説明

X線検査装置

【課題】本発明の課題は、X線検査を安定させることができるX線検査装置を提供することである。
【解決手段】本発明に係るX線検査装置100は、物品Bを搬送する検査テーブル711と、検査テーブル711で搬送される物品BにX線を照射するX線源200と、X線源200から照射されるX線を検査テーブル711を介して検出する第1の領域AR1と、X線源200から照射されるX線を検査テーブル711を介さずに検出する第2の領域AR2とを有するラインセンサ400と、検査テーブル711と同じ透過特性を有し、第2の領域AR2で検出されるX線の減衰を調整するX線減衰調整部410とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検査物にX線を照射し、被検査物内の異物を検出するX線検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、被検査物内の異物を検出するためにX線検査装置が使用されており、このX線検査装置に関する研究開発が日々行われている。例えば、特許文献1には、散乱X線を効果的に遮蔽することができ、搬送方向についての筐体の寸法を小さく設定することが可能となるX線異物検出装置について開示されている。
【0003】
特許文献1に記載のX線異物検出装置においては、X線を遮蔽するフレームと、前記フレーム内に設けられ、被検査物を所定の搬送方向に搬送する搬送手段と、前記フレーム内に設けられ、前記搬送手段によって搬送される被検査物に対して前記搬送方向と交叉する照射面内で斜め方向にX線を照射するX線発生器と、前記フレーム内に設けられ、前記搬送手段に対して前記X線発生器と反対側に配置されて前記搬送手段で搬送される被検査物を透過したX線を検出するX線検出器と、前記フレーム内において、前記照射面内における搬送手段の両側部のうち少なくとも前記X線検出器が設けられている一側部において、前記照射面を挟むように前記照射面の両側に設けられた少なくとも一対の遮蔽部材と、を具備するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−275451号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この特許文献1に記載のX線異物検出装置では、X線発生器から照射されるX線の一部が搬送手段を透過してX線検出器で検出される。X線検出器による検出結果に基づいてX線画像が生成される。X線画像は、搬送手段を透過したX線を検出した領域と、搬送手段を透過していないX線を検出した領域とを有する。搬送手段を透過して検出されたX線は、搬送手段を透過せずに検出されたX線よりも減衰するので、搬送手段を透過したX線を検出した領域と、搬送手段を透過していないX線を検出した領域とは画質(濃淡)が異なる。X線異物検出装置では、画質(濃淡)が異なる領域を含むX線画像を用いてX線検査を行った場合、画質(濃淡)の調整が必要となり、安定したX線検査を行うことができない。
【0006】
本発明の目的は、安定したX線検査を行うことができるX線検査装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)
一局面に係るX線検査装置は、物品を搬送する搬送機構と、搬送機構で搬送される物品にX線を照射するX線源と、X線源から照射されるX線を搬送機構を介して検出する第1の領域と、X線源から照射されるX線を搬送機構を介さずに検出する第2の領域とを有するセンサと、搬送機構と同じ透過特性を有し、第2の領域で検出されるX線の減衰を調整するX線減衰調整部とを備えるものである。
【0008】
この場合、第1の領域と第2の領域で異なったX線画像の画質を同質にするために、X線減衰調整部は、搬送機構と同じ透過特性を有する。X線減衰調整部は、透過特性を用いて、第1の領域で検出されるX線の搬送機構による減衰と同程度となるように、第2の領域で検出されるX線の減衰を調整する。これにより、X線検査装置は、本検査処理前のX線画像において、第1の領域と第2の領域との画質を同質にすることができる。その結果、X線検査装置は、第1の領域と第2の領域との画質が同質であるX線画像に基づいてX線検査を行うことができるので、容易に安定したX線検査を行うことができる。
【0009】
(2)
X線検査装置において、X線減衰調整部は、第2の領域を覆うようにして設置されることが好ましい。
【0010】
第1の領域と第2の領域との画質を同質にするために、搬送機構で減衰したX線の出力の増幅処理(アナログ信号の補正)を行う場合、第1の領域で検出されるX線と、第2の領域で検出されるX線との強さを同質にすることができるが、ノイズも同時に増幅される。さらに、搬送機構を透過することによって波長が選別された第1の領域で検出されるX線と、第2の領域で検出されるX線との波長を同質にすることができない。
