説明

X線画像表示装置

【課題】簡易かつ高速にX線立体画像表示を可能にして被検査物の欠陥や異物を容易に発見できるようにする。
【解決手段】通過する被検査物Mに対して直交する平面内でX線光源31から拡散して被検査物Mを横断する帯状のX線を照射するX線発生器3と、被検査物Mを透過したX線を入光させて、被検査物Mの通過に伴って当該被検査物Mの透過二次元画像を得るラインセンサ4およびインターフェース回路54と、透過二次元画像の各部分につき、当該各部分をその位置情報に基づいて二次元平面上に配置するとともに、上記各部分における透過光量に応じた高さを上記二次元平面に直交する軸方向にとって透過三次元画像を得るパソコン5とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はX線画像表示装置に関し、特に、製品の内部欠陥等の発見が容易なX線画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には加熱処理前後における鋳造品の鋳巣の形状変化を検査するための鋳造内部欠陥検査支援装置(X線画像表示装置)が示されており、ここでは、X線CTスキャナで多数の断層画像群を撮影して、これら断層画像群より、鋳巣を生じた鋳造品のポリゴン表現によるX線透過三次元形状モデルを得ている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−265022
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、X線CTスキャン装置を使用する上記従来のX線画像表示装置では、装置が大掛かりで高価であるとともに、ポリゴン表現によるX線透過三次元形状モデルを得るためのデータ処理も煩雑であるという問題があった。
【0005】
そこで、本発明はこのような課題を解決するもので、煩雑なデータ処理や大掛かりな装置を必要とすることなく、簡易かつ高速にX線立体画像表示を可能にして被検査物の欠陥や異物を容易に発見できるようにしたX線画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本第1発明では、被検査物(M)に対してX線を照射するX線照射手段(3)と、被検査物(M)を透過したX線を入光させて被検査物(M)の透過二次元画像を得、透過二次元画像上の各部分について当該各部分の透過光量に応じた大きさの出力信号を生成するX線受光手段(4,54)と、透過二次元画像の前記各部分につき、当該各部分をその位置情報に基づいて二次元平面上に配置するとともに、前記各部分における出力信号の大きさに応じた高さを前記二次元平面に直交する軸方向にとって透過三次元画像を得る画像生成手段(5)とを備えている。
【0007】
本第1発明においては、透過二次元画像の各部分をその位置情報に基づいて二次元平面上に配置するとともに、各部分における出力信号の大きさに応じた高さを二次元平面に直交する軸方向にとって透過三次元画像を得るようにしているから、従来のX線CTスキャン装置を使用するのに比して煩雑なデータ処理や大掛かりな装置が不要である。したがって、簡易かつ高速なX線立体画像表示が可能であり、このX線立体画像を角度を変えて視認する等によって表示被検査物の欠陥や異物を容易に発見することができる。
【0008】
本第2発明では、前記X線照射手段(3)は、通過する前記被検査物(M)に対して直交する平面内でX線光源(31)から拡散して被検査物(M)を横断する帯状のX線を照射するものであり、前記X線受光手段(4,54)は、前記被検査物(M)を透過したX線を入光させて、被検査物(M)の通過に伴って当該被検査物(M)の透過二次元画像を得るものである。
【0009】
本第2発明においては、X線受光手段としてラインセンサカメラを具備させて、被検査物の通過に伴って逐次出力される一次元信号をメモリに蓄積して透過二次元画像を得ることができ、簡易な構成で高精度な画像を得ることができる。
【0010】
上記カッコ内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、本発明のX線画像表示装置によれば、煩雑なデータ処理や大掛かりな装置を必要とすることなく、簡易かつ高速にX線立体画像表示を可能にして被検査物の欠陥や異物を容易に発見することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】X線画像表示装置の構成を示す概略図である。
【図2】X線画像表示装置のX線照射部の斜視図である。
【図3】X線画像表示装置の制御プログラムのフローチャートである。
【図4】濃淡を反転した透過二次元画像の正面図である。
【図5】濃淡を反転した透過二次元画像の輝度ヒストグラムである。
【図6】正規化した透過二次元画像の輝度ヒストグラムである。
【図7】正規化した透過二次元画像の正面図である。
【図8】透過三次元画像の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1にはX線検査装置の全体構成を示す。図1において、コンベア等の搬送装置1によって被検査物Mが矢印で示すように図の右方へ搬送移動させられている。搬送装置1の途中にはX線を遮蔽する遮蔽ボックス2が設けられて、被検査物Mが遮蔽ボックス2内を順次通過している。遮蔽ボックス2内には上方位置にX線照射手段たるX線発生器3が設けてあり、一方、X線発生器3に対向させて遮蔽ボックス2内の下方位置にはX線受光手段としてのX線ラインセンサカメラ(以下、ラインセンサという)4が設けてある。
【0014】
