説明

X線診断システム

【課題】ワイヤレスFPDの駆動タイミングとX線照射のタイミングとを高い精度をもって同期させることで、パルス透視やシーケンス撮影の連続照射を行ったときでも被検体の内部情報を適切に取得し、医用画像を生成することが可能なX線診断システムを提供する。
【解決手段】被検体Mに対してX線を照射するX線発生部2と、X線発生部2を制御するとともに、照射のタイミングの基準となる基準時刻を設定する際に用いる時計6aを備えるX線照射制御部6と、を備えるX線発生装置1と、被検体Mを透過したX線を検出するとともに、駆動のタイミングの基準となる基準時刻を設定する際に用いる時計20cを備える検出器20aと、検出器20aの駆動を制御する検出器制御部20Bと、を備える画像収集装置20とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施の形態は、X線診断システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、被検体内部の情報を収集し、この収集された情報に基づいて被検体内部を画像化して医用画像を生成する医用画像診断装置が用いられるようになっている。この医用画像診断装置としては、例えば、X線診断装置を挙げることができる。X線診断装置においては、被検体に対してX線を照射するとともに当該被検体を透過したX線を検出し、検出された信号を基に医用画像が生成される。
【0003】
被検体を透過したX線を検出する装置として、X線診断装置にはX線検出器が備えられる。但し、このX線検出器は、もともとX線診断装置に備えられていたり、或いは、X線診断装置とは別の機器として存在し、必要に応じてX線発生装置に装着して用いられる。後者のX線検出器の場合、いわば可搬性に優れるポータブルな形態となることもあるが、このポータブルなX線検出器の場合において生じうる不都合への対応については、以下の特許文献1にその解決策が示されている。
【0004】
また後者のX線検出器の場合、このX線検出器の制御を行う制御装置とX線検出器そのものとが有線で接続されず、無線にて制御信号が送受信される、ワイヤレス式のX線検出器もある。
【0005】
さらに、X線検出器として、X線の強度に比例した電気信号に変換する検出器(FPD:Flat Panel Detector)が採用される場合もある。この検出器(以下、適宜「FPD」
と表わす)はアナログフィルムではなく、デジタルでの信号処理が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−51728号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1において開示されている発明では、次の点については解決されていない。
【0008】
すなわちワイヤレス式のFPDをX線発生装置と組み合わせて使用する場合、FPDは医用画像の基となる被検体内部の情報を取得しなければならないため、X線照射のタイミングと同期を取る必要がある。同期が取れていないとX線照射の途中、つまりX線の照射が完了しないうちにX線検出器で信号の読み出しを行うことになり、適切な医用画像を生成するに足る情報を取得することができない。
【0009】
例えば、X線照射の時間が10msecのオーダで行われる場合、X線が照射される期間の間に設けられるFPD信号の読み出し期間は、X線照射期間との関係上1msec単位でそのタイミングを制御する必要がある。
【0010】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、ワイヤレスFPDの駆動タイミングとX線照射のタイミングとを高い精度をもって同期させることで、パルス透視やシーケンス撮影の連続照射を行ったときでも被検体の内部情報を適切に取
得し、医用画像を生成することが可能なX線診断システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載の発明の特徴は、X線診断システムにおいて、被検体に対してX線を照射するX線発生部と、X線発生部を制御するとともに、照射のタイミングの基準となる基準時刻を設定する際に用いる時計を備えるX線照射制御部と、を備えるX線発生装置と、被検体を透過したX線を検出するとともに、駆動のタイミングの基準となる基準時刻を設定する際に用いる時計を備える検出器と、検出器の駆動を制御する検出器制御部と、を備える画像収集装置とを備える。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態におけるX線診断システムの全体構成を示すブロック図である。
