X線検査装置
【課題】簡素化された構成によりX線の照射範囲の調整を可能とし、部品点数や組立工数を減らすことで安価なX線検査装置を提供する。
【解決手段】X線検査装置10は、筐体11と、X線源と、搬送部30と、スリット形成部材24と、X線ラインセンサ40と、を備える。筐体11には、X線により物品の検査が行われる検査空間Siの上に配される第1空間S1および検査空間の下方に配される第2空間S2が内部に形成される。筐体11は、開口部を有し第1空間と検査空間とを仕切る仕切り板部材13を有する。X線源は、第1空間に配置され、物品にX線を照射する。搬送部は、検査空間に配置され、物品を所定の方向へ搬送する。スリット形成部材は、仕切り板部材の開口部の検査空間側に配置され、物品の搬送方向に交差する方向に延びるスリットAを形成する。X線ラインセンサは、第2空間に配置され、スリットを通って物品を透過したX線を検出する。
【解決手段】X線検査装置10は、筐体11と、X線源と、搬送部30と、スリット形成部材24と、X線ラインセンサ40と、を備える。筐体11には、X線により物品の検査が行われる検査空間Siの上に配される第1空間S1および検査空間の下方に配される第2空間S2が内部に形成される。筐体11は、開口部を有し第1空間と検査空間とを仕切る仕切り板部材13を有する。X線源は、第1空間に配置され、物品にX線を照射する。搬送部は、検査空間に配置され、物品を所定の方向へ搬送する。スリット形成部材は、仕切り板部材の開口部の検査空間側に配置され、物品の搬送方向に交差する方向に延びるスリットAを形成する。X線ラインセンサは、第2空間に配置され、スリットを通って物品を透過したX線を検出する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はX線検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、X線検査装置において、特許文献1(特開2004−333266号公報)のようにX線源の配置される電装室内にスリットを配置し、X線の照射範囲を調整する構成が知られている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、この場合には、検査室内でのX線の散乱を抑制するため、散乱規制部材を検査空間内に別途配置する必要がある。つまり、X線の照射範囲を調整する目的で、類似の機能を有するスリットと散乱規制部材とを両方とも配置する必要がある。
【0004】
本願発明の課題は、簡素化された構成によりX線の照射範囲の調整を可能とし、部品点数や組立工数を減らすことで安価なX線検査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るX線検査装置は、物品を搬送させながらX線を用いて物品の検査を行うX線検査装置であって、筐体と、X線源と、搬送部と、スリット形成部材と、X線ラインセンサと、を備える。筐体には、X線により物品の検査が行われる検査空間の上に配される第1空間および検査空間の下方に配される第2空間が内部に形成される。筐体は、開口部を有し第1空間と検査空間とを仕切る仕切り板部材、を有する。X線源は、第1空間に配置され、物品にX線を照射する。搬送部は、検査空間に配置され、物品を所定の方向へ搬送する。スリット形成部材は、仕切り板部材の開口部の検査空間側に配置され、物品の搬送方向に交差する方向に延びるスリットを形成する。X線ラインセンサは、第2空間に配置され、スリットを通って物品を透過したX線を検出する。
【0006】
これにより、スリット形成部材だけで、X線の照射範囲の調整と、検査空間外へのX線の散乱の防止とを実現できる。別途X線の散乱規制部材を設ける必要がなくなり、X線検査装置を構成する部品点数が削減される。さらに、X線検査装置の組立工数も削減される。
【0007】
また、本発明に係るX線検査装置では、スリット形成部材は、それぞれ切り欠きが形成されている第1スリット形成部材と第2スリット形成部材とを有することが望ましい。スリットは、第1スリット形成部材の切り欠きと、第2スリット形成部材の切り欠きとを、対向するように配置して形成されることが望ましい。
【0008】
これにより、厚みのあるスリット形成部材が用いられる場合や、幅の狭いスリットを形成する必要がある場合にも、スリット形成が容易に行われる。この結果、容易に検査空間内にスリットを配することが可能となる。
【0009】
また、本発明に係るX線検査装置は、X線源から照射されるX線の通過経路となる管部と、仕切り板の開口部を閉塞する、X線が透過可能なカバー部材と、をさらに備えることが望ましい。管部と、カバー部材と、仕切り板と、スリット形成部材とが、この順番で上方から下方に互いに隣接して配置されることが望ましい。
【0010】
これにより、X線検査装置の構成部材が削減される。その結果、簡易な構成で、X線の照射範囲を調整することができる。
【0011】
また、本発明に係るX線検査装置は、X線源と仕切り板部材との距離が200mm以下であることが望ましい。
【0012】
これにより、X線の照射範囲の調整のために、スリットの位置調節を行うことが不要となる。そのため、定位置にスリット形成部材を配置することが可能となる。よって第1空間内にスリットを配し、組立時にその位置を調整する必要がなくなる。その結果、X線検査装置の構成が簡易化され、組立工数も削減される。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るX線検査装置では、X線の照射範囲を調整するスリットを形成するスリット形成部材が、物品の検査が行われる検査空間内に配置される。その結果、スリット形成部材だけで、X線の照射範囲の調整と、検査空間外へのX線の散乱の防止とを実現できる。別途X線の散乱規制部材を設ける必要がなくなり、X線検査装置を構成する部品点数が削減される。さらに、X線検査装置の組立工数も削減される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】X線検査装置周辺の平面図。
【図2】本発明の一実施形態に係るX線検査装置の外観の斜視図。
【図3】本発明の一実施形態に係るX線検査装置内の機器の配置を表す右側面図。筐体の右側面部材は省略して図示されている。
【図4】本発明の一実施形態に係るX線検査装置内の配置を表す正面図。検査空間およびメンテナンス用空間の前方に配置される、前面部材の扉部は省略して図示されている。
【図5】X線源ユニットの背面に隣接配置される基板部材フレームの回動状態を表す図。筐体の右側面部材および後面部材は省略して図示されている。
【図6】図4のVI内のX線源およびスリット周辺の拡大図。
【図7】図6のVII−VII断面におけるスリット形成部材の断面視。
【図8】商品のX線による検査状態を表した模式図。
【図9】制御コンピュータのブロック構成図。
【図10】冷却ユニット内および筐体内の空気の流れ。筐体の右側面部材は省略して図示されている。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態に係るX線検査装置10について説明する。
【0016】
(1)X線検査装置の概略説明
X線検査装置10は、食品等の商品Gの生産ラインに組み込まれ、商品GにX線を照射し、商品Gを透過したX線の透過量を計測し、その計測結果を解析することで、商品Gの異物検査を行う装置である。
【0017】
X線検査装置10の検査対象となる商品Gは、図1に示すように、前段コンベア80によってX線検査装置10まで運ばれる。X線検査装置10における商品Gの検査結果は、後述する制御コンピュータ50から、X線検査装置10の下流側に配置されている振分機構90へと送られる。振分機構90は、X線検査装置10において良品と判断された物品を正規のラインコンベア91へと送り、X線検査装置10において不良品と判断された商品Gを不良品貯留コンベア92へと送る。
【0018】
X線検査装置10は、図2から図4に示されるように、主として、筐体11と、X線源ユニット20と、コンベア30と、X線ラインセンサ40と、制御コンピュータ50と、モニタ60と、冷却ユニット70とを有する。
【0019】
(2)X線検査装置の詳細説明
(2−1)筐体
筐体11は、伸縮自在の脚部により支持される略直方体形状のケーシングである。筐体11のサイズは、後述する前面部材11a側から見た時に、幅450mm、奥行き450mm、高さ1080mm(脚部を含めない)である。
