説明

X線検査装置

【課題】被検査物の重心を正確に算出する。
【解決手段】X線検査装置は、被検査物Bに異物Cが混入しているか否かを検出する異物検出部と、異物検出部により検出された異物Cの重心G1を算出する異物重心算出部と、被検査物Bの異物Cを除いた対象部分Dの重心G2を算出する対象部分重心算出部と、異物重心算出部により算出された異物Cの重心G1と、対象部分重心算出部により算出された対象部分Dの重心G2とに基づいて、被検査物Bの重心Gを算出する重心算出部とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検査物の重心を算出することが可能なX線検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被検査物を良品または不良品に振り分ける際に、被検査物の重心を算出し、当該重心が所定の位置に到達するタイミングで振分装置を動作させるX線検査装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1には、X線検出器により得られた透過X線に基づいて物品における内容物の偏り中心位置を算出する偏り中心位置算出部と、X線検出器の下流側に設置されて物品を振り分ける振分手段と、該振分手段により物品を振り分けるときに、振分位置に偏り中心位置算出部により算出された偏り中心位置が到達するタイミングに応じて該振分手段を動作させる制御手段とを備えたX線検査装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−39495号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載のX線検査装置では、被検査物に異物が混入した場合について考慮されていない。従って、被検査物に混入する異物が金属等の密度の高い物質で且つ被検査物が密度の低い物質の場合には、異物が混入した被検査物の重心は密度の高い異物が存在する側に偏ることになる。
【0006】
そこで、本発明の目的は、被検査物の重心を正確に算出することが可能なX線検査装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るX線検査装置は、被検査物にX線を照射するX線源と、X線源から照射されて被検査物を透過したX線を検知するセンサと、センサにより検知されたX線に基づいて、被検査物に異物が混入しているか否かを検出する異物検出部と、異物検出部により検出された異物の重心を算出する異物重心算出部と、被検査物の異物を除いた対象部分の重心を算出する対象部分重心算出部と、異物重心算出部により算出された異物の重心と、対象部分重心算出部により算出された対象部分の重心とに基づいて、被検査物の重心を算出する重心算出部と、を備える。
【0008】
上記構成によれば、異物の重心と対象部分の重心とを別個に算出し、それらの重心に基づいて、被検査物全体の重心を算出することが可能である。これにより、被検査物に混入する異物の質量、大きさ、位置等に起因して、被検査物の重心が異物の影響を受ける場合でも、正確に被検査物の重心を算出することができる。
【0009】
X線検査装置の下流側に配置される振分装置によって振り分けられる被検査物は、X線検査によって異物が混入された被検査物であるので、被検査物内に混入する異物の重心を考慮して被検査物全体の重心を算出することは、被検査物を振り分ける上で非常に効果的である。すなわち、本発明のX線検査装置により被検査物の重心を正確に算出しておけば、被検査物を振り分ける際、当該重心に対して振分装置を作用させることができ、異物が混入した被検査物を確実に振り分けることができる。
【0010】
X線検査装置において、センサにより検知されたX線に基づいて、被検査物のX線透過画像を作成するX線透過画像作成部と、当該X線透過画像の異物部分における輝度に基づいて、異物の質量を算出する異物質量算出部と、当該X線透過画像の対象部分における輝度に基づいて、対象部分の質量を算出する対象部分質量算出部と、をさらに備え、重心算出部は、異物重心算出部により算出された異物の重心、対象部分重心算出部により算出された対象部分の重心、異物質量算出部により算出された異物の質量、および、対象部分質量算出部により算出された対象部分の質量、に基づいて、被検査物の重心を算出する。
【0011】
上記構成によれば、異物の重心および対象部分の重心だけでなく、異物の質量および対象部分の質量を算出しているので、被検査物(異物を含むもの)の重心をより正確に算出することができる。具体的には、被検査物の重心が異物の影響を顕著に受ける場合(例えば、対象部分より異物の密度が極めて大きい場合等)において、異物の重心側に偏る被検査物の重心を精度良く算出することができる。
