説明

X線照射装置および高周波電力生成ユニット

【課題】製造コストや維持コストおよび占有体積を抑制することが可能なX線照射装置および高周波電力生成ユニットの提供。
【解決手段】X線照射装置100は、高周波電力を生成する高周波電力生成ユニット112と、電子線を放出する電子銃110と、高周波電力生成ユニット112による高周波電力の供給を受けて、電子銃110から放出された電子線を加速する加速器118と、加速器118で加速された電子線をX線に変換するX線変換部120と、を備え、高周波電力生成ユニット112は、高電圧のパルス電圧を生成する高周波電源112aと、振幅が相異なる複数のパルスを規則的に配したドライブ信号を生成する信号発生器112cと、パルス電圧の供給を受け、ドライブ信号に応じて高周波電力を生成する高周波電力増幅器112bと、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被照射物にX線を照射するX線照射装置、および、それを構成する高周波電力生成ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、X線照射装置は、医療分野において体内の様子を把握したり、空港における手荷物や貨物車の貨物内容等を検出したり、様々な分野で利用されている。このようなX線照射装置では、X線を被照射物に照射し、被照射物を透過したX線の線量によって被照射物の内部の様子を検出することができる。
【0003】
X線照射装置では、電子エネルギーを変化させることで異種エネルギーのX線を発生させることができ、かかる異種エネルギーによって被照射物の詳細な材料識別が可能となる。しかし、材料識別を行うためには、短時間かつほぼ同時に異種エネルギーのX線を被照射物に照射しなければならない。そこで、加速器に2つのマイクロ波源を接続し、その2つのマイクロ波源を交互に発振させることで2種の電子エネルギーを連続的に生成する技術が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−218053号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、複数の異種エネルギーのX線が必要な場合、異種エネルギーに相当する複数のマイクロ波源やクライストロン等の高周波電力生成ユニットを準備しなくてはならず、製造および維持コストの増大や占有体積の増大といった問題が生じていた。
【0006】
そこで本発明は、このような課題に鑑み、高周波電力生成ユニットを簡易かつ安価に構成することで、製造コストや維持コストおよび占有体積を抑制することが可能なX線照射装置および高周波電力生成ユニットを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のX線照射装置は、高周波電力を生成する高周波電力生成ユニットと、電子線を放出する電子銃と、高周波電力生成ユニットによる高周波電力の供給を受けて、電子銃から放出された電子線を加速する加速器と、加速器で加速された電子線をX線に変換するX線変換部と、を備えるX線照射装置であって、高周波電力生成ユニットは、高電圧のパルス電圧を生成する高周波電源と、振幅が相異なる複数のパルスを規則的に配したドライブ信号を生成する信号発生器と、パルス電圧の供給を受け、ドライブ信号に応じて高周波電力を生成する高周波電力増幅器と、を備えることを特徴とする。
【0008】
信号発生器は、電力値が相異なる複数の電力を生成する複数の増幅器と、パルス電圧に同期したパルス信号を発生するパルス発生器と、パルス信号に従って、複数の増幅器の出力を切り換えるパルス切換部と、を備えてもよい。
【0009】
上記課題を解決するために、被照射物にX線を照射するX線照射装置に高周波電力を供給する、本発明の高周波電力生成ユニットは、高電圧のパルス電圧を生成する高周波電源と、電力値が相異なる複数の電力を生成する複数の増幅器と、パルス電圧に同期したパルス信号を発生するパルス発生器と、パルス信号に従って、複数の増幅器の出力を切り換えるパルス切換部とを有し、振幅が相異なる複数のパルスを規則的に配したドライブ信号を生成する信号発生器と、パルス電圧の供給を受け、ドライブ信号に応じて高周波電力を生成する高周波電力増幅器と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、高周波電力生成ユニットを簡易かつ安価に構成することで、製造コストや維持コストおよび占有体積を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】X線照射システムの構成を説明するための概略的なブロック図である。
