説明

X線異物検出装置

【課題】異物検出の閾値を高感度な状態に保ち、異物の誤検出を防ぎつつ高精度に検出することができるX線異物検出装置を提供すること。
【解決手段】被検査物WにX線を照射して検出したX線透過量を表すX線画像に対して、複数の画像処理フィルタを組み合わせてなる複数の異物強調処理を用いてそれぞれ並列に画像処理を行う画像処理部50と、複数の異物強調処理を施した結果の濃淡画像から、それぞれ所定の閾値を用いて異物候補を検出する複数の異物候補検出部61〜64と、X線画像上の同じ箇所で複数の異物候補検出部61〜64によって異物候補が検出され、かつ、それらの異物候補が予め設定された異物の有無を判定するための複数の異物強調処理に対する異物候補の組合せであるときに、被検査物W中に異物が有ると判定する異物判定部44と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肉、魚、加工食品、医薬品等の被検査物(被検査物)中に混入した異物を検出するX線異物検出装置に関し、特に、X線発生器から照射されて被検査物を透過したX線をX線検出器により検出して異物を検出するX線異物検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば食品などの被検査物への異物の混入の有無を検出するために、従来からX線異物検出装置が用いられている。この種の従来のX線異物検出装置では、複数の画像処理フィルタを組み合わせた画像処理フィルタ群を用いて異物を強調する画像処理を施すことで、被検査物の影響の低減を行い、被検査物中に埋もれた異物の信号を抽出し、所定の閾値により異物の有無の判定をするようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。この、従来のX線異物検出装置では、複数の画像処理フィルタ群を搭載することにより、性質(軟質、硬質等)、大きさ、形状、等の異なる様々な異物を検出できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−28891号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された従来の技術では、各画像処理フィルタ群での異物を判定する閾値を低い値に設定した場合は、異物を検出し易い高感度な状態となるが異物でないものを異物であると誤検出する恐れがあり、一方、閾値を高い値に設定した場合には、異物を検出し難い低感度な状態となり異物があっても検出することができないという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、前述のような従来の問題を解決するためになされたもので、異物検出の閾値を高感度な状態に保ち、異物の誤検出を防ぎつつ高精度に検出することができるX線異物検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るX線異物検出装置は、被検査物にX線を照射して検出したX線透過量を表すX線画像に対して、複数の画像処理フィルタを組み合わせてなる複数の異物強調処理を用いてそれぞれ並列に画像処理を行う画像処理手段と、前記複数の異物強調処理を施した結果の濃淡画像から、それぞれ所定の閾値を用いて異物候補を検出する複数の異物候補検出手段と、前記X線画像上の同じ箇所で前記複数の異物候補検出手段によって異物候補が検出され、かつ、それらの異物候補が予め設定された異物の有無を判定するための前記複数の異物強調処理に対する異物候補の組合せであるときに、前記被検査物中に異物が有ると判定する異物判定手段と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
この構成により、X線画像に対して、画像処理手段が、複数の異物強調処理を用いて並列に画像処理を行い、異物候補検出手段が、複数の異物強調処理を施した結果の濃淡画像から、それぞれ所定の閾値を用いて異物候補を検出し、異物判定手段が、X線画像上の同じ箇所で複数の異物候補検出手段によって異物候補が検出され、かつ、それらの異物候補が予め設定された異物の有無を判定するための複数の異物強調処理に対する異物候補の組合せであるときに、被検査物中に異物が有ると判定するため、閾値が低い値に設定された高感度な状態で誤検出を防ぎつつ異物の有無を判定することができる。したがって、異物検出の閾値を高感度な状態に保ち、異物の誤検出を防ぎつつ高精度に検出することができる。
【0008】
