説明

X線検査装置

【課題】 ワークを検査しながらのゼロ点補正を可能にし、温度ドリフト等による精度のばらつきを低減させることのできるX線検査装置を提供する。
【解決手段】 X線画像に基づいてワークの体積を測定するX線検査装置であって、その処理ユニット6が、各透過領域のX線画像濃度データから透過領域の等価厚画像の濃度データへの変換処理を施すデータ変換処理部62と、等価厚画像の濃度データに基づいて複数の透過領域におけるワークの体積を測定する体積測定部63と、X線透過量相当のデータを処理して、ワークにX線が照射されるときの背景の等価厚をゼロとするようX線画像濃度データをゼロ点補正するゼロ点補正部61とを含み、ゼロ点補正部61が、ワークの体積を測定する周期に応じてゼロ点補正を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線検査装置、特に搬送中のワーク(被測定物)にX線を照射してそのX線の透過量に基づいて体積測定若しくはそれを伴う質量測定を行ない、又は更に異物検出をも行なうのに好適なX線検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
搬送ベルトにより被検査物である物品を一定速度で走行させるとともに、その搬送中のワークに照射したX線の一定周期毎の累積透過量をX線検出器によりサンプリングし、X線画像を作成するようにしたX線検査装置が知られている。
【0003】
従来のこの種のX線検査装置として、特許文献1(米国特許第6,215,845号公報)には、X線照射手段から被検査物パッケージに扇状のX線ビームを照射する一方、そのパッケージを透過したX線を複数のX線検出部をアレイ状に配列したX線検出器により検出し、これら複数のX線検出部からの質量信号の組合せにより欠品検出を行なうようにしたものが記載されている。
【0004】
また、特許文献2(米国特許第6,347,131号公報)には、コンベアベルトにより複数の製品を連続搬送するとともに、その途中で放射線源からのビームが照射されるX線照射領域を通過させ、一方、その製品を透過したX線をコンベアベルト下方の蛍光板およびフォトダイオードアレイにより検出し、製品の各部厚さに対応させることによって、製品の体積を測定するようにしたものが記載されている。
【0005】
また、特許文献3(米国特許第5,585,603号公報)には、物品をX線源付近の検査位置に位置決めしてX線を照射するとともに、物品のX線透過領域を複数のボリュームエレメントに分割し、各ボリュームエレメント領域の平均密度と容積からその質量を求め、全ボリュームエレメントの質量を合算して物品を秤量するようにしたものが記載されている。
【0006】
さらに、特許文献4(米国特許第6,385,284号公報)には、柔軟な肉加工品を被検査物としてパイプ搬送するとともにその下方のX線源からパイプ内のチャンバーにX線を照射して、その透過X線をX線センサにより検出し、被検査物の物理的性状を検出するようにしたものが記載されている。
【0007】
【特許文献1】米国特許第6,215,845号公報
【特許文献2】米国特許第6,347,131号公報
【特許文献3】米国特許第5,585,603号公報
【特許文献4】米国特許第6,385,284号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述のような従来のX線検査装置にあっては、X線源やX線検出器といった主要部品の感度特性が安定運転状態にあっても環境温度変化等によってドリフトし、その影響によって、更には主要部品の経年変化によって、測定値がばらつき易かった。すなわち、このような温度ドリフトや経年変化が測定精度に大きな影響を及ぼすことになっていた。そのため、測定精度のばらつきを抑えるべく比較的短期間の周期で定期的にX線検査装置の運転を停止し、X線源の出力やX線検出器の検出感度の補正を行なう必要が生じていた。具体的には、例えば特許文献2に記載されるように、被検査物と同等のX線透過率を有する素材からなるテストブロックを準備し、そのテストブロックに対するX線透過量データを基に、X線検出器の各検出素子部の感度を調整する補正作業が必要となっていた。
【0009】
そのため、従来のX線検査装置にあっては、補正作業の度にX線検査装置の運転を比較的長時間停止する必要から、装置の稼働率が低下してしまうか、あるいは、温度ドリフト等による測定精度のばらつきを余儀なくされるという問題があった。
【0010】
本発明は、かかる従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、ワークを検査しながらゼロ点補正することを可能にすることで、温度ドリフト等による精度のばらつきを低減させるとともに、そのデータ処理を工夫してワークの体積や質量を精度良く測定することのできるX線検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的達成のため、本発明は、(1)ワークを搬送する搬送路と、搬送中の前記ワークに所定の検査空間内でX線を照射するX線源と、前記検査空間内で前記搬送方向と直交する方向で隣り合う複数の透過領域のそれぞれについて前記ワークを透過したX線を検出することができるX線検出器と、前記X線検出器の検出情報に基づき、前記ワークを透過したX線の前記透過領域毎の透過量相当のデータを処理してディジタルのX線画像を生成する処理ユニットと、を備え、前記X線画像に基づいて前記ワークの体積を測定するX線検査装置であって、前記処理ユニットが、前記各透過領域におけるX線画像の濃度データから前記透過領域のそれぞれにおける前記ワークの厚さに対応する等価厚画像の濃度データへの変換処理を施すデータ変換処理手段と、前記複数の透過領域のそれぞれに対応する前記等価厚画像の濃度データに基づいて前記複数の透過領域における前記ワークの体積を測定する体積測定手段と、前記X線透過量相当のデータを処理して、前記ワークに前記X線が照射されるときの背景の等価厚をゼロとするよう前記X線画像の濃度データをゼロ点補正するゼロ点補正部と、を含み、前記ゼロ点補正部が、前記ワークの体積を測定する周期に応じて、前記ゼロ点補正を実行することを特徴とするものである。
【0012】
この構成により、ワークの体積測定周期に応じてゼロ点補正が適当な周期で繰り返し実行されることになり、ワークを検査しながらのリアルタイムのゼロ点補正が可能になる。したがって、温度ドリフト等のばらつき要因がゼロ点補正によって除去され、温度ドリフト等による体積測定精度のばらつきが防止される。なお、ここにいう背景とは、X線画像において例えば搬送ベルトのワーク載置面に対応する部分である。
【0013】
本発明のX線検査装置は、また、(2)前記体積測定手段で測定された前記透過領域毎の体積測定値を予め設定された換算比で質量単位の換算値に換算する換算手段を更に備えたものとすることができる。この構成により、ワークの質量が測定可能となり、その測定周期に応じてゼロ点補正が適当な周期で繰り返し実行されることになる。したがって、温度ドリフト等のばらつき要因がゼロ点補正によって除去され、温度ドリフト等による質量測定精度のばらつきが防止される。
【0014】
本発明のX線検査装置においては、(3)前記データ変換処理手段が、前記ワークに応じて設定される所定範囲内で、前記ワークの厚さに対応する等価厚画像の濃度データの直線性を補正する直線性補正部を有するのが好ましい。この構成により、ワークの厚さに対する等価厚濃度値の直線性が担保でき、常時ゼロ点補正がなされることと相俟って、周囲温度変化による等価厚画像へのX線検出器の温度ドリフト等の影響が周囲温度を検出すること無しに除去されることになる。
【0015】
本発明のX線検査装置においては、より好ましくは、(4)前記データ変換処理手段が、前記X線画像における背景の濃度値Pと、前記X線画像における前景の代表濃度Pと、前記等価厚画像の最大濃度Qmaxとをそれぞれ設定して、前記ワークの厚さに対応する等価厚画像の濃度データQ(P)への変換処理を、次式〔1〕により実行し、
【0016】
【数3】

前記X線源のX線照射出力と前記ワークの材質とに応じて式〔1〕中の補正指数値を可変設定しつつ、前記等価厚画像の濃度データを算出するものである。
【0017】
この構成により、等価厚画像の濃度データは、X線画像における前景の濃度値Pと各透過領域におけるX線画像の濃度値Pとの比に応じて等価厚画像の最大濃度値Qmaxの範囲内で変化することになり、X線検出器のゼロ点ドリフト等による測定精度のばらつきを抑えることが可能となる。また、前記X線源のX線照射出力や前記ワークの材質に応じて補正指数値γを加減する補正を行なうことで、ワークの厚さに対する等価厚画像の濃度データの直線性が担保でき、常時ゼロ点補正がなされることと相俟って、周囲温度変化による等価厚画像へのX線検出器の温度ドリフトの影響が周囲温度を検出すること無しに除去されることになる。
【0018】
前記式〔1〕による変換処理を行なう場合、(5)前記データ変換処理手段は、前記補正指数値が1.3±0.2となる範囲内で、前記等価厚画像の濃度データについての補正を行なうのがより好ましい。これにより、多くの食品をワークとしてX線検査を行なう場合に等価厚画像濃度値Q(P)の良好な直線性が確保できる。
【0019】
本発明のX線検査装置においては、より好ましくは、(6)前記データ変換処理手段は、前記ワークの標準となる代表ワークの特定の透過領域におけるX線画像の濃度値を基に前記式〔1〕で算出された等価厚画像の濃度値Q(Pa)を次式〔2〕で表わされるQaの値とし、前記算出した等価厚画像の濃度値Q(Pa)および前記代表ワークの特定の透過領域におけるX線画像の濃度値Paを用いて、前記代表ワークのX線画像における前景の代表濃度値である式〔2〕中の濃度値Pの値を予め算出し、
【数4】

【0020】
前記X線画像における前景の代表濃度値Pを該算出した濃度値Pに置き換えた上で、前記各透過領域におけるX線画像の濃度データPから前記ワークの厚さに対応する濃度を有する等価厚画像の濃度データQ(P)への変換処理を実行するものである。
【0021】
この構成により、X線画像における前景の代表濃度設定値Pに対する検出透過量相当の濃度値Pの大小に応じた好ましい濃度が等価厚画像濃度の最大濃度設定値Qmaxまでの濃度範囲内で、ワークごとの透過量のばらつきに左右されることなく設定されることになり、補正指数値がX線源の照射出力やワークに応じて調整されることと相俟って、等価厚画像の濃度データQ(P)について前記ワークの品種によって左右されないオートゲインコントロール機能を発揮させることができる。
【0022】
