説明

X線画像撮影装置、X線イメージインテンシファイア及び画像増強方法

【課題】ノイズイメージを含むことなく、撮影時刻同時性を確保した画像を撮像結果として得ることができるようにする。
【解決手段】ピンホール11によるX線結像系10を介して入射されたX線によるX線像を、X線を電子に変換する透過型光電面21と、マイクロストリップ線路22に印加されるゲートパルスによる超高速ゲート機能を有するマイクロチャンネルプレート(MCP)23と、電子を可視光に変換する蛍光面25とを有するX線イメージインテンシファイア20Aで増強し、撮像部30で撮影するX線画像撮影装置100において、透過型光電面をMCPに対して傾斜させて設置し、透過型光電面の入射側と出射側にそれぞれ第1と第2のファイバープレート26,27を設ける。この構成により、1方向からのX線のみを透過型光電面に入射させることができ、ノイズイメージ(同時性が欠如した画像)による画質劣化のない画像を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入射されたX線によるX線像を増強して可視光像に変換して撮像するX線画像撮影装置、X線イメージインテンシファイア及び画像増強方法に関する。
【背景技術】
【0002】
微弱な生物発光、蛍光、化学発光、燃焼、放電などの高速現象の静止画像を得るためには、撮像デバイスの性能として、高速現象より十分に速いシャッタ速度と、高速シャッタ動作により入射光量が必然的に減少するために非常に高い感度とが必要になる。
【0003】
この2つの問題を同時に解決する手段として、従来からイメージインテンシファイア(画像増強管)を電気的にスイッチングして必要な時間だけ画像増強管を動作させ、時間的に変化している現象の瞬間画像を増強して読みだすことが行われている。
【0004】
近年、マイクロチャンネルプレート(MCP)を用いた近接型イメージインテンシファイアの技術と高速パルス発生技術の進歩によって100億分の1秒という高速のシャッタが可能となり、例えばMCPゲート方式のX線フレーミングカメラが慣性核融合実験の観測に用いられている。
【0005】
MCPを用いたイメージインテンシファイアでは、MCPのチャンネル内壁での衝突の際に壁面は2次電子を放出するため、入射電子に対して出力電子は数千倍以上に増幅される。また、MCPは全体で100万個以上のチャンネルからなり、各チャンネルが画素に相当し、各画素が同時に増幅される。従って、レンズを通してイメージインテンシファイアの光電面上に像を結ばせると、像の明るさに応じた量の光電子が飛び出し、この電子像は平行電界によってMCP入力面に入射され、MCP内部を通過する時にMCP1枚当たり数千倍に増幅されて蛍光面へ衝突し再び光学像となる。
【0006】
MCPゲート方式のX線フレーミングカメラは、その原理的な構成を図7及び図8に示すように、X線像を結像するピンホールによるX線結像系510と、上記X線結像系510を介して入射されたX線によるX線像を増強して可視光像に変換するX線イメージインテンシファイア部520と、上記X線イメージインテンシファイア部520によりX線像を変換した可視光像を撮影する可視光撮像系530からなる。
【0007】
上記X線イメージインテンシファイア部520は、入射されたX線を電子に変換する光電面521と、上記光電面521によりX線を変換した電子が入射され、入射された電子を倍増して出射するマイクロチャンネルプレート(MCP)522と、上記マイクロチャンネルプレート522から出射された電子が入射され、入射された電子を可視光に変換する蛍光面523からなり、上記X線結像系510によりX線像が結像される上記MCP522の入射面に光電面521を兼ねたマイクロストリップ線路が形成されている。
【0008】
上記X線イメージインテンシファイア部520のマイクロストリップ線路に高電圧パルスVpulseが印加された時にのみ、MCP表面で発生した光電子が増幅され、裏面より蛍光面へと放出され、可視光像を形成する。X線結像系510として複数個のピンホール結像系を用い、光電面上に複数の等価な像を配置することによって、異なる時刻の像を一度に取得することができる。
【0009】
このような構成のMCPゲート方式のX線フレーミングカメラ500では、MCP自体に光電面521を兼ねたマイクロストリップ線路を作成し、MCP自体にシャッタリングパルスを印加して高速パルス駆動することによって時間分解能30ピコ秒が達成されている(例えば、非特許文献1,2参照)。
【0010】
しかしながら、数10ピコ秒まで時間分解能が向上すると記録された画像の各位置での時間情報の同時性が問題になると考えられる。
