説明

X線発生装置

【課題】X線発生装置において、X線管からコリメータが離れていることによる問題を解消する。
【解決手段】筐体36の内部には封入体40が設けられ、その封入体40はX線発生管42、遮蔽容器44および絶縁スペーサ46を有する。筐体36には開口部36Cが形成され、そこには絶縁カップ52が配置されている。絶縁カップ52の内部にはコリメータ54が配置されている。コリメータ54が有するスリット54Aにより、ファンビーム形状を持ったX線ビーム48が形成される。コリメータ54がX線発生管42に近づけられているので、筐体36の内部においてビーム成形を行え、また散乱X線の発生源を筐体36の内部にすることが可能である。封入体40により絶縁カップ52の位置決め保持も行える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はX線発生装置に関し、特に、X線ビームを形成するコリメータを備えたX線発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
骨密度測定装置(特許文献1)やX線CT装置などのX線ビームを利用する装置においてはX線発生装置が利用される。X線発生装置は、X線発生管及びそれを収容したケースを有する。ケース内には絶縁油が封入、充填され、それは放熱作用及び絶縁作用を発揮する。X線発生管には高電圧が印加されるので、その周囲が単なる空気層であると、絶縁破壊が生じやすい。このため絶縁油が利用されている。望ましくは、X線発生管には、それを取り囲むように筒状の遮蔽部材が設けられる(特許文献2)。遮蔽部材には一般に円形の開口が形成されており、その開口からX線が放射される。その意味において当該開口は一次コリメータとして認識される。
【0003】
上記のケースは例えば真鍮などの材料によって構成され、その上面壁には台座開口が形成されている。そこには樹脂などからなるカップ状の隔壁が設けられ、その隔壁内にはコリメータ部材が配置される。従来、コリメート部材はX線発生管からある程度の距離を隔てて配置されている。そこには例えばスリットが形成されている。そのスリットによってファンビーム(扇状に広がる面状ビーム)が形成される。なお、隔壁の底壁とX線発生管は離間しており、そこにはある程度の厚みを有する絶縁油層が存在している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−325497号公報
【特許文献2】特開平10−214582号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のX線発生装置においては、X線発生管とコリメータ部材との間にある程度の距離が存在し、このためコリメート部材が大型化していた。また、X線発生管から出るX線が比較的に大きな絶縁油層を通過しなければならずそこでのX線の減衰が無視できないという問題があった。
【0006】
なお、従来のコリメート部材は、円盤状の鉛ブロックからなり、そこには左右に貫通するようにスリットが形成されており、このためビームの両端での遮蔽を行うために鉛ブロックに鍔状の部分が形成され、あるいは、コリメータとは別にその周囲を取り囲む鉛リングを設ける必要があった。
【0007】
本発明の目的は、コリメート部材あるいはそれを備えるX線発生装置の小型化又は軽量化を図ることにある。本発明の他の目的は、散乱X線の閉じ込めを効果的に行うことにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るX線発生装置は、X線発生管と、前記X線発生管を包み込む部材であって、放射開口を有する遮蔽容器と、前記X線発生管、前記遮蔽容器、及び、絶縁液体を収容し、前記放射開口に対応する位置に形成されたケース開口部を有する密封ケースと、前記ケース開口部から前記放射開口へ伸びた形態をもって構成された隔壁であって、X線が通過し且つ絶縁性を有する材料からなるカップ部材と、前記カップ部材の中に落とし込まれ、前記放射開口から出るX線をコリメートするコリメート部材と、を含む。
【0009】
