説明

X線検査装置

【課題】省スペースを実現するX線検査装置を提供する。
【解決手段】X線検査装置10は、X線照射部と、X線検出部と、画像生成部と、本体11と、表示部30とを備える。X線照射部は、検査対象物にX線を照射する。X線検出部は、検査対象物を透過したX線を検出する。画像生成部は、X線検出部によって検出されたX線の強度に応じて、検査対象物のX線画像を生成する。本体は、X線照射部、X線検出部、および画像生成部を収容する。表示部は、本体に移動可能に取り付けられる。また、表示部は、画像生成部によって生成された検査対象物のX線画像を表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、物品等の検査対象物にX線を照射し、検査対象物を透過したX線の強度に応じて、検査対象物に関する種々の情報(例えば、形状・重量・異物混入の有無)を特定可能にするX線検査装置が用いられている。X線検査装置は、検査結果を表示するための表示部を備える。表示部は、例えば、特許文献1(特開2009−270866号公報)に示すように、X線検査装置の本体に取り付けられ、各種情報の入力が可能なタッチパネル形式の画面を有する。オペレータは、X線検査装置の画面の前に立って、検査結果の確認や情報の入力を行う。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、近年、X線検査装置の小型化のニーズが高まっている。したがって、X線検査装置を全体的に小さくすることにより、X線検査装置の小型化を実現することが考えられる。しかし、X線検査装置の画面は、オペレータに対して検査結果を明確に表示し、また、オペレータによる検査結果の確認を容易にすることが求められるため、本体と同様に小型化することは好ましくない。
【0004】
本発明の課題は、X線検査装置の小型化を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るX線検査装置は、X線照射部と、X線検出部と、画像生成部と、本体と、表示部とを備える。X線照射部は、検査対象物にX線を照射する。X線検出部は、検査対象物を透過したX線を検出する。画像生成部は、X線検出部によって検出されたX線の強度に応じて、検査対象物のX線画像を生成する。本体は、X線照射部、X線検出部、および画像生成部を収容する。表示部は、本体に移動可能に取り付けられる。また、表示部は、画像生成部によって生成された検査対象物のX線画像を表示する。
【0006】
これにより、X線検査装置の小型化を実現することができる。
【0007】
また、本発明に係るX線検査装置は、搬送ユニットと、位置移動部とをさらに備えることが好ましい。搬送ユニットは、X線照射部によるX線の照射域に検査対象物を搬送する。位置移動部は、搬送ユニットによって搬送されて本体内部で移動する検査対象物の位置に応じて、表示部の画面上で表示される検査対象物のX線画像の位置を移動させる。また、表示部は、画面上で移動する検査対象物のX線画像を表示することが好ましい。
【0008】
これにより、搬送ユニットによって搬送される前記検査対象物の動きを、視覚的に把握することができる。
【0009】
さらに、本発明に係るX線検査装置は、第1切替部をさらに備えることが好ましい。第1切替部は、画面上で検査対象物のX線画像が移動する方向を切り替える。
【0010】
これにより、表示部の向きを変更した場合にも、検査対象物における異物の特定を適切に行うことができる。
【0011】
さらに、本発明に係るX線検査装置は、回動機構と、判定部とを備えることが好ましい。回動機構は、表示部を支持する支持軸を有し、支持軸を基準に表示部を回動させる。判定部は、表示部の回動により変化する画面の向きを判定する。さらに、第1切替部は、判定部によって判定された画面の向きに応じて、画面に表示させる検査対象物のX線画像の移動方向を切り替えることが好ましい。
【0012】
これにより、オペレータの操作位置に応じて、適切な画面を提供することができる。
【0013】
さらに、本発明に係るX線検査装置は、第2切替部を備え、第2切替部は、画面上で表示させる検査対象物のX線画像を回転または反転させることが好ましい。
【0014】
これにより、画面の向きに応じて、適切な画像を提供することができる。
【0015】
また、第2切替部は、判定部によって判定された画面の向きに応じて、画面に表示させる検査対象物のX線画像を回転または反転させることが好ましい。
【0016】
これにより、表示部の位置が変更されて画面の向きが変わった場合にも、オペレータは、検査対象物における異物の場所を容易に特定することができる。
【0017】
また、本発明に係るX線検査装置は、対応付け情報記憶領域をさらに備えることが好ましい。対応付け情報記憶領域は、対応付け情報を記憶する。対応付け情報は、画面の向きと検査対象物のX線画像の移動方向とを対応付けた情報である。また、対応付け情報は、第1情報と第2情報とを含むことが好ましい。第1情報は、画面の向きが第1方向の場合に、検査対象物のX線画像を右から左に移動させるための情報である。第2情報は、画面の向きが、第1方向と反対の第2方向の場合に、検査対象物のX線画像を左から右に移動させるための情報である。
【0018】
これにより、X線検査装置を、正面側および背面側の両方で操作することができる。
【0019】
また、第1情報は、画面が正面または背面を向いている場合と、検査対象物のX線画像の移動方向とを対応付けた情報であり、対応付け情報は、第3情報と第4情報とをさらに含むことが好ましい。第3情報は、画面の向きが第1側面である場合に、検査対象物のX線画像を上から下に移動させるための情報である。第4情報は、画面の向きが第1側面と反対の第2側面の場合に、検査対象物のX線画像を下から上に移動させるための情報である。
【0020】
これにより、X線検査装置を、いかなる方向からでも操作することができる。
【0021】
また、本発明に係るX線検査装置は、取得部をさらに備えることが好ましい。取得部は、本体に取り付けられ、画面の位置情報を取得する。また、第1切替部は、位置情報に基づいて、画面上における検査対象物のX線画像の移動方向を切り替えることが好ましい。
【0022】
これにより、オペレータの操作位置に応じて、適切な画面を提供することができる。
【0023】
さらに、本発明に係るX線検査装置は、対応付け情報記憶領域を備えることが好ましい。対応付け情報記憶領域は、対応付け情報を記憶する。対応付け情報は、位置情報と検査対象物のX線画像の移動方向とを対応付けた情報である。また、対応付け情報は、第1情報と第2情報とを含むことが好ましい。第1情報は、画面の向きが第1方向の場合に、検査対象物のX線画像を右から左に移動させるための情報である。第2情報は、画面の向きが、第1方向と反対の第2方向の場合に、検査対象物のX線画像を左から右に移動させるための情報である。
【0024】
これにより、X線検査装置を、正面側および背面側の両方で操作することができる。
【0025】
また、第1情報は、画面が正面または背面を向いている場合と、検査対象物のX線画像の移動方向とを対応付けた情報であり、対応付け情報は、第3情報と第4情報とをさらに含むことが好ましい。第3情報は、画面の向きが第1側面である場合に、検査対象物のX線画像を上から下に移動させるための情報である。また、第4情報は、画面の向きが第1側面と反対の第2側面の場合に、検査対象物のX線画像を下から上に移動させるための情報である。
