説明

X線発生装置

【課題】 長期に亘って信頼性の高いX線発生装置を提供する。
【解決手段】 X線発生装置は、高電圧コネクタ2と、X線管1と、固定部材5と、スプリングと、を備えている。高電圧コネクタ2は、端面S22が形成された電気絶縁材と、高電圧出力端子23と、を有している。X線管1は、高電圧入力端子14と、端面S22に直接または間接的に密接される密接面S13が形成された高電圧絶縁部と、隙間形成面S11と、を有している。固定部材5は、隙間形成面S5を有し、高電圧コネクタ2に直接または間接的に固定される。スプリングは、隙間形成面S11及び隙間形成面S5に接している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、X線発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
X線発生装置は、医療診断、非破壊検査、分析評価などの種々の用途において使用されている。X線発生装置は、X線管、高電圧コネクタ、アダプタ及び絶縁ゴムプレートを備えている。X線管は、電子を放出する陰極と、電子が衝突されることによりX線を放射する陽極ターゲットと、陰極及び陽極ターゲットを収容し、X線透過窓を有した真空外囲器と、高電圧入力端子とを備えている。真空外囲器の一部は、セラミック外囲器で形成されている。
【0003】
X線管は、固定ネジによりアダプタに固定されている。絶縁ゴムプレートは、高電圧コネクタの電気絶縁材と、X線管のセラミック外囲器との間に挿入されている。高電圧コネクタは、電気絶縁材と、高電圧出力端子とを有している。アダプタは、固定ネジにより、高電圧コネクタに固定されている。固定ネジの締付により、X線管のセラミック外囲器は絶縁ゴムプレートを圧縮し、高電圧接続の面圧を発生させている。
【0004】
上記のように、絶縁ゴムプレートを、電気絶縁材及びセラミック外囲器に一定の面圧で密接させることにより、高電圧接続の絶縁を保持している。高電圧接続の面圧は、固定ネジの締付量を調整し、絶縁ゴムプレートの圧縮量を調整して設定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−216682号公報
【特許文献2】特開2008−293868号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記X線発生装置の動作中において、X線管は熱を発生するため、熱の影響によりX線管及びアダプタが熱膨張する。X線管及びアダプタは、互いに対向した方向にも熱膨張するため、絶縁ゴムプレートの圧縮量が変化してしまう恐れがある。高電圧接続の面圧は、一般に0.5乃至1MPa必要である。これに対し、絶縁ゴムプレートは、圧縮方向に対して概ね1MPa/mmの面圧の変化を有している。このため、熱膨張による絶縁ゴムプレートの圧縮量の変化、あるいは絶縁ゴムプレートの経時的な弾性変化により、高電圧接続の面圧が変化してしまうため、高電圧絶縁を長期に亘って保持することは困難であった。
この発明は以上の点に鑑みなされたもので、その目的は、長期に亘って信頼性の高いX線発生装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態に係るX線発生装置は、
外部に露出した端面が形成された電気絶縁材と、前記端面とともに外部に露出した高電圧出力端子と、を有した高電圧コネクタと、
前記端面に対向した第1方向に前記高電圧コネクタに対向配置され、前記高電圧出力端子に電気的に接続され、外部に露出した高電圧入力端子と、前記高電圧入力端子とともに外部に露出し前記電気絶縁材の端面に直接または間接的に密接される密接面が形成された高電圧絶縁部と、前記第1方向に外部に露出した隙間形成面と、を有したX線を放射可能なX線管と、
前記第1方向に前記高電圧コネクタに対向配置され、前記隙間形成面に対して前記第1方向に間隔を置いて対向した他の隙間形成面を有し、前記高電圧コネクタに直接または間接的に固定された固定部材と、
前記隙間形成面及び他の隙間形成面間に配置され、前記隙間形成面及び他の隙間形成面に接したスプリングと、を備えていることを特徴としている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、一実施形態に係るX線発生装置を示す側面図であり、一部断面構造を示す図である。
【図2】図2は、上記X線発生装置を示す分解斜視図である。
【図3】図3は、上記X線発生装置の変形例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら一実施形態に係るX線発生装置について詳細に説明する。図1は、X線発生装置を示す側面図であり、一部断面構造を示す図であり、X線管及び高電圧コネクタの接続状態を示す図である。図2は、X線発生装置を示す分解斜視図であり、X線管及び高電圧コネクタの接続状態を示す図である。