本発明のX線検査装置においては、(7)前記ゼロ点補正部が、前記搬送路上で前記ワークが載置される第1領域と前記ワークが載置されない第2領域とのうち前記第2領域内で互いに離間する複数の透過領域について、前記搬送路を透過したX線の透過量を検出し、該第2領域内で互いに離間する複数の透過領域のX線透過量に基づいて、前記ゼロ点補正を実行するのが好ましい。また、この場合、(8)前記第2領域内で互いに離間する複数の透過領域が、前記検査空間内で前記搬送路の幅員方向両端部に離間したものであるのがよい。これにより、ゼロ点補正を任意の周期で、実時間的に実行することが可能となる。
【0023】
さらに、(9)前記搬送路の幅員方向両端部に離間した前記複数の透過領域で前記搬送路を透過したX線の透過量に基づいて、前記搬送路上における前記ワークの所定の載置幅範囲からのはみ出しを検出するはみ出し検出手段を設けることもできる。このようにすれば、ゼロ点補正のための透過量検出情報をワークの所定載置幅範囲からのはみ出し検出のための情報に利用することができ、構成の簡素なはみ出し検出手段が実現できる。
【0024】
また、(10)前記搬送路の幅員方向両端部に離間した前記複数の透過領域を透過したX線の透過量に基づいて、両透過量値に対応する前記搬送路の前記幅員方向両端部のX線画像の濃度値を決定し、該両端部のX線画像の濃度値を直線状に結ぶオフセット濃度を設定することで、前記複数の透過領域の透過量データについての傾斜補正を前記ゼロ点補正と共に実行するのが望ましい。この構成により、オフセット濃度をX線画像の濃度データPから差し引くことで、傾斜補正(例えば搬送ベルト面であるX線画像中の背景のグラデーションをキャンセルする補正に相当する)と共にゼロ点のドリフトを補正することが可能となる。
【0025】
本発明のX線検査装置においては、(11)前記ゼロ点補正部が、前記搬送路上での前記ワークの搬送間隔を特定する搬送間隔検出部を含み、該搬送間隔検出部の検出情報に基づいて、該搬送間隔に対応する範囲として前記第2領域を特定するものであってもよい。このようにすると、ばら物等の連続するワーク以外の場合に、搬送路上の個体ワークの間の無搬送区間を利用して搬送路幅員方向全域における複数の透過領域のX線透過量をチェックし、きめ細かなゼロ点補正や傾斜補正の有効性判断を行なうことが可能となる。
【0026】
また、本発明のX線検査装置においては、(12)測定感度を設定するための基準ワークについての基準の体積測定値を測定感度に影響する所定の検出パラメータと関連付けた体積測定値テーブルおよび前記体積測定の感度を補正する感度補正係数を記憶する感度情報記憶部を有し、前記基準ワークの体積測定毎に前記所定の検出パラメータを特定して、前記感度情報記憶部に記憶された体積測定値テーブルと前記基準ワークの最新の体積測定値および該測定時における前記所定の検出パラメータとに基づいて、前記感度補正係数を更新し、前記体積測定の感度を一定範囲内に維持する感度補正手段を更に備えたものである。この構成により、基準ワークの基準の体積測定値および測定時の体積測定値に基づいて感度補正係数を適宜更新し周囲温度や経年変化による検出感度のドリフトを精度良く校正(較正)することができる。
【0027】
感度補正手段を備えた場合、さらに、(13)前記所定の検出パラメータが、少なくとも前記X線源を駆動する電圧の値を含み、前記基準ワークの体積が測定されたとき、前記感度補正手段が、該測定された最新の体積測定値と、前記感度情報記憶部に記憶された前記体積測定値テーブル中の前記体積測定値との比率に基づいて、前記感度補正係数を更新するようにするのが好ましい。
【0028】
この構成により、例えばX線源の管電圧Eに応じて変化する基準ワークの体積測定値V(E)を参照テーブル化しておくことにより、基準ワークの体積測定値V(E)が得られた時点で、感度補正係数βをβ=V(E)/V(E)に更新することによって、検出感度の温度ドリフトを精度良くかつ容易に校正(較正)することができる。
【0029】
また、本発明のX線検査装置においては、(14)前記体積測定手段が、前記各透過領域におけるX線画像の濃度データのうち所定のノイズカット閾値を超える濃度データを用いて体積測定の処理を実行するのがよい。これにより、多くの場合に体積測定の安定性向上を期待できる。
【0030】
本発明のX線検査装置は、また、(15)前記換算手段により質量単位の値に換算された前記透過領域毎の体積測定値の換算値が前記ワークに対応する所定の質量許容範囲内にあるか否かで質量測定結果の合否を判定する質量合否判定手段を設けたものであってもよい。これにより、ワーク毎の質量測定結果の合否情報を得ることができる。
【0031】
本発明のX線検査装置においては、また、(16)前記ワークが風袋を含むとき、前記体積測定手段が、前記ワークの等価厚画像の濃度データに基づいて算出したワーク全体の体積測定値から、前記風袋分の体積値を差し引く風袋引き処理を実行するようにすることができる。このようにすると、ワークが風袋を含むときでも、風袋引きした内容物の質量を直接出力させることができる、
【0032】
あるいは、(17)前記ワークが風袋を含むとき、前記体積測定手段が、前記風袋の質量と体積の換算比を予め記憶するとともに、該風袋の質量が設定されたとき、該質量を該風袋の体積に変換して、前記ワークの等価厚画像の濃度データに基づいて算出したワーク全体の体積測定値から前記風袋分の体積値を差し引く風袋引き処理を実行するようにしてもよい。この構成により、風袋質量値を指定する入力に基づいて風袋引き処理を実行させることが可能となる。
【0033】
本発明のX線検査装置は、また、(18)前記X線検出器の検出情報に基づき、前記ワーク中における異物の有無を判定して該異物を検出する異物検出手段を更に備えたものであってよい。この構成により、体積又は質量の測定だけでなく異物検出を行なうことができ、しかも、X線検出器の温度ドリフト等のばらつき要因がゼロ点補正によって除去され、温度ドリフトや経年変化等による質量測定精度のばらつき並びに異物検出精度のばらつきを抑えることができる。
【0034】
この異物検出を行なうX線検査装置においては、さらに、(19)前記処理ユニットが、前記異物検出手段の検出結果に応じて、前記異物が検出されたとき前記X線透過量相当のデータから該異物を透過したデータを除去するとともに、該異物を透過した領域の周囲の領域における透過量データに基づいて、該除去したデータを補間する処理を実行するのが望ましい。これにより、異物検出から独立して質量測定結果を常時得ることができる。
【0035】
前記質量への換算処理を行なって質量計測を行なう場合は、さらに、(20)前記ワークの質量測定値に応じて表示範囲を変化させる質量インジケータ部を有する前記ワークの質量測定値に応じて表示範囲を変化させる質量インジケータ部を有する表示手段を備えているのが望ましい。これにより、測定された質量を、前記質量インジケータ部の表示範囲から即座に視認可能となる。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、ワークの体積測定周期に応じてゼロ点補正を適当な周期で実行することにより、ワークを検査しながらのリアルタイムのゼロ点補正を可能にしているので、温度ドリフト等のばらつき要因をゼロ点補正によって除去し、温度ドリフト等による測定精度のばらつきを防止することができるX線検査装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
[第1の実施の形態]
【0038】
図1〜図12は本発明に係るX線検査装置の第1の実施の形態を示す図であり、本発明を体積および質量を測定する質量測定装置に適用した例を示している。
【0039】
まず、その構成を説明する。
【0040】
図1および図2に示すように、本実施形態のX線検査装置は、ワークWを搬送するベルトコンべアからなる搬送路1と、搬送中のワークWに所定の検査空間内でX線を照射するX線源2と、検査空間内へのワークWの進入を検知する例えば投受光器からなる進入検知センサ3と、検査空間内で搬送方向と直交する方向(以下、搬送路幅員方向ともいう)に隣り合う複数の透過領域のそれぞれについてワークWを透過したX線を検出することができるX線検出器4と、X線検出器4の検出情報に基づいてワークWを透過したX線の各透過領域における所定時間毎の累積透過量相当の濃度データ(以下、X線画像の濃度データという)Pを生成する画像入力ユニット5と、画像入力ユニット5からの各透過領域の所定時間毎のX線画像の濃度データPをピクセルデータに対応付けた画像処理を実行することによりディジタルのX線画像を生成する処理ユニット6と、を備えている。
【0041】
搬送路1は、例えば食品や医薬品等となる個体(定形のものでも柔軟な不定形のものでもよい)のワークWをその品種に対応する所定の一定搬送速度で搬送するとともに、その搬送途中でワークWを図示しない装置筐体内の前記所定の検査空間に通してX線源2とX線検出器4の間を通過させるようになっている。
【0042】
X線源2は、例えば陰極フィラメントからの熱電子をその陰極と陽極の間の高電圧により陽極ターゲットに衝突させてX線を発生させるX線管を有しており、発生したX線を下方のX線検出器4に向けて不図示のスリットにより搬送路1の幅員方向に広がる扇形のビームB(図2参照)に整形して照射するようになっている。すなわち、X線源2は、X線検出器4と共に、いわゆるX線ファンビーム光学系を構成している。
【0043】
また、X線検出器4は、蛍光体であるシンチレータとフォトダイオード若しくは電荷結合素子とからなる検出素子を搬送路1の幅員方向にアレイ状に所定ピッチで配設して、所定解像度でのX線検出を行なうようにしたX線ラインセンサカメラで構成されている。
【0044】
搬送路1およびX線源2は、図示しない搬送およびX線照射制御ユニットによってそれぞれ所定のタイミングで動作するよう制御される。
【0045】
画像入力ユニット5は、例えばX線検出器4の複数の検出素子からの透過量の検出信号をそれぞれA/D変換し、X線検出器4における検出素子の配設ピッチに対応する所定の単位搬送時間毎に、図2中に示すn(nは1より大きい整数で、例えば640)個すべての透過領域について、その単位時間内の累積の透過X線量(以下、単に透過量という)のデータを、例えば0から1023までの階調を表す濃度レベルのディジタルデータとしてデータ記憶部5aに書き込む動作(以下、ライン走査という)を実行する。
【0046】
また、画像入力ユニット5は、ワークWが搬送路1上に無いとき、ベルト面のみでの各透過領域のX線透過量が等しい値になるようX線検出器4の検出感度を調整するための不図示の制御ユニットを有している。
【0047】
また、画像入力ユニット5は、前記ライン走査を予め設定した回数だけ繰り返すことによって、データ記憶部5aに書き込まれた透過量データをX線画像の濃度データPとして生成して、処理ユニット6に出力するためのデータ処理プログラムおよび作業メモリ(図示していない)を有している。
【0048】
