説明

X線画像鮮鋭化方法及びその装置

【課題】X線画像撮像において、より明瞭な画像を得ること。
【解決手段】X線を対象物22に照射するX線源21と、この透過照射線を感受し画像化するX線撮像器13と、対象物を複数方向から撮像した画像に関する3次元位置情報やパターン情報を元にこれらを比較し、鮮鋭化画像を構成する画像処理装置14とを備えており、単に透視方向を複数にするだけでなく、複数画像の部分画像を比較することにより、明瞭なX線画像を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
近年、生産物が微細化、複雑化する中で、製造過程もしくは製造後の過程における製品の内部状態がその製品品質に影響を及ぼすことがあるため、その状態を確認することが求められる。こういった用途に、X線撮像が利用される。
【0002】
本発明は、X線による撮像方法に関する発明であり、X線画像をより明瞭に求めるための画像鮮鋭化方法に関するものである。
【背景技術】
【0003】
従来のX線画像撮像方法としては、X線の照射源であるX線源と、これに対向するX線撮像器を用い、その間に対象物を載置することによって透視画像を得る方法がある。しかし、従来の一般的なX線画像撮像方法では、照射線が撮像器に至る間の照射経路上の対象が全て透視され重ね合わされるため、本来確認したい内部断面以外の外乱要因があると、必ずしも利用するに十分な明瞭な画像が得られるわけではない。
【0004】
また、特開2002−168802号公報には、複数方向から対象物を撮像することによって、対象物をより見落とし無く検出する方法が提案されているが、従来の発明はこれらの画像を用いてより明瞭な画像を得るというものではなく、前述の問題を改善するものでもない。
【特許文献1】特開2002−168802号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来の構成では、単に複数方向から撮像し、これを個々に利用するものであって、単なる透視画像を得る方向を確率的に複数倍にしたものに過ぎず、明瞭な画像が得られるものではないという課題を有していた。
【0006】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、透視画像を得る方向を複数倍にするのみならず、これら複数画像相互の情報を元に、より明瞭な画像を得ることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明のX線画像鮮鋭化方法は、X線源からのX線を対象物に照射して透過させ、この透過照射線を感受し画像化して対象物を複数方向から撮像し、撮像した画像を基にこれらを比較し鮮鋭化画像を構成することを特徴とするものであり、単に透視方向を複数にするだけでなく、より明瞭なX線画像を得ることができる。
【0008】
また、本発明のX線画像鮮鋭化装置は、対象物を透過させるX線を対象物に照射するX線源と、前記X線の透過照射線を感受し、画像化する撮像器とを有し、前期撮像器により対象物を複数方向から撮像した画像を基にこれらを比較し、鮮鋭化画像を構成する画像処理装置を備えたものであり、より明瞭なX線画像を得ることができる。
【発明の効果】
【0009】
以上のように、本発明のX線画像鮮鋭化方法およびその装置によれば、従来のように単にX線を用いて透過画像を得たり、その照射方向を複数方向にすることで撮像し易い状態を作り出すのと比較し、より明瞭なX線画像を得ることができるため、インライン検査など産業用途に求められる機能提供が実現できるため、この分野の進展および生産性の向上に大きく寄与するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下本発明の一実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0011】
図1は、本発明の一実施の形態におけるX線画像鮮鋭化方法を実現する基本構成の概略図である。11はX線源、12は対象物、13はX線撮像器、14は撮像器の出力画像を取り込んで処理する画像処理装置である。ここでは撮像装置を2台構成として記述しているが、必ずしも2台である必要はなく、複数方向からの撮像画像が処理装置内に取り込めればよい。X線源11より照射されたX線は放射状に直進し、対象物12に一部吸収され、X線撮像器13によって画像信号として出力され、画像処理装置14に取り込まれることによって画像化される。X線は、対象物の原子量や、厚みが大きいほどより吸収されるため、金属異物などが対象面内に存在すると、これによってより吸収され、例えば黒く撮像される。
【0012】
図2はこの撮像画像イメージを示す概略正面図であり、図2により本発明の原理を説明する。21はX線源、22は対象物、23と24はX線撮像器であり、ここではラインセンサを用いるものとして説明する。25は、X線撮像器23による撮像画像イメージ、26はX線撮像器24による撮像画像イメージである。また27は撮像画像イメージ25と撮像画像イメージ26を合成した画像イメージである。