【0011】
同時性の欠如とは、図9に示すように、シャッタリングパルスの伝搬速度が有限であるため、シャッタリングされた画像情報が場所により同時刻のものでないことを指している。特にMCPを線路として伝搬するパルスは、真空中よりもかなり遅く、電極長(画像サイズ)が10mmの場合において70ピコ秒程度のずれが生じる。時間分解能30ピコ秒を達成したとしても、画像内で70ピコ秒のずれが生じているのでは、計測機器としては30ピコ秒の分解能とは標榜できない。時間分解能の向上だけでなく、空間分解能の向上を目指した線路幅(画像サイズ)の拡大(=長い線路長)に対しても、同時性の欠如は重要性を有する。最近の報告では、画像サイズが25mm×40mmのMCPでの報告(例えば、非特許文献3参照)があり、この場合200ピコ秒以上のずれ、すなわち、同時性の欠如が生じている計算になる。
【0012】
そこで、本件の発明者は、同時性の欠如という概念を導入し、合わせて、同時性の補償を行う手法を先に提案している(例えば、非特許文献4参照)。
【0013】
すなわち、図10に示すように、MCP522の入力面と一体化していた光電面521を、MCP522から分離し、光電面521とMCP522の入射面との間の光電子の飛行時間を制御することで、画像の同時性の補償を行い、MCP522自体で修正する提案を行った。すなわち、光電面521とMCP522の入力面間で同時性の補償を行い、MCP522自体でシャッタリングを行う。飛行時間の制御は、光電面521の僅かな勾配を与えることにより実現することができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】M.Katayama, at al, Rev. Sci. Instrum. 62, pp.124-129 (1991)
【非特許文献2】D.K.Bradley, at al, Rev. Sci. Instrum. 66, pp.716-718 (1995)
【非特許文献3】T.McCaville, at al, Rev. Sci. Instrum. 76, 103501 (2005)
【非特許文献4】Y.Ito, at al, Proceerings of SPIE Vol. 4948, pp.739-744 (2003)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、光電面521に勾配を与えることにより光電面521とMCP522の入力面間で同時性の補償を行ようにしたMCPゲート方式のX線フレーミングカメラにおいては、図11に示すように、勾配を与えられた光電面521に入射されたX線は、全てが上記光電面521により光電変換され光電子としてMCP522に入射されるのではなく、入射されたX線の一部が上記光電面521をそのまま通過してノイズ成分としてMCP522に入射されてしまい、上記ノイズ成分がMCP522において光電変換されてノイズイメージとなって、上記光電面521により光電変換され光電子としてMCP522に入射される同時性が補償された画像に混合されることにより、同時性が補償された画像とノイズイメージ(同時性が欠如した画像)の混合画像が撮像結果として得られることが判明した。
【0016】
上記ノイズイメージ(同時性が欠如した画像)は、上記MCPゲート方式のX線フレーミングカメラにおける撮像結果の画質を劣化させる要因となっている。
【0017】
そこで、本発明の目的は、上述の如き従来の問題点に鑑み、入射されたX線によるX線像を増強して可視光像に変換して撮像するに当たり、上述の如きノイズイメージを含むことなく、撮影時刻同時性を確保した画像を撮像結果として得ることができるX線画像撮影装置、X線イメージインテンシファイア及び画像増強方法を提供することにある。
【0018】
本発明の更に他の目的、本発明によって得られる具体的な利点は、以下に説明される実施の形態の説明から一層明らかにされる。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明では、入射されたX線を電子に変換する透過型光電面と、上記透過型光電面によりX線を変換した電子が入射され、入射された電子を倍増して出射し、ゲート制御用のゲートパルスが印加されるマイクロストリップ線路による超高速ゲート機能を有するマイクロチャンネルプレートとを、上記マイクロストリップ線路を伝搬するゲートパルスの時間遅れを補償する角度だけ、相対的に傾斜させて設置することにより、上記マイクロチャンネルプレートから出射され電子が入射され、入射された電子を可視光に変換する蛍光面により得られるX線像の同時性を確保するに当たり、上記透過型光電面へのX線の入射方向を1方向に制限し、上記1方向からのX線のみを上記透過型光電面に入射させるコリメータとして機能する第1のファイバプレートを上記透過型光電面の入射側に設けるとともに、上記透過型光電面から出射される電子のみを上記マイクロチャンネルプレートに入射させるコリメータとして機能する第2のファイバプレートが上記透過型光電面の出射側に設けることによって、上記透過型光電面とマイクロチャンネルプレートとを相対的に傾斜させて設置したことにより発生する上記透過型光電面とを通過したX線によるノイズイメージを含まないようにする。