【図2】FPDの駆動タイミングとX線照射のタイミングに関して、正常なタイミング(同期している状態)を示す波形図である。
【図3】FPDの駆動タイミングとX線照射のタイミングとを同期させる流れを示すフローチャートである。
【図4】FPDの駆動タイミングとX線照射のタイミングに関して同期が取れない(ずれてしまった)場合に当該状態を修正する方法を説明する波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0014】
図1は、本発明の実施の形態におけるX線診断システムSの全体構成を示すブロック図である。本発明の実施の形態においては、X線診断システムSは、X線発生装置1と画像収集装置20とから構成される。X線発生装置1はX線検出器を備えておらず、画像収集装置20をX線発生装置1に組み込むことによってX線診断システムSを利用した撮影が行われる。
【0015】
X線発生装置1は、X線発生部2と、X線発生部2を後述するX線照射制御部6を介して制御するシステム制御部3とから構成される。また、X線発生装置1には、医師が操作する操作部4が設けられており、操作部4を介した医師の指示に基づいてX線診断システムSを利用した被検体の撮影が行われる。X線診断システムSを使用する際には、検体Mは寝台B(天板B1)に横臥する。
【0016】
X線発生部2は、被検体Mに対してX線を照射するX線管2aと、X線管2aから照射されたX線に対してX線錘(コーンビーム)を形成するX線絞り器2bとを備えている。X線管2aは、X線を発生させる真空管であり、陰極(フィラメント)より放出された電子を、高電圧発生部5から供給される高電圧によって加速させてタングステン陽極に衝突させX線を発生させる。X線絞り器2bは、X線管2aと被検体Mとの間に位置し、X線管2aから照射されたX線ビームを後述する画像収集装置20における所定サイズの照射範囲に絞り込む機能を有している。
【0017】
X線発生部2及び高電圧発生部5は、X線照射制御部6によって制御される。また、X線照射制御部6自体は、システム制御部3によって制御される。X線照射制御部6は、例えば、X線発生部2におけるX線照射のタイミングを制御する。また、X線照射制御部6には、時計6aが設けられており、X線照射のタイミング制御に用いられる。
【0018】
なお、時計6aについては、画像収集装置20の駆動タイミングとX線発生部2からのX線照射のタイミングとの同期を取るために用いられることから、どの精度で同期を取る
かによって時計6aの精度も決定される。本発明の実施の形態においては、両者の同期を高精度に取る必要があることから、例えば、1msec以下の単位で調整することの可能な時計が好適に使用される。
【0019】
また、本発明の実施の形態においては、X線照射制御部6はシステム制御部3から独立して設けられていることを前提に説明を行うが、X線照射制御部6の機能がシステム制御部3内に設けられており、X線照射の制御をシステム制御部3によって行うようにしても良い。
【0020】
システム制御部3は、図示しないCPU(Central Processing Unit)等から構成され
ており、操作者(例えば、医師や検査技師)が操作部4を利用して入力、或いは、設定する条件等に基づいて、X線発生部2、X線照射制御部6といったX線発生装置1を構成する各ユニットの制御やシステム全体の制御を統括して行う。
【0021】
操作部4は、X線発生装置1の操作者が各種の操作を入力するキーボード、ジョイスティック、ダイヤル等の入力デバイス、或いは、各種スイッチ等により構成されている。操作者は、操作部4を操作して被検体Mに関する情報や各種コマンド、撮影対象部位に対する最適なX線照射条件(例えば、X線管2aに印加する管電圧、管電流、X線の照射時間等)の入力を行う。
【0022】
なお、図1では、X線発生装置1において本発明の実施の形態を説明する上で必要とされる機能のみを示している。従って、寝台Bを駆動する機構部と、この機構部をシステム制御部6からの指令を受けて制御される機構制御部等、X線発生装置が通常備える各部、或いは、各機構については、図1のX線発生装置1ではその記載を省略するが、当然設けられているものである。
【0023】
次に本発明の実施の形態における画像収集装置20は、ワイヤレス式であり、X線発生装置1に接続される検出器本体20Aと、検出器本体20Aに対して制御信号の送信等を行う検出器制御部20Bとから構成される。なお、以下、画像収集装置20は、適宜「FPD20」とも表わす。
【0024】
