説明

X線検査装置

【課題】再検査と通常検査を並行して行いながら、かつ、確実に異物の混入した商品を排除し得るX線検査装置を提供する。
【解決手段】複数個の内容物qを包材で包装した商品Mを搬送しながら、商品MにX線Lを照射して商品Mの検査を行う通常検査部2と、前記通常検査部2と並行に設けられ、前記通常検査にて不良と判断された商品Mの内容物qを再検査する再検査部3とを備えたX線検査装置であって、前記再検査部3は前記通常検査部2よりも合否の基準となる閾値が小さな値に設定されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送される物品の検査を行うX線検査装置および検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ウインナーやチキンナゲットのように複数個の内容物を包材で包装した商品を検査する場合、不合格品と判定された商品は破袋され、複数個の内容物のうちから不良品を特定して排除し、良品のみを再包装するという工程をたどる。そのため、従来のX線検査装置を用いて、かかる商品の再検査は、通常の商品の検査を終えた後に、複数の内容物を個々に別工程において再検査する。したがって、検査を完了するのに多くの時間がかかっていた。
【0003】
上記の問題を解決するためのX線検査装置が提案されている(たとえば、特許文献1参照。)。かかる装置では通常検査と再検査とを並行して行えるから、検査時間を短縮することができる。また、X線源や検出部を共通化しているので、設備コストを抑えることができる。
【0004】
【特許文献1】特開平1−254848号 (第2頁−第3頁,第2図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、この装置では以下のような問題がある。
1)再検査時に、通常検査と同様に複数の物品をまとめて検査するので、個々の物品についてどれが不良品であるか特定することができない。そのため、複数個の物品を包装した商品の場合には、不良品および良品の双方を含めた包装単位でしか排除することができない。
2)再検査においては、物品が通る経路の幅を狭めているだけで、X線の強度や合否の判定基準となる閾値の設定などの検査条件が、通常検査と同等な条件であるから、再検査の検査精度は通常検査と同等である。一方、X線検査においては異物の混入方向などによって検査結果が変わる場合もあるので、再検査にあっては、通常検査と同等の条件にしたのでは、再検査で全て合格となる場合があり、再検査の意味がない。
【0006】
したがって、本発明の目的は、再検査と通常検査を並行して行いながら、かつ、確実に異物の混入した商品を排除することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本第1発明の検査装置は、物品を搬送しながら、物品にX線を照射して物品の検査を行う通常検査部と、前記通常検査部と並行に設けられ、前記通常検査にて不良と判断された物品を再検査する再検査部とを備えたX線検査装置であって、前記再検査部は前記通常検査部よりも合否の基準となる閾値が小さな値に設定されていることを特徴とする。
【0008】
一方、本第2発明の装置は、物品を搬送する搬送手段と、前記物品が搬送される空間を搬送方向に直交する幅方向に分けて通常検査部と再検査部とに区画する仕切り手段と、前記通常検査部および再検査部を搬送される物品にX線を照射するX線源と、前記物品を透過したX線を検出するラインセンサと、前記仕切り手段によって区画された領域に応じたラインセンサの部位ごとに設定された第1および第2の閾値を記憶する記憶部と、前記第1の閾値と前記通常検査部における検出値とを比較して第1の合否判定を行うと共に、前記第1の閾値よりも小さな値に設定された第2の閾値と再検査部における検出値とを比較して第2の合否判定を行う制御手段とを備えている。
【0009】
本発明の検査方法は、これらの装置を用い、複数個の内容物が包材で包装された商品を前記通常検査部に供給して通常の検査を行う工程と、前記通常の検査で不合格と判定された不合格品の包装を破袋する工程と、前記不合格品の内容物を搬送方向に互いに離間させた状態で前記再検査部に供給して再検査を行う工程とを備えていることを特徴とする。
【0010】
本発明においては、再検査における合否基準の閾値が小さな値に設定されているので、通常検査において不良品が存在していると判断された場合に、異物の姿勢の変化により検出値にバラツキが生じても、再検査において当該不良品の検出漏れの生じるおそれがない。
