説明

X線装置

【課題】一定のX線量を安定して得ることができるX線装置を提供する。
【解決手段】X線装置は、X線源1と、電源ユニット17とを備えている。X線源1は、ヒータ3a、3bと、電子源2と、ターゲット20と、X線透過窓11を有した真空容器18とを具備している。電源ユニット17は、ターゲット20に流れた第1電流i1の値を測定する第1電流計5と、ヒータ3a、3bに流れる第2電流i2の値を測定する第2電流計6と、電源13とを具備している。電源13は、ヒータ3a、3bに一定の値に設定された第2電流i2を出力し、第2電流計6で測定された第2電流の値の情報に基づいて第2電流の値を一定の値に維持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、X線装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な微小焦点を有するX線源は、マイクロフォーカスX線源として既に製品化がなされており、対象物の微小領域を高分解能で検査する非破壊検査装置などに広く利用されている。このX線源は、電子源(TFE:thermal field-emission electron gun)から放出される電子ビームを電界または磁界レンズなどの電子光学系により集束させ、ターゲット表面のμmオーダ、またはそれ以下の狭い領域に焦点を形成し、その焦点から放出されるX線をターゲットを透過させて放出させている。
【0003】
ここで、微小な対象物を検査するためには、ターゲットに形成する電子ビームの焦点を微小にする必要があるため、X線発生源である金属製のターゲットに電子ビームを微小口径に集束する必要がある。このため、X線源は、高真空で維持された真空容器内に、電子源、電子をビームにする高電圧を印加した引出電極、電子ビームにエネルギを加える高電圧を印加した加速電極及び電子ビームを微小口径に集束させる高電圧を印加したレンズ電極などが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−140687号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、X線源が発生するX線量は、電子ビーム量、つまり、電子源を加熱するヒータにおける電流量に比例する。このため、一定のX線量を安定して得るためにはヒータに流す電流を一定の値に安定化する必要がある。しかしながら、ヒータ製造バラツキや、電子源の状態により、電子源の動作条件は、製品毎にばらついてしまう。この結果、ヒータに流す電流を一定の値に安定化しても、電子源の温度が大きく変化するなどするため、一定のX線量を安定して得ることは困難であった。
【0006】
この発明は以上の点に鑑みなされたもので、その目的は、一定のX線量を安定して得ることができるX線装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態に係るX線装置は、
ヒータと、前記ヒータにより加熱され、熱電子を放出する電子源と、前記熱電子で形成された電子ビームが入射されることでX線を放射する透過型のターゲットと、前記ターゲットが設けられ、前記ターゲットから放射されるX線を透過させるX線透過窓を有し、前記電子源及びターゲットを収容した真空容器と、を具備したX線源と、
前記ターゲットに流れた第1電流の値を測定する第1電流計と、前記ヒータに流れる第2電流の値を測定する第2電流計と、前記ヒータに一定の値に設定された前記第2電流を出力し、前記第2電流計で測定された前記第2電流の値の情報に基づいて前記第2電流の値を前記一定の値に維持する電源と、を具備した電源ユニットと、を備えていることを特徴としている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、一実施形態に係るX線装置を示す概略構成図である。
【図2】図2は、上記X線装置の第2電流が3.12A、3.08A及び3.04の場合における時間に対する第1電流の変化をグラフで示した図である。
【図3】図3は、他の実施形態に係るX線装置を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら一実施形態に係るX線装置について詳細に説明する。
図1に示すように、X線装置は、軟X線装置である。X線装置は、X線源1及び電源ユニット17を備えている。
【0010】
