説明

X線検査装置、X線検査方法、X線検査プログラムおよびX線検査システム

【課題】精度よく基板に塗布されたはんだと部品とのはんだ付け検査を行なうX線検査装置を提供する。
【解決手段】X線検査装置は、予め基板に塗布されたはんだの厚みとして、クリームはんだ印刷におけるマスク厚を取得し、記憶しておく。検査対象の基板のマスク厚から、基板面に平行な断層のうち検査対象とする高さ方向の範囲を設定し、その断層数Nを特定する(S801)。X線検査装置は、各断層について検査ウィンドウ中のはんだの面積Sおよび真円度Tを計測し(S807〜S819)、その最小値がいずれも基準値以上である場合にはその検査ウィンドウのはんだ付けが良好と判定し(S821、S823)、一方でも基準値を下回ったら不良と判定する(S821、S823)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線を用いて検査対象を検査するX線検査装置、X線検査方法、X線検査プログラムおよびX線検査システムに関する。特に、本発明は、プリント基板と回路部品との間の接合の良否等を検査するのに用いられるX線検査装置、X線検査方法、X線検査プログラムおよびX線検査システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、実装部品がはんだ付けされるプリント基板(以下、単に「基板」ともいう)における、はんだ付け状態の良否等を検査するのに、X線CT(Computed Tomography)がしばしば用いられている。X線CTでは、対象物を様々な方向からX線により撮像し、X線が吸収された度合い(減衰量)の分布を示す複数枚の透視画像を取得する。さらに、複数枚の透視画像に基づく再構成処理を行ない、検査対象のX線吸収係数の分布の2次元データもしくは3次元データを得る。2次元空間の吸収係数分布を求めた画像は、特に断層画像と呼ばれる。
【0003】
たとえば特開2006−292465号公報(以下、特許文献1)は、基板に対して水平な方向からX線により撮像することで検査対象品の断面画像を取得してこの断層画像から得られる検査対象品の直径としきい値とを比較することで良否を判定する技術において、基板上の配線パターンを抽出し、そのパターンに基づいて検査位置を特定する方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−292465号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されている方法では良否判定に用いる断層画像が適切に特定されないと検査精度が低下するという問題があった。特に、検査対象がたとえばボールグリッドアレー(以下、BGAと略する)のはんだボールのような小さな部分である場合には検査位置の特定が重要となる。
【0006】
特許文献1の方法では、基板上の配線パターンの位置から所定の高さの面についての配線パターンの領域を特定する必要があり、設定者による検査位置のばらつきや誤設定などのヒューマンエラーが生じうる可能性がある。
【0007】
また、特許文献1の方法では、配線パターンからの高さのみに基づいてははんだとはんだボールとの境界を特定することができず、適切な検査位置が特定できないという問題がある。
【0008】
一方で、このような検査は製造過程内で行なわれるものであるため、生産効率の妨げとならないよう、検査精度の向上のみならず検査速度の高速化も重要である、という課題がある。
【0009】
本発明はこのような問題に鑑みてなされたものであって、高精度かつ高速に検査を行なうことのできるX線検査装置、X線検査方法、X線検査プログラムおよびX線検査システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明のある局面に従うと、X線検査装置はX線を用いて対象物を検査するX線検査装置であって、対象物は、基板と、基板に塗布されたはんだによって基板に電気的に結合して搭載される部品とを含み、対象物に向けてX線を出力するためのX線出力手段と、対象物に複数の方向から入射し、対象物を透過したX線の強度分布を表わす透視画像を撮像するためのX線検出手段と、複数の方向からのX線の透視画像に基づいて、基板の、部品の搭載される面の法線を横切る、部品と基板との間の領域についての断層画像を再構成するための再構成手段と、基板に塗布されたはんだの厚みを取得するための取得手段と、はんだの厚みに基づいて、部品の搭載される面から法線方向の距離で規定される位置を対象物の検査位置として特定するための特定手段と、検査位置にある断層画像を用いて対象物のはんだによる結合の良否を判定するための検査手段とを備える。
【0011】
好ましくは、特定手段は、少なくとも、部品の搭載される面から法線方向の、はんだの厚みに対応した距離で規定される位置を含み、基板と部品との間の距離よりも短い範囲を検査位置として特定する。
【0012】
より好ましくは、特定手段は、基板の部品の搭載される面の表面からはんだの厚みに対応した部品の搭載される面の法線方向の位置までの範囲を検査位置として特定する。
【0013】
好ましくは、取得手段は、基板に塗布されたはんだの厚みの入力を受付けるための入力手段を含む。
【0014】
好ましくは、取得手段は、基板に塗布されたはんだの厚みを示すデータを他の装置から取得する。
【0015】
より好ましくは、上記他の装置は、基板上のはんだの厚みを測定する装置における、基板上のはんだの厚みの測定結果を記憶する装置である。
【0016】
好ましくは、X線検査装置は基板に塗布されたはんだの厚みを基板の識別情報と関連付けて記憶するための記憶手段と基板を識別するための識別手段とをさらに備え、特定手段は、対象物とする基板の識別情報に関連付けられたはんだの厚みを記憶手段から読み出して対象物の検査位置を特定する。
【0017】
より好ましくは、識別情報は、基板に固有の識別情報である。
より好ましくは、識別情報は、基板の種類に固有の識別情報である。
【0018】
好ましくは、検査手段は、検査位置にある断層画像に表れるはんだ部の面積、その真円度、およびその他の特徴量のうちのいずれか一つまたはこのうちでのいくつかの組み合わせを用いてはんだによる結合の良否を判定する。なお、上述のその他の特徴量としては、たとえば、はんだ部の長径または短径や、これらの組み合わせなどが挙げられる。
【0019】
本発明の他の局面に従うと、X線検査方法はX線を用いて対象物を検査する方法であって、対象物は、基板と、基板に塗布されたはんだによって基板に電気的に結合して搭載される部品とを含み、対象物に含まれる基板に塗布されたはんだの厚みを取得するステップと、対象物に向けてX線を出力するステップと、対象物に複数の方向から入射し、対象物を透過したX線の強度分布を表わす透視画像を撮像するステップと、複数の方向からのX線の透視画像に基づいて、基板の、部品の搭載される面の法線を横切る、部品と基板との間の領域についての断層画像を再構成するステップと、はんだの厚みに基づいて、部品の搭載される面から法線方向の距離で規定される位置を対象物の検査位置として特定するステップと、検査位置にある断層画像を用いて対象物のはんだによる結合の良否を判定するステップとを備える。
【0020】
本発明のさらに他の局面に従うと、X線検査プログラムは、X線源とX線検出器と演算部とを有するX線検査装置に、X線を用いた対象物の検査を実行させるプログラムであって、対象物は、基板と、基板に塗布されたはんだによって基板に電気的に結合して搭載される部品とを含み、演算部が、対象物に含まれる基板に塗布されたはんだの厚みを取得するステップと、X線源が、対象物に向けてX線を出力するステップと、前記対象物に複数の方向から入射し、対象物を透過したX線の強度分布を表わす透視画像を撮像するステップと、X線検出器が、複数の方向からのX線の透視画像に基づいて、基板の、部品の搭載される面の法線を横切る、部品と基板との間の領域についての断層画像を再構成するステップと、演算部が、はんだの厚みに基づいて、部品の搭載される面から法線方向の距離で規定される位置を対象物の検査位置として特定するステップと、演算部が、検査位置にある断層画像を用いて対象物のはんだによる結合の良否を判定するステップとを実行させる。
【0021】
