説明

X線検査装置

【課題】 従来よりも正確に手入れ等の異常発生を検出することが可能なX線検査装置を提供する。
【解決手段】 搬入口11aおよび搬出口11bに、物品を検出するための複数のセンサ17a,17b,18a,18bを備えている。物品の検査開始前の段階においてサンプルの商品を搬送しながら物品検出を行い、制御コンピュータ20が各センサ17a,17bにおける検出信号PH,PLを基にして第1〜第3の合成信号を生成する。手入れ等の異常発生の有無を検出する際の基準となる正常合成信号として、第3の合成信号をCF25に記憶させる。物品の検査開始後には、コンベア12によって搬送される物品を各センサ17a,17b等で検出し、制御コンピュータ20が第1〜第3の合成信号を生成する。CF25に記憶された正常合成信号と、検査開始後に検出されたPH,PLから生成される第3の合成信号とを比較して、異なる部分がある場合には、これを異常発生として判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送中の物品に対してX線を照射して物品の検査を行うX線検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、食品などの商品の生産ラインにおいては、商品への異物混入や商品の割れ欠けがある場合にその不良商品が出荷されることを防止するために、X線検査装置を用いた商品不良検査が行われている。このX線検査装置では、搬送コンベアによって連続搬送されてくる被検査物に対してX線を照射し、そのX線の透過状態をX線受光部で検出して、被検査物中に異物が混入していないか、あるいは被検査物に割れ欠けが生じていたり被検査物内の単位内容物の数量が不足していたりしないかを判別する。また、X線検査装置によって、被検査物内の単位内容物の数量を数える検査が行われることもある。
【0003】
このようなX線検査装置では、物品の搬送滞留が発生した際には、X線が照射されているにもかかわらず作業者が誤って筐体内に手を入れることが考えられる。このようなX線検査装置の使用中の安全性を考慮して、運転中における筐体内への手入れを検出してX線の照射量を抑えることが可能なX線検査装置がある。
例えば、特許文献1に開示されたX線検査装置では、検査対象となる物品の搬入口、搬出口を監視領域とし、そこを通過する物体を投受光素子によって検出する。これにより、物体の検出時間が検査対象となる物品の検出時間よりも長い場合には、これを手入れと判定してX線照射量を所定量以下になるように制御することで、安全性の高いX線検査装置を提供している。
【特許文献1】特開2001−311699号公報(平成13年11月9日公開)
【特許文献2】特開2003−121388号公報(平成15年4月23日公開)
【特許文献3】特開2003−130817号公報(平成15年5月8日公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来のX線検査装置では、以下に示すような問題点を有している。
すなわち、上記公報に開示されたX線検査装置では、搬入口、搬出口にそれぞれ1つの投受光素子を備え、搬入口、搬出口における手入れ検知を行っている。しかし、このように搬入口、搬出口に各1つずつ配置された投受光素子では、物品の通過タイミングと同時に手入れがあった場合には、投受光素子による物体の検出時間が長くならないため、手入れの検出をすることはできず、安全性の面で十分とは言い難い。
【0005】
本発明の課題は、従来よりも高精度に手入れ等の異常発生を検出することが可能なX線検査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明に係るX線検査装置は、筐体内を搬送される物品に対してX線を照射し、その透過量を検出して物品の検査を行うX線検査装置であって、物品検出部と、記憶部と、判定部と、を備えている。物品検出部は、筐体に形成された物品の搬入口および搬出口の少なくとも一方の開口において、開口の高さ方向および幅方向のいずれか一方に複数配置されている。記憶部は、複数の物品検出部による物品の検出パターンを合成して形成される正常合成信号を予め記憶する。判定部は、正常合成信号と、検査開始中に得られる複数の物品検出部における物品の検出パターンを合成して形成される合成信号と、を比較して異常発生の有無を判定する。
【0007】
ここでは、物品の搬入口および/または搬出口において、搬入出口の幅方向あるいは高さ方向に配置された複数の物品検出部によって検査中に得られた検出パターンの合成信号と、予め記憶部に記憶されている正常合成信号とに基づいて、例えば、運転中における手入れ等の異常発生の有無を判定する。例えば、搬入口における鉛直方向に2つの物品検出部を配置した場合には、上部に配置された物品検出部における物品の検出パターンと下部に配置された物品の検出パターンとを合成した合成信号を形成する。そして、これを記憶部に記憶されている正常合成信号と比較する。この結果、検査中に得られた合成信号と正常合成信号とに異なる部分がある場合には、これを異常発生と判定する。
【0008】
このように、搬入口および/または搬出口に複数の物品検出部を配置してこれらの合成信号に基づいて異常発生の判定を行うことで、従来の1つの物品検出部によって異常発生の有無を判定していたX線検査装置では検出できなかった異常発生を検出することができるため、より高精度な異常発生の判定を行うことが可能になる。
さらに、複数の物品検出部が配置されているため、手入れだけでなく、物品の搬送滞留についても同様に検出することが可能になる。ここで、作業者の手入れは、物品の搬送滞留発生時にこれを解消しようとして発生することがある。そこで、物品の滞留発生を予め検出して搬送停止等の処理を施すことで、作業者の手入れを間接的に防止して安全性の高いX線検査装置を提供することができる。
【0009】
第2の発明に係るX線検査装置は、第1の発明に係るX線検査装置であって、正常合成信号および合成信号は、複数の物品検出部における検出パターンのEXOR信号を含んでいる。
ここでは、正常合成信号および合成信号として、複数の物品検出部において検出された検出パターンの差として形成されるEXOR信号を用いている。
【0010】
これにより、この信号を、同様にして形成されて記憶部に記憶された正常時における合成信号と比較することで、異常発生の有無を容易に判定することができる。