【0020】
筐体11は、筐体11の正面に配される側面部材である前面部材11aと、前面部材11aに向かって右側および左側に配置される右側面部材11bおよび左側面部材11cと、筐体11の背面に配される側面部材である後面部材11dと、筐体11の上方および下方に配される天面部材11eおよび底面部材11fとを有する。
【0021】
筐体11の外側には、図2のように、前面部材11aに装置の起動用のキーの差し込み口61と、電源スイッチ62とが設けられる。また、後面部材11dには、図3のように、筐体内部と筐体外部との間で熱交換をするための冷却ユニット70が設けられる。さらに、天面部材11e上には、モニタ60が設けられる。
【0022】
筐体11の内部には、図3および図4のように、X線源ユニット20、コンベア30、X線ラインセンサ40、制御コンピュータ50等の電装品や構成機器が収容される。
【0023】
なお、筐体11の内部には、X線源ユニット20を含む第1群の電装品が配置される第1空間S1と、制御コンピュータ50を含む第2群の電装品が配置される下部空間Sdとが形成される。また、第1空間S1と下部空間Sdとの間に、物品を搬送させながらX線により検査を行う検査空間Siと、検査空間Siの下方に位置するメンテナンス空間Smとが配される。さらに、図4に示されるように、検査空間Siより下方に位置し、筐体11の底面部材11fより上方に位置する空間を、まとめて第2空間S2と定義する。各空間について以下に説明する。
【0024】
(2−1−1)第1空間
第1空間S1は、図3および図4のように、筐体11内上部に形成される空間である。第1空間S1には、主に、X線源ユニット20、基板部材25などの第1群の電装品が配置される。
【0025】
第1空間S1は、主に、天面部材11e、正面側の側面部材である前面部材11a、右側面部材11b、左側面部材11c、背面側の側面部材である後面部材11d、および筐体11の有する仕切り板部材である第1仕切り部材13により囲まれて形成されている。
【0026】
前面部材11aの上端は、冷却ユニット70の配置される後面部材11dに向かって、約45度傾いて天面部材11eまで延びる第1傾斜部11gを有する。第1傾斜部11gは、後述するX線源ユニット20が有する排熱ファン22の直上に、第1傾斜部11gの一部が位置するように配置される。なお、X線源ユニット20は天面部材11eおよび第1傾斜部11gの近傍に配置され、排熱ファン22はX線源ユニット20の上方に配置される。
【0027】
後面部材11dの上端近傍の、第1空間S1側には、第1空間S1内の空気を循環させる第1ファン26が設けられる。第1ファン26は、後述する冷却ユニット70と共に使用され、第1空間S1を冷却する。第1空間S1内の空気の流れについては後述する。
【0028】
なお、後面部材11dは、第1空間S1から後述する下部空間Sdに渡って延びる部材であり、図3に示すヒンジ部11hを中心として水平方向に回動して開閉可能な扉としての機能を有する。後面部材11dを開くことで、作業者が後面部材11dに隣接して配置される基板部材25を含む電装品にアクセスしたり、X線源ユニット20を筐体11の内外に搬入出したりすることが可能となる。
【0029】
なお、基板部材25は、基板部材25を保持するフレーム25aと、フレーム25aを回動する際にフレーム25aを支持するヒンジ部25bとを有する。さらにフレーム25aは、X線源ユニット20の背面と対向して配置される平坦な第1面25cと、第1面25cの裏側に位置し、電装部品の配置される第2面25dとを有する。基板部材25は、図3のように、後面部材11dに隣接して配置されると共に、X線源ユニット20の後面部材11d側の背面とも隣接する。フレーム25aは、装置運転時には立設状態にあるが、メンテナンス時にはヒンジ部25bを中心として、X線源ユニット20の背面から遠ざかる方向に、すなわち筐体11の外側に向けて倒れるように回動する。フレーム25aを回動させることで、後面部材11dの方向からX線源ユニット20にアクセス可能となる。
【0030】
図5を用いてさらに説明すると、フレーム25aは、第1面25cが上向きかつ水平な状態になるように、ヒンジ部25bを中心として図中のR方向に回動可能である。第1面25cが水平になった状態では、基板部材25の一部は、筐体11の外部にはみ出して配置される。第1面25cは平坦な面であり、X線源ユニット20の搬入出時には、図5に点線で示すように、X線源ユニット20の仮置きに利用される。なお、図5では、開いた状態にある後面部材11dは省略して図示している。
【0031】
(2−1−2)検査空間
検査空間Siは、第1空間S1の下方に配される空間である。検査空間Siでは、後述するコンベア30により搬送される商品Gに対して、後述するX線源ユニット20内のX線源21から発生するX線が照射され、検査が行われる。
【0032】
検査空間Siと、第1空間S1とは、仕切り板部材である第1仕切り部材13により仕切られている。第1仕切り部材13は、図6のように、開口部13aを有し、開口部13aの上方はX線が透過可能なカーボンプレート23により閉塞されている。開口部13aの検査空間Si側には、スリット形成部材24が設けられ、X線通過スリットAが形成されている。スリット形成部材24周りの構成については、X線源ユニット20の説明と併せて後述する。
【0033】
また、検査空間Siは、図4のように、検査空間Siの下方に位置する後述するメンテナンス空間Smと、第2仕切り部材14によって仕切られている。第2仕切り部材14は、後述するコンベア30およびX線ラインセンサ40を支持するフレームとしての機能を兼ね備える。なお、第2仕切り部材14はX線の遮蔽能を有し、装置運転中であっても後述するメンテナンス空間SmにはX線は漏洩しない。
【0034】
検査空間Si部分の右側面部材11bおよび左側面部材11cには、図2から図4に示すように、検査対象である商品Gを、検査空間Siの内外に搬入出するための検査空間開口15が形成されている。検査空間開口15は、筐体11外部へのX線の漏洩を防止するため、複数の切り込みを有する遮蔽ノレン16により塞がれている。遮蔽ノレン16は、鉛を含むゴムを用いて成形されており、商品Gが検査空間開口15を通過する際には商品Gによって押しのけられる。検査空間Siの前方は、筐体11から遠ざかる方向に、すなわち前方に向かって開閉可能な前面部材11aの扉部11iにより筐体11の外部と仕切られている。検査空間Siの後方は、筐体11の内部を仕切る内壁17により仕切られている。
【0035】
(2−1−3)メンテナンス空間
メンテナンス空間Smは、検査空間Siの下方に位置する空間である。メンテナンス空間Smは、商品Gに由来してコンベア30に付着した汚れやごみ等が床面に落ちるのを防止する。また、図示しない外付けコンベアの設置等にも利用される。
【0036】
メンテナンス空間Smは、図4のように、検査空間Siと、第2仕切り部材14によって仕切られている。また、メンテナンス空間Smは、メンテナンス空間Smの下方に位置する後述する下部空間Sdと、第3仕切り部材18によって仕切られている。メンテナンス空間Smに面する、第3仕切り部材18の上面は、平坦かつ水平である。
【0037】
メンテナンス空間Sm部分の右側面部材11bおよび左側面部材11cには、メンテナンス空間開口19が形成されており、筐体11の外部と連通している。検査空間Siの前方は、筐体11から遠ざかる方向に、すなわち前方に向かって開閉可能な前面部材11aの扉部11iにより筐体11の外部と仕切られている。検査空間Siの後方は、筐体11の内部を仕切る内壁17により仕切られている。
【0038】
(2−1−4)下部空間
下部空間Sdは、筐体11内の下方に形成される空間である。下部空間Sdには、主に、CPU51を含む制御コンピュータ50などの第2群の電装品が配置される。制御コンピュータ50の上側には、上方に向けて排気するコンピュータ排熱ファン57が配置されている。
【0039】
下部空間Sdは、主に、第3仕切り部材18、前面部材11a、右側面部材11b、左側面部材11c、後面部材11d、および底面部材11fにより囲まれて形成されている。
【0040】
前面部材11aの下端は、後面部材11dに向かって約45度傾いて、底面部材11fまで延びる第2傾斜部11jを有する。なお、第2傾斜部11jの傾斜角度は例示であり、これに限定されるものではない。制御コンピュータ50は、第2傾斜部11jおよび底面部材11fの近傍に配置される。第2傾斜部11jは、第2群の電装品である制御コンピュータ50の直下に、第2傾斜部11jの一部が位置するように配置される。また、第2傾斜部は、後述する第2ファン55の吹き出し方向前方に配置される。
