説明

X線検査装置

【課題】物品供給装置からX線検査装置の搬送コンベアへの物品供給量を適正に制御することにより、正確な異物検査を実行することが可能なX線検査装置を得る。
【解決手段】X線検査装置1は、検査対象である物品50にX線を照射するX線照射部7と、物品50を透過したX線を検出するX線検出部8と、上流の物品供給装置12から供給された物品50を、X線照射部7とX線検出部8との間のX線照射経路100を通過するように搬送する搬送コンベア6と、X線検出部8の検出結果(データS1)から求めた物品50の厚みに基づいて、物品供給装置12から搬送コンベア6への物品供給量を制御するコンピュータ9とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
食品等の物品の製造ラインにおいては、異物が混入している物品が出荷されることを未然に防止するために、X線検査装置を用いた物品の異物検査が行われている(例えば下記特許文献1参照)。X線検査装置では、搬送コンベアによって連続的に搬送されてくる物品に対してX線を照射し、物品を透過した透過X線をX線センサで検出することにより、透過X線の強度に基づいて物品内への異物の混入の有無が検査される。
【0003】
【特許文献1】特開2006−71514号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
X線検査装置の搬送コンベアには、上流の物品供給装置から物品が供給される。ここで、供給される物品が、未包装の原料品である場合には、物品供給装置から搬送コンベアへの物品供給量に応じて、搬送コンベア上の物品の厚みが異なる。つまり、物品供給量が多い場合には厚みが厚くなり、物品供給量が少ない場合には厚みが薄くなる。そして、搬送コンベア上の物品の厚みが厚くなると、物品を透過する透過X線の強度が小さくなるため、異物の混入箇所と非混入箇所との間での透過X線強度の差が小さくなり、その結果、正確な異物検査を行うことが困難となる。
【0005】
本発明はかかる事情に鑑みて成されたものであり、物品供給装置からX線検査装置の搬送コンベアへの物品供給量を適正に制御することにより、正確な異物検査を実行することが可能なX線検査装置を得ることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様に係るX線検査装置は、検査対象である物品にX線を照射する照射手段と、物品を透過したX線を検出する検出手段と、上流の物品供給装置から供給された物品を、前記照射手段と前記検出手段との間のX線照射経路を通過するように搬送する搬送手段と、前記検出手段の検出結果から求めた物品の厚みに基づいて、前記物品供給装置から前記搬送手段への物品供給量を制御する制御手段とを備えることを特徴とするものである。
【0007】
第1の態様に係るX線検査装置によれば、検出手段は、搬送手段上の物品を透過したX線を検出する。また、制御手段は、検出手段の検出結果から物品の厚みを求め、その厚みに基づいて、物品供給装置から搬送手段への物品供給量を制御する。従って、物品の厚みが所定値より大きい場合には、物品供給量が少なくなるように物品供給装置を制御することができ、これにより、搬送手段上の物品の厚みを、所定値以下に抑えることができる。その結果、搬送手段上の物品の厚みが厚すぎて透過X線の強度が小さくなるという事態を回避できるため、正確な異物検査を実行することが可能となる。
【0008】
しかも、検出手段による透過X線の検出結果に基づいて、搬送手段上の物品の厚みを求めるため、物品の厚みを検出するための他のセンサを追加する必要がない。従って、追加のコストを最小限に抑えることができる。
【0009】
本発明の第2の態様に係るX線検査装置は、第1の態様に係るX線検査装置において特に、前記制御手段は、物品の厚みが所定値より大きい場合には、前記物品供給量が少なくなるように前記物品供給装置を制御することを特徴とするものである。
【0010】
第2の態様に係るX線検査装置によれば、物品の厚みが所定値より大きい場合には、物品供給量が少なくなるように、制御手段が物品供給装置を制御することによって、搬送手段上の物品の厚みを、所定値以下に抑えることができる。その結果、搬送手段上の物品の厚みが厚すぎて透過X線の強度が小さくなるという事態を回避できるため、正確な異物検査を実行することが可能となる。
【0011】
本発明の第3の態様に係るX線検査装置は、第1又は第2の態様に係るX線検査装置において特に、前記制御手段は、単位時間あたりの物品の厚みの積算値から求めた物品の流量に基づいて、前記物品供給量を制御することを特徴とするものである。
【0012】