また、第1の領域と第2の領域との画質を同質にするために、X線画像の画像処理(デジタル信号の補正)を行う場合、フィルタリング処理が必要となるので、第1の領域で検出されるX線と、第2の領域で検出されるX線との強さおよび波長を近似させることしかできない。そのため、アナログ信号の補正またはデジタル信号の補正を行った場合、バラつきの多い補正となってしまう。
【0011】
一方、本発明に係るX線検査装置は、X線減衰調整部が第2の領域を覆うようにして設置される。これにより、第2の領域で検出されるX線がX線減衰調整部を透過して、第1の領域で検出されるX線と、第2の領域で検出されるX線との強さおよび波長の両方を同質にすることができる。その結果、X線検査装置は、X線の出力の増幅処理またはX線画像の画像処理を行う場合に比べて、X線検査の確実性を向上させることができる。
【0012】
(3)
X線検査装置において、搬送機構は、カーボンを含むことが好ましい。
【0013】
金属を含む搬送機構を用いた場合、X線が搬送機構を透過できないおそれが高くなる。また、カーボンと比較して、X線が大きく減衰する材質を含む搬送機構を用いた場合、X線画像の画像処理においてノイズが増加し、X線検査が安定しない。
一方、本発明に係る搬送機構は、カーボンを含むので、X線が搬送機構を透過しやすい。さらに、カーボンは剛性が高いので、搬送機構の厚みを薄くすることができる。これにより、X線検査装置は、搬送機構を透過するときにX線が減衰しにくくなるので、より安定したX線検査を行うことができる。
【0014】
(4)
X線検査装置において、X線源は、物品の斜め上方からX線を照射する位置に配置されることが好ましい。
【0015】
この場合、X線源は、物品の斜め上方からX線を照射するので、X線源のX線を照射する部分は下方を向いている。これにより、X線源のX線を照射する部分が上方を向いている場合に比べて、本発明に係るX線源は、X線の照射を邪魔する埃および水分が、X線を照射する部分に付着しにくくなるので、安定的にX線を長期間照射することができる。その結果、X線検査装置は、安定したX線検査を長期間行うことができる。
【0016】
また、X線検査装置は、物品の斜め上方からX線を照射するので、物品の真横からX線を照射する場合と比較して、物品の液面検査と異物検査とを同時に行うことを担保しつつ、X線源とセンサとの距離を短くすることができる。これにより、X線検査装置を小型化させることができる。
【0017】
(5)
X線検査装置において、X線減衰調整部は、X線減衰調整部の設置位置を調整する設置位置調整部を有することが好ましい。
【0018】
この場合、設置位置調整部でX線減衰調整部を任意の位置に設置することができるので、X線減衰調整部で第2の領域のみを確実に覆うことができる。これにより、X線画像において第1の領域と第2の領域との境界域で発生する画像の乱れ(以下、単に「画像の乱れ」という)を小さくする、または画像の乱れをなくすことができる。その結果、X線検査装置は、X線画像の画像の乱れによって発生する誤検知を減らすことができるので、X線検査の精度を向上させることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係るX線検査装置によれば、安定したX線検査を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態に係るX線検査装置の全体を示した正面図である。
【図2】本実施形態に係るX線検査装置の概略的構成の一例を示す模式的平面図である。
【図3】X線検査装置の概略を説明するための模式的側面図である。
【図4】X線源から照射されるX線を検出するラインセンサの一例について説明する模式図である。
【図5】本実施形態のX線検査装置に係る防護部およびラインセンサの一例について説明する模式図である。
【図6】(a)本実施形態に係るX線減衰調整部の一例を示す側面図であり、(b)同X線減衰調整部の一例を示す正面図であり、(c)同X線減衰調整部の一例を示す背面図であり、(d)同X線減衰調整部の一例を示す上面図である。
【図7】従来のX線検査装置に係るラインセンサの画素と出力信号の関係を示すグラフ図である。
【図8】本実施形態のX線検査装置に係るラインセンサの画素と出力信号の関係を示すグラフ図である。
【図9】本発明の変形例に係るX線検査装置の概略を説明するための模式的側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1、2に示すように、本実施形態に係るX線検査装置100は、既設のベルトコンベア900に取り付けられる。X線検査装置100は、該ベルトコンベア900によって搬送される物品Bの検査を行う。この検査は、液体が充填された物品B中に含まれる異物の検査、および物品Bの液面の検査である。このX線検査装置100は、主として、表示部300、受取部600、X線検査部700、受渡部800およびX線漏洩防止カバー910から構成される。
【0022】
