X線発生器およびそれを用いた異物検出装置
【課題】小型でリップルが少なく、効率的にX線を発生できるようにする。
【解決手段】X線発生器20の電源部22は、商用交流電源を、整流・平滑し、その平滑出力をスイッチングして交流化し、これを昇圧トランスで昇圧して、位相が異なる複数相の交流を出力する多相型インバータ23と、コンデンサとダイオードの多段接続により構成され、多相型インバータ23から出力される各交流をその段数に応じた高電圧までそれぞれ昇圧・整流する複数のコッククロフト回路311、312と、それらの複数のコッククロフト回路311、312の出力を並列に重畳してX線管21に与える並列重畳回路35とを有している。
【解決手段】X線発生器20の電源部22は、商用交流電源を、整流・平滑し、その平滑出力をスイッチングして交流化し、これを昇圧トランスで昇圧して、位相が異なる複数相の交流を出力する多相型インバータ23と、コンデンサとダイオードの多段接続により構成され、多相型インバータ23から出力される各交流をその段数に応じた高電圧までそれぞれ昇圧・整流する複数のコッククロフト回路311、312と、それらの複数のコッククロフト回路311、312の出力を並列に重畳してX線管21に与える並列重畳回路35とを有している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高圧電源で駆動されるX線発生器を小型に且つ高電力化するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
食品の製造ラインでは、製品に混入した異物をX線により検出する異物検出装置が用いられている。
【0003】
この種の異物検出装置に用いられる工業用のX線発生器では、X線を出力するX線管(真空管)に数100kVの高圧直流電源が使用されているが、このような高圧の直流電源を、一般的な商用交流電源から比較的小規模な回路構成で生成する方式として、インバータとコッククロフト回路を組合せた方式が知られている。
【0004】
この方式は、インバータにより、商用交流電源(100Vや200V)を整流して直流に変換し、これを半導体素子によるスイッチング回路と昇圧コイルにより数kVの交流に変換する。
【0005】
そして、この数kVの交流を、コンデンサの充放電作用とダイオードの整流作用を用いて、入力する交流の昇圧・整流を多段に行うコッククロフト回路により数10kV〜数100kVの直流に変換している。
【0006】
なお、このようなインバータとコッククロフト回路を用いて商用交流電源からX線発生器の高圧電源を生成する技術は、例えば特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−45761号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
コッククロフト回路を用いて交流電圧を昇圧整流する方式は、コッククロフト回路内の段数を多くすればより高い電圧が得られるが、出力のリップルも増加し、電力効率が低下する。また、大出力のX線を得るためには構成部品の耐圧、許容電流等を大きくしなければならず、個々の部品が大型化し、高コスト化する。
【0009】
この問題を解決する技術として、前記特許文献1では、インバータとコッククロフト回路を1組とし、これを複数組(実施形態では3組)用意し、その各組のインバータに商用交流電源を供給し、1組目のコッククロフト回路の出力を、2組目のインバータの昇圧トランスの2次側(高圧側)の一端(コールド側)に接続して、1組目のコッククロフト回路の出力電圧で2組目のコッククロフト回路の出力電圧を底上げし、さらに、この底上げされた2組目のコッククロフト回路の出力電圧を、3組目のインバータの昇圧トランスの2次側の一端(コールド側)に接続して、2組目のコッククロフト回路の出力電圧で3組目のコッククロフト回路の出力電圧を底上げしてこれを最終の出力電圧とする構成が示されている。
【0010】
この技術によれば、各組のインバータやコッククロフト回路の校正部品は同じで、それぞれ単独での出力電圧の3倍の電圧を出力させることができ、1組あたりのコッククロフト回路の段数を少なくすることで、リップル特性も向上するいう利点がある。
【0011】
この特許文献1の技術は、低い耐圧の回路部品で高電圧を少ないリップルで得ることを目的としているが、実際には、各組の出力電圧がインバータの昇圧トランスのベース電位として印加されるので、1組目より2組目の昇圧トランスの絶縁耐圧は高い必要があり、2組目の昇圧トランスの絶縁耐圧はさらに高い必要があり、必要な絶縁耐圧を得るためには、巻線ギャップを拡げる必要が生じ、昇圧トランスの形状が大きくなり、高コスト化する。
【0012】
また、負荷(X線管)に供給できる電流は一組分であるので、より大きな電流を供給しようとすれば、負荷が大きくなることによる各組のリップルが増加してしまい、コッククロフト回路の段数を減らしたことによる効果が望めなくなってしまう。
【0013】
本発明は、これらの問題を解決し、小型でリップルが少なく、効率的にX線を発生できるX線発生器およびこれを用いた異物検出装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記目的を達成するために、本発明のX線発生器は、
供給される直流電圧に応じた強度のX線を出力するX線管(21)と、
商用交流電源を昇圧、整流、平滑して高電圧直流を生成し前記X線管に供給する電源部(22)とを備えたX線発生器において、
前記電源部は、
前記商用交流電源を、整流・平滑し、その平滑出力をスイッチングして交流化し、これを昇圧トランスで昇圧して、位相が異なる複数相の交流を出力する多相型インバータ(23)と、
コンデンサとダイオードの多段接続により構成され、前記多相型インバータから出力される各交流をその段数に応じた高電圧までそれぞれ昇圧・整流する複数のコッククロフト回路(311〜31N)と、
前記複数のコッククロフト回路の出力を並列に重畳して前記X線管に与える並列重畳回路(35)とを有している。
【0015】
また、本発明の異物検出装置は、
検査対象の物品を所定方向に搬送する物品搬送手段(51)と、
X線管(21)と、該X線管に高電圧直流を供給する電源部(22)とを有し、前記物品搬送手段の搬送路にX線を照射するX線発生器(20)と、
前記X線発生器から出力されて前記搬送路を通過したX線の強度を検出するX線検出器(53)と、
前記物品搬送手段によって前記物品が搬送路を通過したときに前記X線検出器から出力された信号に基づいて、前記物品内に異物があるか否かの検査を行う処理部(55)とを備えた異物検査装置において、
前記X線発生器の電源部は、