また、本発明に係るX線異物検出装置は、前記異物候補検出手段は、指定された領域ごとに所定の閾値を用いて異物候補を検出し、前記異物判定手段は、前記指定された領域内で検出した異物候補が、該領域に対して予め設定された異物候補の組合せであるときに、前記被検査物中に異物が有ると判定することを特徴とする。
【0009】
この構成により、異物候補検出手段が、指定された領域ごとに所定の閾値を用いて異物候補を検出し、異物判定手段が、指定された領域内で検出した異物候補が、該領域に対して予め設定された異物候補の組合せであるときに、被検査物中に異物が有ると判定するため、被検査物内の特定の領域で発生し易い異物について、より異物検出の閾値を高感度な状態に保ち、他の領域での異物の誤検出を防ぎつつ高精度に検出することができる。
【0010】
また、本発明に係るX線異物検出装置は、前記異物候補検出手段が用いる閾値を変更する閾値変更手段を含むパラメータ設定手段と、前記被検査物中の異物を検出する運転モードと装置の設定を行う設定モードとの何れかに動作モードを設定するモード設定手段を備え、前記モード設定手段により前記動作モードが前記設定モードに設定されているとき、前記閾値変更手段は、前記異物候補検出手段からの検出結果と前記異物判定手段からの判定結果に基づいて、前記異物候補検出手段が用いる閾値を変更することを特徴とする。
【0011】
この構成により、モード設定手段により動作モードが設定モードに設定されているとき、閾値変更手段が、異物候補検出手段からの検出結果と異物判定手段からの判定結果に基づいて、異物候補検出手段が用いる閾値を変更するため、検出すべき異物の種類に対応した異物強調処理の組合せの閾値を最適な閾値に変更でき、特定の検出すべき異物に対し、異物の誤検出を防ぎつつ高精度に検出することができる。
【0012】
また、本発明に係るX線異物検出装置は、異物の有無を判定するための前記複数の異物強調処理が検出する異物候補の組合せを設定する異物候補組合せ設定手段を含むパラメータ設定手段と、前記被検査物中の異物を検出する運転モードと装置の設定を行う設定モードとの何れかに動作モードを設定するモード設定手段を備え、前記モード設定手段により前記動作モードが前記設定モードに設定されているとき、前記異物候補組合せ設定手段は、前記異物候補検出手段からの検出結果と前記異物判定手段からの判定結果に基づいて、異物候補の組合せを設定することを特徴とする。
【0013】
この構成により、モード設定手段により動作モードが設定モードに設定されているとき、異物候補組合せ設定手段が、異物候補検出手段からの検出結果と異物判定手段からの判定結果に基づいて、異物候補の組合せを設定するため、検出すべき異物の種類に対応した異物強調処理それぞれの閾値を低く抑えた状態で異物検出できる最適な異物候補の組合せを設定できるため、幅広い種類の異物に対し、異物の誤検出を防ぎつつ高精度に検出することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、異物検出の閾値を高感度な状態に保ち、異物の誤検出を防ぎつつ高精度に検出することができるX線異物検出装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るX線異物検出装置の概略構成を示す斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係るX線異物検出装置の側面および内部構成を示す図である。
【図3】(a)は、本発明の第1の実施の形態に係るX線異物検出装置で検査する異物が混入した被検査物の上面図であり、(b)〜(e)は、画像処理後のX線画像と閾値を示す図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態に係るX線異物検出装置で検査対象とする被検査物を示す図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態に係るX線異物検出装置の指定領域に対する異物強調処理の組合せと閾値の関係を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0017】
(第1の実施の形態)
まず構成について説明する。
【0018】
図1に示すように、X線異物検出装置1は、搬送部2と検出部3とを筐体4の内部に備え、表示部5を筐体4の前面上部に備えている。
【0019】