【0026】
これにより、X線検査装置を、いかなる方向からでも操作することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明に係るX線検査装置は、X線検査装置の小型化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一の実施形態に係るX線検査装置の外観斜視図である。
【図2】本発明の一の実施形態に係るX線検査装置の側面図である。
【図3】X線検査装置のシールドボックス内部の簡易構成図である。
【図4】X線検出素子によって検出されるX線の透過量の例を示すグラフである。
【図5】制御装置の構成を示す制御ブロック図である。
【図6】判定基準情報記憶領域に記憶されている情報の例を示す図である。
【図7A】対応付け情報記憶領域に記憶されている情報(第1対応付け情報)の例を示す図である。
【図7B】対応付け情報記憶領域に記憶されている情報(第2対応付け情報)の例を示す図である。
【図8】画像回転情報記憶領域に記憶されている情報の例を示す図である。
【図9】初期位置および判定画面方向を示す図である。
【図10】コンベアユニットの搬送方向が初期設定であり、画面が正面に向いている場合に、画面に表示される対象物画像の例を示す図である。
【図11】図10で示した対象物画像の表示位置が変更した例を示す図である。
【図12】コンベアユニットの搬送方向が初期設定であり、画面が背面に向いている場合に画面に表示される対象物画像の例を示す図である。
【図13】コンベアユニットの搬送方向が初期設定であり、画面が右側面に向いている場合に画面に表示される対象物画像の例を示す図である。
【図14】コンベアユニットの搬送方向が初期設定であり、画面が左側面に向いている場合に画面に表示される対象物画像の例を示す図である。
【図15A】回転方向の切替処理を説明するためのフローである。
【図15B】移動方向の切替処理を説明するためのフローである。
【図16】変形例Fに係る制御装置の構成を示す制御ブロック図である。
【図17】変形例Fに係る判定基準情報記憶領域に記憶されている情報の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係るX線検査装置10について説明する。
【0030】
(1)X線検査装置の概略説明
図1は、本発明の一実施形態に係るX線検査装置10の外観を示す斜視図である。図2は、X線検査装置10の側面図である。X線検査装置10では、製品Gの検査が行われる。製品Gは、例えば、生鮮食料品(野菜・果物)および加工品(菓子)等の物品50と、物品50を包装する包装材(トレイやフィルム等)とを含む。製品Gには、例えば、団子や饅頭、みかんやキウイ等のように、複数個の物品が一つの製品Gとして包装されているものが含まれる。本実施形態に係るX線検査装置10は、連続的に搬入される製品Gに対してX線を照射することにより製品Gの良否判定(異物判定)を行う。
【0031】
(2)X線検査装置の詳細説明
図1〜図3のいずれかに示すように、X線検査装置10は、主として、シールドボックス(本体)11と、コンベアユニット12と、X線照射器(X線照射部)21と、X線ラインセンサ(X線検出部)22と、タッチパネル機能付きのモニタ(表示部)30と、制御装置70とから構成されている。
【0032】
(2−1)シールドボックス
シールドボックス11は、後述するコンベアユニット12、X線照射器21、X線ラインセンサ22、制御装置70等を収容するボックスである。シールドボックス11の正面上部には、キーの差し込み口61および電源スイッチ62等が配置されている。また、シールドボックス11の上部には、モニタ30を支持するための機構(回動機構)13が設けられている。回動機構13は、モニタ30の上下移動および回転移動を可能にする機構である。
【0033】
また、シールドボックス11の両側面には、開口11aが形成されている。開口11aは、製品Gをシールドボックス11の外側から内側に搬入し、内側から外側に搬出するために用いられる。開口11aは、遮蔽ノレン11bによって塞がれている。遮蔽ノレン11bは、シールドボックス11の内部のX線が外部へ漏洩することを防止する。遮蔽ノレン11bは、鉛を含むゴムから成形されている。遮蔽ノレン11bは、製品Gが開口11aを通過する際に製品Gによって押しのけられるようになっている。
【0034】
(2−2)コンベアユニット
コンベアユニット12は、シールドボックス11の外側から内側および内側から外側に製品Gを搬送し、シールドボックス11の内部で製品Gを移動させる。コンベアユニット12は、シールドボックス11の両側面に形成された開口11aを貫通するように配置されている。
【0035】
コンベアユニット12は、主として、無端状のベルト12cと、駆動ローラと、コンベアモータ12a(図5参照)とから構成されている。駆動ローラは、コンベアモータ12aによって駆動される。駆動ローラの駆動によりベルト12cが回転し、ベルト12cの回転によりベルト12c上の製品Gが下流に搬送される。駆動ローラは、正方向と逆方向との両方に駆動することが可能である。すなわち、コンベアユニット12は、搬送方向の上流および下流を入れ替えることができる。なお、本実施形態では、初期設定として、コンベアユニット12は、X線検査装置10の正面に向かって左から右に製品Gを搬送する。言い換えると、X線検査装置10の正面に向かって左が上流となり、右が下流となる。コンベアユニット12による製品Gの搬送方向は、オペレータによる設定により変更可能である。
【0036】
また、コンベアユニット12による製品Gの搬送速度は、オペレータによって入力された設定速度に応じて変動する。制御装置70は、設定速度に基づいてコンベアモータ12aをインバータ制御し、製品Gの搬送速度を細かく制御する。また、コンベアモータ12aには、コンベアユニット12による搬送速度を検出して制御装置70に送るエンコーダ12b(図5参照)が装着されている。
【0037】
(2−3)X線照射器
X線照射器21は、図3に示すように、コンベアユニット12の上方に配置されている。X線照射器21は、X線ラインセンサ22に向けて扇状の照射範囲XにX線を照射する。照射範囲Xは、コンベアユニット12の搬送面に対して垂直に延びる。また、照射範囲Xは、コンベアユニット12の搬送方向に対して交差する方向に扇状に広がる。すなわち、X線照射器21から照射されるX線は、ベルトの幅方向に広がる。製品Gは、コンベアユニット12によってシールドボックス11内部に搬送されて照射範囲Xを通過する。これにより、製品Gには、X線照射器21から出力されたX線が照射される。
【0038】
(2−4)X線ラインセンサ
X線ラインセンサ22は、図3に示すように、コンベアユニット12の下方に配置されている。X線ラインセンサ22は、主として、多数のX線検出素子22aから構成されている。X線検出素子22aは、コンベアユニット12による搬送方向に直交する向きに一直線に水平配置されている。また、各X線検出素子22aは、製品Gやコンベアユニット12を透過したX線を検出し、検出したX線に基づくX線透過信号を出力する。言い換えると、X線透過信号は、透過したX線の強度に応じたX線透過信号を出力する。なお、透過したX線の強度は、透過したX線量(透過X線量)の大小によって変動する。