処理ユニット6は、例えば図示しないCPU、ROM、RAMおよびI/Oインターフェースを有するマイクロコンピュータと、後述する複数の処理機能部の各機能を発揮するための制御プログラムをROMと協働して読み出し可能に記憶した補助記憶装置と、タイマー回路等を含んで構成されており、ROM等に格納された制御プログラムに従って、CPUがRAM等との間でデータを授受しながら所定の演算処理を実行するとともに前記制御プログラムを実行するようになっている。
【0049】
この処理ユニット6は、図1に示すように、前記複数の処理機能部として、ゼロ点補正部61、変換処理部62、体積測定部63、質量換算部66、および、はみ出し検知部69を含んで構成されている。
【0050】
ゼロ点補正部61は、ワークWの体積を測定する周期に応じて、後述するゼロ点補正処理を実行するゼロ点補正プログラムとそのための作業メモリ領域を有しており、X線画像の濃度データPを処理して、ワークWにX線が照射されるときの背景、本実施形態においてはワークWが載置される搬送ベルトの等価厚がゼロとなるようにX線画像の濃度データPをゼロ点補正するようになっている。
【0051】
変換処理部62は、前記各透過領域におけるX線画像の濃度データPから透過領域のそれぞれにおけるワークの厚さtに対応する等価厚画像の濃度データQ(P)への変換処理(詳細は後述する)を施すデータ変換処理手段となっており、そのための変換処理プログラムと作業メモリ領域を有している。
【0052】
ここにいう等価厚画像の濃度データQ(P)は、X線画像の濃度データPをX線吸収量に対応するよう後述する変換式によって対数変換した濃度値であって、被検査物が無くX線透過量の値が最大で被検査物によるX線吸収量がゼロとなるときに最小濃度値となり、X線透過量の値が最小でX線吸収量が最大となるときに最大濃度となる。
【0053】
一般に、X線画像(ピクセル毎の濃度データP)を対数変換した画像の濃度は、X線管、X線光学系、X線検出器、搬送ベルト等といった検査システム上のパラメータが一定とみなせるとき、X線管の管電圧に応じて変化するX線エネルギー分布と、管電流に応じて変化するX線放射量と、ワークの成分原子の種類と密度に応じて変化するX線吸収スペクトルの分布と、ワークWにおける厚さの分布とに依存する。
【0054】
物理学的には、所定エネルギーのN個の光子がワーク(厚さt、線吸収係数α)および搬送ベルト(厚さt、線吸収係数α)を透過することによって、N個に減る現象はランベルト・ベールの法則(Lambert-Beer's Law)により、次式〔11〕で近似できる。
【0055】
【数5】

【0056】
また、本実施形態で採用するようなX線ファンビーム光学系においては、例えばシンチレータ型CCDラインセンサからなるX線検出器4の焦点仰角(90°−θ)の範囲における各ピクセル分の受光量Iは、各透過領域におけるX線照射強度に応じた値I(θ)={1/(1+tanθ)}・I(0°)となるが、ワークWの搬送前の搬送ベルト面ではこの受光量I(θ)がフラットな受光量特性となるようX線検出器4の検出感度を調整することによって、受光感度補正が行なわれる。
【0057】
したがって、この受光感度補正後のワークW搬送前の受光量Iは、ほぼNexp(−α・t)に対応する一定値となり、X線検出器4の受光感度補正によって角度θに依存しなくなった受光量I'はI'=Iexp(−α・t)と考えることができる。
【0058】
ここで、α・tは、X線が発生源から出てX線測定部により検出されるまでに透過した物質によるX線吸収量を直接的に示す値であり、これをX線吸収画像の濃度値に対応付けることで、X線吸収率の高い物質あるいはX線透過方向の厚さの厚い部位ほど濃度値の大きな画像を作成することができる。
【0059】
そこで、前記受光量I'、Iを用い、α・tをワークの各透過領域における等価厚τとして、ワークWの等価厚τをγ乗した値J(τ)を考えると、このJ(τ)は、次式〔12〕で表わすことができる。
【0060】
【数6】

【0061】
上記の理論的考察からすれば補正指数値γは1でもよいが、実験を行なったところ、補正指数値γが1.3に近い一定範囲内であれば、多くの食品についてその厚さtに対しJ(τ)が良好な直線性を示すことがわかった。
【0062】
データ変換処理部62は、このような実験結果に基づいて、ワークWに応じて設定される所定範囲内で補正指数値γを調整し、ワークWの厚さtに対応する等価厚画像の濃度データの直線性を高めるよう補正する直線性補正部62aを有している。
【0063】
具体的には、ゼロ点補正部61およびデータ変換処理部62は、X線画像における背景の濃度値Pと、X線画像における前景の代表濃度Pと、等価厚画像の最大濃度Qmaxとをそれぞれ設定入力するようになっており、その設定値に基づいて、ワークWの各透過領域における等価厚画像の濃度データQ(P)への変換処理を、次式〔1〕により実行するようになっている。
【0064】
【数7】

【0065】
ここで、等価厚画像の濃度データQ(P)は、上述した等価厚τの分布画像の濃度J(τ)に対応する対数変換後の値であるが、更に、ゼロ点補正されたもの(Q(P)=0)となっており、ゼロ点補正機能を併せ持っている。
【0066】
また、補正指数値γは、1.3に近い一定の範囲、例えば1.3±0.2となる範囲内で加減調整されるようになっている。この範囲内で補正指数値γを加減調整する補正を行なうことで、多くの食品をワークWとしてX線検査を行なっても、各透過領域におけるワークWの厚さtに対する等価厚画像の濃度データQ(P)の良好な直線性が担保できることになる。
【0067】
また、データ変換処理部62は、ワークWの標準となる代表ワークの特定の透過領域におけるX線画像の濃度値Paを基に前記式〔1〕で算出された等価厚画像の濃度値Q(Pa)を、次式〔2〕で表わされるQaの値(Qa=Q(Pa))とし、前記算出した等価厚画像の濃度値Q(Pa)および前記代表ワークの特定の透過領域におけるX線画像の濃度値Pa(例えば最大厚さに対応する透過領域のX線画像濃度)を用いて、代表ワークのX線画像における前景の代表濃度値である式〔2〕中の濃度値Pの値を予め算出し、
【数8】

【0068】
ここで算出した濃度値Pにより、前記式〔1〕中の前景の代表濃度値Pを更新する設定を行なった上で、各透過領域におけるX線画像の濃度データPからワークWの厚さtに対応する濃度を有する等価厚画像の濃度データQ(P)への変換処理を実行するようになっている。
【0069】
より具体的には、ここでの代表ワークは、検査対象のワークWのうち典型的な良品ワークであって、その代表ワークWを一度検査空間に通して式〔2〕中の濃度値Pの値を算出し、この算出値を式〔1〕中のPに代入した式を用いて、検査対象の各ワークWについてのX線画像の濃度データPから等価厚画像の濃度データQ(P)への変換処理を実行することになる。
【0070】
また、変換処理部62は、変換条件を規定するデータルックアップテーブル(図示していない)と、この変換テーブルを用いてデータ変換処理を施すプロセッサを有しており、前記ルックアップテーブルには、複数段階のX線画像の濃度データPの濃度レベル(例えば、0から1023までの1024階調)に対し、それぞれ上述した変換処理の結果である等価厚画像の濃度データQ(P)の濃度レベルが対応付けて記憶されている。
【0071】
体積測定部63は、複数の透過領域のそれぞれに対応する等価厚画像の濃度データQ(P)を各ワークWの全測定範囲について合算することで、ワークWの体積Vを算出するという体積測定処理を実行するようになっており、そのための測定処理プログラムと作業メモリ領域を有している。
【0072】
また、体積測定部63は、図5に示すように、X線検出器4の走査ライン上の複数の透過領域のうち等価厚画像の濃度データQ(P)の濃度レベルが所定のノイズカット閾値以上となる透過領域についてのみ体積演算を実行するようになっており、ワークWの搬送方向の先端から後端までの毎回の走査で得られる等価厚画像の濃度データQ(P)(以下、スライスデータともいう)のうち有効なデータのみを合算することにより、各ワークWの体積Vを算出することができる。
【0073】
質量換算部66は、体積測定手段63で測定された透過領域毎の体積測定値Vを予め設定された所定の換算比(変換レート)で質量単位の換算値(質量)に換算するための換算処理プログラムと、図示しない品種パラメータファイルから読み込まれたワークWの質量換算係数λ等を記憶する係数保持メモリ領域と、換算処理のための作業メモリ領域とを有している。
【0074】
ここで、或るワークWの体積測定値VにそのワークWの品種に依存した質量換算係数λを掛けると、そのワークWの体積測定値Vを質量単位の値に換算することができる。質量単位に換算された値をGとすれば、この換算値Gは、G=λ・Vと表わすことができる。
【0075】
また、質量換算部66には表示部7aが接続されており、質量換算部66で質量単位に換算されたワークWの質量換算値が、あるいは更に換算前のワークWの体積測定結果が、それぞれ表示部7aに出力されるようになっている。
【0076】
質量換算部66には、さらに、質量単位の値に換算されたワークWの体積測定値の換算値Gが所定の質量許容範囲内にあるか否かで質量測定結果の合否を判定するプログラムが質量合否判定部66a(質量合否判定手段)として内蔵されており、これにより、ワークWごとの質量測定結果の合否情報を得て、ワークWの質量換算値と共に表示部7aに出力できるようになっている。
【0077】
一方、ゼロ点補正部61は、搬送路1上でワークWが載置される第1領域、例えば図2に示す搬送路1の幅員方向中央部11内の複数の透過領域と、ワークWが載置されない第2領域、例えば図2に示す搬送路1の幅員方向で互いに両端部側に離間する幅員方向両端部12a、12b内の複数の透過領域とのうち、第2領域において、搬送路1を透過したX線の透過量を検出し、その第2領域内で互いに離間する複数の透過領域におけるX線画像の濃度データPに基づいて、上述した質量測定周期に応じた所定の周期でゼロ点補正を繰り返し実行するようになっている。
【0078】
このゼロ点補正について説明すると、例えば図3に示すように、X線検査装置の運転中、例えば環境温度変化等によってX線検出器4のゼロ点ドリフト等が生じていなければ、搬送路1の搬送ベルト面では同図(a)に示すようなノイズレベル程度の濃度レベルとなるが、X線検出器4のゼロ点ドリフト等が生じると、同図(b)に示すように、所定のノイズレベルを超えた濃度レベルとなる。これに対し、本実施形態では、ドリフト量が同図(b)のように大きくなるより早い段階で、ゼロ点補正がなされることになり、同図(c)に示すようにノイズレベル程度に維持されることになる。
【0079】