図2〜4に示すように、受取部600は、受取テーブル611、回転軸612、第1モータ613および案内ガイド板614を有する。X線検査部700は、X線源200、表示部300(図1参照)、X線源200からのX線を検出するセンサであるラインセンサ400、X線減衰調整部410、防護部420、制御部500、搬送機構である検査テーブル711、回転軸712、第2モータ713および不良品ボックス780(図1、2参照)を有する。
ラインセンサ400は、間接型方式のラインセンサであり、シンチレータ401、フォトダイオードアレイ(以下、PDAという)402および基板403を有する。
X線減衰調整部410は、減衰部材411および設置位置調整部412を有する。
受渡部800は、受渡テーブル811、回転軸812、第3モータ813および案内ガイド板814を有する。なお、図3における括弧書きの符号は、受取部600と同様の構成からなる受渡部800の位置を示すために記載している。以下、詳細に説明を行う。
【0023】
<受取部>
図2、3に示すように、受取部600は、ベルトコンベア900から物品Bを受け取るために設けられる。垂直に設けられた回転軸612の一端側に第1モータ613が取り付けられる。また、回転軸612の他端側に水平面を有する受取テーブル611が取り付けられる。この受取テーブル611は、円板形状の天板からなる。したがって、受取テーブル611の天面には、仕切り板を設けていない。受取テーブル611上には案内ガイド板614が設けられる。案内ガイド板614は、ベルトコンベア900上の物品Bを、受取テーブル611、および検査テーブル711の順に案内する。
【0024】
<X線検査部>
図2、3に示すように、X線検査部700は、受取部600から受け取った物品BにX線を照射することにより、該物品Bに対してX線検査を行う。垂直に設けられた回転軸712の一端側に第2モータ713が取り付けられ、回転軸712の他端側に水平面を有する検査テーブル711が取り付けられる。この検査テーブル711は、主な材質がカーボンである円板形状の天板からなり、例えば、3mm〜10mmの厚みを有する。
【0025】
次に、図3に示すように、X線検査部700に設けられたX線漏洩防止カバー910内には、制御部500が内蔵される。さらに、検査テーブル711の上方には、物品BにX線を照射するX線源200が設けられる。X線源200は、X線を照射する部分であるX線照射部210を有し、物品Bに対して斜め上方からX線(二点鎖線で表示)を照射する位置に配置される。
具体的に、X線源200は、ベルトコンベア900から遠ざかる方向、かつ、斜め下方に向かってX線を照射する位置に配置される。このときX線源200のX線照射部210は、斜め下方を向いている。X線源200から照射されたX線は、一部が物品Bを透過し、該透過したX線がラインセンサ400において検出される。
【0026】
図3、4に示すように、上述したラインセンサ400は、X線源200から照射されたX線(二点鎖線で表示)を検出できる位置に設けられる。具体的には、ラインセンサ400は、検査テーブル711の外周側に配置され、かつ、X線照射部210と対向するようにして配置される。
【0027】
ラインセンサ400は、X線源200から照射されたX線を検査テーブル711を介して検出するための(検査テーブル711を透過したX線を検出する)第1の領域AR1と、X線源200から照射されたX線を検査テーブル711を介さずに検出するための(検査テーブル711を透過していないX線を検出する)第2の領域AR2とを有する。
【0028】
図3、4に示すように、シンチレータ401は、受けたX線を光に変換(光変換)し、光をPDA402に出す。PDA402は、シンチレータ401から出た光を受光し、受光した光をX線の強さを示す出力信号(以下、単に「出力信号」という)に変換し、出力信号を制御部500に出力する。基板403は、シンチレータ401およびPDA402を保持し、ネジ404で本体フレーム430に取り付けられる。具体的に、ラインセンサ400は、X線源200のX線照射方向に沿って、シンチレータ401、PDA402、基板403の順となるように形成される。なお、本体フレーム430は、X線検査装置100の内部に適宜設けられる。
【0029】
図5は、ラインセンサ400および防護部420を、X線源200のX線照射方向から見たときの図である。図5に示すように、防護部420は、該防護部420の幅が、ラインセンサ400の幅よりも大きくなるように形成される。また、防護部420は、主な材質がポリオキシメチレン(以下、POMという)である。POMは、防塵性および防水性を有し、カーボンよりも安価である。この防護部420は、ラインセンサ400を埃および水分などから保護する。
【0030】
図4に示すように、防護部420は、接着剤またはネジ(図示せず)等で本体フレーム430に取り付けられる。また、隙間から水が侵入しないように、防護部420と本体フレーム430との間はシリコン等で埋められる。