【0039】
図4は、X線ラインセンサ22のX線検出素子22aによって検出されるX線の透過量の例を示すグラフである。グラフの横軸は、各X線検出素子22aの位置に対応する。また、グラフの横軸は、コンベアユニット12の搬送方向に直交する方向の距離に対応する。また、グラフの縦軸は、X線検出素子22aで検出されたX線の透過量であり、透過量の多いところが明るい(淡い)X線画像として表示され、透過量が少ないところが暗い(濃い)X線画像として表示される。すなわち、X線画像の明暗(濃淡)は、X線の透過量に対応する。また、X線ラインセンサ22は、検査対象物である製品Gが扇状のX線の照射範囲X(図3参照)を通過するタイミングを検知するためのセンサとしても機能する。
【0040】
(2−5)モニタ
モニタ30は、制御装置70と信号の授受を行う。また、モニタ30は、表示部および入力部として機能する。具体的に、モニタ30は、液晶ディスプレイである。また、モニタ30は、タッチパネル機能も有しており、オペレータによる検査パラメータや動作設定情報等の入力を受け付ける。ここで、検査パラメータとは、製品Gに混入する異物を検出するために必要なパラメータである。また、動作設定情報とは、検査速度やコンベアユニット12の搬送方向等の情報である。
【0041】
モニタ30は、検査時に必要となる検査パラメータ等の入力をオペレータに促す画面を表示する。また、モニタ30は、検査結果や設定されているパラメータ等の各種情報を画面に表示する。ここで、検査結果には、後述する画像生成部72aによって生成されたX線画像および異物混入の有無の通報等が含まれる。X線画像には、検査対象物のX線画像(対象物画像TI)と、検査対象物以外のX線画像(非対象物画像NTI)とが含まれる。対象物画像TIは、製品G(物品50および包装材)のX線画像である。検査対象物に異物が混入している場合、対象物画像TIには、異物のX線画像(異物画像FS)が含まれる。非対象物画像NTIは、ベルト(背景)のX線画像である。モニタ30は、シールドボックス内で移動する検査対象物(製品G)の様子を示す。具体的に、モニタ30は、シールドボックス内で移動する製品Gの位置の変化に応じて、対象物画像TIの画面上の位置を変化させる。言い換えると、対象物画像TIは、製品Gの移動に合わせて、画面上で移動する(図10および図11参照)。
【0042】
モニタ30は、上述したように、シールドボックス11の上部に設けられた回動機構13によって支持されている。回動機構13は、シールドボックス11に対してモニタ30を移動可能に支持する機構である。回動機構13は、主として、支持軸13aと、取り付け部材13bと、検出センサ13c(図5参照)とを有する。モニタ30は、取り付け部材13bによって支持軸13aに取り付けられる。モニタ30は、支持軸13aに沿って上下に移動できる。また、モニタ30は、支持軸13aを中心に、初期位置から360°回動可能である(図9参照)。すなわち、モニタ30は、支持軸13aに支持された状態で、支持軸13aを基準に画面SCの向きを360°変更することができる。
【0043】
検出センサ13cは、モニタ30の回動と、モニタ30の移動距離とを検出する。詳細には、検出センサ13cは、初期位置または基準位置からのモニタ30の移動を検出する。さらに、検出センサ13cは、初期位置または基準位置にあるモニタ30が、支持軸13aの表面を沿って移動した距離を検出する。ここで、初期位置とは、画面SCが真正面に向く位置である。言い換えると、初期位置とは、画面SCが図9に示す0°の方向に対して直交する位置である。また、基準位置とは、最新のモニタの位置(移動前のモニタの位置)である。検出センサ13cは、モニタ30が回動したこと、モニタ30が初期位置に戻ったこと、およびモニタ30の移動距離を示す信号(検出信号)を制御部72に送る。制御部72は、検出信号によって、モニタ30の回動、モニタ30が初期位置に戻ったこと、およびモニタ30の回動角度を把握する。
【0044】
(2−6)制御装置
制御装置70は、図5に示すように、主として、記憶部71および制御部72を含む。記憶部71は、ROM、RAM、およびHDD(ハードディスク)等によって構成されている。制御部72は、CPUによって構成されている。
【0045】
また、制御装置70は、図示しない表示制御回路、キー入力回路、通信ポートなども備えている。表示制御回路は、モニタ30でのデータ表示を制御する回路である。キー入力回路は、モニタ30のタッチパネルを介してオペレータにより入力されたキー入力データを取り込む回路である。通信ポートは、プリンタ等の外部機器やLAN等のネットワークとの接続を可能にする。
【0046】
制御装置70は、また、上述のコンベアモータ12a、エンコーダ12b、X線照射器21、X線ラインセンサ22、検出センサ13c、およびモニタ30等に接続され、信号の授受を行う。制御装置70は、エンコーダ12bからコンベアモータ12aの回転数に関するデータ(回転数データ)を取得し、当該データに基づき製品Gの移動距離を把握する。また、制御装置70は、上述したように、X線ラインセンサ22から出力された信号を受信することにより、ベルト12c上の物品Gが照射範囲Xに来たタイミングを検出する。以下、記憶部71および制御部72の構成について詳細に説明する。
【0047】
(2−6−1)記憶部
記憶部71には、制御部72に実行させる各種プログラムが記憶されている。また、記憶部71には、検査パラメータや動作設定情報等が記憶されている。検査パラメータおよび動作設定情報等は、モニタ30のタッチパネル機能を使ってオペレータによって入力される。
【0048】
記憶部71は、主として、X線画像記憶領域71a、判定基準情報記憶領域71b、対応付け情報記憶領域71c、画像回転情報記憶領域71d、画面方向記憶領域71e、設定方向記憶領域71f、および判定結果記憶領域71gを有する。
【0049】
(a)X線画像記憶領域
X線画像記憶領域71aには、後述する画像生成部72aによって生成された画像に関するデータ(画像データ)が記憶される。画像データには、X線画像を構成する各画素の濃淡値等に関する情報が含まれる。X線画像には、上述したように、検査対象物のX線画像(対象物画像TI)と、検査対象物以外のX線画像(非対象物画像NTI)とが含まれる。対象物画像TIは、製品G(物品50および包装材)のX線画像である。検査対象物に異物が混入している場合、対象物画像TIには、異物のX線画像(異物画像FS)が含まれる。非対象物画像NTIは、ベルト(背景)のX線画像である。
【0050】
(b)判定基準情報記憶領域
判定基準情報記憶領域71bには、画面方向の判定基準に関する情報(判定基準情報)が記憶されている。判定基準情報は、モニタ30の位置に基づいて画面SCの向きを判定するための情報である。言い換えると、判定基準情報は、モニタ30の回動角度に基づいて画面SCの向きを判定するための情報である。モニタ30の回動角度は、後述する回動角度判定部72eによって判定される回動角度である。判定基準情報記憶領域71bでは、図6に示すように、モニタ30の回動角度と、判定画面方向とが対応付けて記憶されている。本実施形態において、モニタ30の回動角度は、初期位置を基準に判定される。また、判定基準情報は、後述する画面方向判定部72fによって画面方向が判定される際に参照される情報である。