より具体的には、図4に示すように、ゼロ点補正部61は、搬送路1の幅員方向両端部12a、12bに離間した複数の透過領域を透過したX線の透過量に基づいて、搬送路1の幅員方向一端部12aにおけるX線画像の濃度値Peと搬送路1の幅員方向他端部12bにおけるX線画像の濃度値Peとを決定し(図4(b)参照)、これら両端部のX線画像の濃度値Pe、Peを直線状に結ぶオフセット濃度Kを設定することで、複数の透過領域の透過量データについてオフセット濃度K分を差し引く傾斜補正(図4(c)参照)を前記ゼロ点補正と共に実行するようになっている。
【0080】
ここで、両端部のX線画像の濃度値Pe、Peを直線状に結ぶオフセット濃度Kとは、搬送路1の幅員方向中間の各測定点となる透過領域d〜dn−1のオフセット濃度値が、両端部の濃度値Pe、Peの間の濃度値であって、例えばdからの距離L(それに相当する測定点の数で、全測定点の数nより少ない)に比例して直線的に変化する値(例えば、オフセット濃度値K=Pe+(Pe−Pe)・L/(n−1))をとる意味であり、このような両端基準のオフセット濃度Kの設定により、X線画像の背景(搬送ベルト面)のグラデーションをキャンセルすることが可能となる。
【0081】
なお、第2領域内で互いに離間する複数の透過領域12a、12bは、X線源付近の検査空間内で搬送路1の幅員方向両端部12a、12bに離間しているが、ワークWが並列搬送されるような場合には並列する帯状の第1領域の中間に第2領域が設定され得る。
【0082】
本実施形態においては、さらに、ゼロ点補正部61は、進入検知センサ3と協働して搬送路1上でのワークWの搬送間隔、すなわち進入検知センサ3にワークWが検知されない例えば一定時間以上の無搬送区間を特定する搬送間隔検出部61aを含み、この搬送間隔検出部61aの検出情報に基づいて、その搬送間隔に対応する搬送路1上の開放されたベルト面の範囲をも第2領域として特定するようにしてもよい。そのようにした場合、この搬送間隔に基づき、搬送路1上の個体ワークWの間の非載置領域である第2領域を利用して、搬送路1の幅員方向全域における複数の透過領域のX線透過量に対応するX線画像の濃度データPをチェックし、前記両端基準のゼロ点補正および傾斜補正によって補正された各透過領域のゼロ点および傾斜補正の程度について有効性判断を行なうようになっている。有効性判断の結果、前記両端基準のゼロ点補正および傾斜補正が有効に機能していないと判断されたときには、X線検出器4の感度調整が必要であることを報知するための信号を表示部7a等に出力できるようになっている。
【0083】
さらに、本実施形態においては、はみ出し検知部69が、搬送路1の幅員方向両端部12a、12bに離間した複数の透過領域において搬送路1を透過したX線の透過量を検出し、前記両端基準のゼロ点補正及び傾斜補正の程度を加味した上で、前記所定のノイズレベルか若しくはそれよりわずかに大きいはみ出しリミット閾値を越える濃度データPが第2領域について生じるか否かで、搬送路1上におけるワークWの所定の載置幅範囲、例えば第1領域からのはみ出しを検知するようになっている。このはみ出し検知部69は、このようなはみ出し検知処理のプログラムおよび作業メモリ領域、並びに前記はみ出しリミット閾値の設定値を保持するメモリ領域を有している。
【0084】
次に、動作について説明する。
【0085】
上述した本実施形態のX線検査装置においては、設定パラメータが未知の品種については、以下のような手順でX線照射強度等の測定条件の初期設定がなされる。
【0086】
まず、X線源2の照射強度を特定する管電圧Eおよび管電流IをワークWの品種に合わせて適切なレベルに設定した後、ワークWが載置されていない(以下、無搬送ともいう)搬送路1上の幅員方向全域で、ベルト面のみでの各透過領域のX線透過量が等しい値になるようX線検出器4の検出感度を調整する。次いで、無搬送時の搬送路1のベルト面を体積測定のゼロ点基準面に設定し、X線透過画像の背景であるベルト面の代表濃度Pを設定するとともに、X線透過画像の前景であるワークWの代表濃度Pと等価厚画像の最大濃度Qmaxとをそれぞれ設定する。
【0087】
次いで、必要に応じてノイズカット閾値等を設定し、質量の知れたマスターワーク(基準ワーク)の体積測定を行ない、設定入力されたマスターワークの質量と測定された体積測定値とから算出されるところの質量換算係数λを設定する。これらの初期設定データは、搬送およびX線照射制御ユニットのメモリ又は処理ユニット6内のメモリに記憶され、適宜参照される。
【0088】
また、これらの初期測定データは、品種パラメータファイルに書き込まれ、品種を指定する入力がなされたときに読み込まれることになる。
このような設定が済んだ品種については、図7〜図9に概略の流れを示すような測定制御プログラムが実行され、測定対象のワークWの品種を指定する入力がなされると、必要な選択操作入力の後、X線検査が行われる。
【0089】
図7に示す測定制御プログラムは、図示しないメニュー画面上で測定対象のワークWの品種を指定する入力がなされると開始され、まず、最初に設定済みの各設定パラメータが品種パラメータファイルから読み出され(ステップS1)、次いで、測定開始を指示する操作入力があると(ステップS2)、搬送路1によるワークWの搬送が開始される(ステップS3)。
【0090】
次いで、ワークWの検査空間への進入が進入検知センサ3で検知されると(ステップS4)、進入検知センサ3の検知状態の変化からワークWの長さに相当する搬送区間と、搬送方向前後に隣り合うワークWの間隔に相当する無搬送区間とがそれぞれ特定され(ステップS5)、X線検出器4の繰り返し走査を行なうサンプリング期間が決定される。
【0091】
次いで、はみ出し検知部69によって、搬送路1の幅員方向両端部12a、12bの透過領域におけるX線画像の濃度データPがはみ出しリミット閾値を越えるか否かチェックされ(ステップS10)、はみ出しリミット閾値を越える濃度データPが第2領域に生じると、はみ出しありとの判定がなされて(ステップS6でYESの場合)、エラー表示(ステップS7)がなされるとともに搬送路1による搬送が停止される(ステップS8)。
【0092】
一方、はみ出しがないと判定されれば(ステップS6でNOの場合)、次いで、進入検知後の所定のタイミングでX線検出器4からの検出信号の画像入力ユニット5への取り込みが開始され、ワークWの長さ分だけ前記単位搬送時間毎のライン走査が繰り返されるとともに、画像入力ユニット5のデータ記憶部5aにn個の透過量の濃度レベル値が順次格納され、一方、画像入力ユニット5から処理ユニット6に毎回の走査で得られたスライスデータとしてのX線画像の濃度データPが生成される(ステップS9)。
【0093】
次いで、ゼロ点補正部61により、X線画像の背景のゼロ点補正と傾斜補正が実行される(ステップS10)。
【0094】
このゼロ点補正の処理は、図8に示すように、まず、搬送路1の幅員方向両端部12a、12bの透過領域におけるX線画像の濃度データPを基に、幅員方向一端部12aにおけるX線画像の濃度値Peと幅員方向他端部12bにおけるX線画像の濃度値Peとが両端基準値として設定され(ステップS21)、これら両端部のX線画像の濃度値Pe、Peを直線状に結ぶオフセット濃度Kが設定されて(ステップS21)、複数の透過領域のそれぞれについて濃度データPから当該領域のオフセット濃度K分を差し引くことで、ベルト面を等価厚ゼロとするゼロ点補正と前記傾斜補正とが同時に実行されることになる(ステップS23)。
【0095】
また、前記無搬送区間が一定時間以上に達した場合には、ゼロ点補正部61が、その無搬送区間における搬送路1上の開放されたベルト面の範囲を第2領域として特定し、この第2領域を利用して、搬送路1の幅員方向全域におけるX線画像の濃度データPをチェックして(ステップS25)、前記両端基準のゼロ点補正および傾斜補正によって補正された各透過領域のゼロ点および傾斜補正の程度について、実測値との対比を行なって補正の有効性判断を行なう(ステップS26)。そして、有効性判断の結果、前記両端基準のゼロ点補正および傾斜補正が有効に機能していないと判断したときには(ステップS26でNOの場合)、X線検出器4の感度調整が必要であることを報知するための信号を表示部7a等に出力する(ステップS27)。
【0096】
次いで、データ変換処理部62に、X線画像における前景の代表濃度Pと、等価厚画像の最大濃度Qmaxとがそれぞれ読み込まれ、その設定値に基づいて、ワークWの各透過領域における等価厚画像の濃度データQ(P)への変換処理が前記式〔1〕を用いて実行される(図7のステップS11)。
【0097】
なお、このとき、補正指数値γの調整が済んでいなければ、各透過領域におけるワークWの厚さtに対する等価厚画像の濃度データQ(P)の良好な直線性が得られるように、補正指数値γが、例えば1.3±0.2となる範囲内で加減調整される。この調整作業は、検査対象のワークWのうち典型的な良品ワークを用意し、その代表ワークWを一度検査空間に通して、最初に1回若しくは設定画面からの操作入力に従って必要時に適宜行なわれる。
【0098】
また、X線画像における前景の代表濃度Pが未調整で、かつ、補正指数値γの調整が済んでいる場合に、用意した良品ワークを用いて行われるオートゲイン調整を実行するように操作入力がなされていれば、データ変換処理部62は、ワークWの標準となる代表ワークの特定の透過領域におけるX線画像の濃度値Paを基に前記式〔1〕で算出された等価厚画像の濃度値Q(Pa)を、次式〔2〕で表わされるQaの値(Qa=Q(Pa))として設定し、この算出した等価厚画像の濃度値Q(Pa)および代表ワークの特定の透過領域におけるX線画像の濃度値Pa、例えば最大厚さに対応する透過領域のX線画像濃度を用いて、代表ワークのX線画像における前景の代表濃度値である式〔2〕中の濃度値Pの値を前記式〔2〕により算出する。そして、前記式〔1〕中の前景の代表濃度値Pを更新する設定をここで算出した濃度値Pの値に置き換える更新設定を行なった上で、各透過領域におけるX線画像の濃度データPからワークWの厚さtに対応する濃度を有する等価厚画像の濃度データQ(P)への変換処理を実行する(図7に示す濃度変換処理ステップS11)。
【0099】
この変換処理では、図9に示すように、まず、背景の代表濃度Pを読み込んだ後(ステップS31)、前景の代表濃度値Pが代表ワークのX線画像における前景の代表濃度値である濃度値Pの値によって更新設定されたか否かをチェックして(ステップS32)、未だであれば、濃度値Pの値を算出して、前景の代表濃度値Pをその値に置き換える(ステップS33)。次いで、あるいは、上述の判断ステップで前景の代表濃度値Pの更新が済んでいる場合、等価厚画像の最大濃度Qmaxを読み込み(ステップS34)、検査対象のワークWの各透過領域について、X線画像の濃度データPから等価厚画像の濃度データQ(P)への変換処理を順次実行することになる(ステップS35)。
【0100】
次いで、体積測定部63により、複数の透過領域のそれぞれに対応する等価厚画像の濃度データQ(P)を各ワークWの全測定範囲について合算することでワーク全体の体積Vが測定される(図7に示す体積測定処理ステップS12)。
