説明

X線異物検出機

【課題】被検査物を検査し、検出された異物が危険度の高い注意異物であることを判別する機能を有するX線異物検出機を提供する。
【解決手段】被検査物に照射するX線を発生するX線発生器と、被検査物を透過したX線を電気信号に変換するX線検出器と、X線検出器の出力する電気信号に基づいて画像処理を行う画像処理装置とを備える。画像処理装置は、電気信号により、X線透過画像を形成する透過画像形成部と、形成されたX線透過画像を画像処理して、異物画像を形成し、異物の有無を検出する異物検出部と、形成された異物画像を画像処理して、注意異物を検出する注意異物検出部と、注意異物検出部の検出結果に基づいて、注意異物の有無を判定する注意異物判定部とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線異物検出機、特に異物の中で危険性の高い注意異物を検出できるX線異物検出機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、生肉,魚などの生鮮食品、パンなどの加工食品,医薬品,工業製品などの物品、あるいは物品を包装したパッケージ内に混入された異物(金属,ガラス,プラスチック,石,骨など)を検出できるX線異物検出機がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
物品に異物が混入される可能性は、何らかの理由で材料自体に初めから混入している場合、加工,製造,包装などの工程中に悪意をもって意図的に物品に混入される場合、加工,製造,包装などの工程中にライン設備の一部が脱落して物品に混入される場合など、種々の原因が考えられる。
【0004】
食品あるいは医薬品に混入した異物が、例えば、金属片,ガラス砕片,針,針金などであれば人体にとってきわめて危険であり、人体への危険性の度合い(以下、危険性の度合いを危険度という)は高い。
【0005】
異物が、例えば、微細な骨片,微細なプラスチック片,小さな石であれば、人体への危険度は低いかもしれない。
【0006】
工業製品によっては、例えばパッケージ内に混入された異物が、ライン設備から脱落したボルト,ナット,ワッシャなどの大きなものは危険度が高いが、小さのものは危険度が低いかもしれない。
【0007】
このように物品あるいは物品を包装したパッケージ中に混入した異物の危険度は、製造メーカの判断に依存するところが大きい。例えば、金属異物は危険度が高い、大きな異物は危険度が高い、針,針金などの線状異物は危険度が高いとするかもしれない。
【0008】
もし、危険度の高い異物(このような異物は注意を要するという意味で、以下、注意異物という)が混入した物品あるいはパッケージが検出された場合には、ラインを停止して異物混入の原因を調査しなければならない事態が生じたり、あるいは注意異物が混入した物品が誤って出荷された場合には、生産者,消費者などに与える影響は、計り知れないものがある。
【0009】
したがって、特に製造ライン中に設置でき、ベルトコンベアなどで搬送されてくる物品あるいは物品を包装したパッケージを検査して異物を検出し、検出された異物の中から注意異物を判別できるX線異物検出機の出現が待ち望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2002−139458号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、製品あるいは製品を包装したパッケージ(以下、被検査物という)を検査して異物を検出し、検出された異物の中から危険度の高い注意異物を判別する機能を有するX線異物検出機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のX線異物検出機は、被検査物が異物および注意異物であるか否かを判別するために、X線検出器の出力する電気信号に基づいてX線透過画像を作成し、画像処理して異物と注意異物とを検出している。何を異物および注意異物とするかはX線異物検出機のユーザが決めることである。
【0013】
本発明によれば、注意異物の検出にあたっては、特に金属のようにX線の吸収量が高い異物、大きい異物、針,針金などの線状異物を検出できるようにしている。
【0014】
このため、注意異物の検出の基準として、次の4つの基準を採用している。なお、以下に示すX線透過画像の濃度は、被検査物に吸収されたX線の度合いを表し、被検査物のX線吸収率αと被検査物の厚みtとの積により定められる。
【0015】
(1)異物画素の濃度
X線透過画像中に濃度の高い異物画素が存在する場合には、注意異物が混入されている可能性がある。特に、食品に混入した金属は極めて危険である。金属は、ガラス,プラスチックよりもX線吸収率が大きいので、画素濃度が高くなる。