X線発生器3から下方へ出力されるX線は、被検査物Mに略直交する平面内でX線光源31(図2参照)から拡散する扁平な光束Lとなって被検査物Mを横断するようにこれに照射される。そして、被検査物Mを透過したX線がラインセンサ4に入力して、ラインセンサ4から透過光量に応じた出力信号が発せられる。
【0015】
図1において、X線発生器3はコントロールユニット51とインターフェースユニット52を介してパソコン5に接続されており、パソコン5からの信号によってX線の出力タイミングや出力強度が制御される。一方、ラインセンサ4には電源アダプタ53より電源が供給されるとともに、制御線5aによってパソコン5に接続されてラインセンサ4の出力信号の取込みタイミング等が制御されている。また、データ線5bによって上記出力信号がパソコン5に送られ、パソコン5内に組み込まれたインターフェース回路54にて、被検査物Mの通過に伴いそのX線透過画像が生成されてメモリに記憶される。このX線透過画像は、被検査物Mの通過方向をX座標軸とし、当該通過方向に直交する方向すなわち被検査物Mを横断する方向をY座標軸とした二次元画像である。
【0016】
以下、パソコン5の制御プログラムによって実行される画像表示手順を、図3を参照しつつ説明する。図3のステップ101では、遮蔽ボックス2内のX線発生器3の下方を被検査物Mが通過する毎にその透過二次元画像を原画像として取り込む。ステップ102では、後処理のために原画像の濃淡を反転させる。濃淡を反転させた透過二次元画像の一例を図4に示し、ここではX線透過光量が多い部分ほど暗くなっている。
【0017】
ここで、図4に示す透過二次元画像を得た際の被検査物M上には、図3の鎖線で囲んだG領域に1.0mmφ〜3.0mmφの複数のステンレス球を直線上に間隔をおいて載せて異物としてある。しかし、この異物の存在は上記透過二次元画像からでは明確に認識できない。
【0018】
この場合、例えば図4に示すG領域を含む透過二次元画像全体の輝度ヒストグラム(図5)を図6に示すように正規化して、透過二次元画像を図7に示すように、より視認し易い明暗濃度分布とすることも考えられるが、これによっても異物の有無の確認は、背後の明暗に左右されて確実ではない。
【0019】
そこで、本実施形態では、図3のステップ103において、透過二次元画像上の各部分について、当該各部分をその位置情報に基づいてX−Y座標軸の二次元平面上に配置するとともに、上記各部分における透過光量、本実施形態では輝度レベルに応じた高さを二次元平面に直交するZ軸方向にとることによって、図8に示すような透過三次元画像を得る。なお、この透過三次元画像を得るには例えば三次元グラフィックス用のプログラムインターフェイスであるOpenGL等を使用することができる。
【0020】
図8より明らかなように、透過三次元画像におけるG領域では、ステンレス球を載せて異物とした部分が高く前方へ膨出する。そこで、これを適当に拡大・縮小したり、角度を変えて斜め方向から視認することによって、異物の存在を見落とすことなく明確にこれを認識することが可能となる。なお、この場合、hsvカラーマップ等を使用して、透過三次元画像の各部にその輝度レベルに応じた異なる着色を施すようにすれば、さらに異物の存在を確実に把握することができる。
【0021】
上記実施形態では異物の存在を確認する例について説明したが、鋳巣等の内部欠陥を確認する場合にも本発明を好適に適用することができる。この場合、原画像の濃淡を反転させている上記実施形態では、X線透過光量の多い欠陥部は、透過三次元画像では凹陥する陥没部として表示される。もちろん、濃淡を反転させることなく、欠陥部を前方へ膨出する膨出部として表示するようにしても良い。なお、上記実施形態ではラインセンサを使用して被検査物を移動させることによって透過二次元画像を得たが、エリアセンサを使用して被検査物を移動させることなく透過二次元画像を得るようにしても良い。
【符号の説明】
【0022】
1…搬送装置、3…X線発生器(X線照射手段)、4…X線ラインセンサカメラ(X線受光手段)、5…パソコン(画像生成手段)、54…インターフェース回路(X線受光手段)、M…被検査物。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検査物に対してX線を照射するX線照射手段と、被検査物を透過したX線を入光させて被検査物の透過二次元画像を得、透過二次元画像上の各部分について当該各部分の透過光量に応じた大きさの出力信号を生成するX線受光手段と、透過二次元画像の前記各部分につき、当該各部分をその位置情報に基づいて二次元平面上に配置するとともに、前記各部分における出力信号の大きさに応じた高さを前記二次元平面に直交する軸方向にとって透過三次元画像を得る画像生成手段とを備えるX線画像表示装置。
【請求項2】
前記X線照射手段は、通過する前記被検査物に対して直交する平面内でX線光源から拡散して被検査物を横断する帯状のX線を照射するものであり、前記X線受光手段は、前記被検査物を透過したX線を入光させて、被検査対象の通過に伴って当該被検査物の透過二次元画像を得るものである請求項1に記載のX線画像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図4】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−103031(P2012−103031A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−249534(P2010−249534)
【出願日】平成22年11月8日(2010.11.8)
【出願人】(591172054)株式会社明和eテック (24)
【Fターム(参考)】