説明

X線異物検出装置

【課題】エネルギーサブトラクション法により得る2つのX線画像の画像ずれを低減し、異物検出性能の低下を防止することができるX線異物検出装置を提供すること。
【解決手段】X線ラインセンサ51を、X線ラインセンサ52に対して平行となる姿勢を保って支持するとともに、被検査物搬送方向に位置調整可能に構成された第1支持部材71と、第1支持部材71の被検査物搬送方向に対する位置の調整操作を行う位置調整部材74と、第1のX線画像データにおける被検査物搬送方向の波形である第1の波形と第2のX線画像データにおける被検査物搬送方向の波形である第2の波形とを取得するとともに、第1の波形の先端部に対する第2の波形の先端部の位相差に基づいて第1支持部材71の位置調整方向および位置調整量を判定する位置調整判定部と、位置調整判定部による判定結果を表示する表示器と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肉、魚、加工食品、医薬品等の被検査物中に混入した異物を検出するX線異物検出装置に関し、特に、複数本のX線ラインセンサからの画像を合成して異物を強調させた画像を得るエネルギーサブトラクション法を採用したX線異物検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、X線異物検出装置は、搬送路上を所定間隔で順次搬送されてくる各品種の被検査物(例えば、肉、魚、加工食品、医薬品など)にX線発生器からX線を照射し、この照射したX線の透過量から被検査物中に金属、ガラス、石、骨などの異物が混入しているか否かや被検査物の欠品などを検査するようになっている。
【0003】
従来、この種のX線異物検出装置では、管電圧の異なるX線源を用いてローエネルギーとハイエネルギーのX線画像ペアすなわちデュアルエネルギーX線画像を取得し、これら2つのX線画像を合成することで、被検査物の厚みによる影響を低減させ、被検査物とその中の異物とのコントラストを高めて異物を強調させた画像を得るエネルギーサブトラクション法を採用したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1に記載されたエネルギーサブトラクション法を採用したX線異物検出装置においては、第1のX線源と第1のX線ラインセンサの組合せから第1のX線画像を取得するとともに、これら第1のX線源と第1のX線ラインセンサに対して被検査物搬送方向の下流側に配置された第2のX線源と第2のX線ラインセンサの組合せから第2のX線画像を取得するよう構成された2線源、2センサの構成のものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−91483号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された従来の技術では、2線源2センサの構成において、第1のX線ラインセンサと第2のX線ラインセンサのスキャンタイミングの同期がとられていないと、第1のX線画像と第2のX線画像との間に最大で0.5ピクセルの画像ずれ、すなわち被検査物の境界の位置のずれが生じてしまうという問題があった。
【0007】
そして、2つのX線画像上の被検査物の境界の位置がずれていると、2つのX線画像を合成する際に、X線画像上の被検査物の境界の位置ずれも高コントラスト化により強調されてしまい、異物検出性能を大きく損なってしまうという問題があった。
【0008】
2つのX線ラインセンサのスキャンタイミングのずれは、2つのX線ラインセンサの被検査物搬送方向の間隔が、組み付け誤差等によりX線ラインセンサの素子ピッチに対して整数倍に設定されていないことが支配的な原因であった。
【0009】
また、X線画像のずれは1ピクセル以下の微小な量であるため、画像上ではずれを判別可能であるが、画像サイズ変更や画像位置の位相合わせ等の画像処理によって画像のずれを解消することは、被検査物内の異物の情報も同時に変化してしまうため実質的に不可能であった。したがって、2つのX線ラインセンサの組み付け間隔を適切に設定するための手法が求められていた。
【0010】