【0016】
したがって、金属を注意異物とみなすユーザにとって、金属を確実に検出したい場合には、画素濃度を検出基準にするのが有効である。
【0017】
(2)異物画素の画素数
X線透過画像中で所定の濃度レベル(閾値)を超える異物画素であって、隣接する、すなわち連続する複数の異物画素の占める領域が大きい場合には、大きい異物であるとみなすことができる。ここで、「大きい」とは、X線の透過方向に見て、大きいということである。X線が照射される被検査物の配置状況にもよるが、X線の透過方向に見て領域が大きいということは、大きい異物である可能性が高い。
【0018】
したがって、大きい異物を注意異物とみなすユーザにとっては、異物画素の画素数を検出基準にするのが有効である。
【0019】
(3)異物画素濃度の累積値
上述したように、被検査物の配置状況によっては、大きい異物であるにも拘わらず、所定の濃度レベルを超える異物画素数は少ないことがありうる。例えば、硬貨(コイン)が、X線の透過方向に並行に位置するような場合、X線透過画像は細長い画像となり、異物画素数を算出しただけでは、大きい異物であることが検出されない。
【0020】
しかし、X線透過画像の濃度分布に着目した場合、画像の中央部分は濃度が高く、画像の端部分にいくに従って濃度は低くなる。このことは、被検査物の中央部分は厚みが大きく、被検査物の端部分にいくに従って厚みが小さくなっていることを示している。
【0021】
このような場合、連続する複数の異物画素の各濃度を累積した画素濃度累積値は大きくなる。このことは、被検査物が厚みを持つので大きい異物であると推定できる。
【0022】
したがって、大きい異物を確実に検出したい場合には、上記の異物画素の画素数に加えて、異物画素の画素濃度累積値を検出基準にするのが有効である。
【0023】
(4)線状異物
針,針金などの線状異物は、食品などに対しては極めて危険度の高い異物である。X線透過画像から、異物が線状異物であることを検出すれば、注意異物を特定できる。したがって、線状異物であるか否かを検出基準にするのが有効である。
【0024】
本発明のX線異物検出機は、このような4つの検出基準(1)〜(4)のうち少なくとも一つを用いて構成できる。
【0025】
本発明は、以上のような考え方に基づいてなされたものである。したがって、本発明は、被検査物に混入された異物の中から注意異物を検出するX線異物検出機であって、被検査物に照射するX線を発生するX線発生器と、被検査物を透過したX線を電気信号に変換するX線検出器と、X線検出器の出力する電気信号に基づいて画像処理を行う画像処理装置とを備え、画像処理装置は、電気信号によりX線透過画像を形成する透過画像形成部と、形成されたX線透過画像を画像処理して、異物の有無を検出する異物検出部と、形成されたX線透過画像を画像処理して、注意異物を検出する注意異物検出部と、注意異物検出部の検出結果に基づいて、注意異物の有無を判定する注意異物判定部とを有し、注意異物検出部では、異物画素の濃度,異物画素の画素数,異物画素の濃度の累積値,および線状異物のうちの少なくとも一つに基づいて注意異物を検出することを特徴とする。
【0026】
本発明のX線異物検出機によれば、異物検出部が検出する異物の有無結果と、意異物判定部が判定する注意異物の有無結果とを出力する出力部を有し、出力部は注意異物があったときに警報を出力するように構成するのが好適である。
【0027】
また、異物検出部は、X線透過画像から所定濃度レベル以上の異物画素を抽出して異物画像を形成して異物の有無を検出し、注意異物検出部は、異物画像を画像処理して、所定濃度レベルより大きい注意濃度レベル以上の画素を抽出し、注意濃度レベル以上の画素がある場合に注意異物として検出する画素濃度検出部を含み、注意異物判定部は、画素濃度検出部が注意異物を検出したときに注意異物が有ると判定するように構成するのが好適である。
また、画像処理装置は、異物画像を画像処理して、連続する所定濃度レベル以上の複数の画素の個数を算出する画素数算出部をさらに有し、注意異物検出部は、画素数算出部で算出された画素の個数が所定個数以上である場合に、注意異物として検出する画素数検出部をさらに含み、注意異物判定部は、画素濃度検出部および画素数検出部の少なくともいずれかが、注意異物を検出したときに注意異物が有ると判定するように構成するのが好適である。
