説明

X線検査装置

【課題】シールドボックス内部の温度上昇を抑制する。
【解決手段】X線検査装置は、シールドボックス200と、シールドボックス200の内部に配置されたX線源300およびX線源300を制御する制御部800と、を備えたX線検査装置である。このX線検査装置には、シールドボックス300の天面部230の内面で、かつX線源300の上方に、気体を集める凹部231が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、X線検査装置の内部において高温となるX線源を冷却する技術が種々提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1には、X線を発生するX線源と、該X線源を取り囲んで密封する装置壁と、を備え、装置壁の内側に、内部伝熱体が設けられており、装置壁の外側に、内部熱伝導体から装置壁を介して伝導される熱を放熱する外部熱伝導体が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−292497号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年では、X線源の管電圧を高くすることによって、高精度なX線検査を行っている。この場合、X線源の発熱量が大きくなり、当該X線源を収容する筺体内部の温度が上昇する。そうすると、筺体内部に配置される制御部が高温となり故障の原因となる。
【0006】
そこで、本発明の目的は、筺体内部の温度上昇を抑制することが可能なX線検査装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るX線検査装置は、筐体と、筐体の内部に配置されたX線源およびX線源を制御する制御部と、を備えたX線検査装置であって、筺体の内面で、かつX線源の上方に、気体を集める凹部が設けられている。
【0008】
上記構成によれば、X線源の上方に凹部を設けることによって、筺体内部で熱せられた気体を集めることができるので、当該熱せられた気体が他の領域に拡散することを抑制できる。また、筺体の内面に凹部を形成することにより、筐体の内面がフラットの場合と比べて、筺体の内面の表面積を大きくすることができる。これにより、筺体内部で熱せられた空気と接する筺体の内面の表面積が増加するので、筺体内の気体の冷却効率を向上させることができる。
【0009】
X線検査装置において、冷却機をさらに備え、冷却機から凹部に冷却空気が吹き付けられ、かつ冷却機の吹き付け方向に沿って凹部が延在配置される。
【0010】
上記構成によれば、凹部に熱せられた空気が集められているため、冷却機で冷却しやすい。その結果、効率良く筺体内温度を下げることができる。
また、冷却空気を吹き付ける方向に沿って凹部が延在配置されているので、凹部の側壁に沿って空気流れを形成することができる。その結果、他の領域に流れる空気の拡散を抑制することができる。
さらに、上記構成によれば、冷却機から冷却空気が凹部に吹き付けられるため、凹部の下部に配置されたX線源に冷却空気が直接吹き付けられない。そのため、X線源の環境温度の急激な変動を抑制することができ、X線源の急激な温度変動によるX線の出力を安定させることができる。
【0011】
X線検査装置において、筐体は、凹部に連設される縦面と、縦面に連設される底面と、を有し、凹部、縦面、および底面は、X線源から所定空間を設けて配置され、X線源の周囲を縦循環する縦循環対流経路を形成する。
【0012】
上記構成によれば、X線源の周囲を縦循環する縦循環対流経路を形成することができるので、冷却機からの冷却空気を、X線源の上方の凹部、縦面、および底面の順で対流させることができる。その結果、X線源の周囲の温度を効率よく下げることができるので、X線源の温度上昇を抑制することができる。
【0013】
X線検査装置において、凹部は、上方傾斜面を有し、縦面は、下方傾斜面を有する。ここでは、X線検査装置の背面側から前面側に傾斜するのを上方傾斜といい、X線検査装置の背面側から前面側に傾斜するのを下方傾斜という。
【0014】
上記構成によれば、冷却機からの冷却空気を当該上方傾斜面に沿って流し、さらに連設される下方傾斜面に沿って流すことができるので、冷却空気が円滑に縦循環する。
【0015】
X線検査装置において、制御部は、冷却機の吹き付け方向から外れて配置される。
【0016】
上記構成によれば、制御部が冷却機の吹き付け方向から外れて配置されるので、冷却空気が制御部に阻害されずに凹部に到達する。これにより、筺体内で熱せられて凹部内に集まった気体を直接冷却することができる。
【0017】
X線検査装置において、凹部は、上方傾斜面を有し、制御部は、上方傾斜面の高さの低い位置の下方に配置される。
【0018】
上記構成によれば、X線源によって熱せられた空気は、上方傾斜面に沿って凹部の高い位置に集まる。これにより、熱せられた空気と凹部の低い位置の下方に配置される制御部とを離間させることができる。その結果、制御部が凹部内に集まった気体により熱せられるのを抑制することができる。したがって、熱影響によって制御部が故障するのを防止することができる。
【0019】
X線検査装置において、筺体の天面は、凹部の傾斜方向と同一方向に傾斜する傾斜面からなる。
【0020】
上記構成によれば、X線検査装置の清掃などで筺体の上面に付着した水などの液体が、当該傾斜面に沿って流れるので、筺体の天面に液体が溜まるのを防止することができる。これにより、X線検査装置を清潔に保つことができる。食品等の被検査物を対象とするX線検査装置の場合、特に清潔さが要求されるので、筺体の天面を傾斜面にすることは、非常に有効である。
【0021】
X線検査装置において、X線源から照射されたX線を検出するラインセンサと、ラインセンサを収納し、開口部を有するセンサボックスと、センサボックス内で、ラインセンサとの間に所定空間を隔てた状態で、ラインセンサと略並行に配置された遮蔽部材と、をさらに備え、遮蔽部材は、センサボックスの開口部と対向する面との間に、所定空間を有する。
【0022】
上記構成によれば、X線源からラインセンサに照射されたX線が当該ラインセンサ等で反射した場合でも、当該反射したX線を遮蔽部材により遮蔽することにより、センサボックス外にX線が漏洩するのを抑制することができる。
さらに、遮蔽部材をラインセンサと所定空間を設けて略並行に配置するとともに、遮蔽部材をセンサボックスの開口部と対向する面との間に所定空間を有した状態で配置することによって、開口部から流入した空気が、ラインセンサに沿って対向する面に向かって流れ、対向する面側における遮蔽部材の所定空間を通過して、開口部側に戻る対流を生成することができる。その結果、当該対流により、ラインセンサの冷却効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態に係るX線検査装置の全体構成を示した斜視図である。
【図2】図1に示したX線検査装置の本体部の側面図である。
【図3】図2に示したX線検査装置の本体部の(a)内部構成図、(b)天面部の詳細模式図である。
【図4】図3のA−A断面図である。
【図5】図3のB−B断面図である。
【図6】図3のC−C断面図である。
【図7】図6に示したコンベアユニット周辺の拡大図である。
【図8】図6に示したセンサユニットの内部構成を示した模式図である。
【図9】図1に示したX線検査装置のX線遮蔽扉を内側から見た平面図である。
【図10】図9のD−D断面図である。