【0011】
本発明において、「合否の基準となる閾値が小さな値に設定されている」とは、通常検査部よりも再検査部の方が合格基準値が厳しいことを意味する。
【実施例1】
【0012】
以下、本発明の一実施例を図面にしたがって説明する。
図1に示すように、物品のX線検査装置1は、コンベヤ(搬送手段)5および光学系20を備えている。前記光学系20は、X線源21およびラインセンサ22を備えている。前記X線源21はX線Lを発生させ、該X線Lをラインセンサ22に向って照射する。
【0013】
コンベヤ5の搬送面51の上方には、樹脂板(仕切り手段)7が設けられ、物品が搬送される空間を搬送方向Yに直交する幅方向Dに分けて通常検査部2と再検査部3とに区画している。前記通常検査部2においては、複数個の内容物(物品)qを包材で包装した商品(物品)Mが搬送される。一方、前記再検査部3には、前記商品Mを破袋して取り出された内容物qが個々に(搬送方向Yに互いに離間させた状態で)搬送される。
【0014】
前記X線源21は、通常検査部2および再検査部3をそれぞれ搬送される商品Mおよび内容物qの双方に対してX線Lを照射する。前記ラインセンサ22は前記通常検査部2および前記再検査部3に跨がるようにこれらの下方に配設されており、商品Mおよび内容物qを透過したX線Lを検出する。
なお、前記通常検査部2および前記再検査部3の下流には、不良品をラインアウトさせるための振り分け装置9a、9bがそれぞれ設けられている。
【0015】
図2に示すように、前記ラインセンサ22は多数の検出素子Si (i=1〜nの自然数)を概ね直線状に並べて形成されている。前記多数の検出素子Si のうち、1番目からm番目までのm個の第1検出素子S1 〜Sm が前記通常検査部2に対応する位置に配置され、商品Mを透過したX線Lを検出する。一方、前記多数の検出素子Si のうち(m+c+1)番目からn番目までの(n−(m+c))個の第2検出素子Sm+c+1 〜Sn が前記再検査部3に対応する位置に配置され、内容物qを透過したX線Lを検出する。
なお、(m+1)番目の検出素子Sm+1 から(m+c)番目の検出素子Sm+c までのc個の第3検出素子は、樹脂板7に対応する位置に配置されている。
【0016】
つぎに、X線検査装置の制御の構成について説明する。
図3(a)に示すように、X線検査装置1はマイコン(制御手段)10を有している。マイコン10には、前記X線源21、ラインセンサ22およびローカル制御装置25が、図示しないインターフェイスを介してそれぞれ接続されている。前記ローカル制御装置25は、コンベヤ5の運転や前記振り分け装置9a、9bなどの動作を制御する。
【0017】
前記マイコン10はCPU11およびメモリ(記憶部)12を備えている。
前記メモリ12は閾値記憶部12aを備えている。図3(b)に示すように、前記閾値記憶部12aには、前記第1検出素子S1 〜Sm に対して設定された第1閾値および前記第2検出素子Sm+c+1 〜Sn に対して設定された第2閾値が予め記憶されている。前記第2閾値は、前記第1閾値よりも小さな値に設定されている。
【0018】
ここで、前記第3検出素子Sm+1 〜Sm+c 上には、図2に示すように、商品Mや内容物qが通過しないので、第3検出素子Sm+1 〜Sm+c に対しては閾値を設定せず、かつ、後述する合否判定の際には第3検出素子Sm+1 〜Sm+c からの検出値は無視される。
【0019】
前記CPU11は、前記ラインセンサ22の検出素子Si の検出値に対して以下のようにして、商品Mおよび内容物qの合否判定処理を行う。
(1) 前記通常検査部2における検出値、つまり第1検出素子S1 〜Sm の検出値と前記第1閾値とを比較することで、商品Mに異物が付着ないし混入しているか否かの第1の合否判定を行う。前記第1閾値よりも前記第1検出素子S1 〜Sm の検出値が小さな値である場合(X線の透過量が小さい場合)には、当該商品Mを不合格とし、前記振り分け装置9aに振り分け信号を送信する。
(2) 上記第1の合否判定と並行して、前記再検査部3における検出値、つまり第2検出素子Sm+c+1 〜Sn の検出値と前記第2閾値とを比較することで、内容物qに異物が付着ないし混入しているか否かの第2の合否判定を行う。前記第2閾値よりも前記第2検出素子Sm+c+1 〜Sn の検出値が小さな値である場合(X線の透過量が小さい場合)には、当該内容物qを不合格とし、前記振り分け装置9bに振り分け信号を送信する。
(3) 前記第3検出素子Sm+1 〜Sm+c の検出値は無視して、合否判定を行わない。