商用交流電源を、整流・平滑し、その平滑出力をスイッチングして交流化し、これを昇圧トランスで昇圧して、位相が異なる複数相の交流を出力する多相型インバータ(23)と、
コンデンサとダイオードの多段接続により構成され、前記多相型インバータから出力される各交流をその段数に応じた高電圧までそれぞれ昇圧・整流する複数のコッククロフト回路(311〜31N)と、
前記複数のコッククロフト回路の出力を並列に重畳して前記X線管に与える並列重畳回路(35)とを有しており、
前記X線検出器は、前記搬送路の幅方向に一列に並んだ複数のX線センサ(53a)からなり、
さらに、前記処理部は、
前記複数のX線センサの出力を、前記X線発生器の多相型インバータから出力される各交流に同期したタイミングでスキャンして前記物品の透過画像情報を取得し、該透過画像情報の濃淡比較から異物の有無を検出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
このように本発明のX線発生器は、その電源部が、多相型インバータから出力された位相の異なる交流を、それぞれコッククロフト回路によって昇圧・整流し、これらを並列に重畳してX線管に与えるようにしている。
【0017】
このように、位相が異なる交流に対してそれぞれコッククロフト回路で昇圧・整流した直流が並列重畳されるため、各直流に含まれるリップル位相もずれた状態で重ね合わされるので、リップルを小さくすることができ、大電流に対して小さいリップルを維持できる。
【0018】
また、インバータの出力側の昇圧トランスや、複数のコッククロフト回路の構成部品の耐圧は、X線管への供給電圧に対応したものでよく共通化でき、許容電流は、X線管への供給電流の複数分の1でよくなり、効率を悪化させる主要因の電流損失を極めて少なくすることができ、共通の回路部品で低コストに大電力のX線を効率的に出力させることができる。
【0019】
また、このX線発生器を用いた異物検出装置で、複数のX線センサが搬送路の幅方向に一列に並んだX線検出器を用い、その各X線センサの出力を、多相型インバータが出力する交流に同期してスキャンして物品の画像情報を得るものでは、多相型インバータが出力する交流に位相差があることで、出力全体のリップル間隔が短くなり、その短周期のリップルに同期した短周期のスキャンを行うことができ、しかも、毎回X線出力がほぼ等しい状態での画像情報を取得できるので、解像度の高い画像情報をより安定に得ることができ、異物の検出を正確に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態の構成図
【図2】実施形態の要部の構成例を示す図
【図3】実施形態の要部の他の構成例を示す図
【図4】実施形態の要部の他の構成例を示す図
【図5】実施形態の要部の他の構成例を示す図
【図6】実施形態の要部の回路例を示す図
【図7】実施形態の動作説明図
【図8】3以上のN位相方式に拡張した場合の構成図
【図9】異物検出装置の概略正面図
【図10】異物検出装置の概略側面図
【図11】X線に供給する高圧直流とスキャンタイミングとの関係を示す図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明を適用したX線発生器20の構成を示している。
【0022】
このX線発生器20は、印加される直流電圧に応じた強度のX線を出射するX線管21と、商用交流電源(例えば電圧200V)を昇圧、整流、平滑して高電圧の直流を生成し、X線管21に供給する電源部22とを備えている。なお、図示しない電源によりX線管21のフィラメントに対する電源供給もなされているものとする。
【0023】
電源部22は、商用交流電源ACLを、整流・平滑し、その平滑出力を位相が異なる信号でスイッチングし、これを昇圧トランスで昇圧して、等電圧で位相が異なる複数相(ここでは2相とする)の交流ACM1、ACM2を出力する多相型インバータ23と、コンデンサとダイオードの多段接続により構成され、多相型インバータ23から出力される各交流ACM1、ACM2をその段数に応じた高電圧の直流DCH1、DCH2までそれぞれ昇圧・整流する複数のコッククロフト回路311、312と、その複数のコッククロフト回路311、312の出力を並列に重畳し、その重畳した直流DCHOUT をX線管21に与える並列重畳回路35と、出力電圧安定制御用の抵抗分割回路36とを有している。
【0024】
多相型インバータ23は、例えば図2に示すように、商用交流電源ACLを整流・平滑回路24により直流DCLに変換し、電圧可変回路25に与える。
【0025】
電圧可変回路25は、X線管21に供給する直流電圧を安定化するためのものであり、例えばバイポーラトランジスタのコレクタで直流DCLを受け、ベースに供給される制御電圧Vcに対してベース・エミッタ間電圧降下Vbe分低い電圧の直流DCL′をエミッタから出力する。この制御電圧Vcは後述する電圧制御回路29から出力される。
【0026】
電圧可変回路25から出力された直流DCL′は、2つのスイッチング回路261、262に供給される。スイッチング回路261、262は、ブリッジ型のものであり、直流DCL′の入力ラインと昇圧トランス271、272の一次側巻線27aの両端との間を接続するための4つのスイッチ素子(FETやバイポーラトランジスタ)SW1〜SW4が設けられており、スイッチ素子SW1、SW2がオン状態になれば、昇圧トランス271、272の一次側巻線27aに図で下向きの電流が流れ、スイッチ素子SW3、SW4がオン状態になれば、昇圧トランス271、272の一次側巻線27aに図で上向きの電流が流れる。
【0027】
スイッチ素子SW1、SW2は、後述のパルス発生器28からの駆動パルスP1、P2のレベルのハイ、ローに応じてオンオフし、スイッチ素子SW3、SW4は、駆動パルスP1、P2をそれぞれ反転するインバータINVの出力のレベルのハイ、ローに応じてオンオフする。
【0028】
パルス発生器28は、同一周波数fで位相の異なる(この実施形態の場合、図2に示しているように、位相が反転した)駆動パルスP1、P2を出力する。ここでは2相式の例であるが、N(Nは3以上の複数)相式であれば、2π/Nの位相差のあるN相の駆動パルスP1〜PNを出力する。
【0029】
この駆動パルスP1、P2の供給により、昇圧トランス271、272の二次側巻線27bの両端には、巻線比(1対n)の2乗倍(1対n2)だけ昇圧された互いに位相が反転した交流ACM1、ACM2が出力される。ここで、例えばnが4で、入力の直流DCL′の電圧が250Vであれば、250×16=4000V(尖頭値)の交流ACM1、ACM2が出力される。
【0030】