【図11】図9に示したX線遮蔽扉に設けられるロック解除機構の(a)平面図、(b)E−E断面図である。
【図12】実施例に係るX線検査装置の各寸法を示した(a)X線検査装置の正面図、(b)本体部の平面図、(c)本体部の正面図、(d)センサボックスの正面図、(e)検査室周辺の正面図、(f)搬入口および搬出口の正面図である。
【図13】比較例に係るX線検査装置の寸法を示した(a)正面図、(b)平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の一実施形態に係るX線検査装置100について図面を参照しながら説明する。
【0025】
[X線検査装置の全体構成]
本実施形態に係るX線検査装置100は、図1に示すように、食品等の被検査物Bの生産ラインにおいて、被検査物BのX線検査を行う装置である。このX線検査装置100は、上流側の搬入コンベア101から搬送されてくる被検査物Bに対して、X線を照射することによって、当該被検査物Bを透過したX線を検知して被検査物Bの不良判断を行う。なお、前述した「不良判断」とは、被検査物Bに異物が混入しているか否かの判断(異物検査)、被検査物Bを構成する内容物が規定レベルを満たすか否かの判断(欠品検査、レベルチェック)など、を言う。
【0026】
本実施形態に係るX線検査装置100は、従来のX線検査装置(管電圧:25kV〜70kV)に比べて、高出力タイプ(管電圧:100kV以上)のX線検査装置であって、高精度のX線検査が可能である。具体的には、X線検査装置100は、X線源300から照射される高エネルギー帯のX線と低エネルギー帯のX線とをそれぞれ検知して、高エネルギー帯のX線を検知して得られたX線透過画像と低エネルギー帯のX線を検知して得られたX線透過画像とに画像処理を施して、高精度のX線検査を行う。このX線検査装置100は、図1に示すように、脚部110、及び、脚部110に固定される本体部120を備えている。そして、図2および図3に示すように、本体部120は、主として、シールドボックス(筺体)200と、X線源300と、センサユニット400と、コンベアユニット500と、X線遮蔽扉600と、X線遮蔽カーテン670と、冷却機700と、制御部800と、フロントパネル900とを備えている。
【0027】
本実施形態に係るX線検査装置100は、図1,図4および図5に示すように、X線源300の照射面D(図3参照)を含む面と交差する交差領域T1と、その交差領域T1の両側方に配置される他の領域T2とを有している。交差領域T1は、X線検査装置100の幅方向(X方向)中央部であり、他の領域T2は、交差領域T1を除く領域である。このX線検査装置100の外観は、交差領域T1が他の領域T2より外側に突出している。この交差領域T1には、他の領域T2よりもX線遮蔽機能が高い遮蔽手段(冷却機700、フロントパネル900、シールドボックス200の天面部230、及び、X線遮蔽扉600の正面視中央部601)が設けられる。この交差領域T1を構成する面の各々は、垂線がX線源300を向くように配置される。
【0028】
[シールドボックス(筺体)]
シールドボックス200は、X線遮蔽構造を有している。このシールドボックス200には、図2および図3に示すように、被検査物Bを搬入するための搬入口201が形成されていると共に、被検査物Bを搬出するための搬出口202が形成されている。なお、この搬入口201および搬出口202のそれぞれには、X線遮蔽カーテン670が設けられている。図3に示すように、シールドボックス200の内部には、X線源300および制御部800等が収容されている。このシールドボックス200は、図2および図3に示すように、フロントパネル900が設けられる前面部210、前面部210に対向配置され、冷却機700が設けられる背面部220、X線源300の上方に設けられる天面部230、天面部230に対向配置され、X線源300の下方に設けられる底面部240、上記した搬入口201が設けられる右側面部250、および、搬出口202が設けられる左側面部260を有している。ここでは、搬入口201が右側面部250に、搬出口202が左側面部260に設けられる例について説明したが、コンベアユニット500による搬送方向を逆にすれば、右側面部250に搬出口202が設けられ、左側面部260に搬入口201が設けられても良い。また、シールドボックス200は、図3に示すように、底面部240に連続して設けられ、鉛直方向(Z方向)に延在する奥壁部270と、当該奥壁部270の下端から背面部220の下端まで延びる奥底面部280とを有している。これらの前面部210、背面部220、天面部230、底面部240、右側面部250、左側面部260、奥壁部270、および、奥底面部280によって区画された空間が、X線源300および制御部800などを収容する収容空間S1となる。
【0029】
ここで、本実施形態では、図3に示すように、筺体200の内面で、かつX線源300の上方に、気体を集める凹部231が設けられている。本実施形態では、図3(b)に示すように、凹部231は、天面部230の内面に形成されている。凹部231は、背面部220側から前面部210側に向かって徐々に高くなる上方傾斜面232を有している。そして、凹部231の高さの低い位置PL(図3(b)参照)の下方には、制御部800(図3(a)参照)が配置されており、凹部231の高さの高い位置PH(図3(b)参照)の下方には、X線源300(図3(a)参照)が配置されている。また、本実施形態では、凹部231は、後述する冷却機700の吹き付け方向(斜め上方:矢印F方向)に沿って延在配置されている。
【0030】
この凹部231が形成される天面部230は、その外側の部分と比較して、外側に突出しており、交差領域T1に配置されるX線の遮蔽手段として機能する。なお、この天面部230は、着脱可能であって、当該天面部230を取り外した箇所には、後述する冷却機700が装着可能となっている。X線検査装置100の奥行方向(Y方向)にスペースを確保することが困難な場合に、背面部220に取り付けられる冷却機700を、天面部230に取り付けることが可能である。
【0031】
図3に示すように、収容空間S1に配置されるX線源300は、前述した凹部231が形成され、且つ上方傾斜する天面部230、当該天面部230に連設され、且つ下方傾斜する前面部210、および、当該前面部210に連設される底面部240の各々から所定空間を設けて配置されている。これにより、X線源300の周囲において、気体が縦循環する縦循環対流経路R1が形成される。なお、ここでの「縦循環」とは、X線源300の上方から下方に気体が流れることを意味する。
【0032】
また、図3(b)に示すように、天面部230の上面233は、凹部231の上方傾斜面232の傾斜方向と同一方向に傾斜する上方傾斜面からなる。この上面233は、水平面に対して傾斜することによって、当該上面233に付着した水などが外側に流れ落ちる。また、他の領域T2における上面234(図1参照)も、上記した上面233と同様に傾斜する上方傾斜面からなる。
【0033】
また、本実施形態では、右側面部250および左側面部260には、シールドボックス200内の気体を排出するための通気口は設けられていない。
【0034】
[X線源]
