説明

X線検査装置

【課題】搬送される被検査物の欠陥等をインラインで正確に検出することが可能なX線検査装置を提供する。
【解決手段】通過する被検査物Mに対して直交する平面内でX線光源31から拡散し被検査物Mを横断する帯状のX線Lを照射するX線発生器3と、被検査物Mを透過したX線Lを入光させてその受光強度に応じた出力信号を発するX線ラインセンサカメラ4とを備える。パソコン5は、上記出力信号より被検査物Mの透過画像を生成するとともに、サンプル被検査物のマスタ画像を記憶しておき、透過画像とマスタ画像の位置合せを行なった後、位置合せを行なった透過画像とマスタ画像についてその伸縮を略一致させ、伸縮を略一致させた透過画像とマスタ画像との差分画像を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通過する被検査物に対し当該被検査物を横断するように線状にX線を照射して被検査物の通過に伴い当該被検査物の透過画像を得るようにしたX線検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、X線発生器から出力されたX線を被検査物に透過させて、二次元的に分布したセンサを備えるX線検出器で透過X線の強度に応じた透過X線画像を得て、これをモデル画像と比較することによって被検査物たる鋳造製品中の欠陥の有無を検査するX線検査装置が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4477980号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ベルトコンベア等によって搬送される被検査物中の欠陥や異物の有無をインラインで簡易かつ確実に検査できるX線検査装置が求められているが、この場合、X線光源から出力されるX線は光源からの発散光となっているために、被検査物の位置や高さによって撮影画像に伸縮を生じて正確な検査ができないという問題があった。
【0005】
そこで、本発明はこのような課題を解決するもので、搬送される被検査物の欠陥等をインラインで正確に検出することが可能なX線検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本第1発明のX線検査装置は、通過する被検査物(M)に対して直交する平面内でX線光源(31)から拡散し被検査物(M)を横断する帯状のX線(L)を照射するX線出力手段(3)と、被検査物(M)を透過したX線(L)を入光させてその受光強度に応じた出力信号を発するX線入力手段(4)と、前記出力信号より前記被検査物(M)の透過画像を生成する画像生成手段(54)と、サンプル被検査物のマスタ画像を記憶しておく画像記憶手段(5)と、前記透過画像とマスタ画像の位置合せを行なう画像位置合せ手段(5、ステップ102)と、位置合せを行なった透過画像とマスタ画像についてその伸縮を略一致させる伸縮調整手段(5、ステップ103)と、伸縮を略一致させた透過画像とマスタ画像との差分画像を得る差分画像取得手段(5、ステップ104)とを備えている。ここで、サンプル被検査物のマスタ画像としては、欠陥等の無い正常な被検査物(サンプル被検査物)にX線を照射して得られる透過画像を使用しても良いし、製作図面に描かれた被検査物(サンプル被検査物)等に基づいて作成しても良い。
【0007】
本第1発明においては、透過画像とマスタ画像の位置合わせを行なった後、両者の伸縮を略一致させて、その後に透過画像とマスタ画像の差分画像を得るようにしているから、被検査物の位置や高さによる撮影画像の伸縮の影響を受けることなく、搬送される被検査物の欠陥等を上記差分画像よりインラインで正確に検出することができる。
【0008】
本第2発明のX線検査装置では、前記画像記憶手段(5)には複数のサンプル被検査物についてのマスタ画像がそれぞれ記憶されており、前記画像位置合せ手段(5、ステップ102)は前記透過画像と前記マスタ画像の位置合せを各マスタ画像について行うものであり、前記伸縮調整手段(5、ステップ103)は位置合せを行なった透過画像と各マスタ画像についてその伸縮を略一致させるものであり、前記差分画像取得手段(5、ステップ104)は伸縮を略一致させた透過画像と各マスタ画像との差分画像をそれぞれ得るものであり、さらに判定画像取得手段(5、ステップ106)を備えて、判定画像取得手段は複数の差分画像を重ねて判定画像を得るものである。ここで、差分画像を「重ねる」とは、複数の差分画像の各画素の画像データ値を加算し、あるいは差分画像を二値化して各画素の論理積を算出する等を意味している。
【0009】
本第2発明においては、複数のサンプル被検査物についてのマスタ画像をそれぞれ記憶して、これらマスタ画像と透過画像とのそれぞれ差分画像を得て、複数の差分画像を重ねて判定画像としているから、搬送される被検査物の欠陥等を上記判定画像よりインラインでさらに正確に検出することができる。
【0010】
本発明は方法として実現することもでき、本第3発明のX線検査方法では、通過する被検査物に対して直交する平面内でX線光源から拡散し被検査物を横断する帯状のX線を照射するステップと、被検査物を透過したX線を入光させてその受光強度に応じた出力信号を発するステップと、前記出力信号より前記被検査物の透過画像を生成するステップと、サンプル被検査物のマスタ画像を記憶するステップと、前記透過画像とマスタ画像の位置合せを行なうステップと、位置合せを行なった透過画像とマスタ画像についてその伸縮を略一致させるステップと、伸縮を略一致させた透過画像とマスタ画像の差分画像を得るステップとを備える。