そこで、本発明は、前述のような従来の問題を解決するためになされたもので、エネルギーサブトラクション法により得る2つのX線画像の画像ずれを低減し、異物検出性能の低下を防止することができるX線異物検出装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るX線異物検出装置は、被検査物を搬送面上で被検査物搬送方向に搬送する搬送手段と、前記搬送面上を搬送される被検査物に互いに異なる強度のX線を照射する第1のX線源および第2のX線源と、前記搬送面を挟んで前記第1のX線源および前記第2のX線源と対向する位置に配置され、前記第1のX線源から照射され前記被検査物を透過するX線に応じた第1のX線画像データおよび前記第2のX線源から照射され前記被検査物を透過するX線に応じた第2のX線画像データをそれぞれ出力する第1のX線ラインセンサおよび第2のX線ラインセンサと、前記第1のX線画像データおよび第2のX線画像データを合成して前記被検査物に対応する1つの画像データとして出力する画像合成手段と、前記画像合成手段が出力する画像データに基づいて前記被検査物中の異物の有無を判定する判定手段と、を備えるX線異物検出装置であって、前記第1のX線ラインセンサを、前記第2のX線ラインセンサに対して平行となる姿勢を保って支持するとともに、前記被検査物搬送方向に位置調整可能に構成された支持部材と、前記支持部材の前記被検査物搬送方向に対する位置の調整操作を行う位置調整部材と、前記第1のX線画像データにおける前記被検査物搬送方向の波形である第1の波形と前記第2のX線画像データにおける前記被検査物搬送方向の波形である第2の波形とを取得するとともに、前記第1の波形の先端部に対する前記第2の波形の先端部の位相差に基づいて前記支持部材の位置調整方向および位置調整量を判定する位置調整判定手段と、前記位置調整判定手段による判定結果を表示する表示手段と、を備えたことを特徴とする。
【0012】
この構成により、X線画像のずれを低減するための位置調整方向と位置調整量が位置調整判定手段により判定されるとともに表示手段に表示されるので、ユーザーは位置調整部材を操作して支持部材に支持された第2のX線ラインセンサの位置を容易に調整することができる。このため、エネルギーサブトラクション法により得る2つのX線画像の画像ずれを低減し、異物検出性能の低下を防止することができる。
【0013】
また、本発明に係るX線異物検出装置は、前記位置調整判定手段が、前記第1の波形の先端部のピクセル数に対する前記第2の波形の先端部のピクセル数の差から、前記第1の波形の先端部に対する前記第2の波形の先端部の位相差を求めることを特徴とする。
【0014】
この構成により、位置調整判定手段は位置調整方向と位置調整量を正確に判定することができる。
【0015】
また、本発明に係るX線異物検出装置は、前記第1の波形の先端部に対して前記第2の波形の先端部の位相が早いときに、前記支持部材の位置調整方向が被検査物搬送方向下流側であると判定することを特徴とする。
【0016】
この構成により、位置調整判定手段は位置調整方向を正確に判定することができる。
【0017】
また、本発明に係るX線異物検出装置は、前記位置調整判定手段が、前記第1の波形の先端部に対する前記第2の波形の先端部の位相差と前記搬送手段の搬送速度の積に基づいて前記位置調整量を判定することを特徴とする。
【0018】
この構成により、位置調整判定手段は位置調整量を正確に判定することができる。
【0019】
また、本発明に係るX線異物検出装置は、前記第1のX線ラインセンサと前記第2のX線ラインセンサとが、同一制御タイミングで制御される2つのラインセンサ部から構成される単一のX線ラインセンサからなることを特徴とする。
【0020】
この構成により、第1のX線ラインセンサと第2のX線ラインセンサの動作タイミングを完全に同期することができる。
【0021】
また、本発明に係るX線異物検出装置は、前記位置調整部材を駆動する位置調整部材駆動手段と、前記位置調整判定手段が判定した位置調整方向および位置調整量に従って、前記位置調整部材駆動手段を駆動制御する駆動制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0022】
