説明

X線検査装置およびX線検査装置用コンピュータプログラム

【課題】X線検出器において暗電流などの暗出力や検出感度の変化に即時に対応して補正を行なうことにより検査対象物の検査精度を向上させることができるX線検査装置およびX線検査装置用コンピュータプログラムを提供する。
【解決手段】X線検査装置100は、筐体101内に貫通した状態で搬送コンベア104を備える。筐体101内における搬送コンベア104の上方にはX線Lを照射するX線照射器105が設けられており、同搬送コンベア104の内側にはX線照射器105に対向した状態でX線ラインセンサ107が設けられている。また、筐体101内の検査対象物WKの搬送経路上におけるX線ラインセンサ107より上流側には、ワーク検出器108が設けられている。X線検査装置100の作動を制御するコンピュータ装置120は、ワーク検出器108が検査対象物WKを検出するごとにX線ラインセンサ107の暗出力補正および検出感度補正を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査対象物にX線を照射してX線透視像を生成することにより、検査対象物内の検査を行なうX線検査装置およびX線検査装置用コンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、物品の内部の状態や物品内部に収容された内容物を透視することができるX線検査装置がある。X線検査装置は、検査対象物にX線を照射することにより検査対象物の内部のX線透視像を生成する撮像装置であり、生産ラインにおける製品検査や空港の搭乗カウンターでの機内持ち検査などにおいて広く用いられている。
【0003】
このようなX線検査装置においては、X線照射装置から照射されたX線を検査対象物を介して検出するX線検出器のX線検出信号に対して暗出力補正および検出感度補正を行なうことが必要である。この場合、暗出力補正とは、X線検出器にX線を入射させない状態においてX線検出器から出力される暗電流などの電気信号をX線検出器から出力されるX線検出信号から除去するための処理である。また、検出感度補正とは、X線検出器を構成するX線ラインセンサにおける各X線検出画素間の検出感度誤差を最小化する処理である。例えば、下記特許文献1には、検査対象物を搬送するベルトコンベアにおける感度補正(キャリブレーション)に最も適したベルト位置、換言すれば、感度補正に悪影響を及ぼさないベルト位置で検出感度補正を行うX線検査装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−26198号公報
【0005】
しかしながら、このようなX線検査装置においては、短時間に変化することがある検出感度に即時に対応することができない。すなわち、上記特許文献1に記載されたX線検査装置は、検査対象物が載置されていないベルトコンベア上において検出感度補正に適した位置を探索して検出感度補正を行なうため、検出感度補正に時間と手間が掛かり頻繁に検出感度補正を行なうことが現実的ではない。このため、X線検出器の検出感度が短時間に変化した場合には、検査対象物に対する検査精度が低下するという問題がある。
【0006】
本発明は上記問題に対処するためなされたもので、その目的は、X線検出器において暗電流などの暗出力および/または検出感度の変化に即時に対応して補正を行なうことにより検査対象物の検査精度を向上させることができるX線検査装置およびX線検査装置用コンピュータプログラムを提供することにある。
【発明の概要】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に係る本発明の特徴は、検査対象物を搬送する搬送手段と、搬送手段による検査対象物の搬送経路上に配置されて検査対象物に対してX線を照射するX線照射手段と、X線照射手段から照射されたX線を検査対象物を介して検出して同検出したX線量に対応する電気信号からなるX線検出信号を出力するX線検出手段と、搬送手段による検査対象物の搬送経路上にて検査対象物を検出して同検査対象物の有無を表すワーク検出信号を出力するワーク検出手段と、X線検出手段における暗出力および/または検出感度の補正を行うX線検出信号補正手段とを備え、X線検出信号補正手段は、ワーク検出手段から出力されるワーク検出信号に基づいて暗出力および/または検出感度の補正を開始することにある。この場合、暗出力とは、X線検出手段にX線を入射させない状態においてX線検出手段を構成する各種回路やX線検出素子から出力される電気信号である。
【0008】
このように構成した請求項1に係る本発明の特徴によれば、X線検査装置は、検査対象物を搬送する搬送経路上に検査対象物を検出するワーク検出手段を備えるとともに、X線検出手段における暗出力および/または検出感度の補正を行なうX線検出信号補正手段がワーク検出手段から出力されるワーク検出信号に基づいて暗出力および/または検出感度の補正の開始を行なう。これにより、X線検査装置は、検査対象物の搬送経路上において検査対象物がワーク検出手段によって検出されるごと、すなわち、検査対象物がX線検出手段を通過する前および/または後に暗出力および/または検出感度の補正を行なう。この結果、X線検査装置は、X線検出手段に相当するX線検出器における暗出力および/または検出感度の変化に即時に対応することができ、検査対象物の検査精度を向上させることができる。
【0009】
また、請求項2に係る本発明の他の特徴は、前記X線検査装置において、ワーク検出手段は、検査対象物の搬送経路上におけるX線検出手段よりも上流側に配置され、X線検出信号補正手段は、ワーク検出信号が検査対象物の有る状態を表わすとき、検査対象物がX線検出手段に到達する前または通過後に暗出力および/または検出感度の補正を行なうことにある。
【0010】
このように構成した請求項2に係る本発明の他の特徴によれば、X線検査装置は、ワーク検出手段が検査対象物の搬送経路上におけるX線検出手段より上流側に配置されているとともに、X線検出信号補正手段は検査対象物がX線検出手段に到達する前または通過後に暗出力および/または検出感度の補正を行う。この場合、X線検査装置は、X線検出信号補正手段が検査対象物がX線検出手段に到達する前に暗出力および/または検出感度の補正を行うことにより、検査対象物の検査直前に暗出力補正および/または感度補正を行うことになるため検査対象物の検査精度を極めて高精度にすることができる。また、X線検査装置は、X線検出信号補正手段が検査対象物がX線検出手段を通過した後に暗出力および/または検出感度の補正を行うことにより、ワーク検出手段とX線検出手段との配置距離を詰めることができるためX線検査装置の構成をコンパクト化することができる。