【0101】
この体積測定処理においては、図10に示すように、まず、変換処理済の透過領域毎の等価厚画像の濃度データQ(P)が読み込まれ(ステップS41)、等価厚画像の濃度データQ(P)の濃度レベルが所定のノイズカット閾値以上となるか否かがチェックされて(ステップS42)、このノイズカット閾値以上の濃度レベルを持つ有効な透過領域の濃度データQ(P)についてのみ、透過領域毎の部分体積演算が実行される(ステップS43)。すなわち、有効な等価厚を示す濃度データQ(P)のみを基にその透過領域の部分体積vが1スライスデータの和として算出される。算出された部分体積値は、それぞれワーク内の該当する透過領域(座標)に対応つけた体積測定部63内のメモリ領域に記憶される(ステップS44)。そして、必要回数の走査(例えばm回)が済むまで、この処理が繰り返された後(ステップS45)、算出した部分体積の総和である1個のワークWの全体の体積Vが算出される(ステップS46)。
【0102】
次いで、質量換算部66により、体積測定手段63で測定されたワークWの体積測定値Vが予め設定された質量換算係数λ(所定の換算比)で質量単位の換算値G(G=λ・V)に換算され、ワークWの質量が測定される(図7に示す質量換算処理ステップS13)。
【0103】
次いで、質量換算部66の質量合否判定部66aにより、さらに、ワークWの体積測定値の換算値GがワークWに対応する所定の質量許容範囲内にあるか否かで質量測定結果の合否が判定され、質量換算定値Gが所定の質量許容範囲内の場合(ステップS15でOKの場合)、ワークWごとの質量測定結果の合否情報とワークWの質量換算値Gとが共に表示部7aに出力され(ステップS16)、あるいは、更に質量換算前のワークWの体積測定結果が代表ワークとの体積比を表示する等の表示形態で表示部7aに出力される。一方、質量換算定値Gが所定の質量許容範囲内から外れた場合(ステップS15でNGの場合)、搬送停止される(ステップS8)。勿論、搬送停止でなく図示しないワーク排出手段にNG信号を出力してもよい。
【0104】
なお、上述の質量測定毎に、処理ユニット6で、図示しない画像作成部によって濃度データPを基にしたX線等価画像が、あるいは、等価厚画像の濃度データQ(P)を基にしたX線吸収画像が作成され、そのディジタルの濃淡画像が、質量計測結果や表示部7aに表示される。
【0105】
図11は、上述のように体積Vを求め、質量を算出した結果の一例をワークWの等価厚画像と共に示す図である。同図(a)に示すマスターワークは、上述の代表ワークに相当するもので、例えば100gである。この場合、ベルト面(等価厚ゼロ)の濃度レベルを超える灰色部分の画素数が75k(約75000)ピクセルで、それらの等価圧画像の濃度レベル(図中では、グレイスケール画像におけるi番目の画素の諧調レベルVal.i(GrayLvel))について画素i=0から75kまでの和(Sigma)を算出して、8.4M(M=10)という体積相当の値が得られている。本実施形態では、これに質量換算値λを掛けて質量を算出すると、100gが得られることになる。また、同図(b)に示す検査ワークの場合、ベルト面(等価厚ゼロ)の濃度レベルを超える灰色部分の画素数が81k(約81000)ピクセルで、それらの等価圧画像の濃度レベルについて画素i=0から81kまでの和を算出して、9.6M(M=10)という体積相当値が得られている。この場合、マスターワークに対する体積比が1.14となり、114gであることがわかる。
【0106】
また、図12は表示部7aに表示される画面の一例の概要を示している。同図中の画面左方側には、ワークWのX線画像画又は等価厚画像を表示する画像表示領域71が配置され、画面右上には特定のX線断面の質量分布若しくは等価厚分布、又はワークWの長さ方向(図中左右方向)の各位置における全幅分の質量の分布を示す分布画像表示部72が、その下方には、質量表示部73、質量合否判定結果の表示部74および体積比表示部75がそれぞれ配されている。体積比表示部75には、代表ワークに対する体積比がパーセント(%)表示される。
【0107】
このように、本実施形態のX線検査装置においては、ワークの体積測定周期に応じてゼロ点補正が繰り返し実行されることになり、ワークを検査しながらのリアルタイムのゼロ点補正が可能になる。したがって、温度ドリフト等のばらつき要因がゼロ点補正によって除去され、温度ドリフトや経年変化等による体積測定精度のばらつきが防止されることになる。なお、ゼロ点補正の繰り返しの周期は、上述の場合はワークの体積測定周期と同一となるが、例えばワークの体積測定の数回毎にゼロ点補正を実行することもでき、適当な周期を設定することができる。
【0108】
また、本実施形態では、体積測定部63で測定された単位透過領域毎の体積測定値を予め設定された換算比で質量単位の換算値に換算する質量換算部66を設けているので、ワークWの質量が測定可能となり、その測定周期に応じてゼロ点補正が適当な周期で繰り返し実行されることになるから、温度ドリフトや経年変化等による質量測定精度のばらつきが防止される。
【0109】
さらに、本実施形態のX線検査装置においては、変換処理部62がワークWの品種に応じて設定される所定範囲内で、ワークWの厚さtに対応する等価厚画像の濃度データQ(P)の直線性を補正する直線性補正部62aを有するので、各透過領域におけるワークWの厚さtに対し等価厚濃度データQ(P)の直線性が担保でき、常時ゼロ点補正がなされることと相俟って、周囲温度変化によるX線検出器4の温度ドリフト等の影響が周囲温度を検出すること無しに除去されることになる。
【0110】
また、変換処理部62が、X線画像における前景の代表濃度Pと、X線画像における前景の代表濃度Pと、等価厚画像の最大濃度Qmaxとをそれぞれ設定して、ワークWの厚さtに対応する等価厚画像の濃度データQ(P)への変換処理を、前記式〔1〕により実行し、X線源2のX線照射出力とワークWの材質とに応じて式〔1〕中の補正指数値γを可変設定しつつ、等価厚画像の濃度データQ(P)を算出することになるので、等価厚画像の濃度データQ(P)がX線画像における前景の濃度値Pと各透過領域におけるX線画像の濃度値Pとの比に応じて等価厚画像の最大濃度値Qmaxの範囲内で変化することになる。したがって、X線検出器のゼロ点ドリフト等による測定精度のばらつきを抑えることが可能となる。しかも、X線源2のX線照射出力やワークWの材質に応じて補正指数値γを加減する補正がなされるから、ワークWの厚さに対する等価厚画像の濃度データQ(P)の直線性が十分に確保でき、常時ゼロ点補正がなされることと相俟って、周囲温度変化によるX線検出器4等の温度ドリフトの影響が周囲温度を検出すること無しに除去されることになる。また、本実施形態においては、変換処理部62は、補正指数値が1.3±0.2となる範囲内で等価厚画像の濃度データQ(P)についての補正を行なうので、多くの食品をワークとしてX線検査を行なう場合に等価厚画像濃度値Q(P)の良好な直線性が確保できる。
【0111】
加えて、変換処理部62が、ワークWの標準となる代表ワークの特定の透過領域におけるX線画像の濃度値Paを基に等価厚画像の濃度値Q(Pa)を求め、これを式〔2〕のQaの値として代表ワークのX線画像における前景の代表濃度値である式〔2〕中の濃度値Pの値を予め算出し、X線画像における前景の代表濃度値Pをその算出した濃度値Pに置き換えた上で、X線画像の濃度データPから等価厚画像の濃度データQ(P)への変換処理を実行するので、X線画像における前景の代表濃度設定値Pに対する検出透過量相当の濃度値Pの大小に応じた好ましい濃度が、等価厚画像濃度の最大濃度設定値Qmaxまでの濃度範囲内で、ワークWごとの透過量のばらつきに左右されることなく設定されることになり、補正指数値γの調整による直線性確保と相俟って等価厚画像の濃度データQ(P)について前記ワークの品種によって左右されないオートゲインコントロール機能を発揮させることができる。
【0112】
また、本実施形態のX線検査装置においては、ゼロ点補正部61が、搬送路1上でワークWが載置される第1領域とワークWが載置されない第2領域とのうち、第2領域内で互いに離間する複数の透過領域について、搬送路1を透過したX線の透過量を検出し、その第2領域内で互いに離間する複数の透過領域のX線透過量に基づいて、ゼロ点補正を実行するので、ゼロ点補正を体積測定中でも実行することができ、特に、その第2領域内で互いに離間する複数の透過領域が、検査空間内で搬送路の幅員方向両端部に離間した幅員方向両端分12a、12bとなっているので、ゼロ点補正を任意の周囲で、実時間的に実行することが可能となる。
【0113】
さらに、搬送路1の幅員方向両端部12a、12bに離間した複数の透過領域で搬送路1を透過したX線の透過量に基づいて、搬送路1上におけるワークWの所定の載置幅範囲からのはみ出しを検出するはみ出し検出部69を設けているので、ゼロ点補正のための透過量検出情報をワークの所定載置幅範囲からのはみ出し検出のための情報に利用することができ、構成の簡素なはみ出し検出手段が実現できる。
【0114】
また、搬送路1の幅員方向両端部12a、12bに離間した複数の透過領域、例えば監視点d1、dnの透過量に対応する搬送路1の幅員方向両端部のX線画像の濃度値Pe、Peを決定し、これらの濃度値Pe、Peを直線状に結ぶオフセット濃度Kを設定して、複数の透過領域の透過量データについての傾斜補正をゼロ点補正と共に実行するようにしているので、オフセット濃度をX線画像の濃度データPから差し引くことで、X線画像中の背景のグラデーション等をキャンセルする傾斜補正と同時にゼロ点のドリフトを補正することができる。
【0115】
しかも、本実施形態では、ゼロ点補正部61が、搬送路1上でのワークWの搬送間隔を特定する搬送間隔検出部61aを含み、その搬送間隔検出情報に基づいて、その搬送間隔に対応する第2領域(無搬送区間)を特定するので、ばら物等の連続するワーク以外であればワークWの品種に関係なく、搬送路1上の個体ワークの間のベルト面開放領域を利用して搬送路幅員方向全域におけるベルト面のX線透過量をチェックし、きめ細かなゼロ点補正や傾斜補正の有効性判断を行なうことができる。
【0116】
[第2の実施の形態]
【0117】
図13〜図18は本発明に係るX線検査装置の第2の実施の形態を示す図であり、本発明を質量測定機能を併有するX線異物検出装置に適用した例を示している。なお、本実施形態は上述の実施形態と同一又は類似の装置構成に異物検出、感度補正および風袋引き等のための手段を付加したものであるので、上述例と同一又は類似の構成については図1〜図12におけると同一の参照符号を付して簡単に説明し、上述の実施形態との相違点について詳述する。
【0118】
まず、その構成を説明する。