【0012】
X線検査装置において、異物質量算出部により算出された異物の質量と、対象部分質量算出部により算出された対象部分の質量と、に基づいて、被検査物の質量を算出する被検査物質量算出部と、被検査物質量算出部により算出された被検査物の質量と、重心算出部により算出された被検査物の重心と、に基づいて、X線照射位置より下流側に配置される振分装置の振分力および振分タイミングの少なくとも一方を調整する振分制御部と、をさらに備える。
【0013】
上記構成によれば、被検査物の質量に合わせて振分装置の振分力を調整することができると共に、被検査物の重心が所定の位置に到達するタイミングに合わせて振分装置の振分タイミングを調整することができる。これにより、異物が混入した被検査物であっても確実に振り分けることができる。
【0014】
X線検査装置において、異物検出部により検出された異物の種類を特定する異物種類特定部をさらに備え、異物質量算出部は、異物種類特定部によって特定された異物の種類に基づいて、異物の質量を算出する。
【0015】
上記構成によれば、異物の種類(例えば、金属、樹脂等)を特定することによって、当該異物の密度が分かる。このため、異物の質量を精度良く算出することが可能となる。これにより、対象部分とは異なる密度を有する異物が混入したとしても、被検査物の重心を精度良く算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係るX線検査装置を含むX線検査システムの全体構成を示した斜視図である。
【図2】図1に示したX線検査システムのブロック図である。
【図3】図1に示したX線検査装置の制御部の機能ブロック図である。
【図4】被検査物の重心Gを算出する方法を説明するための模式図である。
【図5】X−Y平面座標に配置された被検査物のX線透過画像を示した図である。
【図6】図1に示したX線検査装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【図7】図6に示した重心算出の詳細を説明するためのフローチャートである。
【図8】変形例に係るランク分けシステムの(a)動作方法を示したフローチャート、及び、(b)画像処理の詳細を説明するための被検査物のX線透過画像の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態に係るX線検査装置300を備えたX線検査システム100について図面を参照しながら説明する。
【0018】
[X線検査システムの全体構成]
本実施形態に係るX線検査システム100は、図1に示すように、被検査物Bを搬送しながらX線検査するものであって、当該X線検査によって良品または不良品と判断された被検査物Bを振り分ける装置である。上記した「良品」は、被検査物Bに異物が混入していないと判断された被検査物Bであり、「不良品」は、被検査物Bに異物が混入していると判断された被検査物Bである。このX線検査システム100は、上流側から順に、被検査物Bを後述するX線検査装置300内に搬入する搬入コンベア200と、搬入コンベア200により搬入される被検査物BにX線を照射してX線検査を行うX線検査装置300と、X線検査装置300により検査された被検査物BをX線検査装置300外に搬出する搬出コンベア400と、X線検査装置300により検査された被検査物Bを良品または不良品として振り分ける振分装置500と、を備えている。
【0019】
[搬入コンベア]
搬入コンベア200は、図1に示すように、被検査物Bを矢印A方向に搬送し、後述するX線検査装置300内に当該被検査物Bを搬入する。この搬入コンベア200は、X線検査装置300の搬送コンベア340に被検査物Bを受け渡し、当該受け渡された被検査物Bは、後述する搬入口311を通過してシールドボックス310内に搬入される。
【0020】
[X線検査装置]
X線検査装置300は、図1に示すように、搬入コンベア200により搬入される被検査物BにX線を照射して、当該被検査物B内に異物Cが混入しているか否かの検査を行う。このX線検査装置300は、主として、筺体であるシールドボックス310と、被検査物BにX線を照射するX線源320と、X線源320から照射されたX線を検知するラインセンサ330と、上流の搬入コンベア200と下流の搬出コンベア400との間に配置される搬送コンベア340と、X線透過画像P等の各種の情報を表示する表示部350と、当該X線検査装置300の各部の動作を統括する制御部360と、を有している。
【0021】
[シールドボックス]