X線源1は、形状が微小でかつX線透過率が相対的に大きい樹脂などの低エネルギX線(軟X線)で測定する必要がある物質測定用、例えばX線断層撮影装置としてのX線CT(Computed Tomography)装置を有する立体透視画像構成装置に用いることができる。
【0011】
X線源1は、電子源(熱陰極)2と、ターゲット20と、真空容器18と、を備えている。図示しないが、X線源1は、抑制電極と、引出電極と、加速電極と、電子光学系としてのガンレンズであるレンズ電極と、をさらに備えている。
【0012】
電子源2は、導電材料でコーン状に形成され、電子源2の先端部は針状に形成されている。電子源2の先端部の表面(ビラ面)には、液体ジルコニウムが設置されている(高温時は液化し表面を覆っている)。電子源2にはフィラメントが設置されている。電子源2には、電子源2を加熱するヒータ3a、3bが接続されている。ヒータ3aには電子源支持端子4aが接続され、ヒータ3bには電子源支持端子4bが接続されている。電子源支持端子4a、4bは、電子源2及びヒータ3a、3bを支持している。電子源2は、ヒータ3a、3bにより加熱されることにより熱電子を放出し、高電圧が与えられることにより熱電子からなる電子ビームを形成する。
【0013】
ここで、抑制電極は、電子源2の先端部以外の周辺部分から放出される電子量を抑制するものである。引出電極は、抑制電極により抑制された電子を電子ビーム10として引出すものである。加速電極は、引出電極により引出された電子ビーム10を加速させるものである。レンズ電極は、加速電極により加速された電子ビーム10を集束してターゲット20に入射させるものである。
【0014】
ターゲット20は、レンズ電極に対して電子源2の反対側に位置し、レンズ電極に所定の間隔を置いて配置されている。ターゲット20は、例えばタングステンで形成されている。ターゲット20は、電子ビーム10の入射によって発生したX線12を減衰させることなく、外部に放出させるために非常に薄く形成されている。この実施形態において、ターゲット20の形状は、円形である。ターゲット20は、後述するX線透過窓11に密着され、X線透過窓11と一体化されている。ターゲット20は、X線透過型のターゲットであり、電子ビームが入射されることでX線透過窓11側にX線を放射するものである。
【0015】
真空容器18は、電子源2、抑制電極、引出電極、加速電極、レンズ電極、ターゲット20及びヒータ3a、3bを収容している。真空容器18は、X線透過窓11、第1容器18a、第2容器18b及び絶縁部8を有している。
【0016】
X線透過窓11は、X線12の減衰が小さく導電性を有する金属材料として、例えばベリリウムで形成されている。上記のように、X線透過窓11にターゲット20が設けられ、X線透過窓11は、ターゲット20から放射されるX線を透過させるものである。
【0017】
第1容器18aは導電材料で形成されている。第1容器18aの一部に形成された開口部にはX線透過窓11が気密に取付けられている。第1容器18aは、接地電位に設定されている。このため、ターゲット20も接地電位に設定されている。
【0018】
絶縁部8は、高電圧絶縁部材で形成され、第1容器18a及び第2容器18b間に気密に取付けられている。絶縁部8は、第1容器18a及び第2容器18b間の絶縁性を保持し、ひいては電子源2(高電圧部)及びターゲット20間の絶縁性を保持している。
【0019】
第2容器18bは、絶縁材料で形成されている。第2容器18bには、後述する絶縁部7が嵌合する凹部が形成されている。凹部の底壁には、電子源支持端子4a、4bが貫通する貫通孔が形成されている。なお、第2容器18bの凹部に形成された貫通孔は、電子源支持端子4a、4bにより気密に閉塞されている。電子源支持端子4a、4bが第2容器18bにより支持されることにより、電子源2などは真空容器18の内部の所定の位置に固定される。
真空容器18の内部は、真空状態に保持されている。
【0020】
第2容器18bの凹部には絶縁部7が嵌合されている。ケーブルセット16は絶縁部7により支持されている。ケーブルセット16の一部は、絶縁部7の内部を通って電子源支持端子4a、4bに電気的に接続されている。
上記のようにX線源1が形成されている。
【0021】
電源ユニット17は、ヒータ用の直流安定化電源としての電源13、抵抗器31、32、高電圧安定化電源14、コンデンサ15、電子ビーム電流計としての第1電流計5、及びフィラメント電流計としての第2電流計6を備えている。