上記構成によれば、密封ケース内にX線発生管、遮蔽容器等が配置され、さらに絶縁液体(例えば絶縁油)が封入されている構成において、密封ケースに形成されたケース開口部に隔壁として機能するカップ部材が配置される。カップ部材はX線透過性及び絶縁性の両方を有する部材として構成される。カップ部材は、ケース開口部から密封ケース内へ進入する形態を有し、つまり放射開口へ伸長した形態を有する。カップ部材の中にはコリメート部材が落とし込み配置される。つまり、カップ部材の底壁の上面(内部空間側の面)に接触又は近接した状態でカップ部材の下層にコリメート部材が設けられる。その結果、コリメート部材がX線発生管に近づくことになるので、つまりX線発生源から近い位置でコリメート作用を発揮させることができるから、コリメート部材の物量を削減できる。また、コリメート作用の全部又は一部が密封ケース内で行われることになるからそこで生じる散乱線を密封ケース内に封じ込めることができ、あるいは、外部への散乱線の漏洩を低減できる。更に、カップ部材がX線発生管に近付くことにより結果としてX線が通過する絶縁液体層の厚みを小さくできるから、絶縁液体によるX線減弱を低減できる。但し、いずれの構成を採用する場合においても絶縁性を十分に保つことが必要となる。カップ部材それ自体がケース開口部に落とし込まれるように構成してもよく、その場合にはカップ部材の上部に水平方向に張り出た鍔部を設け、それをケース開口部の下部に引っ掛けるようにするのが望ましい。
【0010】
望ましくは、前記カップ部材は、前記放射開口の中に進入して前記X線発生管に近接する又は接触する底壁を有する。底壁を放射開口内に進入させないでも上記であげた各利点を得ることが可能ではあるが、底壁を放射開口内に進入させれば上記であげた各利点をより引き出すことが可能となる。底壁がX線発生管に接触するように構成してもよいが、その場合に絶縁性が問題になるようであれば、底壁がX線発生管に対して非接触で近接するように構成するのが望ましい。両者間には絶縁液体が介在することになる。
【0011】
望ましくは、前記X線発生管と前記遮蔽容器との間に絶縁容器が設けられ、前記絶縁容器は前記放射開口に対応する位置に形成された連絡開口を有し、前記カップ部材の底部が前記連絡開口に嵌め込まれる。この構成によればカップ部材の位置決めが絶縁容器により行われ、つまり、内部配置体によってカップ部材の位置決めを行えるから、カップ部材の内部に収容されたコリメート部材の位置決めも同時に行えることになる。コリメート部材はビーム形状上の要であるから、それについては位置決め精度を高めるべき要請がある。上記構成によればそのような要請に対して十分に応えることができる。
【0012】
望ましくは、前記カップ部材は、前記X線発生管に向かって先細となった円錐状の形態を有する。ファンビームのような末広がりのビームを生成する場合には各部材の形状をビーム形状に合わせるのが望ましく、そのような構成によれば物量の削減等の利点を得られる。望ましくは、前記コリメート部材はファンビーム成形用のスリットを有し、前記スリットは左右が閉じられ上下が開いた形態を有する。この構成によれば、コリメート部材によってファンビームの左右において急峻な遮蔽を行える。望ましくは、前記スリットの左辺及び右辺が前記ファンビームの左辺及び右辺と同じ傾きを有し、前記スリットは台形状の形態を有する。
【0013】
望ましくは、前記カップ部材におけるビーム幅方向としての第1水平方向の厚み及びビーム面に直交する方向としての第2水平方向の厚みが互いに異なり、これにより前記カップ部材はビーム方向に直交する面において偏平した形態を有し、それに従って前記カップ部材内に配置される前記コリメート部材が偏平した形態に構成される。この構成によればファンビームに適合したコリメート部材を利用でき、その物量を削減できる。
【0014】
望ましくは、前記X線発生器におけるX線発生点から前記放射開口内且つ前記コリメータ部材外を通過するX線を遮蔽する手段が設けられる。当該手段は、例えば、コリメート部材とは別に設けられた漏洩X線遮蔽部材であり、あるいは、密封ケースにおける対応部分(肉厚化部分であるのが望ましい)である。
【0015】
本発明に係る骨密度測定装置は、前記X線発生装置によって生成され且つ被検体を通過したファンビーム形状を有するX線ビームに対応して設けられたX線検出装置と、前記X線検出装置からの出力信号に基づいて前記被検体の骨密度を演算する演算部と、を有する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、コリメート部材あるいはそれを備えるX線発生装置の小型化又は軽量化を図れる。あるいは、散乱X線の閉じ込めを効果的に行える。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る骨密度測定装置を示すブロック図である。
【図2】本発明に係るX線発生装置の断面図である。
【図3】コリメータの斜視図である。