【0020】
つぎに、本X線検査装置を用いた検査方法について説明する。
オペレータが所定の操作を行い、本装置をスタートさせる。なお、図示しないコントローラなどにより検査を行う商品の指定を行い、その指定に基づいて前記第1および第2閾値の値が設定変更されるようにしてもよい。
本装置をスタートさせると、まず、オペレータにより商品Mを通常検査部2に供給する。コンベヤ5により搬送された商品Mが通常検査部2において前記光学系20を通過すると、商品Mを透過したX線が前記第1検出素子S1 〜Sm により検出される。前記第1検出素子S1 〜Sm からの検出値に基づいてCPU11が前記第1の合否判定を行い、不合格と判定された商品Mをラインアウトさせる。
【0021】
通常検査において不合格と判定された商品Mの再検査を行う場合、オペレータにより前記不合格品の包装を破袋する。そうして得られた不合格品の内容物qを個別に再検査部3に供給する。
前記再検査部3に供給された内容物qにはX線Lが照射され、内容物qを透過したX線Lが前記第2検出素子Sm+c+1 〜Sn に検出され、CPU11により前記第2の合否判定が行われる。第2の合否判定の結果、不合格と判定された内容物qは下流の振り分け装置9bにより個別にラインアウトされる。
【0022】
ところで、前記通常検査部2の領域(幅)と、前記再検査部3の領域(幅)との割合を変更可能としてもよい。かかる領域の変更は、前記樹脂板7の幅方向Dの位置を変更すると共に、この樹脂板7の位置に応じて、第1検出素子S1 〜Sm と第2検出素子Sm+c+1 〜Sn の割合を変更設定する。かかる変更設定は、たとえば、樹脂板7の位置を変更した後に、物品を通過させないで、X線源21からラインセンサ22に向ってX線を照射し、前記ラインセンサ22が樹脂板7を検出した部分Sm+1 〜Sm+c を境界にして、前記第1検出素子S1 〜Sm と第2検出素子Sm+c+1 〜Sn が自動的に設定されるようにしてもよい。
【0023】
また、前記検出素子からの検出信号に基づいて画像を作成し、X線検査結果の異物画像をプリントアウトするようにしてもよい。その際、出力内容に、各トリガー項目における閾値のレベルメータを併せてプリントするようにすれば、プリント後のレベルメータの内容を確認することにより、異物検出時の余裕度を知ることができる。これにより、検出の安定度を随時、確認することができる。
【0024】
また、本X線検査装置を汎用ネットワークに接続し、X線検査装置とネットワーク上のパソコンとを連動させるようにしてもよい。かかるX線検査システムを用いて、管理者の携帯電話やパソコン宛に、システム状態の変化等の情報を知らせるようにすれば、管理者は現場に居る必要がなく、どこにいても全ての状態変化を知ることができる上、ネットワークにアクセスして更に詳細な情報を得ることもできる。
【0025】
以上のとおり、図面を参照しながら好適な実施形態を説明したが、当業者であれば、本明細書を見て、自明な範囲で種々の変更および修正を容易に想定するであろう。
たとえば、X線源およびラインセンサを2組設け、互いに異なる2つの断面について検査を行って、更に、検査の精度を向上させてもよい。
また、通常検査の対象物は必ずしも包材に包まれたものに限定されない。
また、第1閾値および第2閾値を一定の値とする必要はなく、第1閾値(および/または第2閾値)を検出素子の位置に応じて互いに異なる値としてもよい。この場合においては、第2閾値の平均値を第1閾値の平均値よりも小さな値に設定する。
したがって、そのような変更および修正は、請求の範囲から定まる本発明の範囲内のものと解釈される。
【0026】
〔発明の効果〕
以上説明したように、本発明によれば、1つのラインで通常検査および再検査を並行して行うことができるから、検査効率が著しく向上する。
特に、通常検査部よりも再検査部の閾値を小さな値に設定したので、再検査の感度が高まるので、不良品を確実に特定することができる。
【0027】
更に、仕切手段を設けると共に、当該仕切手段によって区画された領域に応じて閾値を設定すれば、通常検査と再検査を並行して、かつ、個別に行うことができるから、不良品の特定がより確実になる。
また、1つのラインセンサで通常検査および再検査の双方を行えば、設備コストを抑えることができる。
【0028】
なお、物品を水平方向に搬送すれば、鉛直方向に物品を落下させて、落下中に検査を行う装置に比べ、包装されていない単品の個別搬送が(単品同士を離して搬送するのが)容易になるから、不良物品を容易かつ確実に特定することができる。