【0011】
また、請求項3に係る本発明の他の特徴は、前記X線検査装置において、ワーク検出手段は、検査対象物の搬送経路上におけるX線検出手段よりも下流側に配置され、X線検出信号補正手段は、ワーク検出信号が検査対象物の有る状態を表わすとき、ワーク検出信号の対象となった検査対象物の次の検査対象物がX線検出手段に到達する前に暗出力および/または検出感度の補正を行なうことにある。
【0012】
このように構成した請求項3に係る本発明の他の特徴によれば、X線検査装置は、ワーク検出手段が検査対象物の搬送経路上におけるX線検出手段より下流側に配置されているとともに、X線検出信号補正手段は検査対象物がワーク検出手段を通過した後、次の検査対象物がX線検出手段に到達する前に暗出力および/または検出感度の補正を行う。この場合、X線検査装置は、X線検出信号補正手段が検査対象物がX線検出手段を通過した後直ちに暗出力および/または検出感度の補正を行うことにより、X線検出手段より上流側の検査対象物の搬送距離を短くすることができるためX線検査装置の構成をコンパクト化することができる。また、X線検査装置は、X線検出信号補正手段が検査対象物がX線検出手段を通過した後、次の検査対象物がX線検出手段に到達する前に暗出力および/または検出感度の補正を行うことにより、検査対象物の検査直前に暗出力補正および/または感度補正を行うことになるため検査対象物の検査精度を極めて高精度にすることができる。
【0013】
また、請求項4に係る本発明の他の特徴は、前記X線検査装置において、さらに、ワーク検出信号が検査対象物の有る状態を表わすとき、同ワーク検出信号が検査対象物の有る状態を表してからの時間、検査対象物の搬送量およびX線検出信号のデータ量のうちの少なくとも1つを計測する計測手段を備え、X線検出信号補正手段は、計測手段による計測値に基づいて暗出力および/または検出感度の補正を開始することにある。
【0014】
このように構成した請求項4に係る本発明の他の特徴によれば、X線検査装置は、検査対象物が検出されてからの時間、検査対象物の搬送量およびX線検出手段から出力されるX線検出信号のデータ量のうちの少なくともいずれか1つを計測する計測手段を備えるとともに、X線検出信号補正手段は計測手段による計測値に基づいてX線検出手段における暗出力および/または検出感度の補正を開始する。これにより、X線検査装置は、前記時間、搬送量およびデータ量を適宜調整することにより任意のタイミングで暗出力および/または検出感度の補正を行うことができる。
【0015】
また、請求項5に係る本発明の他の特徴は、前記X線検査装置において、さらに、X線検出手段から出力されるX線検出信号に基づいてX線透視像を生成する透視像生成手段を有し、ワーク検出手段は、透視像生成手段にて生成されたX線透視像に基づいて検査対象物の有無を表すワーク検出信号を出力し、X線検出信号補正手段は、ワーク検出信号が検査対象物の無い状態を表すとき、X線検出手段における暗出力および/または検出感度の補正を開始することにある。
【0016】
このように構成した請求項5に係る本発明の他の特徴によれば、X線検査装置は、ワーク検出手段が透視像生成手段にて生成したX線透視像に基づいてワーク検出信号を出力し、X線検出信号補正手段はワーク検出信号が検査対象物の無い状態を表すとき、前記暗出力および/または前記検出感度の補正を開始する。すなわち、X線検査装置は、X線検出手段がワーク検出手段を兼ねているため、検査対象物の搬送経路上に別途ワーク検出手段を設ける必要がなくX線検査装置の構成を簡単化することができるとともに、検査対象物にX線を照射中に暗出力および/または検出感度の補正が行なわれることを防止することができる。
【0017】
また、請求項6に係る本発明の他の特徴は、前記X線検査装置において、さらに、X線検出手段から出力されるX線検出信号に基づいてX線透視像を生成する透視像生成手段を有し、X線検出信号補正手段は、透視像生成手段によって生成されたX線透視像に検査対象物が含まれるとき、暗出力および/または検出感度の補正を中止することにある。
【0018】
このように構成した請求項6に係る本発明の他の特徴によれば、X線検査装置は、X線検出手段から出力されるX線検出信号に基づいてX線透視像を生成する透視像生成手段を有するとともに、X線検出信号補正手段は前記X線透視像に検査対象物が含まれるとき、暗出力および/または検出感度の補正を中止する。これにより、暗出力および/または検出感度の補正処理を実行中において検査対象物がX線検出手段に達した場合、速やかに前記補正処理が中断されて無駄の前記補正処理が続行されることを防止することができるとともに検査対象物の検査を実行することができる。
【0019】
また、本発明はX線検査装置の発明として実施できるばかりでなく、このX線検査装置の制御装置に実行されるコンピュータプログラムの発明としても実施できるものである。
【0020】
具体的には、請求項7に示すように、検査対象物を搬送する搬送手段と、搬送手段による検査対象物の搬送経路上に配置されて検査対象物に対してX線を照射するX線照射手段と、X線照射手段から照射されたX線を検査対象物を介して検出して同検出したX線量に対応する電気信号からなるX線検出信号を出力するX線検出手段と、搬送手段による検査対象物の搬送経路上にて検査対象物を検出して同検査対象物の有無を表すワーク検出信号を出力するワーク検出手段と、X線検出手段における暗出力および/または検出感度の補正を行うX線検出信号補正手段とを備えたX線検査装置の作動を制御する制御装置に実行されるX線検査装置用コンピュータプログラムであって、制御装置に、ワーク検出手段から出力される前記ワーク検出信号に基づいてX線検出信号補正手段に暗出力および/または検出感度の補正を開始させるとよい。
【0021】
また、この場合、請求項8に示すように、前記X線検査装置用コンピュータプログラムにおいて、ワーク検出手段は、検査対象物の前記搬送経路上におけるX線検出手段よりも上流側に配置されており、制御装置に、ワーク検出信号が検査対象物の有る状態を表わすとき、X線検出信号補正手段に検査対象物がX線検出手段に到達する前または通過後に暗出力および/または検出感度の補正を行なわせるとよい。
【0022】