【図4】本発明に係るX線発生装置の他の断面図である。
【図5】比較例を示す断面図である。
【図6】他の実施形態に係るX線発生装置の断面図である。
【図7】他の実施形態に係るX線発生装置の要部構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。
【0019】
図1には、本発明に係るX線発生装置を備えた骨密度測定装置の好適な実施形態が示されており、図1はその全体構成を示すブロック図である。骨密度測定装置は被検体としての人体における骨の成分を測定する装置であり、特に骨塩量を測定する装置である。
【0020】
骨塩量測定装置は、大別して、測定部10および演算制御部12を備えている。測定部10は、ベッド14を有し、そのベッド14上には被検体としての生体15が配置される。ベッド14はいわゆるブッキングテーブル等であってもよい。被検体15は例えば人体における胴部である。ベッド14の下方には発生ユニット18およびフィルタユニット20が設けられる。発生ユニット18はX線発生装置であり、フィルタユニット20は高エネルギーX線用フィルタおよび低エネルギー用X線フィルタを交互にビーム経路に挿入するユニットである。発生ユニット18の構成については後に図2等を用いて詳述する。
【0021】
本実施形態において、発生ユニット18により面状に広がるファンビームとしてのX線ビームが形成される。被検体15を介して発生ユニット18とは反対側に検出ユニット22が設けられている。検出ユニット22はファンビーム形状に対応した一次元配列を有する複数のX線センサにより構成されている。発生ユニット18および検出ユニット22は走査機構24によって搬送されており、これによって二次元エリアの全体にわたって検出データを取得することが可能である。
【0022】
次に演算制御部12について説明する。演算部28は、検出ユニット22から出力された検出データに基づいて骨塩量分布を生成するユニットである。その骨塩量分布が画像として表示部32に表示される。制御部26は図1に示される各構成の動作制御を行っており、制御部26には入力部34が接続されている。HV30は電圧源であり、そのHV30から発生ユニット18に対して高電圧および低電圧が交互に供給される。次に、図2以降の各図を参照しながら図1に示した発生ユニット18の具体的な構成について説明する。
【0023】
図2には、発生ユニットの断面図(X−Z断面図)が示されている。筐体36は箱状の形態を有し、筐体36はX線遮蔽材料としての真鍮などによって構成されている。筐体36の上側が上壁36Aであり、下側が底面壁36Bである。筐体36の内部38は気密空間とされており、その内部38には封入体40が設けられ、さらに内部38内には絶縁油が充填されている。この絶縁油は高電圧が印加されるX線発生管42の周囲において絶縁性を保つための部材である。
【0024】
封入体40は、X線を発生するX線発生管42を有し、その外側には筒状の遮蔽容器44が設けられている。遮蔽容器44はその上部に円形の開口44Aを有している。その開口44Aは一次コリメータとして機能し、つまり、それは放射開口である。X線発生管42と遮蔽容器44との間には筒状の絶縁スペーサ46が設けられている。絶縁スペーサ46の上部にも円形の開口46Bが形成されており、それは上述した開口44Aと同軸状に形成されている。本実施形態において、開口46Bよりも開口44Aの方が若干大きなサイズを有しており、後に説明する絶縁カップ52の下部が開口46Bによって位置決め保持されている。遮蔽容器44は例えば鉛などのX線遮蔽部材で構成されている。それは放射開口以外におけるX線の漏洩を防止するための部材である。
【0025】
筐体36における上壁36Aには開口部36Cが形成されている。開口部36Cは図2に示す例において円形の形状を有しており、開口部36Cの周囲が肉厚部分36Fとされている。開口部36Cにおける下部には内側に張り出たリング状の台座36Dが形成されている。開口部36Cはその上面において上開口36Gを有し、その下部において下開口36Eを有する。
【0026】