この構成により、位置調整判定手段が判定した位置調整方向および位置調整量に従って、駆動制御手段が位置調整部材駆動手段を駆動制御するので、支持部材に支持された第2のX線ラインセンサの位置を自動で調整することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明は、エネルギーサブトラクション法により得る2つのX線画像の画像ずれを低減し、異物検出性能の低下を防止することができるX線異物検出装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施の形態に係るX線異物検出装置の概略構成を示す斜視図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係るX線異物検出装置の側面および内部構成を示す図である。
【図3】本発明の一実施の形態に係るX線異物検出装置のX線ラインセンサおよび支持機構を示す上面図である。
【図4】本発明の一実施の形態に係るX線異物検出装置のX線ラインセンサおよび支持機構を示す側面図である。
【図5】本発明の一実施の形態に係るX線異物検出装置のX線ラインセンサから取得した第1の波形および第2の波形を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0026】
まず構成について説明する。
【0027】
図1に示すように、X線異物検出装置1は、搬送部2と検出部3とを筐体4の内部に備え、表示器5を筐体4の前面上部に備えている。
【0028】
搬送部2は、被検査物Wを所定間隔をおいて順次搬送するものである。この搬送部2は、例えば筐体4の内部で水平に配置されたベルトコンベアにより構成されている。搬送部2は、図1に示す駆動モータ6により予め設定された搬送速度で駆動され、搬入口7から搬入された被検査物Wを搬送方向である搬出口8側(図中X方向)に向けて、無端状のベルトの上側の搬送面としてのベルト面2a上を搬送させるようになっている。筐体4の内部においてベルト面2a上を搬入口7から搬出口8まで貫通する空間は搬送路21を形成している。
【0029】
検出部3は、順次搬送される被検査物Wに対し、搬送路21の途中の検査空間22においてX線を照射するとともに被検査物Wを透過するX線を検出するものであり、搬送路21途中の検査空間22の上方に所定高さ離隔して配置されたX線発生器9と、搬送部2内にX線発生器9と対向して配置されたX線検出器10を備えている。
【0030】
X線発生源としてのX線発生器9は、金属製の箱体11の内部に設けられた円筒状のX線管30を図示しない絶縁油に浸漬した構成を有している。本実施の形態では、X線管30として、2つのX線管31、32を備え、X線管31、32の陰極からの電子ビームを陽極のターゲットに照射させてX線を生成している。
【0031】
X線管31、32は、その長手方向が被検査物Wの搬送方向(X方向)となるよう配置されている。X線管31、32により生成されたX線は、下方のX線検出器10に向けて、図示しないスリットにより略三角形状のスクリーン状となって搬送方向(X方向)を横切るように照射されるようになっている。
【0032】
ここで、X線管31、32が発生するX線の強度は、X線管31、32の陽極と陰極との間に流す電流(管電流)に比例して変化するとともに、発生するX線の波長がX線管31、32の陽極と陰極との間に印加する電圧(管電圧)に応じて短くなり透過力が強くなる。
【0033】
すなわち、X線管31、32から発生されるX線の線質は、X線管31、32の管電流および管電圧に応じて変化する。本実施の形態では、X線管31が発生するX線の強度とX線管31が発生するX線の強度を異ならせており、例えば、X線管31を高出力(高エネルギーの線質のX線を出力)、X線管32を低出力(低エネルギーの線質のX線を出力)としている。
【0034】
なお、X線管31、32が発生するX線の強度は、必ずしも一定値に固定されるものではなく、検出対象とする異物および被検査物Wの種類や搬送速度に応じて、X線管31、32の管電流または管電圧が調整されるようになっている。
【0035】
X線検出器10は、搬送される被検査物Wの搬送方向(X方向)の平面上で搬送方向と直交するY方向に複数の検出素子を直線状に並べたX線ラインセンサ50を備えている。
【0036】
本実施の形態では、X線ラインセンサ50として、2つのX線ラインセンサ51、52を被検査物Wの搬送方向に備え、X線ラインセンサ51は、高出力のX線管31から照射されて被検査物Wを透過した検出信号(濃度データの画像)を出力し、X線ラインセンサ52は、高出力のX線管32から照射されて被検査物Wを透過した検出信号(濃度データの画像)を出力するようになっている。
【0037】