また、これらの場合、請求項9に示すように、前記X線検査装置用コンピュータプログラムにおいて、X線検査装置は、ワーク検出信号が検査対象物の有る状態を表わすとき、同ワーク検出信号が検査対象物の有る状態を表してからの時間、検査対象物の搬送量およびX線検出信号のデータ量のうちの少なくとも1つを計測する計測手段を備え、制御装置に、ワーク検出信号が検査対象物の有る状態を表わすとき、計測手段に同ワーク検出信号が検査対象物の有る状態を表してからの時間、検査対象物の搬送量およびX線検出信号のデータ量のうちの少なくとも1つを計測させ、X線検出信号補正手段に計測手段による計測値に基づいて暗出力および/または検出感度の補正を開始させるとよい。
【0023】
また、これらの場合、請求項10に示すように、前記X線検査装置用コンピュータプログラムにおいて、X線検査装置は、X線検出手段から出力されるX線検出信号に基づいてX線透視像を生成する透視像生成手段を有し、制御装置に、透視像生成手段にX線検出手段から出力されるX線検出信号に基づいてX線透視像を生成させ、透視像生成手段によって生成されたX線透視像に検査対象物が含まれるとき、X線検出信号補正手段に暗出力および/または検出感度の補正を中止させるとよい。これらの各X線検査装置用コンピュータプログラムの発明によれば、上記X線検査装置の発明と同様の作用効果を期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係るX線検査装置の外観構成の概略を模式的に示す斜視図である。
【図2】図1に示すX線検査装置のシステム構成の概略を模式的に示すブロック図である。
【図3】図1に示すX線検査装置において搬送コンベア上を搬送される検査対象物にX線を照射して同X線を検出する様子を模式的に示す斜視図である。
【図4】図2に示すコンピュータ装置によって実行されるX線検査プログラムのフロチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係るX線検査装置の一実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明に係るX線検査装置100の外観構成の概略を模式的に示す斜視図である。また、図2は、図1に示すX線検査装置100のシステム構成の概略を模式的に示すブロック図である。なお、本明細書において参照する各図は、本発明の理解を容易にするために一部の構成要素を誇張して表わすなど模式的に表している。このため、各構成要素間の寸法や比率などは異なっていることがある。このX線検査装置100は、生産ラインにおける製品検査や空港の搭乗カウンターでの機内持ち検査など場面において、検査対象物WKの内部の状態や同検査対象物WK内部に収容された内容物をX線撮影してX線透視像を映し出す撮像装置である。
【0026】
(X線検査装置100の構成)
X線検査装置100は、筐体101を備えている。筐体101は、X線検査装置100を構成する各種機器類を収める収容体であり、X線Lを遮蔽可能な鉛板を備えた鋼板を箱型に形成して構成されている。この筐体101における図示左右方向の側面には、方形状に開口した投入口101aおよび排出口101b(図1において図示せず)がそれぞれ形成されている。投入口101aおよび排出口101bは、筐体101内に検査対象物WK(二点鎖線で示す)を投入するとともに排出するための開口部であり、遮蔽カーテン102によってそれぞれ塞がれている。
【0027】
遮蔽カーテン102は、筐体101内から投入口101aおよび排出口101bを介してX線Lが外部に漏れ出ることを防ぐためのものであり、鉛などのX線を吸収する材料を含むゴム製の暖簾状に形成されている。すなわち、遮蔽カーテン102は、筐体101内への検査対象物WKの投入および排出の際に検査対象物WKによって押し退けられる。この筐体101は、キャスター103aを備えた支持台103上に固定的に載置されており、ユーザが所望する位置に移動できるようになっている。
【0028】
筐体101内には、投入口101aおよび排出口101bを貫通した状態で搬送コンベア104が設けられている。搬送コンベア104は、検査対象物WKを購入口101aから排出口101bに向けて搬送するための搬送装置であり、2つの回転ローラ間に無端ベルトが架設されて構成されている。この搬送コンベア104は、後述する制御部110によって作動が制御される電動機104aによって回転駆動される(図において破線矢印参照)。この場合、本実施形態においては、電動機104aには、図示しないロータリーエンコーダが設けられており、搬送コンベア104の搬送速度を検出して制御部110に出力する。
【0029】
筐体101内における搬送コンベア104の図示上方には、X線照射器105が設けられている。X線照射器105は、搬送コンベア104内に配置されるX線ラインセンサ107に向ってX線L(図において破線矢印参照)を照射する装置であり、高電圧により陰極フィラメントから熱電子を陽極ターゲットに衝突させてX線を発生させるX線管によって構成されている。このX線照射器105には、図3に示すように、X線Lの照射径路上に図示しないスリットが設けられており、X線Lを搬送コンベア104の幅方向に広がる扇状に照射するように構成されている。なお、図3においては、X線Lの照射径路をハッチングにより示している。
【0030】
X線照射器105の図示下方におけるX線Lの照射径路上には、遮蔽板106が設けられている。遮蔽板106は、X線照射器105から照射されたX線Lを遮ってX線ラインセンサ107に照射されないようにするためのものであり、X線Lを遮蔽可能な鉛などのX線を吸収する材料製の板状体で構成されている。この遮蔽板106は、制御部110による作動制御によってX線Lの照射径路上に配置または退避されるように構成されている。なお、図2においては、遮蔽板106がX線Lを遮蔽しない待機位置に位置している状態を実線で示し、同遮蔽板106がX線を遮蔽している状態を二点鎖線で示している。
【0031】
搬送コンベア104の無端ベルトを構成する上側ベルト104bと下側ベルト104cと間には、X線照射器105に対向した状態でX線ラインセンサ107が設けられている。X線ラインセンサ107は、X線照射器105から照射されたX線Lを上側ベルト104bを介して検出して同検出したX線量に応じた電気信号からなるX線検出信号を出力するX線検出器である。このX線ラインセンサ107は、蛍光体であるシンチレータとフォトダイオードまたは電荷結合素子とからなるX線検出素子107aを搬送コンベア104の幅方向に沿ってアレイ状に所定ピッチで配列して構成されている。