開口部36Cには絶縁カップ52が落とし込み配置されている。絶縁カップ52はX線を透過する部材かつ絶縁性を有する部材で構成され、それはつば部52A、円錐形状を持った中間部52Bおよび底壁52Cを有している。つば部52Aはリング状の形態を有し、それが上述したリング状の台座36Dにひっかかっている。絶縁カップ52と筐体36との間には図示されていないシール部材が設けられ、両者間の隙間は完全に閉じられている。すなわち内部38から絶縁油が上方へ流出することはない。絶縁カップ52は開口部36Cの下部からX線発生管42に向かって先細に伸張した形態を有し、その下部が封入体40の中に入り込んでいる。図示の例においては、底壁52Cの底面が非接触でX線発生管42の側面に近接対向している。ちなみに、X線発生管42の周囲は上述した絶縁油が満たされている。
【0027】
図2に示されるように、絶縁カップ52の下部が絶縁部材で構成された絶縁スペーサ46の開口46Bによって位置決め保持されており、すなわち絶縁カップ52の上部および下部の両者が筐体36および封入体40によって保持されている。これにより絶縁カップ52を高精度に位置決めすることが可能であり、換言すれば、絶縁カップ52をX線発生管42に対して正しく位置決め配置することが可能である。もっとも、絶縁カップ52の下部が遮蔽容器44によって保持されるようにしてもよく、またその底壁52CがX線発生管42に接触するように構成することも可能である。いずれの場合においても、充分な絶縁性が確保される必要がある。
【0028】
絶縁カップ52内にはコリメータ(コリメータ部材)54が落とし込み配置されている。すなわちコリメータ54の底面が絶縁カップ52における底壁52Cの上面すなわち底面に密着しつつコリメータ54が固定されている。コリメータ54は鉛などのX線遮蔽部材で構成され、そこにはスリット54Aが形成されている。このスリット54AはX線ビームをファンビーム形状に成形するためのものである。図2においてはX線ビームが符号48によって示されている。
【0029】
コリメータ54は下方に先細の円錐形状を有し、その上面および下面がいずれも平面である。その断面はX−Z面およびY−Z面のいずれにおいても台形の形状を有している。コリメータ54は図示されるように、筐体36の上壁36Aの下面レベルよりも下側に位置しており、すなわち符号56で示される2つのレベル間に位置している。符号60はコリメータ54の上面レベルを表しており、それは上壁36Aの下面レベル58よりも低く設定されている。従って、X線発生管42から放射されたX線がコリメータ54に到達したときに生じる散乱X線の発生位置が筐体36の内部になるから、筐体36によって散乱X線を効果的に遮蔽することができ、すなわち散乱X線の閉じ込め作用を充分に得ることが可能となる。
【0030】
また、コリメータ54がX線発生管42に近づけられているから、コリメータ54の物量を少なくして、X線発生装置の小型化または軽量化を図ることが可能となる。さらに、絶縁カップ52がX線発生管42まで伸張し、X線通過経路における絶縁油層の厚みを少なくできるから、絶縁油によるX線の減弱を少なくすることができるという利点がある。
【0031】
符号50はX線発生点(焦点)0から開口44Aの隅を通過して筐体36側へ向かうX線を示しており、そのようなX線50を遮蔽するために、本実施形態においては遮蔽リング62が設けられている。遮蔽リング62は、図2に示す例において絶縁カップ52の上側に積層されており、コリメータ54の外側であって開口44Aの中を通過するX線を阻止可能なリング幅をもって構成されている。ただし、そのような漏洩X線を肉厚部分36Fで充分に低減できるならば、すなわち外部への漏洩を充分に防止することができるならば、そのような遮蔽リング62を設けなくてもよい。図2に示す構成においては、コリメータ54の本来のコリメート作用と、漏洩X線の阻止作用とを別々の部材で行っており、それらを一体化した場合における物量の増大といった問題が回避されている。ちなみに、図2に示す例においては、ファンビームの面方向がY−Z面に一致しているが、それを90度回転させて、X−Z面においてファンビーム面が構成されるようにしてもよい。
【0032】
図3には、図2に示したコリメータ54の斜視図が示されている。この図3に示す例において、コリメータ54は、下方に先細となった円錐状の形態を有し、すなわちその上面54Cよりも下面54Bの方が小さい形態を有している。その側面は傾斜面を構成している。その側面上には上下方向に伸びる凸部54Dが設けられており、一方、コリメータ54を受け入れる絶縁カップ52側には凸部54Dを受け入れる上下方向に伸張した溝が形成されている。このような凹凸の噛み合い関係により、スリット54Aの位置を適切に定めることが可能となる。もっとも、上方から見て円形のコリメータではなく、楕円形状その他の形状のコリメータを採用する場合には、凹凸などを設けなくてもよい。