【0020】
すなわち、本発明は、X線画像撮影装置であって、入射されたX線を電子に変換する透過型光電面と、上記透過型光電面によりX線を変換した電子が入射され、入射された電子を倍増して出射し、ゲート制御用のゲートパルスが印加されるマイクロストリップ線路による超高速ゲート機能を有するマイクロチャンネルプレートと、上記マイクロチャンネルプレートから出射された電子が入射され、入射された電子を可視光に変換する蛍光面を有し、入射されたX線によるX線像を増強して可視光像に変換するX線イメージインテンシファイア部と、上記X線イメージインテンシファイア部によりX線像を変換した可視光像を撮影する撮影部とを備え、上記X線イメージインテンシファイア部は、上記マイクロストリップ線路を伝搬するゲートパルスの時間遅れを補償する角度だけ、上記マイクロチャンネルプレートと上記透過型光電面とが相対的に傾斜させて設置され、上記透過型光電面へのX線の入射方向を1方向に制限し、上記1方向からのX線のみを上記透過型光電面に入射させるコリメータとして機能する第1のファイバプレートが上記透過型光電面の入射側に設けられ、上記透過型光電面から出射される電子のみを上記マイクロチャンネルプレートに入射させるコリメータとして機能する第2のファイバプレートが上記透過型光電面の出射側に設けられていることを特徴とする。
【0021】
本発明に係るX線画像撮影装置において、上記マイクロチャンネルプレートは、例えば、上記透過型光電面と対応する面が接地面とされ、上記蛍光面と対応する面に形成されたマイクロストリップ線路に上記ゲート制御用のゲートパルスが印加される。
【0022】
また、本発明は、入射されたX線を電子に変換する透過型光電面と、上記透過型光電面によりX線を変換した電子が入射され、入射された電子を倍増して出射し、ゲート制御用のゲートパルスが印加されるマイクロストリップ線路による超高速ゲート機能を有するマイクロチャンネルプレートと、上記マイクロチャンネルプレートから出射された電子が入射され、入射された電子を可視光に変換する蛍光面を有し、入射されたX線によるX線像を増強して可視光像に変換するX線イメージインテンシファイアであって、上記マイクロストリップ線路を伝搬するゲートパルスの時間遅れを補償する角度だけ、上記マイクロチャンネルプレートと上記透過型光電面とが相対的に傾斜させて設置され、上記透過型光電面へのX線の入射方向を1方向に制限し、上記1方向からのX線のみを上記透過型光電面に入射させるコリメータとして機能する第1のファイバプレートが上記透過型光電面の入射側に設けられ、上記透過型光電面から出射される電子のみを上記マイクロチャンネルプレートに入射させるコリメータとして機能する第2のファイバプレートが上記透過型光電面の出射側に設けられていることを特徴とする。
【0023】
本発明に係るX線イメージインテンシファイアにおいて、上記マイクロチャンネルプレートは、例えば、上記透過型光電面と対応する面が接地面とされ、上記蛍光面と対応する面に形成されたマイクロストリップ線路に上記ゲート制御用のゲートパルスが印加される。
【0024】
さらに、本発明は、入射されたX線を電子に変換する透過型光電面と、上記透過型光電面によりX線を変換した電子が入射され、入射された電子を倍増して出射し、ゲート制御用のゲートパルスが印加されるマイクロストリップ線路による超高速ゲート機能を有するマイクロチャンネルプレートと、上記マイクロチャンネルプレートから出射された電子が入射され、入射された電子を可視光に変換する蛍光面を有し、入射されたX線によるX線像を増強して可視光像に変換するX線イメージインテンシファイアによる画像増強方法であって、上記マイクロストリップ線路を伝搬するゲートパルスの時間遅れを補償する角度だけ、上記マイクロチャンネルプレートと上記透過型光電面とが相対的に傾斜させて設置し、コリメータとして機能する第1のファイバプレートを上記透過型光電面の入射側に設け、上記透過型光電面へのX線の入射方向を1方向に制限して、1方向からのX線