【0032】
この場合、X線ラインセンサ107は、暗出力が生じるとともにX線LのX線ラインセンサ107の検出感度にバラツキが生じる。ここで、暗出力とは、X線ラインセンサ107にX線Lが入射しない状態においてX線ラインセンサ107から出力される電気信号であり、例えば、X線ラインセンサ107にX線Lが入射しない状態においてX線ラインセンサ107から出力される電流(所謂暗電流)である。この暗出力は、X線ラインセンサ107を構成するX線ラインセンサ107を含む各種電気回路から出力される。したがって、X線ラインセンサ107は、検査対象物WKの検査に先立って暗出力および検出感度の補正が必要になる。これら暗出力および検出感度の補正の手順は後述する。このX線ラインセンサ107は、後述するコンピュータ装置120に接続されており、X線検出信号をコンピュータ装置120に出力する。なお、この暗出力は、暗電流に代えてまたは加えて暗電圧である場合もある。
【0033】
また、筐体101内には、搬送コンベア104における上側ベルト104bの両側方にワーク検出器108が設けられている。ワーク検出器108は、搬送コンベア104における上側ベルト104b上に載置される検査対象物WKを検出して同検出状態を表す電気信号からなるワーク検出信号を出力するセンサであり、制御部110によって作動が制御される。このワーク検出器108は、本実施形態においては、搬送コンベア104の搬送方向においてX線ラインセンサ107よりも上流側に設けられている。また、ワーク検出器108は、本実施形態においては、搬送コンベア104の無端ベルトを挟んで互いに対向配置される一対の投光器と受光器からなる光電センサによって構成されている。
【0034】
制御部110は、CPU、ROM、RAMなどからなるマイクロコンピュータによって構成されており、ユーザからの指示、またはインターフェース121を介して接続されるコンピュータ装置120からの指示に従って、ROMなどの記憶装置に予め記憶された制御プログラムを実行することにより、X線検査装置100の各種作動を制御する。具体的には、制御部110は、搬送コンベア104、X線照射器105、遮蔽板106およびワーク検出器108の各作動をそれぞれ制御する。
【0035】
また、制御部110は、制御部110に対して作業者からの操作を与えるとともに制御部110からの情報を表示するための操作盤111が設けられている。また、このX線検査装置100は、搬送コンベア104、X線照射器105、遮蔽板106およびワーク検出器108をそれぞれ駆動するための電気を供給する電源部なども備えているが、これらの本発明に直接関わらない構成については、その説明は省略する。この制御部110には、インターフェース121を介してコンピュータ装置120が接続されている。
【0036】
コンピュータ装置120は、CPU、ROM、RAMなどからなるマイクロコンピュータによって構成されており、キーボードおよびマウスなどからなる入力装置122および液晶ディスプレイなどからなる表示装置123をそれぞれ備えている。このコンピュータ装置120は、内蔵ハードディスクなどの記憶装置に記憶されているX線検査プログラムを実行することにより、X線ラインセンサ107から出力されるX線検出信号に基づいて2次元のX線透視像を生成するとともにX線ラインセンサ107に対して暗出力および検出感度の各補正を行う。また、これらのコンピュータ装置120、入力装置122および表示装置123は、X線検査装置100を支持する支持台103から延びる支持テーブル124上にそれぞれ載置されて支持されている。
【0037】
(X線検査装置100の作動)
次に、上記のように構成したX線検査装置100の作動について説明する。まず、ユーザは、X線検査装置100の電源をそれぞれONにする。これにより、X線検査装置100、図示しない所定の制御プログラムを実行することによりX線ラインセンサ107を起動させてコンピュータ装置120に対してX線検出信号の連続的な出力を開始するとともにユーザまたはコンピュータ装置120からの指令の入力を待つ待機状態となる。一方、コンピュータ装置120は、図示しない所定の制御プログラムを実行することにより図4に示すX線検査プログラムの実行を開始する。
【0038】
次に、ユーザは、検査対象物WKのX線検査を行なう。この検査対象物WKに対するX線検査は、検査対象物WKのX線透視像をコンピュータ装置120の表示装置123に表示させて検査対象物WKの内部の状態や検査対象物WK内に収容された内容物を確認するものである。具体的には、ユーザは、操作盤111を操作することにより、搬送コンベア104、X線照射器105、遮蔽板106およびワーク検出器108の作動をそれぞれ開始させる。
【0039】
これにより、搬送コンベア104は、上側ベルト104bが投入口102a側から排出口102b側に向って移動する回転方向(図において破線矢印参照)でかつユーザにより予め設定された回転速度で無端ベルトを回転駆動する。また、X線照射器105は、搬送コンベア104およびX線ラインセンサ107に向けてX線Lを照射する。また、遮蔽板106は、X線照射器105から照射されるX線Lの照射径路から外れた待機位置に位置決めされる。また、ワーク検出器108は、搬送コンベア104の上側ベルト104b上に載置される検査対象物WKの検出を開始する。
【0040】
一方、コンピュータ装置120は、図4に示すX線検査プログラムの実行をステップS100にて開始して、ステップS102にて、X線検査を終了するか否かを判定する。具体的には、コンピュータ装置120は、ユーザから入力装置121を介して入力されるX線検査終了指令の有無を判定する。この場合、コンピュータ装置120は、ユーザからX線検査終了指令が入力されない限り、このステップS102における判定処理において「No」と判定してステップS104に進む。一方、コンピュータ装置120は、ユーザからX線検査終了指令が入力された場合には、このステップS102における判定処理において「Yes」と判定してステップS118に進む。
【0041】
次に、コンピュータ装置120は、ステップS104にて、検査対象物WKが検出された否かを判定する。具体的には、コンピュータ装置120は、X線検査装置100の制御部110から出力される検査対象物WKの検出を表す信号の入力を待つ。この場合、X線検査装置100の制御部110は、ワーク検出器108からワーク検出信号の入力を待つとともにこのワーク検出信号を入力した場合には、ワーク検出信号の入力、すなわち、検査対象物WKの検出を表す信号をコンピュータ装置120に出力する。