【0011】
本第4発明のX線検査装置では、被検査物に対してX線を照射するX線出力手段と、被検査物を透過したX線を入光させてその受光強度に応じた出力信号を発するX線入力手段と、前記出力信号より前記被検査物の透過画像を生成する画像生成手段と、サンプル被検査物のマスタ画像を記憶しておく画像記憶手段と、前記透過画像とマスタ画像の位置合せを行なう画像位置合せ手段と、位置合せを行なった透過画像とマスタ画像についてその伸縮を略一致させる伸縮調整手段と、伸縮を略一致させた透過画像とマスタ画像の差分画像を得る差分画像取得手段とを備える。
【0012】
上記カッコ内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、本発明のX線検査装置によれば、搬送される被検査物の欠陥等をインラインで正確に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明のX線検査装置の構成を示す概略図である。
【図2】X線検査装置のX線照射部の斜視図である。
【図3】X線検査装置の制御プログラムのフローチャートである。
【図4】X線検査装置のX線照射部の概略正面図である。
【図5】透過画像の一例を示す正面図である。
【図6】差分画像の一例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1にはX線検査装置の全体構成を示す。図1において、コンベア等の搬送装置1によって被検査物Mが矢印で示すように図の右方へ搬送移動させられている。搬送装置1の途中にはX線を遮蔽する遮蔽ボックス2が設けられて、被検査物Mが遮蔽ボックス2内を順次通過している。遮蔽ボックス2内には上方位置にX線出力手段たるX線発生器3が設けてあり、一方、X線発生器3に対向させて遮蔽ボックス2内の下方位置にはX線入力手段としてのX線ラインセンサカメラ(以下、ラインセンサという)4が設けてある。
【0016】
X線発生器3から下方へ出力されるX線は、被検査物Mに略直交する平面内でX線光源31(図2参照)から拡散する扁平な光束Lとなって被検査物Mを横断するようにこれに照射される。そして、被検査物Mを透過したX線がラインセンサ4に入力して、ラインセンサ4から受光強度に応じた出力信号が発せられる。
【0017】
図1において、X線発生器3はコントロールユニット51とインターフェースユニット52を介してパソコン5に接続されており、パソコン5からの信号によってX線の出力タイミングや出力強度が制御される。一方、ラインセンサ4には電源アダプタ53より電源が供給されるとともに、制御線5aによってパソコン5に接続されてラインセンサ4の出力信号の取込みタイミング等が制御されている。また、データ線5bによって上記出力信号がパソコン5に送られ、パソコン5内に組み込まれたインターフェース回路54にて、被検査物Mの通過に伴いその透過画像が生成されてメモリに記憶される。
【0018】
以下、パソコン5の制御プログラムによって実行される検査手順を、図3を参照して説明する。被検査物Mが鋳造品等である場合には、型成形の段階で被検査物Mに外形や厚みのバラツキを生じる。そこで本実施形態では、検査開始に先立って、鋳巣等の欠陥を生じていない、代表的な外形や厚みを有する複数の正常なサンプル被検査物について予め透過画像を得て、これらをマスタ画像としてメモリに記憶しておく。
【0019】
検査開始後は、遮蔽ボックス2内のX線発生器3の下方を被検査物Mが通過する毎にその透過画像を取り込んで(ステップ101)ガウシアンフィルタ等によってノイズ除去を行なった後、透過画像を順次各マスタ画像と比較する。マスタ画像との比較は以下のステップ102〜104で行なわれる。すなわち、最初にマスタ画像と透過画像の画像の重心位置とモーメント特徴をそれぞれ計算して、アフィン変換等によって透過画像とマスタ画像のXY方向と回転方向での位置合わせを行なう(ステップ102)。なお、この場合、マスタ画像と透過画像の局所特徴量をそれぞれ算出して、局所特徴量が合致するようにアフィン変換等によって位置合わせを行なうようにしても良い。
【0020】
その後、本実施形態では同一位置かつ同一大の少なくとも一つの検査対象領域(以下、局所という)を透過画像とマスタ画像内にそれぞれ設定して、両局所内の画像データの差分を算出する。この場合、図4に示すように、X線発生器3から出力されるX線は光源31から下方のラインセンサ4に向けて発散光となっており、途中で被検査物Mを透過してラインセンサ4に至っている。このため、ラインセンサ4の出力信号から得られる被検査物Mの透過画像は、光源31を通る中央線Cに直交する同一水平面内で中央線Cから離れるほど、より拡大されたものとなり、また、被検査物Mの厚み方向では光源31へ近づくほど、より拡大されたものとなる。
【0021】