なお、ここでは、二つのスイッチング回路261、262に位相が反転した駆動パルスを与えているが、2相式に限定すれば、図3のように、二つのスイッチング回路261、262に供給する直流DCL′の極性を反転し、それらにパルス発生器28から同相の駆動パルスPを与えることで、等電圧で位相が反転した交流ACM1、ACM2を出力することもできる。
【0031】
また、図4のように、スイッチング回路261、262に供給する直流DCL′の極性を同一にし、それらにパルス発生器28から同相の駆動パルスPを与え、昇圧トランス271、272の極性を互いに反転させて、等電圧で位相が反転した交流ACM1、ACM2を出力することもできる。
【0032】
さらに、図5の(a)のように、スイッチング回路26を一組とし、その出力を、二次側に同巻数の2つの巻線27b、27cを有する昇圧トランス27′の一次側27aに供給して、二つの二次巻線27b、27cから等電圧で互いに位相反転した交流ACM1、ACM2を出力させる構成や、図5の(b)のように、スイッチング回路26の出力を、二つの独立した昇圧トランス271、272に与えて、その二つの昇圧トランス271、272から等電圧で互いに位相反転した交流ACM1、ACM2を出力させる構成も採用できる。
【0033】
このようにして得られた等電圧の2相の交流ACM1、ACM2は、同一構成のコッククロフト回路311、312に入力される。
【0034】
コッククロフト回路311、312は、図6のように、初段のアノードがアースラインに接続され、最終段のカソードが出力端に接続され、順方向に複数(この例では9個)直列接続されたダイオードD1〜D9と、入力端および奇数番目のダイオードD1、D3、D5、D7、D9のカソードの各間を入力側から順番に接続するコンデンサC1〜C5と、アースラインおよび偶数番目のダイオードD2、D4、D6、D8のカソードおよび出力端までの各間を順番に接続するコンデンサC1′〜C5′とで構成され、ダイオードD1、D2とコンデンサC1、C1′で構成される一般的に知られる半波倍電圧回路の段数を拡張したものであり、ここでは入力端に供給される交流ACM1、ACM2のほぼ9倍の電圧の直流DCH1、DCH2を出力する。
【0035】
これらの高圧(例えば36KV)の直流DCH1、DCH2は、並列重畳回路35の抵抗R1、R2(R1=R2)をそれぞれ介して並列に接続され、その並列重畳された直流DCHOUTがX線管21のプレート(図示せず)に与えられ、その電圧に応じた強度のX線が出力されることになる。なお、並列重畳回路35の抵抗R1、R2の値は、X線管21の内部抵抗に比べて十分低く、抵抗R1、R2による電圧降下は無視できるものとする。
【0036】
また、並列重畳された直流DCHOUTは抵抗分割回路36に入力される。抵抗分割回路36は、並列重畳回路35の出力とアースとの間に直列接続された抵抗Ra、Rbと、抵抗Rbに並列接続された平滑用のコンデンサCからなり、高圧の直流DCHOUTを、1/Q=Rb/(Ra+Rb)に降圧して、多相型インバータ23の電圧制御回路29に出力する。ここでQは例えば3600である。なお、抵抗RaとコンデンサCとで形成されるローパスフィルタの遮断周波数は、リップル周波数より十分低いものとする。
【0037】
電圧制御回路29は、例えば差動増幅器とドライバからなり、抵抗分割回路36の出力電圧Vxと基準電圧Vr(例えば10V)とを比較し、出力電圧Vxが基準電圧Vrより大きくなると電圧可変回路25への制御電圧Vcを低く変化させ、出力電圧Vxが基準電圧Vrより小さくなると電圧可変回路25への制御電圧Vcを高く変化させて、出力電圧Vxが基準電圧Vrと等しくなるようにフィードバック制御している。この制御により、X線管21に供給される直流の電圧DCHOUTの平均値は、電圧Vr×Q(=36kV)に安定化される。
【0038】
このように構成されたX線発生器20では、位相が180°異なる交流ACM1、ACM2を二つのコッククロフト回路311、312に供給し、その出力を並列重畳してX線管21に供給している。
【0039】
このため、例えば図7の(a)、(b)のように、各コッククロフト回路311、312の出力DCH1、DCH2に、リップルRP1、RP2があっても、その位相が互いに半周期分ずれており、これを並列重畳した場合、電圧が高い方が優先的に出力されるため、図7の(c)に示すように、出力DCHOUTのリップルRPOUTは、RP1、RP2より小さくなり、平均電圧も上昇する。
【0040】
つまり、通常の2倍の電流を供給しても、コッククロフト回路一組分のリップルより小さいリップルに抑えることができ、その結果、電力効率が高くなり、X線出力を増大することができる。
【0041】
また、多相型インバータ23の昇圧トランスや二つのコッククロフト回路311、312の構成部品の耐圧は、X線管21への供給電圧に対応したものでよく、また、許容電流も、X線管21への供給電流の複数分の1(この場合1/2)でよくなり、効率を悪化させる主要因の電流損失を極めて少なくすることができ、共通の回路部品で低コストに大電力のX線を効率的に出力させることができる。
【0042】
なお、上記実施形態は2相式であったが、図8に示すように、多相型インバータ23のが位相が異なるN相(Nは3以上)の交流を出力し、その交流をN個のコッククロフト回路311〜31Nによって昇圧、整流し、その出力DCH1〜DCHNを、抵抗R1〜RNからなる並列重畳回路35で並列に重畳して、その重畳した直流DCHOUTをX線管21に与える構成であってもよい。この場合、多相インバータ23の内部のスイッチング回路26、昇圧トランス27もN組用意し、パルス発生器28から位相が異なるN相パルスを各スイッチング回路に与えればよい。
【0043】
上記構成のX線発生器20は、電源部22の出力のリップルが小さく、その間隔が短いので、短い間隔に強いX線を照射が可能であるから、X線を用いた搬送中の物品の異物を検出する異物検出装置に好適である。
【0044】
以下、その点について説明する。図9、図10は、X線を用いた異物検出装置50の構成を示している。
【0045】
この異物検出装置50は、例えばコンベアからなり、検査対象の物品Wを所定方向に搬送する物品搬送手段51と、前記X線管21、電源部22により構成され、コンベア51の搬送路に、例えば上方から下方へ向けてX線を照射するX線発生器20とを有している。
【0046】
ここで、X線発生器20は、搬送路の上方からその幅方向に広がったX線を照射し、これを搬送路の下側に配置されたX線検出器53が検出する。
【0047】
X線検出器53は、物品に混入している異物によるX線の透過量の変化からその混入一を特定できるようにそれぞれの個々のX線感受面が小さい複数MのX線センサ53aを搬送路の幅方向に隙間無く一列に並べて一体化されたものである。
【0048】