また、画像処理装置は、異物画像を画像処理して、連続する複数の画素の各濃度を累積する画素濃度累積部をさらに有し、注意異物検出部は、画素濃度累積部で得られた濃度累積値が、所定値以上である場合に注意異物として検出する画素濃度累積値検出部をさらに含み、注意異物判定部は、画素濃度検出部,画素数検出部,および画素濃度累積値検出部の少なくともいずれかが、注意異物を検出したときに注意異物が有ると判定するように構成するのが好適である。
【0028】
また、注意異物検出部は、異物画像を画像処理して、線状異物を検出する線状異物検出部をさらに有し、注意異物判定部は、画素濃度検出部,画素数検出部,画素濃度累積値検出部,および線状異物検出部の少なくともいずれかが、注意異物を検出したときに注意異物が有ると判定するように構成するのが好適である。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、被検査物を検査し、被検査物に混入した異物の中から注意異物を検出することができるX線異物検出機を提供できる。
【0030】
このようなX線異物検出機を製造ライン中に設置し、ベルトコンベアなどで搬送されてくる被検査物を検出することにより、異物が混入した製品を製造ラインの系外に排除するとともに、注意異物が混入した物品あるいはパッケージが有れば、ラインを停止して原因を調査できるし、あるいは注意異物が混入した物品あるいはパッケージの出荷を防止することができるので、消費者,生産者などへの重大な影響を避けることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明のX線異物検出機の一実施の形態の基本構成を示す図である。
【図2】図1の画像処理装置の機能ブロック図である。
【図3】X線透過画像を示す図である。
【図4】フィルタ処理されたX線透過画像を示す図である。
【図5】異物画像を示す図である。
【図6】図5(a)の異物を拡大した図である。
【図7】図6の異物画像の各画素の濃度階調を示す図である。
【図8】注意異物の画像を示す図である。
【図9】線状異物の画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明に係わるX線異物検出機の一実施の形態を説明する。
【0033】
(X線異物検出機の基本構成)
図1に示すように、X線異物検出機は、X線発生器10と、X線検出器12と、画像処理装置14とを備えている。X線発生器10は、製造ラインにおいて被検査物16を搬送してくるベルトコンベア18の上方に配置され、X線検出器12はベルトコンベア18の下方であって、X線発生器10に対応した位置に配置される。
【0034】
X線発生器10は、例えば、金属製の箱体内部に設けられる円筒状のX線管が絶縁油により浸漬されており、X線管の陰極からの電子ビームを陽極ターゲットに照射させてX線を生成するようになっている。生成されるX線の線量は、X線管に流す電流により調整される。
【0035】
X線管は、その長手方向が製品の搬送方向(X方向)と直交する幅方向(Y方向)に設けられている。X線管により生成されたX線20は、スリットにより、搬送方向と直交する方向に略三角形状のスクリーン状にして下方のX線検出器12に向けて、照射される。
【0036】
他方、X線検出器12は、例えば、ライン状に配列された複数のフォトダイオードと、フォトダイオード上に設けられたシンチレータとを備えたアレイ状のラインセンサが用いられる。シンチレータはX線のエネルギーを吸収し光に変換する。シンチレータで変換された光は、フォトダイオードで濃度を表す電気信号に変換される。
【0037】
X線検出器12は、被検査物16に対して照射され透過したX線を受けて、濃度を表す電気信号を出力する。電気信号は、図2に示すように、A/D変換器22でデジタル濃度信号に変換される。8ビットの場合、このデジタル濃度信号は、256階調の濃度を表示する。A/D変換器22は、図示しないが、X線検出器12に内蔵させても良いし、あるいは画像処理装置14に内蔵させても良い。
【0038】
画像処理装置14は、濃度を表すデジタル信号から被検査物に吸収されたX線の度合いを表す濃度階調のX線透過画像を作成し、このX線透過画像を画像処理して、異物および注意異物の検出を行う機能を基本的に有している。
【0039】
(画像処理装置14の構成)
画像処理装置14は、図2に示すように、入力部24、出力部26、画像処理部28を有するパーソナルコンピュータで構成する。
【0040】
入力部24は、画像処理部28への指示を入力するものであり、例えばキーボードで構成される。
【0041】
出力部26は、画像処理部28の出力に基づいて、異物の有無および注意異物の有無を表示させたり、NG信号を外部に出力させたり、警報を出力する等の機能を有している。
【0042】