シールドボックス310は、X線遮蔽構造を有している。このシールドボックス310には、被検査物Bを搬入するための搬入口311が形成されていると共に、被検査物Bを搬出するための搬出口312が形成されている。なお、この搬入口311および搬出口312のそれぞれには、X線遮蔽カーテン(図示せず)が設けられている。そして、シールドボックス310の内部には、上記したX線源320およびラインセンサ330等が収容されている。
【0022】
[X線源]
X線源320は、搬送コンベア340の上方に配置されており、搬送コンベア340の下方に配置されたラインセンサ330に向かって、搬送コンベア340による搬送方向(矢印A方向)に直交する方向に扇状にX線を照射する。
【0023】
[ラインセンサ]
ラインセンサ330は、搬送コンベア340の下方に配置されており、X線源320から照射されたX線を検知する。このラインセンサ330は、搬送コンベア340による搬送方向(矢印A方向)に直交する方向に並んで配置された複数の素子から構成されている。
【0024】
[搬送コンベア]
搬送コンベア340は、搬入コンベア200から受け取った被検査物Bを搬出コンベア400まで搬送するために設けられており、途中で上記したX線源320からのX線が照射されるX線照射位置Tにおいて、被検査物BのX線検査を行う。
【0025】
[表示部]
表示部350は、後述するX線透過画像作成部367(図3参照)により形成されるX線透過画像Pを表示する等、各種の情報を表示するために設けられている。
【0026】
[制御部]
制御部360は、図2に示すように、X線検査装置300のX線源320、ラインセンサ330、搬送コンベア340および表示部350と通信可能に接続されている。また、本実施形態の制御部360は、搬入コンベア200、搬出コンベア400、および、振分装置500と通信可能に接続されている。この制御部360は、図3に示すように、搬送コンベア制御部363、振分信号送信部364、X線源制御部365、表示制御部366、X線透過画像作成部367、異物検出部368、異物種類特定部369、異物重心算出部370、対象部分重心算出部371、異物質量算出部372、対象部分質量算出部373、被検査物質量算出部374、および、被検査物重心算出部375を有している。
【0027】
搬送コンベア制御部363は、X線検査装置300の搬送コンベア340と通信可能に接続されており、当該搬送コンベア340の搬送速度等を制御する。
【0028】
振分信号送信部364は、振分装置500に制御信号を送信するために、当該振分装置500と通信可能に接続されている。この振分信号送信部364は、後述する被検査物重心算出部375から送信される被検査物Bの重心Gと、後述する被検査物質量算出部374から送信される被検査物Bの質量Mとを受信して、当該受信した被検査物Bの重心Gおよび質量Mに基づいて、振分装置500を駆動するタイミングおよび駆動力を制御する制御信号を出力し、振分装置500に送信する。
【0029】
X線源制御部365は、X線源320から照射されるX線の強度等を調整するための制御信号をX線源320に送信するために、X線源320と通信可能に接続されている。また、表示制御部366は、X線透過画像作成部367により形成されるX線透過画像P等を表示するための制御信号を表示部350に送信するために、表示部350と通信可能に接続されている。
【0030】
X線透過画像作成部367は、ラインセンサ330により検知されたX線に係るX線検知データを受信可能に構成されており、当該X線検知データに基づいて、被検査物BのX線透過画像P(図4参照)を形成する。また、異物検出部368は、X線透過画像作成部367により形成されたX線透過画像Pに基づいて、被検査物B内に異物Cが混入しているか否かを判定する。具体的には、X線透過画像Pに所定の画像処理を施して、異物Cを抽出することにより、被検査物B内に異物Cが混入しているか否かを判定する。そして、異物種類特定部369は、異物検出部368により検出された異物Cの種類を特定する。本実施形態の異物種類特定部369は、当該異物Cが金属であるか否かを判断する。具体的には、異物種類特定部369は、前述した異物検出部368により抽出された異物画像の輝度や形状等から、当該異物Cが金属であるか否かを判断する。
【0031】
図4に示すように、異物重心算出部370は、上記した異物検出部368により検出された異物Cの重心G1を算出する。この異物重心算出部370は、X線透過画像作成部367により形成されたX線透過画像Pにおける異物C部分の形状および輝度に基づいて、当該異物Cの重心G1を算出する。
具体的には、X−Y平面座標上のX線透過画像Pおいて、各画素の座標を(x,y)で表すと共に、各画素において異物C部分(図4中の太線の斜線領域)の輝度をs,s,s,…,s(図4中の太線の斜線領域以外の領域は、輝度が0となる)とすると、異物Cの重心G1の座標(X1,Y1)は、以下の式(1)および(2)により算出される。