第3の態様に係るX線検査装置によれば、制御手段は、単位時間あたりの物品の厚みの積算値から求めた物品の流量に基づいて、物品供給量を制御する。物品の厚みは瞬間値であるために常に変動するが、所定の時間幅を有する流量に基づいて物品供給量を制御することにより、物品の厚みの変動を吸収することができる。その結果、物品供給量の制御が頻繁に行われるという事態を回避することが可能となる。
【0013】
しかも、検出手段による透過X線の検出結果に基づいて物品の流量を求めるため、物品の流量を検出するための他の流量計を追加する必要がない。従って、追加のコストを最小限に抑えることができる。また、透過X線の検出結果に基づいて流量を検出する場合には、ロードセル方式の流量計とは異なりフィルタ時間が不要であり、しかも振動等の外乱の影響も少ないため、物品の流量を高速かつ高精度に求めることが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、物品供給装置からX線検査装置の搬送コンベアへの物品供給量を適正に制御することにより、正確な異物検査を実行することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、異なる図面において同一の符号を付した要素は、同一又は相応する要素を示すものとする。
【0016】
図1は、本発明の実施の形態に係るX線検査装置1の構成を示す正面図である。図1に示すように、X線検査装置1は、上部筐体2、シールドボックス3、及び下部筐体4を備えている。上部筐体2には、液晶表示装置等の表示部5が配設されている。シールドボックス3内には、搬送コンベア6、X線照射部7、及びX線検出部8が配設されている。シールドボックス3には、物品搬入口10及び物品搬出口11が形成されている。搬送コンベア6の上流端(図1では左端)は物品搬入口10からシールドボックス3の外部に突出しており、下流端(図1では右端)は物品搬出口11からシールドボックス3の外部に突出している。搬送コンベア6は、上流端から下流端に向けて物品50を搬送する。物品50は例えば食品であり、本実施の形態の例では、ミンチ肉又はソーセージ等の未包装の原料品(いわゆるバラ品)である。下部筐体4内には、コンピュータ9が配設されている。
【0017】
X線検査装置1の上流側には、物品供給装置12が配設されている。物品供給装置12は、振動フィーダ式又はベルトコンベア式等の任意の方式の物品供給装置であり、自身がストックしている物品50を、搬送コンベア6の上流端に連続的に供給する。X線検査装置1の下流側には、振分装置13が配設されている。振分装置13は、X線検査装置1によって異物の混入が検出された箇所の物品50を、良品の製造ラインから排除する。
【0018】
図2は、シールドボックス3の内部を模式的に示す斜視図である。X線照射部7は、搬送コンベア6の物品搬送面の上方に配設されている。X線検出部8は、本実施の形態の例ではX線ラインセンサであり、複数のX線検出素子8aを有している。複数のX線検出素子8aは、搬送コンベア6による物品50の搬送方向に直交する方向(つまり搬送コンベア6のコンベアベルトの幅方向)に沿って直線状に並んでいる。X線検出部8は、物品搬送面の下方に配設されている。
【0019】
図2に示すように、X線照射部7は、X線検出部8に向かって、扇形状にX線を照射する。搬送コンベア6は、物品供給装置12から供給された物品50を、X線照射部7とX線検出部8との間のX線照射経路100を通過するように搬送する。X線検出部8は、物品50を透過した透過X線を検出する。
【0020】
図3は、X線検査装置1の構成を示すブロック図である。コンピュータ9は、CPU等の演算・制御部20と、半導体メモリ又はハードディスク等の記憶部21とを有している。X線検出部8によって検出された透過X線の強度に関するデータS1は、コンピュータ9に入力される。物品50内に異物が混入している場合には、その異物の混入箇所において透過X線の強度が極端に低下する。従って、コンピュータ9は、透過X線の強度分布において、所定のしきい値よりも強度が低い箇所を、異物の混入箇所として特定することができる。
【0021】
コンピュータ9は、物品50内への異物の混入を検出した場合には、異物混入箇所の物品50を製造ラインから排除させるために、振分装置13に制御信号S3を入力する。また、コンピュータ9は、X線検出部8から連続的に送られてくるデータS1に基づいて、物品50に関するX線透過画像を作成し、そのX線透過画像の画像データS2を表示部5に入力する。これにより、表示部5において物品50のX線透過画像が表示される。
【0022】