処理部55は、複数のX線センサ53aの出力を、X線発生器20の多相型インバータ23から出力される各交流に同期したタイミングでスキャンして、物品Wの透過画像情報を取得し、その透過画像情報の濃淡比較から異物の有無を検出する。
【0049】
これを実現するための構成として、処理部55は、M対1のスイッチ回路56、A/D変換器57、画像メモリ58、記憶制御部59、判定部60を有している。
【0050】
スイッチ回路56は記憶制御部59からの選択信号にしたがって入力信号を順次切替えてA/D変換器57に出力し、デジタルの透過データ値に変換させて、画素メモリ58に与える。
【0051】
また、記憶制御部59は、スイッチ回路56への選択信号とともに順次切り替わるアドレス信号を画像メモリに58に与え、各透過画像データをアドレス順に記憶させる。ここで、選択信号はM個のX線センサ53aの出力を取り出すためにM通りに変化して、これを1スキャンとして物品の搬送速度に対して無視できる程度の短時間に終了させて、物品をその搬送方向に一定厚さで切断した断片毎の幅方向の透過量データを時分割に収集し、このスキャンを物品がX線の照射領域を搬送している間に所定間隔で繰り返して、物品全体の透過量データを収集する。
【0052】
この記憶制御部59が、X線センサ53aの個数M分の一連の選択信号およびアドレス信号を出力するタイミング(つまりスキャンタイミング)は、多相型インバータ23が出力する異位相の交流ACM1、ACM2に同期している。
【0053】
ここで、上記した半波型で正出力のコッククロフト回路311、312では、入力する交流ACM1、ACM2の正の半サイクルで充電が行われるので、その半サイクルの期間にピークが現れ、これが直流DCHOUTのリップルの主成分となるので、交流ACM1、ACM2に同期しているということは、直流DCHOUTのリップルにも同期していることになる。
【0054】
このように、スキャンタイミングがリップルに同期していれば、リップルにより変動する直流電圧のうち、毎回ある特定の電圧のタイミングでスキャンが行われるので、1スキャンに要する時間がリップル周期に比べて十分短いとすれば、X線の出力強度がほぼ同じタイミングでセンサスキャンが行われることになり、リップルによる出力強度の変化の影響を受けない正確な透過画像データを得ることができる。
【0055】
また、リップルは互いに位相が異なる交流にそれぞれ生じるリップルを重畳させたものであるから、単独のコッククロフト回路の出力に生じるリップルよりその発生間隔が1/Nに短縮される。このため、スキャン間隔も1/Nに短縮することができ、これによって従来と同じ解像度を維持しつつ、搬送速度をN倍にできたり、逆に、従来と同じ搬送速度を維持しつつ、より微細なスキャンをすることができる。
【0056】
また、図11のように、1度のスキャンの期間を、リップルにより変動する直流DCHOUTの電圧がほぼピークとなるタイミングに合わせれば、最も高いX線出力での透過データを収集することができる。このリップルのピークは、コッククロフト回路の動作原理から、交流ACM1、ACM2の1サイクル中の特定タイミング(例えば正の半サイクルのピークタイミング)に現れるので、基準のタイミング(例えば交流のゼロクロスタイミング)から特定タイミングまでの時間を予め調べておき、基準タイミングからその時間が経過したときにスキャンを行うことで、最も高いX線出力での透過画像データを収集することができる。
【0057】
このようにして、画像メモリ58には物品W一つ分の透過画像データ(X線センサ53aの数にスキャン回数を乗じた画素数のデータ)が集められ、判定部60により、その各透過データに対する濃淡比較(必要であればパターン認識処理も含む)、即ち、予め設定したしきい値と画像データとの比較処理を行い、その比較結果から物品Wに異物があるか否かを判定し、その判定結果を図示しない選別部等に出力し、異物のある物品を排除させる。
【0058】
なお、この異物検出装置50において用いるX線発生器20の構成についても、前記したように、2相型以外のより多相のものが使用できることは勿論である。
【符号の説明】
【0059】
20……X線発生器、21……X線管、22……電源部、23……多相型インバータ、24……整流・平滑回路、25……電圧可変回路、26……スイッチング回路、27……昇圧トランス、28……パルス発生器、29……電圧制御回路、31……コッククロフト回路、35……並列重畳回路、36……抵抗分割回路、50……異物検出装置、51……物品搬送手段、53……X線検出器、55……処理部、56……スイッチ回路、57……A/D変換器、58……画像メモリ、59……記憶制御部、60……判定部
【技術分野】
【0001】
本発明は、高圧電源で駆動されるX線発生器を小型に且つ高電力化するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
食品の製造ラインでは、製品に混入した異物をX線により検出する異物検出装置が用いられている。
【0003】
この種の異物検出装置に用いられる工業用のX線発生器では、X線を出力するX線管(真空管)に数100kVの高圧直流電源が使用されているが、このような高圧の直流電源を、一般的な商用交流電源から比較的小規模な回路構成で生成する方式として、インバータとコッククロフト回路を組合せた方式が知られている。
【0004】
この方式は、インバータにより、商用交流電源(100Vや200V)を整流して直流に変換し、これを半導体素子によるスイッチング回路と昇圧コイルにより数kVの交流に変換する。
【0005】
そして、この数kVの交流を、コンデンサの充放電作用とダイオードの整流作用を用いて、入力する交流の昇圧・整流を多段に行うコッククロフト回路により数10kV〜数100kVの直流に変換している。
【0006】
なお、このようなインバータとコッククロフト回路を用いて商用交流電源からX線発生器の高圧電源を生成する技術は、例えば特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−45761号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
コッククロフト回路を用いて交流電圧を昇圧整流する方式は、コッククロフト回路内の段数を多くすればより高い電圧が得られるが、出力のリップルも増加し、電力効率が低下する。また、大出力のX線を得るためには構成部品の耐圧、許容電流等を大きくしなければならず、個々の部品が大型化し、高コスト化する。
【0009】