ここで、本実施の形態では、X線検出器10は、内蔵する図示しないA/D変換部によりX線ラインセンサ51、52の検出信号(輝度値データ)をデジタルデータに変換して濃度データとして出力するようになっているが、X線検出器10の外部にA/D変換部を備える構成としたり、A/D変換前の輝度値データのまま後段の総合制御部40に出力する等の構成としてもよく、デジタルデータである濃度データに変換することは必須要件ではない。
【0038】
X線ラインセンサ51、52を備えるX線検出器10からは、後述する総合制御部40(図2参照)での異物混入の有無の判定に必要なX線画像データを出力するようになっている。
【0039】
図2に示すように、搬送路21内の天井部21aには、搬送方向(X方向)に沿って複数箇所にX線遮蔽用の遮蔽カーテン16が吊り下げ配置されている。遮蔽カーテン16は、X線を遮蔽する鉛粉を混入したゴムシートをのれん状(上部が繋がっており下部が帯状に分割された状態)に加工したものから構成されており、検査空間22から搬送路21を介してX線が筐体4の外部に漏えいすることを防止するものである。
【0040】
遮蔽カーテン16は、本実施の形態では、搬入口7と検査空間22との間、および検査空間22と搬出口8との間にそれぞれ2枚ずつ設けられており、1つの遮蔽カーテン16が被検査物Wと接触して弾性変形して隙間が生じた場合でも、他の遮蔽カーテン16がX線を遮蔽するので漏えい基準量を超えることなくX線の漏えいを防止できるようになっている。
【0041】
なお、検査空間22の上面にはスリットが配置され、検査空間22の下面、側面は、X線の遮蔽のために筐体4等により略閉塞されている。搬送路21における遮蔽カーテン16、スリット、および筐体4等により囲まれた内側の空間が検査空間22を構成している。
【0042】
X線異物検出装置1は、X線検出器10から受け取った濃度データに基づく被検査物W中の異物の有無の判定を含む総合的な制御を行う総合制御部40を備えている。
【0043】
総合制御部40は、X線異物検出装置1の総合的な制御を行うものであり、X線ラインセンサ51、52からの濃度データを検出して所定のタイミングの濃度データをそれぞれ有効化するデータ検出部61、62と、データ検出部61、62からの濃度データをそれぞれ複数記憶する記憶部43と、X線ラインセンサ51、52からの濃度データの画像(以下、単に画像という)に対して合成処理、フィルタ処理等の画像処理を施す画像処理部44と、画像処理部44で画像処理が施された画像に対して被検査物Wと異物との判別を行って異物の混入の有無を判定する判定部48とを備えている。判定部48による判定結果は表示器5に表示されるようになっている。
【0044】
データ検出部60は、本実施の形態では2つのデータ検出部61、62からなり、X線ラインセンサ51、52からの濃度データに対して所定のタイミングで入力された濃度データ、すなわち、所定のデータ有効化入力タイミングの範囲のデータだけをそれぞれ有効化するようになっている。
【0045】
記憶部43は、X線ラインセンサ51、52から出力されたデータのうち、データ検出部61、62で有効化されたデータを一時的に記憶するものであり、画像を高速に記憶および読み出しが可能なメモリから構成されている。
【0046】
画像処理部44は、X線ラインセンサ51、52からの濃度データの画像に対して合成処理、フィルタ処理等の画像処理を施すようになっている。
【0047】
判定部48は、画像処理部44で画像処理が施された画像に対して、画像上の被検査物Wの中から異物を検出し、異物の混入の有無を判定するようになっている。
【0048】
また、X線異物検出装置1は、X線発生器9のX線出力、被検査物Wの搬送速度、X線検出器10の検査パラメータの設定操作、選択操作が行われる設定部49を備えており、この設定部49は、筐体4の前面上部の表示器5の隣に配置されている。
【0049】
図3、図4に示すように、本実施の形態では、X線ラインセンサ52は、第1支持部材71に支持されている。第1支持部材71は、X線ラインセンサ51に対して平行を保ったまま、X線ラインセンサ52を搬送方向上流側および下流側に変位可能に第2支持部材72に支持されている。
【0050】