【0010】
図1及び図2に示すように、X線発生装置は、X線管1と、高電圧コネクタ2と、電気絶縁部材としての絶縁ゴムプレート3と、アダプタ(管球ハウジング)4と、固定部材5と、スプリングとしての皿ばね6と、固定ネジ7、8と、を備えている。
【0011】
高電圧コネクタ2は、X線管1に高電圧を与えるためのものである。高電圧コネクタ2は、筐体21と、電気絶縁材としてのエポキシ樹脂22と、高電圧出力端子23とを有している。筐体21には、開口部21a及び複数のネジ穴21bが形成されている。エポキシ樹脂22は筐体21の内部に収容され、開口部21aに対向している。エポキシ樹脂22には筐体21の外部に露出した端面S22が形成されている。高電圧出力端子23は、端面S22とともに筐体21の外部に露出している。
【0012】
この実施形態において、筐体21の内部には、図示しない高電圧発生源が収容され、高電圧出力端子23に高電圧を供給可能である。
【0013】
X線管1は、端面S22に対向した方向(以下、Z方向dと称する)に、高電圧コネクタ2に対向配置されている。X線管1は、X線透過窓12を有した真空外囲器11と、高電圧入力端子14とを備えている。図示しないが、X線管1は、真空外囲器11内に収容された、電子を放出する陰極と、電子が衝突されることによりX線を放射する陽極ターゲットとを有している。このため、X線管1は、X線透過窓12からX線を放出可能である。
【0014】
高電圧入力端子14は、X線管1の外部に露出し、高電圧出力端子23に電気的に接続されている。
真空外囲器11は、高電圧絶縁部としてのセラミック外囲器13や、金属外囲器で形成されている。セラミック外囲器13には、高電圧入力端子14とともにX線管1の外部に露出した密接面S13が形成されている。密接面S13は、エポキシ樹脂22の端面S22に直接または間接的に密接される。
【0015】
この実施形態において、エポキシ樹脂22の端面S22及びセラミック外囲器13の密接面S13間に、円環状の絶縁ゴムプレート3が介在されている。このため、密接面S13は、エポキシ樹脂22の端面S22に間接的に密接される。
真空外囲器11(X線管1)は、Z方向dに、X線管1の外部に露出した隙間形成面S11を有している。
【0016】
固定部材5は、Z方向dに高電圧コネクタ2に対向配置され、円環状に形成されている。固定部材5は剛性を示す材料として、例えば金属で形成されている。固定部材5は、高電圧コネクタ2に直接または間接的に固定されている。この実施形態において、固定部材5は、高電圧コネクタ2に間接的に固定されている。固定部材5には、複数のネジ孔51が形成されている。固定部材5は、隙間形成面S11に対してZ方向dに間隔を置いて対向した他の隙間形成面S5を有している。
【0017】
アダプタ4は、Z方向dに平行な方向に延在して枠状に形成されている。アダプタ4は、矩形状の外周面と、筒状の内周面とを有している。アダプタ4には、複数のネジ孔41及び複数のネジ穴42が形成されている。アダプタ4は剛性を示す材料として、例えば金属で形成されている。アダプタ4は、X線管1の一部を囲んでいる。
【0018】
アダプタ4は、高電圧コネクタ2及び固定部材5間を接合するものであり、高電圧コネクタ2及び固定部材5間に介在されている。固定ネジ8は、アダプタ4に形成されたネジ孔41を通って筐体21(高電圧コネクタ2)のネジ穴21bに締め付けられている。このため、アダプタ4は、高電圧コネクタ2に固定されている。
【0019】
また、固定ネジ7は、固定部材5に形成されたネジ孔51を通ってアダプタ4のネジ穴42に締め付けられている。このため、固定部材5は、アダプタ4に固定され、高電圧コネクタ2に間接的に固定されている。
【0020】
皿ばね6は、隙間形成面S11及び隙間形成面S5間に配置され、隙間形成面S11及び隙間形成面S5に接している。隙間形成面S11及び隙間形成面S5間の間隔が多少変化しても、皿ばね6は、Z方向dの逆方向に、X線管1にスプリング荷重を加え続けることが可能である。
【0021】
上記のように構成された一実施形態に係るX線発生装置によれば、X線発生装置は、X線管1と、高電圧コネクタ2と、絶縁ゴムプレート3と、アダプタ4と、固定部材5と、皿ばね6と、固定ネジ7、8と、を備えている。
【0022】
X線管1及び固定部材5で皿ばね6を挟んだ状態で、固定ネジ7にて固定部材5をアダプタ4に固定することにより、アダプタ4及び固定部材5は、X線管1を保持している。アダプタ4は、固定ネジ8により高電圧コネクタ2に固定されている。エポキシ樹脂22の端面S22及びセラミック外囲器13の密接面S13により、絶縁ゴムプレート3が圧縮されることで高電圧接続の面圧を発生させている。