【0033】
図4には、図2に示したX線発生装置のY−Z断面が示されている。本実施形態においては、絶縁カップ52およびコリメータ54は上方から見て完全な円形を有し、すなわち扁平していないために、図2に示される断面および図4に示される断面はその水平方向のサイズが互いに同一である。絶縁カップ52内には上述したようにコリメータ54が落とし込まれており、そのコリメータ54にはスリット54Aが形成されている。
【0034】
スリット54Aは、本実施形態において台形の形状を有し、すなわち台形のコリメータ断面における左右端部を除いた部分としてスリット54Aが構成されている。図においてハッチングが付された左右端部54Bは遮蔽を行う部分を表しており、スリット54Aの左右端部は開放されておらず閉じている。すなわちスリット54Aはその上側および下側だけが開いている。台形状のスリット54Aにおける左右の辺(傾斜辺)はファンビーム形状を持ったX線ビーム48に合わせた形状を有し、逆に言えば、生成したいファンビーム形状の側辺の傾斜角度とスリット54Cにおける側辺の傾斜角度が完全に一致している。これにより左右端に急峻な遮蔽作用を生じさせて、理想的なファンビームを形成することが可能となる。上述したように、ファンビームにおけるビーム面の方向を変更することができ、コリメータ54を90度回転させれば、ファンビーム面の向きを90度異ならせることが可能である。
【0035】
図5には比較例の構成が示されている。なお、図2に示した構成と同様構成には同一符号を付しその説明を省略する。筐体36には開口部64が形成され、その開口部の下部には絶縁カップ66が配置されている。絶縁カップ66は図示されるように皿状の形態を有し、その底壁は筐体36における上壁の下面レベルとほぼ同一である。より詳しくは、絶縁カップ66の底壁の底面レベルは上壁の下面レベルよりもやや下方となっているが、その突出量はわずかであり、X線ビーム経路上における絶縁油層の厚みは大きなものとなっている。その一方、コリメータ68は開口部64の上部にはめ込まれており、X線発生源からより遠い位置にコリメータ68が配置されている。コリメータ68はスリット68Aを有する。またコリメータ68の周囲からのX線の漏洩をより防止するために鉛などでX線遮蔽部材で構成されたキャップ70が設けられている。そのキャップ70はスリット70Aを有する。
【0036】
図5に示される構成においては、X線発生源から遠い位置にコリメータ68が設けられているので、コリーメータ68を水平方向に大きくする必要があり、またそこで生じる散乱X線を充分に閉じ込めることが困難な場合が生じ得る。少なくとも、コリメータ68において散乱X線が発生した場合、筐体36を効果的に使ってその散乱X線を閉じ込めることが困難である。
【0037】
これに対し、図2および図4に示した本実施形態によれば、コリメータをX線発生管へ充分に近づけることができるから、コリメータそれ自体を小型化および軽量化でき、またX線における絶縁油の通過距離を小さくできるから、そこでのX線の減弱を低減することが可能となる。さらに、コリメータを原因とする散乱X線の発生位置を筐体内部に設定することができるから、筐体それ自体をX線の閉じ込め部材として機能させることが可能となる。さらに、本実施形態によれば、絶縁カップ52の下部についても位置決め保持作用を得られるから、絶縁カップ52の配置作業が容易化され、また位置決め精度を高められるからファンビームの方向性を正しいものにすることが可能となる。
【0038】
次に図6および図7を用いて他の実施形態について説明する。
【0039】
図6において、筐体72には扁平した開口部74が形成されている。開口部74において、X方向の幅よりもY方向の幅の方が大きく、開口部74が上方から見て扁平した形態あるいは楕円状の形態を有している。もっとも、開口部74が四角形あるいは長方形あるいは円形であってもよい。
【0040】
開口部74の下部には絶縁カップ76が落とし込み配置されており、絶縁カップ76におけるX方向の幅よりもY方向の幅の方が大きく、絶縁カップ76それ自体がその中間部分において扁平した形態を有している。絶縁カップ76の内部も扁平した形態を有し、その形態に合致した形状を有するコリメータ78が落とし込み配置されている。コリメータ78はY方向に伸張した形態を有し、当該方向に広がったスリットが形成されている。すなわちスリットの全体を囲みつつもスリットと直交する方向の厚みを小さくすることにより、コリメータ78の物量がより削減されている。その一方において、絶縁カップ76の上側には楕円状あるいは漏洩X線を阻止する形態をもって絶縁体80が設けられ、絶縁カップ76の壁内部あるいはコリメータ78の周囲から漏洩するX線が遮蔽体80によって阻止されている。