具体的には、第1支持部材71の幅方向両端部の下面には搬送方向に延在するスライド凸部71aが形成されるととともに、第2支持部材72の幅方向両端部の上面には搬送方向に延在するスライド凹部72aが形成されており、スライド凹部72a内をスライド凸部71aが摺動することにより第1支持部材71の移動可能軌跡が搬送方向となるように案内される。
【0051】
第1支持部材71の搬送方向下流側には、第1支持部材71の下流側端部に当接してこの第1支持部材71の搬送方向に対する位置の調整を行う位置調整部材74が設けられ、第1支持部材71の上流側端部には、第1支持部材71に当接してこの第1支持部材71を位置調整部材74の側に押圧する圧縮ばね75が設けられている。
【0052】
位置調整部材74は、マイクロメータと同様の機構からなっており、調整ハンドル74aが操作されると、第1支持部材71の被検査物搬送方向における位置を上流側または下流側に調整するようになっている。
【0053】
また、図2に示すように、本実施の形態では、総合制御部40は、第1支持部材71の被検査物搬送方向における調整方向(上流側または下流側)および調整量を判定する位置調整判定部92と、を備え、表示器5は、位置調整判定部92の判定結果を表示するようになっている。
【0054】
位置調整判定部92は、X線ラインセンサ51から出力された第1のX線画像データにおける被検査物Wの搬送方向の波形である第1の波形(図5参照)と、X線ラインセンサ52から出力された第2のX線画像データにおける被検査物Wの搬送方向の波形である第2の波形(図5参照)とを取得し、第1の波形と第2の波形の先端部(傾斜部)の位相差に基づいて、第1支持部材71の被検査物搬送方向における位置調整方向および位置調整量を判定するようになっている。
【0055】
ここで、第1の波形および第2の波形においては、波形上の被検査物Wの先端に数ピクセル程度の幅で傾斜した先端部が生じる。この先端部は、波形の立ち上がりが厳密に垂直でないために生じるためであり、画像上は「ぼけ」として認識されるものである。この画像上の「ぼけ」である先端部の幅は、被検査物Wの厚さによっても異なるものであり、本実施の形態では一例として3ピクセルの幅であるものとして説明する。
【0056】
また、この先端部は、例えば、第1の波形において3ピクセルであったとしても、上流側のX線ラインセンサ51から下流側のX線ラインセンサ52までの距離によっては、第2の波形においては3ピクセルより増減する場合がある。
【0057】
これは、X線ラインセンサ51とX線ラインセンサ52の間隔が、これらX線ラインセンサ51、52の搬送方向の素子幅(例えば、0.4mm)の倍数となっていないために、被検査物Wの先端がX線ラインセンサ52を通過する時刻とX線ラインセンサ52の蓄積開始時刻が一致していないことが原因となっている。
【0058】
なお、X線ラインセンサ51、52は、同一周期(例えば1000ヘルツ)かつ同一タイミングで蓄積を行うようになっている。すなわち、図3に示すように、平行に配置された2つのX線ラインセンサ51、52が、同一制御タイミングで制御するように構成された単一のX線ラインセンサからなり、制御タイミングが同一タイミングとなるように、あたかも1つのX線ラインセンサを折り返して平行に並べたような構成になることが好ましい。
【0059】
位置調整判定部92は、図5に示すように、第2の波形の先端部の立ち上がり位置が0.3ピクセルだけ位相が早いため右側に位置しているときは、X線ラインセンサ52の駆動周期に対してX線ラインセンサ51とX線ラインセンサ52の距離が短いため、第1支持部材71の位置調整方向が搬送方向下流側であると判定する。
【0060】
また、位置調整判定部92は、位置調整量に関しては、0.3ピクセルに相当する量であると判定する。位置調整量は、ピクセルの差異(0.3ピクセル)と搬送速度との積から求められる。位置調整判定部92による判定結果は、表示器5に、例えば"位置調整方向:下流側、位置調整量:2mm"等と表示される。
【0061】
また、図3に示すように、位置調整部材74を駆動する位置調整部材駆動モータ82を調整ハンドル74aに連結するとともに、図2に示すように、総合制御部40は、位置調整部材駆動モータ82を駆動制御する駆動制御部93を備えている。
【0062】
駆動制御部93は、位置調整判定部92が判定した位置調整方向および位置調整量に従って位置調整部材駆動モータ82を駆動制御する。また、位置調整部材駆動モータ82は、パルス駆動するステッピングモータおよび図示しない減速機構等から構成される。