のみを上記透過型光電面に入射させ、コリメータとして機能する第2のファイバプレートを上記透過型光電面の出射側に設け、上記透過型光電面から出射される電子のみを上記マイクロチャンネルプレートに入射させ、上記透過型光電面を通過したX線によるノイズイメージを含むことなく、入射されたX線による同時性を確保したX線像を上記マイクロチャンネルプレートにより増強して上記蛍光面により可視光像に変換することを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、透過型光電面に勾配を与えることにより透過型光電面とマイクロチャンネルプレートの入力面間で同時性の補償を行い、マイクロチャンネルプレート自体でシャッタリングを行うことにより、数10ピコ秒まで時間分解能を向上させるとともに、蛍光面で可視化された画像の各位置での時間情報の同時性を補償することができ、しかも、上記透過型光電面とマイクロチャンネルプレートとを相対的に傾斜させて設置したことにより発生する上記透過型光電面とを通過したX線によるノイズイメージを含まないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明を適用したX線画像撮影装置の構成例を模式的に示す断面図である。
【図2】マイクロチャンネルプレートの構造を模式的に示す断面図、正面図、1チャンネル分の拡大図である。
【図3】上記X線画像撮影装置のX線イメージインテンシファイア部として用いられるX線イメージインテンシファイアの構造を模式的に示す断面図である。
【図4】上記X線イメージインテンシファイアにおける第1のファイバプレートの機能を模式的に示す断面図である。
【図5】上記X線イメージインテンシファイアにおける第2のファイバプレートの機能を模式的に示す断面図である。
【図6】本発明を適用したX線画像撮影装置の他の構成例を模式的に示す断面図である。
【図7】MCPゲート方式のX線フレーミングカメラの原理的な構成を示す斜視図である。
【図8】上記MCPゲート方式のX線フレーミングカメラの原理的な構成を示す要部断面図である。
【図9】上記MCPゲート方式のX線フレーミングカメラにおいて得られる画像の各位置での時間情報の同時性の欠如を説明するため模式図である。
【図10】本件発明者が先に提案している上記画像の同時性を補償するための構造を模式的に示す断面図である。
【図11】図10に示す構造において、同時性が補償された画像とノイズイメージ(同時性が欠如した画像)の混合画像が撮像結果として得られることを模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、本発明は以下の例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更可能であることは言うまでもない。
【0028】
本発明は、例えば図1に示すように、X線像を結像するピンホール11によるX線結像系10と、上記X線結像系10を介して入射されたX線によるX線像を増強して可視光像に変換するX線イメージインテンシファイア部20と、上記X線イメージインテンシファイア部20によりX線像を変換した可視光像を撮影する撮像部30からなるX線画像撮影装置100に適用される。
【0029】
上記X線イメージインテンシファイア部20は、入射されたX線を電子に変換する透過型光電面21と、上記透過型光電面21によりX線を変換した電子が入射され、入射された電子を倍増して出射し、ゲート制御用のゲートパルスVpulseが印加されるマイクロストリップ線路22による超高速ゲート機能を有するマイクロチャンネルプレート(MCP)23と、上記マイクロチャンネルプレート23から出射された電子が入射され、入射された電子を可視光に変換する蛍光面25を有し、入射されたX線によるX線像を増強して可視光像に変換するX線イメージインテンシファイア20Aからなる。
【0030】
ここで、マイクロチャンネルプレート(MCP)23は、図2の(A)、(B)、(C)に断面図、正面図、を示すように、内壁を2次電子放出材料でコーティングした直径(D)6〜25μm,長さ(L)0.24〜10mm程度の非常に細いガラス管(チャンネル)を多数束ね、薄い板状にしたものであって、個々のチャンネルが独立の二次電子増倍管として働き、全体として二次元の電子増倍器、すなわち、イメージインテンシファイアを構成している。MCPを用いたイメージインテンシファイアでは、MCPのチャンネル内壁での衝突の際に壁面は2次電子を放出するため、入射電子に対して出力電子は数千倍以上に増幅される。
【0031】
上記X線イメージインテンシファイア20Aにおいて、上記マイクロチャンネルプレート23は、図3に示すように、透過型光電面21には光電面電圧Vphoが印加され、蛍光面25には蛍光面Vphが印加された定常状態において、マイクロチャンネルプレート23に逆バイアス電圧Vbiasが印加されることによりシャッタOff状態となっており、上記マイクロチャンネルプレート23に設けられたマイクロストリップ線路22にゲート制御用のゲートパルスVpulseが印加され、上記マイクロストリップ線路22をゲートパルスVpulseが伝搬されることにより、シャッタOn状態となる超高速ゲート機能を有するものである。
【0032】
上記X線イメージインテンシファイアでは、上記透過型光電面21と対応する面が接地面24とされ、上記蛍光面25と対応する面に形成されたマイクロストリップ線路22に上記ゲート制御用のゲートパルスVpulseが印加される。上記マイクロストリップ線路22は、終端抵抗22aにより終端されている。
【0033】
また、上記X線イメージインテンシファイア20Aは、上記マイクロチャンネルプレート23から出射され電子が入射され、入射された電子を可視光に変換する蛍光面25により得られるX線像の同時性を確保するために、上記透過型光電面21とマイクロチャンネルプレート23とが、上記マイクロストリップ線路22を伝搬するゲートパルスの時間遅れを補償する角度だけ、相対的に傾斜して設置されている。
【0034】
上記X線イメージインテンシファイア20Aでは、透過型光電面21に勾配を与えることにより透過型光電面21とマイクロチャンネルプレート23の入力面間で同時性の補償を行い、マイクロチャンネルプレート23自体でシャッタリングを行うことにより、数10ピコ秒まで時間分解能を向上させることができる。
【0035】
そして、このX線画像撮影装置100に備えられたX線イメージインテンシファイア20Aでは、上記透過型光電面21の入射側に第1のファイバプレート26が設けられ、上記透過型光電面21の出射側に第2のファイバプレート27が設けられている。
【0036】
上記第1及び第2のファイバプレート26、27は、非常に細いガラス管(チャンネル)を多数束ね、薄い板状にした所謂キャピラリープレートであって、各チャンネルの長手方向からずれた方向から入射されたX線はチャンネル内壁を通過することにより減衰してしまい、各チャンネルの長手方向から入射されたX線のみを通過させるコリメータとして機能する。
【0037】
上記第1のファイバプレートは、図4に示すように、上記透過型光電面21へのX線の入射方向を1方向に制限し、上記1方向からのX線のみを上記透過型光電面23に入射させるコリメータとして機能する。
【0038】
また、上記第2のファイバプレートは、図5に示すように、上記透過型光電面21から出射される電子のみを上記マイクロチャンネルプレート23に入射させるコリメータとして機能する。
【0039】
このように、上記透過型光電面21へのX線の入射方向を1方向に制限し、上記1方向からのX線のみを上記透過型光電面21に入射させるコリメータとして機能する第1のファイバプレート26を上記透過型光電面21の入射側に設けるとともに、上記透過型光電面21から出射される電子のみを上記マイクロチャンネルプレート23に入射させるコリメータとして機能する第2のファイバプレート27を上記透過型光電面21の出射側に設けることによって、上記透過型光電面21とマイクロチャンネルプレート23とを相対的に傾斜させて設置したことにより発生する上記透過型光電面21を通過したX線によるノイズイメージを蛍光面25で可視化される画像に含まないようにすることができる。
【0040】
このような構成のX線イメージインテンシファイア20Aでは、透過型光電面21に勾配を与えることにより透過型光電面21とマイクロチャンネルプレート23の入力面間で同時性の補償を行い、マイクロチャンネルプレート23自体でシャッタリングを行うことにより、数10ピコ秒まで時間分解能を向上させるとともに、蛍光面25で可視化された画像の各位置での時間情報の同時性を補償することができ、しかも、上記透過型光電面21とマイクロチャンネルプレート23とを相対的に傾斜させて設置したことにより発生する上記透過型光電面21とを通過したX線によるノイズイメージを上記蛍光面25で可視化される画像に含まないようにすることができる。
【0041】
すなわち、このX線画像撮影装置100では、入射されたX線を電子に変換する透過型光電面21と、上記透過型光電面21によりX線を変換した電子が入射され、入射された電子を倍増して出射し、ゲート制御用のゲートパルスが印加されるマイクロストリップ線路22による超高速ゲート機能を有するマイクロチャンネルプレート23と、上記マイクロチャンネルプレート23から出射された電子が入射され、入射された電子を可視光に変換する蛍光面25を有し、入射されたX線によるX線像を増強して可視光像に変換するX線イメージインテンシファイア20Aにより構成される上記X線イメージインテンシファイア部20において、上記マイクロストリップ線路22を伝搬するゲートパルスVpulseの時間遅れを補償する角度だけ、上記マイクロチャンネルプレート23と上記透過型光電面21とを相対的に傾斜させて設置し、コリメータとして機能する第1のファイバプレート26を上記透過型光電面21の入射側に設け、上記透過型光電面21へのX線の入射方向を1方向に制限して、1方向からのX線のみを上記透過型光電面21に入射させ、コリメータとして機能する第2のファイバプレート27を上記透過型光電面21の出射側に設け、上記透過型光電面21から出射される電子のみを上記マイクロチャンネルプレート23に入射させ、上記透過型光電面21を通過したX線によるノイズイメージを含むことなく、入射されたX線による同時性を確保したX線像を上記マイクロチャンネルプレート23により増強して上記蛍光面により可視光像に変換し、上記X線イメージインテンシファイア部20によりX線像を変換した可視光像を1フレームの画像60として撮像部30により撮影する。
【0042】
このX線画像撮影装置100における撮像部30は、CCDイメージセンサなどの固体撮像素子により可視光像を撮像する固体撮像装置からなる。なお、固体撮像装置に替えて、可視光に感光する光学フィルムにより可視光像を撮影する光学フィルムカメラを用いることもできる。
【0043】
また、上記X線画像撮影装置100は、X線結像系10として1個のピンホール結像系を用いて透過型光電面21上に1つの画像を結像させて撮像するシングルフレーミングカメラとしたが、例えば、図6にX線画像撮影装置200の示すように、X線結像系10として複数個のピンホール11A,11Bを設けたピンホール結像系を用い、それぞれマイクロチャンネルプレートに対して相対的に傾斜させて設置された複数個の透過型光電面21A,21B上に等価な像を配置することによって、異なる時刻の像を一度に取得するマルチフレーミングカメラを構成することにより、フレーム毎にX線像の同時性を確保し、しかも、上記透過型光電面21A,21Bを通過したX線によるノイズイメージを含まないようにすることができる。
【0044】
このX線画像撮影装置200では、複数のピンホール11A,11Bを設けたピンホール結像系を用いたX線結像系10により結像される各フレームのX線像を撮影するに当たり、コリメータとして機能する第1のファイバプレート26A,26Bを上記透過型光電面21A,21Bの入射側に設け、上記透過型光電面21A,21BへのX線の入射方向を1方向に制限して、1方向からのX線のみを上記透過型光電面に入射させ、コリメータとして機能する第2のファイバプレート27A,27Bを上記透過型光電面21A,21Bの出射側に設け、上記透過型光電面21A,21Bから出射される電子のみを上記マイクロチャンネルプレート23に入射させ、上記透過型光電面21A,21Bを通過したX線によるノイズイメージを含むことなく、入射されたX線による同時性を確保したX線像を上記マイクロチャンネルプレート23により増強して蛍光面25により可視光像に変換し、上記X線像を変換した可視光像を各フレームの画像60A,60Bとして撮像部30により撮影する。
【0045】
なお、図6に示したX線画像撮影装置200において、図1に示したX線画像撮影装置100と同一の構成要素については、同一符号を図面中に付してその詳細な説明を省略する。
【符号の説明】
【0046】
10 X線結像系、
11,11A,11B ピンホール
20 X線イメージインテンシファイア部、
20A X線イメージインテンシファイア、
21,21A,21B 透過型光電面
22 マイクロストリップ線路
23 マイクロチャンネルプレート
24 接地面
25 蛍光面
26,26A,26B 第1のファイバプレート
27,27A,27B 第2のファイバプレート
30 撮像部、
60,60A,60B 画像
100,200 X線画像撮影装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射されたX線を電子に変換する透過型光電面と、上記透過型光電面によりX線を変換した電子が入射され、入射された電子を倍増して出射し、ゲート制御用のゲートパルスが印加されるマイクロストリップ線路による超高速ゲート機能を有するマイクロチャンネルプレートと、上記マイクロチャンネルプレートから出射された電子が入射され、入射された電子を可視光に変換する蛍光面を有し、入射されたX線によるX線像を増強して可視光像に変換するX線イメージインテンシファイア部と、