本発明のさらに他の局面に従うと、X線検査システムははんだが塗布された基板の検査をする第1の検査装置とX線を用いて対象物を検査するX線検査装置とを含み、X線検査装置での検査の対象物は、基板と、基板に塗布されたはんだによって基板に電気的に結合して搭載される部品とを含み、第1の検査装置は、基板上の検査位置ごとに塗布されたはんだの量を測定し、その測定結果を当該基板を識別するための識別情報と関連付けた測定結果データを基板ごとに作成するための検査手段と、測定結果データを送信するための通信手段とを備え、X線検査装置は、対象物に向けてX線を出力するためのX線出力手段と、対象物に複数の方向から入射し、対象物を透過したX線の強度分布を表わす透視画像を撮像するためのX線検出手段と、複数の方向からのX線の透視画像に基づいて、基板の、部品の搭載される面の法線を横切る、部品と基板との間の領域についての断層画像を再構成するための再構成手段と、基板を識別するための識別手段と、第1の検査装置から、識別された基板に塗布されたはんだの厚みを示す測定結果データを受信するための通信手段と、測定結果データに含まれる基板に塗布されたはんだの厚みに基づいて、部品の搭載される面から法線方向の距離で規定される位置を対象物の検査位置として特定するための特定手段と、検査位置にある断層画像を用いて対象物のはんだによる結合の良否を判定するための検査手段とを備える。
【0022】
好ましくは、第1の検査装置の検査手段は、基板上の検査箇所ごとに塗布されたはんだの量を測定して検査箇所ごとの測定結果データを作成し、X線検査装置の特定手段は、基板上の検査箇所ごとに検査位置を特定する。
【発明の効果】
【0023】
この発明によると、部品の接続状態を高精度かつ高速に検査することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】実施の形態に係るX線検査装置の概略ブロック図である。
【図2】実施の形態に係るX線検査装置の構成を説明するための図である。
【図3】検査対象およびその周辺の側面図である。
【図4】実施の形態に係るX線検査の流れを示すフローチャートである。
【図5】ティーチング動作の流れを示すフローチャートである。
【図6】検査ウィンドウを設定するための動作の流れを示すフローチャート(A)および規定される座標系を示す図(B)である。
【図7】検査ウィンドウの具体例を示す図である。
【図8】ティーチング動作中のテスト動作の流れを示すフローチャートである。
【図9】BGAの基板への接続を説明する図である。
【図10】検査動作の流れを示すフローチャートである。
【図11】検査結果の出力例を示す図である。
【図12】BGAの基板への接続をシステムで行なう場合の、システムの構成例を示す図である。
【図13】はんだボールとクリームはんだとが完全に溶融せずに一体とはならない現象を表わす指標を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品および構成要素には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。
【0026】
図1を用いて実施の形態に係るX線検査装置100の構成について説明する。図1を参照して、X線検査装置100は、X線18を出力するためのX線源10と、X線検出器23と、画像取得制御機構30と、検査対象1の位置を移動するための検査対象駆動機構110とを備える。さらに、X線検査装置100は、入力部40と、出力部50と、電子ビームの出力を制御するためのX線源制御機構60と、検査対象位置制御機構120と、演算部70と、記憶部90とを備える。
【0027】
検査対象1は、X線源10とX線検出器23との間に配置される。本実施においては、検査対象1は、部品が実装された回路基板であるとする。なお、図1では、下から順にX線源10、検査対象1、X線検出器23が設置されているが、X線源の保守性の観点より、下から順に、X線検出器23、検査対象1、X線源10との並びでこれらを配置してもよい。
【0028】
X線源10は、X線源制御機構60によって制御され、検査対象1に対して、X線18を照射する。本実施の形態では、検査対象1は、回路部品を実装した基板であるものとする。
【0029】
検査対象1は、検査対象駆動機構110により移動される。検査対象駆動機構110の具体的な構成については、後述する。検査対象位置制御機構120は、演算部70からの指示に基づいて、検査対象駆動機構110の動作を制御する。
【0030】
X線検出器23は、X線源10から出力され、検査対象1を透過したX線を検出して画像化するための2次元X線検出器である。X線検出器23としては、I.I.(Image Intensifier)管や、FPD(フラットパネルディテクタ)を用いることができる。設置スペースの観点からは、X線検出器23には、FPDを用いることが望ましい。
【0031】
画像取得制御機構30は、検出器駆動制御機構32と画像データ取得部34とを含む。検出器駆動制御機構32は、演算部70からの指示に基づき、X線検出器駆動部22の動作を制御し、X線検出器23を移動する。画像データ取得部34は、演算部70から指定されたX線検出器23の画像データを取得する。
【0032】
入力部40は、ユーザからの指示入力等を受け付けるための操作入力機器である。出力部50は、測定結果等を外部に出力するための装置である。本実施の形態では、出力部50は、演算部70で構成されたX線画像等を表示するためのディスプレイである。
【0033】
すなわち、ユーザは、入力部40を介して様々な入力を実行することができ、演算部70の処理によって得られる種々の演算結果が出力部50に表示される。出力部50に表示される画像は、ユーザによる目視の良否判定のために出力されてもよいし、あるいは、後で説明する良否判定部78の良否判定結果として出力されてもよい。
【0034】
X線源制御機構60は、演算部70からX線エネルギー(管電圧、管電流)の指定を受ける。指定されるX線エネルギーは、検査対象によって異なる。
【0035】
演算部70は、記憶部90に格納されたプログラム96を実行して各部を制御し、また、所定の演算処理を実施する。演算部70は、X線源制御部72と、画像取得制御部74と、再構成部76と、良否判定部78と、検査対象位置制御部80と、X線焦点位置計算部82と、撮像条件設定部84とを含む。
【0036】
X線源制御部72は、X線焦点位置、X線エネルギーを決定し、X線源制御機構60に指令を送る。
【0037】
画像取得制御部74は、X線検出器23が画像を取得するように、画像取得制御機構30に指令を送る。また、画像取得制御部74は、画像取得制御機構30から、画像データを取得する。
【0038】
再構成部76は、画像取得制御部74により取得された複数の画像データから3次元データを再構成する。
【0039】
良否判定部78は、入力部40などからの情報に基づいて検査範囲とする基板表面からの高さの範囲を定め、当該範囲内の断層画像をもとに検査対象の接合の良否を判定する。なお、良否判定を行なうアルゴリズム、あるいは、アルゴリズムへの入力情報は検査対象の種類によって異なるため、良否判定部78は、これらを後述する撮像条件情報94から入手する。
【0040】
検査対象位置制御部80は、検査対象位置制御機構120を介し、検査対象駆動機構110を制御する。
【0041】
X線焦点位置計算部82は、検査対象1のある検査エリアを検査する際に、その検査エリアに対するX線焦点位置や照射角などを計算する。
【0042】
撮像条件設定部84は、検査対象1に応じて、X線源10からX線を出力する際の条件(たとえば、X線源に対する印加電圧、撮像時間等)を設定する。
【0043】
記憶部90は、X線焦点位置情報92と、撮像条件情報94と、上述した演算部70が実行する各機能を実現するためのプログラム96と、X線検出器23が撮像した画像データ98とを含む。X線焦点位置情報92には、X線焦点位置計算部82によって計算されたX線焦点位置が含まれる。撮像条件情報94は、撮像条件設定部84によって設定された撮像条件や、良否判定を行なうアルゴリズムに関する情報を含む。
【0044】
なお、記憶部90は、データを蓄積することができるものであればよい。記憶部90は、例えば、RAM(Random Access Memory)やEEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read−Only Memory)やHDD(Hard Disc Drive)等の記憶装置により構成される。