X線源300は、被検査物BにX線を照射するために設けられている。本実施形態では、X線源300は、高エネルギー帯のX線を照射するために、X線源300の管電圧を100kV以上に設定することが可能である。このように、X線源300を高電圧で使用する場合、X線源300の発熱量が多くなる。そうすると、図3(a)および(b)に示すように、X線源300によって熱せられた気体は、上昇して凹部231の高さが高い位置PH(図3(b)参照)に向かう。これにより、シールドボックス200内で熱せられた気体が凹部231内に集まる。このX線源300は、上記したシールドボックス200の収容空間S1に配置されており、コンベアユニット500の搬送面Mの下方に配置されたセンサユニット400のラインセンサ410に向かってX線を照射する。X線源300は、コンベアユニット500による搬送方向(矢印X方向)に直交する方向に扇状にX線を照射する(図3のDが示す2点鎖線参照)。本実施形態では、X線源300は、下方に向けてX線を照射するように固定配置されており、当該X線源300から照射されたX線は、シールドボックス200の底面部240に形成される開口(図示せず)を介して、検査室S2に照射される。
【0035】
なお、底面部240の開口には、検査室S2側に延在するX線規制部材241が設けられており、底面部240の開口を通過したX線が搬送方向(矢印X方向)に拡散しないように規制している。なお、上記した検査室S2とは、シールドボックス200の底面部240、シールドボックス200の奥壁部270、コンベアユニット500の搬送面M、X線遮蔽扉600、および、X線遮蔽カーテン670により囲まれる空間をいう。
【0036】
また、底面部240のX線源300側の面には、X線遮蔽板242が設けられている。これにより、X線源300から照射されて、収容空間S1内で反射したX線が外部に漏洩するのを防止することができる。
【0037】
[センサユニット]
センサユニット400は、図6および図7に示すように、コンベアユニット500の搬送面Mの下方に配置されている。このセンサユニット400は、図8に示すように、X線源300から照射されたX線を検知するラインセンサ410と、ラインセンサ410との間に所定空間を設けて略平行に配置された一対の遮蔽部材421および422と、ラインセンサ410および遮蔽部材421,422を収容するセンサボックス430と、を有している。
【0038】
ラインセンサ410は、上下方向(Z方向)に所定の間隔を隔てて配置されるデュアルセンサであって、この2重のセンサによって、X線源300から照射される低エネルギー帯のX線と高エネルギー帯のX線とを検知する。一対の遮蔽部材421および422は、ラインセンサ410の素子配列方向(矢印Y方向)に沿って延在する板状部材であり、当該ラインセンサ410を挟んで対向して配置される。また、センサボックス430の背面部220側の部分には、開口部431が形成されている。この開口部431は、当該開口部431の近傍に配置されたファン950(図3参照)から送風される気体を、センサボックス430内に導入するために設けられている。そして、本実施形態では、遮蔽部材421および422は、センサボックス430の開口部431と対向する面432との間に、所定空間を有するように配置されている。これにより、センサボックス430内において、気体が対流するボックス内対流経路R2が形成される。
【0039】
[コンベアユニット(搬送部)]
コンベアユニット500は、図6および図7に示すように、X線検査装置100の上流側に配置される搬入コンベア101から受け取った被検査物Bを、X線検査装置100の下流側に配置される搬出コンベア102まで搬送するために設けられており、途中で上記したX線源300のX線が照射されるX線照射位置(X線源300の真下の位置)において、被検査物BのX線検査を行う。このコンベアユニット500は、図7に示すように、フレーム510と、駆動ローラ521および3つの従動ローラ522〜524(以下、適宜、駆動ローラ521と従動ローラ522〜524を総称して、ローラ521〜524とする)と、これらのローラ521〜524の外周面に装着されたベルト530と、を有している。ローラ521〜524は、互いに所定の間隔を隔てて配置されており、正面視において、シールドボックス200の右側面部250および左側面部260(図1参照)から僅かに外側に突出する上部ローラ521および522と、当該ローラ521および522の下方に配置される下部ローラ523および524と、から構成されている。上部ローラ521と上部ローラ522とは、同一平面上に配置されると共に、下部ローラ523および524は、当該平面より下方に設けられる。上部ローラ521と522との間隔は、下部ローラ523と524との間隔より大きくなっている。これらのローラ521〜524は、金属製である。このように配置されるローラ521〜524の外周面に装着されるベルト530の内側の領域には、上記したセンサユニット400が配置されている。
【0040】
一対の上部ローラ521および522は、フレーム510に取り付けられるステー511に回転可能に支持されると共に、一対の下部ローラ523および524は、センサボックス430に取り付けられるステー435に回転可能に支持される。したがって、本実施形態では、上部ローラ521および522と、下部ローラ523および524とは、分離可能となっている。そして、本実施形態では、下部ローラ523は、後述する内側カーテン673と中間カーテン672との間の下方に設けられる。また、下部ローラ524は、後述する内側カーテン676と中間カーテン675との間の下方に設けられる。
【0041】
[X線遮蔽扉]
X線遮蔽扉600は、図2に示すように、X線検査装置100の前面に開閉可能に取り付けられており、検査室S2を閉鎖する閉状態(図2の実線)と、検査室S2を開放する開状態(図2の点線)とを取り得る。このX線遮蔽扉600は、図9および図10に示すように、検査室S2側から順に、第1遮蔽部材610、第2遮蔽部材620、及び、第3遮蔽部材630が配置されている。具体的には、第1遮蔽部材610は、検査室S2側の最内側に配置されることで前記検査室S2の前面を形成している。そして、本実施形態では、図9に示すように、第1遮蔽部材610は、検査室S2側の面が連続した平坦面を有している。また、第2遮蔽部材620は、図10に示すように、第1遮蔽部材610の外側に配置されている。また、第3遮蔽部材630は、第2遮蔽部材620の外側で、かつ第2遮蔽部材620に対して所定間隔を有して配置されている。この第2遮蔽部材620は、第1遮蔽部材610および第3遮蔽部材630よりもX線遮蔽機能が高くなっている。具体的には、第2遮蔽部材620は、鉛、カーボン等からなる。このX線遮蔽扉600は、第1遮蔽部材610および第3遮蔽部材630によって内部が空洞の箱型部が形成されており、当該箱型部の内部の空洞に第2遮蔽部材620が配置されている。なお、第1遮蔽部材610および第3遮蔽部材630は、金属製であって、例えば、SUS304からなる。
【0042】
そして、本実施形態では、図9に示すように、X線遮蔽扉600の外面は、上端に向かうにつれて検査室S2の外側に傾斜する。すなわち、X線遮蔽扉600の最外側に配置される第3遮蔽部材630が、X線遮蔽扉600の上端に向かうにつれて検査室S2の外側に傾斜する。また、本実施形態では、図1に示すように、X線遮蔽扉600は、正面視中央部601が両側602よりも検査室S2の外側に設けられている。この正面視中央部601は、正面視において、第1遮蔽部材610、第2遮蔽部材620、および、第3遮蔽部材630が重なる部分であって、交差領域T1(図1および図4参照)に設けられる。すなわち、この正面視中央部601は、交差領域T1に配置されるX線の遮蔽手段として機能する。