【0041】
制御コンピュータ50の下方には、後面部材11d側に、図3のように、第2ファン55が設けられている。第2ファン55は、下部空間Sd内の空気を循環させ、冷却ユニット70と共に使用されることで、下部空間Sdを冷却する。下部空間Sdの冷却については後述する。
【0042】
(2−1−5)第2空間
第2空間S2は、図4に二点破線線で示すように、第2仕切り部材14の上面と、筐体11の底面部材11fの上面との間に位置する、筐体11の全ての内部空間を指す。筐体11の内部空間には、第2仕切り部材14の内部に形成される空間を含む。
【0043】
(2−2)X線源ユニット
X線源ユニット20は、第1空間S1に配置され、下方に向かってX線を照射する。X線源ユニット20のサイズは、おおむね幅310mm、奥行き200mm、高さ200mmの略直方体形状である。
【0044】
X線源ユニット20内に設けられたX線源21で発生したX線は、図6に示すように、上方から見た時に中空矩形断面を有する管部27の上下方向に延びる中空部、第1仕切り部材13の開口部13aを塞ぐカバー部材であるX線を透過するカーボンプレート23、第1仕切り部材13の開口部13a、スリット形成部材24により形成されるスリットAをこの順に通過して検査空間Si内に照射される。なお、管部27と、カーボンプレート23と、仕切り板部材である第1仕切り部材13と、スリット形成部材24とは、この順に隣接して配置される。
【0045】
X線源21から、第1仕切り部材13の第1空間S1側の上面までの高さHは、本実施形態では約100mmである。なお、本実施形態の高さHは例示であるが、200mm以下であることが望ましい。
【0046】
スリット形成部材24は、一対の直方体状の部材である、第1スリット形成部材24aおよび第2スリット形成部材24bとからなり、図7の断面視のように、断面が略L字形状になるように部材が切りかかれている。図7のように、第1および第2スリット形成部材24a,24bを互いの切り欠きが対向するように配置することで、スリットAが形成される。なお、X線通過スリットAは、後述するX線ラインセンサ40の直上に、X線ラインセンサ40の配置方向と平行に配置される。
【0047】
なお、X線源21で発生したX線は、図8の模式図に示されるように、後述するX線ラインセンサ40に向けて、スリットAの長手方向に扇状に広がりながら、照射空間SSに照射される。扇状の照射空間SSの中心角を二等分する直線は、鉛直方向を向いている。照射空間SSのうち、その範囲の外縁付近では、X線の照射方向は鉛直方向に対して比較的大きく傾いている。したがって、照射空間SSの外縁付近を通過する商品Gに対しては、X線が鉛直方向に対して斜めに入射する。
【0048】
(2−3)コンベア
コンベア30は、商品Gを搬送する搬送部であり、図4に示すように、検査空間Siの右側面部材11bおよび左側面部材11cに形成された検査空間開口15を貫通するように配置されている。コンベア30は、コンベアモータ31によって駆動される駆動ローラによって無端状の搬送ベルト32を回転させながら、搬送ベルト32上に載置された商品Gを搬送する。コンベア30による物品の搬送速度は、作業者の設定した速度になるように、制御コンピュータ50により制御される。具体的には、コンベアモータ31に設けられたロータリーエンコーダ31aにより計測された搬送速度が制御コンピュータ50に送信され、制御コンピュータ50の指示により、コンベアモータ31のインバータ制御によって搬送速度が細かく制御される。なお、商品Gの搬送方向は、作業者の指示に基づいた制御コンピュータ50の制御により、右側面部材11bから左側面部材11cの方向へ、もしくは、その反対方向へ自在に切り替え可能である。
【0049】
なお、コンベア30の搬送ベルト32は、第2仕切り部材14によって内側から支持されている。搬送ベルト32は、第2仕切り部材14に取り外し可能に取り付けられる。
【0050】
(2−4)X線ラインセンサ
X線検出部であるX線ラインセンサ40は、図4に示すように、コンベア30の搬送ベルト32の下方にある第2仕切り部材14内の空間に設けられている。つまり、第2仕切り部材14は、X線ラインセンサ40を支持するラインセンサフレームとして利用されている。
【0051】
X線ラインセンサ40は、主として多数の画素センサ41から構成されている。これらの画素センサ41は、コンベア30の搬送方向に直交する向きに一直線に水平に配置されている。
【0052】
X線ラインセンサ40は、商品Gを透過したX線量を各画素センサ41により計測し、計測結果を制御コンピュータ50に対して送信する。後述のように、制御コンピュータ50では、上記X線透過量に基づいて作成されるX線画像を用いて、商品Gに対する異物混入の有無を判断する。
【0053】
(2−5)制御コンピュータ
制御コンピュータ50は、図9に示すように、CPU51とともに、このCPU51によって制御される記憶部としてROM52、RAM53、およびメモリカード54を有している。
【0054】
CPU51は、ROM52およびメモリカード54に格納されている各種プログラムを実行する。メモリカード54には、検査パラメータおよび検査結果が保存蓄積される。検査パラメータは、モニタ60のタッチパネル機能を使った作業者からの入力によって設定及び変更が可能である。
【0055】
制御コンピュータ50は、モニタ60に対するデータ表示を制御する表示制御回路、モニタ60のタッチパネルからのキー入力データを取り込むキー入力回路、図示しないプリンタにおけるデータ印字の制御等を行うためのI/Oポート、およびUSB等の外部接続端子56を備えている。
【0056】
また、制御コンピュータ50は、コンベアモータ31、ロータリーエンコーダ31a、X線源ユニット20、X線ラインセンサ40、光電センサ42、振分機構90と接続されている。
【0057】
ロータリーエンコーダ31aは、コンベアモータ31に装着されており、コンベア30の搬送速度を測定して制御コンピュータ50に対して送信する。光電センサ42は、検査対象である商品GがX線ラインセンサ40の位置にくるタイミングを検出するための同期センサであり、コンベア30を挟んで配置される一対の投光器および受光器から構成されている。X線源ユニット20は、制御コンピュータ50により、X線照射タイミングやX線照射量、X線照射の禁止等を制御される。振分機構90へは、X線検査装置10における商品Gの異物検査の結果が送られる。
【0058】
以下に、制御コンピュータ50により実行されるX線画像作成と異物検査について説明する。
【0059】
〔X線画像作成〕
商品Gが、図8のように扇状の照射空間SSを通過する際に、X線ラインセンサ40によりX線透視像信号が細かい時間間隔で取得され、制御コンピュータ50に送信される。制御コンピュータ50のCPU51は、それらのX線透視像信号を基にして商品Gの2次元画像を作成する。なお、商品Gが扇状の照射空間SSを通過するタイミングは、光電センサ42からの信号により判断される。
【0060】
〔異物混入検査〕
制御コンピュータ50のCPU51は、上記のようにして得られたX線画像を画像処理して、複数の判断方式によって商品の良・不良(異物が混入していないかどうか)を判断する。判断方式には、例えば、トレース検出方式、2値化検出方式、マスク2値化検出方式がある。例えば、2値化検出方式では、X線画像に対して2値化処理を施すことにより実行される。透過するX線を大きく減衰させる異物は、X線画像上に暗く写るため、X線画像上に予め設定した閾値よりも暗く現れる領域が存在する場合に、異物の混入を検出できる。
【0061】
使用される複数の判断方式のうち、1つの判断方式でも商品が不良であると判断されれば、その商品Gは不良品と判断され、後段の振分機構90により、不良品として不良品貯留コンベア92に送られる。
【0062】
(2−6)モニタ
モニタ60は、液晶ディスプレイであり、X線画像等の各種データの表示を行う。また、モニタ60は、タッチパネル機能を有しており、コンベアの駆動方向の切り替え等の指示や、検査パラメータ等の各種データの入力を受け付ける。
【0063】
(2−7)冷却ユニット