まず検出器本体20Aは、検出器20aとゲートドライバ20bとを備えている。検出器20aは、平面状のX線検出器であり、複数の検出素子を有し、これら複数の検出素子によって被検体Mを透過したX線を検出する。検出されたX線は、図示しない変換器を用いて電気信号へと変換され、検出器制御部20Bの画像処理部20oへと送信される。
【0025】
ゲートドライバ20bは、検出器制御部20Bからの指令に基づいて、検出器20aの検出素子を駆動する。FPD20は、ワイヤレス式であることから、検出器の駆動制御の他、変換された電気信号を画像処理部20oへ送信する際も有線(ワイヤ)を使用せず無線(ワイヤレス)で送信される。
【0026】
検出器本体20Aには、時計20cが設けられており、検出器本体10Aの駆動のタイミング制御に用いられる。なお、時計20cについては、X線発生部2からのX線照射のタイミングとFPD20の駆動タイミングとの同期を取るために用いられることから、どの精度で同期を取るかによって時計20cの精度も決定される。本発明の実施の形態においては、両者の同期を高精度に取る必要があることから、例えば、1msec以下の単位で調整することの可能な時計が好適に使用される。
【0027】
また、検出器本体20Aには、X線検知センサ20dが設けられている。このX線検知センサ20dは、X線発生部2から照射されるX線を検知し、後述するようにX線照射の
タイミング(間隔)を把握するために用いられる。
【0028】
検出器制御部20Bは、FPD制御部20mと、記憶部20nと、画像処理部20oと、表示部20pとから構成される。本発明の実施の形態においては、検出器制御部20Bがワイヤレスで検出器本体20Aに制御指示を送信することでFPD20全体を制御している。
【0029】
FPD制御部20mは、画像収集装置(FPD)20全体の駆動を制御する。
【0030】
記憶部20nは、X線診断システムSにおいて得られた被検体Mの内部情報を記憶する。なお、記憶する対象は、検出器本体20Aから送信される被検体Mの内部情報そのものであっても、或いは、画像処理部20oにおいて生成される医用画像であっても良い。
【0031】
なお、記憶部20nは、図示しない通信ネットワークにて他の医用画像診断装置等と互いに接続されていても良い。他の医用画像診断装置等と接続されていることによって、他の医用画像診断装置等において取得された医用画像とX線診断システムSにおいて取得され生成される医用画像との比較を行うことも可能となる。
【0032】
通信ネットワークの例としては、院内に設置されるLAN(Local Area Network)やインターネット等のネットワークを挙げることができる。また、この通信ネットワークNで使用される通信規格は、DICOM(Digital Imaging and Communication in Medicine
)等、いずれの規格であっても良い。
【0033】
画像処理部20oは、被検体Mに照射され被検体Mを透過してFPD20(検出器本体20A)にて検出されたX線(内部情報)を変換して得られた医用画像情報の画像処理を行う。画像処理部20oにおいて生成される医用画像は、例えば、記憶部20nに記憶される。
【0034】
表示部20pは、画像処理部20oにおいて生成された表示画像を表示する。また、当該表示画像の他、例えば、表示条件を定める際の入力画面等も表示する。
【0035】
なお、本発明の実施の形態においては、X線発生装置1と画像収集装置20とは別体であることを前提に説明するが、画像収集装置20のうち、検出器本体20Aは別体であるものの、検出器制御部20Bについては、X線発生装置1と一体に構成されていても構わない。
【0036】
図2は、FPD20の駆動タイミングとX線照射のタイミングに関して、正常なタイミング(同期している状態)を示す波形図である。図2に示す波形図では、上段にX線照射のタイミングを、下段にFPDの駆動タイミングを示している。波形は矩形波であり、立ち上がりがOFFからONへの移行を示し、立ち下がりがONからOFFへの移行を示している。X線の照射波形が矩形波なのは、パルス透視を行うことを前提としているからである。
【0037】
そして、X線が照射されていない時期にFPD20による読取処理が行われる。FPD20によって読取処理が行われる状態をONとし、X線照射のタイミングでは読取処理が行われないが、その状態をOFFとして表わしている。
【0038】
図2に示す波形図では、X線は、符号Aで示す時間照射される。その後、符号Bにて示される時間読取処理が行われ、X線発生部2からの照射、FPD20による読取処理が交互に行われる。また符号Cで示される期間は、X線の照射が開始される時間から、改めて