第3の発明に係るX線検査装置は、第1または第2の発明に係るX線検査装置であって、正常合成信号および合成信号は、複数の物品検出部における検出パターンのOR信号を含んでいる。
【0011】
ここでは、正常合成信号および合成信号として、複数の物品検出部において検出された検出パターンのOR信号を用いている。
これにより、この信号によって物品の通過するサイクルを認識することができる。よって、この信号を、異常発生の有無を判定する際の開始、終了タイミングとして利用することができる。
【0012】
第4の発明に係るX線検査装置は、第1から第3の発明のいずれか1つに係るX線検査装置であって、正常合成信号および合成信号は、複数の物品検出部における検出パターンのEXOR信号と、複数の物品検出部における検出パターンのOR信号とを乗じて得られる信号を含んでいる。
ここでは、正常合成信号および合成信号として、複数の物品検出部において検出された検出パターンのEXOR信号と、複数の物品検出部において検出された検出パターンのOR信号とを乗じて得られる信号を用いている。
【0013】
これにより、この信号によって物品の通過するサイクル内における異常発生の有無を判定することができる。
第5の発明に係るX線検査装置は、第1から第4の発明のいずれか1つに係るX線検査装置であって、正常合成信号は、所定の物品を搬送して得られた物品の検出パターンに基づいて、検査開始前に記憶部に記憶される。
【0014】
ここでは、検査開始後において得られる検出パターンの合成信号と比較するための正常合成信号を、検査開始前の段階で予め生成して記憶しておく。
このように、検査開始前において検査対象となる物品の正常合成信号を記憶させておくことで、検査開始後における異常発生を即座に検出することが可能になる。
第6の発明に係るX線検査装置は、第1から第5の発明のいずれか1つに係るX線検査装置であって、判定部は、正常合成信号と合成信号との比較において、一定時間以上の差が生じている場合に異常発生と判定する。
【0015】
ここでは、異常発生の有無の判定を行う際には、複数の物品検出部における合成信号と正常合成信号とを比較して一定時間以上の差が生じている場合にのみ、これを異常発生として判定する。つまり、所定の一定時間よりも短い時間だけ合成信号と正常合成信号との異なる部分が発見された場合には、これを異常発生として判定しない。
ここで、本発明のX線検査装置では、一般的に、搬入口、搬出口に筐体外へのX線の漏洩を防止するための遮蔽ノレンが設けられている。この搬入口、搬出口を検査対象となる物品が通過する際には、物品検出部が搬入口あるいは搬出口付近に配置されているため、物品が遮蔽ノレンを押しのけて遮蔽ノレンが物品検出部に検出されてしまう場合がある。
【0016】
このため、本発明のX線検査装置によれば、検査中に得られた合成信号と正常合成信号とに一定時間以上の差がなければ異常発生として判定しないため、遮蔽ノレンによって一時的に物品検出部における検出がされた場合でも、これを誤って手入れ等の異常発生として判定してしまうことを防止して、手入れや物品の搬送滞留等をより高精度に検出することができる。
【0017】
第7の発明に係るX線検査装置は、第1から第6の発明のいずれか1つに係るX線検査装置であって、複数の物品検出部は、物品が搬送される搬送路の両側にそれぞれ配置された、物品の搬送面に対して略平行な方向に光を照射する発光素子と、発光素子から照射される光を受光する受光素子と、を有している。
ここでは、物品検出部として、1組の受発光素子を複数備えている。
【0018】
これにより、例えば、物品の搬送路を横切るように、あるいは搬送路上から搬送面にかけて光を照射することで、筐体内への手入れや物品の搬送滞留を容易に検出することができる。
第8の発明に係るX線検査装置は、第1から第7の発明のいずれか1つに係るX線検査装置であって、判定部における判定結果が異常発生ありの場合には、X線の照射量を減らすように制御する制御部をさらに備えている。
【0019】
ここでは、判定部において異常発生ありとの判定がなされた場合には、X線の照射量を減少させるように制御する。
これにより、異常発生の原因が、装置の運転中における筐体内への手入れである場合でも、X線の照射量を減らすことで被爆量をできる限り少なくすることができる。なお、ここでのX線の照射量を減らすとは、X線の照射量を所定の照射量以下にする制御からX線の照射量を0にする制御まで含むものとする。
【0020】
第9の発明に係るX線検査装置は、第1から第8の発明のいずれか1つに係るX線検査装置であって、制御部は、判定部における判定結果が異常発生ありの場合には、物品の搬送を停止させる。
ここでは、判定部が異常発生と判定した場合には、物品の搬送を停止させる。
これにより、異常発生の原因が物品の搬送滞留である場合には、物品の搬送を停止させることで、筐体内における多数の物品の滞留を最小限にとどめることができる。
【0021】
第10の発明に係るX線検査装置は、第1から第9の発明のいずれか1つに係るX線検査装置であって、物品検出部は、搬入口と搬出口の双方に設けられており、判定部は、搬入口において検出された検出パターンに基づいて形成される合成信号と、搬出口において検出された検出パターンに基づいて形成される合成信号と、に基づいて異常発生の有無を判定する。
【0022】
ここでは、正常合成信号との比較に加えて、搬入口と搬出口とにおける検出パターンから形成される合成信号の差に基づいて異常発生の有無を判定する。
これにより、搬出入口において検出パターンから形成される合成信号に差が生じた場合には異常発生と判定することで、より高精度に異常発生の有無を判定することが可能になる。
【0023】
第11の発明に係るX線検査装置は、第1から第10の発明のいずれか1つに係るX線検査装置であって、複数の物品検出部は、30mm以下の間隔で、搬入口および搬出口の少なくともいずれか一方に配置されている。
ここでは、搬入口および/または搬出口に配置されている複数の物品検出部について、高精度な手入れの検出を可能にするために、人間の手の厚みを考慮して30mm以下の間隔で配置されている。
【0024】
これにより、複数の物品検出部同士の間隔が広すぎて検出不能な領域が形成されるという不具合の発生を防止して、より確実に高精度な検出を可能にできる。