熱交換部としての冷却ユニット70は、図3のように、筐体11の後面部材11dに設けられており、第3ファン72により給気口71から筐体11外部の空気を取り入れ、排気口73から空気を排出する。冷却ユニット70の内部には、図10のように間接冷却式の熱交換器74が配置されており、外部から筐体11内に空気を取り入れることなく、筐体11内部の冷却が行われる。熱交換器74は、筐体11の外部の空気が通過する空間と筐体11の内部の空気が通過する空間とを隔てる隔壁を有し、隔壁の両表面には伝熱面積を増大させるための複数のフィンが設けられている。
【0064】
より具体的には、図10のように、給気口71からD1の方向に外気が取り入れられ、取り入れられた空気はD2方向に冷却ユニット70の外気側内部を上昇する。この際に、筐体11外部側と筐体11内部側との間で、熱交換器74を介して熱交換が行われる。筐体11内部の空気により熱せられた筐体11外部側の空気は、排気口73からD3の方向に排出される。
【0065】
(3)筐体内の空気の流れ
以下に、筐体11内部の空気の流れおよび冷却について図10を用いて説明する。
【0066】
第1空間S1では、主要な熱源であるX線源ユニット20の排熱ファン22から、上方に熱せられた空気が排出される。排熱ファン22から排出された空気は、第1傾斜部11gに沿って矢印E1のように冷却ユニット70の方向に移動し、第1ファン26に吸引される。第1ファン26に吸引された空気は、冷却ユニット70の筐体11側内部を矢印E2方向に移動し、後面部材11dの中央付近に設けられた空気吹出口26aから矢印E3方向に吹き出す。冷却ユニット70の内部では、熱交換器74を介して、第1ファン26に吸引された第1空間S1内の空気と、第3ファン72に吸引された外気との間で熱交換が行われる。その結果、空気吹出口26aから吹き出す空気は、第1ファン26に吸引される空気よりも冷却される。空気吹出口26aから矢印E3方向に吹き出した空気の一部は、その後矢印E4、E5の経路を通って排熱ファン22付近まで移動し、第1空間S1内を循環する。
【0067】
下部空間Sdでは、空気吹出口26aから矢印E3方向に吹き出された、冷却ユニット70により冷却された空気の一部が、第2ファン55により吸引され、矢印E6、E7の順に移動する。第2ファン55から吹き出した空気は、第2ファン55の吹き出し方向前方に配置された第2傾斜部11jに沿って矢印E8のように移動し、コンピュータ排熱ファン57から矢印E9方向に吹き出す排気と共に、矢印E10の方向に移動する。矢印E10方向に移動する空気の一部が第1空間S1の矢印E4方向の流れに合流し、残りは矢印E6の方向に移動する。下部空間Sdでは、矢印E3、E6、E7、E8、E10の経路に沿って空気が循環され、制御コンピュータ50のCPU51を含む第2群の電装品の冷却が行われる。
【0068】
(4)特徴
(4−1)
本実施形態に係るX線検査装置10では、第1仕切り部材13の開口部13aの検査空間Si側に、商品Gの搬送方向に直交する方向に延びるスリットAを形成するスリット形成部材24が配される。これにより、スリット形成部材24だけで、X線の照射範囲の調整と、検査空間Si外へのX線の散乱の防止とが実現される。別途X線の散乱規制部材を設ける必要がなくなり、X線検査装置10を構成する部品点数が削減される。さらに、X線検査装置10の組立工数も削減される。
【0069】
(4−2)
本実施形態に係るX線検査装置10では、切り欠きを有する一対のスリット形成部材24を、互いの切り欠きが対向するように配置することで、スリットAが形成される。そのため、X線の遮蔽能力の観点から厚みのあるスリット形成部材24が用いられる場合や、幅の狭いスリットAを形成する必要がある場合にも、容易にスリット形成が可能である。この結果、容易に検査空間Si内にスリットAを配することが可能となる。
【0070】
(4−3)
本実施形態に係るX線検査装置10では、X線源21から照射されるX線の通過経路となる管部27と、第1仕切り部材13の開口部13aを閉塞するX線が透過可能なカーボンプレート23と、第1仕切り部材13と、スリット形成部材24とが、この順番で上方から下方に互いに隣接して配置される。このような配置をとることで、構成部材を削減し、簡易な構成によりX線の照射範囲の調整が可能となる。
【0071】
(4−4)
本実施形態に係るX線検査装置10では、X線源21と第1仕切り部材13との距離が200mm以下である。X線源21と第1仕切り部材13とを200mm以下に近づけて配置することで、X線の照射範囲の調整のために、スリットAの位置調節を行うことが不要となる。そのため、定位置にスリット形成部材24を配置することが可能となる。よって第1空間S1内にスリットAを配し、組立時にその位置を調整する必要がなくなる。その結果、X線検査装置10の構成が簡易化され、組立工数も削減される。
【0072】
(5)変形例
(5−1)変形例A
上記実施形態において、スリット形成部材24は断面視がL字状になるように切り欠かれているが、このような形状の切り欠きである必要はない。例えば、断面視がコの字状になるよう切り欠かれていてもよい。
【0073】
また、スリット形成部材は一対の部材である必要はなく、板状の部材に直接加工を行うことでスリットが形成されてもよい。
【0074】
(5−2)変形例B
上記実施形態において、X線を用いた検査の内容は、異物検査に限られない。例えば、X線を用いて、商品Gの欠品検査や重量検査等の品質検査が行われてもよい。また、一種類の検査ではなく、複数の種類の検査を併せて実行されてもよい。
【0075】
(5−3)変形例C
上記実施形態において、商品Gは筐体11内に配されるコンベアモータ31により駆動されるコンベア30により搬送されるが、他のコンベアが例えばメンテナンス空間Sm内に設けられてもよい。
【0076】
(5−4)変形例D
上記実施形態において、メンテナンス空間Smは必ずしも必要ではなく、検査空間Siの上方および下方に、X線源の収納される第1空間S1およびX線ラインセンサの収納される第2空間S2が形成されればよい。ただし、メンテナンス空間Smを配することで、下部空間Sdの冷却がラインセンサフレームを兼ねる第2仕切り部材14に制御コンピュータ50等の排熱が伝わりにくく、X線ラインセンサ40に悪影響を与えにくい。
【0077】
(5−5)変形例E
上記実施形態において、第1仕切り部材13の開口部13aはカーボンプレート23
により塞がれる必要はなく、X線が透過可能なその他の材質の部材により閉塞されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明は、簡素化された構成を用いてX線の照射範囲を調整し、組立工数や部品点数を減らすことで低価格が実現されたX線検査装置として有用である。
【符号の説明】
【0079】
10 X線検査装置
11 筐体
13 第1仕切り部材(仕切り板部材)
13a 開口部
21 X線源
23 カーボンプレート(カバー部材)
24 スリット形成部材
24a 第1スリット形成部材
24b 第2スリット形成部材
27 管部
30 コンベア(搬送部)
40 X線ラインセンサ
A スリット
G 商品(物品)
S1 第1空間
S2 第2空間
Si 検査空間
【先行技術文献】
【特許文献】
【0080】
【特許文献1】特開2004−333266号公報
【技術分野】
【0001】
本発明はX線検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、X線検査装置において、特許文献1(特開2004−333266号公報)のようにX線源の配置される電装室内にスリットを配置し、X線の照射範囲を調整する構成が知られている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、この場合には、検査室内でのX線の散乱を抑制するため、散乱規制部材を検査空間内に別途配置する必要がある。つまり、X線の照射範囲を調整する目的で、類似の機能を有するスリットと散乱規制部材とを両方とも配置する必要がある。
【0004】
本願発明の課題は、簡素化された構成によりX線の照射範囲の調整を可能とし、部品点数や組立工数を減らすことで安価なX線検査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るX線検査装置は、物品を搬送させながらX線を用いて物品の検査を行うX線検査装置であって、筐体と、X線源と、搬送部と、スリット形成部材と、X線ラインセンサと、を備える。筐体には、X線により物品の検査が行われる検査空間の上に配される第1空間および検査空間の下方に配される第2空間が内部に形成される。筐体は、開口部を有し第1空間と検査空間とを仕切る仕切り板部材、を有する。X線源は、第1空間に配置され、物品にX線を照射する。搬送部は、検査空間に配置され、物品を所定の方向へ搬送する。スリット形成部材は、仕切り板部材の開口部の検査空間側に配置され、物品の搬送方向に交差する方向に延びるスリットを形成する。X線ラインセンサは、第2空間に配置され、スリットを通って物品を透過したX線を検出する。
【0006】
これにより、スリット形成部材だけで、X線の照射範囲の調整と、検査空間外へのX線の散乱の防止とを実現できる。別途X線の散乱規制部材を設ける必要がなくなり、X線検査装置を構成する部品点数が削減される。さらに、X線検査装置の組立工数も削減される。
【0007】
また、本発明に係るX線検査装置では、スリット形成部材は、それぞれ切り欠きが形成されている第1スリット形成部材と第2スリット形成部材とを有することが望ましい。スリットは、第1スリット形成部材の切り欠きと、第2スリット形成部材の切り欠きとを、対向するように配置して形成されることが望ましい。
【0008】
これにより、厚みのあるスリット形成部材が用いられる場合や、幅の狭いスリットを形成する必要がある場合にも、スリット形成が容易に行われる。この結果、容易に検査空間内にスリットを配することが可能となる。
【0009】
また、本発明に係るX線検査装置は、X線源から照射されるX線の通過経路となる管部と、仕切り板の開口部を閉塞する、X線が透過可能なカバー部材と、をさらに備えることが望ましい。管部と、カバー部材と、仕切り板と、スリット形成部材とが、この順番で上方から下方に互いに隣接して配置されることが望ましい。
【0010】
これにより、X線検査装置の構成部材が削減される。その結果、簡易な構成で、X線の照射範囲を調整することができる。
【0011】
また、本発明に係るX線検査装置は、X線源と仕切り板部材との距離が200mm以下であることが望ましい。
【0012】
これにより、X線の照射範囲の調整のために、スリットの位置調節を行うことが不要となる。そのため、定位置にスリット形成部材を配置することが可能となる。よって第1空間内にスリットを配し、組立時にその位置を調整する必要がなくなる。その結果、X線検査装置の構成が簡易化され、組立工数も削減される。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るX線検査装置では、X線の照射範囲を調整するスリットを形成するスリット形成部材が、物品の検査が行われる検査空間内に配置される。その結果、スリット形成部材だけで、X線の照射範囲の調整と、検査空間外へのX線の散乱の防止とを実現できる。別途X線の散乱規制部材を設ける必要がなくなり、X線検査装置を構成する部品点数が削減される。さらに、X線検査装置の組立工数も削減される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】X線検査装置周辺の平面図。
【図2】本発明の一実施形態に係るX線検査装置の外観の斜視図。
【図3】本発明の一実施形態に係るX線検査装置内の機器の配置を表す右側面図。筐体の右側面部材は省略して図示されている。
【図4】本発明の一実施形態に係るX線検査装置内の配置を表す正面図。検査空間およびメンテナンス用空間の前方に配置される、前面部材の扉部は省略して図示されている。
【図5】X線源ユニットの背面に隣接配置される基板部材フレームの回動状態を表す図。筐体の右側面部材および後面部材は省略して図示されている。
【図6】図4のVI内のX線源およびスリット周辺の拡大図。
【図7】図6のVII−VII断面におけるスリット形成部材の断面視。
【図8】商品のX線による検査状態を表した模式図。
【図9】制御コンピュータのブロック構成図。
【図10】冷却ユニット内および筐体内の空気の流れ。筐体の右側面部材は省略して図示されている。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態に係るX線検査装置10について説明する。
【0016】
(1)X線検査装置の概略説明
X線検査装置10は、食品等の商品Gの生産ラインに組み込まれ、商品GにX線を照射し、商品Gを透過したX線の透過量を計測し、その計測結果を解析することで、商品Gの異物検査を行う装置である。
【0017】
X線検査装置10の検査対象となる商品Gは、図1に示すように、前段コンベア80によってX線検査装置10まで運ばれる。X線検査装置10における商品Gの検査結果は、後述する制御コンピュータ50から、X線検査装置10の下流側に配置されている振分機構90へと送られる。振分機構90は、X線検査装置10において良品と判断された物品を正規のラインコンベア91へと送り、X線検査装置10において不良品と判断された商品Gを不良品貯留コンベア92へと送る。
【0018】
X線検査装置10は、図2から図4に示されるように、主として、筐体11と、X線源ユニット20と、コンベア30と、X線ラインセンサ40と、制御コンピュータ50と、モニタ60と、冷却ユニット70とを有する。
【0019】
(2)X線検査装置の詳細説明
(2−1)筐体
筐体11は、伸縮自在の脚部により支持される略直方体形状のケーシングである。筐体11のサイズは、後述する前面部材11a側から見た時に、幅450mm、奥行き450mm、高さ1080mm(脚部を含めない)である。
【0020】
筐体11は、筐体11の正面に配される側面部材である前面部材11aと、前面部材11aに向かって右側および左側に配置される右側面部材11bおよび左側面部材11cと、筐体11の背面に配される側面部材である後面部材11dと、筐体11の上方および下方に配される天面部材11eおよび底面部材11fとを有する。
【0021】
筐体11の外側には、図2のように、前面部材11aに装置の起動用のキーの差し込み口61と、電源スイッチ62とが設けられる。また、後面部材11dには、図3のように、筐体内部と筐体外部との間で熱交換をするための冷却ユニット70が設けられる。さらに、天面部材11e上には、モニタ60が設けられる。
【0022】
筐体11の内部には、図3および図4のように、X線源ユニット20、コンベア30、X線ラインセンサ40、制御コンピュータ50等の電装品や構成機器が収容される。
【0023】
なお、筐体11の内部には、X線源ユニット20を含む第1群の電装品が配置される第1空間S1と、制御コンピュータ50を含む第2群の電装品が配置される下部空間Sdとが形成される。また、第1空間S1と下部空間Sdとの間に、物品を搬送させながらX線により検査を行う検査空間Siと、検査空間Siの下方に位置するメンテナンス空間Smとが配される。さらに、図4に示されるように、検査空間Siより下方に位置し、筐体11の底面部材11fより上方に位置する空間を、まとめて第2空間S2と定義する。各空間について以下に説明する。
【0024】
(2−1−1)第1空間
第1空間S1は、図3および図4のように、筐体11内上部に形成される空間である。第1空間S1には、主に、X線源ユニット20、基板部材25などの第1群の電装品が配置される。
【0025】
第1空間S1は、主に、天面部材11e、正面側の側面部材である前面部材11a、右側面部材11b、左側面部材11c、背面側の側面部材である後面部材11d、および筐体11の有する仕切り板部材である第1仕切り部材13により囲まれて形成されている。
【0026】
前面部材11aの上端は、冷却ユニット70の配置される後面部材11dに向かって、約45度傾いて天面部材11eまで延びる第1傾斜部11gを有する。第1傾斜部11gは、後述するX線源ユニット20が有する排熱ファン22の直上に、第1傾斜部11gの一部が位置するように配置される。なお、X線源ユニット20は天面部材11eおよび第1傾斜部11gの近傍に配置され、排熱ファン22はX線源ユニット20の上方に配置される。
【0027】
後面部材11dの上端近傍の、第1空間S1側には、第1空間S1内の空気を循環させる第1ファン26が設けられる。第1ファン26は、後述する冷却ユニット70と共に使用され、第1空間S1を冷却する。第1空間S1内の空気の流れについては後述する。
【0028】