照射開始となる時までの間を示しており、この期間が、例えば、30fps(flame per second)と設定される。
【0039】
波形図にも現われているように、符号Aで示されるX線の照射期間終了の位置と符号Bで示される読取処理が開始される位置との間には、ある間隔(タイムラグ、符号D)が設けられている。これは、例えば、読取処理の期間がX線照射の期間に入るようにずれてしまう、すなわち、X線照射中に読取処理が開始されてしまうと、結果として表示部20pに表示させた際に異常な画像が表示されることにもなる。
【0040】
そこで、FPD20を用いてX線診断システムSでパルス透視を行う際には、X線照射のタイミングとFPD20の駆動タイミングとを高い精度で同期させ、符号Dで示される間隔を設定した通りに確実に確保する必要がある。本発明の実施の形態においては、図2に破線Eで示す時刻を「基準時刻」としてX線照射制御部6、及び、検出器20aにおいて設定し、当該基準時刻を基にX線照射のタイミングとFPD20の駆動タイミングとの同期を図ることとしている。
【0041】
すなわち、X線照射が行われる時(OFFからONとなり波形が立ち上がる時)を基準時刻とし、この基準時刻から符号Aで示す期間、X線発生部2はX線を照射することとする。また、基準時刻を基に、符号Aと符号Dとを加えた期間が経過した後、FPD20は読取処理を開始し、符号Bで示す期間中読取処理を継続することとしている。
【0042】
次に、X線発生部2からのX線照射のタイミングとFPD20の駆動タイミングとの同期を取る流れについて、図3に示すフローチャートを用いて説明する。
【0043】
まず、FPD20をX線発生装置1に装着する(ST1)。X線診断システムSとしては、FPD20がX線発生装置1に装着して初めて被検体MにX線を照射してその内部情報を取得することができるからである。
【0044】
その上で、X線照射制御部6に設けられている時計6aとFPD20の検出器20aに備えられている時計20cの時刻を合わせて同期を取る(ST2)。ここで時計6a,20cの時刻の合わせ方については様々な方法が考えられるが、例えば、GPS(Global Positioning System)を用いて世界標準時に合わせる方法が考えられる。GPSを利用す
ることで双方の時計は精度良く時刻を合わせることができる。そのため、時計6a,20cをそれぞれ独自にGPSを利用して時刻を合わせても、正確に時刻を合わせる限り、両者は互いに同期を取ることが可能となる。
【0045】
また、時計6a,20cの同期を取る方法として、例えば、一時的にX線照射制御部6と検出器20aとを有線を用いて接続する方法も考えられる。この場合、両者間を例えば、光信号や電気信号を用いて同期させる。なお、この場合、X線照射制御部6と検出器20aとは同期を取るときのみ接続されるため、X線診断システムSとして使用される場合等には、それぞれの時計6a,20cの精度に任されることになる。
【0046】
そして基準時刻を設定する(ST3)。基準時刻はどのように設定しても良いが、例えば、0分0.000秒を基準時刻として設定する。その後、この基準時刻を基に、所定のフレームレートで駆動する旨、FPD20の駆動レートとX線照射のレートを設定する(ST4ないしST6)。FPD20の駆動レートは、検出器制御部20Bを用いて設定する。また、X線発生部2におけるX線照射のレートは、X線照射制御部6を用いて設定する。
【0047】
レートが設定されることによって、FPD20は、所定の駆動レートで駆動し続けてい
る。この状態でX線照射制御部6は、X線照射のレートに従ってX線発生部2からX線を照射する。照射されたX線が被検体Mを透過することによって、被検体Mの内部情報を取得することができる(ST7)。
【0048】
時計6a,20cは、それぞれ精度を持っていることから、それぞれの精度をもって次第にずれてくる。時計6a,20cが次第にずれるのは仕方のないことではあるが、X線照射制御部6と検出器20aとは時刻を合わせて同期が取られており、また、同期が取られていることを前提に基準時刻を基に各処理が行われる。従って、X線照射制御部6と検出器20aとの間にずれがないことを前提として各処理が行われるため、時計6a,20cにずれが生じたか否かは常に監視されている(ST8)。
【0049】
時計6a,20cにずれが生じたか否かの判断は、X線照射制御部6、或いは、検出器20aが行っても良い。また、FPD20の場合には、適宜検出器制御部20Bがそのずれを確認することとしても良い。