【0051】
本実施形態では、モニタ30の回動角度に基づいて、モニタ30は、4つの画面方向のうちいずれかの画面方向であると判定される。画面方向とは、画面SCが向いている方向である。4つの画面方向には、正面、背面、右側面、および左側面が含まれる(図6および図9参照)。また、モニタ30の回動角度θ1(−45°≦θ<+45°)には、正面が対応付けられている。また、モニタ30の回動角度θ2(+45°≦θ<+135°)には、左側面が対応付けられている。また、モニタ30の回動角度θ3(+135°≦θ<+225°)には、背面が対応付けられている。さらに、モニタ30の回動角度θ4(+225°≦θ<+315°)には、右側面が対応付けられている。
【0052】
(c)対応付け情報記憶領域
対応付け情報記憶領域71cには、判定画面方向と、対象物画像TIの移動方向とを対応付けた対応付け情報が記憶されている(図7Aおよび図7B参照)。
【0053】
対象物画像TIの移動方向とは、画面上で対象物画像TIを移動させる方向である。移動方向は、モニタ30が正面に向いている場合に、シールドボックス11内で移動する製品(検査対象物)Gの移動方向に対応する。言い換えると、判定画面方向が正面の時、製品Gの搬送方向と対象物画像TIの移動方向とは一致する(第1方向)。また、判定画面方向が背面の時、対象物画像TIの移動方向は、第1方向とは逆の方向(第2方向)である。また、判定画面方向が右側面である時の移動方向は、第3方向である。第3方向は、第1方向および第2方向の両方と異なる方向である。また、判定画面方向が左側面である時の移動方向は、第3方向と逆の方向である第4方向である。なお、判定画面方向が正面または背面の時、対象物画像TIは、画面上で左右方向に移動する。また、判定画面方向が右側面または左側面の時、対象物画像TIは、画面上で上下方向に移動する。
【0054】
図7Aには、コンベアユニット12による搬送方向が初期設定である場合(正面に対して左から右に搬送する場合)に参照する対応付けた情報(第1対応付け情報)を示す。具体的に、判定画面方向が正面の場合には、移動方向1(左から右)を対応付ける(第1情報)。これにより、図10で示すように、対象物画像TIは、画面上で左から右に移動する。判定画面方向が背面の場合には、移動方向3(右から左)を対応付ける(第2情報)。これにより、図12で示すように、対象物画像TIは、画面上で右から左に移動する。また、判定画面方向が右側面の場合には、移動方向2(上から下)を対応付ける(第3情報)。これにより、図13で示すように、対象物画像TIは、画面上で上から下に移動する。さらに、判定画面方向が左側面の場合には、移動方向4(下から上)を対応付ける(第4情報)。これにより、図14で示すように、対象物画像TIは、画面上で下から上に移動する。
【0055】
図7Bには、コンベアユニット12による搬送方向の設定が変更された場合(搬送方向が正面に向かって右から左の場合)に参照する対応付け情報(第2対応付け情報)を示す。ここでは、判定画面方向が正面の場合には、移動方向3を対応付け(第1情報)、判定画面方向が背面の場合には、移動方向1を対応付ける(第2情報)。また、判定画面方向が右側面の場合には、移動方向4を対応付け(第3情報)、判定画面方向が左側面の場合には、移動方向2を対応付ける(第4情報)。
【0056】
(d)画像回転情報記憶領域
画像回転情報記憶領域71dには、画像回転情報に関する情報が記憶されている。画像回転情報に関する情報とは、モニタ30の判定画面方向と、対象物画像TIの回転方向とを対応付けた情報である(図8参照)。対象物画像TIの回転方向とは、画面に表示させる対象物画像TIの回転方向である。基準となる対象物画像TI(基準画像)は、判定画面方向が正面のときに表示させる対象物画像TIである。すなわち、判定画面方向が正面の場合、対象物画像TIを回転させない。
【0057】
一方、判定画面方向が背面の場合、基準画像は、180°回転される(図12参照)。すなわち、モニタ30の回動角度θがθ3(+135°≦θ<+225°)である場合には、基準画像が180°回転された対象物画像TIが画面SCに表示される。
【0058】
また、判定画面方向が右側面の場合、基準画像は、中心点Oを基準に、時計回り(右方向)に90°回転される(図13参照)。中心点Oとは、図10に示すように、基準画像の中心の点である。すなわち、モニタ30の回動角度θがθ4(+225°≦θ<+315°)である場合には、基準画像が、中心点Oを基準に時計回りに90°回転された対象物画像TIが画面SCに表示される。
【0059】
さらに、判定画面方向が左側面の場合、基準画像は、中心点Oを基準に、反時計回り(左方向)に90°回転される(図14参照)。すなわち、モニタ30の回動角度θがθ2(+45°≦θ<+135°)である場合には、基準画像が、中心点Oを基準に反時計回りに90°回転された対象物画像TIが画面SCに表示される。
【0060】
(e)画面方向記憶領域
画面方向記憶領域71eには、画面方向に関する情報が記憶される。画面方向に関する情報とは、モニタ30の画面SCがいずれの方向に向いているかを示す情報である。具体的に、画面方向に関する情報には、最新の回動角度に関する情報と、最新の判定画面方向に関する情報とが含まれる。
【0061】
最新の回動角度に関する情報とは、積算回動角度であり、基準位置を示す情報である。具体的に、最新の回動角度に関する情報とは、モニタ30の画面SCが、図9に示す0°の位置からどの程度回動したかを示す情報である。最新の回動角度に関する情報は、後述する回動角度判定部72eによって新たに判定された情報によって上書きされていく。
【0062】
また、最新の判定画面方向とは、最新の回動角度に基づいて、後述する画面方向判定部72fによって判定された画面方向(画面の向き)に関する情報である。判定画面方向は、画面方向判定部72fによって新たに判定された情報によって上書きされていく。
【0063】
(f)設定方向記憶領域
設定方向記憶領域71fには、後述する設定方向切替部72gによって設定された回転方向に関する情報および移動方向に関する情報が記憶されている。回転方向に関する情報とは、画像回転情報記憶領域71dに記憶されている対応付け情報のうち、後述する設定方向切替部72fによって設定された組合せ(判定画面方向および対象物画像TIの回転方向の組合せ)に関する情報(第1設定情報)である。また、移動方向に関する情報とは、対応付け情報記憶領域71cに記憶されている対応付け情報のうち、設定方向切替部72fによって設定された組合せ(判定画面方向および対象物画像TIの移動方向の組合せ)に関する情報(第2設定情報)である。設定方向記憶領域71fに記憶されている情報は、後述の画像回転部72bおよび位置変更部72cによってそれぞれ参照される。なお、設定方向記憶領域71fに記憶されている情報は、設定方向切替部72gが回転方向および移動方向を新たに設定するたびに、当該新たな情報によって上書きされる。
【0064】
(g)判定結果記憶領域
判定結果記憶領域71gには、後述する異物判定部72hによって判定された結果(判定結果)が記憶される。具体的に、異物判定部72hによる判定結果として、製品Gについての異物混入の有無に関する情報が記憶される。