なお、後面部材11dは、第1空間S1から後述する下部空間Sdに渡って延びる部材であり、図3に示すヒンジ部11hを中心として水平方向に回動して開閉可能な扉としての機能を有する。後面部材11dを開くことで、作業者が後面部材11dに隣接して配置される基板部材25を含む電装品にアクセスしたり、X線源ユニット20を筐体11の内外に搬入出したりすることが可能となる。
【0029】
なお、基板部材25は、基板部材25を保持するフレーム25aと、フレーム25aを回動する際にフレーム25aを支持するヒンジ部25bとを有する。さらにフレーム25aは、X線源ユニット20の背面と対向して配置される平坦な第1面25cと、第1面25cの裏側に位置し、電装部品の配置される第2面25dとを有する。基板部材25は、図3のように、後面部材11dに隣接して配置されると共に、X線源ユニット20の後面部材11d側の背面とも隣接する。フレーム25aは、装置運転時には立設状態にあるが、メンテナンス時にはヒンジ部25bを中心として、X線源ユニット20の背面から遠ざかる方向に、すなわち筐体11の外側に向けて倒れるように回動する。フレーム25aを回動させることで、後面部材11dの方向からX線源ユニット20にアクセス可能となる。
【0030】
図5を用いてさらに説明すると、フレーム25aは、第1面25cが上向きかつ水平な状態になるように、ヒンジ部25bを中心として図中のR方向に回動可能である。第1面25cが水平になった状態では、基板部材25の一部は、筐体11の外部にはみ出して配置される。第1面25cは平坦な面であり、X線源ユニット20の搬入出時には、図5に点線で示すように、X線源ユニット20の仮置きに利用される。なお、図5では、開いた状態にある後面部材11dは省略して図示している。
【0031】
(2−1−2)検査空間
検査空間Siは、第1空間S1の下方に配される空間である。検査空間Siでは、後述するコンベア30により搬送される商品Gに対して、後述するX線源ユニット20内のX線源21から発生するX線が照射され、検査が行われる。
【0032】
検査空間Siと、第1空間S1とは、仕切り板部材である第1仕切り部材13により仕切られている。第1仕切り部材13は、図6のように、開口部13aを有し、開口部13aの上方はX線が透過可能なカーボンプレート23により閉塞されている。開口部13aの検査空間Si側には、スリット形成部材24が設けられ、X線通過スリットAが形成されている。スリット形成部材24周りの構成については、X線源ユニット20の説明と併せて後述する。
【0033】
また、検査空間Siは、図4のように、検査空間Siの下方に位置する後述するメンテナンス空間Smと、第2仕切り部材14によって仕切られている。第2仕切り部材14は、後述するコンベア30およびX線ラインセンサ40を支持するフレームとしての機能を兼ね備える。なお、第2仕切り部材14はX線の遮蔽能を有し、装置運転中であっても後述するメンテナンス空間SmにはX線は漏洩しない。
【0034】
検査空間Si部分の右側面部材11bおよび左側面部材11cには、図2から図4に示すように、検査対象である商品Gを、検査空間Siの内外に搬入出するための検査空間開口15が形成されている。検査空間開口15は、筐体11外部へのX線の漏洩を防止するため、複数の切り込みを有する遮蔽ノレン16により塞がれている。遮蔽ノレン16は、鉛を含むゴムを用いて成形されており、商品Gが検査空間開口15を通過する際には商品Gによって押しのけられる。検査空間Siの前方は、筐体11から遠ざかる方向に、すなわち前方に向かって開閉可能な前面部材11aの扉部11iにより筐体11の外部と仕切られている。検査空間Siの後方は、筐体11の内部を仕切る内壁17により仕切られている。
【0035】
(2−1−3)メンテナンス空間
メンテナンス空間Smは、検査空間Siの下方に位置する空間である。メンテナンス空間Smは、商品Gに由来してコンベア30に付着した汚れやごみ等が床面に落ちるのを防止する。また、図示しない外付けコンベアの設置等にも利用される。
【0036】
メンテナンス空間Smは、図4のように、検査空間Siと、第2仕切り部材14によって仕切られている。また、メンテナンス空間Smは、メンテナンス空間Smの下方に位置する後述する下部空間Sdと、第3仕切り部材18によって仕切られている。メンテナンス空間Smに面する、第3仕切り部材18の上面は、平坦かつ水平である。
【0037】
メンテナンス空間Sm部分の右側面部材11bおよび左側面部材11cには、メンテナンス空間開口19が形成されており、筐体11の外部と連通している。検査空間Siの前方は、筐体11から遠ざかる方向に、すなわち前方に向かって開閉可能な前面部材11aの扉部11iにより筐体11の外部と仕切られている。検査空間Siの後方は、筐体11の内部を仕切る内壁17により仕切られている。
【0038】
(2−1−4)下部空間
下部空間Sdは、筐体11内の下方に形成される空間である。下部空間Sdには、主に、CPU51を含む制御コンピュータ50などの第2群の電装品が配置される。制御コンピュータ50の上側には、上方に向けて排気するコンピュータ排熱ファン57が配置されている。
【0039】
下部空間Sdは、主に、第3仕切り部材18、前面部材11a、右側面部材11b、左側面部材11c、後面部材11d、および底面部材11fにより囲まれて形成されている。
【0040】
前面部材11aの下端は、後面部材11dに向かって約45度傾いて、底面部材11fまで延びる第2傾斜部11jを有する。なお、第2傾斜部11jの傾斜角度は例示であり、これに限定されるものではない。制御コンピュータ50は、第2傾斜部11jおよび底面部材11fの近傍に配置される。第2傾斜部11jは、第2群の電装品である制御コンピュータ50の直下に、第2傾斜部11jの一部が位置するように配置される。また、第2傾斜部は、後述する第2ファン55の吹き出し方向前方に配置される。
【0041】
制御コンピュータ50の下方には、後面部材11d側に、図3のように、第2ファン55が設けられている。第2ファン55は、下部空間Sd内の空気を循環させ、冷却ユニット70と共に使用されることで、下部空間Sdを冷却する。下部空間Sdの冷却については後述する。
【0042】
(2−1−5)第2空間
第2空間S2は、図4に二点破線線で示すように、第2仕切り部材14の上面と、筐体11の底面部材11fの上面との間に位置する、筐体11の全ての内部空間を指す。筐体11の内部空間には、第2仕切り部材14の内部に形成される空間を含む。
【0043】
(2−2)X線源ユニット
X線源ユニット20は、第1空間S1に配置され、下方に向かってX線を照射する。X線源ユニット20のサイズは、おおむね幅310mm、奥行き200mm、高さ200mmの略直方体形状である。
【0044】
X線源ユニット20内に設けられたX線源21で発生したX線は、図6に示すように、上方から見た時に中空矩形断面を有する管部27の上下方向に延びる中空部、第1仕切り部材13の開口部13aを塞ぐカバー部材であるX線を透過するカーボンプレート23、第1仕切り部材13の開口部13a、スリット形成部材24により形成されるスリットAをこの順に通過して検査空間Si内に照射される。なお、管部27と、カーボンプレート23と、仕切り板部材である第1仕切り部材13と、スリット形成部材24とは、この順に隣接して配置される。
【0045】
X線源21から、第1仕切り部材13の第1空間S1側の上面までの高さHは、本実施形態では約100mmである。なお、本実施形態の高さHは例示であるが、200mm以下であることが望ましい。
【0046】
スリット形成部材24は、一対の直方体状の部材である、第1スリット形成部材24aおよび第2スリット形成部材24bとからなり、図7の断面視のように、断面が略L字形状になるように部材が切りかかれている。図7のように、第1および第2スリット形成部材24a,24bを互いの切り欠きが対向するように配置することで、スリットAが形成される。なお、X線通過スリットAは、後述するX線ラインセンサ40の直上に、X線ラインセンサ40の配置方向と平行に配置される。
【0047】
なお、X線源21で発生したX線は、図8の模式図に示されるように、後述するX線ラインセンサ40に向けて、スリットAの長手方向に扇状に広がりながら、照射空間SSに照射される。扇状の照射空間SSの中心角を二等分する直線は、鉛直方向を向いている。照射空間SSのうち、その範囲の外縁付近では、X線の照射方向は鉛直方向に対して比較的大きく傾いている。したがって、照射空間SSの外縁付近を通過する商品Gに対しては、X線が鉛直方向に対して斜めに入射する。
【0048】