この問題を解決する技術として、前記特許文献1では、インバータとコッククロフト回路を1組とし、これを複数組(実施形態では3組)用意し、その各組のインバータに商用交流電源を供給し、1組目のコッククロフト回路の出力を、2組目のインバータの昇圧トランスの2次側(高圧側)の一端(コールド側)に接続して、1組目のコッククロフト回路の出力電圧で2組目のコッククロフト回路の出力電圧を底上げし、さらに、この底上げされた2組目のコッククロフト回路の出力電圧を、3組目のインバータの昇圧トランスの2次側の一端(コールド側)に接続して、2組目のコッククロフト回路の出力電圧で3組目のコッククロフト回路の出力電圧を底上げしてこれを最終の出力電圧とする構成が示されている。
【0010】
この技術によれば、各組のインバータやコッククロフト回路の校正部品は同じで、それぞれ単独での出力電圧の3倍の電圧を出力させることができ、1組あたりのコッククロフト回路の段数を少なくすることで、リップル特性も向上するいう利点がある。
【0011】
この特許文献1の技術は、低い耐圧の回路部品で高電圧を少ないリップルで得ることを目的としているが、実際には、各組の出力電圧がインバータの昇圧トランスのベース電位として印加されるので、1組目より2組目の昇圧トランスの絶縁耐圧は高い必要があり、2組目の昇圧トランスの絶縁耐圧はさらに高い必要があり、必要な絶縁耐圧を得るためには、巻線ギャップを拡げる必要が生じ、昇圧トランスの形状が大きくなり、高コスト化する。
【0012】
また、負荷(X線管)に供給できる電流は一組分であるので、より大きな電流を供給しようとすれば、負荷が大きくなることによる各組のリップルが増加してしまい、コッククロフト回路の段数を減らしたことによる効果が望めなくなってしまう。
【0013】
本発明は、これらの問題を解決し、小型でリップルが少なく、効率的にX線を発生できるX線発生器およびこれを用いた異物検出装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記目的を達成するために、本発明のX線発生器は、
供給される直流電圧に応じた強度のX線を出力するX線管(21)と、
商用交流電源を昇圧、整流、平滑して高電圧直流を生成し前記X線管に供給する電源部(22)とを備えたX線発生器において、
前記電源部は、
前記商用交流電源を、整流・平滑し、その平滑出力をスイッチングして交流化し、これを昇圧トランスで昇圧して、位相が異なる複数相の交流を出力する多相型インバータ(23)と、
コンデンサとダイオードの多段接続により構成され、前記多相型インバータから出力される各交流をその段数に応じた高電圧までそれぞれ昇圧・整流する複数のコッククロフト回路(311〜31N)と、
前記複数のコッククロフト回路の出力を並列に重畳して前記X線管に与える並列重畳回路(35)とを有している。
【0015】
また、本発明の異物検出装置は、
検査対象の物品を所定方向に搬送する物品搬送手段(51)と、
X線管(21)と、該X線管に高電圧直流を供給する電源部(22)とを有し、前記物品搬送手段の搬送路にX線を照射するX線発生器(20)と、
前記X線発生器から出力されて前記搬送路を通過したX線の強度を検出するX線検出器(53)と、
前記物品搬送手段によって前記物品が搬送路を通過したときに前記X線検出器から出力された信号に基づいて、前記物品内に異物があるか否かの検査を行う処理部(55)とを備えた異物検査装置において、
前記X線発生器の電源部は、
商用交流電源を、整流・平滑し、その平滑出力をスイッチングして交流化し、これを昇圧トランスで昇圧して、位相が異なる複数相の交流を出力する多相型インバータ(23)と、
コンデンサとダイオードの多段接続により構成され、前記多相型インバータから出力される各交流をその段数に応じた高電圧までそれぞれ昇圧・整流する複数のコッククロフト回路(311〜31N)と、
前記複数のコッククロフト回路の出力を並列に重畳して前記X線管に与える並列重畳回路(35)とを有しており、
前記X線検出器は、前記搬送路の幅方向に一列に並んだ複数のX線センサ(53a)からなり、
さらに、前記処理部は、
前記複数のX線センサの出力を、前記X線発生器の多相型インバータから出力される各交流に同期したタイミングでスキャンして前記物品の透過画像情報を取得し、該透過画像情報の濃淡比較から異物の有無を検出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
このように本発明のX線発生器は、その電源部が、多相型インバータから出力された位相の異なる交流を、それぞれコッククロフト回路によって昇圧・整流し、これらを並列に重畳してX線管に与えるようにしている。
【0017】
このように、位相が異なる交流に対してそれぞれコッククロフト回路で昇圧・整流した直流が並列重畳されるため、各直流に含まれるリップル位相もずれた状態で重ね合わされるので、リップルを小さくすることができ、大電流に対して小さいリップルを維持できる。
【0018】
また、インバータの出力側の昇圧トランスや、複数のコッククロフト回路の構成部品の耐圧は、X線管への供給電圧に対応したものでよく共通化でき、許容電流は、X線管への供給電流の複数分の1でよくなり、効率を悪化させる主要因の電流損失を極めて少なくすることができ、共通の回路部品で低コストに大電力のX線を効率的に出力させることができる。
【0019】
また、このX線発生器を用いた異物検出装置で、複数のX線センサが搬送路の幅方向に一列に並んだX線検出器を用い、その各X線センサの出力を、多相型インバータが出力する交流に同期してスキャンして物品の画像情報を得るものでは、多相型インバータが出力する交流に位相差があることで、出力全体のリップル間隔が短くなり、その短周期のリップルに同期した短周期のスキャンを行うことができ、しかも、毎回X線出力がほぼ等しい状態での画像情報を取得できるので、解像度の高い画像情報をより安定に得ることができ、異物の検出を正確に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態の構成図
【図2】実施形態の要部の構成例を示す図
【図3】実施形態の要部の他の構成例を示す図
【図4】実施形態の要部の他の構成例を示す図
【図5】実施形態の要部の他の構成例を示す図
【図6】実施形態の要部の回路例を示す図
【図7】実施形態の動作説明図
【図8】3以上のN位相方式に拡張した場合の構成図
【図9】異物検出装置の概略正面図
【図10】異物検出装置の概略側面図
【図11】X線に供給する高圧直流とスキャンタイミングとの関係を示す図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明を適用したX線発生器20の構成を示している。
【0022】
このX線発生器20は、印加される直流電圧に応じた強度のX線を出射するX線管21と、商用交流電源(例えば電圧200V)を昇圧、整流、平滑して高電圧の直流を生成し、X線管21に供給する電源部22とを備えている。なお、図示しない電源によりX線管21のフィラメントに対する電源供給もなされているものとする。