【0063】
このように構成することで、判定された位置調整方向、位置調整量に従って、駆動制御部93が位置調整部材駆動モータ82を駆動制御し、第1支持部材71により支持される下流側のX線ラインセンサ52の搬送方向における位置を自動的に調整できるようになっている。
【0064】
なお、X線異物検出装置1は、位置調整判定部92による判定結果を表示器5に表示するのみとして、調整ハンドル74aの操作をユーザーが行うように構成してもよい。
【0065】
以上のように、本実施の形態に係るX線異物検出装置1は、X線ラインセンサ51を、X線ラインセンサ52に対して平行となる姿勢を保って支持するとともに、被検査物搬送方向に位置調整可能に構成された第1支持部材71と、第1支持部材71の被検査物搬送方向に対する位置の調整操作を行う位置調整部材74と、第1のX線画像データにおける被検査物搬送方向の波形である第1の波形と第2のX線画像データにおける被検査物搬送方向の波形である第2の波形とを取得するとともに、第1の波形の先端部に対する第2の波形の先端部の位相差に基づいて第1支持部材71の位置調整方向および位置調整量を判定する位置調整判定部92と、位置調整判定部92による判定結果を表示する表示器5と、を備えたことを特徴とする。
【0066】
この構成により、X線画像のずれを低減するための位置調整方向と位置調整量が位置調整判定部92により判定されるとともに表示器5に表示されるので、ユーザーは位置調整部材74を操作して第1支持部材71に支持されたX線ラインセンサ52の位置を容易に調整することができる。このため、エネルギーサブトラクション法により得る2つのX線画像の画像ずれを低減し、異物検出性能の低下を防止することができる。
【0067】
また、本実施の形態に係るX線異物検出装置1は、位置調整判定部92が、第1の波形の先端部のピクセル数に対する第2の波形の先端部のピクセル数の差から、第1の波形の先端部に対する第2の波形の先端部の位相差を求めることを特徴とする。
【0068】
この構成により、位置調整判定部92は位置調整方向と位置調整量を正確に判定することができる。
【0069】
また、本実施の形態に係るX線異物検出装置1は、第1の波形の先端部に対して第2の波形の先端部の位相が早いときに、第1支持部材71の位置調整方向が被検査物搬送方向下流側であると判定することを特徴とする。
【0070】
この構成により、位置調整判定部92は位置調整方向を正確に判定することができる。
【0071】
また、本実施の形態に係るX線異物検出装置1は、位置調整判定部92が、第1の波形の先端部に対する第2の波形の先端部の位相差と搬送部2の搬送速度の積に基づいて位置調整量を判定することを特徴とする。
【0072】
この構成により、位置調整判定手段は位置調整量を正確に判定することができる。
【0073】
また、本実施の形態に係るX線異物検出装置1は、X線ラインセンサ51とX線ラインセンサ52とが、同一制御タイミングで制御される2つのラインセンサ部から構成される単一のX線ラインセンサからなることを特徴とする。
【0074】
この構成により、X線ラインセンサ51とX線ラインセンサ52の動作タイミングを完全に同期することができる。
【0075】
また、本実施の形態に係るX線異物検出装置1は、位置調整部材74を駆動する位置調整部材駆動モータ82と、位置調整判定部92が判定した位置調整方向および位置調整量に従って、位置調整部材駆動モータ82を駆動制御する駆動制御部93と、を備えたことを特徴とする。
【0076】
この構成により、位置調整判定部92が判定した位置調整方向および位置調整量に従って、駆動制御部93が位置調整部材駆動モータ82を駆動制御するので、第1支持部材71に支持されたX線ラインセンサ52の位置を自動で調整することができる。
【産業上の利用可能性】
【0077】
以上のように、本発明に係るX線異物検出装置は、エネルギーサブトラクション法により得る2つのX線画像の画像ずれを低減し、異物検出性能の低下を防止することができるという効果を有し、複数本のX線ラインセンサからの画像を合成して異物を強調させた画像を得るエネルギーサブトラクション法を採用したX線異物検出装置として有用である。
【符号の説明】
【0078】
1 X線異物検出装置
2 搬送部(搬送手段)
2a ベルト面(搬送面)
3 検出部
4 筐体
5 表示器(表示手段)
9 X線発生器
10 X線検出器