搬送部2は、被検査物である被検査物Wを所定間隔をおいて順次搬送するものである。この搬送部2は、例えば筐体4内部で水平に配置されたベルトコンベアにより構成されている。搬送部2は、図1に示す駆動モータ6の駆動により予め設定された搬送速度で搬入口7から搬入された被検査物Wを搬出口8側(図中X方向)に向けて搬送面としてのベルト面2a上を搬送させるようになっている。筐体4内部においてベルト面2a上を搬入口7から搬出口8まで貫通する空間は搬送路21を形成している。
【0020】
検出部3は、順次搬送される被検査物Wに対し、搬送路21の途中の検査空間22においてX線を照射するとともに被検査物Wを透過するX線を検出するものであり、搬送路21の途中の検査空間22の上方に所定高さ離隔して配置されたX線発生器9と、搬送部2内にX線発生器9と対向して配置されたX線検出器10を備えている。
【0021】
X線発生源としてのX線発生器9は、金属製の箱体11の内部に設けられた円筒状のX線管12を図示しない絶縁油に浸漬した構成を有しており、X線管12の陰極からの電子ビームを陽極のターゲットに照射させてX線を生成している。X線管12は、その長手方向が被検査物Wの搬送方向(X方向)となるよう配置されている。X線管12により生成されたX線は、下方のX線検出器10に向けて、図示しないスリットにより略三角形状のスクリーン状となって搬送方向(X方向)を横切るように照射されるようになっている。
【0022】
X線検出器10は、搬送される被検査物Wの搬送方向(X方向)の平面上で搬送方向と直交するY方向に複数の検出素子が一直線上に配置されたものである。具体的には、X線検出器10は、ライン状に整列して配設された複数の検出素子としてのフォトダイオード(不図示)と、フォトダイオード上に設けられたシンチレータ(不図示)とからなるラインセンサ(不図示)とを含んで構成される。また、X線検出器10は、図2に示すように、A/D変換部41を備えており、このA/D変換部41によりフォトダイオードからの輝度値データをデジタルデータに変換し、濃度データであるX線画像として出力するようになっている。X線検出器10は、被検査物Wの搬送方向(X方向)の平面上で直交する方向(Y方向)に直線状に延在するラインセンサによって被検査物Wを透過するX線を検出し、検出したX線の量に応じた濃淡画像を出力するようになっている。
【0023】
図2に示すように、搬送路21内の天井部21aには、搬送方向(X方向)に沿って複数箇所にX線遮蔽用の遮蔽カーテン16が吊り下げ配置されている。遮蔽カーテン16は、X線を遮蔽する鉛粉を混入したゴムシートをのれん状(上部が繋がっており下部が帯状に分割された状態)に加工したものから構成されており、検査空間22から搬送路21を介してX線が筐体4の外部に漏えいすることを防止するものである。遮蔽カーテン16は、本実施の形態では、搬入口7と検査空間22との間、および検査空間22と搬出口8との間にそれぞれ2枚ずつ設けられており、1つの遮蔽カーテン16が被検査物Wと接触して弾性変形して隙間が生じた場合でも、他の遮蔽カーテン16がX線を遮蔽するので漏えい基準量を超えることなくX線の漏えいを防止できるようになっている。搬送路21における遮蔽カーテン16により囲まれた内側の空間が検査空間22を構成している。
【0024】
X線異物検出装置1は、X線検出器10からのX線画像が入力されるとともに被検査物W中の異物の有無を検査する制御回路40と、後述する設定モードにおける設定動作に必要な情報の表示出力、および制御回路40による検査結果等を表示出力する表示部5と、各種パラメータ等の設定入力および変更制御を行う設定部45とを備えている。
【0025】
表示部5は、平面ディスプレイ等から構成されており、ユーザに対する表示出力を行うようになっている。この表示部5は、被検査物Wの良否判定結果を「OK」や「NG」等の文字または記号で表示するとともに、総検査数、良品数、NG総数などの検査結果を、既定設定として、または、設定部45からの所定のキー操作による要求に基づいて表示するようになっている。
【0026】
設定部45は、各種パラメータ等の設定入力操作や動作モードの選択操作を行うためのユーザが操作する複数のキーやスイッチ等と、各種パラメータの変更制御を行うための電子回路で構成されている。設定部45は、パラメータ設定部70を備え、このパラメータ設定部70は、閾値変更手段71、異物候補組合せ設定手段72、および領域指定手段73を含んで構成されている。詳細は後述するが、閾値変更手段71は、異物候補検出部61〜64が用いる閾値を変更する制御を行い、異物候補組合せ設定手段72は、異物候補の組合せを設定する制御を行い、領域指定手段73は、異物候補検出部61〜64が異物候補を検出すべき領域の位置や大きさの指定操作を行うものである。なお、表示部5と設定部45とを、タッチパネル式表示器として一体構成してもよい。