画像処理部28は、パーソナルコンピュータの中央演算処理部であり、ソフトウエアにより、各種処理を実行する。機能的には、図2に示すように、記憶部30と、X線透過画像形成部32と、フィルタ処理部34と、異物検出部36と、画素数算出部38と、画素濃度累積部40と、注意異物検出部42と、注意異物判定部44とで構成される。
【0043】
記憶部30は、変換された濃度信号を格納する。例えば、RAMで構成される。
【0044】
X線透過画像形成部32は、記憶部30から濃度信号を読み出し、X線透過画像を形成する。
【0045】
X線透過画像は、例えば480ライン(X方向)、1ライン上640個の画素で構成される。したがって、X線透過画像は、640×480画素より成る。1画素の濃度は、256階調(0:白、255:黒)の濃淡で表される。
【0046】
フィルタ処理部34は、X線透過画像をフィルタ処理して、異物のみ抽出する。このような前処理を施すことによって、後処理での異物検出の精度を高めることができる。
【0047】
異物検出部36は、フィルタ処理されたX線透過画像から所定濃度レベル(閾値)以上の異物画素を抽出し、異物画像を形成し、異物が抽出されたか否かによって異物の有無を検出する。
【0048】
所定濃度レベルは、形成された異物画像中に、検出したい注意異物が含まれるように設定される。何を注意異物とするかは、X線異物検出機を使用するユーザが決めることであるから、所定濃度レベルはユーザによって決定される。
【0049】
例えば、異物画像が低濃度であっても、異物画素数の大きなもの、すなわち大きい異物を注意異物として検出したい場合には、例えば金属もガラスもプラスチックも異物として検出できるように、所定濃度レベルを低く設定することになる。
【0050】
画素数算出部38は、異物画像を画像処理して、連続する画素の個数(異物画素数)を算出する。例えば、異物画像に対しラべリング処理を行い、連続する画素の塊ごとに画素の個数を算出する。
【0051】
画素濃度累積部40は、異物画像を画像処理して、連続する画素の各濃度を累積し、画素濃度累積値を算出する。例えば、異物画像に対しラべリング処理を行い、連続する画素の塊ごとに画素の濃度を累積して算出する。
【0052】
注意異物検出部42は、次の4つの検出部、すなわち画素濃度検出部46と、画素数検出部48と、画素濃度累積値検出部50と、線状異物検出部52とを有している。各検出部は、形成された異物画像から、それぞれ、異物画素濃度,異物画素数,異物画素濃度累積値,線状異物の検出基準に基づいて、注意異物を検出する。検出結果は、注意異物判定部44に送られる。
【0053】
画素濃度検出部46は、異物検出部36から入力される異物画像を画像処理して、所定濃度レベルより大きな値である注意濃度レベル(閾値)以上の画素を検出する。注意濃度レベル以上の画素を検出したら、注意異物有りとする。例えば、異物画像を注意濃度レベルで2値化して注意異物を検出し、2値化画像とX線透過画像から注意異物の画像を得る。なお、異物の画素濃度のみ着目するので、フィルタ処理後のX線透過画像から直接に、注意異物を検出しても良い。
【0054】
画素数検出部48は、画素数算出部38で算出された画素数が、所定個数(閾値)以上であるかを検出する。所定個数以上の画素数を検出したら、注意異物有りとする。
【0055】
画素濃度累積値検出部50は、画素濃度累積部40で累積された画素濃度累積値が、所定値(閾値)以上であるかを検出する。所定値以上の濃度累積値を検出したら、注意異物有りとする。
【0056】
線状異物検出部52は、異物検出部36から出力される異物画像を画像処理して、線状異物を検出する。線状異物を検出したら、注意異物有りとする。
【0057】
線状異物の検出方法の一例は、異物画像において、連続する画素の個数を算出した画素数と、連続する画素で構成される領域の周囲長とを求め、周囲長を画素数で除算した値が、所定値より大きければ、針,針金などの注意異物とする。
【0058】
線状異物の検出方法は、これに限るものではなく、異物画像に線状異物用フィルタを用いて画像処理する方法など、いかなる方法であっても良い。
【0059】
注意異物判定部44は、画素濃度検出部46,画素数検出部48,画素濃度累積値検出部50,線状異物検出部52のうちの少なくとも一つの検出部が、注意異物有りとの検出結果を出力すれば、注意異物有りと判定し、すべての検出部が注意異物無しと検出結果を出力すれば、注意異物無しと判定する。
【0060】
(X線異物検出機の動作)
X線異物検出機の動作を、図1〜図9を参照しながら説明する。X線異物検出機の動作開始時に、ユーザにより、異物検出部36および注意異物検出部42に、入力部24から各閾値を入力し、設定しておくものとする。
【0061】