図13に示すように、本実施形態のX線検査装置は、上述実施形態のX線検査装置と同様な構成要素として、ワークWを搬送するベルトコンべアからなる搬送路1と、搬送中のワークWに所定の検査空間内でX線を照射するX線源2と、検査空間内へのワークWの進入を検知する例えば投受光器からなる進入検知センサ3と、検査空間内で搬送路幅員方向に隣り合う複数の透過領域のそれぞれについてワークWを透過したX線を検出することができるX線検出器4と、X線検出器4の検出情報に基づいてワークWを透過したX線の各透過領域における所定時間毎の累積透過量相当の濃度データをX線画像の濃度データPとすて生成する画像入力ユニット5と、画像入力ユニット5からの各透過領域の所定時間毎のX線画像の濃度データPをピクセルデータに対応付けた画像処理を実行することによりディジタルのX線画像を生成する処理ユニット6と、を備えている。
【0119】
本実施形態の処理ユニット6は、上述の実施形態とほぼ同様に、例えば図示しないCPU、ROM、RAMおよびI/Oインターフェースを有するマイクロコンピュータと、後述する複数の処理機能部の各機能を発揮するための制御プログラムをROMと協働して読み出し可能に記憶した補助記憶装置とを含んで構成されているが、前記複数の処理機機能部として、ゼロ点補正部61、変換処理部62、体積測定部63、質量換算部66を含んでいるのに加えて、さらに、記録・参照部64、感度補正部65および異物混入判定部67を含んで構成されている。また、本実施形態における質量換算部66は、第1の実施形態についての説明で述べた質量換算機能に加えて、風袋引きの機能を有している。
【0120】
記録・参照部64は、定形で安定した均質な樹脂等(例えばデルリン(登録商標))からなる基準ワークを定めて、X線源2の管電圧E、管電流I、周囲温度Tおよび経過期間Hに応じて変化するその基準ワークの初期(T=T,H=H)の体積測定値V(E,I,T,H)を予め参照テーブル化して、随時読み出し可能な記憶形態出記録保存したものである。この記録・参照部64は、測定感度を設定するための基準ワークについての基準の体積測定値V(E,I,T,H)を測定感度に影響する所定の検出パラメータ(E,I)と関連付けた体積測定値テーブル(図示していない)および体積測定の感度を補正する感度補正係数β(T−T,H−H)を記憶する感度情報記憶部となっている。
【0121】
また、感度補正部65は、その基準ワークの新たな体積測定値V(E,I,T,H)が得られた時点毎に随時更新可能な補正係数β(T−T,H−H)=V(E,I,T,H)/V(E,I,T,H)を算出するようになっており、この補正係数β(T−T,H−H)を用いて、周囲温度と経年変化に伴う検出感度の温度ドリフトを自動的に校正することができるようになっている。この感度補正部65は、記録・参照部64と共に、基準ワークの体積測定毎にその最新の測定値に関連する所定の検出パラメータ(E,I)を特定して、記録・参照部64に記憶された基準体積測定値テーブルV(E,I,T,H)と、基準ワークの最新の体積測定値V(E,I,T,H)とに基づいて、感度補正係数β(T−T,H−H)を更新し、体積測定の感度を一定範囲内に維持する感度補正手段を構成している。
【0122】
なお、基準ワークの体積を測定するとき、管電圧Eと管電流Iはペアで設定するため、Iを省略するとともに、暗黙変数である周囲温度と経年変化を省略し、V(E)およびβ(E)なる参照テーブルを具備しておけばよく、明示的なパラメータEを所定のパラメータとすることができる。
【0123】
ここで、或るワークWの校正された体積測定値VproofにそのワークWの品種に依存した質量換算係数λを掛ければ、そのワークWの体積測定値Vproofを質量に換算することができるから、基準ワークの体積測定によって質量換算の感度構成も間接的に行なうことができる。
感度補正部65による校正済みの体積測定値Vproofは、Vproof=β・Vで表わされる。
【0124】
質量単位に換算された値をGとすれば、この換算値Gは、G=λ・Vproof=λ・β・Vと表わすことができる。
【0125】
ワークWが風袋を含む場合、風袋はワークWの内容物とは材質が異なることから、風袋を独立した別種のワークCであると定義すると、その風袋について、質量換算係数をλ、換算した風袋質量をG、風袋分の体積測定値をV、校正済みの体積測定値をVC_proofとすれば、G=λ・VC_proof=λ・β・Vと表わすことができる。
【0126】
風袋を含むワークWの校正された体積測定値Vproofには、風袋分の校正済みの体積測定値VCproofが含まれているはずであるから、Vproof−VCproofを正味の体積として、質量への換算処理を行なう必要がある。したがって、その場合、正味の体積からの質量換算の値Gは、G=λ・(Vproof−VCproof)=λ・β・{V−G/(λ・β)}となる。
【0127】
質量換算部66は、体積測定手段63で測定された透過領域毎の体積測定値Vを予め設定された所定の換算比(変換レート)で質量単位の換算値Gに換算するための第1換算処理プログラムと、体積測定手段63で測定された透過領域毎の体積測定値Vproofを予め設定された換算比で質量単位の換算値Gに換算するための第2の換算処理プログラムと、ワークWの品種毎の質量換算係数λ、λ等を記憶する係数保持メモリ領域と、換算処理のための作業メモリ領域とを有している。
【0128】
また、質量換算部66は表示部7aに接続されており、質量換算部66で質量単位に換算されたワークWの質量換算値(ワークW全体若しくは予め指定されたワークWの一部構成要素に対応する区域ついてのGの値)が、あるいは更に換算前のワークWの体積測定結果(ワークW全体若しくは予め指定されたワークWの一部構成要素に対応する区域ついてのVの値)が、それぞれ表示部7aに出力されるようになっている。
【0129】
一方、異物混入判定部67は、例えば、変換処理部62で変換処理されたスライスデータ毎の等価厚画像の濃度データQ(P)、あるいは、さらにワークWの全透過領域の等価厚画像の濃度データQ(P)のうち、近接する複数の透過領域間における濃度データQ(P)の急峻な変化を見出すための微分処理等を施して、ワークWの全透過領域中における異物候補点の透過領域を特定し、その候補点についてX線吸収量が所定の閾値を超えるか否かを判定して異物の有無を判定するようになっている。
【0130】
また、上述のように、異物有りと判定された透過領域の等価厚画像上の位置を異物表示部7bに表示出力するようになっている。
【0131】
体積測定部63では、この異物混入判定部67での異物混入判定結果に応じて、異物混入ありと判定された場合には、対応する透過領域の等価厚画像の濃度データQ(P)を一旦除去し、その周囲の透過領域の等価厚画像の濃度データQ(P)を用いて当該除去した等価領域についてのデータの補間処理を行なって、異物による体積および質量計測への影響を軽減するようになっている。
【0132】
なお、本実施形態のX線検査装置は、図示しないモード選択手段によって、質量計測のみの秤量モード、異物検出のみの異物検出モード、および質量計測と異物検出を同時に実行する併用モードのうち任意の運転モードを選択できるようになっている。
【0133】
次に、その動作について説明する。
【0134】
上述の第1の実施の形態と同様に、設定パラメータが未知の品種については、まず、X線源2の照射強度を特定する管電圧Eおよび管電流IをワークWの品種に合わせて適切なレベルに設定した後、無搬送の搬送路1上の幅員方向全域で、ベルト面のみでの各透過領域のX線透過量が等しい値になるようX線検出器4の検出感度を調整し、次いで、無搬送時の搬送路1のベルト面を体積測定のゼロ点基準面に設定して、X線透過画像の背景であるベルト面の代表濃度Pを設定するとともに、X線透過画像の前景であるワークWの代表濃度Pと等価厚画像の最大濃度Qmaxとをそれぞれ設定する。次いで、必要に応じてノイズカット閾値等を設定し、質量の知れたマスターワーク(基準ワーク)の体積測定を行ない、設定入力されたマスターワークの質量と測定された体積測定値とから算出されるところの質量換算係数λを設定する。これらの初期設定データは、上述のように、搬送およびX線照射制御ユニットのメモリ又は処理ユニット6内のメモリに記憶され、適宜参照される。
【0135】
また、これらの初期測定データは、品種パラメータファイルに書き込まれ、品種を指定する入力がなされたときに読み込まれることになる。
【0136】
このような設定が済んだ品種については、上述した図7〜図9の測定制御プログラムと類似する一連の測定制御プログラムが実行され、測定対象のワークWの品種を指定する入力がなされると、必要な選択操作入力の後、X線検査が行われる。ただし、本実施形態では、異物検出、基準ワークを用いた感度ドリフトの自動校正、並びに質量換算時の風袋引き処理を行なうため、以下に説明するような拡張処理を実行する。
【0137】
すなわち、上述した濃度変換処理ステップ(図7のステップS11)に次いで、図14に示すような拡張した体積測定処理が実行される。
【0138】
同図において、まず、運転モードが異物検出を伴うモードか否かが判別され(ステップS51)、異物検出と伴う運転モードの場合には、濃度変換処理ステップでの変換済みの濃度データQ(P)を異物検出にも併用すると判定される(ステップS51でYESの場合)。
【0139】
この場合、変換処理部62で上述した微分処理等による異物候補点の特定と、その候補点についてのX線吸収量が所定の閾値を超えるか否かの判定が行なわれて、ワークW中における異物混入の有無が判定され、その判定結果が異物表示部7bに表示出力される(ステップS52)。また、異物が混入していると判定された場合には、混入異物の影響低減の処理が実行される(ステップS53)。この処理は図14中には詳細に示していないが、異物でなく、ワークWに内蔵された乾燥剤や添付品(仕切りやそれに相当する容器等)であった場合にもそれらを主たる内容物の質量から除外するための処理に適用できるものである。
【0140】
異物の場合で、具体例を図示すると、例えば図17に示すように、ワークW中に混入した異物(若しくは添付品等)F(同図(a)参照)の影響で等価厚分布においてその異物等Fの部分が突出した高レベルとなるが(同図(b)参照)、内容物の質量分布としては同図(c)に示すような表示がなされる。この表示を行なうため、本実施形態においては、上述したように異物Fの透過領域の等価厚画像のデータを一旦除去して、例えばその隣接透過領域の平均値等を用いて、除去した透過領域部分の濃度データQ(P)を補間する処理がなされる。
【0141】
次いで、ワークWの体積算出処理が上述の実施形態の体積算出処理ステップS12と同様に行なわれる。
【0142】