【0027】
制御回路40は、X線検出器10から受け取ったX線透過量を表すX線画像を記憶するX線画像記憶部42と、X線画像記憶部42から読み出したデータに対して、異物強調処理部51〜54により、複数の画像処理フィルタを組み合わせてなる複数の異物強調処理を用いてそれぞれ並列に画像処理を行う画像処理部50と、を備えている。
【0028】
また、制御回路40は、画像処理部50の後段にそれぞれ設けられ、異物強調処理部51〜54により複数の異物強調処理を施した結果の濃淡画像から、それぞれ所定の閾値を用いて異物候補を検出する複数の異物候補検出部61〜64と、X線画像上の同じ箇所で複数の異物候補検出部61〜64によって異物候補が検出され、かつ、それらの異物候補が予め設定された異物の有無を判定するための複数の異物強調処理に対する異物候補の組合せであるときに、その被検査物中に異物が有ると判定する異物判定部44と、を備えている。
【0029】
また、制御回路40は、CPUおよび制御プログラムの記憶領域または作業領域としてのメモリなどを備えて構成された制御部46を備えている。制御部46は、X線異物検出装置1全体の制御を行うものである。
【0030】
制御回路40が実行する動作モードとしては、通常の動作モードである運用モードの他に、設定モードがある。運用モードとは、実際に被検査物W中の異物の有無を検査する動作モードである。設定モードとは、異物検出の閾値を変更し最適な閾値に再設定する動作等、X線異物検出装置1の各種パラメータの設定を行う動作モードである。動作モードの設定は、設定部45からの操作に応じて制御部46の制御により行われる。
【0031】
X線画像記憶部42には、被検査物WのX線画像(濃淡画像)が被検査物W毎に記憶されるようになっている。X線画像記憶部42には、被検査物Wの検査を行う毎に、X線検出器10の1ライン(Y方向)あたりの例えば640個のデータと、少なくとも搬送される被検査物Wの搬送方向の長さに対応した所定ライン数(480ライン)とからなるX線画像が記憶される。
【0032】
画像処理部50の各異物強調処理部51〜54は、X線画像記憶部42に記憶されたX線画像を読み出し、このX線画像に対して、複数の画像処理フィルタを組み合わせてなる異物強調処理を用いてそれぞれ並列に画像処理を行うようになっている。各異物強調処理部51〜54で用いられる異物強調処理はそれぞれ異なっており、例えば、異物強調処理部51では線状異物(はりがね等)を強調する異物強調処理Aが用いられ、異物強調処理部52では軟質の異物を強調する異物強調処理Bが用いられ、異物強調処理部53では大きい異物を強調する異物強調処理Cが用いられ、異物強調処理部54では小さい異物を強調する異物強調処理Dが用いられる。このように、各異物強調処理A〜Dは、それぞれ異なる特徴を有している。なお、異物強調処理は上記の4つの異物強調処理A〜Dに限定されるものではなく、例えば、濃度の高い異物(ガラス等)を強調する異物強調処理等を用いるようにしてもよい。さらに、各異物強調処理部51〜54で用いられる異物強調処理は固定されているとは限らず、異物強調処理部51〜54に設定する異物強調処理の種類を変更可能としてもよい。
【0033】
異物強調処理部51〜54で異物強調処理が施された結果のX線画像は、それぞれ異なる異物強調処理が施された結果、図3(b)〜(e)に示すように、それぞれ異なった濃淡画像となる。ここで、図3(b)〜(e)は、図3(a)に上面図を示す異物A、異物Bが混入した被検査物WのA−A´ラインにおける画像処理後のX線濃度と閾値を示す図である。なお、本実施の形態では、図3(b)〜(e)では、説明の容易化のため、1つのA−A´ラインにおける搬送方向の位置と幅方向の濃度の最大値を示しているが、実際には、異物強調処理部51〜54で異物強調処理が施された結果のX線画像は、連続する複数ラインにおける搬送方向の位置と濃度、すなわち、搬送方向と幅方向の2次元平面における位置と濃度となる。図3(b)の「処理1」は、異物強調処理部51で異物強調処理Aを用いて画像処理が施された結果の濃淡画像を示し、図3(c)の「処理2」は、異物強調処理部52で異物強調処理Bを用いて画像処理が施された結果の濃淡画像を示し、図3(d)の「処理3」は、異物強調処理部53で異物強調処理Cを用いて画像処理が施された結果の濃淡画像を示し、図3(e)の「処理4」は、異物強調処理部54で異物強調処理Dを用いて画像処理が施された結果の濃淡画像を示している。