【0022】
電源13は、ケーブルセット16及び電子源支持端子4a、4bを介してヒータ3a、3bに電気的に接続されている。電源13は、ヒータ3a、3bに一定の値に設定された第2電流i2を出力する。
【0023】
抵抗器31、32は、ケーブルセット16の一対の導線間に直列に接続されている。抵抗器31、32の抵抗値は同一である。
【0024】
高電圧安定化電源14は、正側が導線19を介して第2容器18bに電気的に接続され、負側が抵抗器31、32の間に電気的に接続されている。コンデンサ15は、高電圧安定化電源14に並列に接続されている。高電圧安定化電源14は、ケーブルセット16、電子源支持端子4a、4b及びヒータ3a、3bを介して電子源2に負の高電圧として例えば−30kVの電圧を印加している。
【0025】
第1電流計5は、抵抗器31、32の間と、高電圧安定化電源14との間に接続されている。第1電流計5は、電子源2からターゲット20に流れた第1電流i1の値を測定する。
【0026】
第2電流計6は、ケーブルセット16の一対の導線の一方(抵抗器31)と、電源13との間に接続されている。第2電流計6は、ヒータ3a、3bに流れる第2電流i2の値を測定する。
【0027】
電源13は、第2電流計6で測定された第2電流i2の値の情報を取得可能である。電源13は、第2電流計6で測定された第2電流i2の値の情報に基づいて第2電流i2の値を一定の値に維持する。
【0028】
次に、上記一実施形態に係るX線装置の作用を説明する。
電子源2から発生した熱電子は、抑制電極により電子量が抑制され、引き出し電極により電子ビーム10として引き出され、加速電極により加速される。そして、この電子ビーム10は、レンズ電極によって微小口径に集束されてターゲット20に照射されることにより、ターゲット20からX線12が放射される。放射されたX線12はターゲット20を透過して、外部に放出される。
【0029】
X線12による透過撮影を行うとき、ターゲット20に入射する電子ビーム10の量によってX線12の量が決まるために、安定したX線量を得るためには、第1電流i1(電子ビーム10の電流)の値を一定にする必要がある。
【0030】
電子源2の温度は電子源2に接続されたヒータ3a、3bに流れる第2電流i2で制御されているため、最適な第2電流i2を選定することが重要である。
【0031】
電子源2はヒータ3a、3bに流れる電流が多いほど高温になるため、多くの電子ビームが得られるが、電子源2が最適値を越えて高温度になると電子源2の表面のジルコニウムが蒸発等により無くなり、電子ビーム量が低下してしまう。また、電子源2が最適値より低温になっても、電子ビーム量が低下することが判っている。そのため、より多くの量の電子ビームが安定に得られる温度、つまり、第2電流i2(フィラメント電流)の最適値を選定する必要があることが判った。
また、X線源1で第2電流i2の値の最適値は、TFE(TFE:thermal field-emission electron gun)の製造メーカの推奨値とは異なることも判った。
【0032】
そこで、本願発明者は、上記X線装置を次に示すように用いることで、一定のX線量を安定して得ることができることを見出したものである。
【0033】
すなわち、操作者は、第1電流計5で測定した第1電流i1の値を取得し、時間に対する第1電流i1の値の変化量を算出する。そして、操作者は、第1電流i1の値が安定した最適値かどうかを判定する。操作者は、第1電流i1の値が安定した最適値ではないと判定した場合、電源13の出力する第2電流i2の値を変更させ、第2電流i2を他の一定の値に設定する。
上記の動作は、X線源1の初期起動時及びX線源1の長期間停止後の再起動時に行うことが効果的である。X線源1の初期起動時では、X線源1の動作条件が不明のためである。X線源1の長期間停止後の再起動時では、X線源1の動作条件が、前回起動から変動している恐れがあるためである。
【0034】
次に、上記の動作の例を図1及び図2を用いて説明する。
図1及び図2に示すように、一定のX線量を安定して得ることができるように第2電流i2(フィラメント電流)の最適値を得るためには、まず、TFE製造メーカの第2電流i2の推奨値(電子顕微鏡などでの使用を想定)の約1.04倍を第2電流i2の安定化目標値に設定し、動作させる。
【0035】