第12の発明に係るX線検査装置は、筐体内を搬送される物品に対してX線を照射し、その透過量を検出して物品の検査を行うX線検査装置であって、物品検出部と、判定部とを備えている。物品検出部は、筐体に形成された物品の搬入口および搬出口の各開口において、開口の高さ方向および幅方向のいずれか一方に複数配置されている。判定部は、搬入口において検出された検出パターンに基づいて形成される合成信号と、搬出口において検出された検出パターンに基づいて形成される合成信号と、を比較して異常発生の有無を判定する。
【0025】
ここでは、搬入口に配置された複数の物品検出部によって検出された検出パターンに基づいて形成される合成信号と、搬出口に配置された複数の物品検出部によって検出された検出パターンに基づいて形成される合成信号と、を比較して、異なる場合には、これを筐体への手入れ、物品の搬送滞留等の異常発生として判定する。
このように、正常な場合には一致するはずの搬入出口における検出パターンの合成信号を基にして異常発生の有無を判定することで、容易に異常発生の判定を行うことが可能になる。
【0026】
また、搬入口、搬出口には、ともに複数の物品検出部が配置されており、これら複数の物品検出部における検出パターンから合成信号を形成し、これを比較して判定を行う。このため、搬入出口に各1個ずつ物品検出部を設けた従来のX線検査装置と比較して、より高精度に異常発生の有無を判定することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明のX線検査装置によれば、従来の1つの物品検出部によって異常発生の有無を判定していたX線検査装置では検出できなかった異常発生を検出することができるとともに、手入れだけでなく、物品の搬送滞留についても同様に検出して、より高精度な異常発生の判定を行うことが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明の一実施形態に係るX線検査装置について、図1〜図12(b)を用いて説明すれば以下の通りである。
[X線検査装置全体の構成]
本実施形態のX線検査装置10は、図1に示すように、食品等の商品の生産ラインにおいて品質検査を行う装置の1つである。X線検査装置10は、連続的に搬送されてくる商品に対してX線を照射し、商品を透過したX線量に基づいて商品に異物が混入しているか否かの検査を行う。
【0029】
X線検査装置10の被検査物である商品Gは、図2に示すように、前段コンベア60によりX線検査装置10に運ばれてくる。商品Gは、X線検査装置10において異物混入の有無が判断される。このX線検査装置10での判断結果は、X線検査装置10の下流側に配置される振分機構70に送信される。振分機構70は、商品GがX線検査装置10において良品と判断された場合には商品Gをそのまま正規のラインコンベア80へと送る。一方、商品GがX線検査装置10において不良品と判断された場合には、下流側の端部を回転軸とするアーム70aが搬送路を遮るように回動する。これにより、不良品と判断された商品Gを、搬送路から外れた位置に配置された不良品回収箱90によって回収することができる。
【0030】
X線検査装置10は、図1に示すように、主として、シールドボックス(筐体)11と、コンベア(搬送部)12と、遮蔽ノレン16と、センサ(物品検出部)17a,17bと、センサ(物品検出部)18a,18bと(図4〜6参照)、タッチパネル機能付きのモニタ(表示装置)26と、を備えている。そして、その内部には、図3に示すように、コンベア12、X線照射器(照射部)13、X線ラインセンサ(受光部)14、および図4に示す制御コンピュータ(制御部)20を備えている。
【0031】
〔シールドボックス〕
シールドボックス11は、商品Gの入口側と出口側の双方の面に、商品を搬出入するための搬入口11aと搬出口11bとを有している。このシールドボックス11の中に、コンベア12、X線照射器13、X線ラインセンサ14、制御コンピュータ(制御部、判定部)20などが収容されている。
【0032】
また、搬入口11aおよび搬出口11bは、図1に示すように、シールドボックス11の外部へのX線の漏洩を防止するために、遮蔽ノレン16によって塞がれている。この遮蔽ノレン16は、鉛を含むゴム製のノレン部分を有しており、商品が搬出入されるときには商品によって押しのけられる。
また、シールドボックス11の正面上部には、モニタ26の他、キーの差し込み口や電源スイッチが配置されている。
【0033】
〔コンベア〕
コンベア12は、シールドボックス11内において商品を搬送するものであって、図4に示す制御ブロックに含まれるコンベアモータ12fによって駆動される。コンベア12の搬送速度は、作業者が入力した設定速度になるように、制御コンピュータ20によるコンベアモータ12fのインバータ制御によって細かく制御される。
【0034】
また、コンベア12は、図3に示すように、コンベアベルト12a、コンベアフレーム12b、開口部12cおよびコンベアガイド(ガイド部)12dを有している。また、コンベア12は、シールドボックス11に対して取り外し可能な状態で取り付けられている。これにより、検査対象として食品等を取り扱う場合でも、シールドボックス11内を清潔に保つためにコンベアを取り外して頻繁に洗浄することができる。
【0035】
コンベアベルト12aは、無端状ベルトであって、ベルトの内側からコンベアフレーム12bによって支持されている。そして、コンベアモータ12fの駆動力を受けて回転することで、ベルト上に載置された物体を所定の方向に搬送する。
コンベアフレーム12bは、無端状のベルトの内側からコンベアベルト12aを支持するとともに、コンベアベルト12aの内側の面に対向する位置に搬送方向に対して直交する方向に長く開口した開口部12cを有している。
【0036】
開口部12cは、コンベアフレーム12bにおける、X線照射器13とX線ラインセンサ14とを結ぶ線上に形成されている。換言すれば、開口部12cは、コンベアフレーム12bにおけるX線照射器13からのX線照射領域に形成されている。これにより、商品Gを透過したX線は、コンベアベルト12aを透過し、コンベアフレーム12bによって遮蔽されることなくX線ラインセンサ14において検出される。
【0037】