そこで、上記両局所内の画像データの差分を算出するのに先立って、ダイナミックプログラミングによって上記両局所内の画像の伸縮を算出して、両局所内の画像の伸縮が同程度になるように調整する(ステップ103)。これは具体的には、例えば上記両局所内の画像の、直線上に並ぶ各画素をその画素データの大きさによってa,b,cと分類した際に透過画像の局所では「abbbbcc」となり、マスタ画像の局所では[aabccc]となった場合、ダイナミックプログラミングによる公知の最短経路演算によって、前者の「a」が後者の「aa」に、前者の「bbbb」が後者の「b」に、前者の「c」が後者の「cc」に、前者の「c」が後者の「c」に対応づけられて、部分的な伸縮が明らかになるから、この伸縮が同程度になるように両画像を調整するものである。この後、両局所内の画像データの差分を算出して差分画像を得る(ステップ104)。
【0022】
ここで、図5には透過画像の一例を示す。図のG,Hで示す領域が、選択された局所である。局所Gには1.0mmφ〜3.0mmφのステンレス球を置いて異物とし、局所Hには0.3mmφ〜0.8mmφのステンレス球を置いて異物としてある。透過画像では異物の存在が特に局所G,Hともに明らかでない。これに対して、図6(1)、(2)にそれぞれ示す局所G,Hの差分画像では異物が明確に識別されるようになっている。
【0023】
なお、得られた差分画像についてさらに特徴抽出を行なってもよく、例えばソーベルフィルタによって横方向(X方向)エッジと縦方向(Y方向)エッジを抽出して、これらを合成した画像を差分画像とすると良い。このような差分画像を、透過画像と全てのマスタ画像との間で差分を算出して得た後(ステップ105)、これら差分画像を重ねて画像データを加算した判定画像を得る(ステップ106)。そして、判定画像の画像データの値を所定の閾値と比較して、閾値を超えた画像データ部分の平面的大きさに基づいて、鋳巣等の欠陥や異物の有無を判定する(ステップ107)。また、上記実施形態ではラインセンサを使用して被検査物を移動させることによって透過画像を得たが、エリアセンサを使用して被検査物を移動させることなく透過画像を得るようにしても良い。
【符号の説明】
【0024】
3…X線発生器(X線出力手段)、31…X線光源、4…X線ラインセンサカメラ(X線入力手段)、5…パソコン(画像記憶手段、画像位置合せ手段、伸縮調整手段、差分画像取得手段、判定画像取得手段)、L…X線、M…被検査物。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通過する被検査物に対して直交する平面内でX線光源から拡散し被検査物を横断する帯状のX線を照射するX線出力手段と、被検査物を透過したX線を入光させてその受光強度に応じた出力信号を発するX線入力手段と、前記出力信号より前記被検査物の透過画像を生成する画像生成手段と、サンプル被検査物のマスタ画像を記憶しておく画像記憶手段と、前記透過画像とマスタ画像の位置合せを行なう画像位置合せ手段と、位置合せを行なった透過画像とマスタ画像についてその伸縮を略一致させる伸縮調整手段と、伸縮を略一致させた透過画像とマスタ画像の差分画像を得る差分画像取得手段とを備えるX線検査装置。
【請求項2】
前記画像記憶手段には複数のサンプル被検査物についてのマスタ画像がそれぞれ記憶されており、前記画像位置合せ手段は前記透過画像と前記マスタ画像の位置合せを各マスタ画像について行うものであり、前記伸縮調整手段は位置合せを行なった透過画像と各マスタ画像についてその伸縮を略一致させるものであり、前記差分画像取得手段は伸縮を略一致させた透過画像と各マスタ画像の差分画像をそれぞれ得るものであり、さらに判定画像取得手段を備えて、前記判定画像取得手段は複数の差分画像を重ねて判定画像を得るものである請求項1に記載のX線検査装置。
【請求項3】
通過する被検査物に対して直交する平面内でX線光源から拡散し被検査物を横断する帯状のX線を照射するステップと、被検査物を透過したX線を入光させてその受光強度に応じた出力信号を発するステップと、前記出力信号より前記被検査物の透過画像を生成するステップと、サンプル被検査物のマスタ画像を記憶するステップと、前記透過画像とマスタ画像の位置合せを行なうステップと、位置合せを行なった透過画像とマスタ画像についてその伸縮を略一致させるステップと、伸縮を略一致させた透過画像とマスタ画像の差分画像を得るステップとを備えるX線検査方法。
【請求項4】
被検査物に対してX線を照射するX線出力手段と、被検査物を透過したX線を入光させてその受光強度に応じた出力信号を発するX線入力手段と、前記出力信号より前記被検査物の透過画像を生成する画像生成手段と、サンプル被検査物のマスタ画像を記憶しておく画像記憶手段と、前記透過画像とマスタ画像の位置合せを行なう画像位置合せ手段と、位置合せを行なった透過画像とマスタ画像についてその伸縮を略一致させる伸縮調整手段と、伸縮を略一致させた透過画像とマスタ画像の差分画像を得る差分画像取得手段とを備えるX線検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−88291(P2012−88291A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−246925(P2010−246925)
【出願日】平成22年11月3日(2010.11.3)
【出願人】(591172054)株式会社明和eテック (24)
【Fターム(参考)】