【0034】
異物候補検出部61〜64は、異物強調処理部51〜54の後段にそれぞれ設けられ、異物強調処理部51〜54で異物強調処理が施された結果の濃淡画像から、それぞれ所定の閾値を用いて異物候補を検出するようになっている。図3(b)〜図3(e)に示すように、異物候補検出部61〜64では、それぞれ閾値L13、閾値L23、閾値L33、閾値L43が用いられる。例えば、異物候補検出部61では、図3(b)の濃淡画像において、閾値L13を超えた部分を異物候補として検出する。なお、異物候補検出部61〜64で検出されるものは異物候補であり、異物の有無の判定は、異物判定部44により、複数の異物候補検出部61〜64からの複数の検出結果に基づいて行われる。異物候補検出部61〜64の各閾値は固定された値ではなく、制御部46により最適な値に変更されるようになっている。
【0035】
異物判定部44は、X線画像上の同じ箇所で異物候補検出部61〜64のうち複数の異物候補検出部によって異物候補が検出され、かつ、それらの異物候補が予め設定された異物の有無を判定するための複数の異物強調処理に対する異物候補の組合せであるときに、被検査物W中に異物が有ると判定するようになっている。すなわち、異物判定部44は、一つの異物候補検出部の検出結果から異物の有無の判定を行うのではなく、X線画像上の同じ箇所に対する複数の異物候補検出部61〜64からの複数の検出結果に基づいて異物の判定を行う。
【0036】
本実施の形態では、異物判定部44は、異物候補検出部61〜64のうち2以上の異物候補検出部で異物候補が同一箇所で検出された場合に異物があると判定するようになっている。すなわち、複数の異物候補の組合せ(処理1と処理2、処理1と処理3、処理1と処理4・・・)の何れかの異物候補の組合せで異物候補を検出した場合に異物があると判定する。具体的には、図3において、異物Aについては、図3(b)の処理1結果の濃淡画像において異物Aのある場所で閾値L13を超え、かつ、図3(d)の処理3結果の濃淡画像において異物Aのある場所で閾値L33を超えており、処理1結果の濃淡画像と処理3結果の濃淡画像の2つにおいて異物Aのある同じ場所で閾値を超えて異物候補となっているため、この場所に異物があると判定する。同様に、異物Bについては、図3(c)の処理2結果の濃淡画像において異物Bのある場所で閾値L23を超え、かつ、図3(e)の処理4結果の濃淡画像において異物Bのある場所で閾値L43を超えており、処理2結果の濃淡画像と処理4結果の濃淡画像の2つにおいて異物Bのある同じ場所で閾値を超えて異物候補となっているため、この場所に異物があると判定する。
【0037】
また、制御部46は、動作モードを設定モードに設定し、異物候補検出部61〜64に、複数の異物強調処理部51〜54からの異物強調処理を施した結果の濃淡画像のそれぞれに対して閾値を高い値から低い値に下げながら各閾値における検出結果を出力するよう制御し、異物候補検出部61〜64からの検出結果と異物判定部44からの判定結果に基づいて、閾値変更手段71が、異物候補検出部61〜64が用いる閾値を変更するようになっている。なお、異物候補の組合せが処理1と処理3、処理2と処理4というように指定されていたら、指定されている処理の組合せに対して、閾値を高い値から低い値に下げながら各閾値における検出結果を出力するように制御し、閾値を変更するようにする。また、制御部46は、複数の異物強調処理部51〜54からの異物強調処理を施した結果の濃淡画像のそれぞれに対して閾値を高い値から低い値に下げながら各閾値における検出結果を出力するように制御し、異物候補検出部61〜64からの検出結果と異物判定部44からの判定結果に基づいて、異物候補組合せ設定手段72が、異物判定部44が判定するための異物候補の組合せを設定できるようにもなっている。
【0038】
次に動作を説明する。なお、以下の処理は、制御部46のメモリに記憶されたプログラムがCPUにより実行されることにより行われる。
【0039】
動作モードが運用モードであるときは、まず、異物強調処理部51〜54が、X線画像記憶部42からX線画像を読み出して異物強調処理を用いてそれぞれ並列に画像処理を行い、ついで、異物候補検出部61〜64が、異物強調処理が施された結果の濃淡画像から、それぞれ所定の閾値を用いて異物候補の検出を行い、ついで、異物判定部44が、X線画像上の同じ箇所で異物候補検出部61〜64のうち複数の異物候補検出部によって異物候補が検出され、かつ、それらの異物候補が予め設定された異物の有無を判定するための複数の異物強調処理に対する異物候補の組合せであるときに、被検査物W中に異物が有ると判定する。