コンベアガイド12dは、商品Gの搬送路を形成するコンベアベルト12aの両側に備えており、コンベア12上を移動する物品を搬送路から逸脱しないように物品を誘導する。また、コンベアガイド12dは、図3に示すように、コンベア12の下方に配置されたX線ラインセンサ14上を横切ってX線ラインセンサ14に対して平面視で交差するように、換言すれば、X線照射器13から照射されたX線の照射領域に配置されている。このため、コンベアガイド12dによってX線を遮られたX線ラインセンサ14に含まれるいくつかの画素14aにおいて、コンベアガイド12dがなければ照射量と同等の検出量となるはずが、照射量と比べて非常に少量のX線しか検出されなくなっている。さらに、コンベアガイド12dは、コンベア12ごとシールドボックス11から着脱可能な状態で取り付けられている。このため、検査対象として食品等を取り扱う場合でも、コンベア12ごと取り外して洗浄することでシールドボックス11内を常に清潔に保つことができる。
【0038】
〔X線照射器〕
X線照射器13は、図3に示すように、コンベア12の上方に配置されており、コンベアフレーム12bに形成された開口部12cを介して、コンベア12の下方に配置されたX線ラインセンサ(受光部、ラインセンサ)14に向かって扇形形状にX線を照射する(図3の斜線部参照)。
【0039】
なお、X線照射器13から照射されるX線は、図3に示すように、X線ラインセンサ14の両端の画素14aを含む領域にかけて照射される。
〔X線ラインセンサ〕
X線ラインセンサ14は、コンベア12の下方に配置されており、商品Gやコンベアベルト12aを透過してくるX線を検出する。このX線ラインセンサ14は、コンベア12による搬送方向に直交する向きに一直線に水平配置された複数の画素を含んでいる。
【0040】
〔モニタ〕
モニタ26は、フルドット表示の液晶ディスプレイである。また、モニタ26は、タッチパネル機能を有しており、初期設定や不良判断に関するパラメータ入力などを促す画面を表示する。
〔制御コンピュータ〕
制御コンピュータ20は、図4に示すように、CPU21とともに、このCPU21によって制御される主記憶部としてROM22、RAM23、およびCF(コンパクトフラッシュ(登録商標)、記憶部)25を搭載している。CF25には、後述するシールドボックス11内への手入れや商品Gの搬送滞留等の異常発生の有無を判定するための正常時における合成信号のデータ25aや、商品Gの検査画像や検査結果を記憶する検査結果ログファイル25bなどが収納されている。
【0041】
また、制御コンピュータ20は、モニタ26に対するデータ表示を制御する表示制御回路、モニタ26のタッチパネルからのキー入力データを取り込むキー入力回路、図示しないプリンタにおけるデータ印字の制御等を行うためのI/Oポート、外部入力端子としてのUSB24等を備えている。
CPU21、ROM22、RAM23、CF25等の記憶部は、アドレスバス,データバス等のバスラインを介して相互に接続されている。
【0042】
また、制御コンピュータ20は、コンベアモータ12f、ロータリエンコーダ12g、X線照射器13、X線ラインセンサ14等と接続されている。
ロータリエンコーダ12gは、コンベアモータ12fに装着されており、コンベア12の搬送速度を検出して制御コンピュータ20に対して送信する。
X線照射器13は、制御コンピュータ20によって、X線の照射タイミングやX線照射量、X線照射禁止等を制御される。
【0043】
X線ラインセンサ14は、各画素において検出されたX線量に基づく信号値を制御コンピュータ20に対して送信する。
センサ17a,17bおよびセンサ18a,18bは、被検査物である商品Gの通過を検出するためにコンベアを挟んで配置される一対の発光素子と受光素子とから構成されており、受光素子において検出される信号を制御コンピュータ20に対して送信する。
【0044】
〔センサ〕
センサ17a,17bは、図5および図6に示すように、シールドボックス11の搬入口11a側に配置された一組の受発光素子17aa,17abおよび受発光素子17ba,17bbを有している。このセンサ17a,17bは、運転開始とともに発光素子17aa,17baから照射される光を受光素子17ab,17bbにおいて受光している。そして、コンベア12によって搬送される商品Gが搬入口11aにおける所定の検出位置を通過すると、発光素子17aa,17baから照射された光を受光素子17ab,17bbにおいて検出できなくなる。このため、制御コンピュータ20では、受光素子17ab,17bbにおける未受光状態を商品Gの通過として検出する。
【0045】
センサ18a,18bは、シールドボックス11の搬出口11b側に配置された一組の受発光素子18aa,18abおよび受発光素子18ba,18bbを有している。このセンサ18a,18bは、センサ17a,17bと同様に、運転開始とともに発光素子18aa,18baから照射される光を受光素子18ab,18bbにおいて受光する。そして、商品Gが搬出口11bにおける所定の検出位置を通過すると、発光素子18aa,18baから照射された光を受光素子18ab,18bbにおいて検出できなくなる。このため、制御コンピュータ20では、受光素子18ab,18bbにおける未受光状態を商品Gの通過として検出する。
【0046】
なお、センサ17a〜18bは、上述した制御コンピュータ20に対して、各受光素子17ab,17bb,18ab,18bbにおける受光状態を示すON/OFF信号を送信する。制御コンピュータ20は、センサ17a〜18bから受信したON/OFF信号に基づいて合成信号を生成し、CF25に記憶されている正常合成信号(図8(a)等参照)と比較することで、シールドボックス11内への手入れ等の異常発生の有無を判定する。なお、制御コンピュータ20における異常発生の有無の判定については、後段にて詳述する。
【0047】
また、センサ17aは、搬入口11a側におけるコンベア12の両側であって、コンベア12によって搬送される商品Gを検出できる高さ位置に、発光素子17aa、受光素子17abを配置している。センサ18aは、搬出口11b側におけるコンベア12の両側であって商品Gを検出できる高さ位置に、発光素子18aa、受光素子18abを配置している。一方、センサ17bは、搬入口11a側におけるコンベア12の両側であって、商品Gを検出できる高さ位置であってセンサ17aよりも高い位置に、発光素子17ba、受光素子17bbを配置している。センサ18bは、搬出口11b側におけるコンベア12の両側であってセンサ18aよりも高い位置に、発光素子18ba、受光素子18bbを配置している。
【0048】