【0023】
電源部22は、商用交流電源ACLを、整流・平滑し、その平滑出力を位相が異なる信号でスイッチングし、これを昇圧トランスで昇圧して、等電圧で位相が異なる複数相(ここでは2相とする)の交流ACM1、ACM2を出力する多相型インバータ23と、コンデンサとダイオードの多段接続により構成され、多相型インバータ23から出力される各交流ACM1、ACM2をその段数に応じた高電圧の直流DCH1、DCH2までそれぞれ昇圧・整流する複数のコッククロフト回路311、312と、その複数のコッククロフト回路311、312の出力を並列に重畳し、その重畳した直流DCHOUT をX線管21に与える並列重畳回路35と、出力電圧安定制御用の抵抗分割回路36とを有している。
【0024】
多相型インバータ23は、例えば図2に示すように、商用交流電源ACLを整流・平滑回路24により直流DCLに変換し、電圧可変回路25に与える。
【0025】
電圧可変回路25は、X線管21に供給する直流電圧を安定化するためのものであり、例えばバイポーラトランジスタのコレクタで直流DCLを受け、ベースに供給される制御電圧Vcに対してベース・エミッタ間電圧降下Vbe分低い電圧の直流DCL′をエミッタから出力する。この制御電圧Vcは後述する電圧制御回路29から出力される。
【0026】
電圧可変回路25から出力された直流DCL′は、2つのスイッチング回路261、262に供給される。スイッチング回路261、262は、ブリッジ型のものであり、直流DCL′の入力ラインと昇圧トランス271、272の一次側巻線27aの両端との間を接続するための4つのスイッチ素子(FETやバイポーラトランジスタ)SW1〜SW4が設けられており、スイッチ素子SW1、SW2がオン状態になれば、昇圧トランス271、272の一次側巻線27aに図で下向きの電流が流れ、スイッチ素子SW3、SW4がオン状態になれば、昇圧トランス271、272の一次側巻線27aに図で上向きの電流が流れる。
【0027】
スイッチ素子SW1、SW2は、後述のパルス発生器28からの駆動パルスP1、P2のレベルのハイ、ローに応じてオンオフし、スイッチ素子SW3、SW4は、駆動パルスP1、P2をそれぞれ反転するインバータINVの出力のレベルのハイ、ローに応じてオンオフする。
【0028】
パルス発生器28は、同一周波数fで位相の異なる(この実施形態の場合、図2に示しているように、位相が反転した)駆動パルスP1、P2を出力する。ここでは2相式の例であるが、N(Nは3以上の複数)相式であれば、2π/Nの位相差のあるN相の駆動パルスP1〜PNを出力する。
【0029】
この駆動パルスP1、P2の供給により、昇圧トランス271、272の二次側巻線27bの両端には、巻線比(1対n)の2乗倍(1対n2)だけ昇圧された互いに位相が反転した交流ACM1、ACM2が出力される。ここで、例えばnが4で、入力の直流DCL′の電圧が250Vであれば、250×16=4000V(尖頭値)の交流ACM1、ACM2が出力される。
【0030】
なお、ここでは、二つのスイッチング回路261、262に位相が反転した駆動パルスを与えているが、2相式に限定すれば、図3のように、二つのスイッチング回路261、262に供給する直流DCL′の極性を反転し、それらにパルス発生器28から同相の駆動パルスPを与えることで、等電圧で位相が反転した交流ACM1、ACM2を出力することもできる。
【0031】
また、図4のように、スイッチング回路261、262に供給する直流DCL′の極性を同一にし、それらにパルス発生器28から同相の駆動パルスPを与え、昇圧トランス271、272の極性を互いに反転させて、等電圧で位相が反転した交流ACM1、ACM2を出力することもできる。
【0032】
さらに、図5の(a)のように、スイッチング回路26を一組とし、その出力を、二次側に同巻数の2つの巻線27b、27cを有する昇圧トランス27′の一次側27aに供給して、二つの二次巻線27b、27cから等電圧で互いに位相反転した交流ACM1、ACM2を出力させる構成や、図5の(b)のように、スイッチング回路26の出力を、二つの独立した昇圧トランス271、272に与えて、その二つの昇圧トランス271、272から等電圧で互いに位相反転した交流ACM1、ACM2を出力させる構成も採用できる。
【0033】
このようにして得られた等電圧の2相の交流ACM1、ACM2は、同一構成のコッククロフト回路311、312に入力される。
【0034】
コッククロフト回路311、312は、図6のように、初段のアノードがアースラインに接続され、最終段のカソードが出力端に接続され、順方向に複数(この例では9個)直列接続されたダイオードD1〜D9と、入力端および奇数番目のダイオードD1、D3、D5、D7、D9のカソードの各間を入力側から順番に接続するコンデンサC1〜C5と、アースラインおよび偶数番目のダイオードD2、D4、D6、D8のカソードおよび出力端までの各間を順番に接続するコンデンサC1′〜C5′とで構成され、ダイオードD1、D2とコンデンサC1、C1′で構成される一般的に知られる半波倍電圧回路の段数を拡張したものであり、ここでは入力端に供給される交流ACM1、ACM2のほぼ9倍の電圧の直流DCH1、DCH2を出力する。
【0035】
これらの高圧(例えば36KV)の直流DCH1、DCH2は、並列重畳回路35の抵抗R1、R2(R1=R2)をそれぞれ介して並列に接続され、その並列重畳された直流DCHOUTがX線管21のプレート(図示せず)に与えられ、その電圧に応じた強度のX線が出力されることになる。なお、並列重畳回路35の抵抗R1、R2の値は、X線管21の内部抵抗に比べて十分低く、抵抗R1、R2による電圧降下は無視できるものとする。
【0036】
また、並列重畳された直流DCHOUTは抵抗分割回路36に入力される。抵抗分割回路36は、並列重畳回路35の出力とアースとの間に直列接続された抵抗Ra、Rbと、抵抗Rbに並列接続された平滑用のコンデンサCからなり、高圧の直流DCHOUTを、1/Q=Rb/(Ra+Rb)に降圧して、多相型インバータ23の電圧制御回路29に出力する。ここでQは例えば3600である。なお、抵抗RaとコンデンサCとで形成されるローパスフィルタの遮断周波数は、リップル周波数より十分低いものとする。
【0037】
電圧制御回路29は、例えば差動増幅器とドライバからなり、抵抗分割回路36の出力電圧Vxと基準電圧Vr(例えば10V)とを比較し、出力電圧Vxが基準電圧Vrより大きくなると電圧可変回路25への制御電圧Vcを低く変化させ、出力電圧Vxが基準電圧Vrより小さくなると電圧可変回路25への制御電圧Vcを高く変化させて、出力電圧Vxが基準電圧Vrと等しくなるようにフィードバック制御している。この制御により、X線管21に供給される直流の電圧DCHOUTの平均値は、電圧Vr×Q(=36kV)に安定化される。