【0065】
(2−6−2)制御部
制御部72は、記憶部71に記憶されている各種プログラムを実行することにより、画像生成部72a、画像回転部72b、位置変更部72c、回動検出部72d、回動角度判定部72e、画面方向判定部72f、設定方向切替部(第1切替部および第2切替部)72f、および異物判定部72hとして機能する。
【0066】
(a)画像生成部
画像生成部72aは、X線ラインセンサ22によって検出された透過X線の量(あるいは、透過X線の強度)に基づいてX線画像を生成する。具体的に、画像生成部72aは、X線ラインセンサ22の各X線検出素子22aから出力されるX線透過信号を細かい時間間隔で取得する。画像生成部72aは、扇状のX線の照射範囲X(図3参照)を製品Gが通過するときに出力されるX線透過信号に基づいて、X線画像を生成する。X線画像には、上述したように、検査対象物のX線画像(対象物画像TI)と、検査対象物以外のX線画像(非対象物画像NTI)とが含まれる。対象物画像TIは、製品G(物品50および包装物)のX線画像である。検査対象物に異物が混入している場合には、対象物画像TIは、異物のX線画像(異物画像FS)を含む。非対象物画像NTIは、ベルト(背景)のX線画像である。
【0067】
一のX線検出素子22aによって出力されるX線透過信号によって1画素の濃淡値が定まる。製品Gの全体についてのX線透過信号を取得することにより、製品Gおよび背景についての2次元のX線画像のデータが生成される。画像生成部72aは、X線透過信号に対応する濃淡値を、例えば、256階調に分類してX線画像を生成する。X線画像の明るさ(濃淡値)は、X線の透過量に依存するものとする。
【0068】
(b)画像回転部
画像回転部72bは、設定方向記憶領域71fに記憶されている第1設定情報に基づいて、画面上に表示させる対象物画像TIを回転させる(図12〜図14参照)。第1設定情報とは、画像回転情報記憶領域71dに記憶されている対応付け情報のうち、設定されている、判定画面方向と対象物画像TIの回転方向との組合せに係る情報である。すなわち、画像回転部72bは、第1設定情報に基づいて、画面に表示させる対象物画像TIを変化(回転または反転)させる。
【0069】
なお、画像回転部72bは、X線検査装置10による検査開始時、もしくは、後述する回動検出部72dによるモニタ30の回動検出時に、設定方向記憶領域71fに記憶されている情報を参照する。
【0070】
(c)位置変更部
位置変更部72cは、コンベアユニット12によって搬送されてシールドボックス11内で移動する製品Gの位置に応じて、画面上で表示される対象物画像TIの位置を移動させる。具体的に、位置変更部72cは、画像生成部72aによって対象物画像TIが生成された後、エンコーダ12bから取得した回転数データに基づいて、画面SCに表示させる対象物画像TIの位置を変更する。
【0071】
また、位置変更部72cは、製品Gの搬送方向および搬送速度に基づいて、対象物画像TIの画面上の表示位置を変化させる(図10および図11参照)。
【0072】
さらに、位置変更部72cは、設定方向記憶領域71fに記憶されている第2設定情報に基づいて、対象物画像TIの画面上の表示位置を変化させる(図12〜図14参照)。第2設定情報とは、対応付け情報記憶領域71cに記憶された対応付け情報のうち、選択されている判定画面方向と対象物画像TIの移動方向との組合せに係る情報である。すなわち、位置変更部72cは、第2設定情報に基づいて、画面上の対象物画像TIの表示位置を所定の方向(図10〜図14の矢印d参照)に移動させる。
【0073】
なお、位置変更部72cは、X線検査装置10による検査開始時、もしくは、後述する回動検出部72dによるモニタ30の回動検出時に、設定方向記憶領域71fに記憶されている情報を参照する。
【0074】
(d)回動検出部
回動検出部72dは、検出センサ13cから送られる検出信号に基づき、モニタ30の回動を検出する。また、回動検出部72dは、検出信号の入力がなくなった時点で、モニタ30の回動の終了を検出する。
【0075】
(e)回動角度判定部
回動角度判定部72eは、回動検出部72dによってモニタ30の回動が検出されると、検出センサ13cから送られる検出信号に基づいて、モニタ30の回動角度の判定を開始する。また、回動角度判定部72eは、回動検出部72dによる回動の終了が検出されると、回動角度の判定を終了する。具体的に、回動角度判定部72eは、モニタ30の移動距離を示す信号およびモニタ30が初期位置に戻ったことを示す信号に基づいて、基準位置からの移動距離を判定する。基準位置とは、上述したように、最新のモニタの位置(移動前のモニタの位置)である。
【0076】
さらに、回動角度判定部72eは、新たに判定された基準位置からの移動距離と、画面方向記憶領域71eに記憶された基準位置に関する情報とに基づいて、初期位置0°を基準に、モニタ30がどの程度回動されたか(回動角度)を判定する。回動角度判定部72eによって新たに判定された回動角度は、上述の画面方向記憶領域71eに記憶される。
【0077】
(f)画面方向判定部
画面方向判定部72fは、回動検出部72dによってモニタ30の回動が検出されると、画面方向記憶領域71eに記憶された情報と、判定基準情報記憶領域71bに記憶されている判定基準情報とに基づいて、モニタ30の画面SCの向きを判定する。言い換えると、画面方向判定部72fは、回動角度に関する情報と、判定基準情報とに基づいて、検出信号検出後のモニタ30の向き(最新の画面方向)を判定する。具体的に、図9に示すように、画面方向判定部72fは、モニタ30の回動角度がθ1(−45°≦θ<+45°)の場合には、画面SCは正面を向いているものと判定する。また、画面方向判定部72fは、モニタ30の回動角度がθ2(+45°≦θ<+135°)の場合には、画面SCは左側面を向いているものと判定する。また、画面方向判定部72fは、モニタ30の回動角度がθ3(+135°≦θ<+225°)の場合には、画面SCは背面を向いているものと判定する。さらに、画面方向判定部72fは、モニタ30の回動角度がθ4(+225°≦θ<+315°)の場合には、画面SCは右側面を向いているものと判定する。画面方向判定部72fによって判定された画面方向(判定画面方向)に関する情報は、上述の画面方向記憶領域71eに記憶される。
【0078】
(g)設定方向切替部
設定方向切替部72gは、画面に表示させる対象物画像TIの態様を切り替える。具体的に、設定方向切替部72gは、画面方向記憶領域71eに記憶された最新の判定画面方向と、画像回転情報記憶領域71dに記憶されている画像回転情報に関する情報とに基づいて、対象物画像TIの表示態様を設定する。より具体的に、設定方向切替部72gは、X線検査装置10による検査開始時、もしくは、回動検出部72dによってモニタ30の回動が検出されると、画面方向記憶領域71eに記憶された最新の判定画面方向を参照する。さらに、設定方向切替部72gは、画像回転情報記憶領域71dに記憶された情報に基づいて、最新の判定画面方向に対応付けられた対象物画像TIの回転方向を特定する。その後、設定方向切替部72gは、設定方向記憶領域71fに記憶された情報を、新たに特定された情報で上書きする。すなわち、設定方向記憶領域71fに記憶されていた回転方向が、新たな回転方向に切り替えられる。
【0079】