各発光素子17aa,17ba,18aa,18baからコンベア12の搬送面に対して平行に照射された光が、コンベア12を挟んで反対側に配置された対応する受光素子17ab,17bb,18ab,18bbにおいてそれぞれ検出される。そして、受光素子17ab〜18bbにおける受光状態は、ON/OFF信号として制御コンピュータ20(図4参照)へ送信される。なお、受光素子17ab,17bb,18ab,18bbにおいて受光状態になるとON信号が送信され、未受光状態ではOFF信号が送信される。
【0049】
[X線検査装置による異常発生の検出]
本実施形態のX線検査装置10では、上述したような構成を用いてシールドボックス11内への手入れや、シールドボックス11における商品Gの搬送滞留等の異常発生を検出する。
〔搬入口側あるいは搬出口側のセンサによる検出結果に基づく異常発生の検出〕
ここではまず、搬入口11a側のセンサ17a,17bだけを用いて異常発生の有無を判定する方法について説明する。なお、搬出口11b側のセンサ18a,18bを用いて異常発生の有無を判定する場合も以下と同様の方法により異常発生の有無を判定することが可能である。
【0050】
<正常合成信号の生成>
具体的には、検査開始前の段階において、コンベア12によって手入れや搬送滞留のない状態で側面視において図7(a)に示す長方形状の商品Gを搬送し、例えば、センサ17a,17bから送信される図8(a)に示すような各ON/OFF信号(PH,PL)を制御コンピュータ20が受信する。なお、「PH」はセンサ17bから受信したON/OFF信号、「PL」はセンサ17aから受信したON/OFF信号を示している(以下同じ)。ここで、制御コンピュータ20は、受信した2つのON/OFF信号(PH,PL)を基にして、図8(a)に示す3つの合成信号を生成する。
【0051】
第1の合成信号は、高所のセンサ17bから送信されたPHと低所のセンサ17aから送信されたPLとの差(PH∩PL)をとって形成される。例えば、図7(a)に示すような形状の商品Gの場合には、図8(a)に示すように、PHとPLとは一致するためPH∩PLは直線状の波形になる。
第2の合成信号は、PHとPLとの和(PH+PL)をとって形成される。例えば、図7(a)に示すような形状の商品Gの場合には、図8(a)に示すように、PHとPLとは一致するためPH+PLはPH、PLと同じ波形になる。
【0052】
第3の合成信号は、上記第1の合成信号と第2の合成信号とを乗じて形成される。例えば、図7(a)に示すような形状の商品Gの場合には、図8(a)に示すように、第1の合成信号が直線状であるため、第3の合成信号についても直線状になる。
本実施形態のX線検査装置10では、このようにして制御コンピュータ20が形成した合成信号のうち、第3の合成信号を正常合成信号としてCF25へ記憶する。
【0053】
<検査中における合成信号の生成>
検査が開始されると、コンベア12によって商品Gが連続して搬送される。そして、センサ17a,17bが、受光素子17ba,17bbにおいて未受光状態となることで商品Gの通過を検出する。このとき、高所側のセンサ17bの検出範囲に作業者による手入れがあった場合には、図8(b)に示すように、PHが商品Gの検出時間よりも長い間ON状態となる。このため、第1の合成信号(PH∩PL)は、図8(b)に示すように、直線状ではなく、手入れがあった部分だけ異なるためOFF信号となる。この結果、第3の合成信号((PH∩PL)*(PH+PL))は、図8(b)の最下段に示されているように、高所側のセンサ17bの検出範囲に手入れがあった部分だけがON信号となる。
【0054】
ここで、制御コンピュータ20は、第3の合成信号として得られた図8(b)の最下段に示す信号を、CF25に記憶された正常合成信号と比較する。このとき、第2の合成信号(PH+PL)におけるONとなるタイミングに併せて、正常合成信号との比較が行われる。つまり、第2の合成信号は、通常、商品Gの通過サイクルを示しており、正常合成信号と検査開始後において得られた第3の合成信号との比較を開始するタイミングと比較を終了するタイミングとを決定するためのトリガーとなる。ここで、正常合成信号は、上述したように直線状であるから、高所側のセンサ17bの検出範囲内への手入れがあった部分だけがON信号となる第3の合成信号と異なる。この結果、制御コンピュータ20は、第3の合成信号がCF25に記憶された正常合成信号と異なることから、これを異常発生として判定し、X線照射器13から照射されるX線の照射量を所定量以下(照射量0を含む)に減少させるとともに、コンベア12による搬送を停止させる。これにより、異常発生が手入れである場合には、シールドボックス11内へ手を入れた作業者の被爆量を最小限に抑えることができる。一方、異常発生がシールドボックス11内における商品Gの搬送滞留である場合には、コンベア12による搬送を停止させることで、滞留する商品Gの増大を最小限に抑えることができる。
【0055】
なお、図8(c)に示すように、低所側のセンサ17aによる検出範囲に手入れがあった場合も、上記と同様に異常発生として検出することができる。
また、商品Gが側面視において図7(b)に示す高所と低所とで長さが異なる台形形状である場合には、図9(a)の最下段に示す第3の合成信号を正常合成信号としてCF25へ記憶する。そして、高所側のセンサ17aの検出範囲内へ手入れがあった場合には、図9(b)に示すように、第1〜第3の合成信号が生成され、第3の合成信号を、第2の合成信号によって得られる比較タイミングに併せて正常合成信号と比較する。これにより、上記と同様に異常発生の有無を検出することができる。低所側のセンサ17aの検出範囲内において手入れがあった場合も、図9(c)に示すように、第1〜第3の合成信号が生成され、以下同様にして異常発生の有無が検出される。
【0056】
さらに、商品Gが側面視において図7(c)に示す高所と低所とで商品Gの検出タイミングが異なる平行四辺形状である場合には、図10(a)の最下段に示す第3の合成信号を正常合成信号として、CF25へ記憶する。そして、高所側のセンサ17aの検出範囲内へ手入れがあった場合には、図10(b)に示すように、第1〜第3の合成信号が生成され、第3の合成信号を、第2の合成信号によって得られる比較タイミングに併せて、正常合成信号と比較する。これにより、上記と同様に異常発生の有無を検出することができる。低所側のセンサ17aの検出範囲内において手入れがあった場合も、図10(c)に示すように、第1〜第3の合成信号が生成され、以下同様にして異常発生の有無が検出される。
【0057】