製造メーカの第2電流i2の推奨値が3.00Aのとき、まず、第2電流i2の値を3.12Aに設定して、時間に対する第1電流i1の値の変化量を算出する。第2電流i2の値が3.12Aの場合、第1電流i1は時間とともに(1時間以上)で低下を始めてしまい、一定の値の第1電流i1を安定して得ることはできない。
【0036】
そこで、操作者は、次に、第2電流i2の安定化目標値を0.01乃至0.02Aずつ低下させ、第1電流i1の値の安定度を測定する。この測定により、第1電流i1の値の低下率は低下する。
【0037】
例えば、第2電流i2の値が3.08Aの場合、第1電流i1は時間とともに(1時間以上)で低下を始めてしまい、一定の値の第1電流i1を安定して得ることはできないものの、第2電流i2の値が3.12Aの場合に比べ第1電流i1の値の低下率が低下していることが分かる。
【0038】
そして、第1電流i1の値が安定した最適値になるまで、第2電流i2の値の低下を続ける。図2の例では、第2電流i2の値が3.04Aの場合、第1電流i1の値が安定した最適値となることが分かる。このため、操作者は、第2電流i2の安定化目標値を変更しないようにすることにより、すなわち電源13の第2電流i2の値を3.04Aに一定に設定することにより、一定のX線量を安定して得ることができるため、長時間にわたるX線撮影であっても同じ線量でX線撮影を行うことができるものである。
【0039】
なお、第1電流i1の値が安定した最適値となった後に、X線源1の引出電極や加速電極の電圧値を変動させる場合、第1電流i1が増減する場合があることに注意する必要がある。この場合、操作者は、第1電流i1の値が安定した最適値となった後に、第2電流i2の安定化目標値を変更しないようにすればよい。
また、製造メーカのフィラメント電流推奨値より低い値で、第1電流i1の値が安定した最適値になる場合があることにも注意する必要がある。
【0040】
上述した他、操作者は、第1電流i1の値が安定した最適値ではないと判定した場合に、一定の値に設定された第2電流i2の値を電流値がより高い他の一定の値に設定してもよい。そして、操作者は、第1電流i1の値が安定した最適値であると判定するまで第2電流i2の値の上昇を続ければよい。
【0041】
具体的には、操作者は、ヒータ3a、3bに初めに推奨値より0.1A低い一定の値に設定された第2電流i2を電源13に出力させる。操作者は、第1電流i1の値が安定した最適値ではないと判定した場合に第2電流i2の値を0.01A高くして第2電流i2を電源13に出力させる。そして、操作者は、第1電流i1の値が安定した最適値であると判定するまで第2電流i2の値を0.01Aずつ高くして繰り返し判定すればよい。
【0042】
上記のように構成された一実施形態に係るX線装置によれば、X線装置は、X線源1と、電源ユニット17と、を備えている。X線源1は、ヒータ3a、3bと、ヒータにより加熱され、熱電子を放出する電子源2と、熱電子で形成された電子ビーム10が入射されることでX線12を放射する透過型のターゲット20と、ターゲットが設けられ、ターゲットから放射されるX線を透過させるX線透過窓11を有し、電子源及びターゲットを収容した真空容器18と、を具備している。
【0043】
電源ユニット17は、第1電流計5と、第2電流計6と、電源13と、を具備している。第1電流計5は、ターゲット20に流れた第1電流i1の値を測定する。第2電流計6は、ヒータ3a、3bに流れる第2電流i2の値を測定する。電源13は、ヒータ3a、3bに一定の値に設定された第2電流i2を出力し、第2電流計6で測定された第2電流i2の値の情報に基づいて第2電流i2の値を一定の値に維持する。
【0044】
操作者は、第1電流計5で測定した第1電流i1の値を取得し、時間に対する第1電流i1の値の変化量を算出する。そして、操作者は、第1電流i1の値が安定した最適値かどうかを判定する。操作者は、第1電流i1の値が安定した最適値ではないと判定した場合、電源13の出力する第2電流i2の値を変更させ、第2電流i2を他の一定の値に設定することができる。
【0045】
第1電流i1の値が安定した最適値となった場合、操作者は、電源13の第2電流i2の値を変更せずに一定に維持することにより、一定のX線量を安定して得ることができる。このため、長時間にわたるX線撮影であっても同じ線量でX線撮影を行うことができる。
【0046】
第1電流i1の値が安定した最適値かどうかを判定する際は、第2電流i2の値を高くしつつ繰り返し判定した方が、第2電流i2の値を低くしつつ繰り返し判定する場合に比べ、電子源2の動作が安定する。このため、電子源2の動作が安定した方が、電源13の出力する第2電流i2の値を変化させるまでにかかる時間を短縮することができる。