また、設定方向切替部72gは、対象物画像TIが画面上で移動する方向を切り替える。具体的に、設定方向切替部72gは、画面方向記憶領域71eに記憶された最新の判定画面方向と、対応付け情報記憶領域71cに記憶されている対応付け情報とに基づいて、対象物画像TIが画面上で移動する方向を設定する。より具体的に、設定方向切替部72gは、X線検査装置10による検査開始時、もしくは、回動検出部72dによってモニタ30の回動が検出されると、画面方向記憶領域71eに記憶された最新の判定画面方向を参照する。さらに、設定方向切替部72gは、対応付け情報記憶領域71cに記憶された情報に基づいて、最新の判定画面方向に対応付けられた対象物画像TIの移動方向を特定する。その後、設定方向切替部72gは、設定方向記憶領域71fに記憶された情報を、新たに特定された情報で上書きする。すなわち、設定方向記憶領域71fに記憶されていた移動方向が、新たな移動方向に切り替えられる。
【0080】
(h)異物判定部
異物判定部72hは、記憶部71に記憶されている検査パラメータに基づいて、異物の有無を判定する。異物判定部72hは、製品GのX線画像を構成する画素に、所定の閾値を超える濃淡値を有する画素が含まれる場合に、製品Gに異物が混入されているものと判定する。また、異物判定部72hは、製品Gにおける異物の混入を判定した場合には、モニタ30の画面SCに、異物が混入している旨を示す情報を表示させる(図10〜図14参照)。
【0081】
(3)方向切替処理
(3−1)回転方向の設定
まず、図15Aを用いて、画面SCに表示される対象物画像TIの回転方向の切り替えに係る処理について説明する。
【0082】
まず、ステップS1において、X線検査装置10による検査開始、もしくは、モニタ30の回動が検出されたかどうかが判断される。ステップS1において、検査開始またはモニタ30の回動が検出された場合には、ステップS2に進み、検出されない場合は、検出されるまで待機する。
【0083】
ステップS2では、設定方向切替部72gが、画面方向記憶領域71eに記憶された最新の判定画面方向を参照する。その後、ステップS3に進む。
【0084】
ステップS3において、設定方向切替部72gは、画像回転情報記憶領域71cに記憶された情報に基づいて、最新の判定画面方向に対応付けられた対象物画像TIの回転方向を特定する。その後、ステップS4に進む。
【0085】
ステップS4では、設定方向切替部72gが、ステップS3で特定した対象物画像TIの回転方向に関する情報を、設定方向記憶領域71fに記憶する。すなわち、設定方向記憶領域71fに記憶されていた情報が、新たに特定された情報によって上書きされる。これにより、対象物画像TIの回転方向が切り替える。
【0086】
(3−2)移動方向の設定
次に、図15Bを用いて、画面SCに表示される対象物画像TIの移動方向の切り替えに係る処理について説明する。
【0087】
まず、ステップS11において、X線検査装置10による検査開始、もしくは、モニタ30の回動が検出されたかどうかが判断される。ステップS1において、検査開始またはモニタ30の回動が検出された場合には、ステップS2に進み、検出されない場合は、検出されるまで待機する。
【0088】
ステップS12では、設定方向切替部72gが、画面方向記憶領域71eに記憶された最新の判定画面方向を参照する。その後、ステップS3に進む。
【0089】
ステップS13において、設定方向切替部72gは、対応付け情報記憶領域71cに記憶された情報に基づいて、最新の判定画面方向に対応付けられた対象物画像TIの移動方向を特定する。その後、ステップS4に進む。
【0090】
ステップS14では、設定方向切替部72gが、ステップS3で特定した対象物画像TIの移動方向に関する情報を、設定方向記憶領域71fに記憶する。すなわち、設定方向記憶領域71fに記憶されていた情報が、新たに特定された情報によって上書きされる。これにより、対象物画像TIの移動方向が切り替える。
【0091】
(4)特徴
(4−1)
上記実施形態に係るX線検査装置10は、モニタ30が、シールドボックス(本体)11に移動可能に取り付けられている。これにより、モニタ(表示部)30の大きさを適切な大きさに保つとともに、X線検査装置10の小型化を実現することができる。
【0092】
近年、多数の製品についてX線検査を行うために、一の工場において、複数のX線検査装置が利用されるケースが多くなった。作業効率を考慮すると、当該複数のX線検査装置は、一のスペースに配置されることが好ましい。しかし、限られたスペースに複数のX線検査装置を配置するためには、X線検査装置の小型化が必要となる。ここで、従来のX線検査装置では、モニタが本体に組み込まれていたため、X線検査装置の小型化を実現するためには、モニタを含む全体を小さくする必要があった。モニタは、オペレータに対してX線画像を示し異物の混入等を通知する機能や、オペレータからの各種情報の入力を受け付ける機能を有する。したがって、モニタを小さくすることは好ましくない。したがって、X線検査装置の小型化を実現することは困難であった。
【0093】
しかし、上記実施形態に係るX線検査装置10は、モニタ30が本体に対して移動可能に取り付けられている。すなわち、モニタ30は、本体11とは別体である。したがって、モニタ30の大きさを変更することなく、X線検査装置10の小型化を実現することができる。
【0094】
(4−2)
上記実施形態に係るX線検査装置10は、回動機構13によりモニタ30が支持されている。また、モニタ30は、支持軸13aを中心に、回動可能な構成になっている。すなわち、画面SCの向きを360°回転させることができる。これにより、オペレータは、X線検査装置10の正面に加え、X線検査装置10の背面および側面からも検査結果の確認やX線検査装置10の操作を行うことができる。
【0095】
また、限られたスペースにX線検査装置10を設置する場合であっても、オペレータの都合の良い方向に画面SCを向けることが可能になる。したがって、オペレータの操作性を向上させることができる。
【0096】
(4−3)
また、上記実施形態に係るX線検査装置10は、画面SC上で表示される対象物画像TIの位置が、本体11内部で移動する検査対象物(製品)Gの位置に応じて移動する。これにより、オペレータは、X線検査装置10の内部で移動する製品Gの動きを、視覚的に把握することができる。
【0097】
(4−4)
さらに、上記実施形態に係るX線検査装置10は、画面SC上で表示させる対象物画像TIの移動方向が切り替え可能な構成になっている。これにより、例えば、モニタ30を回動させて画面SCが背面側に向いている場合にも、画面SCに表示される対象物画像TIは、本体11内部の製品Gの搬送方向に応じて表示される。その結果、複数の物品50を含むような製品GをX線検査装置10に投入した場合にも、異物が混入している物品50を容易に特定することができる。
【0098】
(4−5)
また、上記実施形態に係るX線検査装置10は、判定画面方向に応じて、自動的に対象物画像TIの移動方向が切り替えられる。これにより、X線検査装置の操作性を一層向上させることができる。
【0099】
(5)変形例
(5−1)変形例A
上記実施形態では、回動機構13が検出センサ13cを有したが、モニタ30の回動およびモニタ30の移動距離を検出するセンサが、他の場所(例えば、モニタ30)に設けられてもよい。