【0045】
X線検査装置100の具体的構成について、図2を参照して説明する。なお、図2において、図1と同一部分には、同一符号を付している。また、図2では、図1に示した部分のうち、X線焦点位置の制御、X線検出器位置の制御、検査対象位置の制御等に直接関係し、説明に必要な部分を抜き出して記載している。
【0046】
X線源10は、密閉型のX線源であり、X線検査装置100の上部もしくは下部に据え付けられている。X線源10は、本実施の形態では、X線を発生する位置(X線焦点位置)が固定な焦点固定型X線源である。X線源10は、X線源制御機構60を通した演算部70からの命令に従って、X線を発生させる。なお、X線源10のターゲットは透過型であってもよいし、反射型であってもよい。X線源10は、稼動部(図示しない)に取り付けられており、垂直方向に移動可能であるものとする。
【0047】
X線検出器23は、検査対象1(基板)を挟むようにX線源10と対向した位置に配置される。X線検出器23は、X線源10から照射されたX線を画像化する。また、X線検出器23はX線検出器駆動部22に取り付けられている。X線検出器駆動部22は、3次元ステージであって、X線検出器23を、水平方向および垂直方向に移動可能である。
【0048】
検査対象駆動機構110は、X線源10とX線検出器23との間に設置される。検査対象駆動機構110は、ステージ111a,111b、および、ステージ111a,111bに付属されている基板レール112a,112bを含む。ステージ111a,111bは、検査対象1を水平方向に平行移動可能である。基板レール112a,112bは、各々、検査対象1を上下からはさみこむことで基板を固定している。
【0049】
ここで、図3を参照して、検査対象1の配置について詳しく説明する。図3を参照して、検査対象1に含まれるプリント基板は、一対のレール112により固定されている。各レール112は、検査対象1の左端または右端を上下から挟み、プリント基板を固定する。
【0050】
レール112は、検査対象位置制御部80からの命令によって検査対象を水平(X−Y)および垂直(Z)方向に移動可能である。本実施の形態では、検査対象駆動機構110は、検査対象1を、ほぼ水平面に平行な、つまり、法線方向が実質的にZ方向である搬送面に沿って搬送するものとする。ここで、「法線方向が実質的にZ方向である」とは、搬送面が検査に支障のない範囲で(例えば、0〜5度)水平面から傾いていてもよいことを意味する。
【0051】
演算部70としては、一般的な中央演算装置(CPU)を用いることができる。記憶部90は、主記憶部90aと補助記憶部90bとを含む。主記憶部90aとしてはメモリを、補助記憶部90bとしてはHDD(ハードディスクドライブ)を、例えば用いることができる。つまり、演算部70および記憶部90としては、一般的な計算機を使用可能である。
【0052】
以上の構成により、X線検査装置100は、線源−基板間距離と線源−ディテクタ間の距離との比(拡大率)を変更することができる。その結果、X線検査装置100は、X線検出器23で撮像される検査対象1の大きさ(したがって、分解能)を変更できる。
【0053】
また、X線検査装置100は、様々な方向から基板を撮像できるように、基板とX線検出器23とを稼動できる。本実施の形態では、この様々な方向からの撮像結果を基に、CT(Computed Tomography)と呼ばれる3次元データ生成手法を用いて、検査対象1の3次元データを生成する。
【0054】
また、本実施の形態では、X線検査装置100は、インライン検査に用いられる。インライン検査のために、検査対象駆動機構110は、基板を搬入出する機構をさらに含む。ただし、このような基板の搬入出機構は、図2には示していない。基板の搬入出機構としては、基板レール上に配置したベルトコンベアが用いられるのが一般的である。あるいは搬入出機構としてプッシャと呼ばれる棒を用いてもよい。プッシャにより基板をレール上で滑らせることにより、基板を移動させることができる。
【0055】
図4を用いて実施の形態に係るX線検査全体の流れについて説明する。図4に示される動作は、演算部70が記憶部90に記憶されるプログラム96を読み出して実行し、図1に示された各構成を制御することにより実現される。
【0056】
図4を参照して、処理が開始されると、ステップS401でX線検査装置100は、入力部40において検査対象1とする基板の種類の選択を受付ける。記憶部90の所定領域には、予め、後述するティーチング動作によって設定された検査条件および基準が検査対象1とする基板の種類ごとに記憶されている。そこで、ステップS403で良否判定部78は、ステップS401で受付けた基板の種類に応じた検査条件および基準を記憶部90の所定領域から読み出す。
【0057】
ステップS405でX線検査装置100は、検査対象駆動機構110により、基板をX線検査装置100内部の規定位置に搬入する。規定位置は、通常、X線検査装置100の中央、すなわち、X線照射範囲の中央に設定されていることが好ましい。ただし、規定位置は、X線検出器23が基板のX線透視画像を撮像可能な位置であれば構わない。
【0058】
好ましくは、検査対象1とする基板上には、それぞれ、当該基板自身に固有の情報(ID)または当該基板の種類を表わす情報(ID)が印刷されている。X線検査装置100には図1および図2には表わされていない光学センサ等の読取装置が備えられて、ステップS407では、ステップS405で搬入された基板上の上記固有情報を読み取る。なお、ステップS407では光学的な読取に替えて入力部40から固有情報の入力を受付けてもよいし、物理的な読取が行なわれてもよい。
【0059】
ステップS409で良否判定部78は、後述するティーチング動作によって予め基板の種類と対応付けて記憶部90に記憶される、検査対象1とする基板の種類に応じた基板表面からのはんだ厚みを読み出し、その厚みに基づいて検査範囲を設定する。
【0060】
ここでは、検査対象1を物理的および電気的にBGA(Ball Grid Array)が接続された基板であるものとし、X線検査装置100はBGA基板へのはんだ付け状態を検査するものとする。基板へのはんだの塗布は、メタルマスクと呼ばれる、薄さが約100〜300ミクロン程度の金属板に基板のパターン(BGA搭載予定位置)に合わせて穴を開けたマスクを用い、クリームはんだ印刷機のスキージを用いてクリームはんだを印刷することにより行なわれる。ステップS409では、クリームはんだ厚みの一例としてのそのメタルマスクの厚み(以下、マスク厚ともいう)を読み出す。なお、詳細は後述する。
【0061】
ステップS411でX線検査装置100は、検査対象1内で、1つの再構成領域(以下、視野ともいう)を複数の方向から撮像する。本実施の形態では、X線検査装置100は、基板とX線検出器23とを水平方向に円軌道を描くように移動させて、視野を複数の方向から撮像する。撮像時の基板およびX線検出器23の位置は、照射角度θR、線源−基板間距離(FOD)、線源−検出器間距離(FID)により決定される。基板およびX線検出器23は、X線検出器23の中心に視野の中心が撮像されるように配置される。なお、基板およびX線検出器23の軌道は円でなくてもよく、矩形や直線等であってもよい。
【0062】
撮像枚数は、ユーザにより設定可能であるものとする。ユーザは、求められる再構成データの精度に基づいて撮像枚数を決定することが好ましい。撮像枚数は、通常は、4〜256枚程度である。しかしながら、撮像枚数はこれに限られるものではない。例えば、X線検査装置100は、256枚を超える枚数の画像を撮像してももちろん構わない。
【0063】
ステップS413において、X線検査装置100は、複数方向の撮像画像から再構成データを生成する。再構成処理は、様々な方法が提案されており、たとえば、Feldkamp法を用いることができる。
【0064】
ステップS415においてX線検査装置100は、はんだ付け検査のための動作を実行する。具体的な検査動作については後述する。
【0065】
ステップS417においてX線検査装置100は、ステップS415の検査結果を出力部50に出力する。ここでは、検査において不良と判定された検査対象1についての、不良と判定された検査位置(範囲)、その断層画像を表示してもよいし、実際の測定値や撮像を表示してもよいし、検査結果として「不良」である旨を表示してもよい。具体的な出力例は後述する。