【0042】
したがって、コンピュータ装置120は、制御装置110から検査対象物WKの検出を表す信号を入力するまでの間、このステップS104における判定処理にて「No」と判定し続けてステップS102に戻る。そして、コンピュータ装置120は、ステップS102にて再び、X線検査の終了判定を実行する。一方、コンピュータ装置120は、制御装置110から検査対象物WKの検出を表す信号を入力した場合には、この判定処理にて「Yes」と判定して、ステップS106に進む。
【0043】
このステップS104による判定処理を実行している間に、ユーザは、検査対象物WKをX線検査装置100の投入口102a側の搬送コンベア104(上側ベルト104b)上に載置する。この場合、X線検査装置100の起動後、最初に搬送コンベア104に載置する検査対象物WKは、後述する暗出力補正および検出感度補正を行なうための所謂ダミーの物体である。搬送コンベア104上に載置された検査対象物WKは、排出口102b側(図示左側)に向って搬送され筐体101内に導かれてワーク検出器108を横切る。これにより、ワーク検出器108は、ワーク検出信号を制御部110を介してコンピュータ装置120に出力する。この結果、コンピュータ装置120は、ステップS104の判定処理にて「Yes」と判定して、ステップS106に進む。
【0044】
次に、コンピュータ装置120は、ステップS106にて、X線検出信号を取得する。具体的には、コンピュータ装置120は、X線ラインセンサ107から出力されているX線検出信号の取り込みを開始する。この場合、コンピュータ装置120は、X線ラインセンサ107が搬送コンベア104の単位搬送時間毎に実行するライン走査毎のX線検出信号を入力して記憶する。
【0045】
次に、コンピュータ装置120は、ステップS108にて、X線検出信号を所定のライン数だけ取り込んだか否かを判定する。この場合、所定のライン数は、検査対象物WKのすべてのX線透視像を生成可能なライン走査毎のX線検出信号の数であり、検査対象物WKの大きさに応じてユーザにより予め設定されている。したがって、コンピュータ装置120は、前記所定のライン数のX線検出信号を取り込むまでの間、このステップS108における判定処理にて「No」と判定し続けてステップS106に戻ってX線検出信号の取り込み処理を続ける。一方、コンピュータ装置120は、前記所定のライン数のX線検出信号を取り込んだ場合には、この判定処理にて「Yes」と判定して、X線検出信号の取り込み処理を中断した後、ステップS110に進む。
【0046】
次に、コンピュータ装置120は、ステップS110にて、検査対象物WKのX線透視像を生成する。具体的には、コンピュータ装置120は、前記ステップS106およびステップS108の各処理にて取り込んで記憶したX線検出信号、すなわち、ワーク検出器108による検査対象物WKの検出を起点として取り込んだ1次元のX線量分布データを時間順(取り込み順)に並べることにより検査対象物WKの像を含む2次元のX線透視像を構築する。なお、X線検査装置100の起動後、最初に搬送コンベア104に載置される検査対象物WKは、暗出力補正および検出感度補正を行なうための所謂ダミーの物体である。このため、X線検査装置100の起動後、最初に搬送コンベア104に載置される検査対象物WKを含むX線透視像は、暗出力および検出感度の各補正が行われていないX線透視像が生成される。
【0047】
次に、コンピュータ装置120は、ステップS112にて、前記ステップS110にて生成したX線透視像を表示装置123に表示させる。これにより、ユーザは、検査対象物WKの内部の状態や検査対象物WK内部に収容された内容物を目視にて確認することができる。
【0048】
次に、コンピュータ装置120は、ステップS114にて、暗出力補正を行なう。この場合、暗出力補正は、前記したように、X線ラインセンサ107にX線Lを入射させない状態においてX線ラインセンサ107から出力される電気信号成分をX線検出信号から除去するための処理である。
【0049】
具体的には、コンピュータ装置120は、X線検査装置100の制御部110に対して遮蔽板106によるX線Lの遮蔽を指示する。これにより、制御部110は、待機位置に位置する遮蔽板106をX線照射器105から照射されるX線Lの照射径路上に変位させることによりX線Lを遮蔽する。そして、コンピュータ装置120は、X線照射器105から照射されるX線Lが遮蔽された状態においてX線ラインセンサ107から出力されるX線検出信号を取り込む。この場合、コンピュータ装置120が取り込んだX線検出信号は、X線ラインセンサ107にX線が入射しない状態においてX線ラインセンサ107から出力される暗出力からなる電気信号である。
【0050】
したがって、コンピュータ装置120は、この暗出力で構成されるX線検出信号に基づいて暗出力量を表す暗出力補正データを生成して、この暗出力補正データをX線ラインセンサ107に出力する。本実施形態においては、X線ラインセンサ107から出力される暗電流で構成されるX線検出信号に基づいて暗電流量を表す暗出力補正データを生成する。これにより、X線ラインセンサ107は、取得した暗出力補正データを用いてX線検出信号を補正してコンピュータ装置120に出力可能な状態となる。次いで、コンピュータ装置120は、制御部110に対して遮蔽板106の退避を指示する。これにより、制御部110は、X線照射器105から照射されるX線Lの照射径路上に位置する遮蔽板106を同照射径路外に変位させて元の待機位置に位置決めする。
【0051】
次に、コンピュータ装置120は、ステップS116にて、X線ラインセンサ107の検出感度補正を行なう。この場合、検出感度補正は、X線ラインセンサ107における各X線検出画素間の検出感度誤差を最小化するための処理である。具体的には、コンピュータ装置120は、搬送コンベア104上に検査対象物WKが載置されていない状態において、X線照射器105から照射されたX線LをX線ラインセンサ107が検出したX線検出信号を取り込む。
【0052】
この場合、X線ラインセンサ107から出力されコンピュータ装置120が取り込んだX線検出信号は、X線ラインセンサ107を構成するX線検出素子107a毎の検出感度に応じてX線Lの検出量が異なる。したがって、コンピュータ装置120は、各X線検出素子107a毎のX線Lの検出量の誤差を解消する検出感度補正データを生成して、この検出感度補正データをX線ラインセンサ107に出力する。これにより、X線ラインセンサ107は、取得した検出感度補正データを用いてX線検出信号を補正してコンピュータ装置120に出力可能な状態となる。
