説明

X線検査用車両搬送装置

【課題】小型車両から大型車両までに適用することができ、X線の垂直照射と水平照射により検査できない車両部分が小さく、実質的に車両全体をX線検査する。
【解決手段】X線の垂直照射と水平照射によりX線検査する被検車両1の前輪を持ち上げて搬送するX線検査用車両搬送装置10。被検車両1の走行面11より低く被検車両の両側面より外側に位置し搬送方向に水平に延びる1対の台車用通路13内に設けられた1対の走行レールと、走行面より下方に位置し走行レールに沿ってそれぞれ独立に移動可能な1対の移動台車14と、移動台車にそれぞれ設けられ台車用通路上部と被検車両の前輪の前後位置との間で水平移動可能でありかつ前輪の前後位置において被検車両の前輪を持ち上げ可能な1対の前輪リフト装置16と、被検車両より前方に位置し1対の移動台車14を同期して走行レールに沿って移動させる台車駆動装置とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の前輪を持ち上げて搬送し、X線の垂直照射と水平照射により車両をX線検査するX線検査用車両搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コンテナ等を運搬する車両をX線検査するX線検査装置が非特許文献1に開示され、その車両を運搬する装置が、特許文献1,2に開示されている。
【0003】
非特許文献1の「コンテナ貨物大型X線検査装置」は、コンテナの内部をコンテナをトラックの荷台に搭載したままX線検査する装置である。
【0004】
このX線検査装置において、車両運転手は、建屋の進入ヤードに入り、所定の場所でコンテナを載せた車両(コンテナ車両)を停止させ下車する。次いで、第1搬送装置が、車両の前輪部分を持ち上げ、入口遮蔽扉が開いた後、X線検査トンネル内を自動走行し、X線検査トンネル内でコンテナ車両を開放して、第1搬送装置は進入ヤードに戻る。次に、第2搬送装置が、X線検査トンネル内で車両の前輪部分を持ち上げ、退出ヤードに向かって自動走行し、その走行中にX線発生装置からX線が照射され、コンテナ車両をX線検査するようになっている。
【0005】
特許文献1の「X線検査方法」は、X線を照射する遮蔽室の下方に、台車用通路を形成し、その通路を自走する搬送台車で、車両の前輪を持ち上げて、遮蔽室を通過させるものである。
【0006】
特許文献2の「搬送装置」は、X線を照射する遮蔽室の下方には台車用通路を形成せず、車両の前方から車両の前輪を持ち上げて自走する地上牽引式搬送台車である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】「コンテナ貨物大型X線検査装置」、石川島播磨技報 Vol.43 No.3 (2003−5)
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−287507号公報、「X線検査方法」
【特許文献2】特開2007−331852号公報、「搬送装置」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述した非特許文献1では、X線を照射するX線検査トンネル内において、コンテナ車両に対してX線の垂直照射と水平照射により内部を検査している。しかし、車両の前輪を持ち上げて搬送する搬送装置(第1搬送装置と第2搬送装置)の一部が照射されたX線を遮断するため、コンテナ車両全体のX線検査ができない問題点があった。
また、このX線検査装置は、コンテナ車両のような大型車両だけでなく、乗用車や小型トラック等の小型車両も併用して検査する必要がある。しかし、特に小型車両の場合、搬送装置でX線が遮蔽される範囲が広く、X線検査の信頼性が低下する問題点があった。
【0010】
同様に、特許文献1,2のいずれの場合も搬送装置には、走行用の駆動装置(モータや減速機)および搬送用持ち上げ装置の操作用機構と油圧シリンダなどの装置が搭載されている。
そのため、コンテナ車両のような大型車両に対しては搬送装置がX線の陰にならないよう配置できるが、小型車両や中型車両では、X線の水平照射により搬送装置の一部が被検査車体に重なって投影されるため、X線の影になる範囲が検査できない。