【0040】
動作モードが設定モードであるときは、まず、異物強調処理部51〜54が、X線画像記憶部42からX線画像を読み出して異物強調処理を用いてそれぞれ並列に画像処理を行い、ついで、異物候補検出部61〜64が、異物強調処理が施された結果の濃淡画像のそれぞれに対して閾値を高い値から低い値に下げながら、各閾値における検出結果を出力し、制御部46が、異物候補検出部61〜64からの検出結果と異物判定部44からの判定結果に基づいて、異物候補検出部61〜64が用いる閾値の変更、または異物判定部44が判定するための異物候補の組合せの設定を行う。
【0041】
以上のように、本実施の形態に係るX線異物検出装置1は、被検査物WにX線を照射して検出したX線透過量を表すX線画像に対して、複数の画像処理フィルタを組み合わせてなる複数の異物強調処理を用いてそれぞれ並列に画像処理を行う画像処理部50と、複数の異物強調処理を施した結果の濃淡画像から、それぞれ所定の閾値を用いて異物候補を検出する複数の異物候補検出部61〜64と、X線画像上の同じ箇所で複数の異物候補検出部61〜64によって異物候補が検出され、かつ、それらの異物候補が予め設定された異物の有無を判定するための複数の異物強調処理に対する異物候補の組合せであるときに、被検査物W中に異物が有ると判定する異物判定部44と、を備えたことを特徴とする。
【0042】
この構成により、X線画像に対して、画像処理部50が、複数の異物強調処理を用いて並列に画像処理を行い、異物候補検出部61〜64が、複数の異物強調処理を施した結果の濃淡画像から、それぞれ所定の閾値を用いて異物候補を検出し、異物判定部44が、X線画像上の同じ箇所で複数の異物候補検出部61〜64によって異物候補が検出され、かつ、それらの異物候補が予め設定された異物の有無を判定するための複数の異物強調処理に対する異物候補の組合せであるときに、被検査物W中に異物が有ると判定するため、閾値が低い値に設定された高感度な状態で誤検出を防ぎつつ異物の有無を判定することができる。したがって、異物検出の閾値を高感度な状態に保ち、異物の誤検出を防ぎつつ高精度に検出することができる。
【0043】
また、本実施の形態に係るX線異物検出装置1は、異物候補検出部61〜64が用いる閾値を変更する閾値変更手段71を含むパラメータ設定部70と、被検査物W中の異物を検出する運転モードと装置の設定を行う設定モードとの何れかに動作モードを設定する制御部46を備え、制御部46により動作モードが設定モードに設定されているとき、閾値変更手段71は、異物候補検出部61〜64からの検出結果と異物判定部44からの判定結果に基づいて、異物候補検出部61〜64が用いる閾値を変更することを特徴とする。
【0044】
この構成により、制御部46により動作モードが設定モードに設定されているとき、閾値変更手段71が、異物候補検出部61〜64からの検出結果と異物判定部44からの判定結果に基づいて、異物候補検出部61〜64が用いる閾値を変更するため、検出すべき異物の種類に対応した異物強調処理の組合せの閾値を最適な閾値に変更でき、特定の検出すべき異物に対し、異物の誤検出を防ぎつつ高精度に検出することができる。
【0045】
また、本実施の形態に係るX線異物検出装置1は、異物の有無を判定するための複数の異物強調処理が検出する異物候補の組合せを設定する異物候補組合せ設定手段72を含むパラメータ設定部70と、被検査物W中の異物を検出する運転モードと装置の設定を行う設定モードとの何れかに動作モードを設定する制御部46を備え、制御部46により動作モードが設定モードに設定されているとき、異物候補組合せ設定手段72は、異物候補検出部61〜64からの検出結果と異物判定部44からの判定結果に基づいて、異物候補の組合せを設定することを特徴とする。
【0046】
この構成により、制御部46により動作モードが設定モードに設定されているとき、異物候補組合せ設定手段72が、異物候補検出部61〜64からの検出結果と異物判定部44からの判定結果に基づいて、異物候補の組合せを設定するため、検出すべき異物の種類に対応した異物強調処理それぞれの閾値を低く抑えた状態で異物検出できる最適な異物候補の組合せを設定できるため、幅広い種類の異物に対し、異物の誤検出を防ぎつつ高精度に検出することができる。