上記X線イメージインテンシファイア部によりX線像を変換した可視光像を撮影する撮影部と
を備え、
上記X線イメージインテンシファイア部は、上記マイクロストリップ線路を伝搬するゲートパルスの時間遅れを補償する角度だけ、上記マイクロチャンネルプレートと上記透過型光電面とが相対的に傾斜させて設置され、上記透過型光電面へのX線の入射方向を1方向に制限し、上記1方向からのX線のみを上記透過型光電面に入射させるコリメータとして機能する第1のファイバプレートが上記透過型光電面の入射側に設けられ、上記透過型光電面から出射される電子のみを上記マイクロチャンネルプレートに入射させるコリメータとして機能する第2のファイバプレートが上記透過型光電面の出射側に設けられていることを特徴とするX線画像撮影装置。
【請求項2】
上記マイクロチャンネルプレートは、上記透過型光電面と対応する面が接地面とされ、上記蛍光面と対応する面に形成されたマイクロストリップ線路に上記ゲート制御用のゲートパルスが印加されることを特徴とする請求項1記載のX線画像撮影装置。
【請求項3】
入射されたX線を電子に変換する透過型光電面と、上記透過型光電面によりX線を変換した電子が入射され、入射された電子を倍増して出射し、ゲート制御用のゲートパルスが印加されるマイクロストリップ線路による超高速ゲート機能を有するマイクロチャンネルプレートと、上記マイクロチャンネルプレートから出射された電子が入射され、入射された電子を可視光に変換する蛍光面を有し、入射されたX線によるX線像を増強して可視光像に変換するX線イメージインテンシファイアであって、
上記マイクロストリップ線路を伝搬するゲートパルスの時間遅れを補償する角度だけ、上記マイクロチャンネルプレートと上記透過型光電面とが相対的に傾斜させて設置され、上記透過型光電面へのX線の入射方向を1方向に制限し、上記1方向からのX線のみを上記透過型光電面に入射させるコリメータとして機能する第1のファイバプレートが上記透過型光電面の入射側に設けられ、上記透過型光電面から出射される電子のみを上記マイクロチャンネルプレートに入射させるコリメータとして機能する第2のファイバプレートが上記透過型光電面の出射側に設けられていることを特徴とするX線イメージインテンシファイア。
【請求項4】
上記マイクロチャンネルプレートは、上記透過型光電面と対応する面が接地面とされ、上記蛍光面と対応する面に形成されたマイクロストリップ線路に上記ゲート制御用のゲートパルスが印加されることを特徴とする請求項3記載のX線イメージインテンシファイア。
【請求項5】
入射されたX線を電子に変換する透過型光電面と、上記透過型光電面によりX線を変換した電子が入射され、入射された電子を倍増して出射し、ゲート制御用のゲートパルスが印加されるマイクロストリップ線路による超高速ゲート機能を有するマイクロチャンネルプレートと、上記マイクロチャンネルプレートから出射された電子が入射され、入射された電子を可視光に変換する蛍光面を有し、入射されたX線によるX線像を増強して可視光像に変換するX線イメージインテンシファイアによる画像増強方法であって、
上記マイクロストリップ線路を伝搬するゲートパルスの時間遅れを補償する角度だけ、上記マイクロチャンネルプレートと上記透過型光電面とを相対的に傾斜させて設置し、
コリメータとして機能する第1のファイバプレートを上記透過型光電面の入射側に設け、上記透過型光電面へのX線の入射方向を1方向に制限して、1方向からのX線のみを上記透過型光電面に入射させ、
コリメータとして機能する第2のファイバプレートを上記透過型光電面の出射側に設け、上記透過型光電面から出射される電子のみを上記マイクロチャンネルプレートに入射させ、
上記透過型光電面を通過したX線によるノイズイメージを含むことなく、入射されたX線による同時性を確保したX線像を上記マイクロチャンネルプレートにより増強して上記蛍光面により可視光像に変換することを特徴とする画像増強方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−249213(P2011−249213A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−122802(P2010−122802)
【出願日】平成22年5月28日(2010.5.28)
【出願人】(504237050)独立行政法人国立高等専門学校機構 (656)
【Fターム(参考)】