上記のことから、一定のX線量を安定して得ることができるX線装置を得ることができる。
【0047】
次に、他の実施形態に係るX線装置について説明する。上述した実施形態では、操作者による操作により第1電流i1の値を安定した最適値に設定したが、この実施形態では、X線装置自体で行うことが可能である。
【0048】
図3に示すように、X線装置は、X線源1、電源ユニット17及び制御ユニット26を備えている。第2容器18bには、上記凹部ではなく、絶縁部7が貫通する貫通孔が形成されている。絶縁部7は、第2容器18bの貫通孔に気密に取付けられている。なお、X線源1及び電源ユニット17の他の構成は、上述した実施形態と同一であり、同一の部分には同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0049】
制御ユニット26は、判定部21と、第2電流i2の目標値設定器としての設定部22と、切替え器23と、制御部24とを具備している。
【0050】
判定部21は、第1電流計5で測定した第1電流i1の値を取得し、時間に対する第1電流i1の値の変化量を測定し、第1電流i1の値が安定した最適値かどうかを判定する。判定部21は、第1電流i1の値が安定した最適値ではないと判定した場合に、第2電流i2の値を変更させるように指示する。
【0051】
設定部22は、判定部21からの指示に基づいて、電源13の出力する第2電流i2を他の一定の値に設定する。言い換えると、設定部22は、第2電流i2(フィラメント電流)の目標設定値を変化させるものである。
【0052】
切替え器23は、判定部21及び設定部22間に接続されている。切替え器23は、導通状態又は非導通状態に切替えられる。通常、切替え器23は非導通状態である。
【0053】
判定部21が第2電流i2の値を変更させるように指示する必要がある場合、制御部24は、判定部21から送信される信号(情報)に基づいて切替え器23を導通状態に保持する。
【0054】
第1電流i1の値が安定した最適値であり、判定部21が第2電流i2の値を変更せずに一定値に維持する必要がある場合、制御部24は、判定部21から送信される信号(情報)に基づいて切替え器23を非導通状態に切替える。
【0055】
X線装置は、タイミング制御部25をさらに備えている。このため、タイミング制御部25は、X線源1の初期起動時やX線源1の長期間停止後の再起動時などに、切替え器23を導通状態に切替え、制御ユニット26を稼動させることができる。なお、タイミング制御部25は、ソフトウェアにて実施することも可能である。
この実施形態に係るX線装置は上記のように形成されている。
【0056】
次に、制御ユニット26の動作の実施例を2つ挙げて説明する。
(実施例1)
判定部21は、第1電流i1の値が安定した最適値ではないと判定した場合に第2電流i2の値を高くさせるように指示する。すると、設定部22は、電源13の出力する第2電流i2を一定の値より電流値が高い他の一定の値に設定する。そして、判定部21及び設定部22は、判定部21が第1電流i1の値が安定した最適値であると判定するまで繰り返し動作する。
【0057】
(実施例2)
電源13は、ヒータ3a、3bに初めに推奨値より0.1A低い一定の値に設定された第2電流i2を出力する。すると、判定部21は、第1電流i1の値が安定した最適値かどうかを判定し、第1電流i1の値が安定した最適値ではないと判定した場合に第2電流i2の値を0.01A高くさせるように指示する。すると、設定部22は、電源13の出力する第2電流i2を一定の値より電流値が0.01A高い他の一定の値に設定する。そして、判定部21及び設定部22は、判定部21が第1電流i1の値が安定した最適値であると判定するまで第2電流i2の値を0.01Aずつ高くして繰り返し動作する。
【0058】
上記のように構成された他の実施形態に係るX線装置によれば、X線装置は、上述した実施形態と同様に形成されたX線源1及び電源ユニット17を備えている。このため、この実施形態に係るX線装置は、上述した実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0059】