【0100】
(5−2)変形例B
上記実施形態では、モニタ30の回動角度に応じて、判定画面方向を4つの方向(正面、右側面、背面、および左側面)のいずれかとして判定したが、判定画面方向は、正面および背面のみでもよく、正面、背面、および右側面または左側面のいずれか一方であってもよく、4つより多くてもよい。
【0101】
(5−3)変形例C
上記実施形態では、検出センサ13cによって、モニタ30が支持軸13aの表面を移動する距離に基づいて、モニタ30の回動角度が検出されたが、回動角度を検出しうる手段は、他の方法であってもよい。
【0102】
(5−4)変形例D
上記実施形態では、検出センサ13cによって、モニタ30の回動角度が検出された。また、検出された回動角度に応じて、画面上で表示される対象物画像TIの移動方向が自動的に変更された。しかし、対象物画像TIの移動方向の変更は、自動に代えて、または自動に加えて、手動で行えるように設計されてもよい。
【0103】
(5−5)変形例E
上記実施形態に係るX線検査装置10において、画面SCには、対象物画像TIの移動方向を示す記号(例えば、図10〜図14に示す矢印)や文字を併せて表示してもよい。
【0104】
(5−6)変形例F
上記実施形態では、モニタ30が支持軸13aに支持され、支持軸13aを中心に回動可能な構成となっていた。X線検査装置110は、取り外し可能なモニタ30であってもよい。例えば、上記実施形態に係るX線検査装置10のうち、回動機構13を、モニタ30の支持機構に変更する。支持機構は、本体11に対してモニタ30を着脱可能に支持する構成とする。このとき、上記実施形態に係る検出センサ13cの代わりに、モニタ30の位置情報を取得するモニタ検出センサ(取得部)113cを用いる(図16参照)。例えば、モニタ30には、発信機を設ける。モニタ検出センサ113cは、例えば、シールドボックス11または支持機構に取り付ける。モニタ検出センサ113cは、モニタ30に取り付けられた発信機から出力される信号に基づき、モニタ30の位置情報を取得する。また、上記実施形態に係る制御装置70に代えて、制御装置170を用いる。制御装置170は、図16に示すように、記憶部171と、制御部172とを含む。図16において、制御装置70の構成と同じ構成については、制御装置70で用いた符号が付されている。以下、制御装置170の構成のうち、制御装置70の構成と異なる構成について説明する。
【0105】
(5−6−1)記憶部
記憶部171は、主として、X線画像記憶領域71a、判定基準情報記憶領域171b、対応付け情報記憶領域71c、画像回転情報記憶領域71d、画面方向記憶領域171e、設定方向記憶領域71f、および判定結果記憶領域71gを有する。判定基準情報記憶領域171bおよび画面方向記憶領域171e以外の構成は、上記実施形態で説明した構成と同様であるので、以下では説明を省略する。
【0106】
(a)判定基準情報記憶領域
判定基準情報記憶領域171bには、画面方向の判定基準に関する情報(判定基準情報)が記憶されている。判定基準情報は、モニタ30の位置に基づいて画面SCの向きを判定するための情報である。モニタ30の位置は、後述する画面方向判定部72fによって判定される。判定基準情報記憶領域171bでは、図17に示すように、モニタ位置と、判定画面方向とが対応付けて記憶されている。
【0107】
(b)画面方向記憶領域
画面方向記憶領域171eには、画面方向に関する情報が記憶される。画面方向に関する情報には、最新のモニタ位置に関する情報と、最新の判定画面方向に関する情報とが含まれる。
【0108】
(5−6−2)制御部
制御部172は、記憶部171に記憶されている各種プログラムを実行することにより、画像生成部72a、画像回転部72b、位置変更部72c、移動検出部172d、画面方向判定部172f、設定方向切替部172g、および異物判定部72hとして機能する。移動検出部172d、画面方向判定部172f、および設定方向切替部172g以外の構成は、上記実施形態で説明した構成と同様であるので、以下説明を省略する。
【0109】
(a)移動検出部
移動検出部172dは、モニタ検出センサ113cから送られる信号に基づき、モニタ位置の移動を検出する。また、移動検出部172dは、モニタ検出センサ113cから送られる検出信号に基づき、モニタの位置情報を取得する。モニタ位置情報は、モニタがX線検査装置110の初期位置に対してどの位置(方向)にいるかを示す情報である。ここで、初期位置とは、上記実施形態で説明した初期位置と同じである。すなわち、モニタ30の位置は、初期位置に対する角度によって決定される(図9参照)。言い換えると、モニタ30が、θ1〜θ4のいずれの方角に位置するかによって、モニタ30の位置情報が取得される。移動検出部172dによって取得されたモニタ30の位置情報は、画面方向記憶領域171eに記憶される。
【0110】
(b)画面方向判定部
画面方向判定部172fは、移動検出部172dによってモニタ位置の移動が検出されると、画面方向記憶領域171eに記憶されているモニタ30の位置情報と、判定基準情報記憶領域171bに記憶されている判定基準情報とに基づいて、検出信号検出後のモニタ30の向き(最新の画面方向)を判定する。画面方向判定部172fによって判定された画面方向(判定画面方向)に関する情報は、上述の画面方向記憶領域171eに記憶される。
【0111】
(c)設定方向切替部
設定方向切替部172gは、X線検査装置10による検査開始時、もしくは、移動検出部172dによってモニタ30の移動が検出されると、画面方向記憶領域171eに記憶された最新の判定画面方向を参照する。
【0112】
(5−6−3)特徴
X線検査装置110の構成を上述の構成に変更した場合であっても、モニタ30を本体11から取り外して利用することが可能である。また、モニタ30が初期位置から移動した場合であっても、モニタ30の位置に基づいて、オペレータの操作位置に応じた適切な画面を提供することができる。
【0113】
(5−7)変形例G
上記実施形態に係るX線検査装置10は、他の複数の装置によって構成されるX線検査システムの一つの構成として用いられてもよい。例えば、X線検査装置10の上流側には、他のコンベアユニットが設けられ、当該他のコンベアユニットからX線検査装置10に製品Gが自動的に搬送される構成であってもよい。また、X線検査装置10の下流側には、振り分け装置が設けられていてもよい。振り分け装置は、X線検査装置10で異物が混入された場合に、その旨を示す信号をX線検査装置10から受信できる構成にする。また、振り分け装置は、X線検査装置10から受信した信号(良品/不良品を示す信号)に基づいて、製品Gの搬送方向を切り替えるように構成する。
【0114】
このように、X線検査装置10を他の複数の装置(検査ライン)に組み込み、他の装置と共に用いる場合、広いスペースが必要になる。したがって、複数のX線検査装置10を用いる場合には、限られたスペースを一層効果的に利用することができる。また、オペレータの作業の便宜を図ることができる。
【0115】
(5−8)変形例H
上記実施形態に係るX線検査装置10では、画面SC上で表示される対象物画像TIの位置を本体11内部で移動する製品Gの位置に応じて移動させるとともに、判定画面方向に応じて自動的に対象物画像TIの移動方向を変えたり基準画像を回転させたりして対象物画像TIを画面SCに表示させているが、対象物画像TIの位置の移動をさせないX線検査装置においても本発明は適用できる。