図1において、ベルトコンベア18で搬送されてくる被検査物16に、X線発生器10からX線を照射し、被検査物16を透過したX線をX線検出器12で受ける。
【0062】
X線検出器12は、X線を電気信号に変換して出力する。電気信号は、A/D変換器22でデジタル濃度信号に変換され、X線透過画像形成部32に送られる。
【0063】
X線透過画像形成部32は、X線透過画像を形成する。図3(a)に、形成されたX線透過画像の一例を示す。X線透過画像は、640×480画素より成り、1画素の濃度は、256階調(0:白、255:黒)の濃淡で表される。このX線透過画像には、パッケージと、パッケージ内に混入された2個の異物とが映し出されている。図3(b)に、Y方向の1ライン上の濃度分布を示す。図示のように、2個の異物には濃淡の差があるものとする。このようなX線透過画像は、フィルタ処理部34に送られる。
【0064】
フィルタ処理部34は、X線透過画像をフィルタ処理して、異物のみ抽出する。フィルタ処理されたX線透過画像を、図4(a)に示す。図4(b)に、Y方向の1ライン上の濃度分布を示す。パッケージは写し出されず、2個の異物のみが写し出されている。フィルタ処理されたX線透過画像は、異物検出部36に送られる。
【0065】
異物検出部36は、フィルタ処理されたX線透過画像から所定濃度レベル(閾値)以上の画素を抽出し、異物画像を形成し、異物が抽出されたか否かによって異物の有無を検出する。形成された異物画像を図5(a)に示す。図5(b)に、Y方向の1ライン上の濃度分布を示す。閾値レベル以上の1個の異物のみ、写し出されている。異物画像は、画素数算出部38および画素濃度累積部40に送られる。他方、画素濃度検出部46および線状異物検出部52にも送られる。また、異物の検出結果は、出力部26に送られる。
【0066】
画素数算出部38は、異物画像を画像処理して、連続する画素の個数を算出する。図6は、図5(a)の異物を拡大した図である。1個の升目が1個の画素を表している。異物は1個の塊として表示されるので、連続する画素の個数を算出する。算出された画素数すなわち異物画素数は、画素数検出部48に送られる。
【0067】
一方、画素濃度累積部40は、異物画像を画像処理して、連続する画素の各濃度を累積し、画素濃度累積値を算出する。図7は図6と同様の図であるが、各画素の濃度階調を数字で表示している。このような異物画像の各画素の濃度を累積して、画素濃度累積値を算出する。算出された画素濃度累積値は、画素濃度累積値検出部50に送られる。
【0068】
次に、注意異物検出部42を構成する各検出部の動作を説明する。
【0069】
画素濃度検出部46は、図5(a)の異物画像が入力されると、異物画像を画像処理して、所定濃度レベルより大きい注意濃度レベル(閾値)以上の画素を検出する。注意濃度レベル以上の画素を検出したら、注意異物とする。このような注意異物は、金属であることが多い。図8(a)は、注意異物の画像を示し、図8(b)は、Y方向の1ライン上の濃度分布を示している。検出結果は、注意異物判定部44に送られる。
【0070】
画素数検出部48は、画素数算出部38から入力された画素数が、所定個数(閾値)以上であるかを検出する。所定個数以上の画素数を検出したら、大きな異物であるとし、注意異物とする。検出結果は、注意異物判定部44に送られる。
【0071】
画素濃度累積値検出部48は、入力された画素濃度累積値が、所定値(閾値)以上であるかを検出する。所定値以上の濃度累積値を検出したら、大きな異物であるとみなし、注意異物とする。検出結果は、注意異物判定部44に送られる。
【0072】
線状異物検出部52は、異物検出部36から入力された異物画像を画像処理して、線状異物を検出する。図9に、線状異物の画像の一例を示す。
【0073】
線状異物の検出方法の一例として、異物画像において、連続する画素の個数を算出した画素数と、連続する画素で構成される領域の周囲長とを求め、周囲長を画素数で除算した値が、所定値より大きければ、針,針金などの注意異物とする。検出結果は、注意異物判定部44に送られる。
【0074】
注意異物判定部44は、画素濃度検出部46,画素数検出部48,画素濃度累積値検出部50,線状異物検出部52からの注意異物の検出結果を参照し、少なくとも一つの検出部が、注意異物有りとの検出結果を出力すれば、注意異物有りと判定し、すべての検出部が注意異物無しと検出結果を出力すれば、注意異物無しと判定する。判定結果は、出力部26に送られる。
【0075】
出力部26は、異物の有無および注意異物の有無を表示する。このとき、注意異物と判定された理由、すなわち注意異物が画素濃度により金属の可能性があるのか、注意異物が画素数あるいは画素濃度累積値により大きな異物であるのか、注意異物が線状異物であるのかの情報を同時に表示することもできる。