【0066】
ステップS419において、X線検査装置100は、基板をX線検査装置100から搬出する。具体的には、X線検査装置100は、検査対象駆動機構110により、基板をX線検査装置100の外に移動する。
【0067】
以上で、X線検査装置100は、1つの検査対象1についての検査を終了する。X線検査装置100は、同一種類の複数の検査対象1についてのインライン検査を実行する場合には、当該種類の検査対象1についての検査がまだ終了していないときには(ステップS421NO)、ステップS405からステップS419までの一連の処理を繰り返す。そして、当該種類のすべての検査対象1についての検査が終了すると(ステップS421YES)、その種類についての一連の検査を終了する。
【0068】
ここで、図5のフローチャートを用いて、上述の検査に先だって行なわれるティーチング動作について説明する。ティーチング動作とは、検査以前に、撮影領域や検査領域や検査項目等を入力し、記憶部90に記憶させるための動作を指す。図5の動作は、たとえば入力部40においてティーチング動作のための操作を行なう旨の入力を受付けることによって開始される。
【0069】
図5を参照して、ティーチング動作が開始されると、ステップS501でX線検査装置100は、検査対象駆動機構110により、ティーチングの対象とする基板をX線検査装置100内部の規定位置に搬入する。
【0070】
ステップS503においてX線検査装置100は、入力部40において検査分解能の設定入力を受付ける。
【0071】
ステップS505においてX線検査装置100は、検査対象1の視野内で、BGAの予めIC側に形成されているボール状のはんだ(以下、はんだボールともいう)の1つ分に相当する領域である検査ウィンドウを設定する。検査ウィンドウの設定方法は様々あり、特定の方法には限定されない。一例として、図6(A)に示されたような方法を用いることができる。なお、再構成処理により生成される3次元の再構成データはボクセルと呼ばれる立方体が複数並ぶデータ構造を有しており、再構成データの座標系を図6(B)のように定める。すなわち、高さ方向(基板のクリームはんだが塗布された面の法線方向)をZ方向とする。最も基板に近い側の層をZ=0の断層画像とし、再構成データ中の基板側からZ番目の層が、Z=Zの断層画像に対応する。断層画像は好ましくは基板表面に平行な面であるが、必ずしも基板表面に平行な面でなくてもよく、Z方向の基板表面の法線を横切る面であればよい。なお、パラメータZは、実際の高さを表しているわけではないが、以下では、簡単のため、パラメータZで指定される実際の高さを、高さZと呼ぶ。この座標系は、以降の説明でも同様とする。
【0072】
図6(A)を参照して、X線検査装置100は、視野分割を開始すると、ステップS601からステップS613の処理を行ない、分散V(Z)が最大となる高さZの断層画像を取得する。すなわち、良否判定部78は、対象物の水平断面の高さを指定するパラメータZに0を代入し(ステップS601)、ステップS603において、X線検査装置100は、再構成データ内から、高さZの2次元データ(断層画像)を取得する。
【0073】
ステップS605において、X線検査装置100は、ステップS603で取得された高さZの断層画像の分散V(Z)を算出する。ここで、断層画像の分散は下記の式で計算される:
V(Z)=ΣxΣy(Ixy−Iavg)、
ただし、Ixyは、断層画像内の画素p(x,y)の輝度値、Iavgは断層画像内の全画素の平均値を表わす。
【0074】
ステップS607において、X線検査装置100は、全ての高さの断層画像について、分散を求めたかどうか判断する。具体的には、X線検査装置100は、Zが、再構成データ内の断層数未満かどうかを判断する。Zが断層数未満であるとき(ステップS607においてYES)、X線検査装置100は、ステップS609においてZをインクリメントしたあと、ステップS605からの処理を繰り返す。一方、Zが断層数に達しているとき(ステップS607においてNO)、X線検査装置100は、ステップS611の処理に進む。
【0075】
ステップS611において、X線検査装置100は各断層画像の分散V(Z)を比較して分散V(Z)が最大となるZを求め、ステップS613においてそのときの断層画像を取得する。
【0076】
ステップS615において良否判定部78は、分散が最大となる断層画像をはんだに対応する部分(はんだ部)とそれ以外の部分とに分割するために、断層画像を2値化する。2値化のしきい値は予め設定してもよい。また、はんだとそれ以外の部分(空気や基板)との輝度差は十分に大きいため、良否判定部78は、判別分析法等の公知のしきい値設定手法を用いて、2値化を行なうこともできる。これ以降の説明では、2値化画像において、良否判定部78は、2値化処理により、しきい値以上の輝度値を1、しきい値未満の輝度値を0に変更したものとする。
【0077】
ステップS617において、良否判定部78は、連続する輝度値が1の部分からなる領域(明領域とよぶ)を、明領域が個々のはんだボールに対応付けて認識されるように、ラベリングする。ラベリングには、公知の手法を用いることが可能である。例えば、良否判定部78は、ラスタスキャンおよびルックアップテーブルを用いた手法や輪郭追跡法等を用いればよい。また、ラベリングにおける近傍の画素は、ユーザにより設定できるものとする。ユーザ者は、精度や速度の観点から4近傍や8近傍といった設定をすればよい。
【0078】
ステップS619において、良否判定部78は、はんだ部がラベリングされた画像に基づいて、1つのはんだボールに対応した部分領域についてのラベルを与える。なお、以下では、部分領域を、「分割後の視野」、あるいは、分割前の視野との誤解を招かないと考えられる場合には、単に「視野」ともよぶ。これにより、図7に示されたような、はんだボールの1つに対応した領域701が検査ウィンドウに設定され、それぞれについて検査を行なうこととなる。
【0079】
なお、この例では、検査ウィンドウとして1つのはんだボールに相当する領域を設定するものとしているが、複数のはんだボールに相当する領域を設定することもできる。この場合、ステップS619において良否判定部78は、互いに近傍に位置する所定の個数のはんだ部に対し、部分領域についてのラベルを与える。これにより、1つのはんだ部は、はんだ部のラベルと部分領域のラベルとの異なる2つのラベルを持つことになる。このとき、良否判定部78は、1つの検査ウィンドウに含めるはんだ部の個数を、予め設定しておいた設定値に基づいて決定する。複数のはんだボールに相当する検査ウィンドウを設定する場合、1つの検査ウィンドウに含めるはんだ部の個数は、通常、基板の設計仕様で決定されるため、予めユーザが設定してもよい。また、良否判定部78は、断層画像中のはんだ部の分布に基づいて、同一視野のはんだ部の個数を自動的に設定してもよい。
【0080】
なお、図6(A)では、X線検査装置100が、鉛直下の断層データから鉛直上の断層データに向けて順に、各断層データでの分散を求める例を示しているが、分散を求める手順はこれに限られるわけではない。例えば、X線検査装置100は、鉛直上の断層データから鉛直下の断層データに向けて順に分散を求めてもよい。
【0081】
再度、図4に戻って、ステップS507でX線検査装置100は、入力部40において、後述するマスク厚を基板からのクリームはんだの厚みとして、その入力を受付ける。入力されたクリームはんだの厚みに基づいて検査範囲が特定される。後述するように、ここでの検査には基板のBGAが搭載される側の表面に平行な断層画像が用いられ、「検査範囲」とは、用いる断層画像を特定する、基板面からの高さ(Z方向の距離)で表わされる検査位置または高さの範囲で表わされる検査範囲を指す。検査範囲の設定については後述する。ここでは、ステップS507で入力されたクリームはんだの厚みそのものが記憶されてもよいし、クリームはんだの厚みから特定される検査範囲が記憶されてもよい。検査範囲が記憶されている場合には、上記ステップS409ではクリームはんだの厚みに替えて検査範囲が読み出される。
【0082】
検査対象1が複数の再構成領域(以下、視野ともいう)を含む場合は、X線検査装置100は、CT撮像を行なう前に、全ての視野について検査範囲を設定しておく。このように検査範囲を予め全て設定する方が、各視野のCT撮像の都度検査範囲を設定するのに比べて全体の検査時間を短縮できる。