【図2】加速器の動作原理を説明するための説明図である。
【図3】高周波電力生成ユニットの構成を説明するための説明図である。
【図4】信号発生器の構成を説明するための説明図である。
【図5】信号発生器における各ノードの電力を示した説明図である。
【図6】ドライブ電力と出力電力との関係を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0013】
(X線照射システム1)
図1は、X線照射システム1の構成を説明するための概略的なブロック図である。本実施形態におけるX線照射システム1は、X線を照射するX線照射装置100と、当該X線照射装置100から照射され、さらに被照射物Wを透過したX線を受けるX線カメラユニット200とを含んで構成される。
【0014】
X線照射システム1は、医療分野のみならず、空港における手荷物や貨物車の貨物内容の検出といった、様々な分野で利用されるようになってきた。特に貨物車の貨物内容の検出では、貨物車の進行方向に水平面上で垂直な方向および鉛直方向の2方向にX線照射システム1を設け、2面から、その内容物を検出するといった具合に、詳細な検査が為されている。本実施形態におけるX線照射システム1では、高周波電力生成ユニットの構成を工夫することで、X線照射システム1全体の製造コストや維持コストおよび占有体積を抑制することを目的としている。ここでは、まず、前提となるX線照射システム1のX線照射装置100およびX線カメラユニット200の具体的な構成を簡単に述べ、その後、上記高周波電力生成ユニットについて詳細に説明する。
【0015】
(X線照射装置100)
図1に示すように、X線照射装置100は、電子銃110と、高周波電力生成ユニット112と、導波管114と、プリバンチャ116と、加速器118と、X線変換部120とを備えて構成されている。なお、電子銃110、プリバンチャ116、加速器118は、内部空間(真空室)が連続しており、この内部空間は、イオンポンプ等の真空ポンプで高真空状態から超高真空状態(例えば、10E−5Pa以下)に維持される。X線照射装置100において、電子銃110から放出された熱電子は、プリバンチャ116、加速器118で加速され、X線変換部120を通過し、X線として被照射物Wに向かって図1中X軸方向に照射される。以下、X線照射装置100の各機能部について詳述する。
【0016】
(電子銃110)
電子銃110は、例えば、三極管電子銃で構成され、交流電源104から供給された電力により、カソード電極を加熱して熱電子を生成し、グリッドパルス電圧によって間欠的に電子を引き出すと共に、カソード電極とアノード電極との間に高電圧のパルス電圧を印加して、引き出した電子をプリバンチャ116方向に加速する。
【0017】
(高周波電力生成ユニット112)
高周波電力生成ユニット112は、例えばSバンドに相当する3GHzのパルス状の高周波電力(電磁波)を生成し、導波管114を通じてプリバンチャ116および加速器118に供給する。かかる高周波電力生成ユニット112の構成およびその機能については、後ほど詳述する。
【0018】
(導波管114)
導波管114は、高周波電力生成ユニット112から供給される高周波電力(電磁波)をプリバンチャ116や加速器118に供給する。導波管114には、六フッ化硫黄(SF)等の絶縁ガスが充填されており、高周波電力生成ユニット112からの出力電圧によって導波管114が放電してしまう事態を回避する。なお、導波管114の端部には、SFと真空とを隔て、SFを密閉するためのRF窓114a、114bが設けられている。
【0019】
(プリバンチャ116)
プリバンチャ116は、電子銃110と加速器118の間に設けられ、導波管114を通じて高周波電力生成ユニット112に接続されている。プリバンチャ116は、電子銃110から入射された電子線をバンチング(密度圧縮(速度変調))して、加速器118に送出する。具体的に説明すると、プリバンチャ116内は、高周波電力生成ユニット112から供給された高周波電力によって高周波電界が形成されており、プリバンチャ116を通過した電子線は、その高周波電界にバンチングされる。プリバンチャ116で電子線をバンチングすることにより、加速器118で加速された電子線のエネルギーの分散を小さくすることができ、電子線のエネルギーの均一性を向上させることが可能となる。
【0020】