〔搬入側および搬出側のセンサによる検出結果に基づく異常発生の検出〕
次に、搬入口11a側のセンサ17a,17bと、搬出口11b側のセンサ18a,18bと、において得られる合成信号同士を比較して異常発生の有無を検出する方法について、図11(a)および図11(b)を用いて説明すれば以下の通りである。
制御コンピュータ20は、上述したような方法により、搬入口11a側のセンサ17a,17bにおいて検出される信号(PH1,PL1)に基づいて、図11(a)に示すように、第3の合成信号を生成する。一方、搬出口11b側についても、コンベア12の搬送速度と、搬入出側のセンサ17a,18a間の距離とに応じた時間をシフトさせてセンサ18a,18bにおいて信号(PH2,PL2)を検出する。そして、この検出信号(PH2,PL2)に基づいて、図11(b)に示すように、第3の合成信号を生成する。
【0058】
そして、これら2つの第3の合成信号同士を比較して、異なる部分があるか否かを確認する。そして、図11(a)および図11(b)に示すように、異なる部分がある場合には、搬入口11aあるいは搬出口11b側において手入れがあったものと考えられるため、これを異常発生として判定する。一方、、図12(a),図12(b)に示すように、異なる部分がある場合には、シールドボックス11内で商品Gの搬送滞留が発生したものと考えられるため、これを異常発生として判定する。
【0059】
この場合でも、複数のセンサにおいて得られた検出信号から合成信号を生成して、この合成信号同士の比較により異常発生の有無を検出している。このため、1つのセンサにおける検出信号に基づいて判定を行う場合よりも高精度な判定を行うことができる。
なお、異常発生と判定後における制御コンピュータ20によるX線照射器13およびコンベア12の制御については上記と同様である。
【0060】
[X線検査装置の特徴]
(1)
本実施形態のX線検査装置10では、図5および図6に示すように、搬入口11aおよび搬出口11bに、物品を検出するための複数のセンサ17a,17b,18a,18bを備えている。そして、例えば、図8(a)に示すように、物品の検査開始前の段階においてサンプルの商品を搬送しながら物品検出を行い、制御コンピュータ20が各センサ17a,17bにおける検出信号PH,PLを基にして上述した第1〜第3の合成信号を生成する。次に、手入れ等の異常発生の有無を検出する際の基準となる正常合成信号として、PHとPLとの排他的論理和である第3の合成信号をCF25に記憶させる。物品の検査開始後には、コンベア12によって搬送される物品を各センサ17a,17b等で検出し、図8(a)と同様に、制御コンピュータ20が第1〜第3の合成信号を生成する。ここで、CF25に記憶された正常合成信号と、検査開始後に検出されたPH,PLから生成される第3の合成信号とを比較して、異なる部分がある場合には、これを異常発生として判定する。例えば、図8(b)および図8(c)に示すように、高所側のセンサ17bあるいは低所側のセンサ17aの検出領域に手入れがあった場合には、制御コンピュータ20によって生成される第3の合成信号と、正常合成信号とには一致しない部分が出てくる。この場合、シールドボックス11内への手入れや商品Gの搬送滞留等の異常発生があったものと判定される。
【0061】
このように、複数のセンサ17a,17b等を用いて、個々で検出された信号を基にした合成信号を生成し、これを異常発生のない状態で生成した正常合成信号と比較することで、容易かつ高精度に異常発生の有無を判定することができる。そして、複数のセンサにおいて検出された信号をそのまま正常時における信号と比較するのではなく、検出信号を合成して生成される合成信号と、正常時における信号を合成して得られる正常合成信号とを比較して判定を行っているため、1つのセンサにおける検出信号と正常信号とを比較して判定を行うよりも、検出可能領域が広くなることから、高精度な判定を行うことが可能になる。
【0062】
(2)
本実施形態のX線検査装置10では、異常発生の有無の判定を行うための材料として、図8(a)〜図8(c)等に示すように、第1〜第3の合成信号を生成して使用している。
第1の合成信号は、センサ17a,17bにおける検出信号(PH,PL)のEXOR信号として生成される。第2の合成信号は、センサ17a,17bにおける検出信号(PH,PL)のOR信号として生成される。第3の合成信号は、第1の合成信号と第2の合成信号とを乗じて得られる排他的論理和として生成される。
【0063】
これらの第1〜第3の合成信号のうち、第2の合成信号を正常合成信号との比較を行うタイミングを決定するトリガーとして使用し、第3の合成信号と正常合成信号とを比較することで、容易に異常発生の有無を判定することができる。
(3)
本実施形態のX線検査装置10では、異常発生の有無の判定の基準となる正常合成信号を、商品Gの検査を開始する前の段階において予め生成し、CF25に記憶させている。
【0064】
これにより、検査開始後には、すでにCF25に記憶されている正常合成信号と、検査中に検出される信号から生成される合成信号とを比較するだけで、すぐに異常発生の有無の判定を行うことができる。
(4)
本実施形態のX線検査装置10では、合成信号を生成するための検出信号をえるための物品検出部として、センサ17a,17b等を用いている。例えば、センサ17a,17bは、2組の発光素子17aa,17baと受光素子17ab,17bbとを有している。そして、発光素子17aa,17baは、コンベア12の搬送面に略並行な方向に光を照射する。一方、受光素子17ab,17bbは、発光素子17aa,17baから照射された光を受光する。
【0065】
これにより、コンベア12の搬送面上に載置された商品Gを確実に検出して、シールドボックス11内における手入れや商品Gの搬送滞留等の異常発生の有無の判定を行うことができる。
(5)
本実施形態のX線検査装置10では、制御コンピュータ20が、異常発生ありと判定すると、X線照射器13によるX線照射量を所定量以下に減少させる。
【0066】
これにより、シールドボックス11内へ手入れを検出した場合には、X線照射量を減らすように制御することで、手入れをした人に対する被爆量を最小限に抑えることができる。
(6)
本実施形態のX線検査装置10では、制御コンピュータ20が、異常発生ありと判定すると、コンベア12が商品Gの搬送を停止する。
【0067】