【0050】
時計6a,20cにずれが生じていないと判断される場合には(ST8のNO)、X線照射制御部6、及び検出器20aは同期した状態で、例えば図2に示すタイミングでパルス透視が行われ、被検体Mの内部情報を取得する。そして、この状態はX線の照射が終了するまで継続する(ST9のNO、ST7以下)。
【0051】
一方、時計6a,20cにずれが生じている場合には(ST8のYES)、それぞれの時計6a,20cのずれを修正することになる(ST10)。ここで、「ずれ」とは、基準時刻のずれを指す。ずれを修正する方法については、例えば、以下に説明する方法が考えられる。
【0052】
図4は、FPD20の駆動タイミングとX線照射のタイミングに関して同期が取れない(ずれてしまった)場合に当該状態を修正する方法を説明する波形図である。図4に示す波形図は、上、中、下段、3段に分けて示されており、上段に示されているX線照射の波形図を基準に、中段、下段にFPD20の駆動波形が示されている。また、中段は、FPD20の駆動タイミングにずれがある場合、下段はずれがなく正常な場合をそれぞれ示している。また、中段、下段に示されているFPD20の駆動波形において、波形上基準時刻を示す位置には三角形のマークが付されている。
【0053】
上段のX線照射のタイミングと下段のFPD20の駆動タイミングは、基準時刻として示される破線の位置と、FPD20の基準時刻を示す三角形のマークとが重なっていることから両者の基準時刻は一致し、互いに同期が取れていることがわかる。従って、この波形で示されるX線照射のタイミングと検出器20aの駆動タイミングとの間にずれはなく、正常なタイミングでX線の照射が行われ、読取処理が行われている。
【0054】
一方、中段に示されるFPD20の駆動波形については、基準時刻を示す三角形のマークの位置がX線照射のOFFからONへと移行する時期、すなわち基準時刻からずれていることが分かる。ずれの大きさ(時間)は、FPD20が基準時刻とする三角形のマークと、X線照射を基に設定される基準時刻との差(符号F)で示されている。
【0055】
図4に示す波形図では、FPD20の駆動タイミングが符号Fで示す分だけずれて(進んで)しまっているので、FPD20による読取処理がX線発生部2からのX線照射中に開始してしまっている。このようにX線照射と読取処理とが重複して行われると、上述した通り適切な医用画像を表示させることができなくなる。そこで、このようなずれを修正する必要がある。
【0056】
ずれを修正する方法としては、例えば以下のような方法が考えられる。ここで、X線照射制御部6が備える時計6a、及びX線FPD20が備える時計20cが、それぞれ0分0.000秒を基準時刻としていることを前提とする。また、FPD20の時計20cが0.005秒ずれている(図4に示す符号Fで示される時間が0.005秒)であることも前提とする。
【0057】
まず最も簡単なずれの修正方法は、例えば、X線照射が行われていないときにGPSを利用してそれぞれの時間を改めて、例えば世界標準時に合わせる、という方法が考えられる。上述した通り、双方の時計の時刻がそれぞれ合っている、ということは、双方の時計の同期は取れている。その上で改めて基準時刻を設定すれば、X線照射制御部6も検出器制御部20Bも当該基準時刻を基に、それぞれの照射タイミング、或いは、駆動タイミングを設定することができる。このようにずれを修正することで、再度同期が取れタイミングが合った状態でX線の照射、或いは、読取処理を行うことができる。
【0058】
次の方法は、上述した前提が存在する場合に、ずれはずれとして把握した上で、FPD20の基準時刻をずれ分(0.005秒)ずらす方法である。図4に示す波形図で言えば、中段の波形図におけるFPD20の基準時刻を示す三角形のマークは元々の基準時刻として使用せず、あくまでもFPD20の基準時刻をX線照射のタイミングである基準時刻に合わせる方法であるといえる。従って、X線照射のタイミングにおける基準時刻は0分0.000秒であるが、FPD20の駆動タイミングにおける基準時刻は、符号Fの分ずれるので0分0.005秒ということになる。このようにFPD20の基準時刻を設定することで、実際の駆動タイミングは当該基準時刻を基に設定されていることから、X線照射制御部6と検出器20aの同期は取れることになる。
【0059】