【0083】
ステップS509でX線検査装置100は、入力部40において、検査基準とする値(以下、検査基準値とも言う)の設定を受付ける。上記ステップS415の検査では、後述するように、断層画像に表れるはんだ部からの測定値を検査基準値と比較することではんだ付け検査の良不良が判定される。従って、ここでは、検査基準として、後述する、面積の検査基準Sthや真円度の検査基準Tthの設定を受付ける。
【0084】
X線検査装置100は、ステップS511で、搬入された検査対象1である基板に対して以上の入力および設定に基づいたテストを行なって入力および設定を検証した後に、ステップS513でX線検査装置100は、基板をX線検査装置100から搬出する。
【0085】
上記ステップS511でのテストは、入力部40に備えられるテストボタン(不図示)が押下されることによって開始される。詳しくは、図8を参照して、テストが開始されると、ステップS701でX線検査装置100は、ティーチング動作によって入力、設定された値を出力部50に出力する。また、以降のテストがすでに行なわれているときは、その結果を表示する。
【0086】
ステップS703でX線検査装置100は、入力部40において検査範囲として設定されている検査高さまたは検査高さの範囲が妥当であるか否かの入力を受付ける。検査範囲が妥当でない場合(ステップS703でNO)、引き続きステップS705で、入力部40においてクリームはんだの厚みとして入力されたマスク厚の入力値の修正を受付ける。
【0087】
同様にして、ステップS707でX線検査装置100は、入力部40において、検査分解能や検査ウィンドウや検査基準値などの設定、入力値についてそれが妥当であるか否かの入力を受付け、妥当でない場合(ステップS707でNO)、ステップS709でそれら値の修正を受付ける。
【0088】
以上のテストを終了し、ステップS513で基板が搬出されると、設定された基準値や入力されたマスク厚などがその基板の種類と対応付けて記憶部90の所定領域に記憶される。上記ステップS409で良否判定部78は、搬入された検査対象1とする基板上の情報(ID)を読取ることなどによって特定された当該基板の種類に対応した情報を記憶部90から読み出す。なお、上の例では基板の種類ごとに基準値やマスク厚が記憶されているものとしているが、個々の基板ごとにこれらが記憶され、上記ステップS409で良否判定部78は、搬入された検査対象1とする基板上の情報(ID)を読取ることなどによって特定された基板に対応した情報を記憶部90から読み出してもよい。
【0089】
ここで、BGAの基板への接続について説明する。BGAの基板への接続方法はリフロー方式(Reflow方式)と言われる、次のような方法で行なわれる。
【0090】
すなわち、第1段階として、クリームはんだ印刷機を用いてはんだ粉末にフラックスを加えて適当な粘度にしたものであるクリームはんだを、基板上のパターン(BGAの搭載予定位置)に印刷する。クリームはんだ印刷機では、通常、穴の開いたステンレス製等の型紙(メタルマスク)上でスキージ(へら)を使ってクリームはんだをしごくことにより、穴の開いた箇所に対応した必要箇所にメタルマスクの厚さ分でクリームはんだが転写される。この厚みを「マスク厚」と称し、塗布されたクリームはんだの厚みに相当する。第2段階として、チップマウンタ(表面実装機、部品装着機)を用い、クリームはんだが塗布された基板のパターン上にBGAを実装する。第3段階として、リフロー炉で加熱する。
【0091】
上述の一連の工程によりBGAの予めIC側に形成されているはんだボールとクリームはんだとが溶融し、図9(A),(B)に示されたように、基板901のパターン903とBGA902とがはんだ904によって物理的および電気的に接続される。
【0092】
溶融温度やはんだの熱伝導が適切であり、十分にはんだが溶融した場合には、図9(A)に示されるように、BGAの予めIC側に形成されているはんだボールとクリームはんだとが一体となってたる状のはんだ904を形成する。
【0093】
これに対して、溶融温度が不足していたり、BGAのはんだボールが先に酸化するなどしてクリームはんだへの熱伝導が不足していたりするとはんだの溶融が不足する。この場合には、図9(B)に示されるように、はんだボール904Aとクリームはんだ904Bとが完全に溶融して一体とはならない。すなわち、図9(A)の例でははんだ904が全体としてたる状を形成しているのに対して、図9(B)に示されるように、はんだボール904Aとクリームはんだ904Bとの不連続が生じている。この状態は、物理的および電気的な完全な接続状態を形成しない。また、はんだ904内にボイドが生じたり、隣接したはんだボールが結合してブリッジが形成されたりする場合もある。これらの状態もまた、物理的および電気的な完全な接続状態を形成しない。
【0094】
そこで、X線検査装置100は検査対象1である基板へのBGAの接続における、はんだのぬれ性、はんだのボイドおよびブリッジの有無、異物の有無などの、はんだでの接続状態を検査するためのはんだ付け検査をする。特に、はんだのぬれ性、つまり、BGAのはんだボールとクリームはんだとが完全に溶融して一体となっているか否かを検査する場合、はんだの形状が図9(B)を用いて説明された形状であるか否かを検査する。
【0095】
この場合図9(B)に示されるように、基板表面からクリームはんだの厚みに相当する基板表面から高さHcの位置付近ではんだボール904Aとクリームはんだ904Bとの不連続が生じる可能性が高い。なぜなら、部品間の接合不良は境界面で発生しやすいためである。そこでX線検査装置100は、ステップS507でクリームはんだの厚みとして入力されたマスク厚から、検査範囲として少なくとも、図9(B)に示された、クリームはんだの厚み、すなわちマスク厚に相当する基板表面から高さHcである位置(Z=Hc)を設定する。好ましくは、当該位置(Z=Hc)を含み、基板901のパターン903の位置(基板表面)からBGA902までの距離Hよりも短い範囲を検査範囲として設定する。基板表面に部品を実装するにあたって部品に押し込まれることにより、クリームはんだとはんだボールとの境界はマスク厚に相当する基板表面から高さHcよりも基板表面側になると考えられる。したがって、より好ましくは、基板表面から高さHcまでの範囲(0≦Z≦Hc)を検査範囲として設定する。このように検査範囲が設定されることによって、より効果的にぬれ性の検査が可能となると共に、基板表面からBGAまでの全範囲(0≦Z≦H)を検査する場合と比較して検査速度を速めることができ、生産性の向上を確保することができる。
【0096】
図10を用いて、上記ステップS417での検査動作について説明する。
図10を参照して、まず、検査動作が開始するとステップS801で良否判定部78は、ステップS409で読み出されたクリームはんだの厚みと予め規定されている断層画像を形成する高さ方向のボクセル数とから、検査に用いる断層画像の総数Nを特定する。また良否判定部78は、検査対象1の再構成処理により生成される3次元の再構成データを取得する。
【0097】
ステップS803で良否判定部78は、検査に用いるZ方向の断層画像の基板側からの順番を表わす変数iを0、断層画像のはんだ面積のうちの最小値を表わす引数Sminを実装された検査対象1での取り得る最大値MAX、および断層画像のはんだ部分の真円度の最小値を表わす引数Tminを実装された検査対象1での取り得る最大値MAXに初期化する。
【0098】
ここで、はんだボールとクリームはんだとが完全に溶融せずに一体とはならない現象が生じると、クリームはんだの塗布された位置とはんだボールの位置とがずれることにより、断層画像がひょうたん型になったり楕円となったりする。本実施の形態においてはこの点に着目し、一例として、断層画像のはんだ面積Sの、断層画像のはんだ部分の重心位置とはんだ部分の境界との距離dpmから求めた面積に対する比率を指標の一つとして用いる。なお、「真円度」とは幾何学的円形からのずれ度合いの指標であり、真円度が小さいほど幾何学的円形からのずれが大きく、真円度が大きいほど幾何学的円形からのずれが小さい、すなわち幾何学的円形に近い、ことを指す。
【0099】