また、コンピュータ9は、X線検出部8から入力されたデータS1に基づいて物品50の厚みを求め、その厚みに基づいて物品供給装置12の駆動を制御することにより、物品供給装置12から搬送コンベア6の上流端への物品50の供給量(以下「物品供給量」と称す)を制御する機能を有している。以下、具体的に説明する。
【0023】
図4は、演算・制御部20の機能構成を示すブロック図である。図4に示すように、演算・制御部20は、演算部91〜93及び判定部94を有している。
【0024】
演算部91には、X線検出部8からデータS1が入力される。演算部91は、データS1に基づいて、物品50の厚み(図1における参照符号K)と幅とを算出する。X線ラインセンサの長さは既知であるため、X線検出素子8aの総数と、非透過X線ではなく透過X線を検出しているX線検出素子8aの個数との比を用いて、物品50の幅を求めることができる。ここで、非透過X線とは、搬送コンベア6上に物品50が存在していない場合にX線検出素子8aが検出するX線を意味する。なお、物品50が搬送コンベア6の側方から転落することを防止すべく、物品搬送面の両サイドに壁部材が配置されている場合には、壁部材同士の間隔が物品50の幅となる。この場合には、演算部91は物品50の幅を算出するための演算を行う必要はない。
【0025】
また、物品50の厚みは、非透過X線の強度と、X線検出素子8aが検出する透過X線の強度(つまりデータS1の値)との比を用いて求めることができる。複数のX線検出素子8aの各々に関して物品50の厚みが求まるため、物品50の幅内における厚みの代表値(平均値又は中央値等)を、その断面に関する物品50の厚みとして求めることができる。ここで、異物の混入箇所については、透過X線の強度が極端に低いため、厚みを求めるための演算の対象から除外される。
【0026】
その後、演算部91は、厚みと幅とに基づいて、その断面に関する物品50の断面積を算出する。物品50の厚みに関するデータS20は、判定部94に入力される。また、物品50の断面積に関するデータS10は、演算部92に入力される。
【0027】
演算部92は、単位時間内に演算部91から入力された複数のデータS10の値を積算することにより、その単位時間内にX線照射経路100を通過した物品50の体積を算出する。これにより、単位時間あたりに流れる物品50の体積(つまり体積流量)を求めることができる。ここで、単位時間の指定値は、データS11として予め記憶部21に記憶されており、記憶部21から演算部92に入力される。物品50の体積に関するデータS12は、演算部93及び判定部94に入力される。
【0028】
演算部93は、データS12の値と物品50の密度(単位体積重量)の値とを乗算することにより、上記単位時間内にX線照射経路100を通過した物品50の重量を算出する。これにより、単位時間あたりに流れる物品50の重量(つまり重量流量)を求めることができる。ここで、物品50の密度の値は、データS13として予め記憶部21に記憶されており、記憶部21から演算部93に入力される。物品50の重量に関するデータS22は、判定部94に入力される。
【0029】
記憶部21には、物品50の厚みに関する所定のしきい値が、データS30として予め記憶されている。また、記憶部21には、物品50の体積流量に関する所定のしきい値が、データS31として予め記憶されている。また、記憶部21には、物品50の重量流量に関する所定のしきい値が、データS32として予め記憶されている。データS30〜S32は、記憶部21から判定部94に入力される。
【0030】
判定部94は、データS20とデータS30とを比較し、データS20で与えられる物品50の厚みが、データS30で与えられるしきい値より大きい場合には、物品供給装置12に対して制御信号S4を入力することにより、物品供給装置12から搬送コンベア6への物品供給量を低下させる。例えば、物品供給装置12が振動フィーダ式である場合には、振動数を現在値より所定の割合(例えば数%)だけ低下させる。また、物品供給装置12がベルトコンベア式である場合には、ベルトコンベアの駆動速度を現在値より所定の割合(例えば数%)だけ低下させる。物品供給量が低下することにより、それ以降は、搬送コンベア6上の物品50の厚みが薄くなる。
【0031】
同様に、判定部94は、データS12とデータS31とを比較し、データS12で与えられる物品50の体積流量が、データS31で与えられるしきい値より大きい場合には、物品供給装置12に対して制御信号S4を入力することにより、物品供給装置12から搬送コンベア6への物品供給量を低下させる。物品供給量が低下することにより、それ以降は、搬送コンベア6上の物品50の厚みが薄くなる。
【0032】