【0053】
そして、コンピュータ装置120は、ステップS116によるX線ラインセンサ107の検出感度補正の後、ステップS102に戻り、再び、ステップS102にてX線検査の終了判定を実行する。したがって、コンピュータ装置120は、ユーザからX線検査終了指令が入力されるまでの間、検査対象物WKを検出するごとに、すなわち、検査対象物WKのX線撮影を行なう毎にX線検出信号の暗出力補正および検出感度補正を行なう。この場合、X線検査装置100の起動後、2回目以降に搬送コンベア104に載置される検査対象物WKについては、前回の検査対象物WKのX線撮影後に行なわれる暗出力補正および検出感度補正によって精度の良いX線透視像が生成されることになる。
【0054】
一方、コンピュータ装置120は、ステップS102におけるX線検査の終了判定処理において、ユーザからのX線検査終了指令を入力した場合には、このステップS102にて「Yes」と判定してステップS118に進み、同ステップS118にて、このX線検査プログラムの実行を終了する。そして、ユーザは、X線検査装置100の電源をOFFにすることにより、X線ラインセンサ107およびコンピュータ装置120を含むX線検査装置100の作動を停止させることにより検査対象物WKに対するX線検査作業を終了する。
【0055】
上記作動説明からも理解できるように、上記実施形態によれば、X線検査装置100は、検査対象物WKを搬送する搬送経路上に検査対象物WKを検出するワーク検出器108を備えるとともに、X線ラインセンサ107における暗出力および検出感度の補正を行なうコンピュータ装置120がワーク検出器108から出力されるワーク検出信号に基づいて暗出力および検出感度の補正の開始を行なう。これにより、X線検査装置100は、検査対象物WKの搬送経路上において検査対象物WKがワーク検出器108によって検出されるごと、すなわち、検査対象物WKがX線ラインセンサ107を通過する毎に暗出力および検出感度の補正を行なう。この結果、X線検査装置100は、X線ラインセンサ107における暗出力および検出感度の変化に即時に対応することができ、検査対象物WKの検査精度を向上させることができる。
【0056】
さらに、本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0057】
例えば、上記実施形態においては、コンピュータ装置120が制御部110を介してワーク検出信号を検出するとともに同検出に応じて暗出力補正データおよび検出感度補正データを生成してX線ラインセンサ107に出力することによりX線ラインセンサ107が暗出力補正および検出感度補正を行うように構成した。しかし、ワーク検出信号の検出、暗出力補正データおよび検出感度補正データの生成、および暗出力補正および検出感度補正の各実行対象は上記実施形態に限定されるものではない。
【0058】
例えば、暗出力補正および検出感度補正をコンピュータ装置120が前記ステップS106およびステップS108にて取り込んだX線検出信号に対して行うこともできる。また、例えば、コンピュータ装置120の機能を制御部110に備えさせて、すなわち、制御部110を前記X線検査プログラムの実行が可能に構成することにより、ワーク検出信号の検出、暗出力補正データおよび検出感度補正データの生成、および暗出力補正および検出感度補正を制御部110に実行させるように構成することもできる。この場合、X線ラインセンサ107は制御部110に接続されることになる。すなわち、暗出力補正および検出感度補正を行う本発明に係るX線検出信号補正手段は、コンピュータ装置120、制御部110またはX線ラインセンサ107によって構成することができる。
【0059】
また、上記実施形態においては、X線検査プログラムは、暗出力補正および検出感度補正の両方を実行するように構成した。しかし、暗出力補正および検出感度補正は、X線検査装置100の必要に応じて少なくとも一方を実行するようにすればよい。また、暗出力補正および検出感度補正を実行する順番も特に限定されるものではなく、検出感度補正を実行した後に暗出力補正を実行するようにしてもよい。
【0060】
また、上記実施形態においては、暗出力補正および検出感度補正は、検査対象物WKがX線ラインセンサ107を通過後、すなわち、検査対象物WKのX線撮影後に実行するように構成されている。しかし、暗出力補正および検出感度補正は、検査対象物WKがX線ラインセンサ107に到達する前、すなわち、検査対象物WKのX線撮影前に実行するように構成してもよい。この場合、X線検出プログラムは、ステップS104による検査対象物WKの検出後直ちに暗出力補正および検出感度補正を実行(例えば、ステップS110による暗出力補正およびステップS112による検出感度補正をステップS106によるX線検出信号の取り込み前に実行)するように構成すればよい。
【0061】
また、上記実施形態においては、暗出力補正および検出感度補正は、ワーク検出器108による検査対象物WKの検出後、コンピュータ装置120が取り込んだX線検出信号のデータ量が所定量に達した後にそれぞれ実行するように構成されている。すなわち、X線検出プログラムにおけるステップS108による所定ライン数のカウント処理が本発明に係る計測手段に相当する。
【0062】
しかし、暗出力補正および検出感度補正をそれぞれ実行するタイミングのカウントは、X線検出信号のデータ量に限定されるものではない。つまり、暗出力補正および検出感度補正をそれぞれ実行するタイミングのカウントは、検査対象物WKの検出後X線ラインセンサ107に到達する前または通過後のタイミングに応じてこれらのタイミングをカウントすることができればよい。したがって、例えば、暗出力補正および検出感度補正は、ワーク検出器108が検査対象物WKを検出してからの時間や同検出後の検査対象物の搬送量などをカウントすることにより、検査対象物WKがX線ラインセンサ107に到達する前または通過後のタイミングで実行されるようにしてもよい。
【0063】