なお、X線照射制御部6、検出器20aそれぞれのタイミングにずれが発生しているか否かの判断は、ずれの発生を認識する必要がある。ずれの発生を認識する方法としては、例えば、表示部20pに表示される医用画像が異常を示していることを把握して認識する方法が考えられる。但しこの方法では、実際に異常画像が表示されるまでそのずれを認識することがないので、撮影の回数が増加したり、適切な医用画像の生成に時間が掛かったりと、例えば、被検体Mの検査のスループットの面からも好ましくない。
【0060】
そこで、できるだけ早くX線照射制御部6、検出器20aのタイミングにずれが発生したことを認識することが肝要である。その方法の1つとして考えられるのが、検出器本体20Aに設けられるX線検知センサ20dを利用する方法である。このX線検知センサ20は、X線発生部2からのX線の照射を検知する。より具体的には、パルス透視を行う際に、X線照射の開始時(波形においてOFFからONへと立ち上がる時)をX線検知センサ2dで検知する。検知されたX線照射のタイミング(時間や間隔)を検出器制御部20Bで把握し、検出器20aの駆動タイミングとの比較を行うことで両者のずれを認識することができる。
【0061】
ずれを認識した場合には、上述したステップST10における修正を行い、X線照射制御部6、検出器20aのタイミングを合わせて同期させる。
【0062】
以上説明した通り、X線照射制御部6、検出器20aそれぞれに時計を設け、両者を併せ、或いは、ずれが生じた場合に修正を行ってワイヤレスFPDの駆動タイミングとX線照射のタイミングとを高い精度をもって同期させることで、パルス透視やシーケンス撮影の連続照射を行ったときでも被検体の内部情報を適切に取得し、医用画像を生成することが可能なX線診断システムを提供することができる。
【0063】
本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明
の範囲を限定することを意図していない。この実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0064】
1 X線発生装置
6 X線照射制御部
6a 時計
20 FPD
20A 検出器本体
20B 検出器制御部
20a 検出器
20c 時計
20d X線検知センサ
20m FPD制御部
20n 記憶部
20o 画像処理部
20p 表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体に対してX線を照射するX線発生部と、
前記X線発生部を制御するとともに、照射のタイミングの基準となる基準時刻を設定する際に用いる時計を備えるX線照射制御部と、を備えるX線発生装置と、
前記被検体を透過した前記X線を検出するとともに、駆動のタイミングの基準となる基準時刻を設定する際に用いる時計を備える検出器と、
前記検出器の駆動を制御する検出器制御部と、を備える画像収集装置と、
を備えることを特徴とするX線診断システム。
【請求項2】
前記検出器はワイヤレスであり、前記検出器制御部による前記検出器に対する制御が無線で行われることを特徴とする請求項1に記載のX線診断システム。
【請求項3】
前記検出器は、前記X線発生部から照射される前記X線を検出するX線検知センサを備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のX線診断システム。
【請求項4】
前記X線照射制御部、及び、前記検出器に備えられる前記時計は、いずれも、1m秒以下の精度を備えていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のX線診断システム。
【請求項5】
前記X線照射制御部、及び、前記検出器に備えられる前記時計は、いずれも、GPSを用いて自動的に調整されることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のX線診断システム。
【請求項6】
前記X線照射制御部、及び、前記検出器に備えられる前記時計を調整するに当たり、前記X線照射制御部と前記検出器とを互いに接続して同期を取ることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれかに記載のX線診断システム。








【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−94174(P2013−94174A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−236466(P2011−236466)
【出願日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】