【0041】
図7には、絶縁カップ76を備えた封入体40が斜視図として示されている。封入体40はX線発生管42、筒状の絶縁スペーサ46および筒状の鉛から成る遮蔽容器44を有する。その封入体40の上方に設けられた開口部には上述した絶縁カップ76の下部が差し込まれ、その開口部によって絶縁カップ76の下部が位置決め保持されている。絶縁カップ76の内部には図示されていないコリメータが配置され、それによってファンビーム形状を持ったX線ビーム48が形成されている。ちなみに、封入体40の上部に形成される開口は円形であってもよいし扁平した形状を有していてもよい。それに合わせて絶縁カップ76の下部の形状を定めればよい。
【符号の説明】
【0042】
10 測定部、12 演算制御部、18 発生ユニット(X線発生装置)、36 筐体、40 封入体、42 X線発生管、44 遮蔽容器、46 絶縁スペーサ、52 絶縁カップ、62 遮蔽リング。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線発生管と、
前記X線発生管を包み込む部材であって、放射開口を有する遮蔽容器と、
前記X線発生管、前記遮蔽容器、及び、絶縁液体を収容し、前記放射開口に対応する位置に形成されたケース開口部を有する密封ケースと、
前記ケース開口部から前記放射開口へ伸びた形態をもって構成された隔壁であって、X線が通過し且つ絶縁性を有する材料からなるカップ部材と、
前記カップ部材の中に落とし込まれ、前記放射開口から出るX線をコリメートするコリメート部材と、
を含むことを特徴とするX線発生装置。
【請求項2】
請求項1記載の装置において、
前記カップ部材は、前記放射開口の中に進入して前記X線発生管に近接する又は接触する底壁を有する、ことを特徴とするX線発生装置。
【請求項3】
請求項2記載の装置において、
前記X線発生管と前記遮蔽容器との間に絶縁容器が設けられ、
前記絶縁容器は前記放射開口に対応する位置に形成された連絡開口を有し、
前記カップ部材の底部が連絡開口に嵌め込まれる、ことを特徴とするX線発生装置。
【請求項4】
請求項3記載の装置において、
前記カップ部材は、前記X線発生管に向かって先細となった円錐状の形態を有する、ことを特徴とするX線発生装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の装置において、
前記コリメート部材はファンビーム成形用のスリットを有し、
前記スリットは左右が閉じられ上下が開いた形態を有する、ことを特徴とするX線発生装置。
【請求項6】
請求項5記載の装置において、
前記スリットの左辺及び右辺が前記ファンビームの左辺及び右辺と同じ傾きを有し、
前記スリットは台形状の形態を有する、ことを特徴とするX線発生装置。
【請求項7】
請求項1記載の装置において、
前記カップ部材におけるビーム幅方向としての第1水平方向の厚み及びビーム面に直交する方向としての第2水平方向の厚みが互いに異なり、これにより前記カップ部材はビーム方向に直交する面において偏平した形態を有し、それに従って前記カップ部材内に配置される前記コリメート部材が偏平した形態に構成された、ことを特徴とするX線発生装置。
【請求項8】
請求項1記載の装置において、
前記X線発生器におけるX線発生点から前記放射開口内且つ前記コリメータ部材外を通過するX線を遮蔽する手段が設けられた、ことを特徴とするX線発生装置。
【請求項9】
請求項1記載のX線発生装置と、
前記X線発生装置によって生成され且つ被検体を通過したファンビーム形状を有するX線ビームに対応して設けられたX線検出装置と、
前記X線検出装置からの出力信号に基づいて前記被検体の骨密度を演算する演算部と、
を有することを特徴とする骨密度測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−178239(P2012−178239A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−39510(P2011−39510)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【出願人】(390029791)日立アロカメディカル株式会社 (899)
【Fターム(参考)】