【0038】
このように構成されたX線発生器20では、位相が180°異なる交流ACM1、ACM2を二つのコッククロフト回路311、312に供給し、その出力を並列重畳してX線管21に供給している。
【0039】
このため、例えば図7の(a)、(b)のように、各コッククロフト回路311、312の出力DCH1、DCH2に、リップルRP1、RP2があっても、その位相が互いに半周期分ずれており、これを並列重畳した場合、電圧が高い方が優先的に出力されるため、図7の(c)に示すように、出力DCHOUTのリップルRPOUTは、RP1、RP2より小さくなり、平均電圧も上昇する。
【0040】
つまり、通常の2倍の電流を供給しても、コッククロフト回路一組分のリップルより小さいリップルに抑えることができ、その結果、電力効率が高くなり、X線出力を増大することができる。
【0041】
また、多相型インバータ23の昇圧トランスや二つのコッククロフト回路311、312の構成部品の耐圧は、X線管21への供給電圧に対応したものでよく、また、許容電流も、X線管21への供給電流の複数分の1(この場合1/2)でよくなり、効率を悪化させる主要因の電流損失を極めて少なくすることができ、共通の回路部品で低コストに大電力のX線を効率的に出力させることができる。
【0042】
なお、上記実施形態は2相式であったが、図8に示すように、多相型インバータ23のが位相が異なるN相(Nは3以上)の交流を出力し、その交流をN個のコッククロフト回路311〜31Nによって昇圧、整流し、その出力DCH1〜DCHNを、抵抗R1〜RNからなる並列重畳回路35で並列に重畳して、その重畳した直流DCHOUTをX線管21に与える構成であってもよい。この場合、多相インバータ23の内部のスイッチング回路26、昇圧トランス27もN組用意し、パルス発生器28から位相が異なるN相パルスを各スイッチング回路に与えればよい。
【0043】
上記構成のX線発生器20は、電源部22の出力のリップルが小さく、その間隔が短いので、短い間隔に強いX線を照射が可能であるから、X線を用いた搬送中の物品の異物を検出する異物検出装置に好適である。
【0044】
以下、その点について説明する。図9、図10は、X線を用いた異物検出装置50の構成を示している。
【0045】
この異物検出装置50は、例えばコンベアからなり、検査対象の物品Wを所定方向に搬送する物品搬送手段51と、前記X線管21、電源部22により構成され、コンベア51の搬送路に、例えば上方から下方へ向けてX線を照射するX線発生器20とを有している。
【0046】
ここで、X線発生器20は、搬送路の上方からその幅方向に広がったX線を照射し、これを搬送路の下側に配置されたX線検出器53が検出する。
【0047】
X線検出器53は、物品に混入している異物によるX線の透過量の変化からその混入一を特定できるようにそれぞれの個々のX線感受面が小さい複数MのX線センサ53aを搬送路の幅方向に隙間無く一列に並べて一体化されたものである。
【0048】
処理部55は、複数のX線センサ53aの出力を、X線発生器20の多相型インバータ23から出力される各交流に同期したタイミングでスキャンして、物品Wの透過画像情報を取得し、その透過画像情報の濃淡比較から異物の有無を検出する。
【0049】
これを実現するための構成として、処理部55は、M対1のスイッチ回路56、A/D変換器57、画像メモリ58、記憶制御部59、判定部60を有している。
【0050】
スイッチ回路56は記憶制御部59からの選択信号にしたがって入力信号を順次切替えてA/D変換器57に出力し、デジタルの透過データ値に変換させて、画素メモリ58に与える。
【0051】
また、記憶制御部59は、スイッチ回路56への選択信号とともに順次切り替わるアドレス信号を画像メモリに58に与え、各透過画像データをアドレス順に記憶させる。ここで、選択信号はM個のX線センサ53aの出力を取り出すためにM通りに変化して、これを1スキャンとして物品の搬送速度に対して無視できる程度の短時間に終了させて、物品をその搬送方向に一定厚さで切断した断片毎の幅方向の透過量データを時分割に収集し、このスキャンを物品がX線の照射領域を搬送している間に所定間隔で繰り返して、物品全体の透過量データを収集する。
【0052】
この記憶制御部59が、X線センサ53aの個数M分の一連の選択信号およびアドレス信号を出力するタイミング(つまりスキャンタイミング)は、多相型インバータ23が出力する異位相の交流ACM1、ACM2に同期している。
【0053】
ここで、上記した半波型で正出力のコッククロフト回路311、312では、入力する交流ACM1、ACM2の正の半サイクルで充電が行われるので、その半サイクルの期間にピークが現れ、これが直流DCHOUTのリップルの主成分となるので、交流ACM1、ACM2に同期しているということは、直流DCHOUTのリップルにも同期していることになる。
【0054】
このように、スキャンタイミングがリップルに同期していれば、リップルにより変動する直流電圧のうち、毎回ある特定の電圧のタイミングでスキャンが行われるので、1スキャンに要する時間がリップル周期に比べて十分短いとすれば、X線の出力強度がほぼ同じタイミングでセンサスキャンが行われることになり、リップルによる出力強度の変化の影響を受けない正確な透過画像データを得ることができる。
【0055】
また、リップルは互いに位相が異なる交流にそれぞれ生じるリップルを重畳させたものであるから、単独のコッククロフト回路の出力に生じるリップルよりその発生間隔が1/Nに短縮される。このため、スキャン間隔も1/Nに短縮することができ、これによって従来と同じ解像度を維持しつつ、搬送速度をN倍にできたり、逆に、従来と同じ搬送速度を維持しつつ、より微細なスキャンをすることができる。
【0056】
また、図11のように、1度のスキャンの期間を、リップルにより変動する直流DCHOUTの電圧がほぼピークとなるタイミングに合わせれば、最も高いX線出力での透過データを収集することができる。このリップルのピークは、コッククロフト回路の動作原理から、交流ACM1、ACM2の1サイクル中の特定タイミング(例えば正の半サイクルのピークタイミング)に現れるので、基準のタイミング(例えば交流のゼロクロスタイミング)から特定タイミングまでの時間を予め調べておき、基準タイミングからその時間が経過したときにスキャンを行うことで、最も高いX線出力での透過画像データを収集することができる。
【0057】