(2−3)コンベア
コンベア30は、商品Gを搬送する搬送部であり、図4に示すように、検査空間Siの右側面部材11bおよび左側面部材11cに形成された検査空間開口15を貫通するように配置されている。コンベア30は、コンベアモータ31によって駆動される駆動ローラによって無端状の搬送ベルト32を回転させながら、搬送ベルト32上に載置された商品Gを搬送する。コンベア30による物品の搬送速度は、作業者の設定した速度になるように、制御コンピュータ50により制御される。具体的には、コンベアモータ31に設けられたロータリーエンコーダ31aにより計測された搬送速度が制御コンピュータ50に送信され、制御コンピュータ50の指示により、コンベアモータ31のインバータ制御によって搬送速度が細かく制御される。なお、商品Gの搬送方向は、作業者の指示に基づいた制御コンピュータ50の制御により、右側面部材11bから左側面部材11cの方向へ、もしくは、その反対方向へ自在に切り替え可能である。
【0049】
なお、コンベア30の搬送ベルト32は、第2仕切り部材14によって内側から支持されている。搬送ベルト32は、第2仕切り部材14に取り外し可能に取り付けられる。
【0050】
(2−4)X線ラインセンサ
X線検出部であるX線ラインセンサ40は、図4に示すように、コンベア30の搬送ベルト32の下方にある第2仕切り部材14内の空間に設けられている。つまり、第2仕切り部材14は、X線ラインセンサ40を支持するラインセンサフレームとして利用されている。
【0051】
X線ラインセンサ40は、主として多数の画素センサ41から構成されている。これらの画素センサ41は、コンベア30の搬送方向に直交する向きに一直線に水平に配置されている。
【0052】
X線ラインセンサ40は、商品Gを透過したX線量を各画素センサ41により計測し、計測結果を制御コンピュータ50に対して送信する。後述のように、制御コンピュータ50では、上記X線透過量に基づいて作成されるX線画像を用いて、商品Gに対する異物混入の有無を判断する。
【0053】
(2−5)制御コンピュータ
制御コンピュータ50は、図9に示すように、CPU51とともに、このCPU51によって制御される記憶部としてROM52、RAM53、およびメモリカード54を有している。
【0054】
CPU51は、ROM52およびメモリカード54に格納されている各種プログラムを実行する。メモリカード54には、検査パラメータおよび検査結果が保存蓄積される。検査パラメータは、モニタ60のタッチパネル機能を使った作業者からの入力によって設定及び変更が可能である。
【0055】
制御コンピュータ50は、モニタ60に対するデータ表示を制御する表示制御回路、モニタ60のタッチパネルからのキー入力データを取り込むキー入力回路、図示しないプリンタにおけるデータ印字の制御等を行うためのI/Oポート、およびUSB等の外部接続端子56を備えている。
【0056】
また、制御コンピュータ50は、コンベアモータ31、ロータリーエンコーダ31a、X線源ユニット20、X線ラインセンサ40、光電センサ42、振分機構90と接続されている。
【0057】
ロータリーエンコーダ31aは、コンベアモータ31に装着されており、コンベア30の搬送速度を測定して制御コンピュータ50に対して送信する。光電センサ42は、検査対象である商品GがX線ラインセンサ40の位置にくるタイミングを検出するための同期センサであり、コンベア30を挟んで配置される一対の投光器および受光器から構成されている。X線源ユニット20は、制御コンピュータ50により、X線照射タイミングやX線照射量、X線照射の禁止等を制御される。振分機構90へは、X線検査装置10における商品Gの異物検査の結果が送られる。
【0058】
以下に、制御コンピュータ50により実行されるX線画像作成と異物検査について説明する。
【0059】
〔X線画像作成〕
商品Gが、図8のように扇状の照射空間SSを通過する際に、X線ラインセンサ40によりX線透視像信号が細かい時間間隔で取得され、制御コンピュータ50に送信される。制御コンピュータ50のCPU51は、それらのX線透視像信号を基にして商品Gの2次元画像を作成する。なお、商品Gが扇状の照射空間SSを通過するタイミングは、光電センサ42からの信号により判断される。
【0060】
〔異物混入検査〕
制御コンピュータ50のCPU51は、上記のようにして得られたX線画像を画像処理して、複数の判断方式によって商品の良・不良(異物が混入していないかどうか)を判断する。判断方式には、例えば、トレース検出方式、2値化検出方式、マスク2値化検出方式がある。例えば、2値化検出方式では、X線画像に対して2値化処理を施すことにより実行される。透過するX線を大きく減衰させる異物は、X線画像上に暗く写るため、X線画像上に予め設定した閾値よりも暗く現れる領域が存在する場合に、異物の混入を検出できる。
【0061】
使用される複数の判断方式のうち、1つの判断方式でも商品が不良であると判断されれば、その商品Gは不良品と判断され、後段の振分機構90により、不良品として不良品貯留コンベア92に送られる。
【0062】
(2−6)モニタ
モニタ60は、液晶ディスプレイであり、X線画像等の各種データの表示を行う。また、モニタ60は、タッチパネル機能を有しており、コンベアの駆動方向の切り替え等の指示や、検査パラメータ等の各種データの入力を受け付ける。
【0063】
(2−7)冷却ユニット
熱交換部としての冷却ユニット70は、図3のように、筐体11の後面部材11dに設けられており、第3ファン72により給気口71から筐体11外部の空気を取り入れ、排気口73から空気を排出する。冷却ユニット70の内部には、図10のように間接冷却式の熱交換器74が配置されており、外部から筐体11内に空気を取り入れることなく、筐体11内部の冷却が行われる。熱交換器74は、筐体11の外部の空気が通過する空間と筐体11の内部の空気が通過する空間とを隔てる隔壁を有し、隔壁の両表面には伝熱面積を増大させるための複数のフィンが設けられている。
【0064】
より具体的には、図10のように、給気口71からD1の方向に外気が取り入れられ、取り入れられた空気はD2方向に冷却ユニット70の外気側内部を上昇する。この際に、筐体11外部側と筐体11内部側との間で、熱交換器74を介して熱交換が行われる。筐体11内部の空気により熱せられた筐体11外部側の空気は、排気口73からD3の方向に排出される。
【0065】
(3)筐体内の空気の流れ
以下に、筐体11内部の空気の流れおよび冷却について図10を用いて説明する。
【0066】
第1空間S1では、主要な熱源であるX線源ユニット20の排熱ファン22から、上方に熱せられた空気が排出される。排熱ファン22から排出された空気は、第1傾斜部11gに沿って矢印E1のように冷却ユニット70の方向に移動し、第1ファン26に吸引される。第1ファン26に吸引された空気は、冷却ユニット70の筐体11側内部を矢印E2方向に移動し、後面部材11dの中央付近に設けられた空気吹出口26aから矢印E3方向に吹き出す。冷却ユニット70の内部では、熱交換器74を介して、第1ファン26に吸引された第1空間S1内の空気と、第3ファン72に吸引された外気との間で熱交換が行われる。その結果、空気吹出口26aから吹き出す空気は、第1ファン26に吸引される空気よりも冷却される。空気吹出口26aから矢印E3方向に吹き出した空気の一部は、その後矢印E4、E5の経路を通って排熱ファン22付近まで移動し、第1空間S1内を循環する。
【0067】
下部空間Sdでは、空気吹出口26aから矢印E3方向に吹き出された、冷却ユニット70により冷却された空気の一部が、第2ファン55により吸引され、矢印E6、E7の順に移動する。第2ファン55から吹き出した空気は、第2ファン55の吹き出し方向前方に配置された第2傾斜部11jに沿って矢印E8のように移動し、コンピュータ排熱ファン57から矢印E9方向に吹き出す排気と共に、矢印E10の方向に移動する。矢印E10方向に移動する空気の一部が第1空間S1の矢印E4方向の流れに合流し、残りは矢印E6の方向に移動する。下部空間Sdでは、矢印E3、E6、E7、E8、E10の経路に沿って空気が循環され、制御コンピュータ50のCPU51を含む第2群の電装品の冷却が行われる。
【0068】
(4)特徴
(4−1)
