説明

X線検査装置

【課題】被検査物の形状異常を容易かつ迅速な方法で判断することができるX線検査装置を提供する。
【解決手段】形状異常判断部は、一の領域における濃淡情報として変化線KH1と、他の領域における濃淡情報として変化線KH2とを比較することにより、被検査物の形状異常を判断する。具体的には、同一の検出位置における変化線KH1の濃淡値と変化線KH2の濃淡値とが比較される。例えば、検出位置A1における変化線KH1の濃淡値K1と変化線KH2の濃淡値K2との差S1が所定範囲内か否かが形状異常判断部により判断される。この場合、差S1が所定範囲を超えるものであれば、形状異常が存在すると判断される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品にX線を照射し、物品の形状を認識するX線検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、物品の形状を認識するためにX線検査装置等が使用されている。これらのX線検査装置に関して、日々研究開発が行われている。
【0003】
例えば、特許文献1には、形状検査装置が開示されている。この形状検査装置は、検査体の形状画像を撮像する撮像手段と、形状画像の形状検査判定基準に基づく画像処理により得られる形状判定用指標に基づいて検査体の形状検査を行う画像処理手段と、形状判定用指標を指標基準値と比較し、当該比較結果に基づいて形状検査判定基準を調整する形状判定基準調整手段とを備える。
【0004】
形状判定基準調整手段は、比較と調整を繰り返すことによって形状検査判定基準を自動調整し、画像処理手段は形状判定基準調整手段で自動調整された形状検査判定基準に基づいて画像処理し検査体の形状検査を行う。
【0005】
上記の形状検査判定基準は、画像処理において形状検査判定に適した画像データを形成するために用いるものであり、撮像手段で撮像した形状画像の信号強度を所定階調に変換する感度パラメータや変換した階調の段階を判別するしきい値である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−28633号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来の形状検査装置は、形状検査に適した良好な形状検査判定基準を、比較と調整とを繰り返すことによって得るものである。そのため、形状がある程度均一な被検査物の検査を行う場合には、上記のように形状検査判定基準を度々調整してもよいが、自然物のような形状が不均一な被検査物の検査を行う場合には、様々な形状に対する判別を行わなければならないので、形状検査判定基準を度々調整すると、被検査物を一律に判別することができないために好ましくない。
【0008】
本発明の目的は、被検査物の形状異常を容易かつ迅速な方法で判断することができるX線検査装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)一の局面に従うX線検査装置は、被検査物を搬送する搬送部と、搬送部により搬送される被検査物に対してX線を照射するX線源と、X線源から照射され、被検査物を透過したX線を検出する検出器と、検出器からの検出値に基づいて、被検査物が存在する領域の濃淡情報を取得する濃淡情報取得部と、を有するX線検査装置であって、濃淡情報を形状異常として判断する異常判断部を備えるものである。
【0010】
一の局面に従うX線検査装置においては、搬送部により搬送される被検査物に対してX線源によりX線が照射される。X線源から照射され、被検査物を透過したX線が検出器により検出される。また、検出器からの検出値に基づいて、被検査物が存在する領域の濃淡情報が濃淡情報取得部により取得される。そして、異常判断部により上記濃淡情報が形状異常として判断される。
【0011】
この場合、濃淡情報に基づいて被検査物の形状異常を判断することにより、容易な方法かつ迅速に被検査物の形状異常を判断できる。例えば、被検査物が自然物である場合に、本発明に係るX線検査装置により被検査物の濃淡情報さえ取得すれば、当該自然物の良否(良品および不良品)を容易かつ迅速に判別することができる。例えば、自然物の形状が著しく潰れている場合には、濃淡情報が極端に濃くなる傾向がある。したがって、極端に濃い濃淡情報を取得した場合には、被検査物に形状異常が存在するとして判断することができる。
【0012】
(2)濃淡情報は、被検査物の複数の領域に対応した濃淡情報を含み、異常判断部は、複数の領域のうち、一の領域における濃淡情報と、他の領域における濃淡情報とを比較することにより形状異常を判断してもよい。
【0013】
この場合、一の領域における濃淡情報と他の領域における濃淡情報とが異常判断部により比較される。そして、比較結果によって被検査物の形状異常が判断される。このように、一の領域における濃淡情報と他の領域における濃淡情報との大小関係が判断されることによって、被検査物の一の領域と他の領域との間の形状変化を判断できる。したがって、上記の一方の濃淡情報が他方の濃淡情報よりも著しく大きいものであれば、形状異常が存在するとして被検査物を判別することができる。
【0014】
(3)異常判断部は、一の領域における濃淡情報と、他の領域における濃淡情報との濃淡差が所定範囲内か否かにより形状異常を判断してもよい。
【0015】
この場合、上記濃淡差が所定範囲内か否かにより被検査物の形状異常が異常判断部により判断されるので、上記所定範囲を大きく設定していれば、被検査物の良品および不良品の判別を粗く行うことができ、逆に、上記所定範囲を小さく設定していれば、当該判別を細かく行うことができる。したがって、被検査物の種類および被検査物の検査基準等に応じて良品および不良品を適切に判別できる。
【0016】
(4)X線検査装置は、被検査物が存在する領域の濃淡情報を第1濃淡情報と第2濃淡情報とに区分する濃淡比較部をさらに備え、異常判断部は、第1濃淡情報および第2濃淡情報に基づいて形状異常を判断してもよい。
【0017】
この場合、被検査物が存在する領域の濃淡情報が濃淡比較部により第1濃淡情報と第2濃淡情報とに区分される。第1濃淡情報および第2濃淡情報に基づいて異常判断部により形状異常が判断される。
【0018】
このように、第1濃淡情報と第2濃淡情報とが比較されることにより、第1濃淡情報に対応する領域の形状と第2濃淡情報に対応する領域の形状との変化の程度を認識できる。例えば、第1濃淡情報と第2濃淡情報とが被検査物を中央で2つに区分したときの各濃淡情報である場合には、被検査物の形状の対称性を認識できる。したがって、当該対称性に基づいて被検査物の形状異常を適切に判断できる。
【0019】
(5)異常判断部は、第1濃淡情報の積算値および第2濃淡情報の積算値に基づいて形状異常を判断してもよい。
【0020】
この場合、第1濃淡情報の積算値および第2濃淡情報の積算値が比較されることにより、例えば、第1濃淡情報と第2濃淡情報とが被検査物を中央で2つに区分したときの各濃淡情報である場合には、被検査物の形状の対称性をより正確に認識できる。
【0021】
(6)異常判断部は、被検査物が存在する領域の濃淡情報に基づいて当該被検査物の厚みを認識してもよい。この場合、被検査物の厚みを判別要素として用いて、当該被検査物の良品および不良品を判別できる。
【0022】
(7)異常判断部は、濃淡情報と閾値とを比較することにより形状異常を判断してもよい。この場合、濃淡情報と閾値との比較が行われることにより、ある領域の形状変化を認識できる。したがって、上記濃淡情報が閾値よりも大きいものであれば、形状異常が存在するとして被検査物を判別することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係るX線検査装置によれば、被検査物の形状異常を容易かつ迅速な方法で判断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本実施形態に係るX線検査装置の一例を示す模式的外観図である。
【図2】本実施形態に係るX線検査装置の内部構造の一例を示す模式図である。
【図3】X線検査装置において画像処理に関わる構成部を示すブロック図である。
【図4】被検査物および他例に係る被検査物を示す模式図である。
【図5】被検査物および他例に係る被検査物の濃淡変化をそれぞれ示す図である。
【図6】被検査物のある領域の濃淡情報を第1濃淡情報と第2濃淡情報とに区分した図である。
【図7】異常判断部による被検査物の形状異常の判断方法についての他の実施形態を説明するための図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の一実施形態に係るX線検査装置について図面を参照しながら説明する。
【0026】
<第1実施形態>
図1は本実施形態に係るX線検査装置100の一例を示す模式的外観図であり、図2は本実施形態に係るX線検査装置100の内部構造の一例を示す模式図である。
【0027】
図1に示すように、X線検査装置100には、その内部にX線検査室300が形成されている。このX線検査室300内にはX線照射装置200が内蔵されている。X線検査室300を貫通するように、ベルトコンベア800が設けられている。
【0028】
X線検査室300の開口部からのX線の漏洩を防止するX線漏洩防止カーテン500が設けられている。また、X線検査装置100には、作業者が操作するためのタッチパネル形式の入力表示部MTが設けられている。作業者は、入力表示部MTを操作することによりX線検査装置100を駆動させる。
【0029】
作業者は、ベルトコンベア800上に被検査物900(図2)を載置する。本実施形態において、X線検査装置100により検査する被検査物900は、例えばピーマン等の自然物である。ベルトコンベア800上に載置された被検査物900について、X線検査室300内において形状異常が存在するか否かの検査が行われる。以下、X線検査室300の内部構造について説明する。
【0030】
図2に示すように、X線検査室300は、X線照射装置200、複数の検出素子220aからなるラインセンサ220、X線漏洩防止カーテン500およびベルトコンベア800を主として備える。X線漏洩防止カーテン500は、X線検査室300の入口側のX線漏洩防止カーテン510および出口側のX線漏洩防止カーテン520により構成される。
【0031】
ベルトコンベア800は、無端状のベルトが一対のローラに巻回されて構成されている。シンチレータおよびフォトダイオード素子からなり、X線を検出するラインセンサ220が上記ベルトコンベア800の内側に設けられている。
【0032】
図2において、ベルトコンベア800上に被検査物900が載置される。そして、ベルトコンベア800が駆動されると、被検査物900は矢印d1の方向(搬送方向)に沿って搬送される。搬送中の被検査物900は、まず、X線漏洩防止カーテン510を通過して、X線検査室300内に移動する。
【0033】
次いで、搬送中の被検査物900に対して、X線照射装置200からX線210が照射される。そして、被検査物900を透過したX線210がラインセンサ220に入射される。
【0034】
ラインセンサ220は、入射されたX線210に基づいて後述の検出データKDaを生成する。ラインセンサ220により生成された検出データKDaに基づいて、被検査物900の形状異常が判断される。
【0035】
そして、X線検査が行われた被検査物900はベルトコンベア800により継続的に搬送されることにより、X線漏洩防止カーテン520を通過した後、X線検査室300外に移動する。その後、被検査物900は、次工程へと搬送される。
【0036】
図3はX線検査装置100において画像処理に関わる構成部を示すブロック図であり、図4は被検査物900および他例に係る被検査物901を示す模式図であり、図5は被検査物900および被検査物901の濃淡変化をそれぞれ示す図である。
【0037】
図3に示すように、本実施形態に係るX線検査装置100は、画像処理に関わる構成部として、上述のラインセンサ220、A/Dコンバータ230および機能処理部FSを備える。機能処理部FSは、濃淡情報取得部240、形状異常判断部250、濃淡比較部260および記憶部270を含む。
【0038】
機能処理部FSの各構成部は、CPU(中央演算処理装置)がRAM(Random Access Memory)またはROM(Read-Only Memory)に格納されている処理プログラムを実行することによって機能的に実現される。このような処理プログラムは、当該処理プログラムが記録されたCD−ROM、DVD−ROM等の記録媒体からインストールすることが可能であるし、ネットワークを介してサーバからダウンロードすることも可能である。
【0039】
最初に、被検査物900を透過したX線210がラインセンサ220に入射される。ラインセンサ220は、X線210に基づいてアナログデータである検出データKDaを生成する。A/Dコンバータ230は、検出データKDaをデジタルデータである検出データKDdに変換する。
【0040】
濃淡情報取得部240は、上記の検出データKDdに基づいて、被検査物900が存在する領域の濃淡情報を取得する。この場合、搬送方向d1に交差する被検査物900の、等分化された複数の領域の濃淡情報NDが取得される。
【0041】
ここで、図4(a)に示すように、被検査物900は、自然物であるピーマンであり、肉厚部900aおよび内部空洞900bを有する。図4(a)の被検査物900においては、全体的な厚みt2よりも大きい厚みt1の肉厚部900aの部分が存在する。このような厚みの特性は、被検査物900が熟しているときに現れる場合が多い。図4(b)の被検査物900においては、図4(a)とは逆に、全体的な厚みt2よりも小さい厚みt3の肉厚部900aの部分が存在する。このような厚みの特性は、被検査物900が腐食しているときに現れる場合が多い。また、図4(c)に示すように、他例に係る被検査物901は自然物である馬鈴薯であり、ピーマンのような内部空洞900bは有さない。
【0042】
検査対象が被検査物900である場合、濃淡情報取得部240により取得される濃淡情報NDは、例えば図5(a)のようになる。図5(a)、(b)の縦軸は位置(検出位置)を示し、横軸は濃淡値(階調値)を示す。なお、上記位置(検出位置)は、ラインセンサ220の検出素子220aの各々の位置に相当する。
【0043】
図5(a)において、変化線KH1は、図4(a)の被検査物900におけるAA線断面の領域の濃淡変化を示している。また、変化線KH2は、図4(a)の被検査物900におけるBB線断面の領域の濃淡変化を示している。
【0044】
この場合、形状異常判断部250は、一の領域における濃淡情報としての変化線KH1と、他の領域における濃淡情報としての変化線KH2とを比較することにより、被検査物900の形状異常を判断する。本実施形態では、同一の検出位置における変化線KH1の濃淡値と変化線KH2の濃淡値とが比較される。例えば、検出位置A1における変化線KH1の濃淡値K1と変化線KH2の濃淡値K2との差S1が所定範囲(基準値)内か否かが形状異常判断部250により判断される。この場合、差S1が所定範囲を超えるものであれば、形状異常が存在すると判断される。また、検出位置A2における変化線KH1の濃淡値と変化線KH2の濃淡値とは共にK3で同一であるので、差S1は0となり、形状異常は存在しないと判断される。上記基準値は記憶部270に記憶されている。
【0045】
なお、例えば図4(a)に示すようなピーマン等の自然物である被検査物900を検査する場合には、当該被検査物900の端部領域と中央領域とではこれらの濃淡情報が互いに著しく異なる。例えば、ピーマンおよび胡瓜等の先端部分および末端部分(例えば、蔕の部分)であると明らかに認識できる領域と本体部分(実の部分)の領域とでは濃淡情報が大きく異なる。したがって、形状異常判断部250による上記の比較処理は、濃淡情報の変化線が互いに大きく異なるものを除いて、変化線が近似する一の領域と他の領域とに対して実施される。
【0046】
また、検査対象が被検査物901である場合、濃淡情報取得部240により取得される濃淡情報NDは、例えば図5(b)のようになる。図5(b)において、変化線KH3は、図4(c)の被検査物901におけるCC線断面の領域の濃淡変化を示している。また、変化線KH4は、図4(c)の被検査物901におけるDD線断面の領域の濃淡変化を示している。
【0047】
この場合、形状異常判断部250により同一の検出位置A3における変化線KH3の濃淡値K4と変化線KH4の濃淡値K5との差S2が所定範囲内か否かが判断される。この場合、差S2が所定範囲を超えるものであれば、形状異常が存在すると判断される。
【0048】
図6は被検査物900のある領域の濃淡情報を第1濃淡情報と第2濃淡情報とに区分した図である。なお、図6の変化線KH1は、図5(a)の変化線KH1と同じものとする。
【0049】
濃淡比較部260(図3)は、図6に示すように、濃淡情報NDを中央付近で2つに区分する。すなわち、検出位置A4と検出位置A5との間における変化線KH1が、中央付近に相当する検出位置A6で、第1濃淡情報としての変化線KH1aと第2濃淡情報としての変化線KH1bとに区分される。
【0050】
形状異常判断部250は、濃淡比較部260により区分された変化線KH1aと変化線KH1bとを比較する。本実施形態では、形状異常判断部250は、変化線KH1aの積算値(積分値)D1と変化線KH1bの積算値(積分値)D2とを比較する。この場合、形状異常判断部250は、積算値D1と積算値D2との差を取得し、当該差が所定範囲を超えていれば、被検査物900に形状異常が存在すると判断する。
【0051】
ここで、形状異常判断部250は、被検査物900の肉厚部900aの厚みを認識できる。被検査物900が図4(a)に示すような内部空洞900bを有する自然物である場合、図6の変化線KH1a、KH1bにおいて凸部KHT1、KHT2(理解容易化のため太く図示)が出現する場合が多い。これらの凸部KHT1、KHT2が存在する濃淡範囲HA1、HA2は、それぞれ図4(a)の肉厚部900aの厚みt1、t2に相当する。したがって、形状異常判断部250は、濃淡範囲HA1および濃淡範囲HA2の大小関係に基づいて、肉厚部900aの厚みt1および厚みt2を認識する。そして、形状異常判断部250は、これらの差が基準値を超えている場合、または、一方あるいは両方の厚みが所定値を超えている場合には、厚みが不均一であると判断する。なお、図4(b)のような、全体的な厚みt2よりも小さい厚みt3の肉厚部900aを有する被検査物900の厚みを認識する方法および図4(c)のような、内部空洞900bを有さない被検査物901の厚みを認識する方法も上記と同様である。また、形状異常判断部250によるこのような処理は、被検査物900における複数の領域の各々に対して実施される。
【0052】
本実施形態では、以上のような形状異常判断部250の判断結果によって、警告装置(図示せず)により警告音が発せられる等の処理が行われる。それにより、被検査物900の良品および不良品の判別が行われる。
【0053】
<第1実施形態における効果>
本実施形態では、被検査物900が存在する領域の濃淡情報が濃淡情報取得部240により取得され、形状異常判断部250により上記濃淡情報が形状異常として判断される。このように、濃淡情報に基づいて被検査物900の形状異常を判断することにより、容易な方法かつ迅速に被検査物900の形状異常を判断できる。例えば被検査物900が自然物である場合に、被検査物900の濃淡情報さえ取得すれば上記判別を実施することができる。例えば、自然物の形状が著しく潰れている場合には、濃淡情報が極端に濃くなる傾向がある。したがって、極端に濃い濃淡情報を取得した場合には、被検査物900に形状異常が存在すると判断できる。
【0054】
また、本実施形態では、一の領域における濃淡情報としての変化線KH1と他の領域における濃淡情報としての変化線KH2とが形状異常判断部250により比較されて被検査物900の形状異常が判断される。このように、変化線KH1と変化線KH2との大小関係が判断されることによって、被検査物900の一の領域と他の領域との間の形状変化を判断できる。したがって、変化線KH1の濃淡情報および変化線KH2の濃淡情報のうち一方が他方よりも著しく大きいものであれば、形状異常が存在するとして被検査物900を判別することができる。
【0055】
この場合、濃淡差である差S1、S2(図5)が所定範囲内か否かにより被検査物900の形状異常が形状異常判断部250により判断されるので、上記所定範囲を大きく設定していれば、被検査物900の良品および不良品の判別を粗く行うことができ、逆に、上記所定範囲を小さく設定していれば、当該判別を細かく行うことができる。したがって、被検査物900の種類および被検査物900の検査基準等に応じて良品および不良品を適切に判別できる。
【0056】
また、本実施形態では、ある一の領域の第1濃淡情報としての変化線KH1aと第2濃淡情報としての変化線KH1bとが比較されることにより、被検査物の形状の対称性を認識できる。したがって、当該対称性に基づいて被検査物900の形状異常を適切に判断できる。
【0057】
また、形状異常判断部250により被検査物900の厚みt1(HA1が相当)、t2(HA2が相当)、t3が認識されるので、当該厚みt1、t2、t3を判別要素として用いて、被検査物900の良品および不良品を判別できる。これにより、例えば、被検査物900がピーマン等の自然物の場合に、熟しているものおよび腐食しているもの等を不良品として判別できる。
【0058】
また、ラインセンサ220が複数の検出素子220aから構成されることにより、例えば、一の検出素子220aにより検出される被検査物900の一の領域の変化線KH1におけるある濃淡値と他の領域の変化線KH2におけるある濃淡値とにほとんど差が無い場合でも、他の検出素子220aにより検出される一の領域の変化線KH1におけるある濃淡値と他の領域の変化線KH2におけるある濃淡値とに差がある場合に、一の領域と他の領域との間で被検査物900の形状変化があることを認識できる。したがって、被検査物900の形状異常を広範囲かつ適切に判断できる。
【0059】
<第2実施形態>
図7は形状異常判断部250による被検査物900の形状異常の判断方法についての他の実施形態を説明するための図である。
【0060】
図7において、形状異常を判断するための閾値NS1は記憶部270(図3)に記憶されている。形状異常判断部250(図3)は、変化線KH5において閾値NS1を超える濃淡値が存在する場合には、被検査物900に形状異常が存在すると判断する。
【0061】
<第2実施形態における効果>
本実施形態では、被検査物900の濃淡情報と閾値NS1との比較が行われることにより、被検査物900の形状異常を判断できる。したがって、上記濃淡情報が閾値NS1よりも大きいものであれば、形状異常が存在するとして被検査物900を不良品として判別することができる。したがって、容易かつ迅速に判別処理を行うことができる。
【0062】
例えば、被検査物900が自然物である場合に、当該自然物の形状が著しく潰れている場合には、濃淡情報が極端に濃くなる傾向がある。したがって、極端に濃い濃淡情報が存在する場合には、被検査物900に形状異常が存在すると判断することができる。
【0063】
<請求項の各構成要素と上記実施形態の各構成部との対応関係>
上記実施形態においては、被検査物900、901が被検査物に相当し、ベルトコンベア800が搬送部に相当し、X線検査装置100がX線検査装置に相当し、X線照射装置200がX線源に相当し、X線210がX線に相当し、ラインセンサ220が検出器に相当し、変化線KH1〜KH5の濃淡情報が、被検査物が存在する領域の濃淡情報に相当し、濃淡情報取得部240が濃淡情報取得部に相当し、形状異常判断部250が異常判断部に相当し、変化線KH1aの濃淡情報が第1濃淡情報に相当し、変化線KH1bの濃淡情報が第2濃淡情報に相当し、濃淡比較部260が濃淡比較部に相当し、変化線KH1aの積算値D1が第1濃淡情報の積算値に相当し、変化線KH1bの積算値D2が第2濃淡情報の積算値に相当し、閾値NS1が閾値に相当する。
【0064】
<変形例>
なお、上記実施形態では、形状異常判断部250により被検査物900の一の領域の濃淡情報と他の領域の濃淡情報との比較処理と、ある領域の濃淡情報を第1濃淡情報と第2濃淡情報とに区分してこれらを比較する処理とを並列的に行うこととしたが、これに限定されるものではなく、一の領域の濃淡情報と他の領域の濃淡情報との比較処理のみを行って被検査物900の形状異常を判断することもできる。
【0065】
また、上記実施形態では、図5〜図7で述べたように、位置(検出位置)と濃淡値との関係に基づいて被検査物900の形状異常の有無を判断することとしたが、これに限定されるものではなく、濃淡値と当該濃淡値の度数(出現度数)とのヒストグラムに基づいて形状異常の有無を判断してもよい。
【0066】
また、被検査物900の形状異常を判断する際に用いられる上記閾値NS1等の基準値は定期的に変更されてもよい。これにより、野菜等の自然物を検査する場合には、その販売シーズンおよび需要者のニーズ等に基づいて判断基準を変更できる。
【0067】
また、上記実施形態では、図3において形状異常判断部250および濃淡比較部260を別個独立の構成としたが、これに限定されるものではなく、形状異常判断部250が上述した濃淡比較部260の機能を有してもよい。
【0068】
さらに、本発明の好ましい一実施の形態は上記の通りであるが、本発明はそれだけに制限されない。本発明の精神と範囲から逸脱することのない様々な実施形態が他になされることは理解されよう。さらに、本実施形態において、本発明の構成による作用および効果を述べているが、これら作用および効果は、一例であり、本発明を限定するものではない。
【符号の説明】
【0069】
100 X線検査装置
200 X線照射装置
210 X線
220 ラインセンサ
240 濃淡情報取得部
250 形状異常判断部
260 濃淡比較部
800 ベルトコンベア
900、901 被検査物
D1、D2 積算値
KH1〜KH5、KH1a、KH1b 変化線
NS1 閾値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検査物を搬送する搬送部と、
前記搬送部により搬送される被検査物に対してX線を照射するX線源と、
前記X線源から照射され、前記被検査物を透過したX線を検出する検出器と、
前記検出器からの検出値に基づいて、前記被検査物が存在する領域の濃淡情報を取得する濃淡情報取得部と、を有するX線検査装置であって、
前記濃淡情報を形状異常として判断する異常判断部を備えるX線検査装置。
【請求項2】
前記濃淡情報は、前記被検査物の複数の領域に対応した濃淡情報を含み、
前記異常判断部は、前記複数の領域のうち、一の領域における濃淡情報と、他の領域における濃淡情報とを比較することにより形状異常を判断する、請求項1記載のX線検査装置。
【請求項3】
前記異常判断部は、前記一の領域における濃淡情報と、前記他の領域における濃淡情報との濃淡差が所定範囲内か否かにより形状異常を判断する、請求項1または請求項2記載のX線検査装置。
【請求項4】
前記被検査物が存在する領域の濃淡情報を第1濃淡情報と第2濃淡情報とに区分する濃淡比較部をさらに備え、
前記異常判断部は、前記第1濃淡情報および前記第2濃淡情報に基づいて形状異常を判断する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のX線検査装置。
【請求項5】
前記異常判断部は、前記第1濃淡情報の積算値および前記第2濃淡情報の積算値に基づいて形状異常を判断する、請求項4記載のX線検査装置。
【請求項6】
前記異常判断部は、前記被検査物が存在する領域の濃淡情報に基づいて前記被検査物の厚みを認識する、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のX線検査装置。
【請求項7】
前記異常判断部は、前記濃淡情報と閾値とを比較することにより形状異常を判断する、請求項1記載のX線検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−99737(P2011−99737A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−253952(P2009−253952)
【出願日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【出願人】(000147833)株式会社イシダ (859)
【Fターム(参考)】