【0043】
また、本実施形態では、図10に示すように、第1遮蔽部材610は、コンベアユニット500の搬送面Mに対して略垂直に配置され、第3遮蔽部材630は、検査室S2の外側に傾斜している。第1遮蔽部材610および第3遮蔽部材630の上部の間隔B1が、第1遮蔽部材610および第3遮蔽部材630の下部の間隔B2よりも長くなっている。
【0044】
また、図9および図10に示すように、第1遮蔽部材610の外縁部には、検査室S2側に延在する壁部640が形成されている。この壁部640は、第1遮蔽部材610の上端に設けられる上側壁部641と、第1遮蔽部材610の側端に設けられる側端壁部642,643と、第1遮蔽部材610の下端に設けられる下側壁部644とを有している。側端壁部642,643には、コンベアユニット500によって搬送される被検査物Bが通過したか否かを検知するセンサ(図示せず)が設けられている。図9に示すように、下側壁部644は、X線源300を囲むように傾斜している。具体的には、下側壁部644は、X線遮蔽扉600の幅方向(矢印X方向)の中央部分645が、その両側646に比べて下方に配置されている。中央部分645は、水平方向に延在すると共に、両側646は、当該中央部分645の両端部から上方に傾斜している。
【0045】
また、X線遮蔽扉600には、図1〜図3に示すように、作業者が当該X線遮蔽扉600を開閉するために把持するハンドル650が取り付けられている。このハンドル650は、X線遮蔽扉600の回動中心G(図2参照)から離れた位置に取り付けられている。
【0046】
また、X線遮蔽扉600は、図11に示すように、当該X線遮蔽扉600を閉状態(図2参照)で固定するためのスライドロック機構660を有している。このスライドロック機構660は、X線遮蔽扉600の上端面603に取り付けられている。そして、当該スライドロック機構660の解除レバー661は、X線検査装置100の奥行方向(矢印Y方向)に沿って移動可能である。
【0047】
[X線遮蔽カーテン]
X線遮蔽カーテン670は、図7に示すように、搬入口201および搬出口202を遮蔽し、検査室S2に照射されたX線が搬入口201および搬出口202を介して外部に漏洩するのを防止する。このX線遮蔽カーテン670は、被検査物Bの搬送方向(矢印X方向)に直交する面に沿って配置されている。このX線遮蔽カーテン670は、搬入口201側に配置される3枚の搬入側カーテン671〜673と、搬出口202側に配置される3枚の搬出側カーテン674〜676とを有している。搬入側カーテン671〜673と、搬出側カーテン674〜676とは、X線照射口Uを挟んで左右対称に配置されている。なお、このX線照射口Uは、X線規制部材241によって形成される通路を通過したX線が照射される開口である。
【0048】
搬入側カーテン671〜673は、X線源300のX線照射口Uから最も離れた外側カーテン671と、中間カーテン672と、内側カーテン673とを含んでいる。また、搬出側カーテン674〜676は、X線照射口Uから最も離れた外側カーテン674と、中間カーテン675と、内側カーテン676とを含んでいる。外側カーテン671および674の各々は、タングステンが含有された幕部材を2枚重ね合わせた部材であり、中間カーテン672および675並びに内側カーテン673および676の各々は、タングステンが含有された幕部材を3枚重ね合わせた部材である。すなわち、本実施形態では、X線照射口Uから離れた外側カーテン671および674は、中間カーテン672および675並びに内側カーテン673および676より遮蔽機能が低くなっている。
【0049】
また、本実施形態では、搬入側カーテン671〜673に関して、内側カーテン673と中間カーテン672との水平方向の間隔L1は、中間カーテン672と外側カーテン671との水平方向の間隔L2より大きくなっている。また、同様に、搬出側カーテン674〜676に関して、内側カーテン676と中間カーテン675との水平方向の間隔L3は、中間カーテン675と外側カーテン674との水平方向の間隔L4より大きくなっている。
【0050】
本実施形態では、図7に示すように、搬入側カーテン671〜673の内側カーテン673の鉛直方向の長さC1は、X線照射口Uから当該内側カーテン673が配置されている位置までの水平方向の長さL5と比較して、略同一、または短い。また、同様に、搬出側カーテン674〜676の内側カーテン676の鉛直方向の長さC2は、X線照射口Uから当該内側カーテン676が配置されている位置までの水平方向の長さL6と比較して、略同一、または短い。また、搬入口201の高さH1および搬出口202の高さH2は、前述したX線照射口Uから内側カーテン673および676までの水平方向の長さL5およびL6より短くなっている。
【0051】
また、本実施形態では、図7に示すように、内側カーテン673の下端部は、X線照射口Uと、上記したセンサボックス430のX方向上流側の側端部433とを結ぶ線P1よりも下方に設けられる。また、内側カーテン676の下端部は、X線照射口Uと、上記したセンサボックス430のX方向下流側の側端部434とを結ぶ線P2よりも下方に設けられる。
また、本実施形態では、センサボックス430のX方向上流側の側端部433の上端は、X線照射口Uと内側カーテン673の下端部とを結ぶ線P3よりも上方に設けられる。また、センサボックス430のX方向下流側の側端部434の上端は、X線照射口Uと内側カーテン676の下端部とを結ぶ線P4よりも上方に設けられる。
【0052】
[冷却機]
冷却機700は、図2、図4および図5に示すように、X線検査装置100の背面に取り付けられている。本実施形態では、冷却機700は、交差領域T1(図1参照)に配置されるX線の遮蔽手段として機能する。この冷却機700は、シールドボックス200内に冷却空気を供給するために設けられている。冷却機700は、図3に示すように、冷却された気体を送風するためのファン710を有しており、当該ファン710の吹出口711は、斜め上方(矢印F方向)に吹き出すように設けられる。これにより、吹出口711から吹き出される冷却空気は、シールドボックス200の凹部231に向かって流れる。
【0053】
[制御部]
制御部800は、X線検査装置100の各部の動作を制御する。具体的には、制御部800は、X線源300に印加する電圧の大きさを制御したり、ラインセンサ410によって検知されたX線に係るX線透過データに基づいてX線透過画像を作成したりする。この制御部800は、CPU、記憶部、入力装置および出力装置等を有するコンピュータである。
【0054】
本実施形態では、図5に示すように、制御部800は、冷却機700の吹き付け方向(矢印F方向)から外れて配置されている。具体的には、制御部800は、シールドボックス200の右側面部250に近接して配置されている。また、本実施形態では、制御部800は、上方に傾斜する凹部231の高さの低い位置PL(図3(b)参照)の下方に配置されている。すなわち、制御部800は、X線検査装置100の右側面部250側、且つ、背面部220側に配置されている。
【0055】
[フロントパネル]
フロントパネル900は、作業者が操作を行う操作パネルであって、制御部800により形成されたX線透過画像を表示する等、各種の情報を表示する表示部910を有している。このフロントパネル900は、シールドボックス200の前面部210の外面に取り付けられている。フロントパネル900は、シールドボックス200内のメンテナンスのために、開閉可能に構成されている。本実施形態では、図1および図5に示すように、フロントパネル900は、交差領域T1に配置されるX線の遮蔽手段として機能する。