【0076】
また、出力部26は、異物および注意異物が含まれる物品を排除するための異物NG信号と注意異物NG信号とを外部に出力するようになっている。これにより、異物が混入した物品と注意異物が混入した物品を製造ラインの系外に置かれる別々のNGボックスへ排除することができる。さらに、動作開始時のユーザによる入力部24からの設定によって、注意異物が有ったことを外部に知らせるための警報の出力や、ベルトコンベアの停止をすることができるようになっている。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明のX線異物検出機を、製造ライン中に設置し、ベルトコンベアなどで搬送されてくる加工食品,医薬品,工業製品などの物品、あるいは物品を包装したパッケージ内に注意異物が含まれているか否かを検出することに利用できる。
【符号の説明】
【0078】
10 X線発生器
12 X線検出器
14 画像処理装置
16 被検査物
18 ベルトコンベア
24 入力部
26 出力部
28 画像処理部
30 記憶部
32 X線透過画像形成部
34 フィルタ処理部
36 異物検出部
38 画素数算出部
40 画素濃度累積部
42 注意異物検出部
44 注意異物判定部
46 画素濃度検出部
48 画素数検出部
50 画素濃度累積値検出部
52 線状異物検出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検査物に混入された異物の中から注意異物を検出するX線異物検出機であって、
被検査物に照射するX線を発生するX線発生器と、
前記被検査物を透過したX線を電気信号に変換するX線検出器と、
前記X線検出器の出力する電気信号に基づいて画像処理を行う画像処理装置とを備え、
前記画像処理装置は、
前記電気信号によりX線透過画像を形成する透過画像形成部と、
形成されたX線透過画像を画像処理して、異物の有無を検出する異物検出部と、
形成されたX線透過画像を画像処理して、注意異物を検出する注意異物検出部と、
前記注意異物検出部の検出結果に基づいて、注意異物の有無を判定する注意異物判定部とを有し、
前記注意異物検出部では、異物画素の濃度,異物画素の画素数,異物画素の濃度の累積値,および線状異物のうちの少なくとも一つに基づいて注意異物を検出する、X線異物検出機。
【請求項2】
前記異物検出部が検出する異物の有無結果と、前記注意異物判定部が判定する注意異物の有無結果とを出力する出力部を有し、前記出力部は注意異物があったときに警報を出力する請求項1に記載のX線異物検出機。
【請求項3】
前記異物検出部は、前記X線透過画像から所定濃度レベル以上の異物画素を抽出して異物画像を形成して異物の有無を検出し、
前記注意異物検出部は、前記異物画像を画像処理して、前記所定濃度レベルより大きい注意濃度レベル以上の画素を抽出し、注意濃度レベル以上の画素がある場合に注意異物として検出する画素濃度検出部を含み、
前記注意異物判定部は、前記画素濃度検出部が注意異物を検出したときに注意異物が有ると判定する、請求項1または2に記載のX線異物検出機。
【請求項4】
前記画像処理装置は、前記異物画像を画像処理して、連続する前記所定濃度レベル以上の複数の画素の個数を算出する画素数算出部をさらに有し、
前記注意異物検出部は、前記画素数算出部で算出された画素の個数が所定個数以上である場合に、注意異物として検出する画素数検出部をさらに含み、
前記注意異物判定部は、前記画素濃度検出部および前記画素数検出部の少なくともいずれかが、注意異物を検出したときに注意異物が有ると判定する、請求項3に記載のX線異物検出機。
【請求項5】
前記画像処理装置は、前記異物画像を画像処理して、連続する複数の画素の各濃度を累積する画素濃度累積部をさらに有し、
前記注意異物検出部は、前記画素濃度累積部で得られた濃度累積値が、所定値以上である場合に注意異物として検出する画素濃度累積値検出部をさらに含み、
前記注意異物判定部は、前記画素濃度検出部,前記画素数検出部,および前記画素濃度累積値検出部の少なくともいずれかが、注意異物を検出したときに注意異物が有ると判定する、請求項4に記載のX線異物検出機。
【請求項6】
前記注意異物検出部は、前記異物画像を画像処理して、線状異物を検出する線状異物検出部をさらに有し、
前記注意異物判定部は、前記画素濃度検出部,前記画素数検出部,前記画素濃度累積値検出部,および線状異物検出部の少なくともいずれかが、注意異物を検出したときに注意異物が有ると判定する、請求項5に記載のX線異物検出機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate