説明

X線異物検出装置

【課題】X線検出領域を挟んで搬送方向の上流側と下流側に搬送コンベア分割されている場合でも、上流側コンベアと下流側コンベアとの隙間から落下する被検査物からの落下物がX線検出領域内に侵入しないX線異物検出装置を提供する。
【解決手段】被検査物Wを所定の搬送方向Yに搬送する搬送コンベア8と、搬送コンベア8により搬送される被検査物WにX線を照射するX線発生部21と、被検査物Wを透過したX線を検出するX線検出部22とを備え、搬送コンベア8がX線検出領域Aを挟んで搬送方向Yの上流側(上流側コンベア8a)と下流側(下流側コンベア8b)とに分割されたX線異物検出装置1において、X線発生部21によるX線照射中はX線検出領域A内に被検査物Wからの落下物Dが侵入しないように、X線検出領域Aに向けて常にエアーを吹き付けるエアー吹付け手段31を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送手段により搬送される被検査物にX線照射手段からX線を照射し、X線検出手段にて被検査物を透過したX線を検出して被検査物に混入している異物を検出するX線異物検出装置に係り、特に、搬送手段が、X線検出手段のX線検出領域を挟んで搬送方向の上流側と下流側とに分割されている場合でも、上流側の搬送手段と下流側の搬送手段との隙間から落下する被検査物からの落下物がX線検出領域内に侵入しないように構成したX線異物検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、下記特許文献1に開示されるX線異物検出装置は、図4に示すように、被検査物Wを搬送する搬送コンベア102と、被検査物Wから異物を検出する異物検出部105とを備えている。搬送コンベア102は、搬送ベルト103と、搬送ローラ104と、図示しない駆動モータとからなり、搬入口R1から搬入された被検査物Wを所定の搬送方向Yに搬送し、搬出口R2から搬出するように構成されている。
【0003】
異物検出部105は、装置上部(搬送コンベア102の上方)に設けられたX線発生部106と、装置中部(搬送コンベア102の下方)に設けられたX線検出部108とからなる。X線発生部106の下面には、X線検出部108に向けて略円錘状にX線を照射するX線照射口が設けられている。X線発生部106は、このX線発生部106の支持板107に設けられた長孔(スリット)を介して略三角形のスクリーン状のX線を照射するように構成されている。また、X線検出部108は、搬送ベルト103の裏面側のスペースに配置された金属箱110内に設けられており、搬送ベルト103の裏面が金属箱110の上面に摺接するように構成されている。
【0004】
上述したX線異物検出装置101は、搬送ベルト103上の被検査物WがX線発生部106からのスクリーン状のX線を通過するときにこの被検査物Wを透過したX線をX線検出部108により検出することで異物が混入しているか否かを検査する。また、このとき、X線検出部108におけるX線が入射されるX線入射面109の直上領域はX線検出領域となる。
【0005】
ところで、X線異物検出装置101では、被検査物Wの搬送中に被検査物Wからの落下物が搬送ベルト103の表面に付着することがあった。このような落下物は、搬送ベルト103と共に循環して後続する被検査物と共にX線検出領域を通過することがあり、この結果、誤検出が発生することがあった。
【0006】
また、図5に示すように、搬送ベルト203に付着した落下物DがX線検出領域A内に侵入しないように、搬送コンベア202がX線検出領域Aを挟んで搬送方向Yの上流側と下流側とに分割されたX線異物検出装置201がある。X線異物検出装置201では、搬送コンベア202が上流側コンベア202aと、下流側コンベア202bとから構成されており、各コンベア202a,202bのそれぞれの搬送ベルト203a,203bに付着した落下物Dは搬送方向Yの上流側と下流側で循環するようになり、X線検出領域A内に侵入することがないため、付着による誤検出の発生は抑えられた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−311699号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述したX線異物検出装置201では、被検査物Wからの落下物Dが搬送ベルト203に完全に付着している場合は落下物DがX線検出領域Aに侵入することを抑えることができるが、被検査物Wからの落下物が粉体などのように搬送ベルト203に付着しない又はしばらくは付着しているが時間の経過などにより付着しなくなった場合は、特に上流側コンベア202aの搬送ベルト203a上の落下物が上流側コンベア202aと下流側コンベア202bの隙間から落下し、その下方に配置されているX線検出部204のX線検出領域A内に侵入して誤検出が発生する。さらに、落下物がX線入射面205上に堆積してしまい、検出不可能となる。
【0009】
また、上流側コンベア202aの搬送ベルト203a上から落下する落下物は、落下中にX線検出領域Aに瞬間的に侵入することがある。このように落下物が瞬間的に侵入するときでも、被検査物Wの検出タイミングと合致すれば上記同様に誤検出が発生する。
【0010】
なお、被検査物からの落下物が粉体の場合とは、例えば、被検査物が小麦粉などの粉体が充填された袋体であり、X線異物検出装置の前段に設けられた充填装置などで袋に粉体を充填するときに袋の外側に粉体が堆積し、この堆積した粉体が落下する場合などが考えられる。
【0011】
そこで本発明は、上記状況に鑑みてなされたものであり、搬送手段がX線検出領域を挟んで搬送方向の上流側と下流側とに分割されている場合でも、上流側の搬送手段と下流側の搬送手段の隙間から落下する被検査物からの落下物がX線検出領域内に侵入することを防止して誤検出が発生しないX線異物検出装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
次に、上記の課題を解決するための手段を、実施の形態に対応する図面を参照して説明する。
本発明に係る請求項1記載のX線異物検出装置は、被検査物Wを所定の搬送方向Yに搬送する搬送手段8と、
前記搬送手段8により搬送される前記被検査物WにX線を照射するX線照射手段21と、
前記被検査物Wを透過した前記X線を検出するX線検出手段22とを備え、前記搬送手段8が前記X線検出手段22のX線検出領域Aを挟んで前記搬送方向Yの上流側と下流側とに分割されたX線異物検出装置1において、
前記X線照射手段21によるX線照射中は該X線照射手段21と前記X線検出手段22の間に形成される前記X線検出領域A内に前記被検査物Wからの落下物Dが侵入しないように、該X線検出領域Aに常にエアーを吹き付けるエアー吹付け手段31を備えた構成となっている。
【0013】
このような構成では、X線照射手段21によるX照射中はX線検出領域Aに向けて常にエアーを吹き付けているため、X線検出領域Aにエアーカーテンを形成するようになる。
【0014】
請求項2記載のX線異物検出装置は、前記エアー吹付け手段31は、前記搬送方向Yの下流側から上流側に向けて前記X線検出領域A内を横切るようにエアーを吹き付ける構成となっている。
【0015】
このような構成では、搬送方向Yの上流側から落下する被検査物Wからの落下物DのX線検出領域Aへの侵入を更に確実に防止することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る請求項1記載のX線異物検出装置によれば、X線照射手段によるX線照射中はX線検出領域に向けて常にエアーを吹き付けているため、X線検出領域にエアーカーテンを形成するようになる。これにより、上流側の搬送手段と下流側の搬送手段との隙間から落下する被検査物からの落下物がX線検出領域内に侵入することを防止することができる。この結果、誤検出が発生せず、検出精度が低下しないようになる。
【0017】
請求項2記載のX線異物検出装置によれば、被検査物からの落下物は上流側の搬送手段により搬送方向に搬送されて上流側の搬送手段の下流側の端部から落下するため、エアーを下流側から上流側に向けてX線検出領域内を横切るように吹き付けることで、上流側の搬送手段から落下する落下物がX線検出領域内に侵入することを更に確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明によるX線異物検出装置の実施の形態を示す正面図である。
【図2】同実施の形態のX線検出領域付近の説明図(平面図)である。
【図3】同実施の形態におけるエアー吹付け動作の説明図(正面図)である。
【図4】従来のX線異物検出装置を示す正面図である。
【図5】従来のX線異物検出装置(搬送コンベアが分割されたもの)のX線検出領域付近の説明図(正面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して具体的に説明する。
この実施の形態(X線異物検出装置)は、被検査物にX線を照射し、被検査物を透過したX線を検出し、X線透過量に基づいて被検査物に異物が混入している場合にこの異物を検出する装置である。
【0020】
なお、この実施の形態で異物検出する被検査物は、前段に設けられた充填装置で小麦粉などの粉体が充填された袋体である。また、被検査物は、充填装置で袋内に粉体が充填されるときに粉体が袋の外側に堆積することがある。したがって、被計量物からの落下物とは、この袋の外側に堆積した粉体のことである。
【0021】
図1に示すように、X線異物検出装置1は、床面に脚部2,2を介して設置される略箱型の遮蔽構造の筐体3を備えている。筐体3は、放射線防護材料から構成されている。筐体3の両側面には、筐体3内に被検査物Wが搬入される搬入口4aと、筐体3内から被検査物Wが搬出される搬出口4bとが設けられている。また、筐体3の両側面には、これらの開口4(搬入口4a及び搬出口4b)を覆うために、筐体3の両側面からそれぞれ左右に延出しているサイドカバー5,5が設けられている。サイドカバー5内には、筐体3内における被検査物Wの搬送路を遮るようにX線遮蔽カーテン6,6が吊下げ状態で設けられている。さらに、筐体3の前面は開放可能に設けられており、筐体3の前面には開閉自在な扉7が設けられている。
【0022】
また、X線異物検出装置1は、被検査物Wを所定の搬送方向Yに搬送する搬送手段8を備えている。搬送手段8は、後述するX線検出領域Aを挟んで搬送方向Yの上流側と下流側とに分割されて設けられている。各搬送手段は搬送コンベア8,8からなる。搬送方向Yの上流側に配置された上流側コンベア8(8a)は、搬送方向Yの両端にローラ9a,9aを備えており、これらのローラ9a,9a間に無端状の搬送ベルト10(10a)が掛け回されている。また、上流側コンベア8aは、二本の補助脚部11a,11aに支持されている。さらに、搬送ベルト10aには搬送方向Yに沿ってその途中の二箇所にテンションローラ12a,12aが設けられている。
【0023】
搬送方向の下流側に配置された下流側コンベア8(8b)は、搬送方向Yの両端にローラ9b,9bを備えており、これらのローラ9b,9b間に無端状の搬送ベルト10(10b)が掛け回されている。また、下流側コンベア8bは、二本の補助脚部11b,11bに支持されている。さらに、搬送ベルト10bには搬送方向Yに沿ってその途中の二箇所にテンションローラ12b,12bが設けられている。
【0024】
上流側コンベア8a及び下流側コンベア8bは、ローラ9a,9a,9b,9bのうち、上流側コンベア8aにおいては搬送方向Yの上流側に配置されたローラ9a、下流側コンベア8bにおいては搬送方向Yの下流側に配置されたローラ9bは、それぞれ駆動モータ13a,13bに接続されることで各搬送ベルト10a,10bを回転駆動する。なお、各駆動モータ13a,13bは、搬送速度を同期させている。また、上流側コンベア8aの搬送方向Yの上流側には前段の装置から被検査物Wを搬入する図示しない前段コンベアが接続され、下流側コンベア8bの搬送方向Yの下流側には後段の装置に被検査物Wを搬出する図示しない後段コンベアが接続されている。
【0025】
ここで、X線異物検出装置1における光学系について説明する。
図1に示すように、筐体3内には、X線照射手段であるX線発生部21及びX線検出手段であるX線検出部22が対向して設けられている。X線発生部21は、X線を発生させ、派生させたX線をX線検出部22に向けて照射するものである。X線発生部21は、このX線発生部21の図示しない支持板に設けられている長孔(スリット)を介してX線を照射するが、そのときのX線の態様は略三角形のスクリーン状となる。
【0026】
図2に示すように、X線検出部22は、多数の受光素子が上流側及び下流側コンベア8a,8bの各搬送ベルト10a,10bの幅方向に配列されたラインセンサ23からなる。配列されたラインセンサ23の上面はX線入射面24となる。X線入射面24は、透明樹脂カバーによって被覆されている。また、X線発生部21とX線検出部22の間のX線入射面24の直上領域は前述したX線検出領域A(図3参照)となる。なお、X線検出領域Aの幅寸法L1(搬送方向Yの長さ)は2〜3mm程度であり、上流側コンベア8aと下流側コンベア8bとの隙間の寸法L2(搬送方向Yの長さ)は10mm程度である。X線検出部22は、外部コンピュータと接続されており、X線検出部22から出力された信号を所定のタイミングで取り込んで処理し、X線透過量に応じた明暗分布の画像を作成することにより、被検査物Wに異物混入の有無を検査する。
【0027】