【0056】
[シールドボックス内の冷却について]
本実施形態では、X線源300の管電圧を高くすることが可能であるので、シールドボックス200内に配置されるX線源300および制御部800の冷却は重要である。
【0057】
図3に示すように、冷却機700のファン710から吹き出された冷却気体は、吹出口711から斜め上方(矢印F方向)に吹き出される。この冷却気体は、天面部230の凹部231に導入されて、当該凹部231の上方傾斜面232に沿って流れる。凹部231内には、X線源300により熱せられた気体が集まっている。このX線源300は、前面部210側に配置されているので、凹部231の高さが高い位置PHに熱せられた気体が集まっている。凹部231の上方傾斜面232に沿って流れる冷却気体は、凹部231の高さが高い位置PHに流れて、当該位置PHに集まる熱せられた気体を集中的に冷却する。
【0058】
そして、凹部231の低い位置PL(背面部220側)から高い位置PH(前面部210側)に流れた冷却空気は、天面部230に連設される前面部210に沿って流れる。すなわち、背面部220側から前面部210側に斜め上方に流れる気体が、下方傾斜する前面部210に沿って下方に流れる。そして、前面部210に沿って流れた気体は、当該前面部210に連設する底面部240に沿って流れる。すなわち、前面部210の下方傾斜面に沿って下方に流れる気体が、底面部240に沿って前面部210側から背面部220側に流れる。これにより、冷却機700の吸引口(図示せず)にシールドボックス200内の気体が吸気されて、当該冷却機700で熱交換された冷却気体が吹出口711から吹き出される。
【0059】
[センサボックス内の冷却について]
図8に示すように、ファン950が駆動することによって、センサボックス430の開口部431からセンサボックス430内に空気が流入する。そして、一対の遮蔽部材421,422間において、ラインセンサ410の素子配列方向(Y方向)に沿って空気が流れて、開口部431に対向する面432に到達する。このとき、当該面432と遮蔽部材421,422との間に所定空間が形成されているので、面432に到達した空気は、当該所定空間でUターンして、ファン950側に流れる。
【0060】
[本実施形態のX線検査装置の特徴]
(A)
上記実施形態に係るX線検査装置100では、X線源300の上方に凹部231を設けることによって、シールドボックス200の内部で熱せられた気体(X線源300により熱せられた気体)を当該凹部231に集めることができるので、当該熱せられた気体が他の領域に拡散することを抑制できる。
【0061】
(B)
また、シールドボックス200の内面に凹部231を形成することにより、シールドボックス200の内面がフラットの場合と比べて、シールドボックス200の内面の表面積を大きくすることができる。これにより、シールドボックス200内部で熱せられた空気と接するシールドボックス200の内面の表面積が増加するので、シールドボックス200内の気体の冷却効率を向上させることができる。
【0062】
(C)
また、本実施形態に係るX線検査装置100では、凹部231に熱せられた空気が集められているため、冷却機700で冷却しやすい。その結果、効率良くシールドボックス200内の温度を下げることができる。
【0063】
(D)
また、冷却空気を吹き付ける方向(斜め上方)に沿って凹部231が延在配置されているので、凹部231の側壁に沿って空気流れを形成することができる。その結果、他の領域に流れる空気の拡散を抑制することができる。
【0064】
(E)
さらに、冷却機700から冷却空気が凹部231に吹き付けられるため、凹部231の下部に配置されたX線源300に冷却空気が直接吹き付けられない。そのため、X線源300の環境温度の急激な変動を抑制することができ、X線源300の急激な温度変動によるX線の出力を安定させることができる。
【0065】
(F)
また、本実施形態に係るX線検査装置100では、X線源300の周囲を縦循環する縦循環対流経路R1を形成することができるので、冷却機700からの冷却空気を、X線源300の上方の凹部231、前面部210、および底面部240の順で対流させることができる。その結果、X線源300の周囲の温度を効率よく下げることができるので、X線源300の温度上昇を抑制することができる。
【0066】
(G)
また、本実施形態に係るX線検査装置100では、冷却機700からの冷却空気を上方傾斜面232に沿って流し、さらに連設される下方傾斜面(前面部210)に沿って流すことができるので、冷却空気が円滑に縦循環する。
【0067】
(H)
また、本実施形態に係るX線検査装置100では、制御部800が冷却機700の吹き付け方向(矢印F方向)から外れて配置されるので、冷却空気が制御部800に阻害されずに凹部231に到達する。これにより、シールドボックス200内で熱せられて凹部231内に集まった気体を直接冷却することができる。
【0068】
(I)
また、本実施形態に係るX線検査装置100では、X線源300によって熱せられた空気は、上方傾斜面232に沿って凹部231の高い位置PHに集まる。これにより、熱せられた空気と凹部231の低い位置PLの下方に配置される制御部800とを離間させることができる。その結果、制御部800が凹部231内に集まった気体により熱せられるのを抑制することができる。したがって、熱影響によって制御部800が故障するのを防止することができる。
【0069】
(J)
また、本実施形態に係るX線検査装置100では、X線検査装置100の清掃などでシールドボックス200の上面に付着した水などの液体が、上面233に沿って流れるので、シールドボックス200の上面233に液体が溜まるのを防止することができる。これにより、X線検査装置100を清潔に保つことができる。食品等の被検査物を対象とするX線検査装置100の場合、特に清潔さが要求されるので、シールドボックス200の上面233を傾斜面にすることは、非常に有効である。
【0070】
(K)
また、本実施形態に係るX線検査装置100では、X線源300からラインセンサ410に照射されたX線が当該ラインセンサ410等で反射した場合でも、当該反射したX線を遮蔽部材421,422により遮蔽することにより、センサボックス430外にX線が漏洩するのを抑制することができる。
【0071】
(L)
さらに、遮蔽部材421,422をラインセンサ410と所定空間を設けて略並行に配置するとともに、遮蔽部材421,422をセンサボックス430の開口部と対向する面との間に所定空間を有した状態で配置することによって、開口部431から流入した空気が、ラインセンサ410に沿って対向する面432に向かって流れ、対向する面432側における遮蔽部材421,422の所定空間を通過して、開口部431側に戻るボックス内対流経路R2を生成することができる。その結果、当該経路R2により、ラインセンサ410の冷却効率を高めることができる。
【0072】
(M)
また、本実施形態に係るX線検査装置100では、X線遮蔽扉600の検査室S2側の面が連続した平坦面からなるので、食品等の被検査物の残骸が当該平坦面に付着しても、拭き掃除などを行うことにより、食品等による雑菌の繁殖防止を図ることができる。これにより、検査室S2内を良好な衛生状態に保つことができる。