【0116】
例えば、製品GのX線画像を静止画として画面SCに表示させる制御を採る場合、上述のようにモニタ30の回動角度に応じて判定画面方向を4つの方向(正面、右側面、背面、および左側面)のいずれかとして判定し、その方向に応じて基準画像を回転させた図10および図12〜14に示すいずれかの対象物画像TIの表示を行わせることになる。この場合にも、オペレータは、複数の物品を含むような製品Gについて、対象物画像TIから異物が混入している物品を容易に特定することができるようになる。
【0117】
また、製品GのX線画像を移動させずに静止画としてだけ画面SCに表示させる制御を採る場合においても、変形例Fで説明したように、モニタ30を着脱可能にし、モニタ30の位置情報を取得するモニタ検出センサを用いてモニタ30の向き(画面方向)を判定して、オペレータの操作位置に応じた適切な画面(画面方向に応じて回転または反転させたX線画像)を提供することができる。
【符号の説明】
【0118】
10,110 X線検査装置
11 シールドボックス(本体)
12 コンベアユニット(搬送ユニット)
13 回動機構
21 X線照射器(X線照射部)
22 X線ラインセンサ(X線検出部)
30 液晶モニタ(表示部)
70,170 制御装置
71,171 記憶部
71a X線画像記憶領域
71b,171b 判定基準情報記憶領域
71c 対応付け情報記憶領域
71d 画像回転情報記憶領域
71e,171e 画面方向記憶領域
71f 設定方向記憶領域
71g 判定結果記憶領域
72,172 制御部
72a 画像生成部
72b 画像回転部
72c 位置変更部(位置移動部)
72d 回動検出部
72e 回動角度判定部
72f,172f 画面方向判定部
72g,172g 設定方向切替部(第1切替部および第2切替部)
72h 異物判定部
113c モニタ検出センサ(取得部)
172d 移動検出部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0119】
【特許文献1】特開2011−145073号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象物にX線を照射するX線照射部と、
前記検査対象物を透過した前記X線を検出するX線検出部と、
前記X線検出部によって検出された前記X線の強度に応じて、前記検査対象物のX線画像を生成する画像生成部と、
前記X線照射部、前記X線検出部、および前記画像生成部を収容する本体と、
前記本体に移動可能に取り付けられ、前記画像生成部によって生成された前記検査対象物のX線画像を表示する表示部と、
を備えるX線検査装置。
【請求項2】
前記X線照射部による前記X線の照射域に前記検査対象物を搬送する搬送ユニットと、
前記搬送ユニットによって搬送されて前記本体内部で移動する前記検査対象物の位置に応じて、前記表示部の画面上で表示される前記検査対象物のX線画像の位置を移動させる位置移動部と、
をさらに備え、
前記表示部は、前記画面上で移動する前記検査対象物のX線画像を表示する、
請求項1に記載のX線検査装置。
【請求項3】
前記画面上で前記検査対象物のX線画像が移動する方向を切り替える第1切替部をさらに備える、
請求項2に記載のX線検査装置。
【請求項4】
前記表示部を支持する支持軸を有し、前記支持軸を基準に前記表示部を回動させる回動機構と、
前記表示部の回動により変化する前記画面の向きを判定する判定部と、
をさらに備え、
前記第1切替部は、前記判定部によって判定された前記画面の向きに応じて、前記画面に表示させる前記検査対象物のX線画像の移動方向を切り替える、
請求項3に記載のX線検査装置。
【請求項5】
前記画面上で表示させる前記検査対象物のX線画像を回転または反転させる第2切替部をさらに備える、
請求項1から3のいずれかに記載のX線検査装置。
【請求項6】
前記画面上で表示させる前記検査対象物のX線画像を回転または反転させる第2切替部をさらに備え、
前記第2切替部は、前記判定部によって判定された前記画面の向きに応じて、前記画面に表示させる前記検査対象物のX線画像を回転または反転させる、
請求項4に記載のX線検査装置。
【請求項7】
前記画面の向きと前記検査対象物のX線画像の移動方向とを対応付けた対応付け情報を記憶する対応付け情報記憶領域をさらに備え、
前記対応付け情報は、
前記画面の向きが第1方向の場合に、前記検査対象物のX線画像を右から左に移動させるための第1情報と、
前記画面の向きが、前記第1方向と反対の第2方向の場合に、前記検査対象物のX線画像を左から右に移動させるための第2情報と、
を含む、
請求項4から6のいずれかに記載のX線検査装置。
【請求項8】
前記第1情報は、前記画面が正面または背面を向いている場合と、前記検査対象物のX線画像の移動方向とを対応付けた情報であり、
前記対応付け情報は、
前記画面の向きが第1側面である場合に、前記検査対象物のX線画像を上から下に移動させるための第3情報と、
前記画面の向きが前記第1側面と反対の第2側面の場合に、前記検査対象物のX線画像を下から上に移動させるための第4情報と
をさらに含む、
請求項7に記載のX線検査装置。
【請求項9】
前記本体に取り付けられ、画面の位置情報を取得する取得部をさらに備え、
前記第1切替部は、前記位置情報に基づいて、前記画面上で前記検査対象物のX線画像が移動する方向を切り替える、
請求項3に記載のX線検査装置。
【請求項10】
前記位置情報と前記検査対象物のX線画像の移動方向とを対応付けた対応付け情報を記憶する対応付け情報記憶領域をさらに備え、
前記対応付け情報は、
前記画面の向きが第1方向の場合に、前記検査対象物のX線画像を右から左に移動させるための第1情報と、
前記画面の向きが、前記第1方向と反対の第2方向の場合に、前記検査対象物のX線画像を左から右に移動させるための第2情報と、
を含む、
請求項9に記載のX線検査装置。
【請求項11】
前記第1情報は、前記画面が正面または背面を向いている場合と、前記検査対象物のX線画像の移動方向とを対応付けた情報であり、
前記対応付け情報は、
前記画面の向きが第1側面である場合に、前記検査対象物のX線画像を上から下に移動させるための第3情報と、
前記画面の向きが前記第1側面と反対の第2側面の場合に、前記検査対象物のX線画像を下から上に移動させるための第4情報と
をさらに含む、
請求項10に記載のX線検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15A】
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【図15B】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2013−88165(P2013−88165A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−226670(P2011−226670)
【出願日】平成23年10月14日(2011.10.14)
【出願人】(000147833)株式会社イシダ (859)
【Fターム(参考)】