これにより、シールドボックス11内で商品Gが引っかかる等して搬送滞留を検出した場合には、コンベア12によるそれ以降の商品Gの搬送を停止させるように制御することで、搬送滞留する商品Gの数を最小限に抑えることができる。
(7)
本実施形態のX線検査装置10では、制御コンピュータ20が、搬入口11a側のセンサ17a,17bにおける検出信号により生成される合成信号と、搬出口11b側のセンサ18a,18bにおける検出信号により生成される合成信号と、を比較して、一致しない部分がある場合に異常発生ありと判定する。
【0068】
通常、搬入口11aにおける検出結果と、搬出口11bにおける検出結果とは、搬送速度と搬入出口間の距離とから算出される時間だけシフトして比較すると一致するはずである。しかし、シールドボックス11内への手入れや、商品Gの搬送滞留が発生すると、搬入出口11a,11bにおける検出結果が一致しなくなる。
そこで、本実施形態のX線検査装置10では、搬入口11aにおけるセンサ17a,17bによる検出結果と、搬出口11bにおけるセンサ18a,18bによる検出結果とから生成される合成信号同士を比較することで、異常発生の有無を判定することもできる。
【0069】
これにより、正常合成信号との比較による判定に加えて、搬入出口11a,11bにおける検出結果から生成される合成信号同士を比較して判定を行うことで、より正確かつ高精度な判定を行うことができる。
(8)
本実施形態のX線検査装置10では、搬入口11a側のセンサ17aとセンサ17bとが、30mm以下の間隔になるように配置されている。また、搬出口11b側のセンサ18aとセンサ18bとの間も、30mm以下になるように配置されている。
【0070】
これにより、人間の手のひらの厚みに相当する30mm以下の間隔で複数のセンサを配置することで、シールドボックス11内への手入れを確実に検出することができる。
[他の実施形態]
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0071】
(A)
上記実施形態では、正常合成信号と検査中に得られた第3の合成信号との比較、あるいは搬入口11a側のセンサ17a,17bにおいて検出された信号に基づいて生成された第3の合成信号と搬出口11b側のセンサ18a,18bにおいて検出された信号に基づいて生成された第3の合成信号との比較において、異なる部分がある場合には制御コンピュータ20が即座に異常発生として判定する例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0072】
例えば、比較された第3の合成信号の異なる部分が、一定時間以上継続している場合にのみ異常発生として判定してもよい。
ここで、商品Gが搬入口11a、搬出口11bを通過する際には、商品Gは、図13に示すように、搬入口11aおよび搬出口11bの付近に取り付けられている遮蔽ノレン16を押しのけるようにして通過する。このため、同じく搬入口11aおよび搬出口11b付近に配置されているセンサ17a,17bおよびセンサ18a,18bとの位置関係によっては、各センサ17a〜18bが遮蔽ノレン16を短時間だけ検出してしまうことが考えられる。
【0073】
そこで、このような遮蔽ノレン16を検出して異常発生と判定されることを防止することができるため、判定不良を防止してより高精度な判定を行うことができる。
なお、このように時間の下限値を設けた場合には、短時間の手入れの検出が不能になるが、手入れが所定時間以下の短時間であった場合にはすでに手入れが解消されており、被爆線量も少ないと考えられるため、安全性の低下にはつながらないと思われる。
【0074】
(B)
上記実施形態では、搬入口11aおよび搬出口11bの双方にセンサ17a,17bおよびセンサ18a,18bを配置している例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、搬入口11a,搬出口11bのいずれか一方に複数のセンサが備えられている場合でも、その複数のセンサにおいて検出された検出データから合成信号を作成して、異常発生の有無を判定することができ、上記と同様の効果を得ることができる。
【0075】
(C)
上記実施形態では、搬入口11a、搬出口11bに、それぞれ2つのセンサ17a,17bおよびセンサ18a,18bを配置した例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、搬入口11aおよび搬出口11bの少なくともいずれか一方に、3つ以上のセンサを配置してもよい。この場合には、手入れの可能性がある空間に多数のセンサを配置することができるため、より高精度な検出が可能になる。
【0076】
なお、センサを3つ以上配置した場合における合成信号については、例えば、センサが3つ(Ph,Pm,Pl)の場合、PhとPmとのEXOR信号、PmとPlとのEXOR信号を生成し、Ph,Pm,PlそれぞれのOR信号を生成する。そして、PhとPmとのEXOR信号、PmとPlとのEXOR信号と上記各OR信号とのAND信号を生成して、両者の比較から異常発生の有無を判定することができる。
【0077】
(D)
上記実施形態では、センサ17a,17bおよびセンサ18a,18bとして、一組の受発光素子を用いた例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、一組の受発光素子の代替として反射型の光電管や、静電容量式センサを用いることもできる。この中でも、静電容量式センサを用いた場合には、人の手がセンサの検出位置に入ってくると誘電率が変化する性質を利用して検出することができ、また検出範囲は光を照射するセンサと比べて広いという利点がある。
【0078】
(E)
上記実施形態では、各センサにおいて得られた信号から第1〜第3の合成信号を生成する例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、各センサにおいて得られた信号の排他的論理和として第3の合成信号だけを生成して判定を行ってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明のX線検査装置は、シールドボックス内への手入れや商品の搬送滞留等の異常の発生を高精度に検出することが可能になるという効果を奏することから、X線検査装置に限らず各種装置の安全装置として広く適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明の一実施形態に係るX線検査装置の外観斜視図。