また、上記実施形態においては、ワーク検出器108を検査対象物WKの搬送経路上におけるX線ラインセンサ107より上流側に配置した。しかし、ワーク検出器108は、検査対象物WKの搬送経路上におけるX線ラインセンサ107より下流側に配置することもできる。この場合、暗出力補正および検出感度補正は、次の検査対象物WKがX線ラインセンサ107に到達する前、例えば、ワーク検出器108による検査対象物WKの検出後直ちに実行するようにしてもよいし、前記X線検出信号のデータ量、検査対象物WKの検出後の経過時間または検査対象物WKの検出後の搬送距離(次回の検査対象物WKの搬送距離の場合も含む)などをカウントすることにより、次の検査対象物WKがX線ラインセンサ107に到達する直前までに実行するようにしてもよい。なお、前記変形例も含めて、ワーク検出器108による検査対象物WKの検出後直ちに暗出力補正および検出感度補正を実行する場合には、暗出力補正および検出感度補正を実行するタイミングのカウントは省略することもできる。
【0064】
また、上記実施形態においては、コンピュータ装置120が暗出力補正および検出感度補正に用いるX線検出信号を取得する際、搬送コンベア104上の検査対象物WKがX線ラインセンサ107上に位置することを想定していない。しかし、コンピュータ装置120が暗出力補正および検出感度補正に用いるX線検出信号を取得している場合に搬送コンベア104上の検査対象物WKがX線ラインセンサ107上に位置したとき、同X線検出信号の取得を中断、すなわち、暗出力補正および検出感度補正の実行を中断することもできる。例えば、コンピュータ装置120は、ワーク検出器108によって検査対象物WKを検出した後、X線ラインセンサ107からX線検出信号を連続的に取得してX線透視像を生成する。次いで、コンピュータ装置120は、X線透視像を生成するごとに互いに前後の生成関係にあるX線透視像同士を比較することによりX線透視像中における検査対象物WKの像の有無を検出する。この場合、X線検出信号からX線透視像を生成する処理が、本発明に係る透視像生成手段に相当する。そして、コンピュータ装置120は、X線透視像中に検査対象物WKが含まれていると判定した場合には、直ちに暗出力補正または検出感度補正に関する処理の実行を中断する。
【0065】
また、上記実施形態においては、ワーク検出器108によって検査対象物WKを検出することにより暗出力補正および検出感度補正を開始するように構成した。しかし、暗出力補正および検出感度補正の実行開始は、ワーク検出器108による検査対象物WKの検出以外の方法でも可能である。例えば、コンピュータ装置120は、X線ラインセンサ107から常時X線検出信号を取り込むとともに同取り込んだX線検出信号を用いてX線透視像を連続的に生成する。そして、コンピュータ装置120は、互いに前後の生成関係にあるX線透視像同士を比較することにより検査対象物WKの像を検出して同検出後、同検査対象物WKの像が検出されなくなったとき、すなわち、X線透視像中に検査対象物WKの像が存在しない場合に暗出力補正および検出感度補正を実行するように構成することができる。
【0066】
すなわち、暗出力補正および検出感度補正を実行するための検査対象物WKの検出は、ワーク検出器108の他にX線ラインセンサ107によって行うこともできる。また、搬送コンベア104上における検査対象物WKの存在を表すワーク検出信号は、同検査対象物WKが存在している状態および存在していない状態のうちの少なくとも一方を表す信号であればよい。なお、搬送コンベア104上における検査対象物WKの存在をX線ラインセンサ107によって検出する場合であってもX線検出信号の取り込み量のカウントの起点にするためワーク検出器108による検査対象物WKの検出は必要である。すなわち、上記実施形態においては、ワーク検出器108による検査対象物WKの検出は、暗出力補正および検出感度補正の実行の起点となるとともにX線検出信号の取り込み量のカウントの起点となり、ワーク検出器108は2つの起点を取得する意義を有している。
【0067】
また、上記実施形態においては、暗出力補正および検出感度補正は、検査対象物WKがX線ラインセンサ107を通過後、すなわち、検査対象物WKのX線撮影後に実行するように構成されている。このため、X線検査装置100の起動後最初に搬送コンベア104に載置される検査対象物WKについては、X線検出信号に対して暗出力補正および検出感度補正を行なってX線透視像を生成することができない。したがって、X線検査装置100の起動後最初に搬送コンベア104に載置する検査対象物WKについてもX線検出信号に対して暗出力補正および検出感度補正を行なってX線透視像を生成したい場合には、例えば、図4に示すX線検査プログラムにおいて、実行開始直後に前記ステップS114による暗出力補正および前記ステップS116による検出感度補正を行なうように構成するとよい。また、X線検査装置100の起動後において、前記ステップS114による暗出力補正および前記ステップS116による検出感度補正を手動で行なえるようにX線検出装置100を構成することもできる。
【0068】
また、さらには、図4に示すX線検査プログラムにおいて、前記ステップS118によるX線検査プログラムの終了時に直近に使用した暗出力補正データおよび検出感度補正データを記憶した後にX線検査プログラムの実行を終了するようにする。そして、次回、X線検査プログラムの実行時において、前記記憶した暗出力補正データおよび検出感度補正データを用いてX線検査装置100の起動後最初に搬送コンベア104に載置した検査対象物WKのX線検出信号に対して暗出力補正および検出感度補正を行なってX線透視像を生成することもできる。
【符号の説明】
【0069】
WK…被加工物、L…X線、
100…X線検査装置、101…筐体、101a…投入口、101b…排出口、102…遮蔽カーテン、103…支持台、103a…キャスタ、104…搬送コンベア、104a…電動機、104b…上側ベルト、104c…下側コンベア、105…X線照射器、106…遮蔽板、107…X線ラインセンサ、107a…X線検出素子、108…ワーク検出器、
110…制御部、111…操作盤、
120…コンピュータ装置、121…インターフェース、122…入力装置、123…表示装置、124…支持テーブル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象物を搬送する搬送手段と、
前記搬送手段による前記検査対象物の搬送経路上に配置されて前記検査対象物に対してX線を照射するX線照射手段と、
前記X線照射手段から照射された前記X線を前記検査対象物を介して検出して同検出したX線量に対応する電気信号からなるX線検出信号を出力するX線検出手段と、