また、本実施形態においては、等価厚データを採取するための検出感度設定の基準となる基準ワークを用いて、感度校正のための基準ワークの体積測定を行なって、その測定値をその測定に影響する設定パラメータ(E,I)と関連付けて記録・参照部64にテーブル化して記録する(ステップS54)。また、感度補正部65は、その基準ワークの新たな体積測定値V(E,I,T,H)が得られる時点毎に、補正係数βをβ(T−T,H−H)=V(E,I,T,H)/V(E,I,T,H)として算出するようになっており、パラメータ(E,I)を変化させることで、記録・参照部64には補正係数βもテーブル化されて記憶される。
【0143】
したがって、基準ワークの新たな体積測定値V(E,I,T,H)が得られると(ステップS56)この新たに算出した補正係数β(T−T,H−H)を用いて、以後の体積測定値Vに対する校正済みの体積測定値Vproof=β・Vが算出され、周囲温度と経年変化に伴う検出感度の温度ドリフトが自動的に校正できることになる(ステップS57)。このとき、感度補正係数β=V/Vであり、Vは基準日の基準温度における基準ワークの体積測定値、Vはその基準ワークを用いて行なった最新の感度補正における基準ワークの体積測定値である。
【0144】
次いで、質量単位に換算された換算値Gを、G=λ・Vproof=λ・β・Vとする質量換算処理が実行されるが、本実施形態では、上述の実施形態の質量換算に対し、図15に示すように拡張した質量計算処理がなされる。
【0145】
同図において、まず、風袋引き換算の有無がチェックされる(ステップS61)。すなわち、ワークWが内容物の質量測定値から除外したい風袋Cを含む場合であるか否かがチェックされる。その指定は、予め運転開始前のパラメータ設定時に必要なパラメータ(例えば質量換算係数λ)の設定入力と共になされる。
【0146】
風袋引き有りの場合、その風袋について、それぞれ質量換算係数λ、換算した風袋質量G、風袋分の体積測定値V、校正済みの体積測定値をVC_proofを用いて、G=λ・VC_proof=λ・β・Vと表わすことができるが、本実施形態では、質量換算係数λが予め設定されていれば、風袋質量Gを指定するだけで、風袋引きが可能となるから、風袋Cの質量値が入力され、設定パラメータとして設定情報メモリ記憶される(ステップS62)。
【0147】
このとき、質量換算部66は、ワークの内容物および風袋のそれぞれの質量換算係数λ、λを係数保持メモリ領域から読み出し、体積測定手段63で測定された校正済みの体積測定値Vproofを予め設定された換算比すなわち質量換算係数λ、λで質量単位の換算値Gに換算するための第2の換算処理プログラムを実行し、まず、風袋質量Gのワーク質量測定値からの減算が指定されると(ステップS61でYESの場合)、品種パラメータである質量換算係数λを基にその体積換算の処理(V=G/(λ・β))がなされて、体積レベルで風袋引きの減算処理がなされ、次いで、正味の体積V−Vから質量が換算される(ステップS62〜64)。すなわち、正味の体積V−Vからの質量換算値Gを、G=λ・β・{V−G/(λ・β)}として算出する処理が実行される(ステップS64)。ここで、各透過領域のうち有効な等価厚の濃度データQ(P)を用いて部分体積を求め、最後にその総和を求める処理は、上述の実施形態と同様である。
【0148】
このような風袋引きの質量測定が終了すると、上述の第1の実施形態における合否判定処理(図7のステップS14)以降の処理が実行され、判定結果が他の測定情報と共に表示手段である質量表示部7aおよび異物表示部7bに表示される。
【0149】
本実施形態においては、その表示は、例えば質量表示部7aおよび異物表示部7bを単一画面中に一体化して、図16に示すような表示態様で行なわれる。
【0150】
同図中の画面左方側には、ワークWのX線画像又は等価厚画像を表示する画像表示領域71が配置され、画面右上には特定のX線断面の質量分布若しくは等価厚分布、又はワークWの長さ方向(図中左右方向)の各位置における全幅分の質量の分布を示す分布画像の表示部72が、その下方には、質量表示部73、質量合否判定結果の表示部74、異物判定結果の表示部76、異物NGの発生数を表示する異物NG数表示部77、質量NGの発生数を表示する質量NG数表示部78、並びに、質量インジケータ部80ががそれぞれ配されている。分布画像の表示部72には、ワークWに異物又はX線吸収係数の高い添付品等(図16中Fで示す)が含まれている場合、それに対応する等価厚濃度(X線吸収濃度)の高いピークが表示されるが、質量計測においてはその影響は除去されている。
【0151】
また、質量インジケータ部80は、図18に示すように、ワークWの質量測定値に応じて図中の左端から順次発光していく複数、例えば3つ以上の発光部分からなる横向きのバー状のもので、ワークWの質量測定値に応じて表示範囲(図中クロスハッチング部分)を変化させるようになっている。また、同一形状の発光部分を一列に整列させることで、等間隔の目盛りを配した形態に構成されている。さらに、質量インジケータ部80には、インジケータ部分81の下方に、質量許容範囲の下限値をインジケータ部分81の特定位置を指示することで示す第1のポインタ82と、質量許容範囲の上限値ををインジケータ部分81の特定位置を指示することで示す第2のポインタ83とが設けられており、質量許容範囲の下限値と上限値が入力されると、これらのポインタ82、83がインジケータ部分81上の対応する質量位置を指示するよう図中左右方向に移動するようになっている。さらに、インジケータ部分81は許容範囲の中の値でもっとも好ましい質量値、例えばちょうど許容範囲の中心に位置する太い目盛り線84を有しており、この目盛り線はデフォルトで中間値となるが、そこから偏倚した位置に位置させる指定を可能にすることもできる。
【0152】
この質量インジケータ部80においては、質量インジケータ部分81の表示範囲から、測定された質量が第1、第2のポインタ82、83の間隔で示された許容範囲に対しどの程度の過不足や偏りを持つかを、直感的に容易に把握できる。また、質量許容範囲の下限値や上限値の設定の結果を質量インジケータ部分81に対する第1、第2のポインタ82、83の位置として視覚的に把握できることから、操作性もよい。
【0153】
以上のように、本実施形態においては、上述した第1の実施形態と同様にリアルタイムのゼロ点補正を行なうことで第1の実施形態と同様な効果が得られる。しかも、本実施形態においては、基準ワークの体積測定毎に所定の検出パラメータを特定し、記録・参照部64(感度情報記憶部)に記憶された体積測定値テーブルV(E,I,T,H)と基準ワークの最新の体積測定値V(E,I,T,H)に基づいて、感度補正係数βを更新し、体積測定の感度を一定範囲内に維持するようにしているので、周囲温度や経年変化による検出感度のドリフトを精度良く校正することができる。
【0154】
また、基準ワークの体積Vが新たに測定されたとき、感度補正部65がその測定された最新の体積測定値V(E,I)と、記録・参照部64に記憶された体積測定値テーブル中の基準の体積測定値V(E,I)との比率に基づいて、感度補正係数βを更新するので、X線源の管電圧Eや、管電流I、周囲温度Tおよび経過期間Hに応じて変化する基準ワークの体積測定値V(E,I,T,H)を参照テーブル化しておくことで、基準ワークの体積測定値Vが得られる度にその時点で検出感度の温度ドリフトを精度良くかつ容易に校正することができる。
【0155】
また、本実施形態においては、ワークWが風袋Cを含むとき、体積測定部63が、ワークWの等価厚画像の濃度データQ(P)に基づいて算出したワーク全体の体積測定値Vから、風袋分の体積値Vを差し引く風袋引き処理を実行するので、ワークWが風袋を含むときでも、風袋引きした内容物の体積や質量を直接出力させることができる。さらに、体積測定部63が、風袋の質量と体積の換算比を予め記憶するとともに、風袋質量が設定されたときに、その質量を風袋の体積に変換して、風袋引き処理を実行するので、風袋質量値を指定する入力だけで、風袋引き処理を実行させることができる。
【0156】
本実施形態では、また、X線検出器4の検出情報に基づいてワークW中における異物の有無を判定し異物検出する異物有無判定部67を備えているので、体積又は質量の測定だけでなく異物検出を行なうことができ、しかも、X線検出器4の温度ドリフト等のばらつき要因がゼロ点補正によって除去され、温度ドリフトや経年変化等による質量測定精度のばらつき並びに異物検出精度のばらつきを抑えることができる。
【0157】
さらに、処理ユニット6が、異物有無判定部67の検出結果に応じて、異物が検出されたときX線透過量相当のデータから異物を透過したデータを除去するとともに、その異物を透過した領域の周囲の領域における透過量データに基づいて、その除去したデータを補間する処理を実行するので、異物検出から独立して質量測定結果を常時得ることができる装置となる。
【0158】
また、表示部7a、7bが、ワークWの質量測定値に応じて表示範囲を変化させる質量インジケータ部80を有しているので、測定された質量を、質量インジケータ部80の表示範囲から即座に視認できる。
【産業上の利用可能性】
【0159】
以上説明したように、本発明は、ワークの体積測定周期に応じてゼロ点補正を適当な周期で実行することにより、ワークを検査しながらのリアルタイムのゼロ点補正を可能にしているので、温度ドリフト等のばらつき要因をゼロ点補正によって除去し、温度ドリフト等による測定精度のばらつきを防止することができるX線検査装置を提供することができるという効果を奏するものであり、X線検査装置、特に搬送中のワークにX線を照射してそのX線の透過量に基づいて体積測定若しくはそれを伴う質量測定を行ない、又は更に異物検出をも行なうようにしたX線検査装置全般に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0160】
【図1】本発明に係るX線検査装置の第1の実施の形態の概略構成を示すそのブロック図である。
【図2】本発明に係るX線検査装置の第1の実施の形態におけるファンビーム光学系の配置およびワーク載置領域の範囲を示すその斜視図である。
【図3】本発明に係るX線検査装置の第1の実施の形態におけるゼロ点補正の説明図である。
【図4】本発明に係るX線検査装置の第1の実施の形態における傾斜補正の説明図である。
【図5】本発明に係るX線検査装置の第1の実施の形態におけるノイズカット閾値を用いた体積演算処理の有効範囲設定の説明図である。
【図6】本発明に係るX線検査装置の第1の実施の形態におけるはみ出し検知方式の説明図である。
【図7】本発明の第1の実施の形態における測定制御プログラムの概略の流れを示すフローチャートである。
【図8】本発明の第1の実施の形態におけるゼロ点補正処理プログラムの概略の流れを示すフローチャートである。
【図9】本発明の第1の実施の形態における濃度変換処理プログラムの概略の流れを示すフローチャートである。