【0073】
(N)
また、X線遮蔽扉600を第1遮蔽部材610、第2遮蔽部材620および第3遮蔽部材630の3重構造にすることによって、漏洩防止機能を担保しつつ、第1遮蔽部材610の外側に第2遮蔽部材620および第3遮蔽部材630を配置することによって、第1遮蔽部材610の検査室S2側の面を連続した平坦面にすることができる。その結果、検査室S2内におけるX線の乱反射を防止でき、かつ検査室S2外へのX線の漏洩を防止することができる。
【0074】
(O)
さらに、本実施形態に係るX線検査装置100では、第2遮蔽部材620と第3遮蔽部材630との間に所定間隔を設けているので、当該距離でX線を減衰することができ、第3遮蔽部材630で確実にX線の漏洩防止を図ることができる。
【0075】
(P)
また、本実施形態に係るX線検査装置100では、X線遮蔽扉600の上端側が検査室S2の外側に傾斜しているので、X線源300から照射されたX線が、仮に検査室S2内で乱反射しても、当該乱反射したX線を検査室S2内側へ戻すことができる。したがって、X線が装置100の外側へ出るまでの経路を長くすることができるので、X線を確実に減衰することができる。
【0076】
(Q)
X線遮蔽扉600の正面視中央部601をその両側602よりも検査室S2の外側に設けることによって、当該正面視中央部601にX線遮蔽部材(鉛板、カーボン板、及び、金属製の構造物等)を配置することができる。これにより、X線遮蔽扉600の正面視中央部からX線が漏洩するのを確実に防止することができる。
【0077】
(R)
また、本実施形態に係るX線検査装置100では、X線源300に近いX線遮蔽扉600の上部(間隔B1)が、X線源300から遠いX線遮蔽扉600の下部(間隔B2)より厚みがあるので、当該X線遮蔽扉600の上部では、第3遮蔽部材630に至るまでのX線の経路長を長くすることができる。その結果、X線遮蔽扉600の上部において、X線を確実に減衰することができる。
【0078】
(S)
また、本実施形態に係るX線検査装置100では、被検査物Bに対してX線を照射するX線源300が下側壁部644により囲まれる。これにより、X線源300から被検査物Bに向かって下方にX線が照射されても、当該下側壁部644によりX線源300が配置される中央側にX線を戻すことができるので、X線が外部に漏洩するのを防止することができる。
【0079】
(T)
また、本実施形態に係るX線検査装置100では、X線の遮蔽機能が高い遮蔽手段が設けられる交差領域T1において、X線が外部に漏洩するのを抑制することができる。X線源300から照射されるX線の照射面Dを含む面と交差する交差領域T1は、X線源300からX線が直接照射される領域であるので、当該領域において、X線漏洩を抑制することは非常に効果的である。
【0080】
(U)
また、本実施形態に係るX線検査装置100では、交差領域T1の外壁が、他の領域の外壁よりも外側に配置されているので、交差領域T1においては、他の領域よりも、X線源300から照射されたX線が当該外壁に至るまでのX線のシールドボックス200外に至る経路長を長くすることができる。これにより、交差領域T1において、X線を減衰させることができる。
【0081】
(V)
また、本実施形態に係るX線検査装置100では、交差領域T1に、X線の遮蔽機能が高いカーボンまたは鉛を含む部材(第2遮蔽部材620等)を用いることにより、確実にX線の漏洩防止を図ることができる。
【0082】
(W)
また、本実施形態に係るX線検査装置100では、交差領域T1にフロントパネル900を設けることによって、X線検査装置100の操作に必要なフロントパネル900が、X線を遮蔽する構造物として機能する。すなわち、X線遮蔽部材を別途設けることなく、フロントパネル900をX線遮蔽部材として利用することができる。
【0083】
(X)
また、本実施形態に係るX線検査装置100では、交差領域T1に冷却機700を設けることによって、X線源300の冷却に必要な冷却機700が、X線を遮蔽する構造物として機能する。すなわち、X線遮蔽部材を別途設けることなく、冷却機700をX線遮蔽部材として利用することができる。
【0084】
(Y)
また、本実施形態に係るX線検査装置100では、交差領域T1を構成する部材(冷却機700、フロントパネル900、シールドボックス200の天面部230、及び、X線遮蔽扉600の正面視中央部601)の内面の各々は、当該垂線がX線源300側を向くように配置されるので、X線源300から照射されたX線を、当該X線源300側に戻すことができる。その結果、X線が外部に漏洩するのを防止することができる。
【0085】
(Z)
また、本実施形態に係るX線検査装置100では、交差領域T1にX線遮蔽扉600の正面視中央部601を設けることによって、搬送面Mのメンテナンス時に開放されるX線遮蔽扉600が、X線を遮蔽する構造物として機能する。すなわち、X線遮蔽部材を別途設けることなく、X線遮蔽扉600をX線遮蔽部材として利用することができる。
【0086】
(AA)
また、本実施形態に係るX線検査装置100では、内側カーテン673,676の鉛直方向の長さC1が、X線照射口Uから内側カーテン673,676が配置されている位置までの水平長さL5,L6と略同一または短いので、被検査物Bにより内側カーテン673,676が引き連れられても、ラインセンサ410に内側カーテン673,676が覆われることを防止することができる。その結果、内側カーテン673,676によりX線の漏洩を確実に防止しつつ、被検査物BのX線検査を適切に行うことができる。
【0087】
(BB)
また、本実施形態に係るX線検査装置100では、内側カーテン673,676の下端部が、X線照射口Uとセンサボックス430の側端部433,434とを結ぶ線P1,P2よりも下方に設けられるので、X線照射口Uからセンサボックス430の上方を通過して外部に漏洩するX線を、当該内側カーテン673,676の下端部で遮蔽することができる。
【0088】
(CC)
また、本実施形態に係るX線検査装置100では、センサボックス430の側端部433,434が、X線照射口Uと内側カーテン673,676の下端部とを結ぶ線よりも上方に設けられるので、X線照射口Uから内側カーテン673,676の下端部を通過して外部に漏洩するX線を、センサボックス430の側端部433,434で遮蔽することができる。
【0089】
(DD)
また、本実施形態に係るX線検査装置100では、X線照射口Uに近い中間カーテン672および675並びに内側カーテン673および676の遮蔽機能を高くすることによって、X線照射口Uに近い位置で、X線の漏洩防止を図ることができる。
仮に、X線照射口Uに近い中間カーテン672および675並びに内側カーテン673および676を越えてX線が漏洩したとしても、遮蔽機能が劣る外側カーテン671及び674で、十分にX線の漏洩防止を図ることができる。
【0090】
(EE)
また、本実施形態に係るX線検査装置100では、X線照射口Uに近い内側カーテン673,676と中間カーテン672,675との間隔L1,L3が、外側カーテン671,674と中間カーテン672,675との間隔L2,L4より長くなっているので、当該間隔L1,L3のX線の経路長が長くなり、当該X線を減衰させることができる。
また、内側カーテン673,676を、中間カーテン672,675から離して配置することによって、被検査物Bの搬入時または搬出時において、3枚のX線遮蔽カーテン671〜673,674〜676が同時に被検査物に搬送抵抗を加えるのを防止することができる。これにより、起立状態で搬送する必要がある被検査物Bを、倒さずに搬送することが可能となる。