【0029】
また、両検査部の割合を変更できるようにすれば、物品や内容物の大きさに応じた検査が可能になるから、装置の汎用性が高くなる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明にかかるX線検査装置を示す概略斜視図である。
【図2】同X線検査装置の要部を示す概略正面図である。
【図3】(a)はX線検査装置を示す概略構成図であり、(b)は記憶部の記憶内容を示す図表である。
【符号の説明】
【0031】
2:通常検査部
3:再検査部
5:コンベヤ(搬送手段)
7:樹脂板(仕切り手段)
10:マイコン(制御手段)
11:CPU
12:メモリ(記憶部)
21:X線源
22:ラインセンサ
i :検出素子
1 〜Sm :第1検出素子
m+c+1 〜Sn :第2検出素子
m+1 〜Sm+c :第3検出素子
M:商品(物品)
q:内容物(物品)
L:X線
Y:搬送方向
D:幅方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品を搬送しながら、物品にX線を照射して物品の検査を行う通常検査部と、
前記通常検査部と並行に設けられ、前記通常検査にて不良と判断された物品を再検査する再検査部とを備えたX線検査装置であって、
前記再検査部は前記通常検査部よりも合否の基準となる閾値が小さな値に設定されていることを特徴とするX線検査装置。
【請求項2】
物品を搬送する搬送手段と、
前記物品が搬送される空間を搬送方向に直交する幅方向に分けて通常検査部と再検査部とに区画する仕切り手段と、
前記通常検査部および再検査部を搬送される物品にX線を照射するX線源と、
前記物品を透過したX線を検出するラインセンサと、
前記仕切り手段によって区画された領域に応じたラインセンサの部位ごとに設定された第1および第2の閾値を記憶する記憶部と、
前記第1の閾値と前記通常検査部における検出値とを比較して第1の合否判定を行うと共に、前記第1の閾値よりも小さな値に設定された第2の閾値と再検査部における検出値とを比較して第2の合否判定を行う制御手段とを備えたX線検査装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記X線源が1つであり、
前記ラインセンサは1本であり、
前記1本のラインセンサについて前記第1および第2の閾値が設定されており、
前記1つのX線源からのX線を前記1本のラインセンサで検出することにより、前記第1および/または第2の合否判定を行えるようにしたX線検査装置。
【請求項4】
請求項2において、
前記ラインセンサは、多数の検出素子を概ね直線状に並べて形成され、かつ、前記仕切り手段により区画された2つの領域にまたがるように配設されており、
前記通常検査部においてX線を検出する複数の第1検出素子に対して前記第1の閾値が設定されていると共に、前記再検査部においてX線を検出する複数の第2検出素子に対して前記第2の閾値が設定されていることを特徴とするX線検査装置。
【請求項5】
請求項1、2、3もしくは4において、
物品を搬送する搬送手段が概ね水平方向に物品の搬送を行うことを特徴とするX線検査装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項において、
前記通常検査部の領域と、前記再検査部の領域との割合を変更可能にしたX線検査装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1項に記載のX線検査装置を用いた検査方法であって、
複数個の内容物が包材で包装された商品を前記通常検査部に供給して通常の検査を行う工程と、
前記通常の検査で不合格と判定された不合格品の包装を破袋する工程と、
前記不合格品の内容物を搬送方向に互いに離間させた状態で前記再検査部に供給して再検査を行う工程とを備えた検査方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2007−139802(P2007−139802A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−53896(P2007−53896)
【出願日】平成19年3月5日(2007.3.5)
【分割の表示】特願2002−297213(P2002−297213)の分割
【原出願日】平成14年10月10日(2002.10.10)
【出願人】(000147833)株式会社イシダ (859)
【Fターム(参考)】