【0047】
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態について説明する。なお、第2の実施の形態は、異物候補検出部61〜64が、指定された領域ごとに所定の閾値を用いて異物候補を検出し、異物判定部44が、指定された領域内で検出した異物候補が、その領域に対して予め設定された異物候補の組合せであるときに、被検査物W中に異物が有ると判定するように構成したものであり、第1の実施の形態と同様の構成部材には、同一の符号を付して説明を省略する。
【0048】
図4に示すように、例えば、製造工程が異なる複数のお菓子P1、P2、P3、P4が箱Pに詰め合わされてなる被検査物Wを検査する場合であって、お菓子P1は、針金等の細い金属の異物が入る可能性がある製造工程で製造されたものであり、お菓子P2は、軟質の樹脂等が入る可能性のある製造工程で製造された場合で、画像処理部50の異物強調処理部51〜54により、線状異物を強調する異物強調処理A、軟質の異物を強調する異物強調処理B、大きい異物を強調する異物強調処理C、小さい異物を強調する異物強調処理D、の4つの異物強調処理をそれぞれ実行すると仮定する。ここで、異物強調処理A〜Dは、第1の実施の形態で説明した各異物強調処理A〜Dと同じ特徴を有するものである。
【0049】
このような条件において、本実施の形態では、パラメータ設定部70の領域指定手段73によりお菓子P1、P2、P3、P4の各領域を指定するとともに、図5に示すように、お菓子P1の領域に対しては、線状異物を強調する異物強調処理Aと、小さい異物を強調する異物強調処理Dの組合せを用いて異物の有無を判定し、お菓子P2の領域に対しては、軟質の異物を強調する異物強調処理Bと、小さい異物を強調する異物強調処理Dの組合せを用いて異物の有無を判定し、お菓子P3、P4の領域に対しては、特に異物強調処理の組合せを指定せず、誤判定を抑えるため比較的高い値に設定された通常の閾値LAS、LBS、LCS、LDSを用いて、異物強調処理A〜Dのうち少なくとも何れかで閾値を超えたときに異物が有ると判定するようになっている。指定領域における異物候補を検出する閾値に関しては、異物強調処理Aを施した結果の濃淡画像からは、通常の閾値LASより小さい値の閾値LA1を用いて異物候補を検出し、異物強調処理Bを施した結果の濃淡画像からは、通常の閾値LBSより小さい値の閾値LB2を用いて異物候補を検出し、異物強調処理Dを施した結果の濃淡画像からは、お菓子P1の指定領域は通常の閾値LDSより小さい値の閾値LD1、お菓子P2の指定領域は通常の閾値LDSより小さい値の閾値LD2を用いて異物候補を検出するようになっている。そして、異物判定部44は、指定された領域内で検出した異物候補が、その領域に対して予め設定された異物候補の組合せであるときに、被検査物W中に異物が有ると判定するようになっている。また、お菓子P1、P2において組合せのない異物強調処理(異物強調処理Cなど)は、誤判定を抑えるため比較的高い値に設定された通常の閾値(異物強調処理CではLCS)を用いて異物の有無を判定するようになっている。
【0050】
なお、領域の指定方法は、設定からウィンドウのように枠の位置と大きさを指定するようにしてもよいし、お菓子P1、P2等の中心位置を指定して、実行時にその指定された位置周辺のX線画像の濃度をお菓子P1、P2の濃度と認識し、X線画像の濃度ヒストグラムから被検査物Wの領域を自動設定するようにしてもよい。
【0051】
また、異物強調処理の組合せを指定しないP3、P4について領域を指定するようにしたが、異物強調処理の組合せがある領域についてのみ領域を指定するようにしてもよく、その場合の領域指定のない他の領域については、前述のP3、P4のお菓子と同様に通常の閾値を用いて、異物強調処理A〜Dのうち少なくとも何れかで閾値を超えたら異物が有ると判定をするようにする。
【0052】
以上のように、本実施の形態に係るX線異物検出装置1は、異物候補検出部61〜64は、指定された領域ごとに所定の閾値を用いて異物候補を検出し、異物判定部44は、指定された領域内で検出した異物候補が、該領域に対して予め設定された異物候補の組合せであるときに、被検査物W中に異物が有ると判定することを特徴とする。
【0053】