【0091】
(FF)
また、本実施形態に係るX線検査装置100では、X線照射口Uから内側カーテン673,676の下端部の下方を通過したX線を、当該下部ローラ523,524により遮蔽することができる。すなわち、コンベアユニット500の構成要素である下部ローラ523,524をX線遮蔽部材として用いることができる。
【0092】
(GG)
また、本実施形態に係るX線検査装置100では、一対の上部ローラ521,522と下部ローラ523,524とが別個の部材(ステー511,ステー435)に支持されているので、上部ローラ521,522と下部ローラ523,524とが分離可能となる。これにより、メンテナンス時に、上部ローラ521,522と下部ローラ523,524とを別々に取り外すことができるので、X線検査装置100のメンテナンスが容易になる。
【0093】
(HH)
また、本実施形態に係るX線検査装置100では、ラインセンサ410を収容するセンサボックス430をX線遮蔽部材として利用することができる。これにより、センサボックス430とは別個に、X線遮蔽部材を設ける場合に比べて、部品点数の削減を図ることができる。
【0094】
[請求項の各構成要素と上記実施形態の各部との対応関係]
上記実施形態においては、X線検査装置100が「X線検査装置」に相当し、シールドボックス200が「筐体」に相当し、X線源300が「X線源」に相当し、制御部800が「制御部」に相当し、凹部231が「凹部」に相当し、冷却機700が「冷却機」に相当し、前面部210が「縦面」に相当し、底面部240が「底面」に相当し、縦循環対流経路R1が「縦循環対流経路」に相当し、上方傾斜面232が「上方傾斜面」に相当し、天面部230の上面233が「天面」に相当し、ラインセンサ410が「ラインセンサ」に相当し、センサボックス430が「センサボックス」に相当し、遮蔽部材421,422が「遮蔽部材」に相当する。
【実施例】
【0095】
以下、上記した実施形態に係るX線検査装置100の技術的効果を確認するために行った実験について説明する。この実験では、実施例として、上記した実施形態に係るX線検査装置100において、管電圧を130kVに設定して当該X線検査装置100の各測定箇所(1)〜(5)でX線の漏洩を測定した。また、この実験では、比較例として、上記したX線検査装置100とは異なるX線検査装置(株式会社イシダ:IX−GE−4043)において、管電圧を130kVに設定して当該X線検査装置の各測定箇所(上記した測定位置(1)〜(5)の各々に対応する位置)でX線の漏洩を測定した。なお、上記した測定箇所(1)〜(5)は、図2および図6に示した位置であり、その測定箇所(1)〜(5)の詳細は、以下の通りである。
測定箇所(1):X線遮蔽扉の正面
測定箇所(2):X線遮蔽扉のハンドルの近傍
測定箇所(3):フロントパネルの正面
測定箇所(4):X線遮蔽カーテンの外側
測定箇所(5):コンベアユニットの下方
【0096】
なお、比較例では、X線検査装置(株式会社イシダ:IX−GE−4043)において、管電圧を130kVに設定したが、当該X線検査装置の標準仕様における管電圧は、25kV以上75kV以下である。ここでは、管電圧が130kVで使用される本実施形態に係るX線検査装置100と比較するために、比較例に係るX線検査装置において、標準仕様とは異なる管電圧(130kV)で実験を行った。なお、比較例に係るX線検査装置が、標準仕様では、X線が漏洩しないことを確認するために、参考例として、比較例に係るX線検査装置において、管電圧を75kVに設定して当該X線検査装置の各測定箇所(上記した測定位置(1)〜(5)の各々に対応する位置)でX線の漏洩を測定した。
【0097】
実施例に係るX線検査装置の各寸法、および、比較例および参考例に係るX線検査装置の各寸法は、それぞれ図12および図13に示す通りであり、実施例に係るX線検査装置の各寸法について、以下詳細に紹介する。
X線検査装置の高さ:1700mm(図12(a)参照)
X線検査装置の幅(幅方向外側に突出するコンベア部分を除く):800mm(図12(a)および(b)参照)
X線検査装置の幅(幅方向外側に突出するコンベア部分を含む):1000mm(図12(b)参照)
搬送面までの高さ:750mm(図12(a)参照)
交差領域の幅:500mm(図12(a)参照)
天面部の突出高さ:60mm(図12(a)参照)
X線検査装置の奥行:1125mm(図12(b)参照)
ベルト幅:430mm(図12(b)参照)
前面部から背面部までの距離:850mm(図12(b)参照)
前面部からX線源までの距離:290mm(図12(b)参照)
背面部からX線源までの距離:560mm(図12(b)参照)
側面部(右側面部、左側面部)からX線源までの距離:400mm(図12(b)参照)
天面部からX線源までの距離:400mm(図12(c)参照)
X線源から底面部までの距離:340mm(図12(c)参照)
センサボックス中央部分の高さ:85mm(図12(d)参照)
センサボックス中央部分の幅:360mm(180mm+180mm)(図12(d)参照)
センサボックスの側端部の幅:60mm(図12(d)参照)
センサボックスの側端部の外側部材の幅:60mm(図12(d)参照)
間隔L1,L3:90mm(図12(e)参照)
間隔L2,L4:40mm(図12(e)参照)
間隔L5,L6:200mm(図12(e)参照)
外側カーテンから側面部までの距離:70mm(図12(e)参照)
装置中央から上部ローラまでの距離:500mm(上部ローラ間距離:1000mm)(図12(e)参照)
装置中央から下部ローラまでの距離:250mm(下部ローラ間距離:500mm)(図12(e)参照)
下部ローラの直径:90mm(図12(e)参照)
搬送面からラインセンサまでの距離:50mm(図12(e)参照)
ベルトの上面から下面までの距離:140mm(図12(e)参照)
X線遮蔽カーテンの鉛直方向長さ:200mm(図12(e)参照)
搬入口および搬出口の高さ:150mm(図12(f)参照)
搬入口および搬出口の幅:480mm(図12(f)参照)
また、実施例に係るX線検査装置の天面部の傾斜角θ(図3(b)参照)は、約1°〜約2°以下である。
なお、比較例および参考例に係るX線検査装置の各寸法の詳細は、X線検査装置(株式会社イシダ:IX−GE−4043)と同様であるので、その説明を省略する。
また、実施例、比較例および参考例に係るX線検査装置の筺体(シールドボックス)は、厚みが約2mm〜約3mmのSUS304が使用されている。
【0098】
実施例、比較例および参考例の実験結果は、以下の表に示す通りである。
【0099】
【表1】

【0100】
放射線業務を行う区域は、管理区域として、一般の作業区域と区別される。管理区域では、原則として一般の人の立ち入りが禁止されており、管理区域の実効線量は、電離放射線障害防止規則第3条に「実効が3カ月につき1.3mSvを超えるおそれのある区域」と規定される。週40時間労働に基づき1時間あたりの線量に換算すると、2.5μSvを超える区域が管理区域となる。このため、本実験では、X線漏洩量の基準値を、2.5μSv/h[マイクロシーベルト/時間]として、X線の漏洩を評価した。
【0101】