X1=(s+s+s+…+s)/N1…(1)
Y1=(s+s+s+…+s)/N1…(2)
上記した重心G1の計算においては、異物C部分の輝度s,s,s,…,sを、異物C部分の各画素における質量とみなして計算している。また、N1は、異物C部分を構成する画素数である。
【0032】
対象部分重心算出部371は、被検査物Bの異物Cを除く部分(以下、当該部分を対象部分Dとする)の重心G2を算出するために設けられている。この対象部分重心算出部371は、X線透過画像作成部367により形成されたX線透過画像Pにおける対象部分Dの形状および輝度に基づいて、当該対象部分Dの重心を算出する。
具体的には、図4に示すように、X−Y平面座標上において、各画素の座標を(x,y)で表すと共に、各画素において対象部分D(図4中の細線の斜線領域)の輝度をt,t,t,…,t(図4中の細線の斜線領域以外の領域は、輝度が0となる)とすると、異物Cの重心G2の座標(X2,Y2)は、以下の式(3)および(4)により算出される。
X2=(t+t+t+…+t)/N2…(3)
Y2=(t+t+t+…+t)/N2…(4)
上記した重心G2の計算においては、対象部分Dの輝度t,t,t,…,tを、対象部分Dの各画素における質量とみなして計算している。また、N2は、対象部分Dを構成する画素数である。
【0033】
異物質量算出部372は、異物検出部368により検出された異物Cの質量M1を算出する。この異物質量算出部372は、X線透過画像作成部367により形成されたX線透過画像Pにおける異物C部分の各単位領域における輝度(s,s,s,…,s)、および、異物種類特定部369により特定された異物Cの種類に基づいて、当該異物Cの質量M1を算出する。具体的には、異物質量算出部372は、異物C部分における各単位領域(1画素)の輝度に、異物種類特定部369により特定された異物Cの密度を乗じて、各単位領域の質量を推定し、それらの合計を異物Cの質量M1として算出する。なお、上記した「異物Cの密度」の値は、予め制御部360に記憶させている。
また、対象部分質量算出部373は、対象部分Dの質量M2を算出する。この対象部分質量算出部373は、X線透過画像作成部367により形成されたX線透過画像Pにおける対象部分Dの各単位領域における輝度(t,t,t,…,t)、および、対象部分Dの種類に基づいて、当該対象部分Dの質量M2を算出する。具体的には、対象部分質量算出部373は、当該対象部分Dにおける各単位領域(1画素)の輝度に、対象部分Dの密度を乗じて、各単位領域の質量を推定し、それらの合計を対象部分Dの質量M2として算出する。なお、上記した「対象部分Dの密度」の値は、予め制御部360に記憶させている。
そして、被検査物質量算出部374は、異物質量算出部372により算出された異物Cの質量M1と、対象部分質量算出部373により算出された対象部分Dの質量M2とを合算して、被検査物B全体の質量Mを算出する。
【0034】
そして、本実施形態では、図5に示すように、被検査物重心算出部375は、被検査物Bの重心Gを算出する。具体的には、被検査物重心算出部375は、異物重心算出部370により算出された異物Cの重心G1と、対象部分重心算出部371により算出された対象部分Dの重心G2、異物質量算出部372により算出された異物Cの質量M1、および、対象部分質量算出部373により算出された対象部分Dの質量M2、に基づいて、被検査物Bの重心Gを算出する。具体的には、被検査物重心算出部375は、被検査物Bの重心Gと異物Cの重心G1とを結ぶ線分の長さをL1、被検査物Bの重心Gと対象部分Dの重心G2とを結ぶ線分の長さをL2、とした場合、被検査物Bの重心Gを、式(5)を満たすように算出する。
L1:L2=M2:M1…(5)
【0035】
[搬出コンベア]
搬出コンベア400は、上記したX線検査装置300外に被検査物Bを搬出し、被検査物Bを矢印A方向に搬送する。この搬出コンベア400は、X線検査装置300の搬送コンベア340から被検査物Bを受け取り、この被検査物Bは、搬出口312を通過してシールドボックス310外に搬出される。
【0036】
[振分装置]
図2に示した振分装置500は、振分信号送信部364から送信される制御信号に基づいて、異物Cが混入している被検査物Bを、通常の被検査物Bの搬送ルートから排出することにより、良品および不良品を振り分ける。すなわち、振分装置500は、被検査物BがX線検査装置300により良品と判断された場合(異物検出部368により異物が検知されない場合)には、当該良品である被検査物Bをそのまま搬出コンベア400上で搬送させ、被検査物BがX線検査装置300により不良品と判断された場合(異物検出部368により異物が検知された場合)には、当該不良品である被検査物Bを通常の搬送ルートから排出して、当該搬送ルート外に配置された不良品ボックス(図示せず)に回収させる。この振分装置500は、被検査物Bにエアを吹き付けることにより、不良品である被検査物Bを不良品ボックスに移動させる。本実施形態の振分装置500は、搬出コンベア400により搬送される被検査物Bの重心Gが振分装置500の正面に到達したタイミング且つ被検査物Bの質量Mに応じた吹き出し力で、不良品である被検査物Bにエアを吹き付ける。