前記搬送手段による前記検査対象物の搬送経路上にて前記検査対象物を検出して同検査対象物の有無を表すワーク検出信号を出力するワーク検出手段と、
前記X線検出手段における暗出力および/または検出感度の補正を行うX線検出信号補正手段とを備え、
前記X線検出信号補正手段は、前記ワーク検出手段から出力される前記ワーク検出信号に基づいて前記暗出力および/または前記検出感度の補正を開始することを特徴とするX線検査装置。
【請求項2】
請求項1に記載したX線検査装置において、
前記ワーク検出手段は、前記検査対象物の前記搬送経路上における前記X線検出手段よりも上流側に配置され、
前記X線検出信号補正手段は、前記ワーク検出信号が前記検査対象物の有る状態を表わすとき、前記検査対象物が前記X線検出手段に到達する前または通過後に前記暗出力および/または前記検出感度の補正を行なうことを特徴とするX線検査装置。
【請求項3】
請求項1記載したX線検査装置において、
前記ワーク検出手段は、前記検査対象物の前記搬送経路上における前記X線検出手段よりも下流側に配置され、
前記X線検出信号補正手段は、前記ワーク検出信号が前記検査対象物の有る状態を表わすとき、前記ワーク検出信号の対象となった検査対象物の次の検査対象物が前記X線検出手段に到達する前に前記暗出力および/または前記検出感度の補正を行なうことを特徴とするX線検査装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のうちのいずれか1つに記載したX線検査装置において、さらに、
前記ワーク検出信号が前記検査対象物の有る状態を表わすとき、同ワーク検出信号が前記検査対象物の有る状態を表してからの時間、前記検査対象物の搬送量および前記X線検出信号のデータ量のうちの少なくとも1つを計測する計測手段を備え、
前記X線検出信号補正手段は、前記計測手段による計測値に基づいて前記暗出力および/または前記検出感度の補正を開始することを特徴とするX線検査装置。
【請求項5】
請求項1に記載したX線検査装置において、さらに、
前記X線検出手段から出力される前記X線検出信号に基づいてX線透視像を生成する透視像生成手段を有し、
前記ワーク検出手段は、前記透視像生成手段にて生成された前記X線透視像に基づいて前記検査対象物の有無を表すワーク検出信号を出力し、
前記X線検出信号補正手段は、前記ワーク検出信号が前記検査対象物の無い状態を表すとき、前記X線検出手段における前記暗出力および/または前記検出感度の補正を開始することを特徴とするX線検査装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項4のうちのいずれか1つに記載したX線検査装置において、さらに、
前記X線検出手段から出力される前記X線検出信号に基づいてX線透視像を生成する透視像生成手段を有し、
前記X線検出信号補正手段は、前記透視像生成手段によって生成された前記X線透視像に前記検査対象物が含まれるとき、前記暗出力および/または前記検出感度の補正を中止することを特徴とするX線検査装置。
【請求項7】
検査対象物を搬送する搬送手段と、
前記搬送手段による前記検査対象物の搬送経路上に配置されて前記検査対象物に対してX線を照射するX線照射手段と、
前記X線照射手段から照射された前記X線を前記検査対象物を介して検出して同検出したX線量に対応する電気信号からなるX線検出信号を出力するX線検出手段と、
前記搬送手段による前記検査対象物の搬送経路上にて前記検査対象物を検出して同検査対象物の有無を表すワーク検出信号を出力するワーク検出手段と、
前記X線検出手段における暗出力および/または検出感度の補正を行うX線検出信号補正手段とを備えたX線検査装置の作動を制御する制御装置に実行されるX線検査装置用コンピュータプログラムであって、
前記制御装置に、
前記ワーク検出手段から出力される前記ワーク検出信号に基づいて前記X線検出信号補正手段に前記暗出力および/または前記検出感度の補正を開始させることを特徴とするX線検査装置用コンピュータプログラム。
【請求項8】
請求項7に記載したX線検査装置用コンピュータプログラムにおいて、
前記ワーク検出手段は、前記検査対象物の前記搬送経路上における前記X線検出手段よりも上流側に配置されており、
前記制御装置に、
前記ワーク検出信号が前記検査対象物の有る状態を表わすとき、前記X線検出信号補正手段に前記検査対象物が前記X線検出手段に到達する前または通過後に前記暗出力および/または前記検出感度の補正を行なわせることを特徴とするX線検査装置用コンピュータプログラム。
【請求項9】
請求項7または請求項8に記載したX線検査装置用コンピュータプログラムにおいて、
前記X線検査装置は、
前記ワーク検出信号が前記検査対象物の有る状態を表わすとき、同ワーク検出信号が前記検査対象物の有る状態を表してからの時間、前記検査対象物の搬送量および前記X線検出信号のデータ量のうちの少なくとも1つを計測する計測手段を備え、
前記制御装置に、
前記ワーク検出信号が前記検査対象物の有る状態を表わすとき、前記計測手段に同ワーク検出信号が前記検査対象物の有る状態を表してからの時間、前記検査対象物の搬送量および前記X線検出信号のデータ量のうちの少なくとも1つを計測させ、
前記X線検出信号補正手段に前記計測手段による計測値に基づいて前記暗出力および/または前記検出感度の補正を開始させることを特徴とするX線検査装置用コンピュータプログラム。
【請求項10】
請求項7ないし請求項9のうちのいずれか1つに記載したX線検査装置用コンピュータプログラムにおいて、
前記X線検査装置は、
前記X線検出手段から出力される前記X線検出信号に基づいてX線透視像を生成する透視像生成手段を有し、
前記制御装置に、
前記透視像生成手段に前記X線検出手段から出力される前記X線検出信号に基づいてX線透視像を生成させ、
前記透視像生成手段によって生成された前記X線透視像に前記検査対象物が含まれるとき、前記X線検出信号補正手段に前記暗出力および/または前記検出感度の補正を中止させることを特徴とするX線検査装置用コンピュータプログラム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−24613(P2013−24613A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−157269(P2011−157269)
【出願日】平成23年7月16日(2011.7.16)
【出願人】(502347397)イメージテック株式会社 (2)
【Fターム(参考)】