この構成により、異物候補検出部61〜64が、指定された領域ごとに所定の閾値を用いて異物候補を検出し、異物判定部44が、指定された領域内で検出した異物候補が、該領域に対して予め設定された異物候補の組合せであるときに、被検査物W中に異物が有ると判定するため、被検査物W内の特定の領域で発生し易い異物について、より異物検出の閾値を高感度な状態に保ち、他の領域での異物の誤検出を防ぎつつ高精度に検出することができる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
以上のように、本発明に係るX線異物検出装置は、異物検出の閾値を最適な値に設定し、異物の誤検出を防ぎつつ高感度に検出することができるという効果を有し、X線発生器から照射されて被検査物を透過したX線をX線検出器により検出して被検査物を検査するX線異物検出装置として有用である。
【符号の説明】
【0055】
1 X線異物検出装置
2 搬送部
3 検出部
4 筐体
5 表示部
6 駆動モータ
7 搬入口
8 搬出口
9 X線発生器
10 X線検出器
11 箱体
12 X線管
16 遮蔽カーテン
21 搬送路
22 検査空間
40 制御回路
41 A/D変換部
42 X線画像記憶部
44 異物判定部(異物判定手段)
45 設定部
46 制御部(モード設定手段)
50 画像処理部(画像処理手段)
51、52、53、54 異物強調処理部
61、62、63、64 異物候補検出部(異物候補検出手段)
70 パラメータ設定部(パラメータ設定手段)
71 閾値変更手段
72 異物候補組合せ設定手段
73 領域指定手段
W 被検査物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検査物(W)にX線を照射して検出したX線透過量を表すX線画像に対して、複数の画像処理フィルタを組み合わせてなる複数の異物強調処理を用いてそれぞれ並列に画像処理を行う画像処理手段(50)と、
前記複数の異物強調処理を施した結果の濃淡画像から、それぞれ所定の閾値を用いて異物候補を検出する複数の異物候補検出手段(61〜64)と、
前記X線画像上の同じ箇所で前記複数の異物候補検出手段によって異物候補が検出され、かつ、それらの異物候補が予め設定された異物の有無を判定するための前記複数の異物強調処理に対する異物候補の組合せであるときに、前記被検査物中に異物が有ると判定する異物判定手段(44)と、を備えたことを特徴とするX線異物検出装置。
【請求項2】
前記異物候補検出手段は、指定された領域ごとに所定の閾値を用いて異物候補を検出し、
前記異物判定手段は、前記指定された領域内で検出した異物候補が、該領域に対して予め設定された異物候補の組合せであるときに、前記被検査物中に異物が有ると判定することを特徴とする請求項1に記載のX線異物検出装置。
【請求項3】
前記異物候補検出手段が用いる閾値を変更する閾値変更手段を含むパラメータ設定手段(70)と、
前記被検査物中の異物を検出する運転モードと装置の設定を行う設定モードとの何れかに動作モードを設定するモード設定手段(46)を備え、
前記モード設定手段により前記動作モードが前記設定モードに設定されているとき、
前記閾値変更手段は、前記異物候補検出手段からの検出結果と前記異物判定手段からの判定結果に基づいて、前記異物候補検出手段が用いる閾値を変更することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のX線異物検出装置。
【請求項4】
異物の有無を判定するための前記複数の異物強調処理が検出する異物候補の組合せを設定する異物候補組合せ設定手段を含むパラメータ設定手段(70)と、
前記被検査物中の異物を検出する運転モードと装置の設定を行う設定モードとの何れかに動作モードを設定するモード設定手段(46)を備え、
前記モード設定手段により前記動作モードが前記設定モードに設定されているとき、
前記異物候補組合せ設定手段は、前記異物候補検出手段からの検出結果と前記異物判定手段からの判定結果に基づいて、異物候補の組合せを設定することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のX線異物検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−208084(P2012−208084A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−75651(P2011−75651)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(302046001)アンリツ産機システム株式会社 (238)
【Fターム(参考)】