このようにして、画像メモリ58には物品W一つ分の透過画像データ(X線センサ53aの数にスキャン回数を乗じた画素数のデータ)が集められ、判定部60により、その各透過データに対する濃淡比較(必要であればパターン認識処理も含む)、即ち、予め設定したしきい値と画像データとの比較処理を行い、その比較結果から物品Wに異物があるか否かを判定し、その判定結果を図示しない選別部等に出力し、異物のある物品を排除させる。
【0058】
なお、この異物検出装置50において用いるX線発生器20の構成についても、前記したように、2相型以外のより多相のものが使用できることは勿論である。
【符号の説明】
【0059】
20……X線発生器、21……X線管、22……電源部、23……多相型インバータ、24……整流・平滑回路、25……電圧可変回路、26……スイッチング回路、27……昇圧トランス、28……パルス発生器、29……電圧制御回路、31……コッククロフト回路、35……並列重畳回路、36……抵抗分割回路、50……異物検出装置、51……物品搬送手段、53……X線検出器、55……処理部、56……スイッチ回路、57……A/D変換器、58……画像メモリ、59……記憶制御部、60……判定部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給される直流電圧に応じた強度のX線を出力するX線管(21)と、
商用交流電源を昇圧、整流、平滑して高電圧直流を生成し前記X線管に供給する電源部(22)とを備えたX線発生器において、
前記電源部は、
前記商用交流電源を、整流・平滑し、その平滑出力をスイッチングして交流化し、これを昇圧トランスで昇圧して、位相が異なる複数相の交流を出力する多相型インバータ(23)と、
コンデンサとダイオードの多段接続により構成され、前記多相型インバータから出力される各交流をその段数に応じた高電圧までそれぞれ昇圧・整流する複数のコッククロフト回路(311〜31N)と、
前記複数のコッククロフト回路の出力を並列に重畳して前記X線管に与える並列重畳回路(35)とを有していることを特徴とするX線発生器。
【請求項2】
検査対象の物品を所定方向に搬送する物品搬送手段(51)と、
X線管(21)と、該X線管に高電圧直流を供給する電源部(22)とを有し、前記物品搬送手段の搬送路にX線を照射するX線発生器(20)と、
前記X線発生器から出力されて前記搬送路を通過したX線の強度を検出するX線検出器(53)と、
前記物品搬送手段によって前記物品が搬送路を通過したときに前記X線検出器から出力された信号に基づいて、前記物品内に異物があるか否かの検査を行う処理部(55)とを備えた異物検査装置において、
前記X線発生器の電源部は、
商用交流電源を、整流・平滑し、その平滑出力をスイッチングして交流化し、これを昇圧トランスで昇圧して、位相が異なる複数相の交流を出力する多相型インバータ(23)と、
コンデンサとダイオードの多段接続により構成され、前記多相型インバータから出力される各交流をその段数に応じた高電圧までそれぞれ昇圧・整流する複数のコッククロフト回路(311〜31N)と、
前記複数のコッククロフト回路の出力を並列に重畳して前記X線管に与える並列重畳回路(35)とを有しており、
前記X線検出器は、前記搬送路の幅方向に一列に並んだ複数のX線センサ(53a)からなり、
さらに、前記処理部は、
前記複数のX線センサの出力を、前記X線発生器の多相型インバータから出力される各交流に同期したタイミングでスキャンして前記物品の透過画像情報を取得し、該透過画像情報の濃淡比較から異物の有無を検出することを特徴とする異物検出装置。
【請求項1】
供給される直流電圧に応じた強度のX線を出力するX線管(21)と、
商用交流電源を昇圧、整流、平滑して高電圧直流を生成し前記X線管に供給する電源部(22)とを備えたX線発生器において、
前記電源部は、
前記商用交流電源を、整流・平滑し、その平滑出力をスイッチングして交流化し、これを昇圧トランスで昇圧して、位相が異なる複数相の交流を出力する多相型インバータ(23)と、
コンデンサとダイオードの多段接続により構成され、前記多相型インバータから出力される各交流をその段数に応じた高電圧までそれぞれ昇圧・整流する複数のコッククロフト回路(311〜31N)と、
前記複数のコッククロフト回路の出力を並列に重畳して前記X線管に与える並列重畳回路(35)とを有していることを特徴とするX線発生器。
【請求項2】
検査対象の物品を所定方向に搬送する物品搬送手段(51)と、
X線管(21)と、該X線管に高電圧直流を供給する電源部(22)とを有し、前記物品搬送手段の搬送路にX線を照射するX線発生器(20)と、
前記X線発生器から出力されて前記搬送路を通過したX線の強度を検出するX線検出器(53)と、
前記物品搬送手段によって前記物品が搬送路を通過したときに前記X線検出器から出力された信号に基づいて、前記物品内に異物があるか否かの検査を行う処理部(55)とを備えた異物検査装置において、
前記X線発生器の電源部は、
商用交流電源を、整流・平滑し、その平滑出力をスイッチングして交流化し、これを昇圧トランスで昇圧して、位相が異なる複数相の交流を出力する多相型インバータ(23)と、
コンデンサとダイオードの多段接続により構成され、前記多相型インバータから出力される各交流をその段数に応じた高電圧までそれぞれ昇圧・整流する複数のコッククロフト回路(311〜31N)と、
前記複数のコッククロフト回路の出力を並列に重畳して前記X線管に与える並列重畳回路(35)とを有しており、
前記X線検出器は、前記搬送路の幅方向に一列に並んだ複数のX線センサ(53a)からなり、
さらに、前記処理部は、
前記複数のX線センサの出力を、前記X線発生器の多相型インバータから出力される各交流に同期したタイミングでスキャンして前記物品の透過画像情報を取得し、該透過画像情報の濃淡比較から異物の有無を検出することを特徴とする異物検出装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−243730(P2012−243730A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−116077(P2011−116077)
【出願日】平成23年5月24日(2011.5.24)
【出願人】(302046001)アンリツ産機システム株式会社 (238)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月24日(2011.5.24)
【出願人】(302046001)アンリツ産機システム株式会社 (238)
【Fターム(参考)】
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