【図10】本発明の第1の実施の形態における体積測定処理プログラムの概略の流れを示すフローチャートである。
【図11】本発明の第1の実施の形態における体積測定処理プログラムで部分体積の総和を求める一例の計算方法を等価厚画像と共に代表ワークと検査ワークとで対比して示す説明図である。
【図12】本発明に係るX線検査装置の第1の実施の形態における表示手段の表示態様の一例を示す画面構成図である。
【図13】本発明に係るX線検査装置の第2の実施の形態の概略構成を示すそのブロック図である。
【図14】本発明の第2の実施の形態における拡張した体積測定処理プログラムの概略の流れを示すフローチャートである。
【図15】本発明の第2の実施の形態における拡張した質量計算処理プログラムの概略の流れを示すフローチャートである。
【図16】本発明に係るX線検査装置の第2の実施の形態における表示手段の表示態様の一例を示す画面構成図である。
【図17】本発明の第2の実施の形態における質量測定時の混入異物の質量測定への影響を除去する処理を説明する説明図である。
【図18】本発明に係るX線検査装置の第2の実施の形態における表示手段の質量インジケータ部の拡大正面図である。
【符号の説明】
【0161】
1 搬送路
2 X線源
3 進入検知センサ(搬送間隔検出部)
4 X線検出器
5 画像入力ユニット(画像入力手段)
6 処理ユニット
11 搬送路幅員方向中央部(第1領域)
12a 搬送路幅員方向一端部(第2領域)
12b 搬送路幅員方向他端部(第2領域)
61 ゼロ点補正部
62 変換処理部(データ変換処理手段)
62a 直線性補正部
63 体積測定部(体積測定手段)
64 記録・参照部(感度情報記憶部)
65 感度補正部(感度補正手段)
66 質量換算部(換算手段)
66a 質量合否判定部(質量合否判定手段)
67 異物混入判定部(異物検出手段)
69 はみ出し検知部(はみ出し検知手段)
80 質量インジケータ部
K オフセット濃度
Pe、Pe 幅員方向両端部のX線画像の濃度値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを搬送する搬送路(1)と、
搬送中の前記ワークに所定の検査空間内でX線を照射するX線源(2)と、
前記検査空間内で前記搬送方向と直交する方向で隣り合う複数の透過領域のそれぞれについて前記ワークを透過したX線を検出することができるX線検出器(4)と、
前記X線検出器の検出情報に基づき、前記ワークを透過したX線の前記透過領域毎の透過量相当のデータを処理してディジタルのX線画像を生成する処理ユニット(6)と、を備え、前記X線画像に基づいて前記ワークの体積を測定するX線検査装置であって、
前記処理ユニット(6)が、
前記各透過領域におけるX線画像の濃度データ(P)から前記透過領域のそれぞれにおける前記ワークの厚さに対応する等価厚画像の濃度データ(Q(P))への変換処理を施すデータ変換処理手段(62)と、
前記複数の透過領域のそれぞれに対応する前記等価厚画像の濃度データに基づいて前記複数の透過領域における前記ワークの体積を測定する体積測定手段(63)と、
前記X線透過量相当のデータを処理して、前記ワークに前記X線が照射されるときの背景の等価厚をゼロとするよう前記X線画像の濃度データをゼロ点補正するゼロ点補正部(61)と、を含み、
前記ゼロ点補正部(61)が、前記ワークの体積を測定する周期に応じて、前記ゼロ点補正を実行することを特徴とするX線検査装置。
【請求項2】
前記体積測定手段で測定された前記透過領域毎の体積測定値を予め設定された換算比(λ)で質量単位の換算値に換算する換算手段(66)を更に備えたことを特徴とする請求項1に記載のX線検査装置。
【請求項3】
前記データ変換処理手段が、前記ワークに応じて設定される所定範囲内で、前記ワークの厚さに対応する等価厚画像の濃度データの直線性を補正する直線性補正部(62a)を有することを特徴とする請求項1又は2に記載のX線検査装置。
【請求項4】
前記データ変換処理手段が、
前記X線画像における背景の濃度値(P)と、前記X線画像における前景の代表濃度(P)と、前記等価厚画像の最大濃度(Qmax)とをそれぞれ設定して、前記ワークの厚さに対応する等価厚画像の濃度値(Q(P))への変換処理を、次式〔1〕により実行し、
【数1】

前記X線源のX線照射出力と前記ワークの材質とに応じて式〔1〕中の補正指数値(γ)を可変設定しつつ、前記等価厚画像の濃度データ(Q(P))を算出することを特徴とする請求項1に記載のX線検査装置。
【請求項5】
前記データ変換処理手段は、前記補正指数値が1.3±0.2となる範囲内で、前記等価厚画像の濃度データについての補正を行なうことを特徴とする請求項4に記載のX線検査装置。
【請求項6】
前記データ変換処理手段は、
前記ワークの標準となる代表ワークの特定の透過領域におけるX線画像の濃度値Paを基に前記式〔1〕で算出された等価厚画像の濃度値Q(Pa)を次式〔2〕で表わされるQaの値とし、前記算出した等価厚画像の濃度値Q(Pa)および前記代表ワークの特定の透過領域におけるX線画像の濃度値Paを用いて、前記代表ワークのX線画像における前景の代表濃度値である式〔2〕中の濃度値Pの値を予め算出し、
【数2】

前記X線画像における前景の代表濃度値(P)を該算出した濃度値(P)に置き換えた上で、前記各透過領域におけるX線画像の濃度データ(P)から前記ワークの厚さに対応する濃度を有する等価厚画像の濃度データ(Q(P))への変換処理を実行することを特徴とする請求項4に記載のX線検査装置。
【請求項7】
前記ゼロ点補正部が、前記搬送路上で前記ワークが載置される第1領域(11)と前記ワークが載置されない第2領域(12a,12b)とのうち前記第2領域内で互いに離間する複数の透過領域について、前記搬送路を透過したX線の透過量を検出し、該第2領域内で互いに離間する複数の透過領域のX線透過量に基づいて、前記ゼロ点補正を実行することを特徴とする請求項1に記載のX線検査装置。
【請求項8】
前記第2領域内で互いに離間する複数の透過領域が、前記検査空間内で前記搬送路の幅員方向両端部(12a,12b)に離間したことを特徴とする請求項7に記載のX線検査装置。
【請求項9】
前記搬送路の幅員方向両端部に離間した前記複数の透過領域で前記搬送路を透過したX線の透過量に基づいて、前記搬送路上における前記ワークの所定の載置幅範囲(11)からのはみ出しを検出するはみ出し検出手段を設けたことを特徴とする請求項8に記載のX線検査装置。
【請求項10】
前記搬送路の幅員方向両端部に離間した前記複数の透過領域を透過したX線の透過量に基づいて、両透過量値に対応する前記搬送路の前記幅員方向両端部のX線画像の濃度値(Pe,Pe)を決定し、該両端部のX線画像の濃度値を直線状に結ぶオフセット濃度(K)を設定することで、前記複数の透過領域の透過量データについての傾斜補正を前記ゼロ点補正と共に実行するようにしたことを特徴とする請求項8に記載のX線検査装置。
【請求項11】
前記ゼロ点補正部が、前記搬送路上での前記ワークの搬送間隔を特定する搬送間隔検出部(3)を含み、該搬送間隔検出部の検出情報に基づいて、該搬送間隔に対応する範囲として前記第2領域を特定することを特徴とする請求項7に記載のX線検査装置。
【請求項12】
測定感度を設定するための基準ワークについての基準の体積測定値を測定感度に影響する所定の検出パラメータと関連付けた体積測定値テーブルおよび前記体積測定の感度を補正する感度補正係数を記憶する感度情報記憶部(64)を有し、前記基準ワークの体積測定毎に前記所定の検出パラメータを特定して、前記感度情報記憶部に記憶された体積測定値テーブルと前記基準ワークの最新の体積測定値および該測定時における前記所定の検出パラメータとに基づいて、前記感度補正係数を更新し、前記体積測定の感度を一定範囲内に維持する感度補正手段(65)を更に備えたことを特徴とする請求項1に記載のX線検査装置。
【請求項13】
前記所定の検出パラメータが、少なくとも前記X線源を駆動する電圧の値を含み、前記基準ワークの体積が測定されたとき、前記感度補正手段が、該測定された最新の体積測定値と、前記感度情報記憶部に記憶された前記体積測定値テーブル中の前記体積測定値との比率に基づいて、前記感度補正係数を更新することを特徴とする請求項12に記載のX線検査装置。
【請求項14】
前記体積測定手段が、前記各透過領域におけるX線画像の濃度データのうち所定のノイズカット閾値を超える濃度データを用いて体積測定の処理を実行することを特徴とする請求項1に記載のX線検査装置。
【請求項15】
前記換算手段により質量単位の値に換算された前記透過領域毎の体積測定値の換算値が前記ワークに対応する所定の質量許容範囲内にあるか否かで質量測定結果の合否を判定する質量合否判定手段(66a)を設けたことを特徴とする請求項2に記載のX線検査装置。
【請求項16】
前記ワークが風袋(C)を含むとき、前記体積測定手段が、前記ワークの等価厚画像の濃度データに基づいて算出したワーク全体の体積測定値(V)から、前記風袋分の体積値(V)を差し引く風袋引き処理を実行するようにしたことを特徴とする請求項1に記載のX線検査装置。
【請求項17】
前記ワークが風袋(C)を含むとき、前記体積測定手段が、前記風袋の質量と体積の換算比(λ)を予め記憶するとともに、該風袋の質量(G)が設定されたとき、該質量を該風袋の体積に変換して、前記ワークの等価厚画像の濃度データに基づいて算出したワーク全体の体積測定値(V)から前記風袋分の体積値(V)を差し引く風袋引き処理を実行することを特徴とする請求項2に記載のX線検査装置。
【請求項18】
前記X線検出器の検出情報に基づき、前記ワーク中における異物の有無を判定して該異物を検出する異物検出手段(67)を更に備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載のX線検査装置。
【請求項19】
前記処理ユニットが、前記異物検出手段の検出結果に応じて、前記異物が検出されたとき前記X線透過量相当のデータから該異物を透過したデータを除去するとともに、該異物を透過した領域の周囲の前記透過領域におけるX線画像の濃度データに基づいて、該除去したデータを補間する処理を実行することを特徴とする請求項18に記載のX線検査装置。
【請求項20】
前記ワークの質量測定値に応じて表示範囲を変化させる質量インジケータ部(80)を有する表示手段を備えたことを特徴とする請求項2に記載のX線検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−300887(P2006−300887A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−126794(P2005−126794)
【出願日】平成17年4月25日(2005.4.25)
【出願人】(302046001)アンリツ産機システム株式会社 (238)
【Fターム(参考)】