【図2】X線検査装置の前後の構成を示す図。
【図3】X線検査装置のシールドボックス内部の簡易構成図。
【図4】制御コンピュータのブロック構成図。
【図5】シールドボックス内部を示す側面図。
【図6】シールドボックス内部を示す平面図。
【図7】(a)〜(c)は、検査対象となる商品の形状の一例を示す図。
【図8】(a)は、図7(a)に示す形状の商品を検査する場合にセンサによって検出される正常状態における信号とその合成信号とを示す図。(b),(c)は、手入れがあった場合におけるセンサによって検出される信号とその合成信号を示す図。
【図9】(a)は、図7(b)に示す形状の商品を検査する場合にセンサによって検出される正常状態における信号とその合成信号とを示す図。(b),(c)は、手入れがあった場合におけるセンサによって検出される信号とその合成信号を示す図。
【図10】(a)は、図7(c)に示す形状の商品を検査する場合にセンサによって検出される正常状態における信号とその合成信号とを示す図。(b),(c)は、手入れがあった場合におけるセンサによって検出される信号とその合成信号を示す図。
【図11】(a),(b)は、搬入口および搬出口にそれぞれ配置された各センサによる検出信号と、その合成信号とを示す図。
【図12】(a),(b)は、搬入口および搬出口にそれぞれ配置された各センサによる検出信号と、その合成信号とを示す図。
【図13】シールドボックス内部における遮蔽ノレンをセンサが検出する場合の例を示す側面図。
【符号の説明】
【0081】
10 X線検査装置
11 シールドボックス
11a 搬入口
11b 搬出口
12 コンベア
12a コンベアベルト
12b コンベアフレーム
12c 開口部
12d コンベアガイド
12f コンベアモータ
12g ロータリエンコーダ
13 X線照射器(照射部)
14 X線ラインセンサ
16 遮蔽ノレン
20 制御コンピュータ
21 CPU
22 ROM(記憶部)
23 RAM(記憶部)
24 USB(外部接続端子)
25 CF(コンパクトフラッシュ(登録商標)、記憶部)
26 モニタ
G 商品
PH 検出信号
PL 検出信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体内を搬送される物品に対してX線を照射し、その透過量を検出して前記物品の検査を行うX線検査装置であって、
前記筐体に形成された前記物品の搬入口および搬出口の少なくとも一方の開口において、前記開口の高さ方向および幅方向のいずれか一方に複数配置された物品検出部と、
前記複数の物品検出部による前記物品の検出パターンを合成して形成される正常合成信号を予め記憶する記憶部と、
前記正常合成信号と、検査開始中に得られる前記複数の物品検出部における前記物品の検出パターンを合成して形成される合成信号と、を比較して異常発生の有無を判定する判定部と、
を備えているX線検査装置。
【請求項2】
前記正常合成信号および前記合成信号は、前記複数の物品検出部における検出パターンのEXOR信号を含む、
請求項1に記載のX線検査装置。
【請求項3】
前記正常合成信号および前記合成信号は、前記複数の物品検出部における検出パターンのOR信号を含む、
請求項1または2に記載のX線検査装置。
【請求項4】
前記正常合成信号および合成信号は、前記複数の物品検出部における検出パターンのEXOR信号と、前記複数の物品検出部における検出パターンのOR信号とを乗じて得られる信号を含む、
請求項1から3のいずれか1項に記載のX線検査装置。
【請求項5】
前記正常合成信号は、所定の物品を搬送して得られた前記物品の検出パターンに基づいて、検査開始前に前記記憶部に記憶される、
請求項1から4のいずれか1項に記載のX線検査装置。
【請求項6】
前記判定部は、前記正常合成信号と前記合成信号との比較において、一定時間以上の差が生じている場合に異常発生と判定する、
請求項1から5のいずれか1項に記載のX線検査装置。
【請求項7】
前記複数の物品検出部は、
前記物品が搬送される搬送路の両側にそれぞれ配置された、
前記物品の搬送面に対して略平行な方向に光を照射する発光素子と、
前記発光素子から照射される光を受光する受光素子と、
を有する、
請求項1から6のいずれか1項に記載のX線検査装置。
【請求項8】
前記判定部における判定結果が異常発生ありの場合には、前記X線の照射量を減らすように制御する制御部をさらに備えた、
請求項1から7のいずれか1項に記載のX線検査装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記判定部における判定結果が異常発生ありの場合には、前記物品の搬送を停止させる、
請求項1から8のいずれか1項に記載のX線検査装置。
【請求項10】
前記物品検出部は、前記搬入口と前記搬出口の双方に設けられており、
前記判定部は、前記搬入口において検出された検出パターンに基づいて形成される合成信号と、前記搬出口において検出された検出パターンに基づいて形成される合成信号と、に基づいて異常発生の有無を判定する、
請求項1から9のいずれか1項に記載のX線検査装置。
【請求項11】
前記複数の物品検出部は、50mm以下の間隔で、前記搬入口および前記搬出口の少なくともいずれか一方に配置されている、
請求項1から10のいずれか1項に記載のX線検査装置。
【請求項12】
筐体内を搬送される物品に対してX線を照射し、その透過量を検出して前記物品の検査を行うX線検査装置であって、
前記筐体に形成された前記物品の搬入口および搬出口の各開口において、前記開口の高さ方向および幅方向のいずれか一方に複数配置された物品検出部と、
前記搬入口において検出された検出パターンに基づいて形成される合成信号と、前記搬出口において検出された検出パターンに基づいて形成される合成信号と、を比較して異常発生の有無を判定する判定部と、
を備えているX線検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2006−71514(P2006−71514A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−256466(P2004−256466)
【出願日】平成16年9月3日(2004.9.3)
【出願人】(000147833)株式会社イシダ (859)
【Fターム(参考)】