なお、はんだボールとクリームはんだとの溶融具合を知るための指標としては、断層画像のはんだ面積や断層画像のはんだ部分の真円度に限定されず、その他の指標が用いられてもよい。他の指標を示す特徴量F1,F2を算出するための式として、たとえば、以下の式(1)や式(2)が挙げられる:
F1=dpmi2/dpma2 …式(1)、
F2=b2/a2 …式(2)、
ただし、dpmaは重心と境界との間の距離の最大値、dpmiは重心と境界との間の距離の最小値、aは楕円の長径、およびbは楕円の短径を表わす。
【0100】
式(1)は内接円と外接円との面積比を表わすものであり、図13(A)に表わされたように断層画像においてはんだ部分が一部欠落して現れるクリームはんだの塗布された位置とはんだボールの位置とのずれを特徴量として表わすものである。式(2)は楕円の長径と短径とをそれぞれ直径とする円の面積比を表わすものであり、図13(B)に表わされたように断層画像においてはんだ部分が楕円形状で現れるクリームはんだの塗布された位置とはんだボールの位置とのずれを特徴量として表わすものである。いずれの特徴量も、はんだボールとクリームはんだとが完全に溶融して一体となっていると断層画像においてはんだ部分が円形で現れるところ、実際のはんだ部の円形からの乖離具合を数値化したものであり、はんだボールとクリームはんだとが完全に溶融せずに一体とはならない現象を表わす指標としたものである。
【0101】
ステップS805で良否判定部78は、ステップS801で取得した3次元データからZ=iの位置を切り出して断層画像を作成し、そのうちの上記ステップS505で設定された検査ウィンドウに該当する領域の断層画像を取得する。X線検査装置100は、取得した断層画像を2値化し、画像をはんだとそれ以外とに分離した2値化画像を取得する。この2値化処理には、判別分析法等の一般的な2値化処理を用いることが可能である。検査装置は、2値化画像から白(もしくは1)の部分のラベリングを行ない、はんだとそれ以外とを区別したラベリング画像を取得する。このラベリング処理には、ラスタスキャンによって連結の有無を判定するような一般的なラベリング処理を用いることが可能である。
【0102】
ステップS807で良否判定部78は、ラベリング画像からそれぞれのはんだの面積(白もしくは1の画素の個数)を計数し、はんだの面積Sを求める。また、はんだの真円度Tを求める。そして良否判定部78は、はんだの面積Sと真円度Tとを、それぞれ、それまでの検査で記憶されているはんだの面積の最小値Sminおよび真円度の最小値Tminと比較する。
【0103】
ステップS807でZ=iの断面画像から求めたはんだの面積Sがそれまでの検査で記憶されているはんだの面積の最小値Sminよりも小さい場合には(ステップS809でYES)、ステップS811で最小値Sminを求めたはんだの面積Sで更新する。そうでない場合には(ステップS809でNO)、最小値Sminを維持する。
【0104】
同様に、ステップS807でZ=iの断面画像から求めたはんだの真円度Tがそれまでの検査で記憶されているはんだの真円度の最小値Tminよりも小さい場合には(ステップS813でYES)、ステップS815で最小値Tminを求めたはんだの真円度Tで更新する。そうでない場合には(ステップS813でNO)、最小値Tminを維持する。
【0105】
ステップS817で良否判定部78は変数iをインクリメントして、変数iがステップS801で設定された検査に用いる断層画像の総数Nに達したかを確認する。その結果、変数iが断層画像の総数Nに達していないときには(ステップS819でNO)、ステップS805からの処理を繰り返し、次の断層画像に同様の処理を行なう。
【0106】
変数iが断層画像の総数Nに達すると(ステップS819でYES)、良否判定部78は、それまでの検査で記憶されているはんだの面積の最小値Sminおよびはんだの真円度の最小値Tminを、それぞれ、ティーチング動作で設定されて記憶部90に記憶している面積の検査基準Sthおよび真円度の検査基準Tthと比較する。その結果、測定されたはんだの面積の最小値Sminおよびはんだの真円度の最小値Tminのいずれもが基準値以上である場合には(ステップS821でYES)、ステップS823で良否判定部78は、当該検査ウィンドウのはんだ付けの状態が良好と判定して、当該検査ウィンドウについて検査合格の判定結果を返す。
【0107】
一方、測定されたはんだの面積の最小値Sminおよびはんだの真円度の最小値Tminのうちの少なくとも一方でも基準値未満である場合には(ステップS621でNO)、ステップS625で良否判定部78は、当該検査ウィンドウのはんだ付けの状態が不良と判定して、当該検査ウィンドウについて検査不合格の判定結果を返す。
【0108】
X線検査装置100は、上記ステップS415で検査対象1に設定されたすべての検査ウィンドウについて以上の検査を行なう。良否判定部78は、すべての検査ウィンドウについて検査合格と判定した場合に、当該検査対象1のはんだ付けの状態を良好と判定して、当該検査対象1について検査合格の判定結果を返す。一方、少なくとも1つの検査ウィンドウについてでも検査不合格と判定した場合には、良否判定部78は、当該検査対象1のはんだ付けの状態を不良と判定して、当該検査対象1について検査不合格の判定結果を返す。
【0109】
上記ステップS417での出力例として、たとえば図11(A)に示すような画面を出力部50に表示することが挙げられる。すなわち、図11(A)を参照して、ステップS415の検査で不良と判定されると、当該検査対象1のすべての検査ウィンドウ、または1つの視野について、Z方向の断層画像(XY断層画像)1101を表示し、それぞれの検査ウィンドウについて、はんだとそれ以外とが区分可能なように表示する。このように表示することにより、ユーザは、どの検査ウィンドウ(XY平面上の位置)にどのような不良が発生したのかを一目で把握することができる。
【0110】
好ましくは、断層画像1101内には検査ウィンドウ1101Aも表示し、含まれる検査ウィンドウのうち、不良と判定された検査ウィンドウを他の検査ウィンドウとは異ならせて表示する。図11(A)の例では不良と判定された検査ウィンドウを他の検査ウィンドウよりも太く表示している。他の例として、表示する色を異ならせて表示してもよい。このように表示することにより、ユーザは、不良が発生した検査ウィンドウ(XY平面上の位置)を容易に把握することができる。
【0111】
図11(A)の画面において、不良が発生した検査ウィンドウとして表示されている検査ウィンドウは、入力部40で選択可能に表示される。X線検査装置100は、入力部40において不良が発生した検査ウィンドウの選択を受付けると、不良と判定した検査に用いた断層画像の、基板表面からの高さをさらに出力する。高さの出力の例としては、たとえば図11(B)に示されるようなスライドバーで表示する例が挙げられる。スライドバーでの高さの表示に加えて、図11(B)に示されるように、表示する断層画像のZ方向の高さを表示してもよい。このように表示することにより、ユーザは、不良が発生した位置(基板表面からの高さ)を容易に把握することができる。
【0112】
また好ましくは、出力画面には、Z方向の断層画像(XY断層画像)1101に加えて図11(A)に示されるようにY方向の断層画像(XZ断層画像)1102および/またはX方向の断層画像(YZ断層画像)1103が含まれ、検査範囲であるマスク厚を示すウィンドウ1102A,1103AがY方向の断層画像(XZ断層画像)1102および/またはX方向の断層画像(YZ断層画像)1103内に表示される。このように表示することにより、ユーザは、Z方向の断層画像(XY断層画像)1101がZ方向にどれくらいの高さのものであるかを容易に把握することができる。
【0113】
なお、上の説明では、X線検査装置100が、鉛直下の断層データから鉛直上の断層データに向けて順に、各断層データではんだの面積の最小値Sminおよびはんだの真円度の最小値Tminを求めて基準値と比較している例を示しているが、検査の手順はこれに限られるわけではない。例えば、X線検査装置100は、鉛直上の断層データから鉛直下の断層データに向けて順に検査を行なってもよい。
【0114】
また、上の説明では、各断層データではんだの面積の最小値Sminおよびはんだの真円度の最小値Tminを特徴量として求めて基準値と比較し、いずれもが基準を満たした場合にはんだ付けの状態を良と判定している例を示しているが、特徴量はこれらに限定されず、これらのうちの一方でもよいし、その他の特徴量でもよいし、また、これらの組み合わせであってもよい。たとえば、その他の特徴量としては、上の式(1),(2)で算出される特徴量を用いてもよい。