21 搬送路
21a 天井部
22 検査空間
30 X線管
31 X線管(第1のX線源)
32 X線管(第2のX線源)
40 総合制御部
43 記憶部
44 画像処理部(画像合成手段)
48 判定部(判定手段)
49 設定部
51 X線ラインセンサ(第1のX線ラインセンサ)
52 X線ラインセンサ(第2のX線ラインセンサ)
61、62 データ検出部
71 第1支持部材(支持部材)
72 第2支持部材
74 位置調整部材
74a 調整ハンドル
75 圧縮ばね
82 位置調整部材駆動モータ(位置調整部材駆動手段)
92 位置調整判定部(位置調整判定手段)
93 駆動制御部(駆動制御手段)
W 被検査物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検査物を搬送面上で被検査物搬送方向に搬送する搬送手段と、
前記搬送面上を搬送される被検査物に互いに異なる強度のX線を照射する第1のX線源および第2のX線源と、
前記搬送面を挟んで前記第1のX線源および前記第2のX線源と対向する位置に配置され、前記第1のX線源から照射され前記被検査物を透過するX線に応じた第1のX線画像データおよび前記第2のX線源から照射され前記被検査物を透過するX線に応じた第2のX線画像データをそれぞれ出力する第1のX線ラインセンサおよび第2のX線ラインセンサと、
前記第1のX線画像データおよび第2のX線画像データを合成して前記被検査物に対応する1つの画像データとして出力する画像合成手段と、
前記画像合成手段が出力する画像データに基づいて前記被検査物中の異物の有無を判定する判定手段と、を備えるX線異物検出装置であって、
前記第1のX線ラインセンサを、前記第2のX線ラインセンサに対して平行となる姿勢を保って支持するとともに、前記被検査物搬送方向に位置調整可能に構成された支持部材と、
前記支持部材の前記被検査物搬送方向に対する位置の調整操作を行う位置調整部材と、
前記第1のX線画像データにおける前記被検査物搬送方向の波形である第1の波形と前記第2のX線画像データにおける前記被検査物搬送方向の波形である第2の波形とを取得するとともに、前記第1の波形の先端部に対する前記第2の波形の先端部の位相差に基づいて前記支持部材の位置調整方向および位置調整量を判定する位置調整判定手段と、
前記位置調整判定手段による判定結果を表示する表示手段と、を備えたことを特徴とするX線異物検出装置。
【請求項2】
前記位置調整判定手段が、前記第1の波形の先端部のピクセル数に対する前記第2の波形の先端部のピクセル数の差から、前記第1の波形の先端部に対する前記第2の波形の先端部の位相差を求めることを特徴とする請求項1に記載のX線異物検出装置。
【請求項3】
前記第1の波形の先端部に対して前記第2の波形の先端部の位相が早いときに、前記支持部材の位置調整方向が被検査物搬送方向下流側であると判定することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のX線異物検出装置。
【請求項4】
前記位置調整判定手段が、前記第1の波形の先端部に対する前記第2の波形の先端部の位相差と前記搬送手段の搬送速度の積に基づいて前記位置調整量を判定することを特徴とする請求項1〜請求項3の何れかに記載のX線異物検出装置。
【請求項5】
前記第1のX線ラインセンサと前記第2のX線ラインセンサとが、同一制御タイミングで制御される2つのラインセンサ部から構成される単一のX線ラインセンサからなることを特徴とする請求項1〜請求項4の何れかに記載のX線異物検出装置。
【請求項6】
前記位置調整部材を駆動する位置調整部材駆動手段と、
前記位置調整判定手段が判定した位置調整方向および位置調整量に従って、前記位置調整部材駆動手段を駆動制御する駆動制御手段と、を備えたことを特徴とする請求項1〜請求項5の何れかに記載のX線異物検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−68518(P2013−68518A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−207307(P2011−207307)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(302046001)アンリツ産機システム株式会社 (238)
【Fターム(参考)】