実施例では、測定箇所(1)〜(5)のいずれの箇所においても、X線の漏洩は、0.7[μSv/h]以下であり、上記した基準値(2.5μSv/h)と比較して、X線の漏洩量が少なくなっていることが分かった。すなわち、本実施例の結果から、上記した実施形態に係るX線検査装置100では、管電圧が高い状態であっても(130kV)、X線の漏洩量を低減することができることが分かった。
【0102】
これに対して、比較例では、測定箇所(2)において、X線の漏洩量が5.3μSv/hであり、測定箇所(5)において、X線の漏洩量が8.0μSv/hであった。この測定箇所(2)および(5)において、上記した基準値(2.5μSv/h)より、多量のX線が漏洩していることが分かった。すなわち、本比較例の結果から、この比較例に係るX線検査装置(株式会社イシダ:IX−GE−4043)では、管電圧が高い状態では、X線が漏洩してしまうことが分かった。
【0103】
参考例では、測定箇所(1)〜(5)のいずれの箇所においても、X線の漏洩は、0.2[μSv/h]以下であり、上記した基準値(2.5μSv/h)と比較して、X線の漏洩量が非常に小さくなっていることが分かった。すなわち、比較例に係るX線検査装置(株式会社イシダ:IX−GE−4043)は、標準仕様における使用を行えば、X線が漏洩していないことが実証された。
【0104】
以上、本発明の実施形態および実施例について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態および実施例に限定されるものでないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態および実施例の説明だけではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0105】
[変形例]
例えば、上記実施形態では、天面部230に放熱性の高い素材を使って、凹部231に集まった熱せられた気体を積極的に放熱しても良い。
【0106】
また、上記実施形態では、冷却空気を吹き出す冷却機700を備えるX線検査装置100について説明したが、本発明はこれに限らず、外部の空気をシールドボックス内に導入する送風機であっても良い。
【0107】
また、上記実施形態では、制御部800を右側面部250側に配置する例について説明したが、本発明はこれに限らず、冷却機700の吹き付け方向から外れていれば、左側面部260側に配置しても良い。
【0108】
また、上記実施形態では、ラインセンサ410が上下に重なったデュアルセンサを用いる例について説明したが、本発明はこれに限らず、2つのラインセンサが被検査物の搬送方向に沿って並んでいても良い。
【0109】
また、上記実施形態では、X線遮蔽カーテン670の積層枚数を変えることによって、外側カーテン671および674と、中間カーテン672および675並びに内側カーテン673および676とのX線の遮蔽機能を変えたが、本発明はこれに限らず、X線遮蔽カーテン670に含まれるタングステン、鉛、カーボンなどの配合および量を変えることによって、X線の遮蔽機能を調整しても良い。
【0110】
また、上記実施形態では、搬入口201側および搬出口202側のそれぞれに3枚のX線遮蔽カーテンを配置する例について説明したが、本発明はこれに限らず、当該X線遮蔽カーテンは、搬入口201側および搬出口202側のそれぞれに2枚のX線遮蔽カーテンを配置しても良いし、4枚以上のX線遮蔽カーテンを配置しても良い。また、搬入口201側のX線遮蔽カーテンの枚数と、搬出口202側のX線遮蔽カーテンの枚数とが、必ずしも同じで無くて良い。
【0111】
また、上記実施例では、X線検査装置の各部の寸法を記載したが、本発明はこれらの図12に記載した寸法に限定されない。
【符号の説明】
【0112】
100 X線検査装置
200 シールドボックス
201 搬入口
202 搬出口
231 凹部
232 上方傾斜面
232 上面
300 X線源
400 センサユニット
410 ラインセンサ
421,422 遮蔽部材
430 センサボックス
433,434 側端部
500 コンベアユニット
510 フレーム
521,522 上部ローラ
523,524 下部ローラ
600 X線遮蔽扉
610 第1遮蔽部材
620 第2遮蔽部材
630 第3遮蔽部材
644 下側壁部
670 X線遮蔽カーテン
671,674 外側カーテン
672,675 中間カーテン
673,676 内側カーテン
700 冷却機
800 制御部
900 フロントパネル
B 被検査物
C1,C2 内側カーテンの鉛直方向の長さ
L5,L6 X線照射口から内側カーテンが配置されている位置までの水平長さ
P1,P2 X線照射口とセンサボックスの側端部とを結ぶ線
P3,P4 X線照射口と内側カーテンの下端部とを結ぶ線
S2 検査室
T1 交差領域
T2 他の領域
U X線照射口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、前記筐体の内部に配置されたX線源および前記X線源を制御する制御部と、を備えたX線検査装置であって、
前記筺体の内面で、かつ前記X線源の上方に、気体を集める凹部が設けられていることを特徴とする、X線検査装置。
【請求項2】
冷却機をさらに備え、
前記冷却機から前記凹部に冷却空気が吹き付けられ、かつ前記冷却機の吹き付け方向に沿って前記凹部が延在配置されることを特徴とする、請求項1に記載のX線検査装置。
【請求項3】
前記筐体は、
前記凹部に連設される縦面と、
前記縦面に連設される底面と、を有し、
前記凹部、前記縦面、および前記底面は、前記X線源から所定空間を設けて配置され、前記X線源の周囲を縦循環する縦循環対流経路を形成することを特徴とする、請求項2に記載のX線検査装置。
【請求項4】
前記凹部は、上方傾斜面を有し、
前記縦面は、下方傾斜面を有することを特徴とする、請求項3に記載のX線検査装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記冷却機の吹き付け方向から外れて配置されることを特徴とする、請求項2〜4のいずれか1項に記載のX線検査装置。
【請求項6】
前記凹部は、上方傾斜面を有し、
前記制御部は、前記上方傾斜面の高さの低い位置の下方に配置されることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載のX線検査装置。
【請求項7】
前記筺体の天面は、前記凹部の傾斜方向と同一方向に傾斜する傾斜面からなることを特徴とする、請求項6に記載のX線検査装置。
【請求項8】
前記X線源から照射されたX線を検出するラインセンサと、
前記ラインセンサを収納し、開口部を有するセンサボックスと、
前記センサボックス内で、前記ラインセンサとの間に所定空間を隔てた状態で、前記ラインセンサと略並行に配置された遮蔽部材と、をさらに備え、
前記遮蔽部材は、前記センサボックスの開口部と対向する面との間に、所定空間を有することを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載のX線検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−78257(P2012−78257A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−225085(P2010−225085)
【出願日】平成22年10月4日(2010.10.4)
【出願人】(000147833)株式会社イシダ (859)
【Fターム(参考)】