また、地下を走行する搬送装置では、搬送装置の構造部分が検査する車両に重なる範囲が広く、検査できない範囲が大きかった。
【0011】
図1は、従来の地下牽引式搬送台車の説明図である。この図において、1は小型車両、2は水平X線発生装置、3はコリメータ、4は水平X線検出器、5は垂直X線発生装置、6はコリメータ、7は垂直X線検出器、8は地下牽引式搬送台車である。
この図に示すように、従来の地下牽引式搬送台車8では、小型車両1に対して垂直方向のX線検査で、Aで示す部分が台車8の陰になり十分なX線検査ができない欠点があった。
【0012】
図2は、従来の地上牽引式搬送台車の説明図である。この図において、9は地上牽引式搬送台車である。
この図に示すように、従来の地上牽引式搬送台車9では、小型車両1に対して水平方向のX線検査で、Bで示す部分が台車9のフォーク操作機構の陰になりX線検査が不十分になるという欠点があった。
【0013】
本発明は、上述した問題点を解決するために創案されたものである。すなわち、本発明の目的は、小型車両から大型車両までの被検車両の前輪を持ち上げて搬送することができ、X線の垂直照射と水平照射によりX線の影になる範囲が狭く、実質的に被検車両全体をX線検査することができるX線検査用車両搬送装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明によれば、X線の垂直照射と水平照射によりX線検査する被検車両の前輪を持ち上げて搬送するX線検査用車両搬送装置であって、
被検車両の走行面より低く、被検車両の両側面より外側に位置し、搬送方向に水平に延びる1対の台車用通路内に設けられた1対の走行レールと、
前記走行レールに沿ってそれぞれ独立に移動可能な1対の移動台車と、
該移動台車にそれぞれ設けられ、前記台車用通路上部と被検車両の前輪の前後位置との間で水平移動可能であり、かつ該前後位置において被検車両の前輪を持ち上げ可能な1対の前輪リフト装置と、
被検車両より前方に位置し、前記1対の移動台車を同期して前記走行レールに沿って移動させる台車駆動装置と、を備えたことを特徴とするX線検査用車両搬送装置が提供される。
【0015】
本発明の実施形態によれば、前記被検車両の走行面に車両搬送用の差込フォークを配置し、該差込フォークの配置面以下の位置に被検車両の前輪リフト装置を配置する。
【0016】
また、前記前輪リフト装置は、鉛直軸を中心に水平に揺動可能な1対の水平フォークと、該水平フォークを被検車両の前輪に対して反対方向に揺動駆動する1対の駆動シリンダと、前記水平フォーク及び駆動シリンダを一体的に昇降するリフトシリンダとを備える。
【0017】
また、前記走行レールは、互いに平行な主レールと1対の補助レールとからなり、1対の補助レールは、主レールの外側において上下に対向して位置しており、
前記移動台車は、主レールに沿って案内する主輪と、1対の補助レールの間に位置し上向き及び下向きの荷重を支持する補助輪とを有する。
【0018】
また、前記台車駆動装置は、前記移動台車の台車本体に設けられた走行駆動モータと同期装置を有する。
【0019】
また、別の実施形態によれば、前記被検車両の前方かつ上方において1対の前記移動台車を機械的に連結する門型フレームを備える。
【0020】
また、別の実施形態によれば、前記前輪リフト装置は、被検車両の前輪の前後に横から平行に差し込めるように先端が開き前輪幅に沿って徐々に狭まる形状の先開きを持った先開き型フォークと、該先開き型フォークの先開き型を内側に維持しながら先開き型フォークを幅方向に開閉可能な平行リンク機構と、鉛直軸を中心に前記平行リンク機構を揺動する揺動モータと、先開き型フォークを上下動させるリフトシリンダとを備える。
【発明の効果】
【0021】
上記本発明の構成によれば、小型車両から大型車両までの被検車両に対して、その走行面より低く、被検車両の両側面より外側に位置し、搬送方向に水平に延びる1対の台車用通路内に1対の走行レールを設け、1対の移動台車と台車駆動装置を、被検車両より下方または前方に設けたので、移動台車及び台車駆動装置に遮られることなく、X線を垂直照射と水平照射して被検車両全体をX線検査することができる。
また、1対の前輪リフト装置は、走行面より上方に位置するが、X線の垂直照射又は水平照射を遮るのは水平に揺動するフォーク部の一部のみであり、実質的に被検車両全体をX線検査することができる。

【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】従来の地下牽引式搬送台車の説明図である。
【図2】従来の地上牽引式搬送台車の説明図である。
【図3】本発明によるX線検査用車両搬送装置の第1実施形態図である。
【図4】前輪リフト装置の第1実施形態図である。
【図5】移動台車の第1実施形態図である。
【図6】本発明の搬送装置の作動説明図である。
【図7】本発明によるX線検査用車両搬送装置の第2実施形態図である。
【図8】本発明によるX線検査用車両搬送装置の第3実施形態図である。
【図9】前輪リフト装置の第2実施形態図である。
【図10】本発明によるX線検査用車両搬送装置の第4実施形態図である。
【図11】図10の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の好ましい実施形態を、図面を参照して説明する。なお各図において、共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明は省略する。
【0024】
本発明のX線検査用車両搬送装置は、X線の垂直照射と水平照射によりX線検査する被検車両の前輪を持ち上げて前方に搬送する搬送装置である。
以下、本発明のX線検査用車両搬送装置を単に「搬送装置」と略称する。
【0025】
図3は、本発明による搬送装置の第1実施形態図であり、(A)は側面図、(B)は正面図である。この図において、本発明の搬送装置10は、1対の走行レール12、1対の移動台車14、1対の前輪リフト装置16、及び台車駆動装置18を備える。
【0026】
図3(A)において、1は被検車両であり、破線はコンテナ車両のような大型車両、実線は乗用車や小型トラック等の小型車両である。これらの被検車両1は水平な走行面11の上を自走するようになっている。
また図3(B)に示すように、走行面11の両側に、走行面11より低い1対の台車用通路13が設けられている。台車用通路13は、被検車両1の走行面11より低く、被検車両1の両側面より外側に位置し、搬送方向に水平に延びる底面を有する。
走行面11と台車用通路13の底面との段差は、移動台車14の上部が走行面11より上方に突出しない高さに設定されている。
【0027】
なお、走行面11は、この例では、既設の水平面上に走行部11aを盛り上げて設けている。しかし、本発明はこれに限定されず、逆に既設の走行面11に台車用通路13を追加工してもよい。
【0028】
1対の走行レール12は、上述した台車用通路13内に設けられ搬送方向に水平に延びる。
【0029】
1対の移動台車14は、被検車両1の走行面11より下方に位置し、走行レール12に沿ってそれぞれ独立に移動可能に構成されている。
【0030】
1対の前輪リフト装置16は、各移動台車14にそれぞれ設けられ、台車用通路13の上部と被検車両1の前輪1aの前後位置との間で水平移動可能であり、かつ前輪1aの前後位置において被検車両1の前輪1aを持ち上げ可能に構成されている。
【0031】
台車駆動装置18は、被検車両1より前方に位置し、1対の移動台車14を同期して走行レール12に沿って移動させるようになっている。
【0032】
図4は、前輪リフト装置16の第1実施形態図であり、図3の部分平面図である。
この図に示すように、各前輪リフト装置16は、鉛直軸16aを中心に揺動する1対の水平フォーク16bと、これを被検車両1の前輪1aに対して反対方向に揺動駆動する1対の駆動シリンダ16cとを備える。駆動シリンダ16cは好ましくは油圧シリンダであり、各移動台車14に設けられた油圧ユニット(図示せず)により作動が制御される。
【0033】
1対の水平フォーク16bは、走行方向に対して前後に設けられ、それぞれ駆動シリンダ16cにより鉛直軸16aを中心に前輪1aに対して反対方向に揺動し、被検車両1の前輪1aより外側の台車用通路13の上部に位置する「退避位置」と、被検車両1の前輪1aの前位置又は後位置に位置する「支持位置」との間で水平移動できるようになっている。
また、「支持位置」において、各水平フォーク16bの旋回位置により、図に示すように大型車両と小型車両のタイヤ位置に合わせて1対の水平フォーク16bの相対位置(挟み幅)を変化させ、小型車両及び大型車両の前輪1aを1対の水平フォーク16bで支持できるようになっている。
【0034】
さらに、前輪リフト装置16は、図3(A)に示すリフトシリンダ17を備え、水平フォーク16b及び駆動シリンダ16cを一体的に昇降するようになっている。
【0035】
上述した前輪リフト装置16の構成により、水平フォーク16bを台車用通路13の上方の退避位置に退避させることにより、被検車両1に干渉することなく搬送装置10をレール12に沿って前後に移動することができる。
また被検車両1に対して所定の位置で停止し、水平フォーク16bを旋回させて支持位置(被検車両1の前輪1aの前後)に位置決めし、リフトシリンダ17で、水平フォーク16b及び駆動シリンダ16cを上昇させることで、被検車両1の前輪1aを持ち上げることができる。
【0036】
図5は、移動台車14の第1実施形態図であり、図3(B)の部分拡大図である。
この例において、各走行レール12は、互いに平行な主レール12aと1対の補助レール12b,12cからなる。補助レール12bは主レール12aの外側下部に位置し、補助レール12cは補助レール12bの上部に対向して位置する。また、補助レール12bを支持するために、台車用通路13の外側にコの字状の反力壁13aが設けられている。
図5において、移動台車14は、主輪15aと補助輪15bとを有する。主輪15aと補助輪15bはこの例では同軸であるが、別軸であってもよい。また、主輪15aと補助輪15bは、支持する荷重に応じて複数設けるのがよい。
【0037】
主輪15aと補助輪15bは、被検車両1の前輪1aを支持していない通常走行時には、下向きの荷重を支持しながら、主レール12aと補助レール12bに沿って移動台車14を案内する。
一方、被検車両1の前輪1aを水平フォーク16bで支持する際には、移動台車14に図で左回りのモーメントMが作用する。このモーメントMは、補助レール12cによる補助輪15bの支持力で支持される。従って、被検車両1の前輪1aを持ち上げて走行する際には、主輪15aで下向きの荷重を支持しながら、主輪15aと補助輪15bで、主レール12aと補助レール12cに沿って移動台車14を案内するようになっている。
【0038】
すなわち、図5に示した第1実施形態の移動台車14は、左右の移動台車14に発生する車両重量によるモーメントMを基礎側に反力壁13aを設け、補助輪15bで反力を受けるよう構成したものである。反力は補助レール12cに対し上向に発生するが、無負荷の時は、移動台車14の安定走行のため下面にも補助レール12bを設けている。
【0039】
図3(A)(B)において、台車駆動装置18は、移動台車14の台車本体14aに設けられた走行駆動モータ19と同期装置20からなる。
走行駆動モータ19は、モータ及び減速器を有し、移動台車14の主輪15aを回転駆動する。
同期装置20は、例えばレーザー照射部とレーザー受信部とからなり、1対の走行駆動モータ19の同期を検出するようになっている。
上述した構成により、1対の走行駆動モータ19を同期させて駆動し、これにより、1対の移動台車14を同期して走行レール12に沿って移動させることができる。
【0040】
図6は、上述した本発明の搬送装置10の作動説明図である。
この図において、2は水平X線発生装置、3はコリメータ、4は水平X線検出器、5は垂直X線発生装置、6はコリメータ、7は垂直X線検出器である。
【0041】
本発明では、上述した従来の搬送装置8,9の欠点を回避するために、被検車両1の走行面11を搬送装置10の移動台車14より上方に配置し、前輪リフト装置16を被検車両1の両側面より外側に配置している。
従って、この構成により水平方向の検査において移動台車14及び前輪リフト装置16が被検車両1の陰にならない。また垂直方向に対しては前輪リフト装置16が地上にあり、かつ被検車両1の両側面より外側に位置しているので垂直のX線をさえぎる構造物がない。これにより、X線の垂直照射と水平照射において、陰になるのは前輪リフト装置16の水平フォーク16bだけになり、被検車両1のほぼ100%が検査可能となる。
【0042】
図7は、本発明による搬送装置の第2実施形態図であり、(A)は側面図、(B)は正面図である。
図7(B)に示すように、この例では、上述した同期装置20はなく、その代わりに、被検車両1の前方かつ上方において1対の移動台車14を機械的に連結する門型フレーム21が設けられている。
門型フレーム21は、左右に分かれた1対の移動台車14に作用する転倒モーメントM(図5参照)を受けるように構成されている。従って、門型フレーム21により、1対の移動台車14を同期して走行レール12に沿って移動させることができる。
その他の構成は、第1実施形態と同様である。
【0043】
図7の構成(第2実施形態)によっても、図6に示したように、水平方向の検査において移動台車14及び前輪リフト装置16が被検車両1の陰にならない。また垂直方向に対しては前輪リフト装置16が地上にあり、かつ被検車両1の両側面より外側に位置しているので垂直のX線をさえぎる構造物がない。これにより、X線の垂直照射と水平照射において、陰になるのは前輪リフト装置16の水平フォーク16bだけになり、被検車両1のほぼ100%が検査可能となる。
【0044】
また、図7の構成の場合、図5に示した移動台車14の補助レール12b,12cと補助輪15b、及び1対の走行駆動モータ19の一方を省略することができる。
しかし図7の門型フレーム21は、既設建物に適用する場合、建物の空間に余裕がない場合は採用できない。
【0045】
図8は、本発明による搬送装置の第3実施形態図であり、(A)は側面図、(B)は正面図である。また、図9は、前輪リフト装置16の第2実施形態図であり、図8の部分平面図である。
【0046】
図9に示すように、各前輪リフト装置16は、先端が開き前輪幅に沿って徐々に狭まる形状の先開きを持った先開き型フォーク22aと、先開き型フォーク22aの先開きを内側に維持しながら先開き型フォーク22aを幅方向に開閉可能な平行リンク機構22bと、平行リンク機構22bを鉛直軸22cを中心に揺動する1対の揺動モータ22dとを備える。揺動モータ22dは好ましくは油圧モータであり、各移動台車14に設けられた油圧ユニット(図示せず)により作動が制御される。
【0047】
先開き型フォーク22aの形状は、被検車両1の前輪1aの前後に横から平行に差し込めるようになっている。
また、図8(A)に示すように、各前輪リフト装置16は、先開き型フォーク22aを上下動させるリフトシリンダ23を備える。
【0048】
上述した前輪リフト装置16の構成により、先開き型フォーク22aを台車用通路13の上方の退避位置に退避させることにより、被検車両1に干渉することなく搬送装置10をレール12に沿って前後に移動することができる。
また被検車両1に対して所定の位置で、平行リンク機構22bを旋回させて先開き型フォーク22aを支持位置(被検車両1の前輪1aの前後)に位置決めし、リフトシリンダ23で、先開き型フォーク22aを上昇させることで、被検車両1の前輪1aを持ち上げることができる。
【0049】
すなわち、上述した前輪リフト装置16では被検車両1の前輪1aを持ち上げる先開き型フォーク22aは先端が開き徐々に狭まる形状の先開きを持った形状であり、被検車両1の前輪1aに合わせるように横から平行に差し込むように平行リンク機構22bで平行移動させるとともに各移動台車14の位置を前後に移動させて、被検車両1を移動しなくても、先開き型フォーク22aが前輪1aの中心位置に進むよう台車の移動とフォーク旋回を組み合わせ制御し、前輪1aをすくい上げる。
先開き型フォーク22aが前輪1aをはさむように入ったところで、先開き型フォーク22aを持ち上げるリフトシリンダ23を作動させて、先開き型フォーク22aの先端部を持ち上げ、被検車両1は後輪で走行する。
被検車両1が大形車両である場合は、先開き型フォーク22aは大形車両に適した外方位置で持ち上げ、被検車両1が小型車両である場合は、先開き型フォーク22aは小型車両に適した内方位置で持ち上げる。
また被検車両1の前輪1aを走行面11に下ろし、搬送装置10が後退して元の位置に戻るときは、先開き型フォーク22aを被検車両1より外側まで旋回させることで被検車両1との干渉を回避することができる。
【0050】
また、図8(B)に示すように、この例では、第1実施形態(図5参照)と同様に、主レール12a、補助レール12b,12c、反力壁13a、主輪15a及び補助輪15bを備え、被検車両1の前輪1aを先開き型フォーク22aで支持する際に、移動台車14に作用するモーメントMを、補助輪15bと補助レール12b,12cとで支持するようになっている。
その他の構成は、第1実施形態と同様である。
【0051】
図8、図9の第3実施形態は、先開き型フォーク22aによる被検車両1の前輪1aのすくい上げを行うリンク機構(平行リンク機構22bとリフトシリンダ23)で前輪1aをすくい上げ、その前方に位置する移動台車14で移動できるように構成した搬送装置10である。
【0052】
図10は、本発明による搬送装置の第4実施形態図であり、(A)は側面図、(B)は正面図である。また、図11は、図10の平面図である。
この例では、第3実施形態と同様に、図8(A)に示した前輪リフト装置16を備える。また、第2実施形態と同様に、門型フレーム21を備える。この例は、先開き型フォーク22aに作用する車両重量のモーメントMを、門型フレーム21で左右を結合して受ける構造である。
この構成において、移動台車14は、被検車両1から先開き型フォーク22aに作用する前後方向へのモーメントMを受けるが、車両の反力相当の重量を移動台車14に持たせることで浮き上らないようにできる。
その他の構成は、第1実施形態と同様である。
【0053】
図8〜図10の構成(第3、4実施形態)によっても、図6に示したように、水平方向の検査において移動台車14及び前輪リフト装置16が被検車両1の陰にならない。また垂直方向に対しては前輪リフト装置16が地上にあり、かつ被検車両1の両側面より外側に位置しているので垂直のX線をさえぎる構造物がない。これにより、X線の垂直照射と水平照射において、陰になるのは前輪リフト装置16の水平フォーク16bだけになり、被検車両1のほぼ100%が検査可能となる。
【0054】
また、上述した第1〜第4実施形態において、移動台車14の移動をワイヤーによる牽引、すなわちワイヤー牽引式で構成し、同期装置20により移動台車14の移動を同期させてもよい。
また、左右の移動台車14の連結を、上述した門型フレーム21の代わりに、電気的に結合して同期走行させてもよく、或いはワイヤー牽引機構の左右のリールの軸を結合し同期走行ができるように構成してもよい。
【0055】
上述した本発明の搬送装置10は、以下のように作動する。
X線検査装置は、順に直線上に配置された進入ヤード、X線検査トンネル、及び退出ヤードからなり、X線検査トンネルにおいて、図6に示すように、X線の垂直照射と水平照射を行うようになっている。
このX線検査装置において、車両運転手は、建屋の進入ヤードに入り、所定の場所で被検車両1を停止させ下車する。次いで、本発明の第1の搬送装置10(第1搬送装置)により、被検車両1の前輪1aを持ち上げ、入口遮蔽扉が開いた後、X線検査トンネル内を自動走行し、X線検査トンネル内でコンテナ車両を開放して、第1搬送装置は進入ヤードに戻る。次に、本発明の第2の搬送装置10(第2搬送装置)が、X線検査トンネル内で被検車両1の前輪1aを持ち上げ、退出ヤードに向かって自動走行し、その走行中にX線発生装置からX線が照射され、被検車両1をX線検査する。
なお、第1の搬送装置10と第2の搬送装置10を単一の搬送装置に置き換えてもよい。
【0056】
上述した本発明の構成によれば、小型車両から大型車両までの被検車両1に対して、その走行面11より低く、その両側面より外側に位置し、搬送方向に水平に延びる1対の台車用通路13内に1対の走行レール12を設け、1対の移動台車14と台車駆動装置18を、被検車両1より下方または前方に設けたので、移動台車14及び台車駆動装置18に遮られることなく、X線を垂直照射と水平照射して被検車両全体をX線検査することができる。
また、1対の前輪リフト装置16は、走行面11より上方に位置するが、X線の垂直照射又は水平照射を遮るのは水平に揺動するフォーク部(水平フォーク16b又は先開き型フォーク22a)の一部のみであり、実質的に被検車両全体をX線検査することができる。
【0057】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々に変更することができることは勿論である。
【符号の説明】
【0058】
1 被検車両(小型車両、大型車両)、1a 前輪、
2 水平X線発生装置、3 コリメータ、4 水平X線検出器、
5 垂直X線発生装置、6 コリメータ、7 垂直X線検出器、
8 地下牽引式搬送台車、9 地上牽引式搬送台車、
10 X線検査用車両搬送装置(搬送装置)、11 走行面、11a 走行部、
12 走行レール、12a 主レール、12b,12c 補助レール、
13 台車用通路、13a 反力壁、14 移動台車、14a 台車本体、
15a 主輪、15b 補助輪、16 前輪リフト装置、
16a 鉛直軸、16b 水平フォーク、16c 駆動シリンダ、
17 リフトシリンダ、18 台車駆動装置、19 走行駆動モータ、
20 同期装置(レーザー照射部、レーザー受信部)、
21 門型フレーム、22a 先開き型フォーク、22b 平行リンク機構、
22c 鉛直軸、22d 揺動モータ、23 リフトシリンダ



【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線の垂直照射と水平照射によりX線検査する被検車両の前輪を持ち上げて搬送するX線検査用車両搬送装置であって、
被検車両の走行面より低く、被検車両の両側面より外側に位置し、搬送方向に水平に延びる1対の台車用通路内に設けられた1対の走行レールと、
前記走行レールに沿ってそれぞれ独立に移動可能な1対の移動台車と、
該移動台車にそれぞれ設けられ、前記台車用通路上部と被検車両の前輪の前後位置との間で水平移動可能であり、かつ該前後位置において被検車両の前輪を持ち上げ可能な1対の前輪リフト装置と、
被検車両より前方に位置し、前記1対の移動台車を同期して前記走行レールに沿って移動させる台車駆動装置と、を備えたことを特徴とするX線検査用車両搬送装置。
【請求項2】
前記被検車両の走行面に車両搬送用の差込フォークを配置し、該差込フォークの配置面以下の位置に被検車両の前輪リフト装置を配置する、ことを特徴とする請求項1に記載のX線検査用車両搬送装置。
【請求項3】
前記前輪リフト装置は、鉛直軸を中心に水平に揺動可能な1対の水平フォークと、該水平フォークを被検車両の前輪に対して反対方向に揺動駆動する1対の駆動シリンダと、前記水平フォーク及び駆動シリンダを一体的に昇降するリフトシリンダとを備える、ことを特徴とする請求項1に記載のX線検査用車両搬送装置。
【請求項4】
前記走行レールは、互いに平行な主レールと1対の補助レールとからなり、1対の補助レールは、主レールの外側において上下に対向して位置しており、
前記移動台車は、主レールに沿って案内する主輪と、1対の補助レールの間に位置し上向き及び下向きの荷重を支持する補助輪とを有する、ことを特徴とする請求項1に記載のX線検査用車両搬送装置。
【請求項5】
前記台車駆動装置は、前記移動台車の台車本体に設けられた走行駆動モータと同期装置を有する、ことを特徴とする請求項1に記載のX線検査用車両搬送装置。
【請求項6】
前記被検車両の前方かつ上方において1対の前記移動台車を機械的に連結する門型フレームを備える、ことを特徴とする請求項1に記載のX線検査用車両搬送装置。
【請求項7】
前記前輪リフト装置は、被検車両の前輪の前後に横から平行に差し込めるように先端が開き前輪幅に沿って徐々に狭まる形状の先開きを持った先開き型フォークと、該先開き型フォークの先開き型を内側に維持しながら先開き型フォークを幅方向に開閉可能な平行リンク機構と、鉛直軸を中心に前記平行リンク機構を揺動する揺動モータと、先開き型フォークを上下動させるリフトシリンダとを備える、ことを特徴とする請求項1に記載のX線検査用車両搬送装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−18000(P2012−18000A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−153864(P2010−153864)
【出願日】平成22年7月6日(2010.7.6)
【出願人】(000198318)株式会社IHI検査計測 (132)
【Fターム(参考)】