【0037】
[X線検査装置の動作説明]
X線検査装置300の動作を、図6を参照しながら説明する。
【0038】
まず、搬入コンベア200によりX線検査装置300内に被検査物Bが搬入されると、被検査物BにX線源320からX線が照射されて、被検査物Bを透過したX線がラインセンサ330により検知される(ステップS1)。
そして、X線透過画像作成部367は、ラインセンサ330により検知されたX線に係るX線検知データに基づいて、被検査物BのX線透過画像P(図4参照)を作成する(ステップS2)。
次に、ステップS2において取得されたX線透過画像Pに基づいて、異物検出部368は、当該X線透過画像Pに画像処理を施して、被検査物B内に異物Cが混入しているか否かを判断する(ステップS3)。
【0039】
異物検査(ステップS3)の結果、被検査物B内に異物Cが混入していない場合(ステップ4:No)、当該被検査物Bは良品であるので、搬出コンベア400を駆動して、被検査物Bを下流に搬送する。
【0040】
一方、異物検査(ステップS3)の結果、被検査物B内に異物Cが混入している場合(ステップS4:Yes)、異物種類特定部369により当該異物Cの種類が特定される(ステップS5)。そして、本実施形態では、被検査物重心算出部375により、異物Cが混入している被検査物Bの重心Gが算出される(ステップS6)。このステップS6における被検査物Bの重心Gの算出方法の詳細については、後述する。次に、被検査物質量算出部374により、被検査物Bの質量Mが算出される(ステップS7)。
その後、不良品である被検査物Bが搬出コンベア400により振分装置500の正面まで搬送されて、当該振分装置500から吹き出されるエアにより当該被検査物Bが不良品ボックスに回収される(ステップS8)。なお、この振分装置500による振分タイミング(エアを吹き付けるタイミング)は、被検査物Bの重心Gが当該振分装置500の正面に到達した瞬間であり、振分装置500によるエアの吹き付け力は、被検査物Bの質量Mに応じた大きさである。
【0041】
[被検査物の重心算出方法]
上記したステップS6における被検査物Bの重心Gの算出方法について、図7を参照しながら説明する。
【0042】
まず、異物重心算出部370により異物Cの重心G1が算出される。具体的には、異物重心算出部370は、上記式(1)および(2)により、異物Cの重心G1の座標(X1,Y1)(図4参照)を算出する(ステップS11)。また、対象部分重心算出部371により対象部分Dの重心G2が算出される。具体的には、対象部分重心算出部371は、上記式(3)および(4)により、対象部分Dの重心G2の座標(X2,Y2)(図4参照)を算出する(ステップS12)。
【0043】
そして、異物質量算出部372により、異物Cの質量M1が算出される(ステップS13)。具体的には、異物質量算出部372は、異物C部分における各単位領域(1画素)の輝度に、異物Cの密度を乗じて、各単位領域の質量を推定し、それらの合計を異物Cの質量M1として算出する。なお、異物Cの種類は、異物種類特定部369により特定されている(ステップS5参照)。また、対象部分質量算出部373により、対象部分Dの質量M2が算出される(ステップS14)。具体的には、対象部分質量算出部373は、対象部分Dにおける各単位領域(1画素)の輝度に、対象部分Dの密度を乗じて、各単位領域の質量を推定し、それらの合計を対象部分Dの質量M2として算出する。対象部分Dの種類は、被検査物Bの種類が予め分かっているので、その密度を予め記憶しておくことができる。
【0044】
そして、本実施形態では、被検査物重心算出部375により、上記した異物Cの重心G1の座標(X1,Y1)、対象部分Dの重心G2の座標(X2,Y2)、異物Cの質量M1、および、対象部分Dの質量M2に基づいて、被検査物Bの重心Gを算出する。具体的には、被検査物重心算出部375は、上記式(5)により、被検査物Bの重心Gを算出する。
【0045】
[本実施形態のX線検査装置の効果]
上記実施形態に係るX線検査装置300では、異物Cの重心G1と対象部分Dの重心G2とを別個に算出し、それらの重心G1,G2に基づいて、被検査物B全体の重心Gを算出することができる。これにより、被検査物Bに混入する異物Cの質量、大きさ、位置等に起因して、被検査物Bの重心Gが異物Cの影響を受ける場合でも、正確に被検査物Bの重心Gを算出することができる。