X線装置は、上記の他、タイミング制御部25及び制御ユニット26をさらに備えている。このため、第1電流i1及び第2電流i2の値の測定や、第2電流i2の値の設定を、操作者による操作無しに、X線装置自体で行うことが可能となる。
上記のことから、一定のX線量を安定して得ることができるX線装置を得ることができる。
【0060】
なお、この発明は上記実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化可能である。また、上記実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【0061】
例えば、真空容器18の細部の構成など、X線源1の構成は、上述した実施形態に限定されるものではなく、種々変形可能である。また、電源ユニット17や制御ユニット26の構成も、上述した実施形態に限定されるものではなく、種々変形可能である。
【符号の説明】
【0062】
1…X線源、2…電子源、3a,3b…ヒータ、4a,4b…電子源支持端子、5…第1電流計、6…第2電流計、13…電源、17…電源ユニット、18…真空容器、20…ターゲット、21…判定部、22…設定部、23…切替え器、24…制御部、25…タイミング制御部、26…制御ユニット、i1…第1電流、i2…第2電流。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒータと、前記ヒータにより加熱され、熱電子を放出する電子源と、前記熱電子で形成された電子ビームが入射されることでX線を放射する透過型のターゲットと、前記ターゲットが設けられ、前記ターゲットから放射されるX線を透過させるX線透過窓を有し、前記電子源及びターゲットを収容した真空容器と、を具備したX線源と、
前記ターゲットに流れた第1電流の値を測定する第1電流計と、前記ヒータに流れる第2電流の値を測定する第2電流計と、前記ヒータに一定の値に設定された前記第2電流を出力し、前記第2電流計で測定された前記第2電流の値の情報に基づいて前記第2電流の値を前記一定の値に維持する電源と、を具備した電源ユニットと、を備えていることを特徴とするX線装置。
【請求項2】
前記第1電流計で測定した前記第1電流の値を取得し、時間に対する前記第1電流の値の変化量を測定し、前記第1電流の値が安定した最適値かどうかを判定し、前記第1電流の値が前記安定した最適値ではないと判定した場合に前記第2電流の値を変更させるように指示する判定部と、前記判定部からの指示に基づいて、前記電源の出力する前記第2電流を他の一定の値に設定する設定部と、を具備した制御ユニットをさらに備えていることを特徴とする請求項1に記載のX線装置。
【請求項3】
前記X線源の初期起動時及び前記X線源の長期間停止後の再起動時に、前記制御ユニットを稼動させるタイミング制御部をさらに備えていることを特徴とする請求項2に記載のX線装置。
【請求項4】
前記判定部は、前記第1電流の値が前記安定した最適値ではないと判定した場合に前記第2電流の値を高くさせるように指示し、
前記設定部は、前記電源の出力する前記第2電流を前記一定の値より電流値が高い前記他の一定の値に設定し、
前記判定部及び設定部は、前記判定部が前記第1電流の値が安定した最適値であると判定するまで繰り返し動作することを特徴とする請求項2に記載のX線装置。
【請求項5】
前記電源は、前記ヒータに初めに推奨値より0.1A低い一定の値に設定された前記第2電流を出力し、
前記判定部は、前記第1電流の値が前記安定した最適値ではないと判定した場合に前記第2電流の値を0.01A高くさせるように指示し、
前記設定部は、前記電源の出力する前記第2電流を前記一定の値より電流値が0.01A高い前記他の一定の値に設定し、
前記判定部及び設定部は、前記判定部が前記第1電流の値が安定した最適値であると判定するまで前記第2電流の値を0.01Aずつ高くして繰り返し動作することを特徴とする請求項2に記載のX線装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−93161(P2013−93161A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−233759(P2011−233759)
【出願日】平成23年10月25日(2011.10.25)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(503382542)東芝電子管デバイス株式会社 (369)
【Fターム(参考)】