【0031】
図3に示すように、制御部500は、第1モータ613、第2モータ713、第3モータ813との間で信号の送受信、X線源200との間で信号の送受信、およびラインセンサ400からの信号の受信ができるように設けられる。また、制御部500は、ラインセンサ400からの出力信号に基づきX線画像を生成する。この生成されたX線画像は、表示部300(図1参照)に表示される。制御部500は、X線画像に基づいて液面検査および異物検査を行い、物品Bが良品か否かについて判定する。この制御部500の検査によって不良品と判定された物品Bは、後述する受渡部800に渡されずに、不良品ボックス780(図1、2参照)に投入される。
【0032】
<X線減衰調整部>
図4、図5および図6(a)〜6(d)に示すように、X線減衰調整部410は、ラインセンサ400の第2の領域AR2を覆うようにして、ラインセンサ400の近傍に設置される。このX線減衰調整部410は、第2の領域AR2で検出されるX線の減衰を調整することができる。さらに、X線減衰調整部410は、ラインセンサ400の第2の領域AR2において埃および水分などから保護することができる。
減衰部材411は、検査テーブル711と同じ透過特性を有する板材であり、主な材質がカーボンである。カーボンは、X線を透過しやすく、剛性が高い。第1の領域AR1で検出されるX線と、第2の領域AR2で検出されるX線とは、いずれも主な材質がカーボンである減衰部材411と検査テーブル711とをそれぞれ透過することによって、同じように減衰する。これにより、第2の領域AR2で検出されるX線は、第1の領域AR1で検出されるX線と、強さおよび波長の両方において容易に同質となる。
【0033】
減衰部材411の厚みは、X線減衰調整部410が検査テーブル711と同じ透過特性になるよう調整され、本実施形態においては、薄い板材を2枚張り合わせて形成される。すなわち、カーボンからなる板材は、厚い板材ほど高価となるので、薄い板材を張り合わせて用いることによって、減衰部材411の製造コストを低減させることができる。また、減衰部材411は、後述する設置位置調整部412のボルト413を貫通させるための貫通孔(図示せず)が形成される。
【0034】
図4、図5および図6(a)〜6(d)に示すように、設置位置調整部412は、減衰部材411がラインセンサ400の第2の領域AR2を確実に覆うことができるように、X線減衰調整部410の設置位置を調整するためのものである。設置位置調整部412は、ネジ418で本体フレーム430に取り付けられる。
【0035】
設置位置調整部412は、該設置位置調整部412にX線減衰調整部410を取り付けるためのボルト413およびナット414と、ボルト413を貫通させるためのボルト孔415と、減衰部材411の設置位置を調整する際に用いられるガイド部416とを有する。
【0036】
ボルト孔415は、ラインセンサ400の長手方向(白抜き矢印方向)に延びる長孔である。ガイド部416は、減衰部材411の長手方向の両辺の一部を覆うようにして形成される。ボルト413がボルト孔415に沿ってスライドすることができ、かつ、減衰部材411がガイド部416に沿って、ずれることなくスライドすることができる。これにより、減衰部材411は、ラインセンサ400の長手方向にスライド可能である。
【0037】
設置位置調整部412は、減衰部材411の貫通孔およびボルト孔415を貫通したボルト413を、ナット414で締結することで、X線減衰調整部410の位置を調整して固設することができる。また、設置位置調整部412は、ボルト413を止める位置をラインセンサ400の長手方向に沿って適宜移動させることにより、ラインセンサ400に対するX線減衰調整部410の設置位置を調整することができる。なお、図6(a)〜6(c)においては、移動前のX線減衰調整部410を実線で示し、移動後のX線減衰調整部410を破線で示す。
【0038】
X線減衰調整部410で第2の領域AR2を確実に覆っていないとき、またはX線減衰調整部410で第1の領域AR1まで覆っているとき、制御部500で生成されたX線画像において、第1の領域AR1と第2の領域AR2との境界域で画像の乱れ(以下、単に「画像の乱れ」という)が発生する。この画像の乱れは、第1の領域AR1と第2の領域AR2とに係るラインセンサ400の出力信号の差に伴って発生するものであり、X線検査の誤検知を増やす原因となる。
そのため、設置位置調整部412を用いて、X線減衰調整部410の設置位置を調整し、X線減衰調整部410で第2の領域AR2のみを確実に覆うことで、第1の領域AR1と第2の領域AR2との境界に現れる画像の乱れをなくすことができる。その結果、X線検査装置100は、X線減衰調整部410の設置および位置調整によって、X線画像に係る適正画像の取得することができ、かつ、画像の乱れをなくすことができる。
【0039】
また、仮にX線源200の近傍にX線減衰調整部410を設置した場合、X線源200の近傍においてX線減衰調整部410の設置位置の調整を行うことになる。そのため、一般に、照射されたX線は、ラインセンサ400に到着するまでに放射状に拡がる。そのため、X線減衰調整部410の設置位置にズレが生じた場合、僅かなズレが、大きなズレとしてラインセンサ400に現れてしまう。したがって、X線減衰調整部410の設置位置の調整がむずかしくなる。
一方、本実施形態のX線検査装置100は、ラインセンサ400の近傍にX線減衰調整部410を設置し、ラインセンサ400の近傍でX線減衰調整部410の設置位置の調整を行う。これにより、調整量がズレ量と近い値となるため、僅かなズレを僅かな調整で解決することができる。その結果、X線検査装置100では、X線減衰調整部410の設置位置の調整が容易となる。
【0040】
<受渡部>
図2、3に示すように、受渡部800は、X線検査部700によって良品と判定された物品Bを検査テーブル711からベルトコンベア900に受け渡すために設けられる。垂直に設けられた回転軸812の一端側に第3モータ813が取り付けられ、回転軸812の他端側に水平面を有する受渡テーブル811が取り付けられる。
この受渡テーブル811は、円板形状の天板からなる。したがって、受渡テーブル811の天面には、仕切り板を設けていない。受渡テーブル811上には、検査テーブル711上の物品Bを該受渡テーブル811からベルトコンベア900に案内する案内ガイド板814が設けられる。案内ガイド板814は、検査テーブル711上の物品Bを、受渡テーブル811、ベルトコンベア900の順に案内する。
【0041】
<X線漏洩防止カバー>
次に、図2、3に示すように、X線漏洩防止カバー910は、X線源200およびラインセンサ400を覆うように設けられる。これにより、X線源200から照射されたX線が物品Bにより乱反射した場合でも、乱反射した大部分のX線がX線漏洩防止カバー910外へ漏洩することを防止する。また、X線の減衰は、距離の二乗に反比例するので、乱反射したX線を複数回反射させることによりX線の強さを低減させることができる。その結果、X線検査装置100は、ベルトコンベア900側にX線が漏洩することを確実に防止することができる。
【0042】
また、図2、3に示すように、X線漏洩防止カバー910は、上記した受取部600に物品Bを搬入させる搬入口(開口部)911と、上記した受渡部800から物品Bを搬出させる搬出口912(開口部)とを有している。本実施形態では、X線漏洩防止カバー910のベルトコンベア900側の面913には、開口が無く、搬入口911と搬出口912とは、平面視においてX線照射方向に対して直交する方向に開口している。これにより、X線源200から照射されたX線が反射した1次線(X線源200から照射されたX線が1度反射したもの)が直接、当該搬入口911及び搬出口912から漏洩するのを防止している。こうすることで、この搬入口911及び搬出口912に、物品Bを倒す障害となる漏洩防止カーテンなどの所定のX線遮蔽手段を設けなくてもよい。
【0043】
<X線検査装置の動作>
次いで、上記のようにして構成されたX線検査装置100の動作の一例について説明する。
【0044】
図2、3に示すように、ベルトコンベア900上を搬送方向(矢印HL1の方向)に沿って搬送される物品Bは、受取部600の案内ガイド板614によって受取テーブル611に移動する。具体的に、物品Bは、一対の案内ガイド板614の間を通過することで、ベルトコンベア900から受取テーブル611に向かう方向(矢印HL2の方向)に移動して、受取テーブル611上に置かれる。
【0045】
受取テーブル611の上面の外周端近傍に置かれた物品Bは、受取テーブル611が矢印R1の方向に回転することにより、受取テーブル611から検査テーブル711に向かう方向(矢印HL3の方向)に移送され、検査テーブル711に受け渡される。
【0046】
検査テーブル711の上面の外周端近傍に置かれた物品Bは、検査テーブル711が矢印−R1の方向(矢印R1の方向と逆方向)に回転することにより、ラインセンサ400に近づく方向(矢印HL4の方向)に移動する。
【0047】
図3、4に示すように、X線源200は、ラインセンサ400の近傍に移動してきた物品Bの斜め上方からX線を照射する。物品Bに照射されたX線は、該X線の一部が物品Bを透過した後、ラインセンサ400の第1の領域AR1と第2の領域AR2とで検出される。具体的には、第1の領域AR1で検出されるX線は、該X線の一部が物品Bを透過するとともに、検査テーブル711、防護部420を順に透過する。この第1の領域AR1で検出されるX線は、X線減衰調整部410を透過しない。第2の領域AR2で検出されるX線は、該X線の一部が物品Bを透過するとともに、防護部420、X線減衰調整部410を順に透過する。この第2の領域AR2で検出されるX線は、検査テーブル711を透過しない。
【0048】
X線減衰調整部410は、該X線減衰調整部410の透過特性によって、第1の領域AR1で検出されるX線の検査テーブル711による減衰と同程度となるように、第2の領域AR2で検出されるX線の減衰を調整する。このX線減衰調整部410によるX線の減衰については後述する。また、第2の領域AR2で検出されるX線は、X線減衰調整部410を透過することで、第1の領域AR1で検出されるX線と、強さおよび波長の両方において同質となる。
【0049】
ラインセンサ400に到達したX線は、シンチレータ401によって光に変換(光変換)され、PDA(フォトダイオードアレイ)402に光を出す。シンチレータ401で光に変換されたX線は、PDA402で受光されて出力信号に変換される。この出力信号は、PDA402によって制御部500に出力される。
【0050】
制御部500は、ラインセンサ400のPDA402からの出力信号に基づいてX線画像を生成する。このX線画像では、第1の領域AR1で検出されるX線の減衰と同程度となるように、第2の領域AR2で検出されるX線の減衰が機構的(ハード的)に調整されているので、ソフト処理に比べて、線種の変更、および出力の減衰特性がより同質になる。このX線画像は表示部300に表示される。制御部500は、生成されたX線画像に基づいて、物品Bの液面検査と異物検査に係る良否判定を行う。
【0051】
図2、3に示すように、良否判定が終了した物品Bは、ラインセンサ400から遠ざかる方向(矢印HL5の方向)に沿って移動する。この際、上記のX線検査によって不良品と判定された物品Bは、検査テーブル711上に設けられた突出部材(図示せず)によって、検査テーブル711から不良品ボックス780へ移動させられる。一方、X線検査によって良品と判定された物品Bは、検査テーブル711から受取テーブル611に向かう方向(矢印HL6の方向)に沿って一対の案内ガイド板814の間を通過し、受渡テーブル811上に置かれる。受渡テーブル811の上面の外周端近傍に置かれた物品Bは、受渡テーブル811が矢印R1の方向に回転することにより、受渡テーブル811からベルトコンベア900に向かう方向(矢印HL7の方向)に移動され、ベルトコンベア900上に戻される。ベルトコンベア900に置かれた物品Bは、次工程のベルトコンベアへと移動される。
【0052】
<X線減衰調整部によるX線の減衰>
X線減衰調整部410によるX線の減衰について説明を行う。図7は、従来のX線検査装置に係るグラフであり、図8は、本実施形態のX線検査装置100に係るグラフである。
従来のX線検査装置は、本実施形態のX線検査装置100からX線減衰調整部410を取り外したものである。従来のX線検査装置と本実施形態のX線検査装置100の共通の部材に関する説明は省略する。
また、図7、8のグラフの横軸はラインセンサ400の画素を示し、縦軸はラインセンサ400から出力される出力信号を示す。また、横軸には、ラインセンサ400の第1の領域AR1と第2の領域AR2とに対応する箇所を示す。
【0053】
図7、8のグラフに示すように、グラフ中央のラインセンサ400の出力信号が最も大きくなっている。出力信号が大きくなる状態は、ラインセンサ400の中央部分が、ラインセンサ400の他の部分よりもX線照射部210との距離が近いためである。すなわち、ラインセンサ400の中央部分が、照射されたX線を最も強く検出するためである。
【0054】
図7に示すように、従来のX線検査装置は、検査テーブル711によってX線が減衰することで、第1の領域AR1に係るラインセンサ400の出力信号が小さくなる(斜線ハッチング箇所)。そのために、第1の領域AR1に係るラインセンサ400の出力信号と、第2の領域AR2に係るラインセンサ400の出力信号に差が生じる。出力信号に差が生じたことによって、制御部500で物品Bの良否判定を行う前(以下、「本検査実施前」という)の第1の領域AR1と第2の領域AR2とのX線画像の画質が異なってしまう。
【0055】
図8に示すように、本実施形態のX線検査装置100では、検査テーブル711によってX線が減衰して、第1の領域AR1に係るラインセンサ400の出力信号が小さくなる(斜線ハッチング箇所)。さらに、X線減衰調整部410によってX線が減衰して、第2の領域AR2に係るラインセンサ400の出力信号が、第1の領域AR1に係るラインセンサ400の出力信号と同程度小さくなる(横線ハッチング箇所)。
その結果、第1の領域AR1に係るラインセンサ400の出力信号と、第2の領域AR2に係るラインセンサ400の出力信号とに差が生じない。出力信号に差が生じないことによって、本検査実施前の第1の領域AR1と第2の領域AR2とのX線画像の画質が同質となる。
【0056】
<本実施形態における効果>
以上のように、本実施形態に係るX線検査装置100においては、第1の領域AR1と第2の領域AR2とで異なったX線画像の画質を同質にするために、X線減衰調整部410は、検査テーブル711と同じ透過特性を有する。X線減衰調整部410は、透過特性を用いて、第1の領域AR1で検出されるX線の検査テーブル711による減衰と同程度となるように、第2の領域AR2で検出されるX線の減衰を調整する。これにより、X線検査装置100は、本検査処理前のX線画像において、第1の領域AR1と第2の領域AR2との画質を同質にすることができる。その結果、X線検査装置100は、第1の領域AR1と第2の領域AR2との画質が同質であるX線画像に基づいてX線検査を行えばよいので、容易に安定したX線検査を行うことができる。
【0057】
第1の領域AR1と第2の領域AR2との画質を同質にするために、検査テーブル711で減衰したX線の出力の増幅処理(アナログ信号の補正)を行う場合、第1の領域AR1で検出されるX線と、第2の領域AR2で検出されるX線との強さを同質にすることができるが、ノイズも同時に増幅される。さらに、検査テーブル711を透過することによって波長が選別された第1の領域AR1で検出されるX線と、第2の領域AR2で検出されるX線との波長を同質にすることができない。
また、第1の領域AR1と第2の領域AR2との画質を同質にするために、X線画像の画像処理(デジタル信号の補正)を行う場合、フィルタリング処理が必要となるので、第1の領域AR1で検出されるX線と、第2の領域AR2で検出されるX線との強さおよび波長を近似させることしかできない。そのため、アナログ信号の補正またはデジタル信号の補正を行った場合、バラつきの多い補正となってしまう。
【0058】
一方、本発明に係るX線検査装置100は、X線減衰調整部410が第2の領域AR2を覆うようにして設置される。これにより、第2の領域AR2で検出されるX線がX線減衰調整部410を透過して、第1の領域AR1で検出されるX線と、第2の領域AR2で検出されるX線との強さおよび波長の両方を同質にすることができる。その結果、X線検査装置100は、X線の出力の増幅処理またはX線画像の画像処理を行う場合に比べて、X線検査の確実性を向上させることができる。
【0059】
また、本実施の形態と異なり、金属を含む検査金属テーブルを用いた場合、X線が該検査金属テーブルを透過できないおそれが高くなる。また、カーボンよりもX線が大きく減衰する材質を含む別検査テーブルを用いた場合、X線画像の画像処理においてノイズが増加し、X線検査が安定しない。一方、本発明に係る検査テーブル711は、カーボンを含むので、X線が検査テーブル711を透過しやすい。さらに、カーボンは剛性が高いので、検査テーブル711の厚みを薄くすることができる。これにより、X線検査装置100は、検査テーブル711を透過するときにX線が減衰しにくくなるので、より安定したX線検査を行うことができる。
【0060】
また、本実施形態では、X線源200は、物品Bの斜め上方からX線を照射するので、X線源200のX線照射部210は斜め下方を向いている。これにより、X線源200のX線照射部210が上方を向いている場合に比べて、本発明に係るX線源200は、X線の照射を邪魔する埃および水分が、X線照射部210に付着しにくくなるので、安定的にX線を長期間照射することができる。その結果、X線検査装置100は、安定したX線検査を長期間行うことができる。
【0061】
また、X線検査装置100は、物品Bの斜め上方からX線を照射するので、物品Bの真横からX線を照射する場合と比較して、物品Bの液面検査と異物検査とを同時に行うことを担保しつつ、X線源200とラインセンサ400との距離を短くすることができる。これにより、X線検査装置100を小型化させることができる。
【0062】
また、本実施形態では、設置位置調整部412でX線減衰調整部410を任意の位置に設置することができるので、X線減衰調整部410で第2の領域AR2を確実に覆うことができる。これにより、X線画像において第1の領域AR1と第2の領域AR2との境界に発生する画像の乱れを小さくする、または画像の乱れをなくすことができる。その結果、X線検査装置100は、X線画像の画像の乱れによって発生する誤検知を減らすことができるので、X線検査の精度を向上させることができる。
【0063】
<変形例>
(A)
X線減衰調整部410は、第1の領域AR1と第2の領域AR2とのX線画像の画質を同質にするための、検査テーブル711で減衰したX線の出力の増幅処理を採用してもよく、また、X線減衰調整部410は、第1の領域AR1と第2の領域AR2とのX線画像の画質を同質にするための、フィルタリング処理を行うX線画像の画像処理であってもよく、他の任意の手法により画質を同質にしてもよい。
【0064】
(B)
図9に示すように、搬送機構は、平ベルトコンベア711aであってもよい。平ベルトコンベア711aの主な材質がポリウレタンである場合、減衰部材411は、主な材質が平ベルトコンベア711aと同じ素材であるポリウレタンであることが好ましい。第1の領域AR1で検出されるX線と、第2の領域AR2で検出されるX線とは、いずれも主な材質がポリウレタンである減衰部材411と平ベルトコンベア711aをそれぞれ透過することによって、同じように減衰する。これにより、第2の領域AR2で検出されるX線は、第1の領域AR1で検出されるX線と、強さおよび波長の両方において容易に同質となる。なお、平ベルトコンベア711aは主な材質がカーボンであってもよい。なお、搬送機構は、検査テーブル711または平ベルトコンベア711aに代えて、他の任意の搬送機構、例えばトップチェーン型のコンベア等であってもよい。
【0065】
(C)
X線源200は、物品Bの斜め下方、物品Bの真上、物品Bの真下、または物品Bの真横からX線を照射する位置に配置されていてもよい。
【0066】
(D)
センサは間接型方式のラインセンサに代えて、テルル化カドミウム(CdTe)またはテルル化カドミウム亜鉛(CdZnTe)を用いた半導体からなる直接型方式のラインセンサであってもよい。また、センサは、線状にフォトダイオード等が並べられたラインセンサに代えて、面状にフォトダイオード等が並べられた二次元センサであってもよい。
【0067】
(E)
設置位置調整部412は、X線減衰調整部410をラインセンサ400の長手方向以外に、例えば幅方向に移動可能な構成であってもよい。X線減衰調整部410を任意の位置に移動させることができるので、X線減衰調整部410で第2の領域AR2をより確実に覆うことができる。
【0068】
また、設置位置調整部412は、上記のような手動式でX線減衰調整部410の設置位置を調整するものではなく、機械式でX線減衰調整部410の設置位置を調整するものであってもよい。機械式の設置位置調整部412は、手動式の設置位置調整部412に比べて、X線減衰調整部410の設置位置を微調整することができる。これにより、X線検査装置100は、X線減衰調整部410で第2の領域AR2をより確実に覆うことができる。さらに、設置位置調整部412は、制御部500によって制御されるものであってもよい。さらに、設置位置調整部412は、試運転時またはテストランニング中に、制御部500がX線減衰調整部410の設置位置のズレを認識し、制御部500がX線減衰調整部410の設置位置を自動的に微調整する構成を採用してもよい。これにより、X線検査装置100は、X線減衰調整部410で第2の領域AR2をより確実に覆うことができる。
【0069】
(F)
減衰部材411は、2層構造に代えて、1層構造または3層以上の構造であってもよい。また、減衰部材411は、検査テーブル711が同じ透過特性となるのであれば、主な材質がカーボン以外のものであってもよい。また、減衰部材411は、2層以上の構造であるとき、各層の主な材質が異なるものであってもよい。
【0070】
(G)
設置位置調整部412による減衰部材411の設置位置の調整を行うことで画像の乱れをなくすのではなく、ラインセンサ400の各画素ごとにゲイン設定を行うことで画像の乱れをなくしてもよい。
【符号の説明】
【0071】
100 X線検査装置
200 X線源
400 ラインセンサ(センサ)
410 X線減衰調整部
412 設置位置調整部
711 検査テーブル(搬送機構)
711a 平ベルトコンベア(搬送機構)
AR1 第1の領域
AR2 第2の領域
B 物品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品を搬送する搬送機構と、
前記搬送機構で搬送される前記物品にX線を照射するX線源と、
前記X線源から照射される前記X線を前記搬送機構を介して検出する第1の領域と、前記X線源から照射される前記X線を前記搬送機構を介さずに検出する第2の領域とを有するセンサと、
前記搬送機構と同じ透過特性を有し、前記第2の領域で検出されるX線の減衰を調整するX線減衰調整部とを備えることを特徴とするX線検査装置。
【請求項2】
前記X線減衰調整部は、前記第2の領域を覆うようにして設置されることを特徴とする請求項1に記載のX線検査装置。
【請求項3】
前記搬送機構は、カーボンを含むことを特徴とする請求項1または2に記載のX線検査装置。
【請求項4】
前記X線源は、前記物品の斜め上方から前記X線を照射する位置に配置されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のX線検査装置。
【請求項5】
前記X線減衰調整部は、該X線減衰調整部の設置位置を調整する設置位置調整部を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のX線検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−7940(P2012−7940A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−142629(P2010−142629)
【出願日】平成22年6月23日(2010.6.23)
【出願人】(000147833)株式会社イシダ (859)
【Fターム(参考)】