本実施形態に係るX線検査装置10では、第1仕切り部材13の開口部13aの検査空間Si側に、商品Gの搬送方向に直交する方向に延びるスリットAを形成するスリット形成部材24が配される。これにより、スリット形成部材24だけで、X線の照射範囲の調整と、検査空間Si外へのX線の散乱の防止とが実現される。別途X線の散乱規制部材を設ける必要がなくなり、X線検査装置10を構成する部品点数が削減される。さらに、X線検査装置10の組立工数も削減される。
【0069】
(4−2)
本実施形態に係るX線検査装置10では、切り欠きを有する一対のスリット形成部材24を、互いの切り欠きが対向するように配置することで、スリットAが形成される。そのため、X線の遮蔽能力の観点から厚みのあるスリット形成部材24が用いられる場合や、幅の狭いスリットAを形成する必要がある場合にも、容易にスリット形成が可能である。この結果、容易に検査空間Si内にスリットAを配することが可能となる。
【0070】
(4−3)
本実施形態に係るX線検査装置10では、X線源21から照射されるX線の通過経路となる管部27と、第1仕切り部材13の開口部13aを閉塞するX線が透過可能なカーボンプレート23と、第1仕切り部材13と、スリット形成部材24とが、この順番で上方から下方に互いに隣接して配置される。このような配置をとることで、構成部材を削減し、簡易な構成によりX線の照射範囲の調整が可能となる。
【0071】
(4−4)
本実施形態に係るX線検査装置10では、X線源21と第1仕切り部材13との距離が200mm以下である。X線源21と第1仕切り部材13とを200mm以下に近づけて配置することで、X線の照射範囲の調整のために、スリットAの位置調節を行うことが不要となる。そのため、定位置にスリット形成部材24を配置することが可能となる。よって第1空間S1内にスリットAを配し、組立時にその位置を調整する必要がなくなる。その結果、X線検査装置10の構成が簡易化され、組立工数も削減される。
【0072】
(5)変形例
(5−1)変形例A
上記実施形態において、スリット形成部材24は断面視がL字状になるように切り欠かれているが、このような形状の切り欠きである必要はない。例えば、断面視がコの字状になるよう切り欠かれていてもよい。
【0073】
また、スリット形成部材は一対の部材である必要はなく、板状の部材に直接加工を行うことでスリットが形成されてもよい。
【0074】
(5−2)変形例B
上記実施形態において、X線を用いた検査の内容は、異物検査に限られない。例えば、X線を用いて、商品Gの欠品検査や重量検査等の品質検査が行われてもよい。また、一種類の検査ではなく、複数の種類の検査を併せて実行されてもよい。
【0075】
(5−3)変形例C
上記実施形態において、商品Gは筐体11内に配されるコンベアモータ31により駆動されるコンベア30により搬送されるが、他のコンベアが例えばメンテナンス空間Sm内に設けられてもよい。
【0076】
(5−4)変形例D
上記実施形態において、メンテナンス空間Smは必ずしも必要ではなく、検査空間Siの上方および下方に、X線源の収納される第1空間S1およびX線ラインセンサの収納される第2空間S2が形成されればよい。ただし、メンテナンス空間Smを配することで、下部空間Sdの冷却がラインセンサフレームを兼ねる第2仕切り部材14に制御コンピュータ50等の排熱が伝わりにくく、X線ラインセンサ40に悪影響を与えにくい。
【0077】
(5−5)変形例E
上記実施形態において、第1仕切り部材13の開口部13aはカーボンプレート23
により塞がれる必要はなく、X線が透過可能なその他の材質の部材により閉塞されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明は、簡素化された構成を用いてX線の照射範囲を調整し、組立工数や部品点数を減らすことで低価格が実現されたX線検査装置として有用である。
【符号の説明】
【0079】
10 X線検査装置
11 筐体
13 第1仕切り部材(仕切り板部材)
13a 開口部
21 X線源
23 カーボンプレート(カバー部材)
24 スリット形成部材
24a 第1スリット形成部材
24b 第2スリット形成部材
27 管部
30 コンベア(搬送部)
40 X線ラインセンサ
A スリット
G 商品(物品)
S1 第1空間
S2 第2空間
Si 検査空間
【先行技術文献】
【特許文献】
【0080】
【特許文献1】特開2004−333266号公報
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品を搬送させながらX線を用いて前記物品の検査を行うX線検査装置であって、
前記X線により前記物品の検査が行われる検査空間の上に配される第1空間および前記検査空間の下方に配される第2空間が内部に形成され、開口部を有し前記第1空間と前記検査空間を仕切る仕切り板部材、を有する筐体と、
前記第1空間に配置され、前記物品にX線を照射するX線源と、
前記検査空間に配置され、前記物品を所定の方向へ搬送する搬送部と、
前記仕切り板部材の前記開口部の前記検査空間側に配置され、前記物品の搬送方向に交差する方向に延びるスリットを形成するスリット形成部材と、
前記第2空間に配置され、前記スリットを通って前記物品を透過した前記X線を検出するX線ラインセンサと、
を備えるX線検査装置。
【請求項2】
前記スリット形成部材は、矩形状の部材の一方の長辺を切り欠いた第1スリット形成部材と第2スリット形成部材とを有し、
前記スリットは、前記第1スリット形成部材の切り欠きと、前記第2スリット形成部材の切り欠きとを、対向するように配置して形成される、
請求項1に記載のX線検査装置。
【請求項3】
前記X線源から照射されるX線の通過経路となる管部と、
前記仕切り板の開口部を閉塞する、X線が透過可能なカバー部材と、
をさらに備え、
前記管部と、前記カバー部材と、前記仕切り板部材と、前記スリット形成部材とが、この順番で上方から下方に互いに隣接して配置される
請求項1または2に記載のX線検査装置。
【請求項4】
前記X線源と前記仕切り板部材との距離が200mm以下である、
請求項1から3のいずれか一項に記載のX線検査装置。
【請求項1】
物品を搬送させながらX線を用いて前記物品の検査を行うX線検査装置であって、
前記X線により前記物品の検査が行われる検査空間の上に配される第1空間および前記検査空間の下方に配される第2空間が内部に形成され、開口部を有し前記第1空間と前記検査空間を仕切る仕切り板部材、を有する筐体と、
前記第1空間に配置され、前記物品にX線を照射するX線源と、
前記検査空間に配置され、前記物品を所定の方向へ搬送する搬送部と、
前記仕切り板部材の前記開口部の前記検査空間側に配置され、前記物品の搬送方向に交差する方向に延びるスリットを形成するスリット形成部材と、
前記第2空間に配置され、前記スリットを通って前記物品を透過した前記X線を検出するX線ラインセンサと、
を備えるX線検査装置。
【請求項2】
前記スリット形成部材は、矩形状の部材の一方の長辺を切り欠いた第1スリット形成部材と第2スリット形成部材とを有し、
前記スリットは、前記第1スリット形成部材の切り欠きと、前記第2スリット形成部材の切り欠きとを、対向するように配置して形成される、
請求項1に記載のX線検査装置。
【請求項3】
前記X線源から照射されるX線の通過経路となる管部と、
前記仕切り板の開口部を閉塞する、X線が透過可能なカバー部材と、
をさらに備え、
前記管部と、前記カバー部材と、前記仕切り板部材と、前記スリット形成部材とが、この順番で上方から下方に互いに隣接して配置される
請求項1または2に記載のX線検査装置。
【請求項4】
前記X線源と前記仕切り板部材との距離が200mm以下である、
請求項1から3のいずれか一項に記載のX線検査装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2013−88199(P2013−88199A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−227332(P2011−227332)
【出願日】平成23年10月14日(2011.10.14)
【出願人】(000147833)株式会社イシダ (859)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月14日(2011.10.14)
【出願人】(000147833)株式会社イシダ (859)
【Fターム(参考)】
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