同様に、判定部94は、データS22とデータS32とを比較し、データS22で与えられる物品50の重量流量が、データS32で与えられるしきい値より大きい場合には、物品供給装置12に対して制御信号S4を入力することにより、物品供給装置12から搬送コンベア6への物品供給量を低下させる。物品供給量が低下することにより、それ以降は、搬送コンベア6上の物品50の厚みが薄くなる。
【0033】
なお、物品50の厚み(データS20)に基づく物品供給量の制御、物品50の体積流量(データS12)に基づく物品供給量の制御、及び物品50の重量流量(データS22)に基づく物品供給量の制御は、いずれか一つだけを実行しても良いし、複数を組み合わせて実行しても良い。
【0034】
このように本実施の形態に係るX線検査装置1によれば、X線検出部8は、搬送コンベア6上の物品50を透過した透過X線を検出する。また、コンピュータ9は、X線検出部8の検出結果(データS1)から物品50の厚みを求める。そして、その厚みに関係するデータS20,S12,S22に基づいて、物品供給装置12から搬送コンベア6への物品供給量を制御する。従って、物品50の厚みが所定値より大きい場合には、物品供給量が少なくなるように物品供給装置12を制御することができ、これにより、搬送コンベア6上の物品50の厚みを、所定値以下に抑えることができる。その結果、搬送コンベア6上の物品50の厚みが厚すぎて透過X線の強度が小さくなるという事態を回避できるため、正確な異物検査を実行することが可能となる。
【0035】
しかも、X線検出部8による透過X線の検出結果(データS1)に基づいて、搬送コンベア6上の物品50の厚みを求めるため、物品50の厚みを検出するための他のセンサを追加する必要がない。従って、追加のコストを最小限に抑えることができる。
【0036】
また、本実施の形態に係るX線検査装置1によれば、コンピュータ9は、単位時間あたりの物品50の厚みの積算値から求めた物品50の流量(データS12,S22)に基づいて、物品供給量を制御することができる。物品50の厚みは瞬間値であるために常に変動するが、所定の時間幅を有する流量に基づいて物品供給量を制御することにより、物品50の厚みの変動を吸収することができる。その結果、物品供給量の制御が頻繁に行われるという事態を回避することが可能となる。
【0037】
しかも、X線検出部8による透過X線の検出結果(データS1)に基づいて物品50の流量を求めるため、物品50の流量を検出するための他の流量計を追加する必要がない。従って、追加のコストを最小限に抑えることができる。また、透過X線の検出結果に基づいて流量を検出する場合には、ロードセル方式の流量計とは異なりフィルタ時間が不要であり、しかも振動等の外乱の影響も少ないため、物品50の流量を高速かつ高精度に求めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の実施の形態に係るX線検査装置の構成を示す正面図である。
【図2】シールドボックスの内部を模式的に示す斜視図である。
【図3】X線検査装置の構成を示すブロック図である。
【図4】演算・制御部の機能構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0039】
1 X線検査装置
6 搬送コンベア
7 X線照射部
8 X線検出部
8a X線検出素子
9 コンピュータ
12 物品供給装置
50 物品
91〜93 演算部
94 判定部
100 X線照射経路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象である物品にX線を照射する照射手段と、
物品を透過したX線を検出する検出手段と、
上流の物品供給装置から供給された物品を、前記照射手段と前記検出手段との間のX線照射経路を通過するように搬送する搬送手段と、
前記検出手段の検出結果から求めた物品の厚みに基づいて、前記物品供給装置から前記搬送手段への物品供給量を制御する制御手段と
を備える、X線検査装置。
【請求項2】
前記制御手段は、物品の厚みが所定値より大きい場合には、前記物品供給量が少なくなるように前記物品供給装置を制御する、請求項1に記載のX線検査装置。
【請求項3】
前記制御手段は、単位時間あたりの物品の厚みの積算値から求めた物品の流量に基づいて、前記物品供給量を制御する、請求項1又は2に記載のX線検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−107411(P2010−107411A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−280845(P2008−280845)
【出願日】平成20年10月31日(2008.10.31)
【出願人】(000147833)株式会社イシダ (859)
【Fターム(参考)】