【0023】
固定ネジ8の締付により、絶縁ゴムプレート3及び皿ばね6は同時に圧縮される。
【0024】
皿ばね6のバネ係数は、アダプタ4と高電圧コネクタ2の筐体21が接した状態で高電圧接続の面圧が一定の値になるように選ばれ、かつ絶縁ゴムプレート3のバネ係数よりも十分小さな値である。
【0025】
このため、X線管1が動作したときに発生する熱によりX線管1とアダプタ4はともに熱膨張するが、熱膨張差による圧縮量の変化は皿ばね6で吸収することができるため、X線発生装置の使用中の高電圧接続の面圧をある範囲に保ち続けることができる。これにより、端面S22及び密接面S13の密接界面に沿った放電通路を断つことができ、高い電気絶縁特性を得ることができる。
上記のことから、長期に亘って信頼性の高いX線発生装置を得ることができる。
【0026】
なお、この発明は上記実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化可能である。また、上記実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。
【0027】
例えば、図3に示すように、高電圧発生源9は、筐体21の内部に収容されていなくともよい。この場合、高電圧発生源9及び高電圧コネクタ2を高電圧ケーブル10を用いて接続すればよい。
【0028】
密接面S13は、エポキシ樹脂22の端面S22に直接、密接されていてもよい。
電気絶縁材は、エポキシ樹脂22に限らず、種々変形可能であり、絶縁ゴムなど電気絶縁性を示す材料で形成されていればよい。
電気絶縁部材は、絶縁ゴムプレート3に限らず、種々変形可能であり、シリコーンプレートでもよく、電気絶縁性を示す材料で形成されていればよい。
【0029】
固定部材5は、高電圧コネクタ2に直接、固定されていてもよい。
X線発生装置の構成部材同士を固定する場合、締め具としてのネジを用いたが、これに限らず種々変形可能であり、ネジ以外の締め具を用いたり、ロウ接を使用したりしてもよく、構成部材同士を固定できればよい。
【0030】
スプリングとしては、皿ばね6に限らず、各種の単数又は複数のスプリングを利用することができ、第1方向の逆方向にX線管にスプリング荷重を加えることができればよい。
この発明は、上述したX線発生装置に限らず、各種のX線発生装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0031】
1…X線管、2…高電圧コネクタ、3…絶縁ゴムプレート、4…アダプタ、5…固定部材、6…皿ばね、7,8…固定ネジ、11…真空外囲器、13…セラミック外囲器、14…高電圧入力端子、21…筐体、22…エポキシ樹脂、23…高電圧出力端子、S5,S11…隙間形成面、S13…密接面、S22…端面、d…Z方向。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部に露出した端面が形成された電気絶縁材と、前記端面とともに外部に露出した高電圧出力端子と、を有した高電圧コネクタと、
前記端面に対向した方向に前記高電圧コネクタに対向配置され、前記高電圧出力端子に電気的に接続され、外部に露出した高電圧入力端子と、前記高電圧入力端子とともに外部に露出し前記電気絶縁材の端面に直接または間接的に密接される密接面が形成された高電圧絶縁部と、前記方向に外部に露出した隙間形成面と、を有したX線を放射可能なX線管と、
前記方向に前記高電圧コネクタに対向配置され、前記隙間形成面に対して前記方向に間隔を置いて対向した他の隙間形成面を有し、前記高電圧コネクタに直接または間接的に固定された固定部材と、
前記隙間形成面及び他の隙間形成面間に配置され、前記隙間形成面及び他の隙間形成面に接したスプリングと、を備えていることを特徴とするX線発生装置。
【請求項2】
前記電気絶縁材の端面及び前記高電圧絶縁部の密接面間に介在された電気絶縁部材をさらに備え、
前記高電圧絶縁部は、前記電気絶縁材の端面に間接的に密接されることを特徴とする請求項1に記載のX線発生装置。
【請求項3】
前記高電圧コネクタ及び固定部材間に介在され、前記高電圧コネクタに固定されたアダプタをさらに備え、
前記固定部材は、前記アダプタに固定され、前記高電圧コネクタに間接的に固定されることを特徴とする請求項1又は2に記載のX線発生装置。
【請求項4】
前記スプリングは、皿ばねであることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載のX線発生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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