【0013】
ここで示すX線撮像器23、24は1次元のラインセンサであり、対象物もしくは撮像系を、その撮像素子配列方向と直交する方向へ相対的に移動しながら撮像することによって、2次元画像情報を得るものである。X線源21は、その焦点から放射状にX線を照射するため、図2に示す2台のX線撮像器23、24へ照射される画像化に有効なX線は、X線撮像器23に対してX線28が、X線撮像器24に対してX線29が有効となる。
【0014】
対象物22の表面(1)及び内部(2)の内、内部(2)をより明瞭化すると仮定する。ここで、図中(1)、(2)各層の右端にそれぞれ対象物が存在するものとする。(2)は撮像目的とする対象であるが、(1)はこれを阻害する外乱要素である。
【0015】
また、対象物が矢印の方向に図中右から左へ移動しながら、X線撮像器23、24に撮像されるものとすると、表面(1)上の対象物は、まずX線撮像器24により(a‘)の位置で撮像され、内部(2)の対象物は(a)の位置で撮像されるため、これらが同一照射経路上で重なり合っていると、表面(1)上の対象物が外乱要因となり、本来撮像したい内部(2)の対象物が明瞭に撮像できなくなる。次に、同様に対象物を左へ移動しながら撮像を繰り返すと、表面(1)上の対象物は、X線撮像器23により(b‘)の位置で撮像され、内部(2)の対象物は(b)の位置で撮像される。このような位置関係にあると、同一経路上に外乱要因となる表面上の対象物が無いため、内部(2)の対象物を明瞭に撮像することが可能となる。
【0016】
25及び26は双方のX線撮像器23、24にて撮像された画像がである。図中に示す視差の分、同一物が出現する位置が双方の画像間で異なるため、この間隔を考慮して同一箇所を決定し、双方の画像(画素)濃度を比較する。
【0017】
この図で判るとおり、目的とする内部(2)の対象物は、右側撮像時よりも左側撮像時により明瞭に撮像されうることが判る。このように、予め各層にどのような対象物があり、どのような外乱要因があるかが判っていれば、予めいずれの方向で得られた部分画像を有効とするかを決めておくことが出来る。また、予め予測できない外乱要因があったとしても、本来の撮像画像濃度に近い部分画像を採択することができる。
【0018】
この方法を全画面に対して適用することにより、より適切な部分画像(画素)を用いて画像を再構成することによって、より適切な明瞭化された画像を得ることが出来る。
【0019】
以上のような構成及び方法によって、特定層の対象物をより明瞭化したX線画像を得ることが出来るため、これを利用してインライン検査など産業用途に求められる機能提供が実現できる。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明のX線画像鮮鋭化方法およびその装置は、明瞭なX線画像を得ることができるため、インライン検査など産業用途に求められる機能提供が実現でき、この分野の進展および生産性の向上に大きく寄与するものである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態におけるX線画像鮮鋭化方法およびその装置を説明する概略図
【図2】撮像画像イメージを示す概略正面図
【符号の説明】
【0022】
11 X線源
12 対象物
13 X線撮像器
14 画像処理装置
21 X線源
22 対象物
23 X線撮像器
24 X線撮像器
25 X線撮像器23による撮像画像イメージ
26 X線撮像器24による撮像画像イメージ
27 撮像画像イメージ25及び26を合成した画像イメージ
28 X線ラインセンサ23に対して照射される画像化に有効なX線
29 X線ラインセンサ24に対して照射される画像化に有効なX線





【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線源からのX線を対象物に照射して透過させ、この透過照射線を感受し画像化して対象物を複数方向から撮像し、撮像した画像を基にこれらを比較し鮮鋭化画像を構成することを特徴とするX線画像鮮鋭化方法。
【請求項2】
対象物の複数方向からの撮像を2台の撮像器を用いて行う請求項1記載のX線画像鮮鋭化方法。
【請求項3】
対象物を透過させるX線を対象物に照射するX線源と、前記X線の透過照射線を感受し、画像化する撮像器とを有し、前期撮像器により対象物を複数方向から撮像した画像を基にこれらを比較し、鮮鋭化画像を構成する画像処理装置を備えたX線画像鮮鋭化装置。
【請求項4】
対象物の撮像を複数方向から行う2台の撮像器を備えた請求項1記載のX線画像鮮鋭化装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−145448(P2006−145448A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−338419(P2004−338419)
【出願日】平成16年11月24日(2004.11.24)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】