ここで、プリバンチャ116によって圧縮された電子線の加速器118への入射タイミングと、加速器118における高周波の正位相とが同期すると、電子線は加速器118で効率よく加速される。したがって、プリバンチャ116から加速器118への電子線の入射タイミングを調整するために、プリバンチャ116の高周波導入部116aには、不図示の位相調整手段が設けられている。なお、電子線の圧縮率(バンチングされた電子線の長さ/バンチング前の電子線の長さ)も加速器118による加速効率に影響し、電子線の長さが短い程、加速効率が向上する。したがって、供給する高周波の強度を調整して電子線の長さを調整するために、プリバンチャ116の高周波導入部116aには、不図示の減衰(アッテネータ)手段が設けられている。
【0021】
(加速器118)
加速器118は、高周波電力生成ユニット112による高周波電力の供給を受けて、電子銃110から放出された電子線を加速する。図2は、加速器118の動作原理を説明するための説明図である。本実施形態では、加速器118として、定在波型の線形(リニアック)加速器を採用しているが、電子を加速できればよく、進行波型の線形加速器や、シンクロトロン、サイクロトロン等の円形加速器を採用することもできる。
【0022】
図2に示すように、電子銃110は、図2中、黒い塗りつぶしで示すように、電子線をX軸方向に伸長した状態でプリバンチャ116の内部空間に放出する。そして、プリバンチャ116によるバンチング機能により、電子線は、X軸方向に圧縮されて加速器118に入射される。
【0023】
加速器118は、内部に複数の加速空間130a、130b、130c(以下、130a、130b、130cを纏めて130で示す場合もある。)を有している。図2では理解を容易にするために、加速空間130として3つしか挙げていないが、本実施形態の加速器118は30程度の加速空間130を有する。なお、電子銃110から所定数の加速空間130の距離L(加速空間130における電子線の進行方向(図2中X軸方向)の距離)は、電子銃110から遠ざかるに従って徐々に長くなるように構成され、所定の加速空間130以降の加速空間130の距離Lは、所定の長さに維持されるように構成される。
【0024】
高周波電力生成ユニット112から加速器118に高周波電力(例えば、3GHz)が供給されると、図2(a)に示すように、複数の加速空間130が空間共振器として機能し、空間共振器内に時間に伴って変化する電界が生じる。そして、このような時間に伴って変化する電界を通じて時限的に電子線を加速する。
【0025】
具体的に説明すると、加速器118の加速空間130は、高周波電力生成ユニット112から導入される高周波電力によって、例えば、図2(a)および図2(b)に示すように、X軸方向に隣接する加速空間130に交互に正位相(進行方向に正(+)の空間電荷)と負位相(進行方向に負(−)の空間電荷)とが生じる。プリバンチャ116から放出された負の電荷を帯びている電子線は、図2(a)に示すように、時刻t0に加速空間130aに位置し、正(+)の空間電荷によってX軸方向に加速される。そして、図2(b)に示すように、時刻t1において、隣接する加速空間130bに位置し、同様に正(+)の空間電荷によってX軸方向に加速される。このように電子線の移動タイミングに、正(+)の空間電荷と負(−)の空間電荷との切換タイミングを同期させることで、電子線は加速器118内で徐々に加速され、最終的には、例えば10MeV程度まで加速されて、X線変換部120に入射される。
【0026】
(X線変換部120)
X線変換部120は、当該X線照射装置100のターゲットに相当し、数mm程度の厚みの重金属箔、例えば、タングステンまたは銅の積層構造で構成され、内部空間と大気とを隔てつつ、加速された電子線をX線に変換して大気中に通過させる。ただし、X線は電子線に対して1〜10%程度しか変換されず、残りは熱エネルギーとして回収される。また、X線変換部120(ターゲット)は、水冷機能を有することもある。
【0027】
こうして、電子銃110で放出された電子線は、加速器118で加速されて、X線として被照射物Wに照射される。
【0028】
(X線カメラユニット200)
図1に戻って説明すると、X線カメラユニット200は、X線イメージインテンシファイア210と、カメラ212とを含んで構成される。
【0029】
(X線イメージインテンシファイア210)
X線イメージインテンシファイア210は、入力蛍光面(受信面)に受けたX線を可視光像に変換し出力する。かかるX線イメージインテンシファイア210によって蛍光板に比べX線被曝線量を低減することができる。
【0030】
(カメラ212)
カメラ212は、CCD(Charge-Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)の撮像素子で構成され、X線イメージインテンシファイア210によって可視化された可視光像を取得する。こうして、被照射物WのX線透過画像をリアルタイムに視認することが可能となる。
【0031】
(X線照射装置100の利用例)
当該X線照射システム1においては、被照射物Wに、短時間かつほぼ同時に異種エネルギー(例えば、9MeVおよび5MeV:380pps)のX線を照射すれば、被照射物Wの詳細な材料識別が可能となる。このような異種エネルギーのX線を照射するためには、加速器118の前段、即ち、高周波電力生成ユニット112で生成される高周波電力自体を加工する必要がある。
【0032】
例えば、高周波電力生成ユニット112は、複数の電子エネルギーを有するパルス波を順次、時分割(2つなら交互)に繰り返し放射し、異種エネルギーの連続照射を実現する。しかし、このようなパルス波は繰り返し周期が短いので、高周波電力増幅器にパルス電圧を供給する高周波電源の電圧変更では間に合わない。そこで、クライストロン等の高周波電力増幅器を複数準備したり、高周波電源を複数準備する必要が生じる。この場合、製造コストや維持コストおよび占有体積が増大するといった結果を招いてしまう。ここで、高周波電力生成ユニット112の電力を変えることなく、電子銃110からのビーム電流量のみを変えることも考えられるが、カソード電極の表面温度の応答速度が限られるため、パルス波の繰り返し周期で変化させるのは不可能であり、また、X線の発生量も安定しないので、カメラ212で取得される可視光像のコントラストが悪くなるという欠点もある。本実施形態では、高周波電力生成ユニット112を以下のように構成することで、製造コストや維持コストおよび占有体積を抑制する。
【0033】
(高周波電力生成ユニット112の詳細な構成)
図3は、高周波電力生成ユニット112の構成を説明するための説明図である。高周波電力生成ユニット112は、高周波電源112aと、高周波電力増幅器112bと、信号発生器112cとを含んで構成される。
【0034】
高周波電源112aは、高周波電力増幅器112bのカソード電極140を加熱し熱電子を生成させると共に、カソード電極140とアノード電極142との間に例えば−135kVといった高電圧のパルス電圧を印加して電子線を引き出す。かかるパルス電圧は、5kV程度の電圧をパルストランスで昇圧(27倍)することで生成される。
【0035】
高周波電力増幅器112bとしては、クライストロンが用いられ、高周波電源112aからのパルス電圧および信号発生器112cのドライブ信号を受けて、パルス状の高周波電力(電磁波)を生成する。具体的に、高周波電源112aに接続されたカソード電極140とアノード電極142が、電子銃として機能し、高周波電源112aの電力供給に応じて電子線が引き出される。ここで電子線は、信号発生器112cから加速空間144に導入されたマイクロ波により正位相で加速され、負位相で減速する。そして、図2を用いて説明した加速器118と同様に、空間共振部146の加速空間148を通じて電子線がさらに加速され、最後にコレクタ150で集群および冷却される。かかるコレクタ150に集群される前に、加速空間152を通過すると、電子線は大きな交流電界を誘起し、大電力のマイクロ波出力が取り出され、高周波電力として導波管114に出力される。
【0036】
信号発生器112cは、振幅が相異なる複数のパルスを規則的に配したドライブ信号を生成し、高周波電力増幅器112bに供給する。本実施形態では、かかる信号発生器112cによるドライブ信号を工夫して、相異なる複数の電力値を有するパルス波によって異種エネルギーを形成するためのドライブ信号を生成する。
【0037】
図4は、信号発生器112cの構成を説明するための説明図であり、図5は、信号発生器112cにおける各ノードの電力推移を示した説明図である。信号発生器112cは、電源160と、増幅器162a、162bと、パルス発生器164と、パルス切換部166とを含んで構成される。電源160は、0.1W(5dBm)の定電力を出力し(図5中(a))、100Wの能力を有する増幅器162aおよび50Wの能力を有する増幅器162bは、パルス電圧に同期したパルス信号を発生するパルス発生器164に応じてそれぞれ電力値が相異なる複数の電力(ここでは60Wと12W)のパルス電力を生成する(図5中(b)、(c))。そして、スイッチング素子で構成されるパルス切換部166は、パルス発生器164に従って、入力を増幅器162aと増幅器162bとで交互に切り換え、図5(d)のような、2種類の電力(60Wと12W)が交互に配されたドライブ信号を形成する。かかるドライブ信号に応じて、X線照射装置100は、図5(e)の如く、60Wのパルスに対応して9MeVのX線が、12Wのパルスに対応して5MeVのX線が出力される。ただし、ここで示したパルスは、例えば380ppsの周波数のパルスをいうが、詳細には、さらに周波数の高い、例えば3GHzといったパルスの集合で表される。
【0038】
図6は、ドライブ電力と出力電力との関係を示した説明図である。ここでは、横軸に信号発生器112cのドライブ電力が、縦軸に高周波電力生成ユニット112の出力電力が示され、高周波電源112aからの入力電圧(図6中右側にkVとAとで示す。)毎に、ドライブ電力対出力電力の軌跡が表されている。
【0039】
例えば、9MeVと5MeVとの2つの異種エネルギーを有するX線をX線照射装置100から出力する場合、高周波電力生成ユニット112の出力電力として5.2MWと2.7MWとが必要であったとする。例えば、高周波電源112aを2つ準備し、その切り換えによって、上記の出力電力を実現しようとすると、ドライブ電圧を60Wに固定した状態で、2つの高周波電源112aを135kV(図6(e))と110kV(図6(f))とに設定し、それを切り換えればよいことが把握できる。しかし、上述したように、高周波電源112aを増やすと、製造コストや維持コストの増大および占有体積の増大といった問題がある。本実施形態では、図5に示すように、高周波電源112aからの入力電源を135kVに固定した状態で、ドライブ電力を60W(図6(e))と12W(図6(g))とで切り換えることで、5.2MWと2.7MWとの出力電力の切り換えを実現する。
【0040】
したがって、高周波電源112aや高周波電力増幅器112bによる製造コストや維持コストの増大を伴うことなく、信号発生器112cの構成を変更するだけで、X線照射装置100から異種エネルギーを照射することが可能となる。また、信号発生器112cでは、パルス切換部166によって、パルス出力が瞬時に切り換わるため、380pps以上のパルス周波数によるエネルギー波形を形成することが可能となる。
【0041】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、被照射物に電子線を照射するX線照射装置および高周波電力生成ユニットに利用することができる。
【符号の説明】
【0043】
1 …X線照射システム
100 …X線照射装置
110 …電子銃
112 …高周波電力生成ユニット
112a …高周波電源
112b …高周波電力増幅器
112c …信号発生器
114 …導波管
116 …プリバンチャ
118 …加速器
120 …X線変換部
160 …電源
162 …増幅器
164 …パルス発生器
166 …パルス切換部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波電力を生成する高周波電力生成ユニットと、
電子線を放出する電子銃と、
前記高周波電力生成ユニットによる高周波電力の供給を受けて、前記電子銃から放出された電子線を加速する加速器と、
前記加速器で加速された電子線をX線に変換するX線変換部と、
を備えるX線照射装置であって、
前記高周波電力生成ユニットは、
高電圧のパルス電圧を生成する高周波電源と、
振幅が相異なる複数のパルスを規則的に配したドライブ信号を生成する信号発生器と、
前記パルス電圧の供給を受け、前記ドライブ信号に応じて前記高周波電力を生成する高周波電力増幅器と、
を備えることを特徴とするX線照射装置。
【請求項2】
前記信号発生器は、
電力値が相異なる複数の電力を生成する複数の増幅器と、
前記パルス電圧に同期したパルス信号を発生するパルス発生器と、
前記パルス信号に従って、前記複数の増幅器の出力を切り換えるパルス切換部と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載のX線照射装置。
【請求項3】
被照射物にX線を照射するX線照射装置に高周波電力を供給する高周波電力生成ユニットであって、
高電圧のパルス電圧を生成する高周波電源と、
電力値が相異なる複数の電力を生成する複数の増幅器と、前記パルス電圧に同期したパルス信号を発生するパルス発生器と、該パルス信号に従って、該複数の増幅器の出力を切り換えるパルス切換部とを有し、振幅が相異なる複数のパルスを規則的に配したドライブ信号を生成する信号発生器と、
前記パルス電圧の供給を受け、前記ドライブ信号に応じて前記高周波電力を生成する高周波電力増幅器と、
を備えることを特徴とする高周波電力生成ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−48028(P2013−48028A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−185508(P2011−185508)
【出願日】平成23年8月29日(2011.8.29)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】