【0046】
また、本実施形態に係るX線検査装置300では、上記式(5)および図5に示したように、異物Cの質量M1および対象部分Dの質量M2に基づいて、被検査物Bの重心Gを算出しているので、被検査物Bの重心Gをより正確に算出することができる。すなわち、被検査物Bの重心Gが異物Cの影響を顕著に受ける場合(例えば、対象部分Dより異物Cの密度が極めて大きい場合等)において、異物Cの重心G1側に偏る被検査物Bの重心Gを精度良く算出することができる。
【0047】
また、本実施形態に係るX線検査装置300では、被検査物Bの質量Mに合わせて振分装置500によるエアの吹き出し力を調整することができると共に、被検査物Bの重心Gが振分装置500の正面に到達するタイミングに合わせて振分装置500によるエアの吹き出しタイミングを調整することができる。これにより、不良品である被検査物Bを確実に不良品ボックス(図示せず)に振り分けることができる。
【0048】
また、本実施形態に係るX線検査装置300では、異物Cの種類(金属か否か)を特定することによって、当該異物Cの密度が分かる。このため、異物Cの質量M1を精度良く算出することができる。これにより、対象部分Dとは異なる密度を有する異物Cが混入したとしても、被検査物Bの重心Gを精度良く算出することができる。
【0049】
[請求項の各構成要素と上記実施形態の各部との対応関係]
上記実施形態においては、X線検査装置300が「X線検査装置」に相当し、X線源320が「X線源」に相当し、ラインセンサ330が「センサ」に相当し、振分信号送信部364が「振分制御部」に相当し、X線透過画像作成部367が「X線透過画像作成部」に相当し、異物検出部368が「異物検出部」に相当し、異物種類特定部369が「異物種類特定部」に相当し、異物重心算出部370が「異物重心算出部」に相当し、対象部分重心算出部371が「対象部分重心算出部」に相当し、異物質量算出部372が「異物質量算出部」に相当し、対象部分質量算出部373が「対象部分質量算出部」に相当し、被検査物質量算出部374が「被検査物質量算出部」に相当し、被検査物重心算出部375が「重心算出部」に相当する。
【0050】
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものでないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明だけではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0051】
例えば、上記実施形態では、上記式(5)を用いて、被検査物Bの重心Gが質量の大きい異物C又は対象部分Dに偏るようにしたが、本発明はこれに限らず、被検査物Bの重心Gを、異物Cの重心G1と対象部分Dの重心G2との中点として、簡易的に算出しても良い。
【0052】
また、上記実施形態では、異物Cが混入している被検査物Bを不良品、異物Cが混入していない被検査物Bを良品と判断するX線検査装置300について説明したが、本発明はこれに限らず、被検査物の質量によって被検査物をランク分けするシステムであってもよい。
この被検査物(例えば、乾燥牡蠣)のランク分けシステムは、被検査物の推定重量システムであって、ランク選別(例えば、推定重量7g〜8gのランク、推定重量8g〜9.5gのランク等)を行う。ところが、重量が小さい(例えば、2g〜5g)複数の被検査物が一塊となっている場合、このランク分けシステムは、当該一塊の被検査物を大きなランクとして排出する可能性がある。そこで、このランク分けシステムでは、図8(a)のフローチャートに示すように、被検査物のX線透過画像P1を取得して、被検査物の質量を推定する(ステップS21)。なお、この被検査物の質量の推定方法は、上記した異物質量算出部372および対象部分質量算出部373による質量の算出方法と同様とする。そして、図8(b)に示すように、取得したX線透過画像P1に画像処理を施して(ステップS22)、被検査物の肉厚部分を抽出する(被検査物の肉厚部分以外の部分を消し込む(背景飽和))。そして、画像処理の結果、肉厚部分の個数をカウントすることにより、複数の被検査物が一塊となっていないか検査する(ステップS23)。その結果、複数の被検査物が一塊となっている場合(肉厚部分が複数の場合)には、当該一塊の被検査物を不良品として不良品ボックス等に回収する。
【0053】
また、上記実施形態では、振分装置500がX線検査装置300とは独立した機構であると説明したが、本発明はこれに限らず、X線検査装置300に振分装置500が含まれていても良い。
【0054】
また、上記実施形態では、X線透過画像における輝度と質量とが等価であるとして計算したが(式(1)〜(4)参照)、本発明はこれに限らず、以下の方法により被検査物Bの質量M、異物Cの質量M1、および、対象部分Dの質量M2を算出しても良い。
具体的には、予め実質量が分かっている被検査物Bについての複数のX線透過画像を取得する。そして、X線透過画像に含まれる領域の明るさとその推定質量との関係を示す数式に基づいてテーブルを作成する。そして、予め分かっている実質量を参照して、推定質量が実質量に近づくように当該テーブルを調整する。そして、調整後のテーブルに基づいて単位領域ごとの推定質量を求め、これらを合計して被検査物Bの推定合計質量を求める。
【0055】
また、上記実施形態の異物種類特定部369は、異物Cが金属であるか否かを判断したが、本発明はこれに限らず、異物種類特定部369が、異物Cが金属以外の、樹脂、木、石、ガラス等であるか否かを判断しても良いし、金属の種類、樹脂の種類等を判断しても良い。
【0056】
また、上記実施形態の振分装置500は、被検査物Bに当接して当該被検査物Bを移動させる振分機構でも良い。
【0057】
また、上記実施形態では、被検査物B(対象部分D)が一種類の物品から構成される例について説明したが、本発明はこれに限らず、被検査物B(対象部分D)が複数種類の物品から構成されても良い。対象部分Dが物品Eおよび物品Fから構成されている場合、被検査物B全体の重心Gは、異物Cの重心G1と、対象部分Dの重心G2とにより算出される。この対象部分Dの重心G2は、物品Eの重心と、物品Fの重心とから算出される。
【符号の説明】
【0058】
300 X線検査装置
320 X線源
330 ラインセンサ
364 振分装置制御部
367 X線透過画像作成部
368 異物検出部
369 異物種類特定部
370 異物重心算出部
371 対象部分重心算出部
372 異物質量算出部
373 対象部分質量算出部
374 被検査物質量算出部
375 被検査物重心算出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検査物にX線を照射するX線源と、
前記X線源から照射されて前記被検査物を透過したX線を検知するセンサと、
前記センサにより検知されたX線に基づいて、前記被検査物に異物が混入しているか否かを検出する異物検出部と、
前記異物検出部により検出された前記異物の重心を算出する異物重心算出部と、
前記被検査物の前記異物を除いた対象部分の重心を算出する対象部分重心算出部と、
前記異物重心算出部により算出された異物の重心と、前記対象部分重心算出部により算出された対象部分の重心とに基づいて、前記被検査物の重心を算出する重心算出部と、を備えたことを特徴とするX線検査装置。
【請求項2】
前記センサにより検知されたX線に基づいて、前記被検査物のX線透過画像を作成するX線透過画像作成部と、
当該X線透過画像の前記異物部分における輝度に基づいて、前記異物の質量を算出する異物質量算出部と、
当該X線透過画像の前記対象部分における輝度に基づいて、前記対象部分の質量を算出する対象部分質量算出部と、をさらに備え、
前記重心算出部は、前記異物重心算出部により算出された異物の重心、前記対象部分重心算出部により算出された対象部分の重心、前記異物質量算出部により算出された異物の質量、および、前記対象部分質量算出部により算出された対象部分の質量、に基づいて、前記被検査物の重心を算出することを特徴とする、請求項1に記載のX線検査装置。
【請求項3】
前記異物質量算出部により算出された異物の質量と、前記対象部分質量算出部により算出された対象部分の質量と、に基づいて、前記被検査物の質量を算出する被検査物質量算出部と、
前記被検査物質量算出部により算出された被検査物の質量と、前記重心算出部により算出された被検査物の重心と、に基づいて、前記X線源によるX線照射位置より下流側に配置される振分装置の振分力および振分タイミングの少なくとも一方を調整する振分制御部と、をさらに備えることを特徴とする、請求項2に記載のX線検査装置。
【請求項4】
前記異物検出部により検出された異物の種類を特定する異物種類特定部をさらに備え、
前記異物質量算出部は、前記異物種類特定部によって特定された前記異物の種類に基づいて、前記異物の質量を算出することを特徴とする、請求項2または3に記載のX線検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−68030(P2012−68030A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−210542(P2010−210542)
【出願日】平成22年9月21日(2010.9.21)
【出願人】(000147833)株式会社イシダ (859)
【Fターム(参考)】