図1、2に示すように、搬送コンベア8の下方、詳しくは、下流側コンベア8bの下方にはエアー吹付け手段31が設けられている。エアー吹付け手段31は、搬送ベルト10a,10bの幅方向に延びて設けられており、X線検出領域Aを向いた面には搬送ベルト10a,10bの幅方向に沿ってエアーが吹き出すための複数のエアーノズル32が設けられている。また、エアー吹付け手段31は、エアー配管33を介して図示しないエアーポンプなどのエアー供給源に接続されている。
【0028】
図3に示すように、エアー吹付け手段31は、異物検出中、すなわち、X線発生部によるX線照射中はX線検出領域Aに向けて常にエアーノズル32からエアーを吹き付けている。また、エアー吹付け手段31は、搬送方向Yの上流側から下流側に向けてX線検出領域Aを横切るようにエアーを吹き付けている。これにより、X線検出領域Aにエアーカーテンを形成するようになり、上流側コンベア8aの搬送ベルト10a上に落ちた被検査物Wからの落下物D(この実施の形態では、上述したように、前段に設けられた充填装置で袋に粉体を充填するときに袋の外側に堆積した粉体)は、上流側コンベア8aと下流側コンベア8bの隙間から下方に落下するが、落下物DはX線検出領域A内に侵入しないようになる。
【0029】
なお、図1に示すように、X線異物検出装置1では、上流側コンベア8a及び下流側コンベア8bはそれぞれ所定の傾斜角度を有して設けられている。すなわち、上流側コンベア8aと下流側コンベア8bは、X線検出領域A付近で同等の高さとなり、X線検出領域A付近を頂点としてそれぞれ搬送方向Yの上流側及び下流側に向けて緩やかに下り傾斜するように設けられている。上流側コンベア8aと下流側コンベア8bが傾斜して設けられていることにより、X線発生部21から照射されたX線は筐体3の搬入口4a及び搬出口4bに到達するまでに乱反射し、これにより、X線減衰率が高まるという効果を得ることができる。
【0030】
上述した実施の形態によれば、異物検出中、すなわち、X線発生部21によるX線照射中はX線検出領域Aに向けて常にエアーを吹き付けているため、X線検出領域Aにエアーカーテンを形成するようになる。これにより、上流側コンベア8aと下流側コンベア8bとの隙間から落下する被検査物Wからの落下物DがX線検出領域A内に侵入することを防止することができる。
【0031】
また、被検査物Wからの落下物Dは上流側コンベア8aにより搬送方向Yに搬送されて上流側コンベア8aにおける搬送方向Yの下流側の端部から落下するため、エアーを搬送方向Yの下流側から上流側に向けてX線検出領域A内を横切るように吹き付けることで、上流側コンベア8aから落下する落下物DがX線検出領域A内に侵入することを更に確実に防止することができる。
【符号の説明】
【0032】
1…X線異物検出装置
8…搬送手段としての搬送コンベア
8a…上流側の搬送手段である上流側コンベア
8b…下流側の搬送手段である下流側コンベア
21…X線照射手段であるX線発生部
22…X線検出手段であるX線検出部
31…エアー吹付け手段
A…X線検出領域
D…(被検査物からの)落下物
W…被検査物
Y…搬送方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検査物(W)を所定の搬送方向(Y)に搬送する搬送手段(8)と、
前記搬送手段により搬送される前記被検査物にX線を照射するX線照射手段(21)と、
前記被検査物を透過した前記X線を検出するX線検出手段(22)とを備え、前記搬送手段が前記X線検出手段のX線検出領域(A)を挟んで前記搬送方向の上流側と下流側とに分割されたX線異物検出装置(1)において、
前記X線照射手段によるX線照射中は該X線照射手段と前記X線検出手段の間に形成される前記X線検出領域内に前記被検査物からの落下物(D)が侵入しないように、該X線検出領域に常にエアーを吹き付けるエアー吹付け手段(31)を備えたことを特徴とするX線異物検出装置。
【請求項2】
前記エアー吹付け手段(31)は、前記搬送方向(Y)の下流側から上流側に向けて前記X線検出領域(A)内を横切るようにエアーを吹き付けることを特徴とする請求項1記載のX線異物検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−163485(P2012−163485A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−25115(P2011−25115)
【出願日】平成23年2月8日(2011.2.8)
【出願人】(302046001)アンリツ産機システム株式会社 (238)
【Fターム(参考)】