【0115】
また、上の説明では、X線検査装置100は、再構成した3次元データから複数の断層データを生成しているものの、X線検査装置100は、検査基準内で上の検査動作が可能な間隔で、複数の断層データを生成することができればよい。X線検査装置100は、視野内の全てのボクセルのデータを再構成しなくてもよい。
【0116】
[その他の実施の形態1]
上記説明はBGAが実装された基板の検査について行なったが、X線検査装置100が検査できる対象物はBGAが実装された基板に限定されず、他の部品の検査にも同様に活用することができる。なぜなら、部品間の接合不良は境界面で発生するものであるため、その境界面を予め検査範囲として特定できるからである。そのため、境界面から検査範囲を設定し、その範囲での検査で同様にして接合不良を判定することが可能となる。境界面としては、たとえば検査対象であるBGAが実装された基板である場合には、BGAに設けられるはんだボールと基板に印刷されたクリームはんだとの境界面、基板表面とクリームはんだとの境界面、が挙げられる。検査対象が、チップやその他の部品、すなわち、BGAのようにはんだボールが設けられていない部品が実装された基板である場合、当該部品の電極と基板に印刷されたクリームはんだとの境界面が挙げられる。
【0117】
[その他の実施の形態2]
上記説明はBGAが実装された基板でのBGAと基板とのはんだの接合状態の検査について行なったが、X線検査装置100での検査の内容ははんだの接合状態に限定されず、他の検査にも同様に活用することができる。他の検査としては、たとえば、BGAと基板とを結合するはんだ内のボイドの有無の検査が挙げられる。なぜなら、ボイドは物質同士の境界面での化学反応により発生するため、BGAに設けられるはんだボールと基板に印刷されたクリームはんだとの境界面がボイドの発生しやすい高さとして特定できるからである。そのため、マスク厚として入力されたクリームはんだの厚みから同様にして検査範囲を設定し、その範囲での検査でボイドの有無を検査することが可能となる。
【0118】
[その他の実施の形態3]
上記説明はティーチング動作にてユーザからマスク厚の入力を受付けることによってクリームはんだの厚みを得て検査範囲を設定する例について行なったが、クリームはんだの厚みの取得はユーザからの入力に限定されず、他の方法で取得することもできる。他の例として、先に、第1段階〜第3段階として説明したBGAを基板へ接続する工程が、図12のような、一連の装置群からなるシステムにて自動で行なわれる場合が考えられる。すなわち、図12を参照して、当該システムには、基板上のパターンにクリームはんだを印刷するためのクリームはんだ印刷機200と、はんだ印刷状態を検査するための検査機300と、クリームはんだが塗布された基板のパターン上にBGAを実装するためのチップマウンタ400と、BGAの搭載状態を検査するための検査機500と、リフロー炉600と、はんだ付け状態を外観検査するための検査機700と、X線検査装置100とが含まれ、この順に基板が搬送されて、上述の第1段階〜第3段階の一連の工程によりBGAが接続される。また、各工程の装置間には検査機300,500,700,100がこの順で含まれ、前工程を経た基板を測定することで、前工程の良否を判定する。図12に示されるように、当該システムにはさらにサーバ800が含まれてもよく、これらは、通信回線900で接続されている。通信回線900は、たとえば1Gbit程度のLAN(Local Area Network)ケーブルであってもよいし、インターネット等の電話回線を利用したものであってもよいし、無線通信回線であってもよい。
【0119】
印刷検査装置である検査機300は、たとえばクリームはんだ印刷機200で印刷工程が実行された後の基板を対象に、ステレオカメラを用いた3次元計測を行なって、基板上の各パッド(検査箇所)に印刷されたはんだの量(体積または高さ)を測定する。そして、各測定値を事前に登録された基準値と比較することにより、各パッドのはんだ量が適量、過多、過小のいずれであるかをパッド毎に判別する。検査機300は、1枚の基板の検査が終了する都度、検査結果や、この検査のために実行した測定処理により得た測定データを送信する。送信される情報には、少なくとも、対応する基板の識別情報に関連付けられた測定データ(測定されたはんだの量)が含まれる。好ましくは、送信される情報の測定データは、対応する測定箇所の識別情報(たとえばパッドID)にも関連付けられている。
【0120】
図12のような装置において、X線検査装置100はクリームはんだの厚みを、ティーチング動作でのユーザからの入力に替えて、検査機300から通信回線900を介して送信された上述の情報を受信することで取得してもよい。このようにしてクリームはんだ厚みを受信して取得することで、ユーザが入力する場合と比較してヒューマンエラーを回避することができ、検査精度を向上させることができる。また、事前のティーチング動作の工程を減らすことができ、検査効率を向上させることができる。
【0121】
さらに、上述のように検査機300から基板上の検査箇所(パッド)ごとの測定データが送信される場合、X線検査装置100は検査箇所ごとにZ方向の検査位置を特定し、該当する断層画像を用いて上述の検査を行なってもよい。印刷されるクリームはんだの厚みは、スキージの圧力の加減やマウンタによる部品の押し付け具合などによって、同一基板においても箇所によって異なる場合がある。このように、検査機300から基板上の検査箇所ごとに測定されたクリームはんだの厚みがX線検査装置100に入力されることによって検査箇所ごとに最適なZ方向の検査位置を特定することができるため、より検査精度を向上させることができる。
【0122】
この場合、搬入される基板の種類ごとにたとえば最初の1つの基板で検査機300において測定されたクリームはんだの厚みを用いてもよいし、基板ごとに、検査機300において測定されたクリームはんだの厚みを用いてもよい。後者のように基板ごとに測定されたクリームはんだの厚みを用いて検査範囲を定めることで、検査速度を確保しつつ検査精度を向上させることができる。なお、この場合、X線検査装置100は、検査機300において読取られた基板に固有のIDとクリームはんだの厚みとを関連付けて検査機300から受信し、これらを記憶しておく。またはサーバ800に記憶させてもよい。そして、X線検査装置100に搬入された検査対象1からIDを読取り、当該IDに関連付けられているクリームはんだの厚みを検査範囲を定めるのに用いる。
【0123】
または、検査機300からの受信に替えて、チップマウンタ400でBGAが実装された後の基板を測定した検査機500からの測定結果を受信して、その測定結果からクリームはんだの厚みを取得してもよい。または、これらの測定結果に替えて、予めサーバ800に記憶されている、クリームはんだ印刷機200で用いるメタルマスクのCAD(Computer Aided Design)データに含まれるマスク厚を読出して用いてもよい。このようにしてクリームはんだの厚みを受信して取得することでも、ユーザが入力する場合と比較してヒューマンエラーを回避することができ、検査精度を向上させることができる。また、事前のティーチング動作の工程を減らすことができ、検査効率を向上させることができる。
【0124】
さらに、検査機500においても同様に基板上の検査箇所ごとに部品実装後の基板が測定され、対応する測定箇所の識別情報と関連付けて測定結果がX線検査装置100に入力されてもよい。この場合もX線検査装置100は、検査箇所ごとにZ方向の検査位置を特定し、該当する断層画像を用いて上述の検査を行なってもよい。このようにすることでも検査箇所ごとに最適なZ方向の検査位置を特定することができるため、より検査精度を向上させることができる。
【0125】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0126】
1 検査対象、18 X線、10 X線源、23 X線検出器、30 画像取得制御機構、32 検出器駆動制御機構、34 画像データ取得部、40 入力部、50 出力部、60 X線源制御機構、70 演算部、72 X線源制御部、74 画像取得制御部、76 再構成部、78 良否判定部、80 検査対象位置制御部、82 X線焦点位置計算部、84 撮像条件設定部、90 記憶部、90a 主記憶部、90b 補助記憶部、92 X線焦点位置情報、94 撮像条件情報、96 プログラム、110 検査対象駆動機構、111a,111b ステージ、112,112a,112b 基板レール、120 検査対象位置制御機構、100 X線検査装置、200 クリームはんだ印刷機、300 検査機、400 チップマウンタ、500 検査機、600 リフロー炉、700 検査機、701 領域、800 サーバ、900 通信回線、901 基板、902 BGA、903 パターン、904 はんだ、904A はんだボール、904B クリームはんだ、1101 Z方向の断層画像、1101A 検査ウィンドウ、1102 Y方向の断層画像、1102A ウィンドウ、1103 X方向の断層画像、1103A ウィンドウ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線を用いて対象物を検査するX線検査装置であって、
前記対象物は、基板と、前記基板に塗布されたはんだによって前記基板に電気的に結合して搭載される部品とを含み、
前記対象物に向けて前記X線を出力するためのX線出力手段と、
前記対象物に複数の方向から入射し、前記対象物を透過した前記X線の強度分布を表わす透視画像を撮像するためのX線検出手段と、
前記複数の方向からの前記X線の前記透視画像に基づいて、前記基板の、前記部品の搭載される面の法線を横切る、前記部品と前記基板との間の領域についての断層画像を再構成するための再構成手段と、
前記基板に塗布されたはんだの厚みを取得するための取得手段と、
前記はんだの厚みに基づいて、前記部品の搭載される面から法線方向の距離で規定される位置を前記対象物の検査位置として特定するための特定手段と、
前記検査位置にある断層画像を用いて前記対象物の前記はんだによる結合の良否を判定するための検査手段とを備える、X線検査装置。
【請求項2】
前記特定手段は、少なくとも、前記部品の搭載される面から法線方向の、前記はんだの厚みに対応した距離で規定される位置を含み、前記基板と前記部品との間の距離よりも短い範囲を前記検査位置として特定する、請求項1に記載のX線検査装置。
【請求項3】
前記特定手段は、前記基板の前記部品の搭載される面の表面から前記はんだの厚みに対応した前記部品の搭載される面の法線方向の位置までの範囲を前記検査位置として特定する、請求項2に記載のX線検査装置。
【請求項4】
前記取得手段は、前記基板に塗布されたはんだの厚みの入力を受付けるための入力手段を含む、請求項1〜3のいずれかに記載のX線検査装置。
【請求項5】
前記取得手段は、前記基板に塗布されたはんだの厚みを示すデータを他の装置から取得する、請求項1〜3のいずれかに記載のX線検査装置。
【請求項6】
前記他の装置は、基板上のはんだの厚みを測定する装置における、前記基板上のはんだの厚みの測定結果を記憶する装置である、請求項5に記載のX線検査装置。
【請求項7】
前記基板に塗布されたはんだの厚みを基板の識別情報と関連付けて記憶するための記憶手段と、
前記基板を識別するための識別手段とをさらに備え、
前記特定手段は、前記対象物とする基板の前記識別情報に関連付けられたはんだの厚みを前記記憶手段から読み出して前記対象物の検査位置を特定する、請求項1〜6のいずれかに記載のX線検査装置。
【請求項8】
前記識別情報は、前記基板に固有の識別情報である、請求項7に記載のX線検査装置。
【請求項9】
前記識別情報は、前記基板の種類に固有の識別情報である、請求項7に記載のX線検査装置。
【請求項10】
前記検査手段は、前記検査位置にある断層画像に表れるはんだ部の面積、その真円度、およびその他の特徴量のうちのいずれか一つまたはこのうちでのいくつかの組み合わせを用いて前記はんだによる結合の良否を判定する、請求項1〜9のいずれかに記載のX線検査装置。
【請求項11】
X線を用いて対象物を検査するX線検査方法であって、
前記対象物は、基板と、前記基板に塗布されたはんだによって前記基板に電気的に結合して搭載される部品とを含み、
前記対象物に含まれる前記基板に塗布されたはんだの厚みを取得するステップと、
前記対象物に向けて前記X線を出力するステップと、
前記対象物に複数の方向から入射し、前記対象物を透過した前記X線の強度分布を表わす透視画像を撮像するステップと、
前記複数の方向からの前記X線の前記透視画像に基づいて、前記基板の、前記部品の搭載される面の法線を横切る、前記部品と前記基板との間の領域についての断層画像を再構成するステップと、
前記はんだの厚みに基づいて、前記部品の搭載される面から法線方向の距離で規定される位置を前記対象物の検査位置として特定するステップと、
前記検査位置にある断層画像を用いて前記対象物の前記はんだによる結合の良否を判定するステップとを備える、X線検査方法。
【請求項12】
X線源とX線検出器と演算部とを有するX線検査装置に、X線を用いた対象物の検査を実行させるX線検査プログラムであって、
前記対象物は、基板と、前記基板に塗布されたはんだによって前記基板に電気的に結合して搭載される部品とを含み、
前記演算部が、前記対象物に含まれる前記基板に塗布されたはんだの厚みを取得するステップと、
前記X線源が、前記対象物に向けて前記X線を出力するステップと、
前記前記対象物に複数の方向から入射し、前記対象物を透過した前記X線の強度分布を表わす透視画像を撮像するステップと、
前記X線検出器が、前記複数の方向からの前記X線の前記透視画像に基づいて、前記基板の、前記部品の搭載される面の法線を横切る、前記部品と前記基板との間の領域についての断層画像を再構成するステップと、
前記演算部が、前記はんだの厚みに基づいて、前記部品の搭載される面から法線方向の距離で規定される位置を前記対象物の検査位置として特定するステップと、
前記演算部が、前記検査位置にある断層画像を用いて前記対象物の前記はんだによる結合の良否を判定するステップとを実行させる、X線検査プログラム。
【請求項13】
はんだが塗布された基板の検査をする第1の検査装置と、X線を用いて対象物を検査するX線検査装置とを含み、
前記X線検査装置での検査の対象物は、前記基板と、前記基板に塗布されたはんだによって前記基板に電気的に結合して搭載される部品とを含み、
前記第1の検査装置は、
前記基板上の検査位置ごとに塗布されたはんだの量を測定し、その測定結果を当該基板を識別するための識別情報と関連付けた測定結果データを基板ごとに作成するための検査手段と、
前記測定結果データを送信するための通信手段とを備え、
前記X線検査装置は、
前記対象物に向けて前記X線を出力するためのX線出力手段と、
前記対象物に複数の方向から入射し、前記対象物を透過した前記X線の強度分布を表わす透視画像を撮像するためのX線検出手段と、
前記複数の方向からの前記X線の前記透視画像に基づいて、前記基板の、前記部品の搭載される面の法線を横切る、前記部品と前記基板との間の領域についての断層画像を再構成するための再構成手段と、
前記基板を識別するための識別手段と、
前記第1の検査装置から、前記識別された基板に塗布されたはんだの厚みを示す前記測定結果データを受信するための通信手段と、
前記測定結果データに含まれる前記基板に塗布されたはんだの厚みに基づいて、前記部品の搭載される面から法線方向の距離で規定される位置を前記対象物の検査位置として特定するための特定手段と、
前記検査位置にある断層画像を用いて前記対象物の前記はんだによる結合の良否を判定するための検査手段とを備える、X線検査システム。
【請求項14】
前記第1の検査装置の前記検査手段は、前記基板上の検査箇所ごとに塗布されたはんだの量を測定して、前記検査箇所ごとの測定結果データを作成し、
前記X線検査装置の前記特定手段は、前記基板上の検査箇所ごとに前記検査位置を特定する、請求項13に記載のX線検査システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−191085(P2011−191085A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−55319(P2010−55319)
【出願日】平成22年3月12日(2010.3.12)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】