
【請求項2】
請求項1に記載のX線検査システムにおいて、
前記振分処理部は、前記システムが停止状態から再起動して定常状態に遷移した時点において、前記X線検査装置および前記振分装置の前記分岐部に滞在する前記物品のそれぞれを前記第2の搬送経路に振り分けることを特徴とするX線検査システム。
【請求項3】
請求項2に記載のX線検査システムにおいて、
(i) 前記X線検査装置内における前記物品の搬送路の長さを第1の搬送路長と、
(ii) 前記分岐部における前記物品の搬送路の長さを第2の搬送路長と、
(iii) 前記定常状態における前記物品の搬送速度を定常速度と、
(iv) 前記物品の長さに前記第1および第2の搬送路の長を加算したものを前記定常速度で除した値を第1の経過時間と、
それぞれ定義した場合、
前記振分処理部は、前記物品の搬送速度が定常速度になった時点から前記第1の経過時間が経過するまでの間、前記物品のぞれぞれを前記第2の搬送経路に振り分けることを特徴とするX線検査システム。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のX線検査システムにおいて、
前記振分処理部は、前記物品の搬送方向から見て、前記X線検査装置の上流側または前記振分装置の下流側の装置が停止した場合に、上流側または下流側の装置が停止した時点において前記X線検査装置および前記分岐部に滞在する前記物品のそれぞれを、前記検査の結果に基づいて前記第1または第2の搬送経路に振り分けるとともに、振り分け処理が完了した後に前記X線検査装置および前記振分装置を停止状態にすることを特徴とするX線検査システム。
【請求項5】
請求項4に記載のX線検査システムにおいて、
(i) 前記X線検査装置内の前記物品の搬送路の長さを第1の搬送路長と、
(ii) 前記分岐部の前記物品の搬送路の長さを第2の搬送路長と、
(iii) 前記定常状態における前記物品の搬送速度を定常速度と、
(iv) 前記物品の長さに前記第1および第2の搬送路長を加算した値を前記定常速度で除したものを第1の経過時間と、
それぞれ定義した場合、
前記振分処理部は、前記上流側または下流側の装置が停止した時点から前記第1の経過時間が経過するまで、前記物品のぞれぞれを前記検査の結果に基づいて前記第1または第2の搬送経路に振り分けることを特徴とするX線検査システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2006−84265(P2006−84265A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−268007(P2004−268007)
【出願日】平成16年9月15日(2004.9.15)
【出願人】(000147833)株式会社イシダ (859)
【Fターム(参考)】